前記制御回路は、前記第1充電状態において、前記第2中間キャパシタを前記出力キャパシタと接続し、前記第2充電状態において、前記第1中間キャパシタを前記出力キャパシタと接続することを特徴とする請求項3に記載の電源回路。
前記制御回路は、前記第1充電状態の一部の時間区間において、前記第2中間キャパシタを前記出力キャパシタと接続し、前記第2充電状態の一部の時間区間において、前記第1中間キャパシタを前記出力キャパシタと接続することを特徴とする請求項5に記載の電源回路。
前記電源回路をローパスフィルタ、前記オシレータのノイズ特性をハイパスフィルタとみなすとき、前記ローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数よりも低いことを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の電源回路。
前記タイミング発生器は、(i)前記第1ハイサイドスイッチがオン、前記第2ハイサイドスイッチがオフの第1充電状態、(ii)前記第1ハイサイドスイッチがオフ、前記第2ハイサイドスイッチがオフの第2充電状態、(iii)前記第1ハイサイドスイッチ、前記第2ハイサイドスイッチが両方オフの非充電状態が切替可能であり、前記第1充電状態、前記非充電状態、前記第2充電状態、前記非充電状態を順に繰り返すことを特徴とする請求項15に記載の集積回路。
前記タイミング発生器は、前記第1充電状態において、前記第2中間キャパシタを前記出力キャパシタと接続し、前記第2充電状態において、前記第1中間キャパシタを前記出力キャパシタと接続することを特徴とする請求項16に記載の集積回路。
前記タイミング発生器は、前記第1充電状態の一部の時間区間において、前記第2ローサイドスイッチをオンし、前記第2充電状態の一部の時間区間において、前記第1ローサイドスイッチをオンすることを特徴とする請求項18に記載の集積回路。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、電源ノイズは、機器の誤動作や特性劣化をもたらすため、対策が必要である。特に、同一のLSI(Large Scale Integrated circuit)やIC(Integrated Circuit)内に、電源ノイズ源となる回路と、電源ノイズを忌避すべき回路が混載される場合に、電源ノイズの対策は極めて重要である。
【0003】
図1(a)〜(c)は、集積回路のブロック図である。
図1(a)の集積回路1には、第1回路2と、第2回路4が集積化される。たとえば第1回路2は、デジタル回路であり、システムクロックと同期して動作する。第2回路4は、たとえばPLL(Phase Locked Loop)回路であり、クロックCLKを生成する周波数シンセサイザである。クロックCLKは、システムクロック、A/DコンバータやD/Aコンバータなどに用いられる。
【0004】
図1(a)の集積回路1では、第1回路2と第2回路4の電源ピンに共通の電源電圧が供給される。第1回路2が動作すると、クロックと同期した動作電流が流れる。この動作電流によって、電源電圧V
DDの変動が引き起こされ、電源ノイズとなる。電源ノイズには、外部の電源回路8自体に起因する成分も含まれる。
【0005】
電源ノイズは、電源ライン6を経由して第2回路4に入力される。PLL回路に電源ノイズが混入すると、それが生成するクロックの周波数変動特性、位相雑音特性やジッタ特性が劣化する。したがって、クロックCLKの精度が要求されるアプリケーションでは、
図1(a)のように、電源ライン、電源ピンを共通化するアプローチは取り得ない。
【0006】
図1(b)の集積回路1では、第1回路2と第2回路4の電源ピンが独立して個別に設けられ、それらの電源がアイソレートされている。第2回路4の電源ピンVDD2には外付けの低雑音のLDO(Low Drop Output)10、すなわちリニアレギュレータが接続される。この構成では、第1回路2が発生する電源ノイズが第2回路4に混入するのを防止できるが、集積回路1に2個の電源ピンを設ける必要があり、集積回路1のコスト増加の要因となる。また外付けのLDO10は、システム全体のコスト増の容易となる。
【0007】
図1(c)の集積回路1には、LDO12が集積化されている。LDO12は、電源ピンVDDの電圧を安定化し、第2回路4に供給する。この構成によれば、LDO12によって、第2回路4に入力される電源ノイズを減衰させることができる。
【0008】
図2は、非特許文献1に開示されるアーキテクチャを示す回路図である。このアーキテクチャは、
図1(c)の改良と捉えることができる。第2回路4であるPLL回路は、DCO(Digital Controlled Oscillator)やVCO(Voltage Controlled Oscillator )であるオシレータブロック4Aと、その制御ブロック4Bを含む。この中でオシレータブロック4Aは特に電源ノイズを忌避すべきブロックである。オシレータブロック4AとLDO12の間にはスイッチSW1が挿入される。オシレータブロック4Aが生成するクロックCLKにもとづいて、ゲート信号GATEが生成され、GATE信号にもとづいて、スイッチSW1がスイッチングされる。スイッチSW1がオンの期間だけ、キャパシタC0がLDO12と接続され、オフの期間は、キャパシタC0はLDO12からアイソレートされる。オシレータブロック4Aには、キャパシタC0に発生する電圧V
C0が電源電圧として供給される。
【0009】
キャパシタC0は、スイッチSW1がオンの間、LDO12の出力電圧V
LDOによって充電され、スイッチSW1がオフの間、オシレータブロック4Aの動作電流によって放電される。すなわち、電圧V
C0にはスイッチSW1がオンの期間のみ、電圧V
LDOの電源ノイズが混入し、スイッチSW1がオフの期間は、ノイズフリーとなる。特にオシレータブロック4Aが動作期間と停止期間を交互に繰り返す間欠動作をする場合には、停止期間にスイッチSW1をオン、動作期間にスイッチSW1をオフすることで、電源ノイズの影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
図3は、実施の形態に係る電源回路100を備える集積回路200の回路図である。集積回路200は、電源回路100に加えて、回路ブロック202、204を備える。第1回路ブロック202は電源ノイズの発生源となる回路、および/または電源ノイズ耐性の高い回路を含む。第2回路ブロック204は、電源ノイズを忌避すべき、言い換えれば電源ノイズ耐性の低い回路であり、デジタル回路であると、アナログ回路であるとを問わない。
【0024】
集積回路200の電源ピンVDDには、外部からの電源電圧V
DDが供給される。電源電圧V
DDには、電源電圧V
DDを生成する電源由来のノイズ、あるいは回路ブロック202由来の電源ノイズが含まれる。
【0025】
電源回路100は、その入力端子102に直流の電源電圧V
DD(入力電圧V
IN)を受け、出力端子104から電源ノイズが除去された電源電圧V
OUTを出力し、第2回路ブロック204に供給する。
【0026】
電源回路100は、複数の中間キャパシタC
1〜C
N(N≧2)、出力キャパシタC
OUTおよび制御回路110を備える。
【0027】
複数の中間キャパシタC
1〜C
Nおよび出力キャパシタC
OUTそれぞれの一端は接地される。また出力キャパシタC
OUTの他端は出力端子104と接続される。
【0028】
制御回路110は、入力端子102ならびに複数の中間キャパシタC
1〜C
N、出力キャパシタC
OUTそれぞれの他端と接続されている。
【0029】
制御回路110は、入力電圧V
INにより複数の中間キャパシタC
1〜C
Nを時分割で充電するとともに、複数の中間キャパシタC
1〜C
Nのうち、充電中でない少なくともひとつを出力キャパシタC
OUTと接続する。
【0030】
以上が電源回路100の構成である。この電源回路100において、出力キャパシタC
OUTは、いずれの期間においても、入力端子102と直接接続されることはなく、複数の中間キャパシタC
1〜C
Nのうち入力端子102と切り離された状態(非充電状態)にあるものとのみ接続される。その結果、入力電圧V
INに重畳される電源ノイズが、直接、出力端子104に供給されないため、電源ノイズを除去することができる。
【0031】
この電源回路100は、LDOよりも回路面積が小さいため、チップ面積およびコストの増加を抑制できる。またLDOのようなフィードバック制御を含まないため、設計が容易であるという利点を有する。
【0032】
本発明は、
図3のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0033】
図4は、一実施例に係る電源回路100の回路図である。電源回路100は、複数の中間キャパシタC
1〜C
N、出力キャパシタC
OUTに加えて、制御回路110に相当する複数のハイサイドスイッチSWH、複数のローサイドスイッチSWLおよびタイミング発生器120を備える。中間キャパシタの個数Nは限定されないが、以下では例示的にN=2とし、C
1を第1中間キャパシタ、C
2を第2中間キャパシタと称する。
【0034】
複数のハイサイドスイッチSWH
#(#=1〜N)は、入力端子102と対応する中間キャパシタC
#の間に設けられる。また複数のローサイドスイッチSWL
#(#=1〜N)は、出力端子104と対応する中間キャパシタC
#の間に設けられる。
【0035】
タイミング発生器120は、クロックCLKにもとづいて、上側のゲート信号HG
1〜HG
N、下側のゲート信号LG
1〜LG
Nを生成し、複数のハイサイドスイッチSWH
1〜SWH
N、複数のローサイドスイッチSWL
1〜SWL
Nを制御する。
【0036】
たとえばスイッチSWH,SWLはPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)トランジスタで構成することができ、この場合、ゲート信号HG,LGがハイのときスイッチSWH,SWLはオフであり、ゲート信号HG,LGがローのときスイッチSWH,SWLはオンとなる。
【0037】
タイミング発生器120の構成や、タイミング制御にはさまざまな実施例が存在する。以下、それらのいくつかを説明する。
【0038】
(第1実施例)
制御回路110は、第1充電状態φ
1、第2充電状態φ
2、非充電状態φ
NCが切りかえ可能である。はじめに上側の動作を説明する。
・第1充電状態φ
1
第1充電状態φ
1において、入力電圧V
INにより第1中間キャパシタC
1が充電される。
SWH
1=ON
SWH
2=OFF
・第2充電状態φ
2
第2充電状態φ
2において、入力電圧V
INにより第2中間キャパシタC
2が充電される。
SWH
1=OFF
SWH
2=ON
・非充電状態φ
NC
非充電状態φ
NCにおいて、第1中間キャパシタC
1,第2中間キャパシタC
2はいずれも非充電状態である。
SWH
1=OFF
SWH
2=OFF
【0039】
制御回路110は、第1充電状態φ
1、非充電状態φ
NC、第2充電状態φ
2、非充電状態φ
NCを順に繰り返す。
【0040】
続いて下側の動作を説明する。
・第1充電状態φ
1
第2中間キャパシタC
2が出力キャパシタC
OUTと接続される。
SWL
1=OFF
SWL
2=ON
・第2充電状態φ
2
第1中間キャパシタC
1が出力キャパシタC
OUTと接続される。
SWL
1=ON
SWL
2=OFF
・非充電状態φ
2
第1中間キャパシタC
1、第2中間キャパシタC
2の両方が出力キャパシタC
OUTから切り離される。
SWL
1=OFF
SWL
2=OFF
【0041】
図5は、第1実施例に係るタイミング発生器120Aの回路図である。タイミング発生器120Aは、クロックCLKの一方のエッジ(ポジティブエッジ)を始点とする第1充電期間の間、第1ハイサイドスイッチSWH
1、第2ローサイドスイッチSWL
2をオンし、クロックCLKの他方のエッジ(ネガティブエッジ)を始点とする第2充電期間の間、第2ハイサイドスイッチSWH
2、第1ローサイドスイッチSWL
1をオンする。
【0042】
タイミング発生器120Aは、遅延ライン122、EX−NORゲート124、ORゲート126、128を含む。遅延ライン122は、クロックCLKを遅延する。遅延量τは、クロックCLKの半周期より短い。遅延ライン122はインバータチェーンであってもよいし、その他の遅延回路であってもよい。
【0043】
EX−NORゲート124は、遅延前および遅延後のクロックCLK,CLKdのEX−NOR(排他的否定論理和)を生成する。EX−NORゲート124の出力Spは、クロックCLKのポジティブエッジおよびネガティブエッジから、遅延時間τの間、ローとなるパルス信号である。
【0044】
ORゲート126の一方の入力には、遅延後のクロックCLKdが入力され、他方の入力には、EX−NORゲートの出力Spが入力される。ORゲート126の出力S1は、元のクロックCLKのポジティブエッジから遅延時間τの間、ローとなる。ORゲート126の出力S1にもとづいて、ゲート信号HG
1,LG
2が生成され、スイッチSWH
1,SWL
2が制御される。
【0045】
ORゲート128の一方の入力には、遅延後のクロックCLKdの反転信号が入力され、他方の入力には、EX−NORゲートの出力Spが入力される。ORゲート128の出力S2は、元のクロックCLKのネガティブエッジから遅延時間τの間、ローとなる。ORゲート128の出力S2にもとづいて、ゲート信号HG
2,LG
1が生成され、スイッチSWH
2,SWL
1が制御される。なお当業者によれば、同じ機能を奏しうるタイミング発生器120Aの変形が存在すること、それらが本発明の範囲に含まれることが理解される。
【0046】
図6は、第1実施例に係る電源回路100の動作波形図である。V
A,V
Bはそれぞれ、第1中間キャパシタC
1,第2中間キャパシタC
2の電圧波形を示す。V
OUTは出力キャパシタC
OUTに発生する出力電圧である。
【0047】
第1充電状態φ
1において、入力電圧V
INにより第1中間キャパシタC
1が充電され、電圧V
Aが上昇する。このときの電圧V
Aには電源ノイズが重畳されている。その間、第2中間キャパシタC
2と出力キャパシタC
OUTが接続され、第2中間キャパシタC
2の電荷が出力キャパシタC
OUTに移動し、出力キャパシタC
OUTが充電され、出力電圧V
OUTが上昇する。
【0048】
続く非充電状態φ
NCにおいて、出力キャパシタC
OUTが負荷電流によって放電され、出力電圧V
OUTは低下する。第1中間キャパシタC
1、第2中間キャパシタC
2に電荷の移動は生じないから、電圧V
A,V
Bは一定である。
【0049】
続く第2充電状態φ
2において、入力電圧V
INにより第2中間キャパシタC
2が充電され、電圧V
Bが上昇する。その間、第1中間キャパシタC
1と出力キャパシタC
OUTが接続され、第1中間キャパシタC
1の電荷が出力キャパシタC
OUTに移動し、出力キャパシタC
OUTが充電され、出力電圧V
OUTが上昇する。
【0050】
続く非充電状態φ
NCにおいて、出力キャパシタC
OUTが負荷電流によって放電され、出力電圧V
OUTは低下する。第1中間キャパシタC
1、第2中間キャパシタC
2に電荷の移動は生じないから、電圧V
A,V
Bは一定である。
【0051】
第1実施例に係る電源回路100はこの動作を繰り返す。第1実施例において生成される出力電圧V
OUTからは、入力電圧V
INに含まれる電源ノイズが除去されている。
【0052】
なお、非充電状態φ
NCは第1充電状態φ
1,第2充電状態φ
2より短くてもよい。理想的には非充電状態φ
NCは省略しうるが、現実的には非充電状態φ
NCを短くしすぎると、タイミングズレによって、出力端子104に直接、電源ノイズを含む入力電圧V
INが現れるおそれがある。言い換えれば非充電状態φ
NCを挿入することにより、シビアなタイミング設計から解放される。
【0053】
(第2実施例)
はじめにハイサイドスイッチの動作を説明する。制御回路110は、第1充電状態φ
1、第2充電状態φ
2が切りかえ可能である。
・第1充電状態φ
1
第1充電状態φ
1において、入力電圧V
INにより第1中間キャパシタC
1が充電される。
SWH
1=ON
SWH
2=OFF
・第2充電状態φ
2
第2充電状態φ
2において、入力電圧V
INにより第2中間キャパシタC
2が充電される。
SWH
1=OFF
SWH
2=ON
【0054】
制御回路110は、第1充電状態φ
1、第2充電状態φ
2を連続的に交互に繰り返す。
【0055】
続いてローサイドスイッチの動作を説明する。
制御回路110は、第1充電状態φ
1の一部の時間区間において、第2ローサイドスイッチSWL
2をオンし、第2中間キャパシタC
2を出力キャパシタC
OUTと接続する。
また第2充電状態φ
2の一部の時間区間において、第1ローサイドスイッチSWL
1をオンし、第1中間キャパシタC
1を出力キャパシタC
OUTと接続する。
【0056】
図7は、第2実施例に係る電源回路100Bの回路図である。タイミング発生器120Bは、クロックCLKの一方のエッジ(ネガティブエッジ)を始点とする第1期間T
1の間、第1ローサイドスイッチSWL
1をオンする。またクロックCLKの他方のエッジ(ポジティブエッジ)を始点とする第2期間T
2の間、第2ローサイドスイッチSWL
2をオンする。
【0057】
またタイミング発生器120Bは、第1期間T
1を含むように遅延されたクロックCLKの半周期の間、第2ハイサイドスイッチSWH
2をオンし、第2期間T
2を含むように遅延されたクロックCLKの半周期の間、第1ハイサイドスイッチSWH
1をオンする。
【0058】
遅延ライン122、EX−NORゲート124は、
図5と同様であり、パルス信号Spを生成する。
【0059】
遅延ライン136は、クロックCLKを遅延し、HG
1信号を生成する。インバータ134は、クロックCLKを反転する。遅延ライン138は、反転クロックCLKbを遅延し、HG
2信号を生成する。
【0060】
ORゲート130は、CLKとSpの論理和にもとづき、LG
1信号を生成する。ORゲート132は、CLKbとSpの論理和にもとづき、LG
2信号を生成する。なお当業者によれば、同じ機能を奏しうるタイミング発生器120Bの変形が存在すること、それらが本発明の範囲に含まれることが理解される。
【0061】
図8は、第2実施例に係る電源回路100Bの動作波形図である。クロックCLKと同期動作するデジタル回路は、クロックのエッジをトリガとして活性化し、内部の状態遷移が発生する。そのため微視的にみると、負荷電流I
LOADは、クロックの周期の一部分(活性区間)において流れ、別の部分(不活性区間)では流れない間欠モードとみなせる場合がある。この場合、出力電圧V
OUTは、活性区間において低下し、不活性区間では一定に保たれる。
【0062】
第1実施例と第2実施例を比較すると、
図5のタイミング発生器120Aでは、
図7Bの遅延ライン136、遅延ライン138が不要であるため、回路面積を小さくできるという利点がある。
【0063】
第1あるいは第2の実施例において、遅延ライン136の遅延量τを固定した場合、以下の効果がえられる。温度変動や電源電圧変動が発生したときに、遅延量τが変化し、パルス信号Spのパルス幅が長くなり、中間キャパシタへの充電時間、あるいは出力キャパシタへの充電時間が変化する。これにより出力電圧V
OUTの変動が抑えられる方向にフィードバックがかかる。たとえば電源電圧V
DD(V
IN)が低下すると、遅延ライン136の遅延量は長くなるため、充電時間が長くなり、入力電圧V
INの低下が相殺される。また、クロック周波数が高くなり回路電流が増える場合も、スイッチと中間キャパシタが形成する等価抵抗値R
EQは下がるため、同様に入力電圧V
INの低下が相殺される方向に作用する。
【0064】
図9(a)、(b)は、電源回路100の等価回路図である。
図9(a)を参照すると、ハイサイドスイッチSWH
#,ローサイドスイッチSWL
#それぞれのオン抵抗をR
ON,スイッチング周波数をf
SW、オン時間をT
ON(上述の遅延時間τ)とする。このとき、オン時間T
ONが、キャパシタC
#およびC
OUTを充電しうる程度に長い場合、すなわちT
ON>(R
ON×C
[#,OUT])である場合、電荷保存則よりハイサイドスイッチSWH
#とキャパシタC
#からなる回路は、以下の等価抵抗R
EQで表される。
R
EQ=1/(f
SW×C
#)
【0065】
したがってハイサイドスイッチSWH
#およびキャパシタC
#からなる等価抵抗R
EQと出力キャパシタC
OUTは、カットオフ周波数fcが以下の式で表される1次のローパスフィルタを形成することとなる。
fc=1/(2π・R
EQ・C
OUT)=1/(2π/f
SW・C
OUT/C
#)
このカットオフ周波数fcは、スイッチング周波数f
SWによって制御することができる。
【0066】
図9(b)を参照する。
図9(b)は、オン時間T
ONが、キャパシタC
#およびC
OUTを充電しうる程度に長くない場合、すなわちT
ON<(R
ON×C
[#,OUT])である場合の等価回路図を示す。この場合、ハイサイドスイッチSWH
#、SWL
#それぞれは、以下の等価抵抗R
EQで表される。
R
EQ=R
ON/(T
ON×f
SW)
T
ON×f
SWは、周期に対するオン時間の比(すなわちデューティ比)である。
【0067】
したがってハイサイドスイッチSWH
#の等価抵抗R
EQとキャパシタC
#は1次のローパスフィルタを形成しており、そのカットオフ周波数fc
Hは、
fc
H=1/(2π・R
EQ・C
#)
となり、カットオフ周波数fc
Hは周波数には依存せず、デューティ比によって制御可能である。
【0068】
またローサイドスイッチSWL
#の等価抵抗R
EQと出力キャパシタC
OUTも1次のローパスフィルタを形成しており、そのカットオフ周波数fc
Lは、
fc
L=1/(2π・R
EQ・C
OUT)
となり、カットオフ周波数fc
Lも、周波数には依存せず、デューティ比によって制御可能となる。
【0069】
電源回路100全体としては、1次のローパスフィルタの2段直列接続(すなわち2次のローパスフィルタ)となる。
【0070】
第1あるいは第2実施例において、遅延量τをクロックCLKの周期と連動して変化させることにより、以下の効果が得られる。
【0071】
遅延ライン136の遅延量τは、オン時間T
ONに相当する。したがってクロックCLKの周期とオン時間T
ONを連動させることで、デューティ比を一定にたもつことができ、電源回路100のローパスフィルタとしてのカットオフ周波数を一定に保つことができる。
【0072】
加えて第1実施例で説明する制御は、第2実施例に比べて以下の利点を有する。第2実施例では、ハイサイドスイッチがデューティ比50%でスイッチングするため、ローパスフィルタのカットオフ周波数fc
Hは高くなる。これに対して、第1実施例では、ハイサイドスイッチがより小さいデューティ比でスイッチングするため、ローパスフィルタのカットオフ周波数fc
Hをより低くすることができる。これにより、より低い周波数の電源ノイズを除去することが可能となる。
【0073】
図10は、一実施例に係る集積回路300の回路図である。集積回路300は、電源ノイズ耐性の高いデジタル回路302、PLL回路310および電源回路100を備える。
【0074】
PLL回路310は、周波数可変オシレータ312と、フィードバック回路314と、を備え、基準クロックREFCLKの周波数を逓倍した周波数のシステムクロックCLKを生成し、デジタル回路302に供給する。
【0075】
周波数可変オシレータ312は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)あるいはDCO(Digital Controlled Oscillator)であり、出力が入力にフィードバックされた遅延回路316を含む。フィードバック回路314には周波数可変オシレータ312が生成するクロックCLKがフィードバックされており、フィードバック回路314は基準クロックREFCLKにもとづいて制御電圧V
CTRL(あるいは制御コードD
CTRL)を生成し、遅延回路316の遅延量を調節する。
【0076】
デジタル回路302およびフィードバック回路314には、ノイズ耐性が高い回路であり、電源ピンVDDの電源電圧V
DDが直接供給される。
【0077】
一方、周波数可変オシレータ312では、電源ノイズがクロックCLKの位相雑音として現れるため、電源ノイズ耐性が低い。そこで周波数可変オシレータ312の電源端子には電源回路100の出力電圧V
OUTが供給される。
【0078】
電源回路100は、周波数可変オシレータ312が生成するクロックCLKにもとづいて状態遷移させることができる。なお電源回路100のタイミング発生器120を、
図5あるいは
図7の構成とする場合、遅延ライン122を、遅延回路316のレプリカとし、遅延ライン122の遅延量を、遅延回路316の遅延量に追従させるとよい。これにより、
図9を参照して説明したように、電源回路100のローパスフィルタとしてのカットオフ周波数を一定に保つことができる。
【0079】
図11(a)は、集積回路300の等価回路図である。一般的な2次PLL内における周波数可変オシレータ312のノイズ特性(電源ノイズの周波数に対する位相雑音の周波数特性)は、2次のハイパス特性H
HPF(s)の伝達関数で表される。一方、上述のように、電源回路100はローパス特性H
LPF(s)の伝達関数で表される。
【0080】
そこで、
図11(b)に示すように、ローパスフィルタのカットオフ周波数が、ハイパスフィルタのカットオフ周波数fc’より低くなるように動作条件を定めることにより、クロックCLKの位相雑音を好適に除去できる。
【0081】
図12は、一実施例に係る集積回路400の回路図である。集積回路400は、デジタル回路402、PLL回路410、電源回路100
C,100
Fを備える。PLL回路410の周波数可変オシレータ412は、直列に接続される2個の遅延回路416
C,416
Fを含む。遅延回路416
Cは、相対的に低い分解能で遅延が制御可能であり、遅延回路416は、相対的に高い分解能で遅延が制御可能である。すなわち、遅延回路416
Cによって周波数可変オシレータ412の発振周波数が低い精度で調整され、遅延回路416
Fによって周波数可変オシレータ412の発振周波数が高い精度で調整される。遅延回路416
C,416
Fは、それぞれの遅延レンジに応じて異なる構成を有する。たとえば前段の遅延回路416
Cは、単位遅延を与える論理ゲートを多段に接続し、制御コードに応じて通過する論理ゲートの個数を可変としてもよい。後段の遅延回路416
Fは、クロックの伝搬ラインに可変キャパシタを接続し、可変キャパシタの容量を変化させる構成としてもよい。
【0082】
電源回路100
Cは、遅延回路416
Cに出力電圧V
OUTCを供給する。電源回路100
Cの状態遷移のためのクロックは、対応する遅延回路416
Cの出力から取り出してもよい。同様に電源回路100
Fは遅延回路416
Fに出力電圧V
OUTFを供給する。電源回路100
Fの状態遷移のためのクロックは、対応する遅延回路416
Fの出力から取り出してもよい。
【0083】
電源回路100
Cのタイミング発生器120を、
図5あるいは
図7の構成とする場合、遅延ライン122を、遅延回路416
Cのレプリカとし、それらに対応する制御コードを与えることにより、遅延ライン122の遅延量を、遅延回路416
Cの遅延量に追従させるとよい。
【0084】
同様に、電源回路100
Fのタイミング発生器120を、
図5あるいは
図7の構成とする場合、遅延ライン122を、遅延回路416
Fのレプリカとし、遅延ライン122の遅延量を、遅延回路416
Fの遅延量に追従させるとよい。
【0086】
図13は、位相雑音特性の測定結果を示す図である。実線は、電源電圧V
DDに10kHz、振幅0.1Vの電源ノイズを重畳したときの特性である。電源回路100を省略したときの特性である。これらの比較から分かるように、電源回路100を設けることにより、位相雑音を大きく(26dB)改善することができる。
【0087】
図14(a)、(b)は、電源電圧V
DD、出力電圧V
OUT、クロックCLKの周波数の時間波形(シミュレーション結果)を示す図である。
図14(a)は電源回路100を省略したときの、
図14(b)は電源回路100を設けたときの波形を示す。クロックCLKの周波数f
OSCは200MHz、電源ノイズの周波数は50MHzとしている。ノイズの振幅は0.1V、電源電圧V
DD=1.5V、温度は25℃である。
【0088】
図14(a)、(b)の比較から分かるように、電源回路100を挿入することにより、周波数の変動は、1/20に低減されている。この変動量は電源回路100で使用されるスイッチ制御信号のデューティ比や容量値を変更することで調整可能である。
【0089】
実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0090】
(第1変形例)
電源回路100の複数のスイッチの配置(トポロジー)は、
図4のそれに限定されない。当業者によれば、他のスイッチのレイアウトを用いても、入力端子102、複数の中間キャパシタC
1〜C
N、出力キャパシタC
OUTを適切に接続、分離できることが理解される。
【0091】
(第2変形例)
同様にタイミング発生器120の構成も、
図5や
図7のそれに限定されない。また電源回路100の動作シーケンスは、
図6や
図8に限定されない。
【0092】
(第3変形例)
電源回路100の負荷回路はデジタル回路に限定されず、アナログ回路であってもよく、クロック周期に同期して電力消費する回路であればその構成は問わない。
【0093】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。