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特開2020-202648半導体電力素子の劣化診断装置および劣化診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-202648(P2020-202648A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】半導体電力素子の劣化診断装置および劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20201120BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20201120BHJP
【FI】
   H02M1/00 C
   H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-107721(P2019-107721)
(22)【出願日】2019年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】迫 博己
(72)【発明者】
【氏名】久保 肇
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740AA08
5H740BA11
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740HH06
5H740JA01
5H740KK01
5H740MM02
5H740MM11
5H770AA17
5H770DA03
5H770DA41
5H770GA11
5H770GA16
5H770HA02Y
5H770HA03X
5H770HA06X
5H770HA12X
5H770HA13X
5H770LB10
(57)【要約】
【課題】半導体電力素子のオン時の飽和電圧を高精度で検出する。
【解決手段】インバータの主回路を構成するIGBT50Uのコレクタ−エミッタ間に直列に接続されたダイオード61および抵抗62,63と、ダイオード61近傍の温度を検出するサーミスタ67と、ダイオード61のアノード側電圧を検出する電圧検出部と、を設け、前記IGBT50Uのコレクタ−エミッタ間を短絡させた第1の状態で前記各検出データをデータ変換部80に記録・保存しておき、前記短絡を解除しIGBT50Uを主回路に接続して通常運転させた第2の状態で検出した電圧から、第1の状態でのデータに基く温度変化によるダイオードの第1の順電圧変化量と、IGBTの飽和電圧の大きさに依存し、ダイオードの順電流変化によるダイオードの第2の順電圧変化量とを差し引くことで、高精度な飽和電圧Vce_satを求める。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置の主回路を構成し、オン、オフ制御がなされる半導体電力素子のオン時の飽和電圧に基いて、半導体電力素子の劣化診断を行う装置であって、
前記半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間に直列に接続されたダイオードおよび抵抗素子と、
前記ダイオード近傍の温度を検出する温度検出部と、
前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点の電圧を検出する電圧検出部と、
前記温度検出部および電圧検出部の各検出データを変換して半導体電力素子のオン時の飽和電圧を求めるデータ変換部と、を備え、
前記データ変換部は、
前記半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間を短絡させた第1の状態において、前記温度検出部の温度検出データおよび前記電圧検出部の電圧検出データを記録・保存し、
前記コレクタ−エミッタ間短絡を解除し半導体電力素子を主回路に接続して通常運転させた第2の状態において、前記電圧検出部により検出され、半導体電力素子のオン時の飽和電圧および前記ダイオードの順電圧を含んだ、前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点電圧から、前記第1の状態で記録・保存されたデータに基いて求めた温度変化による前記ダイオードの第1の順電圧変化量と、前記第2の状態における半導体電力素子のオン時の飽和電圧の大きさに依存し、前記ダイオードに流れる電流変化によるダイオードの第2の順電圧変化量とを差し引いて、半導体電力素子のオン時の飽和電圧を求めることを特徴とする半導体電力素子の劣化診断装置。
【請求項2】
前記ダイオードの第1の順電圧変化量は、温度−順電圧特性の負特性により求め、
前記ダイオードの第2の順電圧変化量は、ダイオードに流れる電流(IF)毎のダイオードの順電圧(VF)の特性から求めることを特徴とする請求項1に記載の半導体電力素子の劣化診断装置。
【請求項3】
電力変換装置の主回路を構成し、オン、オフ制御がなされる半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間に直列に接続されたダイオードおよび抵抗素子と、前記ダイオード近傍の温度を検出する温度検出部と、前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点の電圧を検出する電圧検出部と、を備えた装置における半導体電力素子の劣化診断方法であって、
前記半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間を短絡させた第1の状態において、前記温度検出部の温度検出データおよび前記電圧検出部の電圧検出データを記録・保存するステップと、
前記コレクタ−エミッタ間短絡を解除し半導体電力素子を主回路に接続して通常運転させた第2の状態において、前記電圧検出部により検出され、半導体電力素子のオン時の飽和電圧および前記ダイオードの順電圧を含んだ、前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点電圧から、温度−順電圧特性の負特性により求めた温度変化によるダイオードの第1の順電圧変化量と、前記第2の状態における半導体電力素子のオン時の飽和電圧の大きさに依存し、前記ダイオードに流れる電流変化によるダイオードの第2の順電圧変化量とを差し引いて、半導体電力素子のオン時の飽和電圧を求めるステップと、
前記求められたオン時の飽和電圧に基いて半導体電力素子の劣化診断を行うステップと、を備えたことを特徴とする半導体電力素子の劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電力変換装置における、半導体電力素子(主にIGBT;Insulated Gate Bipolar Transistor)の飽和電圧検出および劣化診断に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置の半導体電力素子の故障を検出する装置は、例えば特許文献1に記載のものが提案されていた。図6に、特許文献1の実施の形態4(段落「0097」〜「0120」)に開示されている、半導体電力素子(IGBT)Q1の飽和電圧を検出するための回路を示す。
【0003】
図6において、Q1,Q2は、インバータ回路の高圧ノードPと低圧ノードN間に直列接続されたU相の上アームと下アームのIGBTである。UAは、図示省略の制御用コンピュータから入力される制御信号S1を増幅してIGBTQ1のゲートに出力するドライブ回路である。
【0004】
IGBTQ1のコレクタは、高耐圧のダイオードD7のカソード、アノード、抵抗素子R4および直流電源V2を介して、IGBTQ1およびQ2の共通接続点であるノードN1の基準電位VN1に接続されている。
【0005】
前記IGBTQ1、Q2には、電流検出電極付きIGBTが用いられ、コレクタ電流(主電流)に応じて検出電流が流れる電流検出電極(センス電極)を有している。
【0006】
IGBTQ1のセンス電極とエミッタ電極の間には検出抵抗R7が設けられ、検出抵抗R7の両端電圧と、コレクタ電流の基準電流IXに相当する電圧に設定された直流電源V6の電圧がコンパレータCA4によって比較される。
【0007】
LA2は、制御信号S1がハイレベルであること(IGBTQ1をオン制御していること)とコンパレータCA4の出力がハイレベルである(コレクタ電流が基準電流IXよりも大きい)ことのアンド条件成立時にハイレベル信号を出力する論理回路である。
【0008】
24は、論理回路LA2の出力の立上がりエッジをトリガとして、1ショットパルスをサンプル・ホールド回路26に出力する1ショットパルス発生回路である。
【0009】
サンプル・ホールド回路26は、1ショットパルス発生回路24の出力がハイレベルのときに、ダイオードD7のアノード電圧(IGBTQ1のコレクタ−エミッタ間電圧Vce_sat(飽和電圧)+ダイオードD7の順電圧VF)を保持し、その電圧はコンパレータCA3において直流電源V5の電圧と比較される。
【0010】
コンパレータCA3は、ダイオードD7のアノード側電圧が直流電源V5の電圧値を超えたときにハイレベル信号を出力し、これによって素子寿命アラーム28は、IGBTQ1が寿命劣化したことを報知する。
【0011】
前記IGBTQ1の主電流(コレクタ電流)と比較するための、前記直流電源V6の電圧に対応する基準電流IXは、図7に示す、異なる温度に対するIGBTの電流−電圧(Ic−Vce)特性曲線のクロスポイントCPに設定している。
【0012】
このクロスポイントCPは、オン電圧が負の温度依存性を有する領域とオン電圧が正の温度依存性を有する領域の境界であり、温度依存性が無いポイントを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4930866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図6のサンプル・ホールド回路26には、IGBTQ1の飽和電圧Vce_satとダイオードD7の順電圧VFが重畳された「Vce_sat+VF」という信号が入力される。
【0015】
Vce_sat+VFについて、これにはオフセットが含まれ、劣化診断のデータとして扱う際にはこのオフセットVFを除く必要がある。また、このオフセットVFは、以下の2つの特性がある。
【0016】
特性1;温度依存性があり、温度によりVFの大きさが変わる。
【0017】
特性2;半導体電力素子(Q1)の飽和電圧の大きさに応じ、VFの大きさが変わる。
【0018】
まず、特性1について説明する。図8に、1500V/0.5Aのダイオードを例に、温度−順電圧特性を示す。
【0019】
ダイオード(D7)の順電圧VFは、ダイオードを流れる電流(IF)を一定とすると、温度に対して負特性となる(例えば図8のIF=1mA時の特性はy=−0.0035x+1.162である)。IFが変わっても傾き−0.0035は変わらない。
【0020】
したがって、温度変化に応じて順電圧VFを補正し、図6のサンプル・ホールド回路26に入力される信号から、温度特性に応じて補正した順電圧VFを差し引く必要がある。
【0021】
次に特性2について、図6の回路におけるサンプルホールド検出信号の大きさとダイオード電流の関係を示す図9とともに説明する。図6中のサンプル・ホールド回路26の入力信号を、IGBTQ1の飽和電圧Vce_satとダイオードD7の順電圧VFの和(Vce_sat+VF)とすると、ダイオードD7を流れる電流IFは、IF=(V2−(Vce_sat+VF))/R4(V2は直流電源V2の電圧、R4は抵抗素子R4の抵抗値)となる。
【0022】
これは、サンプル・ホールド回路26の入力信号の大きさ、すなわちVce_satの大きさによりダイオードD7の順電圧VFの大きさが変化することを意味する。
【0023】
一般的に、IGBTなどの半導体電力素子の飽和電圧(図7のVx)は微小であるため、これらの特性を無視できず、無視すれば劣化判定を正しく行えない恐れがある。
【0024】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、半導体電力素子のオン時の飽和電圧を高精度で検出することができ、これによって正しい劣化診断を行うことができる半導体電力素子の劣化診断装置、方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するための請求項1に記載の半導体電力素子の劣化診断装置は、
電力変換装置の主回路を構成し、オン、オフ制御がなされる半導体電力素子のオン時の飽和電圧に基いて、半導体電力素子の劣化診断を行う装置であって、
前記半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間に直列に接続されたダイオードおよび抵抗素子と、
前記ダイオード近傍の温度を検出する温度検出部と、
前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点の電圧を検出する電圧検出部と、
前記温度検出部および電圧検出部の各検出データを変換して半導体電力素子のオン時の飽和電圧を求めるデータ変換部と、を備え、
前記データ変換部は、
前記半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間を短絡させた第1の状態において、前記温度検出部の温度検出データおよび前記電圧検出部の電圧検出データを記録・保存し、
前記コレクタ−エミッタ間短絡を解除し半導体電力素子を主回路に接続して通常運転させた第2の状態において、前記電圧検出部により検出され、半導体電力素子のオン時の飽和電圧および前記ダイオードの順電圧を含んだ、前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点電圧から、前記第1の状態で記録・保存されたデータに基いて求めた温度変化による前記ダイオードの第1の順電圧変化量と、前記第2の状態における半導体電力素子のオン時の飽和電圧の大きさに依存し、前記ダイオードに流れる電流変化によるダイオードの第2の順電圧変化量とを差し引いて、半導体電力素子のオン時の飽和電圧を求めることを特徴とする。
【0026】
請求項2に記載の半導体電力素子の劣化診断装置は、請求項1において、
前記ダイオードの第1の順電圧変化量は、温度−順電圧特性の負特性により求め、
前記ダイオードの第2の順電圧変化量は、ダイオードに流れる電流(IF)毎のダイオードの順電圧(VF)の特性から求めることを特徴とする。
【0027】
請求項3に記載の半導体電力素子の劣化診断方法は、
電力変換装置の主回路を構成し、オン、オフ制御がなされる半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間に直列に接続されたダイオードおよび抵抗素子と、前記ダイオード近傍の温度を検出する温度検出部と、前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点の電圧を検出する電圧検出部と、を備えた装置における半導体電力素子の劣化診断方法であって、
前記半導体電力素子のコレクタ−エミッタ間を短絡させた第1の状態において、前記温度検出部の温度検出データおよび前記電圧検出部の電圧検出データを記録・保存するステップと、
前記コレクタ−エミッタ間短絡を解除し半導体電力素子を主回路に接続して通常運転させた第2の状態において、前記電圧検出部により検出され、半導体電力素子のオン時の飽和電圧および前記ダイオードの順電圧を含んだ、前記ダイオードおよび抵抗素子の共通接続点電圧から、温度−順電圧特性の負特性により求めた温度変化によるダイオードの第1の順電圧変化量と、前記第2の状態における半導体電力素子のオン時の飽和電圧の大きさに依存し、前記ダイオードに流れる電流変化によるダイオードの第2の順電圧変化量とを差し引いて、半導体電力素子のオン時の飽和電圧を求めるステップと、
前記求められたオン時の飽和電圧に基いて半導体電力素子の劣化診断を行うステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
(1)請求項1〜3に記載の発明によれば、半導体電力素子のオン時の飽和電圧を高精度で検出することができ、これによって正しい劣化診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態例による半導体電力素子の劣化診断装置の全体構成図。
図2】本発明の実施形態例における、ダイオードの2つの順電圧変化量を除去する補正の様子を示す説明図。
図3】本発明の実施形態例における初期VF計測時の要部構成図。
図4】本発明の実施形態例におけるIGBT飽和電圧計測時の要部構成図。
図5】本発明の実施形態例で使用する累乗近似式を説明する、ダイオードの順電流−順電圧特性図。
図6】先行特許文献の回路図。
図7】異なる温度に対するIGBTの電流−電圧特性曲線のグラフ。
図8】ダイオードの順電流毎の順電圧−温度特性を示すグラフ。
図9】先行特許文献における、サンプルホールド検出信号の大きさとダイオード電流の関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【0031】
図1は、三相インバータのU相側の構成を表しているが、他の相についても同様に構成されるものである。図1において、50U,50Xは、半導体電力素子、例えばIGBTであり、50UはU相の上アームのIGBT、50XはU相の下アーム(X相)のIGBTを示している。
【0032】
IGBT50U,50Xには、還流ダイオード51U,51Xが各々逆並列接続されている。IGBT50Uのコレクタ−エミッタ間には、高耐圧(例えば1200V耐圧)のダイオード61のカソード、アノード、抵抗62(抵抗値R1)および抵抗63(抵抗値R2)が順次直列に接続されている。
【0033】
ダイオード61および抵抗62の共通接続点とIGBT50Uのエミッタの間には図示極性のダイオード64およびツェナーダイオード65が接続されている。
【0034】
66は、一端が直流電源VDD_nに接続された抵抗であり、その他端は、前記ダイオード61の近傍に設けられたサーミスタ67に接続されている。このサーミスタ67はダイオード61近傍の温度によってその抵抗値が変化する温度検出素子である。
【0035】
68は、IGBT50Uおよび50Xの共通接続点に接続されるU相出力線に流れる電流を検出する変流器(HCT)である。
【0036】
前記ダイオード61、64、ツェナーダイオード65、抵抗62、63、66、直流電源VDD_n、サーミスタ67、変流器68によって検出部60を構成している。また、ダイオード61、抵抗62、63によってIGBTの飽和電圧検出部が構成され、直流電源VDD_n、抵抗66およびサーミスタ67によって温度検出部が構成され、変流器68によって電流検出部が構成されている。
【0037】
ダイオード61および抵抗62の共通接続点には抵抗71の一端が接続されている。抵抗71の他端は、プッシュプル回路を構成するNPN型のトランジスタ72およびPNP型のトランジスタ73に接続されている。
【0038】
抵抗71およびトランジスタ72の共通接続点とトランジスタ73のコレクタの間には直流電源74(VCC1)および直流電源75(VCC2)が直列に接続され、直流電源74および75の共通接続点はIGBT50Uのエミッタに接続されている。
【0039】
76は、図示省略のインバータ制御部からのゲート指令を入力とし、そのゲート指令に対応したON,OFF制御信号(ハイレベル信号、ローレベル信号)をトランジスタ72、73の各ベースに出力する絶縁・ドライブICである。
【0040】
トランジスタ72および73のエミッタどうしの共通接続点から出力される信号を駆動抵抗78(Rg)を介してIGBT50Uのゲートに供給することにより、IGBT50UがON,OFF制御される。
【0041】
前記抵抗71、78、トランジスタ72、73、直流電源74、75、絶縁・ドライブIC76によって駆動部70を構成している。
【0042】
前記ダイオード61、および抵抗62、63の分圧で決まる、ダイオード61および抵抗62の共通接続点の電圧を検出した電圧検出信号は、絶縁素子81の入力側に導入される。絶縁素子81の出力信号は高速アンプ82で増幅された後、高速A/D変換器83によってディジタル信号に変換される。
【0043】
前記抵抗66およびサーミスタ67の共通接続点電位として出力されるサーミスタ67の温度検出信号は絶縁素子84の入力側に導入される。絶縁素子84の出力信号は高速アンプ85で増幅された後、高速A/D変換器86によってディジタル信号に変換される。
【0044】
前記変流器68の電流検出信号は高速アンプ87で増幅された後、高速A/D変換器88によってディジタル信号に変換される。
【0045】
高速A/D変換器83,86,88の出力は、各種演算を行ってIGBT(50U)のオン時の飽和電圧を求める演算部90に入力される。この演算部90は、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成されている。
【0046】
前記絶縁素子81,84、高速アンプ82,85,87、高速A/D変換器83,86,88および演算部90によってデータ変換部80を構成している。
【0047】
次に、本実施形態例における、ダイオード(61)の2つの順電圧変化量を除去する補正の様子を、ダイオードの順電圧対順電流(VF−IF)特性(非線形)を示す図2とともに説明する。
【0048】
図2において、例えばIGBT50Uのコレクタ−エミッタ間を短絡させた第1の状態でダイオード初期状態のIF、VF、温度の各データ(例えばIF=17mA、VF=1.35V、20℃)を記録・保存する。
【0049】
次に、前記コレクタ−エミッタ間短絡を解除してIGBT50Uを主回路に接続して通常運転させた第2の状態で、前記ダイオード初期状態のデータを基に「温度変化に対する補正(線形補正)」および「検出大きさに対する補正(対数近似または非線形補間)」を行う。
【0050】
この「温度変化に対する補正」時の補正量(ダイオードの第1の順電圧変化量に相当)は、前記図8の「特性1」で述べた温度−順電圧特性の直線傾きを用いて、変化量ΔF=−0.0035×Δ温度により求められる。
【0051】
また「検出大きさに対する補正」時の補正量(ダイオードの第2の順電圧変化量に相当)は、図9で述べた「特性2」(IGBTの飽和電圧の大きさに応じてダイオードの順電圧VFの大きさが変わること)に対処するため、例えば図5に示す順電流対順電圧の特性から得た累乗近似式から求められる。
【0052】
図5は、恒温槽により20℃一定でダイオードの順電流IFに対する順電圧VFを測定したデータを表し、累乗近似式はy=1.8585x0.0786(実測データに対する決定係数R2=0.9999)である。
【0053】
上記2つの補正によって「推定する値」、すなわちIGBT飽和電圧計測時に含まれるダイオードの第1、第2の順電圧変化量を求め、計測したIGBT飽和電圧から差し引くものである。
【0054】
尚、図2における「検出大きさに対する補正」は、本実施形態例では累乗近似式で行うが、これに限らずスプライン補間などの手法を用いてもよい。
【0055】
次に、図1のように構成された回路における劣化診断時の動作を、図1の要部回路のみを図示した図3図4とともに説明する。
【0056】
(1)まず、図3に示すようにIGBT50Uのコレクタ−エミッタ間に相当する箇所を導体、例えばP板(プリント板)で短絡させて第1の状態とする。
【0057】
この第1の状態時の、ダイオード61の順電圧VF(ダイオード61および抵抗62の共通接続点電圧;初期VF)と、その時のサーミスタ67の温度データ(初期VF計測時温度)とをデータ変換部80に取り込み、「初期VFとIF」と温度条件として図示省略のメモリなどに記録・保存する。
【0058】
例えば「サーミスタ温度20℃のとき、初期VF0が1.0V、初期IF0が17mA」のように、第1の状態における温度検出データ、電圧検出部の検出データおよびダイオードの初期順電流データを記録・保存する。尚、初期IF0は設計値を用いる。
【0059】
尚、第1の状態における抵抗63の両端電圧は初期VF・R2/(R1+R2)である。
【0060】
(2)次に、図3のコレクタ−エミッタ間短絡を解除し、図4のようにIGBT50Uを主回路に接続して通常運転させた状態を第2の状態とする。
【0061】
この第2の状態において、ダイオード61および抵抗62の共通接続点の検出電圧、サーミスタ67の検出温度および変流器68による検出電流をデータ変換部80に入力してデータ変換を行う。
【0062】
この時点でのダイオード61および抵抗62の共通接続点の電圧検出データには、飽和電圧Vce_satと、オフセット成分であるVF(ダイオード61の順電圧)が含まれる。
【0063】
尚、第2の状態における抵抗63の両端電圧は、(Vce_sat+VF)・R2/(R1+R2)である。
【0064】
(3)次に、図4の電圧検出データ(通常検出データ)から、図3で計測したVFがオフセットとなっているので、この成分を差し引く。この際、図8から算出される温度変化によるVF変化量(ダイオードの第1の順電圧変化量)と、検出値(飽和電圧Vce_sat)の大きさに依存する、ダイオード61に流れる電流変化によるVF変化量(ダイオードの第2の順電圧変化量)、の2種類を差し引く。
【0065】
すなわちIGBT50Uのオン時の飽和電圧は、
(飽和電圧Vce_sat)=(通常検出データ)−(温度変化によるVF変化量)−(IF−VF変換係数×IF変化量)
を演算部90により演算することで求められる。
【0066】
前記「通常検出データ」は、図4のダイオード61および抵抗62の共通接続点電圧Vce_sat+VFである。
【0067】
前記「温度変化によるVF変化量」(ダイオードの第1の順電圧変化量VF1)は、例えば図8に示すダイオードの温度対順電圧の特性の場合は、0.0035V/℃になる(すなわち変化量ΔF=−0.0035×Δ温度)。
【0068】
前記「IF−VF変換係数×IF変化量」(ダイオードの第2の順電圧変化量VF2)」は、例えば図5のように、温度20℃でIF/VF特性を実測により収集し近似式を求める。例えば、累乗近似で近似式を作成すると下式となる。
【0069】
VF2=1.8585×IF^0.0786
温度20℃でIF−VF特性を取得した場合の「温度変化によるVF変化量」(ダイオードの第1の順電圧変化量VF1)は下式となる。
【0070】
VF1=−0.0035×(T−20℃)
T:Vce_sat計測時の温度
これらから、Vce_satを求める式は下式となる。
【0071】
Vce_sat=(通常検出データ)−VF1−VF2
=(通常検出データ)+0.0035×(T−20℃)−1.8585×IF^0.0786となる。
【0072】
ここで、ダイオード(61)の順電圧VF(第1の順電圧変化量、又は第1および第2の順電圧変化量を含めた順電圧)の具体的数式を以下に示す。
【0073】
まず、図5のIF−VF特性に基く累乗近似式から求められるVFは、
VF=1.8585×IF^0.0786…(1)である。
【0074】
これに温度変化を考慮すると図8の温度−順電圧特性からΔVF=−0.0035×ΔTを追加し、
VF=1.8585×IF^0.0786−0.0035(T−20)…(2)となる。
【0075】
さらに、図3の初期状態(第1の状態)で測定して記録・保存した初期値の、部品個体差による誤差(バラツキ)を考慮すると、補正係数Kを追加し、以下の式となる。
【0076】
VF=1.8585×IF^0.0786−0.0035(T−20)+K…(3)
前記補正係数Kは、前記第1の状態で測定した初期値(IF0,VF0,T0,)に対する「ずれ値」として次式で表される。
【0077】
K=VF0−1.8585×IF00.0786+0.0035(T0−20)…(4)
このためIGBT飽和電圧Vce_satの推定式は、
(IGBT飽和電圧)=(オフセットを含んだIGBT飽和電圧(通常検出データ))−式(3)のVF…(5)となる。
【0078】
したがって、求める飽和電圧Vce_satは、
Vce_sat=(通常検出データ)+0.0035(T0−20)−1.8585×IF00.0786−K
となる。
【0079】
上記のようにして求められたIGBT50Uのオン時の飽和電圧Vce_satに基いて、演算部90又は図示省略の劣化診断部においてIGBTの劣化診断が行われる。
【0080】
このため、IGBT50Uのオン時の飽和電圧Vce_satを高精度で検出することができ、これによって正しい劣化診断を行うことができる。
【0081】
上記の動作は、インバータの他の相のIGBTについても同様となる。また、半導体電力素子はIGBTに限らず他の素子であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
50U,50X…IGBT
51U,51X…還流ダイオード
60…検出部
61,64…ダイオード
62,63,66,71,78…抵抗
65…ツェナーダイオード
67…サーミスタ
68…変流器
70…駆動部
72,73…トランジスタ
74,75…直流電源
76…絶縁・ドライブIC
80…データ変換部
81,84…絶縁素子
82,85,87…高速アンプ
83,86,88…高速A/D変換器
90…演算部
図1
図2
図3
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図9