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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-202643(P2020-202643A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】回転機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/04 20060101AFI20201120BHJP
【FI】
   H02P23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-107493(P2019-107493)
(22)【出願日】2019年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】北野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】後 伸昌
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505GG04
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ17
5H505JJ25
5H505LL22
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によって、回転機のトルクリップルを精度良く抑制可能な制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置1は、制御周期ごとに、次の制御周期においてモータ2に流れる電流の予測値Iaを求める電流予測部と、前記制御周期ごとに、次の制御周期におけるモータ2の電気角予測値θaを求める電気角予測部と、入力されるトルク指令、電流予測値Ia及び電気角予測値θaを用いて、モータ2のトルクリップルを低減する電流指令を生成する電流指令生成部15と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機の駆動を制御する制御装置であって、
制御周期ごとに、次の制御周期で前記回転機に流れる電流の予測値を求める電流予測部と、
前記制御周期ごとに、次の制御周期における前記回転機の電気角予測値を求める電気角予測部と、
入力されるトルク指令、前記電流予測値及び前記電気角予測値を用いて、前記回転機のトルクリップルを低減する電流指令を生成する電流指令生成部と、
を有する、回転機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機の制御装置において、
前記電流指令生成部は、前記トルク指令に、前記電流予測値及び前記電気角予測値を用いて生成される電流指令補正値を考慮することにより、前記電流指令を生成する、回転機の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転機の制御装置において、
前記電流指令生成部は、
前記回転機のモデルを用いたシミュレーションにより得られる、電気角とトルクとの関係から、前記電気角予測値を用いて電流補正信号を生成する補正信号生成部と、
前記電流予測値を考慮して、前記電流補正信号からトルク指令を補正する前記電流指令補正値を生成する指令補正値生成部と、
前記トルク指令に前記電流指令補正値を考慮することにより前記電流指令を生成する指令信号生成部と、
を有する、回転機の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の回転機の制御装置において、
前記電流予測部は、前記制御周期ごとに、前記回転機で検出される電流値と、前記回転機に対する電圧指令と、前記回転機の電気角とに基づいて、前記電流予測値を求める、回転機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機の駆動を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車及び航空機等の電動化に伴って、モータの大容量及び高出力化が求められている。一般的に、永久磁石モータなどのモータでは、回転子の回転位置によってトルクが変動するトルクリップルが生じる。
【0003】
これに対し、モータの実機のデータに基づいてテーブルデータ等を生成し、該テーブルデータ等を用いてトルクリップルを抑制する方法が提案されている。このようにトルクリップルを抑制する装置として、例えば特許文献1には、軸トルク検出値に基づいて、トルク脈動を抑制するためのトルク脈動補償電流を学習してテーブル化し、そのテーブルを用いてトルク脈動補償制御を行うトルク脈動抑制システムが開示されている。
【0004】
詳しくは、前記トルク脈動抑制システムは、前記軸トルク検出値からトルク脈動周波数成分を抽出し、これを基にトルク脈動補償電流を学習してテーブル化するコントローラを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−50118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の特許文献1に開示されている構成のように、コントローラが回転機のトルクリップルを抑制するためにトルク脈動補償電流を学習する場合、前記コントローラとして、学習機能を有する高性能なハードウェアが必要になる。また、回転機の実機においてトルクリップルを計測する必要があるため、前記回転機の実機の作製、トルクリップルの計測及び学習のためのシステム構築などが必要になる。
【0007】
一般的に、回転機の電流制御として、PI制御が用いられている。PI制御では、現在の電流値と指令値との差分から電圧指令を算出し、前記差分がゼロになるように比例積分制御を行う。このようなPI制御では、前記電圧指令の算出や、前記電圧指令に対する電流値の検出タイミングの遅れなどにより、制御の応答遅れが生じる。
【0008】
そのため、PI制御によって得られた値を、回転機のトルクリップルを抑制する制御に用いた場合、トルクリップルをあまり抑制できない場合がある。
【0009】
本発明の目的は、簡易な構成によって、回転機のトルクリップルを精度良く抑制可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、回転機の駆動を制御する制御装置である。この制御装置は、制御周期ごとに、次の制御周期で前記回転機に流れる電流の予測値を求める電流予測部と、前記制御周期ごとに、次の制御周期における前記回転機の電気角予測値を求める電気角予測部と、入力されるトルク指令、前記電流予測値及び前記電気角予測値を用いて、前記回転機のトルクリップルを低減する電流指令を生成する電流指令生成部と、を有する(第1の構成)。
【0011】
このように、制御周期ごとに、次の制御周期における電流予測値及び電気角予測値を求め、トルク指令、前記電流予測値及び前記電気角予測値を用いて回転機のトルクリップルを低減する電流指令を生成することにより、前記トルクリップルを効果的に抑制することができる。すなわち、前記電流予測値及び前記電気角予測値は、PI制御で得られる電流値及び電気角のような遅れがないため、トルクリップルによってトルクが変動するタイミングに対してずれることなく、前記トルクリップルを低減する電流指令を生成することができる。
【0012】
しかも、上述の構成により、トルクリップル抑制のための学習を行う必要がないため、学習機能を有する制御装置のように高性能なハードウェアが不要である。よって、学習制御を行う場合に比べて、簡易な構成によって、回転機のトルクリップルを抑制することができる。
【0013】
したがって、上述の簡易な構成によって、回転機のトルクリップルを精度良く抑制可能な制御装置が得られる。
【0014】
前記第1の構成において、前記電流指令生成部は、前記トルク指令に、前記電流予測値及び前記電気角予測値を用いて生成される電流指令補正値を考慮することにより、前記電流指令を生成する(第2の構成)。
【0015】
これにより、電流予測値及び電気角予測値を用いて生成される電流指令補正値によって、回転機のトルクリップルを抑制するような電流指令を生成して、該電流指令に基づいて回転機を駆動することができる。よって、前記回転機に対して、遅れのない電流制御を行うことができる。
【0016】
前記第2の構成において、前記電流指令生成部は、前記回転機のモデルを用いたシミュレーションにより得られる、電気角とトルクとの関係から、前記電気角予測値を用いて電流補正信号を生成する補正信号生成部と、前記電流予測値を考慮して、前記電流補正信号からトルク指令を補正する前記電流指令補正値を生成する指令補正値生成部と、前記トルク指令に前記電流指令補正値を考慮することにより前記電流指令を生成する指令信号生成部と、を有する(第3の構成)。
【0017】
これにより、回転機のモデルを用いたシミュレーションによって、予め電気角とトルクとの関係を求めて、その関係から電気角予測値を求めることができる。すなわち、制御装置とは別の装置によって前記関係を求めることができるので、前記制御装置を高性能なハードウェアによって構成する必要がない。よって、簡単な制御装置の構成によって、回転機のトルクリップルを抑制することができる。
【0018】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記電流予測部は、前記制御周期ごとに、前記回転機で検出される電流値と、前記回転機に対する電圧指令と、前記回転機の電気角とに基づいて、前記電流予測値を求める(第4の構成)。これにより、次の制御周期の電流予測値を精度良く求めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態に係る回転機の制御装置によれば、トルク指令と、次の制御周期において回転機に流れる電流予測値と、次の制御周期における電気角予測値とを用いて、トルクリップルを低減する電流指令を生成する。これにより、簡単な構成によって、回転機のトルクリップルを精度良く抑制可能な制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、電流制御部の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、トルクリップルの一例を示す図である。
図4図4は、トルクリップルを打ち消すようなq軸電流の一例を示す図である。
図5図5は、トルクリップルの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態の制御装置によって駆動されるモータのトルクの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置1の概略構成を示す図である。この制御装置1は、モータ2(回転機)の駆動を制御する装置である。本実施形態の制御装置1は、モータ2に生じるトルクリップルを抑制するように、モータ2の駆動を制御する。制御装置1は、トルク指令、モータ2の機械角θから算出された電気角θ及び3相の電流Iu、Iv、Iwに基づいて電圧指令を生成し、該電圧指令を、モータ2を駆動させる主回路3に出力する。
【0023】
モータ2は、例えば、永久磁石モータである。特に図示しないが、モータ2は、永久磁石を有する回転子と、ステータコアのティースに巻線された3相のコイルを有する固定子とを有する。モータ2の構成は、一般的なモータの構成と同様であるため、詳しい説明を省略する。なお、制御装置1の制御対象は、トルクリップルが生じる回転機であれば、モータ以外の回転機であってもよい。
【0024】
モータ2の機械角θは、エンコーダ等の回転角検出器2aによって検出される。回転角検出器2aによって検出された機械角θは、制御装置1の後述する電流制御部11に入力される。
【0025】
主回路3は、複数のスイッチング素子を有し、該複数のスイッチング素子の駆動によって、モータ2の3相のコイルに入力する3相の電流Iu、Iv、Iwを制御する。主回路3は、例えばインバータ回路を含む。主回路3の構成も、一般的な主回路の構成と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0026】
主回路3からモータ2に流れる3相の電流Iu、Iv、Iwは、電流センサ2bによって検出される。電流センサ2bによって検出された3相の電流Iu、Iv、Iwは、制御装置1の後述する電流制御部11に入力される。なお、電流センサ2bは、3相の電流Iu、Iv、Iwのうち、2相の電流のみを検出してもよい。この場合には、残りの1相の電流は、検出した2相の電流から求められる。
【0027】
制御装置1は、入力されるトルク指令、モータ2の機械角θから算出された電気角θ及び3相の電流Iu、Iv、Iwに基づいて、モータ2のトルクリップルを抑制するような電圧指令を生成して主回路3に出力する。
【0028】
具体的には、制御装置1は、電流制御部11と、電流指令生成部15と、角度演算部16とを有する。
【0029】
角度演算部16は、回転角検出器2aによって検出された機械角θから電気角θを演算する。角度演算部15で得られた電気角θは、電流制御部11に入力される。
【0030】
電流制御部11は、モータ2の電気角θ及び3相の電流Iu、Iv、Iwに基づいて電流予測値Iaを算出するとともに、電流予測値Ia及び電気角予測値θaを考慮した電流指令を用いて電圧指令を生成する。電流制御部11は、制御周期Tc及び電気角θの角速度ωを用いて、電気角予測値θaを生成する。
【0031】
図2に、電流制御部11の概略構成をブロック図で示す。電流制御部11は、電流予測部21と、電気角予測部22と、電圧指令生成部23と、3相2相変換部24と、2相3相変換部25とを有する。
【0032】
3相2相変換部24は、3相の電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。3相2相変換部24の構成は、従来の3相2相変換部の構成と同様である。よって、3相2相変換部24の詳しい構成については、説明を省略する。
【0033】
電流予測部21は、後述の電圧指令生成部23で生成される電圧指令、モータ2の電気角θ及び3相の電流Iu、Iv、Iwに基づいて、電流予測値Iaを算出する。具体的には、電流予測部21は、現在の電圧指令Vd、Vqと、3相2相変換部24によって3相の電流Iu、Iv、Iwから求められる電流値Id、Iqと、モータ2の電気角θとに基づいて、次の制御周期で流れる電流の予測値(以下、電流予測値という)Ide(n+1)、Iqe(n+1)を予測する。なお、Vdはd軸電圧指令を意味し、Vqはq軸電圧指令を意味する。
【0034】
電流予測部21は、電流値Id、Iqと、現在の電圧指令Vd、Vqと、モータ2の電気角θとを用いて、以下の(1)式及び(2)式から電流予測値Ide(n+1)、Iqe(n+1)を求める。(1)式及び(2)式は、永久磁石モータの一般的な電圧方程式と前進差分法とから導き出される式である。

【0035】
(1)式及び(2)式において、Vd及びVqは、現在の制御周期におけるd軸電圧指令及びq軸電圧指令である。Id(n)及びIq(n)は、現在の制御周期におけるd軸電流及びq軸電流である。Ide(n+1)及びIqe(n+1)は、電流予測部21によって次の制御周期で流れると予測されたd軸電流予測値及びq軸電流予測値である。Tcは制御周期、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、Rは電機子抵抗、ωは電気角速度、φは電機子鎖交磁束である。
【0036】
このように、電流値Id、Iqと、現在の電圧指令Vd、Vqと、モータ2の電気角θとを用いることにより、次の制御周期における電流予測値を精度良く求めることができる。
【0037】
電流予測部21で求められたd軸電流予測値Ide(n+1)及びq軸電流予測値Iqe(n+1)は、後述する電流指令生成部15に入力されて、電流指令の生成に用いられる。
【0038】
電気角予測部22は、次の制御周期におけるモータ2の電気角(以下、電気角予測値という)θaを予測する。具体的には、本実施形態の電気角予測部22は、モータ2の電気角θの角速度ωが大きく変化しない点、電流指令から生成される電圧指令が主回路3に出力されるのが制御周期で1周期先であり、平均すると1.5周期先である点などを考慮して、以下の(3)式によって、次の制御周期における電気角θaを予測する。
θa=θ+Δθ=θ+ω×1.5Tc (3)
【0039】
(3)式において、Δθは、モータ2の電気角の進角である。
【0040】
電気角予測部22で求められた電気角予測値θaは、後述する電流指令生成部15に入力されて、電流指令の生成に用いられる。
【0041】
電圧指令生成部23は、後述する電流指令生成部15で生成された電流指令を用いて、電圧指令を生成する。この電流指令から電圧指令を生成する方法は、従来と同様であるため、詳しい説明を省略する。電圧指令生成部23から出力された電圧指令は、2相3相変換部25で3相の電圧指令に変換された後に、主回路3に出力されるとともに、電流予測部21で次の制御周期の電流予測値を求める際に用いられる。なお、2相3相変換部25の構成も従来の構成と同様なので、2相3相変換部25の詳しい構成の説明を省略する。
【0042】
電流指令生成部15は、トルク指令、電流制御部11から出力される電流予測値Ia及び電気角予測値θaを用いて、電流指令を生成する。具体的には、電流指令生成部15は、補正信号生成部12と、補償器13(指令補正値生成部)と、指令変換部14と、加算部15a(指令信号生成部)とを有する。
【0043】
補正信号生成部12は、電流制御部11から出力された電気角予測値θaを用いて、電流補正信号を生成する。詳しくは、補正信号生成部12は、電気角と電流との関係が規定された補正テーブルを有する。補正信号生成部12は、前記補正テーブルを用いて、入力された電気角予測値θaに対し、モータ2のトルクリップルを抑制するように電流指令を補正する電流補正信号を生成する。
【0044】
前記補正テーブルは、制御装置1以外のコンピュータによって、オフラインで予め生成されたテーブルデータである。前記コンピュータでは、シミュレーションによって、モータ2のモデルを用いてモータ2のトルクリップルを含むトルクを算出し、該トルクから求められる電流とそのときのモータ2の電気角との関係を、前記補正テーブルとして求める。
【0045】
前記補正テーブルを生成する際に、モータ2のモデルとして、例えば、FEMモデルから作成されたメッシュデータに物性等の条件を入力することにより得られるシミュレーション用のモデルが用いられる。このシミュレーション用のモデルを、解析ソフトで、インバータ制御のシミュレーションを行うことにより、モータ2のトルクを算出することができる。
【0046】
図3は、シミュレーションによって求められるモータ2のトルクリップルを含むトルクの算出結果の一例を示す図である。図4は、モータ2のトルクリップルを抑制するq軸電流の電流補正値の一例を示す図である。図4に示すq軸電流の電流補正値は、図3に示すトルクリップルを打ち消すようなトルクを発生させる電流値に設定される。そのため、q軸電流の電流補正値は、電気角において、モータ2のトルクリップルとは逆位相で変化する。前記補正テーブルは、例えば、図4に示すようなデータである。
【0047】
なお、補正信号生成部12は、上述のような補正テーブルではなく、式を用いて、電流補正信号を生成してもよい。演算時間短縮の観点から、補正信号生成部12は、上述の補正テーブルを用いるのが好ましい。
【0048】
本実施形態では、前記補正テーブルは、オフラインで制御装置1以外のコンピュータで生成される。しかしながら、前記補正テーブルは、制御装置1がオフラインの時に生成されてもよいし、オンラインで制御装置1により生成されてもよい。
【0049】
補償器13は、電流制御部11から出力された電流予測値Iaを用いて、電流補正信号を修正することにより、電流指令補正値を生成して出力する。電気角とトルクとの関係は、モータ2に流れる電流によって変わる。よって、補償器13は、前記補正テーブルから求められる電気角予測値と電流補正値との関係を、モータ2の電流予測値Iaによって修正する。
【0050】
指令変換部14は、制御装置1に入力されるトルク指令を電流に変換する。加算部15aは、電流に変換されたトルク指令に、補償器13から出力される電流指令補正値を考慮することにより、電流指令を生成する。生成された電流指令は、電流制御部11に入力される。既述のように、電流制御部11では、電圧指令生成部23が、入力された電流指令に基づいて電圧指令を生成して、該電圧指令を主回路3に出力する。
【0051】
図5に、モータ2のトルクリップルの一例を示す。図6に、上述の構成を有する制御装置1によってモータ2を駆動制御した場合のモータ2のトルクの一例を示す。
【0052】
図5及び図6に示すように、本実施形態の制御装置1によってモータ2を駆動制御することにより、例えば、モータ2に生じるトルクリップルの値を半分以下にすることができる。よって、本実施形態の制御装置1の構成により、モータ2のトルクリップルを効果的に低減できる。
【0053】
本実施形態では、制御装置1は、制御周期ごとに、次の制御周期においてモータ2に流れる電流の予測値を求める電流予測部21と、前記制御周期ごとに、次の制御周期におけるモータ2の電気角予測値を求める電気角予測部22と、入力されるトルク指令、前記電流予測値及び前記電気角予測値を用いて、モータ2のトルクリップルを低減する電流指令を生成する電流指令生成部15と、を有する。
【0054】
このように、制御周期ごとに、次の制御周期における電流予測値及び電気角予測値を求め、トルク指令、前記電流予測値及び前記電気角予測値を用いてモータ2のトルクリップルを低減する電流指令を生成することにより、前記トルクリップルを効果的に抑制することができる。すなわち、前記電流予測値及び前記電気角予測値は、PI制御で得られる電流値及び電気角のような遅れがないため、トルクリップルによってトルクが変動するタイミングに対してずれることなく、前記トルクリップルを低減する電流指令を生成することができる。
【0055】
しかも、上述の構成により、トルクリップル抑制のための学習を行う必要がないため、学習機能を有する制御装置のように高性能なハードウェアが不要である。よって、学習制御を行う場合に比べて、簡易な構成によって、モータ2のトルクリップルを抑制することができる。
【0056】
したがって、簡易な構成によって、モータ2のトルクリップルを精度良く抑制可能な制御装置が得られる。
【0057】
また、制御装置1は、モータ2の次の制御周期における電気角予測値θa及び電流予測値Iaを用いて、モータ2のトルクリップルを抑制可能な電流指令を生成する際に、補正信号生成部12で予め求められた補正テーブルを用いる。
【0058】
これにより、モータ2のトルクリップルを抑制可能な電流指令を求めるために、従来の学習制御等のようにリアルタイムで電流指令の補正値を演算で求める必要がない。よって、モータ2のトルクリップルを抑制可能な電流指令を求める制御装置1を、従来のように高性能なハードウェアによって構成する必要がない。
【0059】
しかも、上述のように、モータ2のトルクリップルを抑制可能な電流指令を、電気角予測値θa及び電流予測値Iaを用いて求めることにより、モータ2の制御において、遅れの少ない電流制御を実現できる。
【0060】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0061】
前記実施形態では、電流制御部11の電流予測部21は、(1)式及び(2)式を用いて、次の制御周期における電流予測値Ide(n+1)、Iqe(n+1)を求める。しかしながら、電流制御部は、次の制御周期における電流予測値を求めることができる構成であれば、どのような構成を有していてもよい。
【0062】
前記実施形態では、補正信号生成部12の補正テーブルは、電気角と電流との関係を含むテーブルデータである。しかしながら、前記補正テーブルは、モータ回転数及びモータ温度の少なくとも一方によって、電気角と電流との関係が変化するテーブルデータを含んでいてもよい。
【0063】
前記実施形態では、電流制御部11から出力される電流予測値Iaを用いて、補償器13によって、電流補正信号から電流指令補正値を求める。しかしながら、補正信号生成部で、電気角予測値及び電流予測値を用いて、前記電流指令補正値を求めてもよい。すなわち、補正信号生成部が有する補正テーブルは、電気角とトルクとの関係が電流によって変化することを考慮して、電気角、トルク及び電流の3次元の関係を含むテーブルデータであってもよい。この場合には、電流指令生成部の補償器は不要である。
【0064】
前記実施形態では、電気角予測部22は、モータ2の電気角θの角速度ωが大きく変化しない点、電流指令から求めた電圧指令が主回路3に出力されるのが制御周期で1周期先であり、平均すると1.5周期先である点を考慮して、既述の(3)式によって、次の制御周期における電気角θaを予測する。
【0065】
しかしながら、電気角予測部は、電流予測値を用いてトルクTを計算し、このトルクと供試体であるモータ2を含む軸系全体の慣性量Jとによって求められる加速度α(=T/J)から、電気角を予測してもよい。
【0066】
この場合、電気角予測部は、電流指令から求めた電圧指令が主回路3に出力されるのが制御周期で1周期先であり、平均すると1.5周期先である点を考慮して、1.5周期先の角速度ω2(=α×1.5Tc)と、現在の角速度ω1とを用いて、平均角速度ωave(=(ω2−ω1)/2)を求める。これにより、次の制御周期における電気角予測値θaは、以下の(4)式によって求められる。
θa=θ+Δθ=θ+(ωave×1.5Tc) (4)
【0067】
また、電気角予測部は、モータのトルクの差分と加速度の変化とから、電気角を予測してもよい。具体的には、電気角予測部は、現在の制御周期におけるトルクTn及び1つ前の制御周期におけるトルクTn−1と、現在の制御周期における加速度αn及び1つ前の制御周期における加速度αn−1との相対的な関係から、Tnに対する次の制御周期におけるトルクTnの変化分に対し、αnに対する次の制御周期における加速度αn+1の変化を予測する。
【0068】
この場合、電気角予測部は、以下の(5)式によってαn+1を推測して、推測したαn+1及び現在の加速度αnから平均加速度αaveを求める。前記電気角予測部は、求めたαave及び(6)式から、電気角予測値θaを求めることができる。
θa=θ+αave×(1.5Tc) (6)
【0069】
前記実施形態では、3相のモータ2の駆動を制御する制御装置1の構成について説明したが、この限りではなく、3相以外の複数相のモータを駆動させる制御装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、モータの駆動を制御する制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 制御装置
2 モータ
2a 回転角検出器
2b 電流センサ
3 主回路
11 電流制御部
12 補正信号生成部
13 補償器(指令補正値生成部)
14 指令変換部
15 電流指令生成部
15a 加算部(指令信号生成部)
16 角度演算部
21 電流予測部
22 電気角予測部
23 電圧指令生成部
24 3相2相変換部
25 2相3相変換部
Ia 電流予測値
θa 電気角予測値
θ 電気角
θ 機械角
I 電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6