【解決手段】DAB回路100二次側の第2コンバータ部10の直流側から検出された電圧検出値と、当該第2コンバータ部10の直流側において設定されている電圧指令値以下であって、当該電圧検出値において設定されている閾値電圧と、を比較する。この比較により電圧検出値が閾値電圧よりも小さいと判定した場合において、第1コンバータ部4とトランス8の一次側との間、または第2コンバータ部10とトランス8二次側との間から検出された電流検出値等を適用して、第1,第2コンバータ部4,10の各スイッチ5u〜5y,12u〜12yのゲート信号G−5,G−12をそれぞれ生成する。電流検出値は、三角波キャリア信号におけるゼロクロス点側の立ち下り時および立ち上り時のうち何れか一方のタイミングでサンプリングする。
【背景技術】
【0002】
種々の分野で適用(例えばバッテリシミュレータ等の産業用機器に適用)されている直流電源装置の一例として、直流電源と負荷との間(後述の
図1では一次側の直流電源1と二次側の負荷2との間)を絶縁型DC−DCコンバータ(以下、単に絶縁型コンバータと適宜称する)により電力伝送する構成がある。
【0003】
電力伝送においては、例えば絶縁型コンバータの一次側直流電力をスイッチング素子等により交流電力に変換してトランス一次側に流し、当該トランス二次側に伝送された交流電力をスイッチング素子により整流して直流電力に変換することが挙げられる。
【0004】
トランスは、体積が印加電圧の周波数に依存することから、当該周波数が高い構成とした場合には、小型化することが可能となる。しかしながら、前述のようにスイッチング素子により電力を変換する場合に発生し得るスイッチング損失は、周波数にほぼ比例するものである。このため、絶縁型コンバータにおいて単に周波数が高くなるような構成にした場合には、当該絶縁型コンバータの損失が増大してしまうおそれがある。
【0005】
近年、絶縁型コンバータの1スイッチングあたりのスイッチング損失を低減したり、当該絶縁型コンバータの小型化と低損失化を両立させる構成として、Dual Active Bridge方式によるものが研究されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
このDual Active Bridge方式の絶縁型コンバータは、双方向に電圧変換可能な一対のコンバータ部(後述の
図1では第1,第2コンバータ部4,10)がトランス等によって結合された結合回路(以下、単にDAB回路と適宜称する)を備えている。そして、DAB回路の各コンバータ部のスイッチング素子において、それぞれゲート信号を出力して適宜スイッチング制御することにより、当該各コンバータ部間で所望の電力伝送ができるような構成となっている。また、スイッチング素子に対してコンデンサを並列接続したり、トランスに対してリアクトルを直列接続した構成もある。
【0007】
また、スイッチング素子のデッドタイム中にコンデンサとリアクトルによる共振現象を利用し、スイッチング素子の印加電圧をゼロにしてゼロ電圧スイッチングを図った構成もあり、当該スイッチング素子のターンオン損失をゼロにすることも可能となっている。
【0008】
ところで、絶縁型コンバータにおいては、DAB回路の各コンバータ部の直流側にコンデンサを設けた構成がある。この構成により、例えばトランス一次側から二次側に伝送された交流電力は、スイッチング素子により整流された後、コンデンサ(例えば、後述
図1の二次側では第2平滑コンデンサ11)に入力されて直流電力に変換されることとなる。
【0009】
このようにコンデンサを有した構成の場合、当該コンデンサが十分充電されていない状態(例えば絶縁型コンバータの運転開始時等)では、例えば過大な突入電流により、絶縁型コンバータの構成部品(例えばトランスやスイッチング素子等)の故障等を招く可能性がある。
【0010】
突入電流による影響を抑制する技術としては、例えばDAB回路のトランス入力部に電流制限回路を設けて過電流を抑制する技術(特許文献1)や、入力電流の検出結果に応じてスイッチング素子のスイッチング制御することにより充電電流を設定値以下に抑える技術(特許文献2)が知られている。また、PWM電力変換装置の電流検出方法としては、出力電流を三角波キャリア信号の最大振幅点でサンプリングして基本波成分を抽出する技術(特許文献3)等が知られている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態における絶縁型コンバータは、単に特許文献1〜3を適用したような構成とは、全く異なるものである。
【0027】
すなわち、本実施形態による絶縁型コンバータは、トランスを介して結合された第1,第2コンバータ部による電力伝送の出力電力を制御する制御回路において、第2コンバータ部の直流側から検出された電圧検出値(後述の
図2では電圧検出値のノイズ成分を除去した値)と、当該電圧検出値において設定されている閾値電圧(例えば第2コンバータ部の直流側において設定されている電圧指令値以下の閾値電圧)と、を比較(後述の
図2では両値の差分を評価)するものである。
【0028】
そして、前記比較結果において、電圧検出値が閾値電圧よりも小さい状態であると判定した場合に、第1コンバータ部とトランスの一次側との間、または第2コンバータ部とトランス二次側との間から検出された電流検出値を適用して、第1,第2コンバータ部の各半導体スイッチング素子のゲート信号をそれぞれ生成する、ことを特徴とするものである。
【0029】
このような本実施形態の絶縁型コンバータによれば、DAB回路の各コンバータ部の直流側に設けられている平滑コンデンサの充電状態を電圧検出値により把握できる。これにより、平滑コンデンサを充電するための予備充電動作の要否(例えば絶縁型コンバータの運転開始時等で平滑コンデンサの充電が不十分で、予備充電動作が必要な状態であるかどうか)を適宜判定することができる。
【0030】
また、電流検出値を適用して生成されたゲート信号によってDAB回路の各コンバータ部を適宜スイッチング制御することにより、平滑コンデンサを十分充電した状態(例えば所望の電力伝送を行う場合の通常動作が可能な状態)にすることが可能となる。
【0031】
そして、絶縁型コンバータの突入電流による影響を抑制しながら、所望の電力伝送が可能となる。
【0032】
本実施形態の絶縁型コンバータは、前述のように予備充電動作の要否を適宜判定でき、電流検出値を適用して生成されたゲート信号によってDAB回路の各コンバータ部を適宜スイッチング制御できる構成であれば、種々の分野(例えば電力変換技術等の分野)の技術常識を適宜適用して設計することが可能であり、その一例として以下に示すものが挙げられる。
【0033】
≪本実施形態による絶縁型コンバータを適用した直流電源装置の構成例≫
図1に示す直流電源装置は、本実施形態の一例である絶縁型コンバータAを説明するためのものである。
図1に示す絶縁型コンバータAは、DAB回路100と制御回路200を主として備え、直流電源1と負荷2との両者間に介在して電力伝送できるように構成されている。この構成において、負荷2が回生負荷の場合には、双方向の電力伝送が可能となる。
【0034】
DAB回路100は、直流電源1に並列に接続された第1平滑コンデンサ3と、スイッチング回路を有した第1コンバータ部4と、絶縁されたトランスとしての高周波トランス8と、スイッチング回路を有した第2コンバータ部10と、負荷2に並列に接続された第2平滑コンデンサ11と、を主として備えている。
【0035】
第1コンバータ部4のスイッチング回路は、例えばIGBTやMOSFET等を用いて成る複数の半導体スイッチング素子5u,5x,5v,5y(以下、単にスイッチ5u〜5yと適宜称する)を有した構成(フルブリッジ回路構成)である。
【0036】
図1の第1コンバータ部4のスイッチング回路の場合、直列接続されたスイッチ5u,5xから成る第1スイッチングアームと、直列接続されたスイッチ5v,5yから成る第2スイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路で構成されている。
【0037】
そして、第1コンバータ部4の直流側が第1平滑コンデンサ3に接続され、当該第1コンバータ部4の交流側が高周波トランス8の第1巻線(一次側)8aに接続されており、直流/交流間の双方向の電力変換を行うことが可能な構成となっている。
【0038】
図1中の各スイッチ5u〜5yの場合、それぞれダイオードが逆並列接続されている。また、各スイッチ5u〜5yには、それぞれ並列にコンデンサ6u〜6yが接続され、ゼロ電圧スイッチング回路構成となっている。このゼロ電圧スイッチング回路構成により、各スイッチ5u〜5yのターンオン時において、各素子の両端電圧をほぼゼロ電圧にすることも可能となる。
【0039】
また、各スイッチ5u〜5yとトランス8との間の交流入出力線には、第1リアクトル7が接続され、当該第1リアクトル7と第1巻線8aとが直列接続された構成となっている。
【0040】
第2コンバータ部10のスイッチング回路は、第1コンバータ部4の場合と同様に、例えばIGBTやMOSFET等を用いて成る複数のスイッチ12u〜12yを有した構成(フルブリッジ回路構成)である。
【0041】
図1の第2コンバータ部10のスイッチング回路の場合、直列接続されたスイッチ12u,12xから成る第3スイッチングアームと、直列接続されたスイッチ12v,12yから成る第4スイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路で構成されている。
【0042】
そして、第2コンバータ部10の直流側が第2平滑コンデンサ11に接続され、当該第2コンバータ部4の交流側がトランス8の第2巻線(二次側)8bに接続されており、直流/交流間の双方向の電力変換を行うことが可能な構成となっている。
【0043】
図1中の各スイッチ12u〜12yの場合も、それぞれダイオードが逆並列接続されている。また、各スイッチ12u〜12yには、それぞれ並列にコンデンサ13u〜13yが接続され、ゼロ電圧スイッチング回路構成となっている。このゼロ電圧スイッチング回路構成により、各スイッチ12u〜12yのターンオン時において、各素子の両端電圧をほぼゼロ電圧にすることも可能となる。
【0044】
また、各スイッチ12u〜12yとトランス8との間の交流入出力線には、第2リアクトル9が接続され、当該第2リアクトル9と第2巻線8bとが直列接続された構成となっている。
【0045】
DAB回路100においては、交流電流Iを検出する電流検出器20が設置されている。この電流検出器20は、前述のように交流電流Iを検出できるものであれば、種々の態様を適用することができ、その設置位置も適宜変更することが可能である。電流検出器20の具体例としては、例えばホールCT等のセンサを用いてなるものが挙げられる。また、電流検出器20の設置位置においては、トランス8の一次側または二次側において交流電流Iを検出できる位置が挙げられる。
【0046】
図1の電流検出器20の場合、トランス8の一次側(第1コンバータ部4とトランス8の第1巻線8aとの間)において交流電流Iを検出する構成となっているが、例えばスイッチ5u,5xの共通接続点と第1リアクトル7との間や、スイッチ5v,5yの共通接続点と第1巻線8aとの間で検出する構成であっても良い。このように検出された電流検出値は、制御回路200に入力されることとなる。
【0047】
また、DAB回路100の第2コンバータ部10直流側において、当該直流側の直流電圧を検出する電圧検出器30が設置されている。この電圧検出器30は、前述のように直流電圧を検出できるものであれば、種々の態様を適用することができ、その設置位置も適宜変更することが可能である。
図1の電圧検出器30の場合、第2平滑コンデンサ11と負荷2との間に設置され、当該第2平滑コンデンサ11の直流電圧を検出できる構成となっている。このように検出された電圧検出値も、制御回路200に入力されることとなる。
【0048】
制御回路200は、電流検出器20で検出された電流検出値と、電圧検出器30で検出された電圧検出値が入力される。また、第2コンバータ部10直流側における所望の電圧指令値が設定されており、所望の三角波キャリア信号を生成できるようになっている。
【0049】
また、制御回路200は、電流検出値,電圧検出値,電圧指令値,三角波キャリア信号等を適宜適用して、第1,第2コンバータ部4,10の各スイッチ5u〜5y,12u〜12yをそれぞれスイッチング制御するゲート信号G−5(具体的には、各スイッチ5u〜5y毎のゲート信号;オンオフ指令信号),G−12(具体的には、各スイッチ12u〜12y毎のゲート信号;オンオフ指令信号)を生成できるようになっている。
【0050】
そして、制御回路200は、前記生成されたゲート信号G−5,G−12を各スイッチ5u〜5y,12u〜12yにそれぞれ送信し、第1,第2コンバータ部4,10の各々のスイッチング回路を駆動制御できるような制御構成となっている。
【0051】
以上示した絶縁型コンバータAにおいては、目的に応じて適宜設計変更することができる。例えば、コンデンサ6u〜6y,13u〜13yや第1,第2リアクトル7,9は、適宜省略しても良い。
【0052】
また、制御回路200においても、前述のように第1,第2コンバータ部4,10の各々のスイッチング回路を駆動制御できるような制御構成であれば、種々の態様を適用することができ、具体例としては以下に示す実施例が挙げられる。なお、
図1に示すものと同様のものには同一符号を適用する等により、その詳細な説明を適宜省略する。
【0053】
≪制御回路200の実施例≫
図2は、制御回路200の実施例を示すものである。なお、
図1と同様のものには、同一符号を付する等により、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図2に示す制御回路200は、電圧検出ローパスフィルタ部(LPF:Low−Pass Filter)210、電流検出ローパスフィルタ部220、運転状態判定部230、指令切替部240、予備充電動作用の電圧制御部(AVR:Automatic Voltage Regurator)250、電流制限部260、三角波生成部270、ADC部(ADC:Analog−to―Digital Converter)280、実効値演算部(RMS:Root Mean Square value)290、電流制御部(ACR:Automatic Current Regurator)300、前回値保持部310、予備充電動作用のゲート生成部320、スイッチング信号切替部330、デッドタイム生成部340、通常動作用の電圧制御部350、通常動作用のゲート生成部360を、主として備えている。
【0055】
電圧検出ローパスフィルタ部210は、電圧検出器30で検出された電圧検出値が入力され、当該電圧検出値の高周波のノイズ成分を除去できる構成となっている。
【0056】
減算器23aは、電圧検出ローパスフィルタ部210の出力と電圧指令値との差分を導出するものであり、当該差分を、運転状態判定部230と指令切替部240とに入力できる構成となっている。
【0057】
運転状態判定部230は、減算器23aから入力された差分を評価し、平滑コンデンサを充電するための予備充電動作の要否(例えば絶縁型コンバータの運転開始時等で平滑コンデンサの充電が不十分で、予備充電動作が必要な状態であるかどうか)を判定できる構成となっている。
【0058】
この運転状態判定部230では、例えば差分が正の値の場合(電圧検出値のノイズ成分を除去した値が、閾値電圧未満の場合)に、予備充電動作が要する状態と判定し、当該差分が0以下の場合(電圧検出値のノイズ成分を除去した値が、閾値電圧以上の場合)には、通常動作で十分(予備充電動作を必要とせず、所望の電力伝送を行える状態)と判定する。
【0059】
運転状態判定部230における閾値電圧は、例えば絶縁型コンバータAの構成部品を考慮(例えば第2平滑コンデンサ11の容量等を考慮)して適宜設定することが可能なものであり、具体例としては電圧指令値Vref以下に設定することが挙げられる。
【0060】
運転状態判定部230の判定結果は、指令切替部240およびスイッチング信号切替部330に入力され、当該判定結果に応じて、指令切替部240およびスイッチング信号切替部330の動作が適宜切り替わり、例えば以下に示す制御構成により予備充電動作または通常動作が実行されることとなる。
【0061】
<予備充電動作の制御構成>
指令切替部240およびスイッチング信号切替部330が予備充電動作に切り替わっている場合、当該指令切替部240の出力(つまり電圧検出値のノイズ成分を除去した値と閾値電圧(電圧指令値Vref等)の差分)が、予備充電動作用の電圧制御部250に入力される。
【0062】
電圧制御部250は、指令切替部240の出力に基づいて、電圧検出値が電圧指令値Vrefとなるように制御できる構成となっている。この電圧制御部250の制御構成は、例えばPID補償器等を用いてなる構成が挙げられる。そして、電圧制御部250の出力は、電流指令値となって適用されることとなる。
【0063】
電流制限部260は、電流指令値に係る許容電流値Imaxが設定されているものであり、電圧制御部250から入力された電流指令値を、当該許容電流値Imax以下となるように制限できる構成となっている。
【0064】
三角波生成部270は、各スイッチ5u〜5y,12u〜12yのスイッチング、および交流電流Iの検出のサンプルの基準となる三角波キャリア信号を生成できる構成となっている。三角波キャリア信号においては、当該三角波キャリア信号の周波数がスイッチング周波数となり、三角波キャリア信号の平均値がゼロとなるようにした正負対称の信号である。このような三角波キャリア信号により、例えば後述の
図4に示すように、当該三角波キャリア信号の正の部分が山部となり、負の部分が谷部として現れることとなる。
【0065】
電流検出器20で検出した電流検出値は、電流検出ローパスフィルタ部220に入力され、高周波のノイズ成分が除去される。そして、電流検出ローパスフィルタ部220の出力と、三角波生成部270で生成した三角波キャリア信号が、それぞれADC部280に入力される。
【0066】
ADC部280は、電流検出ローパスフィルタ部220でノイズを除去した電流検出値を、デジタル値に変換してサンプリングできる構成となっている。この電流検出値の変換およびサンプリングのタイミングは、三角波キャリア信号のゼロクロス点側とすることが挙げられる。具体的には、三角波キャリア信号が正から負に変わる時点をサンプル点(
図4では丸で囲ったサンプル点)とすることが挙げられる。
【0067】
また、電流検出値の変換およびサンプリングのタイミングにおいて、三角波キャリア信号が負から正に変わる時点としても良いが、この場合、サンプリングする電流極性が逆向きとなるため符号反転を適宜行うことが挙げられる。
【0068】
例えば後述の
図4では、三角波キャリア信号が正から負に変わる時点でサンプリングおよび変換する場合の例であるが、負から正に変わる時点でサンプリングおよび変換する場合についても、同様に符号反転等を適宜行うことが挙げられる。
【0069】
ADC部280でサンプリングした値は、実効値演算部290に入力され、例えば後述の(1)式や(2)式に基づいて実効値に変換される。この変換された実効値においては、減算器30aに出力される。
【0070】
減算器30aは、電流制限部260の出力と実効値演算部290の出力との差分を導出するものであり、当該差分を、電流制御部300に入力できる構成となっている。
【0071】
電流制御部300においては、指令切替部240の出力に基づいて、電流検出値が電流指令値となるように制御できる構成となっている。この電流制御部300の制御構成は、例えばPID補償器等を用いてなる構成が挙げられる。そして、電流制御部300の出力は、DAB回路100の一次側UX相と一次側VY相との間の位相差指令値となって適用されることとなる。
【0072】
電流制御部300の出力である位相差指令値と三角波生成部270で生成した三角波キャリア信号は、予備充電動作用のゲート生成部320に入力される。なお、
図2の電流制御部300の出力である位相差指令値においては、前回値保持部310にも入力され、実効値演算部290での実効値の変換に適用可能(例えば後述の(2)式に適用可能)となっている。
【0073】
ゲート生成部320では、三角波キャリア信号と位相差指令値とを比較して、各スイッチ5u〜5y,12u〜12yのスイッチング信号をそれぞれ生成できる構成となっている。そして、デッドタイム生成部340は、スイッチング信号切替部330を介して、ゲート生成部320の出力が入力され、一次側ゲート信号G−5,二次側ゲート信号G−12を生成できる構成となっている。
【0074】
<通常動作の制御構成>
指令切替部240およびスイッチング信号切替部330が通常動作に切り替わっている場合、当該指令切替部240の出力が、通常動作用の電圧制御部350に入力される。
【0075】
電圧制御部350は、指令切替部240の出力に基づいて、電圧検出値が電圧指令値Vrefとなるように制御できる構成となっている。この電圧制御部350の制御構成は、例えばPID補償器等を用いてなる構成が挙げられる。そして、電圧制御部350の出力は、DAB回路100の一次側UXVY相と二次側UXVY相との間の位相差指令値となって適用されることとなる。
【0076】
電圧制御部350の出力である位相差指令値は、通常動作用のゲート生成部360に入力される。ゲート生成部360では、電圧制御部350の出力に基づいて、一次側UXVY相と二次側UXVY相のスイッチング信号を生成できる構成となっている。なお、スイッチング周波数でデューティ50%の矩形波信号を一次側U相Y相スイッチング信号とした場合、その信号と180度位相差の矩形波信号を一次側X相V相スイッチング信号とすることが挙げられる。
【0077】
また、一次側U相Y相スイッチング信号から、電圧制御部350の出力である位相差指令値分進み位相の矩形波信号を、二次側U相Y相スイッチング信号、その信号と180度位相差の矩形波信号を二次側X相V相スイッチング信号とすることも挙げられる。
【0078】
このようなゲート生成部360によるスイッチング信号の生成については、例えば非特許文献1に記載されている内容(通常のDAB回路のゲート生成動作の内容等)を適宜適用することが可能である。
【0079】
ゲート生成部360の出力は、スイッチング信号切替部330を介して、デッドタイム生成部340に入力され、一次側ゲート信号G−5、二次側ゲート信号G−12が生成されることとなる。
【0080】
<ゲート生成部320の制御動作例>
ゲート生成部320においては、例えば
図3に示すような制御構成を適用して、ゲート生成動作させることが挙げられる。なお、
図1,
図2と同様のものには、同一符号を付する等により、その詳細な説明を省略する。
【0081】
図3に示すゲート生成部320は、矩形波生成部410、U相X相乗算器421、V相Y相乗算器422、U相X相三角波比較部431、V相Y相三角波比較部432、を主として備えている。そして、ゲート生成部320には、電流制御部300の出力である位相差指令値と、三角波生成部270で生成された三角波キャリア信号と、が入力される。
【0082】
この
図3に示すゲート生成部320により、一次側U相,X相のゲート信号の生成する場合には、まず矩形波生成部410において、三角波キャリア信号に同期した矩形波信号を生成する。そして、三角波キャリア信号の立ち上がり時(傾きが正の時)にLow、立ち下がり時(傾きが負の時)にHighとした矩形波信号を、U相X相矩形波信号としてU相X相乗算器421に入力する。
【0083】
U相X相乗算器421では、矩形波生成部410で生成したU相X相矩形波信号に位相差指令値を乗算し、
図4に示すようなU相X相被比較波が得られる。このU相X相被比較波は、U相X相三角波比較部431に入力される。
【0084】
U相X相三角波比較部431では、例えば
図4に示すように、U相X相被比較波と三角波キャリア信号の比較結果に基づいた一次側U相X相スイッチング信号を生成する。
図4の場合、U相X相被比較波>三角波キャリア信号となっている領域において、スイッチ5uがスイッチングオン、スイッチ5xがスイッチングオフとなり、U相X相被比較波≦三角波キャリア信号となっている領域において、スイッチ5uがスイッチングオフ、スイッチ5xがスイッチングオンとなるような信号になっている。
【0085】
このように生成された一次側U相X相スイッチング信号は、スイッチング信号切替部330を経由して、デッドタイム生成部340に入力される。そして、デッドタイム生成部340により、当該一次側U相X相スイッチング信号の立ち上がり部がデッドタイム分削除され(デッドタイム分オン信号→オフ信号に修正されて)、一次側U相X相のゲート信号が生成される。
【0086】
次に、一次側V相、Y相のゲート信号の生成する場合には、まず矩形波生成部410において、三角波キャリア信号に同期した矩形波信号を生成する。そして、三角波キャリア信号の立ち上がり時(傾きが正の時)にHigh、立ち下がり時(傾きが負の時)にLowとした矩形波信号を、V相Y相矩形波信号としてV相Y相乗算器422に入力する。
【0087】
V相Y相乗算器422では、矩形波生成部410で生成したV相Y相矩形波信号に位相差指令値を乗算し、
図4に示すようなV相Y相被比較波が得られる。このV相Y相被比較波は、V相Y相三角波比較部432に入力される。
【0088】
V相Y相三角波比較部432では、例えば
図4に示すように、V相Y相被比較波と三角波キャリア信号の比較結果に基づいた一次側V相Y相スイッチング信号を生成する。
図4の場合、V相Y相被比較波>三角波キャリア信号となっている領域において、スイッチ5vがスイッチングオン、スイッチ5yがスイッチングオフとなり、V相Y相被比較波≦三角波キャリア信号となっている領域においては、スイッチ5vがスイッチングオフ、スイッチ5yがスイッチングオンとなるような信号になっている。
【0089】
このように生成された一次側V相Y相スイッチング信号は、スイッチング信号切替部330を経由して、デッドタイム生成部340に入力される。そして、デッドタイム生成部340により、当該一次側V相Y相スイッチング信号の立ち上がり部がデッドタイム分削除され(デッドタイム分オン信号→オフ信号に修正されて)、一次側V相Y相のゲート信号が生成される。
【0090】
以上のように生成された一次側U相X相のゲート信号と一次側V相Y相のゲート信号とを合わせて、一次側ゲート信号G−5となる。
【0091】
さらに、二次側U相X相V相Y相のゲート信号については、常にスイッチングオフ状態であり、ゲート生成部320で生成したスイッチングオフ信号が、スイッチング信号切替部330、デッドタイム生成部340に入力され、二次側ゲート信号G−12が生成される。
【0092】
以上示したように、予備充電動作においてゲート生成部320を制御動作させることにより、
図4に示すような波形の交流電圧V1および交流電流Iが発生することとなる。
【0093】
図4によると、電圧V1は、位相差指令分(スイッチング周波数半周期に対して期間T1)のみ、電圧出力されていることが読み取れる。そして、
図4の期間T1の間、電圧V1と二次側の第2平滑コンデンサ11の差分電圧が第1リアクトル7および第2リアクトル9に印加され、電流Iが直線的に増加することとなる。これにより、電流Iの電流波形は、
図4に示すような三角波となる。
【0094】
したがって、電流制御部300において、一次側UX相と一次側VY相との間の位相差を制御することにより、電流Iを適宜制御できることが判る。
【0095】
図4の電流Iのサンプル点は、期間T1の中央位置(例えば期間Tの中央に位置する丸で囲ったサンプル点)であるため、三角波のピーク値の半分の電流値をサンプリングできる。ここで、
図4に示すような三角波の実効値は、下記(1)式で算出することができる。下記(1)式のI
rmsは電流実効値(A)、I
peakは電流ピーク値(A)、Dutyはデューティとする。
【0097】
電流Iは、デューティが「期間T1/スイッチング周波数半周期」の三角波であると、略みなすことが可能である。このため、実効値演算部290では、ADC部280出力の電流サンプリング値と、電流制御部300の出力である位相差指令値と、を用いて、下記(2)式で電流実効値を演算することが可能である。なお、
図2の制御構成の場合、位相差指令値は、実効値演算部290の演算後に求められるため、下記(2)式のように、前回値保持部310に保持されている前回値を利用することが可能である。(2)式のI
rmsは電流I実効値(A)、I
sampleは電流Iのサンプリング値(A)、δ
cmdは位相差指令値の前回値(deg)とする。
【0099】
なお、以上の電流制御部300においては、実効値演算部290において電流実効値を演算して制御する場合を説明したが、例えば電流実効値の厳密な制御が不要な場合には、ADC部280の値を直接適用して制御することも可能である。このような制御の場合、電流Iのピーク値を制御することが可能となる。
【0100】
<ゲート生成部360の制御動作例>
ゲート生成部360においては、例えば非特許文献1に記載されている内容(通常のDAB回路のゲート生成動作の内容等)を適宜適用して、
図5に示すような一次側ゲート信号G−5、二次側ゲート信号G−12を生成するようにゲート生成動作させることが挙げられる。
【0101】
この場合、DAB回路100の出力電力は、非特許文献1の記載内容のとおり、下記の(3)式で示すことができる。(3)式のPはDAB回路100の出力電力、E
1はDAB回路100の一次側直流電圧、E
2はDAB回路100の二次側直流電圧、Nはトランス8の巻線比、ωはスイッチング角周波数、LはDAB回路100の一次側に等価換算したリアクトルのインダクタンス、δは
図5中の交流電圧V1と交流電圧V2の位相差とする。
【0103】
(3)式によると、一次側と二次側との間の位相差(
図5における期間T2)を制御することにより伝送電力が制御されることがわかる。よって
図2の制御構成によれば、出力電圧の制御が可能であることが判る。
【0104】
以上示したような制御構成・制御動作によれば、絶縁型コンバータAの運転開始時等において、例えば
図6のように電圧検出値が電圧指令値Vref未満の場合には、予備充電動作の状態となり、電流I実効値が許容電流値Imax以下となるよう制御される。そして、電圧検出値が電圧指令値Vrefに到達すると、通常動作の状態となり、電圧制御が可能となる。
【0105】
なお、運転状態判定部230の判定電圧を変化させることにより、電圧検出値が電圧指令値Vref以下の場合(すなわち、閾値電圧が電圧指令値Vref以下に設定されている場合)でも、通常動作状態として動作可能であることは自明である。
【0106】
以上示した絶縁型コンバータAのような構成によれば、DAB回路のトランスの入力電流を直接検出および制御し、平滑コンデンサを充電するための予備充電動作の要否を適宜判定することができる。そして、絶縁型コンバータAの起動時(運転開始時等)の突入電流を抑制し、結果として構成部品の保護を行いながら短い時間での起動が可能であることが判る。
【0107】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。