【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図2(a)および
図2(b)は、
図1のA−A断面図である。
図1は、主に基板10、下部電極12、圧電膜14および上部電極16を図示している。
【0023】
図1から
図2(b)に示すように、基板10の上面に凹部が設けられ、凹部は空隙30を形成する。空隙30上に下部電極12が設けられている。下部電極12上に圧電膜14が設けられている。圧電膜14上に上部電極16が設けられている。積層膜18は、下部電極12、圧電膜14および上部電極16を含む。積層膜18の下面および上面は反射面54および55である。反射面54は積層膜18と空隙30との界面であり、反射面55は積層膜18と空隙(空気)との界面である。積層膜18内には下部電極12、圧電膜14および上部電極16以外の付加膜が設けられていてもよい。
【0024】
圧電膜14の少なくとも一部を挟み下部電極12と上部電極16とが対向する領域は共振領域50である。共振領域50内では弾性波が反射面54と55とで反射する。これにより、共振領域50内の積層膜18では厚み縦振動が共振する。厚み縦振動の波長はほぼ積層膜18の厚さの2倍となる。共振領域50の平面形状は略矩形であり、短辺がL1であり、長辺がL2である。平面視において空隙30は共振領域50より大きく、空隙30の外周は共振領域50の外周より外側に位置している。共振領域50の外周と空隙30の外周との間は外周領域56である。空隙30の外周の外側であって圧電膜14が設けられた領域は支持領域58である。
【0025】
共振領域50内に複数の凹部52または複数の凸部51が設けられている。
図2(a)では、複数の凹部52が島状に設けられている。
図2(b)では、複数の凸部51が島状に設けられている。凸部51および凹部52の周期Pは、横方向(すなわち圧電膜14の平面方向)に伝搬する横モード弾性波60の波長λの略1/2である。横方向に伝搬する弾性波60の波長λは厚み縦振動モードの弾性波の波長(積層膜18の厚さの2倍)の1倍程度または1倍から数十倍である。凸部51および凹部52の幅Wは周期Pの略1/2である。なお、
図2(a)では、弾性波60を波の振幅として可視化しており、実際の弾性波60を図示したものではない。
【0026】
下部電極12には孔部35が設けられている。孔部35は、下部電極12下の導入路34を介し空隙30に通じている。孔部35および導入路34は、空隙30を形成するときに用いる犠牲層をエッチングするときに、犠牲層にエッチング液を導入するためのものである。
【0027】
基板10としては、例えばシリコン基板、サファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板等の絶縁基板または半導体基板を用いることができる。下部電極12および上部電極16としては、例えばルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)等の単層膜またはこれらの積層膜を用いることができる。
【0028】
圧電膜14は、窒化アルミニウム(AlN)以外にも、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO
3)等を用いることができる。また、例えば、圧電膜14は、窒化アルミニウムを主成分とし、共振特性の向上または圧電性の向上のため他の元素を含んでもよい。例えば、添加元素として、スカンジウム(Sc)、2族元素と4族元素との2つの元素、または2族元素と5族元素との2つの元素を用いることにより、圧電膜14の圧電性が向上する。このため、圧電薄膜共振器の実効的電気機械結合係数を向上できる。2族元素は、例えばカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)または亜鉛(Zn)である。4族元素は、例えばチタン、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)である。5族元素は、例えばタンタル、ニオブ(Nb)またはバナジウム(V)である。さらに、圧電膜14は、窒化アルミニウムを主成分とし、ボロン(B)を含んでもよい。
【0029】
図3(a)は、比較例1における積層膜の断面図、
図3(b)および
図3(c)は、実施例1における積層膜の断面図である。
図3(a)に示すように、比較例1の積層膜18には凸部および凹部は設けられていない。積層膜18内を横モード弾性波60が伝搬する。弾性波60は振幅を可視化したものである。横モード弾性波60が伝搬すると、横モードスプリアスが生成される。
図1のように、共振領域50が略矩形であると、共振領域50の対向する辺で反射した横モード弾性波60が定在波となりスプリアスが生成されやすい。
【0030】
図3(b)に示すように、実施例1では積層膜18に凸部51および凹部52が設けられている。凸部51と凹部52との段差の高さはdである、凹部52の周期Pはλ/2である。凸部51と凹部52の境界では幾何学形状が不連続となるため横モード弾性波60が反射する。よって、凸部51と凹部52の境界は横モード弾性波60の節62となる。凸部51と凹部52の境界は弾性波60の波長λの1/4ごとに配列している。よって、弾性波60は存在できず、横モード弾性波60は伝搬できない。これにより、横モード弾性波60に起因したスプリアスを抑制できる。
【0031】
図3(c)に示すように、実施例1では、凸部51と凹部52とで積層膜18の層構成が略同じである。すなわち、下部電極12の材料および厚さは凸部51と凹部52とで略同じであり、圧電膜14の材料および厚さは凸部51と凹部52とで略同じであり、上部電極16の材料および厚さは凸部51と凹部52とで略同じである。また、積層膜18内に付加膜が設けられている場合、付加膜の材料および厚さは凸部51と凹部52とで略同じである。これにより、凸部51と凹部52において、縦振動モード弾性波64の伝搬特性は略同じである。よって、凸部51と凹部52で例えば共振周波数が同じとなり共振特性の劣化を抑制できる。
【0032】
[シミュレーション]
比較例1および実施例1における横モードスプリアスをシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
下部電極12:厚さが198nmのルテニウム膜
圧電膜14:厚さが981nmの窒化アルミニウム膜
上部電極16:厚さが217nmのルテニウム膜
共振領域50の短辺L1の長さ:80μm
共振領域50の長辺L2の長さ:327μm
共振領域50は、2.5GHzにおいてインピーダンスがほぼ50Ωとなる大きさである。
【0033】
図4(a)から
図4(d)は、シミュレーションしたサンプルAからDを示す断面図である。
図4(a)から
図4(d)では、凸部51および凹部52の1周期の積層膜18を図示している。
【0034】
図4(a)に示すように、サンプルAは比較例1であり、凸部51および凹部52は設けられていない。この構造では、横モード弾性波60の波長λは約18.2μmである。
【0035】
図4(b)に示すように、サンプルBでは、凸部51および凹部52の周期Pをλ/2=9.1μmとした。凸部51の中心と凹部52の中心との距離はλ/4である。凸部51と凹部52との段差の高さdを積層膜18の厚さtの0.15倍とした。
【0036】
図4(c)に示すように、サンプルCでは、凸部51および凹部52の周期Pをλ/2=9.1μmとし、凸部51と凹部52との段差の高さdを積層膜18の厚さtの0.25倍とした。
【0037】
図4(d)に示すように、サンプルDでは、凸部51および凹部52の周期Pを6.05μmとした。これは、約2/3×λ/2に相当する。凸部51と凹部52との段差の高さdを積層膜18の厚さtの0.15倍とした。
【0038】
図5(a)および
図5(b)は、シミュレーション結果を示す周波数に対するインピーダンスの大きさを示す図である。縦軸は任意単位である。
図5(b)は、
図5(a)の範囲65の拡大図である。
図5(a)に示すように、共振周波数frおよび反共振周波数faはサンプルAからDで変わらない。共振周波数frおよび反共振周波数faにおけるインピーダンスの大きさもサンプルAからDで変わらない。このように、サンプルAからDでは、共振特性がほぼ変わらない。これは、凸部51と凹部52とで積層膜18の層構成が略同じためである。
【0039】
図5(b)に示すように、共振周波数frより低い周波数範囲において、4つのスプリアス66aから66dが生成されている。共振周波数frより低い周波数範囲の点線67はスプリアスの生成されていない理想的なインピーダンスを示す。サンプルAに比べサンプルBからDでは、インピーダンスが点線67に近づいておりスプリアスが抑制されている。このように、積層膜18が周期的な凸部51および凹部52を有することで、スプリアスが抑制される。
【0040】
各スプリアス66aから66dについてみると、スプリアス66aでは、サンプルBからDのピークの大きさは同程度であり、サンプルAのピークより小さい。サンプルBからDでは同程度にスプリアス66aを抑制できている。
【0041】
スプリアス66bでは、サンプルBのピークはサンプルAのピークと同程度である。サンプルCのピークはサンプルBのピークより小さく、サンプルDのピークはサンプルCのピークより小さい。
【0042】
スプリアス66cでは、サンプルBおよびDのピークは同程度でありサンプルAのピークより小さい。サンプルCのピークはサンプルBおよびDのピークより小さい。
【0043】
スプリアス66dでは、サンプルBおよびDのピークは同程度でありサンプルAのピークより小さい。サンプルCのピークはサンプルBおよびDのピークより小さい。
【0044】
以上のように、サンプルBからDは、サンプルAよりスプリアス66aから66dのピークが小さく、スプリアス66aから66dを抑制できる。
【0045】
サンプルCをBと比較すると、スプリアス66aでは、サンプルCとBのピークは同程度であるが、スプリアス66bから66dではサンプルCのピークはサンプルBより低い。このように段差の高さdの大きいサンプルCはサンプルBよりスプリアスを抑制できる。
【0046】
サンプルDをBと比較すると、スプリアス66a、66cおよび66dでは、サンプルDとBのピークは同程度であるが、スプリアス66bでは、サンプルDのピークはサンプルBのピークより小さく、サンプルDのピークより小さい。このように、凸部51および凹部52の周期Pの異なるサンプルCでは、特定のスプリアス66bを抑制できる。
【0047】
以上のように、凸部51および凹部52の段差の高さdは積層膜18の厚さtの0.1倍以上が好ましく、0.15倍以上がより好ましく、0.25倍以上がさらに好ましい。高さdが大きすぎると凸部51と凹部52の間で圧電膜14が破断する。このため、高さdは厚さtの0.9倍以下が好ましく、0.7倍以下がより好ましく、0.5倍以下がさらに好ましい。
【0048】
凸部51および凹部52の周期Pを横モード弾性波60の波長λの1/2程度が好ましい。抑制するスプリアスにより周期Pは例えばλ/4λより大きく3λ/4より小さい範囲で適宜設定できる。
【0049】
[実施例1の変形例1]
図6(a)および
図6(b)は、実施例1の変形例1に係る圧電薄膜共振器の平面図である。
図6(a)に示すように、共振領域50の短辺L1の長さは長辺L2の長さの1/2以下である。
図6(b)に示すように、共振領域50の短辺L1の長さは長辺L2の長さの1/3以下である。
【0050】
下部電極12と上部電極16との間に大電力の高周波信号が加わると、共振領域50の積層膜18は発熱する。共振領域50の周縁部では積層膜18を熱が伝導し基板10に放熱されやすい。共振領域50の中央部では共振領域50の外周までの距離が長いため、熱が放射されにくい。これにより、共振領域50の中央部の積層膜18の温度が上昇すると、積層膜18が破壊されてしまう。このため、耐電力性が低下する。
【0051】
そこで、実施例1の変形例1のように、短辺L1を長辺L2の1/2以下または1/3以下とする。これにより、共振領域50の中央部と共振領域50の外周との距離が短くなり共振領域50の中央部からの放熱性が向上する。よって、耐電力性が向上する。
【0052】
しかし、共振領域50の短辺L1が短くなると、長辺L2間に横モード弾性波60の大きな振幅を有する定在波が存在しやすくなる。これにより、スプリアスが生成されやすくなる。そこで、積層膜18が短辺L1の延伸方向に周期Pを有する凸部51および凹部52を有する。これにより、スプリアスを抑制できる。
【0053】
[実施例1の変形例2]
図7(a)は、実施例1の変形例2に係る圧電薄膜共振器の平面図である。
図7(a)に示すように、共振領域50の凸部51または凹部52は不規則に設けられている。これにより、複数の横モード弾性波について共振領域50内に大きな振幅を有する定在波が存在しにくくなる。よって、スプリアスを抑制できる。
【0054】
[実施例1の変形例3]
図7(b)は、実施例1の変形例3に係る圧電薄膜共振器の平面図である。
図7(b)に示すように、共振領域50の凸部51または凹部52の平面形状は少なくとも1組の平行な対向する辺を有さない多角形状である。これにより、凸部51と凹部52との境界において反射した横モードの弾性波は凸部51または凹部52内で反射を繰り返すため大きな振幅を有する定在波が存在しにくくなる。よって、スプリアスを抑制できる。
【0055】
[実施例1の変形例4]
図8(a)は、実施例1の変形例4に係る圧電薄膜共振器の平面図である。
図8(a)に示すように、共振領域50の平面形状は略矩形であり、短辺L1の長さは長辺L2の長さの1/2以下である。このように、短辺L1が長辺L2より非常に短いときの長辺L2の延伸方向には横モードの定在波は存在しにくく短辺L1の延伸方向に横モードの定在波が存在しやすい。そこで、凸部51および凹部52は長辺L2の延伸方向に延伸する長方形状でもよい。
【0056】
[実施例1の変形例5]
図8(b)は、実施例1の変形例5に係る圧電薄膜共振器の平面図である。
図8(b)に示すように、共振領域50の平面形状は短軸L3および長軸L4を有する略楕円形状である。凸部51または凹部52は、長軸L4の共振領域50の中心69(短軸L3と長軸L4とが交差する点)近傍に設けられている。凸部51または凹部52の平面形状は三日月状である。
【0057】
共振領域50の平面形状が略楕円形の場合、横モードの定在波は焦点付近に集中する。このため、共振領域50の中心69付近の焦点において積層膜18が発熱しやすくなる。そこで、共振領域50の中心69またはその近傍に凸部51または凹部52を設けることにより、定在波が中心69付近に集中しにくくなる。よって、共振領域50の中心69付近での積層膜18の発熱を抑制できる。よって、耐電力性を改善できる。実施例1と同様にスプリアスも抑制できる。
【0058】
実施例1およびその変形例によれば、共振領域50内において、少なくとも一方は複数である凸部51および凹部52を有し、凸部51と凹部52における積層膜18の層構成は略同じである。積層膜18は、弾性波を反射する反射面54(第1面)と反射面55(第2面)の間で規定され、下部電極12、圧電膜14および上部電極16を含む。
【0059】
これにより、
図5(a)のように、凸部51と凹部52における共振特性がほぼ同じとなる。よって、Q値等の共振特性の劣化を抑制できる。なお、凸部51と凹部52における積層膜18の層構成は略同じであるとは、積層膜18を構成する複数の層の各々の層において、材料が凸部51と凹部52とで略同じであり、厚さが凸部51と凹部52とで略同じことである。材料および厚さが略同じとは、凸部51と凹部52とで同時に積層膜18を形成したときに生じる誤差および製造誤差程度の誤差を許容する。
【0060】
下部電極12の下面が空隙30気(第1空隙)と接し、上部電極16の上面が空気(第2空隙)と接しているとき、反射面54は下部電極12と空隙30との界面に相当し、反射面55は上部電極16と空気との界面に相当する。
【0061】
実施例1およびその変形例1および4のように、複数である凸部51および凹部52の少なくとも一方は、略一定の周期Pで設けられている。これにより、
図5(b)のようにスプリアスを抑制できる。なお、略一定周期Pとは、横方向に伝搬する弾性波の波長λの±1/16程度の誤差を許容する。
【0062】
周期Pは、横方向に伝搬する弾性波60の波長λの1/4より大きくかつ3/4より小さい。これにより、横モードの弾性波60の定在波の存在を抑制し、スプリアスを抑制できる。略一定の周期Pは、横方向に伝搬する弾性波60の波長λの3/8より大きくかつ5/8より小さいことが好ましい。横方向に伝搬する弾性波60の波長を縦振動の弾性波の波長と同程度とすると、周期Pは、積層膜18の厚さの1/2より大きくかつ3/2より小さいことが好ましく、3/4より大きくかつ5/4より小さいことがより好ましい。
【0063】
共振領域50の平面形状は略矩形であり、略一定の周期Pの方向は略矩形の短辺L1に略平行である。これにより、スプリアスが生成されやすい短辺L1のスプリアスを抑制できる。なお、略平行とはスプリアスが抑制できる程度の誤差を許容する。周期Pの方向と短辺L1の延伸方向のなす角度は例えば±20°の範囲である。
【0064】
実施例1の変形例2のように、複数である凸部51および凹部52の少なくとも一方は不規則に(すなわち周期性を有さず)設けられていてもよい。これにより、複数の横モードのスプリアスを抑制できる。
【0065】
実施例1およびその変形例1、2および4において、凸部51または凹部52の平面形状として略正方形および略長方形の例を説明したが、凹部52の平面形状は、略円、略長円、略楕円でもよい。
【0066】
実施例1の変形例3のように、複数である凸部51および凹部52の少なくとも一方の平面形状は少なくとも1組の平行でない対向する辺を有する多角形状でもよい。これにより、複数の横モードのスプリアスを抑制できる。
【0067】
実施例1の変形例5のように、複数である凸部51および凹部52の少なくとも一方は共振領域50の中心69(例えば重心)またはその近傍に設けられていてもよい。共振領域50の中心69には定在波が集まりやすい。そこで、共振領域50の中心69に凸部51または凹部52を設けることで、共振領域50の中心69付近での積層膜18の発熱を抑制できる。
【0068】
共振領域50の平面形状が略楕円形のとき、共振領域50の楕円形の焦点に定在波が集まりやすい。そこで、共振領域50の中心69近傍の焦点に凸部51または凹部52を設けることが好ましい。
【実施例2】
【0069】
図9(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスの平面図、
図9(b)は、
図9(a)のA−A断面図である。
図9(a)および
図9(b)に示すように、反射面54と55との間の積層膜18に付加膜20が設けられている。圧電膜14には凸部および凹部は設けられていない。付加膜20の周期Pは横モード弾性波60の波長λの略1/2である。付加膜20の幅W、は周期Pの略1/2である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0070】
図10(a)は、比較例1における積層膜の断面図、
図10(b)および
図10(c)は、実施例2における積層膜の断面図である。
図10(a)に示すように、
図3(a)において説明したように、比較例1では横モード弾性波60が定在波となりスプリアスが生成されやすい。
【0071】
図10(b)に示すように、実施例2では上部電極16上に周期Pで付加膜20が設けられている。周期Pはλ/2である。付加膜20が設けられている領域53aと設けられていない領域53bでは、音響インピーダンスが異なる。このため、領域53aと53bとの境界では幾何学形状が不連続となるため横モード弾性波60が反射する。よって、実施例1の
図3(b)と同様に、弾性波60は存在できず、横モード弾性波60は伝搬できない。これにより、横モード弾性波60に起因したスプリアスを抑制できる。
【0072】
図10(c)に示すように、実施例2では、領域53aと53bとで積層膜18の厚さが異なる。このため、領域53aの縦振動の弾性波64aの伝搬特性と領域53bの縦振動の弾性波64bの伝搬が異なる。例えば、領域53aと53bとの共振周波数が異なる。これにより、実施例1に比べQ値等の共振特性が低下する。
【0073】
実施例2によれば、複数の付加膜20は、積層膜18内に、横方向に伝搬する弾性波の波長λの1/4より大きくかつ3/4より小さい周期で設けられている。これにより、横モード弾性波60に起因したスプリアスを抑制できる。周期Pは、横方向に伝搬する弾性波60の波長λの3/8より大きくかつ5/8より小さいことが好ましい。横方向に伝搬する弾性波60の波長を縦振動の弾性波の波長と同程度とすると、周期Pは、積層膜18の厚さの1/2より大きくかつ3/2より小さいことが好ましく、3/4より大きくかつ5/4より小さいことがより好ましい。
【0074】
複数の付加膜20は、略一定の周期Pで設けられている。これにより、スプリアスをより抑制できる。なお、実施例1と同様に、略一定周期Pとは、横方向に伝搬する弾性波の波長λの±1/16程度の誤差を許容する。
【0075】
共振領域50の平面形状は略矩形であり、略一定の周期Pの方向は略矩形の短辺L1の延伸方向に略平行である。これにより、スプリアスが生成されやすい短辺L1のスプリアスを抑制できる。なお、略平行とはスプリアスが抑制できる程度の誤差を許容する。周期Pの方向と短辺L1の延伸方向のなす角度は例えば±20°の範囲である。
【0076】
実施例1、2およびその変形例では、基板10の上面に空隙30となる凹部が設けられている場合を例に説明したが、基板10の上面は平坦であり、空隙はドーム状の膨らみを有していてもよい。
【0077】
また、実施例1、2およびその変形例では、反射面54が積層膜18と空隙30の界面の例を説明したが、反射面54は積層膜18と弾性波を反射する音響反射膜との界面でもよい。音響反射膜は、音響インピーダンスの高い膜と音響インピーダンスの低い膜とが交互に設けられている。音響インピーダンスの高い膜と音響インピーダンスの低い膜との膜厚は例えばそれぞれほぼ縦振動の弾性波の波長の1/4である。
【0078】
共振領域50の平面形状として略矩形または略楕円形の例を説明したが、共振領域50の平面形状は略五角形等の略多角形でもよい。少なくとも1組の対向する辺が平行でない略多角形でもよい。