【実施例1】
【0020】
図1(a)は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA−A断面図である。
図1(a)は、主に下部電極12、圧電膜14、上部電極16および付加膜17を図示している。
【0021】
図1(a)および
図1(b)を参照し、基板10上に、下部電極12が設けられている。基板10の平坦主面と下部電極12との間にドーム状の膨らみを有する空隙30が形成されている。ドーム状の膨らみとは、例えば空隙30の周辺では空隙30の高さが小さく、空隙30の内部ほど空隙30の高さが大きくなるような形状の膨らみである。基板10は例えばシリコン(Si)基板である。下部電極12は下層12aと上層12bとを含んでいる。下層12aおよび上層12bは例えばそれぞれクロム(Cr)膜およびルテニウム(Ru)膜である。
【0022】
下部電極12上に、圧電膜14が設けられている。圧電膜14は、例えばC軸配向性を有する窒化アルミニウムを主成分とする。圧電膜14は、下部電極12上に設けられた下部圧電膜14aと下部圧電膜14a上に設けられた上部圧電膜14bとを含む。
【0023】
圧電膜14を挟み下部電極12と対向するように圧電膜14上に上部電極16が設けられている。上部電極16は下層16aおよび上層16bを含んでいる。下層16aおよび上層16bは例えばそれぞれルテニウム膜およびクロム膜である。共振領域50は、圧電膜14の少なくとも一部を挟み下部電極12と上部電極16とが平面視において重なる領域で規定される。共振領域50は、楕円形状を有し、厚み縦振動モードの弾性波が共振する領域である。平面視において共振領域50は空隙30に重なり、空隙30は共振領域50と同じか大きい。すなわち、平面視において共振領域50の全ては空隙30と重なる。
【0024】
下部圧電膜14aと上部圧電膜14bとの間に挿入膜28が設けられている。挿入膜28は例えば酸化シリコン膜である。挿入膜28は共振領域50内の中央領域54に設けられておらず、共振領域50内において中央領域54を囲み共振領域50の外周に沿う外周領域52に設けられている。挿入膜28は、中央領域54を囲む少なくとも一部の領域に設けられていればよい。
【0025】
引き出し領域58および60はそれぞれ下部電極12および上部電極16が共振領域50から引き出される領域である。引き出し領域58では共振領域50の外周は上部電極16の外周により規定され、下部電極12の外周は共振領域50の外周より外側に位置する。引き出し領域60では共振領域50の外周は下部電極12の外周により規定され、上部電極16の外周は共振領域50の外周より外側に位置する。これにより、下部電極12と上部電極16の位置合わせがずれても共振領域50の面積の変化を小さくできる。
【0026】
引き出し領域58では、上部圧電膜14bの端面62は共振領域50の外周より外側に位置する。下部圧電膜14aの端面64は上部圧電膜14bの端面62より外側に位置する。下部圧電膜14aの端面64は上部圧電膜14bの端面62と略一致していてもよい。領域56は、上部圧電膜14bの端面と共振領域50の外周との間の領域である。
【0027】
領域56において、圧電膜14上に複数の付加膜17が設けられている。複数の付加膜17は、共振領域50から離れる方向に配列し、共振領域50を囲むように設けられている。
【0028】
上部電極16および付加膜17を覆うように周波数調整膜24として酸化シリコン膜が形成されている。周波数調整膜24はパッシベーション膜として機能してもよい。
【0029】
図1(a)のように、下部電極12には犠牲層をエッチングするための導入路33が形成されている。犠牲層は空隙30を形成するための層である。導入路33の先端付近は圧電膜14で覆われておらず、下部電極12は導入路33の先端に孔部35を有する。
【0030】
図2は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
図2は、領域56を共振領域50に比べ横方向に拡大した図である。
図2に示すように、領域56では、下部電極12、挿入膜28および圧電膜14を含む積層膜18上に付加膜17が設けられている。付加膜17は、下層16aおよび上層16bを備えている。複数の付加膜17は周期的に設けられている。
【0031】
領域56aに付加膜17が設けられている。付加膜17の共振領域50と端面62との方向における幅はD1である。隣接する付加膜17の間の領域56bには付加膜17が設けられていない。領域56bの幅はD2である。最も内側の付加膜17と共振領域50と間の領域56cには付加膜17は設けられていない。領域56cの幅はD3である。最も外側の付加膜17と端面62との間の領域56dには付加膜が設けられていない。領域56dの幅はD4である。複数の付加膜17の幅D1は互いに製造誤差程度に略等しく、付加膜17の間の幅D2は互いに製造誤差程度に略等しく、幅D2およびD3は、互いに製造誤差程度に略等しい。幅D4は後述のようにばらつく。領域56の幅はD5である。
【0032】
基板10としては、シリコン基板以外にサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板等を用いることができる。下部電極12、上部電極16および付加膜17としては、ルテニウムおよびクロム以外にもアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)等の単層膜またはこれらの積層膜を用いることができる。例えば、上部電極16の下層16aをルテニウム、上層16bを、モリブデンとしてもよい。付加膜17は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の絶縁膜でもよい。
【0033】
圧電膜14は、窒化アルミニウム以外にも、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO
3)等を用いることができる。また、例えば、圧電膜14は、窒化アルミニウムを主成分とし、共振特性の向上または圧電性の向上のため他の元素を含んでもよい。例えば、添加元素として、スカンジウム(Sc)、2族元素もしくは12族元素と4族元素との2つの元素、または2族元素もしくは12族元素と5族元素との2つの元素を用いることにより、圧電膜14の圧電性が向上する。このため、圧電薄膜共振器の実効的電気機械結合係数を向上できる。2族元素は、例えばカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)であり、12族元素は例えば亜鉛(Zn)である。4族元素は、例えばチタン、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)である。5族元素は、例えばタンタル、ニオブ(Nb)またはバナジウム(V)である。さらに、圧電膜14は、窒化アルミニウムを主成分とし、ボロン(B)を含んでもよい。
【0034】
挿入膜28は、圧電膜14よりヤング率および/または音響インピーダンスが小さい材料である。挿入膜28は、酸化シリコン以外に、アルミニウム(Al)、金(Au)、銅、チタン、白金、タンタルまたはクロム等の単層膜またはこれらの積層膜を用いることができる。周波数調整膜24としては、酸化シリコン膜以外にも窒化シリコン膜または窒化アルミニウム膜等の窒化金属膜または酸化金属膜を用いることができる。
【0035】
[実施例1の製造方法]
図3(a)から
図3(c)は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の製造方法を示す断面図である。
図3(a)に示すように、基板10上に犠牲層38を例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い成膜する。犠牲層38は、例えば厚さが10nmから100nmの酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、ゲルマニウム(Ge)または酸化シリコン(SiO
2)等である。その後、犠牲層38を、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。犠牲層38の形状は、空隙30の平面形状に相当する形状であり、例えば共振領域50となる領域を含む。犠牲層38および基板10上に下部電極12として下層12aおよび上層12bを例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い成膜する。その後、下部電極12を、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。下部電極12は、リフトオフ法により形成してもよい。
【0036】
図3(b)に示すように、下部電極12および基板10上に下部圧電膜14aを、例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い成膜する。下部圧電膜14a上に挿入膜28を、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い成膜する。挿入膜28を、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。挿入膜28は、リフトオフ法により形成してもよい。
【0037】
図3(c)に示すように、挿入膜28および下部圧電膜14a上に上部圧電膜14bを、例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い成膜する。下部圧電膜14aと上部圧電膜14bにより圧電膜14が形成される。圧電膜14上に上部電極16として下層16aおよび上層16bを例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い成膜する。その後、上部電極16および付加膜17を、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。上部電極16および付加膜17は、リフトオフ法により形成してもよい。上部圧電膜14bをフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。下部圧電膜14aを挿入膜28をマスクにエッチングする。
【0038】
周波数調整膜24を例えばスパッタリング法またはCVD法を用い形成する。フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い周波数調整膜24を所望の形状にパターニングする。その後、孔部35および導入路33(
図1(a)参照)を介し、犠牲層38のエッチング液を下部電極12の下の犠牲層38に導入する。これにより、犠牲層38が除去される。これにより、下部電極12と基板10との間にドーム状の膨らみを有する空隙30が形成される。以上により、
図1(a)および
図1(b)に示した圧電薄膜共振が製造される。
【0039】
[比較例1]
図4は、比較例1に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
図4に示すように、比較例1では領域56に付加膜17は形成されていない。その他の構成は実施例1と同じである。
【0040】
[シミュレーション1]
領域56の幅D5を変え、比較例1における反共振周波数におけるQ値(Qa)をシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
周波数調整膜24:厚さが52nmの酸化シリコン膜
上層16b:厚さが22nmのクロム膜
下層16a:厚さが219nmのルテニウム膜
挿入膜28:厚さが150nmの酸化シリコン膜
圧電膜14:厚さが1163nmのマグネシウム、ハフニウム添加の窒化アルミニウム膜
上層12b:厚さが278nmのルテニウム膜
下層12a:厚さが96nmのクロム膜
基板10:シリコン基板
共振領域50の幅:84μm
シミュレーションは、1800MHzから2100MHzの交流電圧を下部電極12と上部電極16との間に印加しアドミッタンスの周波数依存を算出した。算出結果をmBVDモデルでフィッティングし、Qaを算出した。
【0041】
図5は、シミュレーション1における幅D5に対するQaを示す図である。
図5に示すように、領域56の幅D5が変化すると反共振周波数におけるQ値Qaが変化する。下部電極12に電気的に接続するためには下部電極12上の圧電膜14を例えばエッチング法を用い除去する。圧電膜14をエッチングするときのサイドエッチング量はウエハ内およびウエハ間で変動する。特に、圧電膜14の厚さが付加膜17に比べ厚いとき、および/または、圧電膜14をウェットエッチング法を用いエッチングするとき、圧電膜14のサイドエッチング量が変動しやすい。このため、D5が変動し、Q値等の特性の変動が大きくなる。
【0042】
[シミュレーション2]
次に、1個の付加膜17を設けた圧電薄膜共振器についてシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
付加膜17の個数:1個
領域56の幅D5:50μm
付加膜17の幅D1および共振領域50と付加膜17と間の領域56cの幅D3を変えた。その他のシミュレーション条件はシミュレーション1と同じである。
【0043】
図6は、シミュレーション2における幅D1とD3に対するQaを示す図である。
図6に示すように、おおむね幅D1と幅D3の和に対しQaが変動している。Qaが極大となるのは、D1=1.8μmおよびD3=2.2μmのときである。
【0044】
[シミュレーション3]
一定の周期で付加膜17の個数を変え圧電薄膜共振器についてシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
付加膜17の幅D1:1.8μm
領域56bおよび56cの幅D2、D3:2.2μm
付加膜17の個数および領域56dの幅D4を変化させた。その他のシミュレーション条件はシミュレーション1と同じである。
【0045】
図7(a)および
図7(b)は、シミュレーション3におけるD4に対するQaを示す図である。
図7(a)は、付加膜17の個数が、0、1、2および3個を示し、
図7(b)は、付加膜17の個数が、0、4、5および6個を示す。付加膜17の個数が0個のときの横軸はD5である。各ドットはシミュレーション点を示し、各線はドットをつなぐ線である。
【0046】
図7(a)および
図7(b)に示すように、付加膜17の個数が0個に比べ、付加膜17の個数を増やすとQaが大きくなる。また、D4またはD5に対するQaの変動が小さくなる。
【0047】
図8は、シミュレーション3における付加膜の個数に対するQaの平均および標準偏差を示す図である。Qa平均のドットに付加されたエラーバーは最大値および最小値を示す。
図8に示すように、付加膜17の個数が増えるとQaの平均値が大きくなる。また、付加膜17の個数が増えるとQaの標準偏差およびエラーバーの大きさが小さくなる。
【0048】
共振領域50から横方向(圧電膜14の平面方向)に伝搬する弾性波(横モード弾性波)が漏洩するとQ値等が低下する。挿入膜28の内周において横モード弾性波が反射することでQ値等を向上できる。付加膜17を設けると共振領域50の外周、付加膜17の両端部で横モード弾性波が反射する。さらに、付加膜17の個数を増やすと横モード弾性波が反射する箇所が増えるためQ値等を向上できると考えられる。
【0049】
シミュレーション1において、D5に対するQaの変動が大きくなる理由は、圧電膜14の端面62で反射した横モード弾性波の位相が幅D5によって変わるためと考えられる。付加膜17の個数を増やすと、端面62まで到達する横モード弾性波が減るため、D4を変えてもQaの変動は小さいと考えられる。付加膜17の個数が増えれば、端面62まで到達する横モード弾性波が減るため、Qaの変動はより小さくなると考えられる。
【0050】
共振領域50、付加膜17が設けられていない領域56bから56dおよび付加膜17が設けられた領域56aにおける横モード弾性波の波数を、板波の分散特性から算出した。波数から反共振周波数を1906MHzとして横モード弾性波の波長を算出した。
【0051】
表1は、各領域における横モード弾性波の波数および波長を示す表である。
【表1】
【0052】
表1に示すように、領域56bから56dでは共振領域50より横モード弾性波の波長が長く、領域56aでは共振領域50より横モード弾性波の波長が短い。
図6において、Qaが極大となるD3=2.2μmは表1の領域56aの横モード弾性波の波長の1/2に近く、D1=1.8μmは表1の領域56bから56dの横モード弾性波の波長の1/2に近い。このように、幅D1からD3が横モード弾性波の波長の1/2に近いとQ値等が向上する。
【0053】
以上の観点から、幅D1は、領域56aにおける横モード弾性波の波長の0.2倍以上かつ0.8倍以下が好ましく、0.3倍以上かつ0.7倍以下がより好ましく、0.4倍以上かつ0.6倍以下がさらに好ましい。幅D2およびD3は、領域56bおよび56cにおける横モード弾性波の波長の0.2倍以上かつ0.8倍以下が好ましく、0.3倍以上かつ0.7倍以下がより好ましく、0.4倍以上かつ0.6倍以下がさらに好ましい。
【0054】
共振領域50における縦モードの弾性波の波長は下部電極12、圧電膜14および上部電極16の厚さの合計である1.78μmのほぼ2倍である。周波数調整膜24は他の層に比べ薄いため無視した。幅D1からD3を横モード弾性波の波長の0.2倍以上かつ0.8倍以下とするためには、幅D1からD3を下部電極12、圧電膜14および上部電極16の厚さの0.2倍以上かつ1.2倍以下とすることが好ましく、0.3倍以上かつ1.1倍以下とすることがより好ましく、0.6倍以上かつ1.0倍以下とすることがさらに好ましい。
【0055】
付加膜17における下層16aの厚さを変え、領域56aにおける横モード弾性波の波数および波長を算出した。表2は、付加膜17の下層16aの厚さT16a、付加膜17の厚さT17の領域56aにおける積層膜18(下部電極12、圧電膜14および挿入膜28)の厚さTに対する比T17/T、波数、波長および領域56bおよび56cにおける波数との波数差を示す表である。周波数調整膜24の厚さは無視した。
【表2】
【0056】
表2に示すように、付加膜17が厚くなると、波数が大きくなり波長は小さくなる。領域56aと領域56bからd56dとの波数差が大きくなると横モード弾性波の音響インピーダンス差が大きくなる。このため、領域56aと領域56bから56dとの境界における横モード弾性波の反射率が大きくなる。これにより、Q値等がより向上する。また、波数が大きくなると幅D1を小さくできるため小型化が可能となる。
【0057】
以上の観点から付加膜17の厚さT17は積層膜18の厚さTの0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましい。付加膜17が厚くなると付加膜17の加工精度が悪くなる。よってT17/Tは1以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0058】
図9(a)から
図15(b)は、それぞれ実施例1の変形例1から20に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
【0059】
[実施例1の変形例1]
図9(a)に示すように、実施例1の変形例1では、領域56aにおいて、付加膜15は圧電膜14上に設けられ、圧電膜14と同じ材料からなる。領域56bから56dには付加膜15は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0060】
[実施例1の変形例2]
図9(b)に示すように、実施例1の変形例2では、領域56aにおいて、付加膜27は挿入膜28と上部圧電膜14bとの間に設けられ、挿入膜28と同じ材料からなる。領域56bから56dには付加膜27は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0061】
[実施例1の変形例3]
図9(c)に示すように、実施例1の変形例3では、領域56aにおいて、付加膜13は下部電極12と圧電膜14との間に設けられ、下部電極12の上層12bと同じ材料からなる。領域56bから56dには付加膜13は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0062】
[実施例1の変形例4]
図10(a)に示すように、実施例1の変形例4では、領域56aにおいて、付加膜13は下部電極12の下層12aと上層12bとの間に設けられ、下部電極12の下層12aと同じ材料からなる。領域56bから56dには付加膜13は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0063】
実施例1およびその変形例1から4では、領域56内の共振領域50に接する領域は付加膜13、15、17または27が設けられていない領域56cである。領域56bから56dの下部電極12、挿入膜28および圧電膜14の材料および厚さは共振領域50内の下部電極12、挿入膜28および圧電膜14の材料および厚さとそれぞれ実質的に同じである。領域56aでは、領域56bから56dの積層膜18に加え付加膜13、15、17または27が設けられている。付加膜13、15、17または27は積層膜18内または積層膜18上に設けられていればよい。付加膜の材料は接する層と同じ材料でもよいし、異なる材料でもよい。
図9(b)から
図10(a)では、付加膜27および13より上の層の上面が領域56内で平坦であるが、付加膜27および13より上の層の上面に付加膜27および13に対応する凹凸が形成されていてもよい。
【0064】
[実施例1の変形例5]
図10(b)に示すように、実施例1の変形例5では、領域56aにおいて、圧電膜14の上面に溝15aが設けられている。領域56bから56dには溝15aは設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0065】
[実施例1の変形例6]
図10(c)に示すように、実施例1の変形例6では、領域56aにおいて、挿入膜28に溝27aが設けられている。領域56bから56dには溝27aは設けられていない。溝27aは挿入膜28を貫通している。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0066】
[実施例1の変形例7]
図11(a)に示すように、実施例1の変形例7では、領域56aにおいて、下部電極12の上層12bの上面に溝13aが設けられている。領域56bから56dには溝13aは設けられていない。溝13aは上層12bを貫通していない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0067】
[実施例1の変形例8]
図11(b)に示すように、実施例1の変形例8では、領域56aにおいて、基板10の上面に溝11aが設けられている。領域56bから56dには溝11aは設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0068】
実施例1の変形例5から8では、領域56内の共振領域50に接する領域は溝11a、13a、15aまたは27aが設けられていない領域56cである。領域56bから56dの下部電極12、挿入膜28および圧電膜14の材料および厚さは共振領域50内の下部電極12、挿入膜28および圧電膜14の材料および厚さとそれぞれ実質的に同じである。領域56aでは、領域56bから56dの積層膜18の少なくとも1つの層に溝11a、13a、15aまたは27aが設けられている。
図10(c)から
図11(b)では、溝11a、13aおよび27aより上の層の上面が領域56内で平坦であるが、溝11a、13aおよび27aより上の層の上面には溝11a、13aおよび27aに対応する凹凸が形成されていてもよい。
【0069】
[実施例1の変形例9]
図11(c)に示すように、実施例1の変形例9では、挿入膜28が設けられていない。領域56aにおいて、圧電膜14上に付加膜17が設けられている。領域56bから56dには付加膜17は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0070】
[実施例1の変形例10]
図12(a)に示すように、実施例1の変形例10では、挿入膜28が設けられていない。領域56aにおいて、付加膜15は圧電膜14上に設けられ、圧電膜14と同じ材料からなる。領域56bから56dには付加膜15は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0071】
[実施例1の変形例11]
図12(b)に示すように、実施例1の変形例11では、挿入膜28が設けられていない。領域56aにおいて、付加膜13は下部電極12と圧電膜14との間に設けられ、下部電極12の上層12bと同じ材料からなる。領域56bから56dには付加膜13は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0072】
[実施例1の変形例12]
図12(c)に示すように、実施例1の変形例12では、挿入膜28が設けられていない。領域56aにおいて、付加膜13は下部電極12の下層12aと上層12bとの間に設けられ、下部電極12の下層12aと同じ材料からなる。領域56bから56dには付加膜13は設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0073】
[実施例1の変形例13]
図13(a)に示すように、実施例1の変形例13では、挿入膜28が設けられていない。領域56aにおいて、圧電膜14の上面に溝15aが設けられている。領域56bから56dには溝15aは設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0074】
[実施例1の変形例14]
図13(b)に示すように、実施例1の変形例14では、挿入膜28が設けられていない。領域56aにおいて、下部電極12の上層12bの上面に溝13aが設けられている。領域56bから56dには溝13aは設けられていない。溝13aは上層12bを貫通していない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0075】
[実施例1の変形例15]
図13(c)に示すように、実施例1の変形例15では、挿入膜28が設けられていない。領域56aにおいて、基板10の上面に溝11aが設けられている。領域56bから56dには溝11aは設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0076】
実施例1の変形例9から15のように、共振領域50および領域56に挿入膜28は設けられていなくてもよい。
【0077】
[実施例1の変形例16]
図14(a)に示すように、実施例1の変形例16では、付加膜17dは領域56aおよび56bに設けられ、領域56cおよび56dには設けられていない。付加膜17cは領域56aに設けられ、領域56bから56dには設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0078】
[実施例1の変形例17]
図14(b)に示すように、実施例1の変形例17では、付加膜17の厚さが共振領域50側から端面64側にかけて小さくなる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0079】
[実施例1の変形例18]
図14(c)に示すように、実施例1の変形例18では、付加膜17の厚さが共振領域50側から端面64側にかけて大きくなる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0080】
実施例1の変形例16から18のように、付加膜の厚さは均一でなくてもよい。実施例1およびその変形例1から15においても付加膜の厚さまたは溝の深さは均一でなくてもよい。
【0081】
[実施例1の変形例19]
図15(a)は、実施例1の変形例19に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
図15(a)に示すように、基板10の上面に窪みが形成されている。下部電極12は、基板10上に平坦に形成されている。これにより、空隙30が、基板10の窪みに形成されている。空隙30は共振領域50を含むように形成されている。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。空隙30は、基板10を貫通するように形成されていてもよい。
【0082】
[実施例1の変形例20]
図15(b)は、実施例1の変形例20に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
図15(b)に示すように、共振領域50の下部電極12下に音響反射膜31が形成されている。音響反射膜31は、音響インピーダンスの高い膜31aと音響インピーダンスの低い膜31bとが交互に設けられている。膜31aおよび31bの膜厚は例えばそれぞれほぼλ/4(λは弾性波の波長)である。膜31aと膜31bの積層数は任意に設定できる。音響反射膜31は、音響特性の異なる少なくとも2種類の層が間隔をあけて積層されていればよい。また、基板10が音響反射膜31の音響特性の異なる少なくとも2種類の層のうちの1層であってもよい。例えば、音響反射膜31は、基板10中に音響インピーダンスの異なる膜が一層設けられている構成でもよい。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0083】
実施例1およびその変形例1から19のように、圧電薄膜共振器は、共振領域50において空隙30が基板10と下部電極12との間に形成されているFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)でもよい。また、実施例1の変形例20のように、圧電薄膜共振器は、共振領域50において下部電極12下に圧電膜14を伝搬する弾性波を反射する音響反射膜31を備えるSMR(Solidly Mounted Resonator)でもよい。音響反射層は、空隙30または音響反射膜31を含めばよい。
【0084】
実施例1およびその変形例1から8および16から20において、挿入膜28が共振領域50の外周領域52に設けられているが、挿入膜28は共振領域50の中央領域54を囲むように外周領域52の少なくとも一部に設けられていればよい。挿入膜28は共振領域50の外側に設けられてなくてもよい。挿入膜28は、共振領域50内の少なくとも一部に設けられていればよい。実施例1およびその変形例において、共振領域50の平面形状として楕円形状を例に説明したが、四角形状または五角形状等の多角形状でもよい。
【0085】
実施例1およびその変形例によれば、付加膜13、15、17および27または溝11a、13aおよび15aは、領域56(すなわち共振領域50の外周のうち上部電極16の外周で規定される外周と圧電膜14の端面62との間の領域)における積層膜18に共振領域50から離れて設けられ、共振領域50との間には設けられていない。これにより、共振領域50から平面方向に伝搬する横モード弾性波が共振領域50の外周、付加膜または溝の共振領域50側の端部、および付加膜または溝の端面62側の端部の少なくとも3箇所で反射される。これにより、横モード弾性波の共振領域50外への漏洩が抑制され、Q値等の特性が向上する。また、端面62まで伝搬する弾性波が少なくなるため、端面62の位置の変動に起因する特性の変動が抑制され、特性が安定化する。
【0086】
付加膜または溝の幅D1および共振領域50と付加膜または溝との間の幅D3は、共振領域50における下部電極12、圧電膜14および上部電極16の合計の厚さの0.2倍以上かつ1.5倍以下である。これにより、少なくとも3箇所で反射された弾性波の位相が異なる。よって、Q値等の特性がより向上し、特性がより安定化する。D1およびD3は、各々下部電極12、圧電膜14および上部電極16の合計の厚さの0.3倍以上かつ1.1倍以下とすることがより好ましく、0.6倍以上かつ1.0倍以下とすることがさらに好ましい。
【0087】
幅D3は、共振領域50と付加膜または溝との間の領域56cにおける平面方向に伝搬する弾性波の波長の0.2倍以上かつ0.8倍以下である。幅D1は、付加膜または溝が設けられた領域56aにおける平面方向に伝搬する弾性波の波長の0.2倍以上かつ0.8倍以下である。これにより、少なくとも3箇所で反射された弾性波の位相が異なる。よって、Q値等の特性がより向上し、特性がより安定化する。D1およびD3は、各々平面方向に伝搬する弾性波の波長の0.3倍以上かつ0.7倍以下がより好ましく、0.4倍以上かつ0.6倍以下がさらに好ましい。
【0088】
付加膜の厚さまたは溝の深さは、下部電極12および圧電膜14の合計の厚さの0.05倍以上である。これにより、付加膜または溝の両端部での弾性波の反射率が大きくなる。よって、Q値等の特性がより向上し、特性がより安定化する。付加膜の厚さまたは溝の深さは、下部電極12および圧電膜14の合計の厚さの0.1倍以上がより好ましい。付加膜の厚さまたは溝の深さは、下部電極12および圧電膜14の合計の厚さの1以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0089】
付加膜または溝は、基板10と積層膜18との間、積層膜18内または積層膜18上に設けられた付加膜13、15、17および27を含んでもよいし、基板10の積層膜18側の面または積層膜18が含む層に設けられた溝11a、13aおよび15aを含んでもよい。
【0090】
付加膜または溝は、共振領域50と圧電膜14の端面62とを結ぶ方向に互いに離れて複数設けられている。これにより、Q値等の特性がより向上し、特性がより安定化する。付加膜または溝は、3個以上設けられていることが好ましく、4個以上設けられていることが好ましい。個数が多くなると大型化するため、付加膜または溝は、10個以下が好ましい。
【0091】
中央領域54に設けられておらず、共振領域50内において共振領域50の外周に沿って中央領域54の少なくとも一部を囲うように、下部電極12と上部電極16との間に挿入され挿入膜28を備えてもよい。これにより、Q値をより向上できる。