【解決手段】DC/DCコンバータ100は、例えば、スイッチ出力段(N1、N2、L1、C1、C2、P1)で生成される出力電圧VO1に応じた帰還電圧Vfbと所定の基準電圧Vrefとの差分に応じた誤差信号Ierr(Verr)を生成するエラーアンプ121と、誤差信号Ierr(延いてはオフ信号Soff)に応じて前記スイッチ出力段を駆動する駆動部110と、出力電圧VO1の低下が所定期間内に規定回数以上生じたときにエラーアンプ121のゲインを引き上げるゲイン切替部140と、を有する。ゲイン切替部140は、例えば、帰還電圧Vfbと所定の検出電圧Vdetとを比較して比較信号S1を生成するコンパレータ141と、比較信号S1のパルスをカウントしてエラーアンプ121のゲイン切替信号S2を生成するカウンタ142と、を含む。
前記ゲイン切替部は、前記エラーアンプのゲインを引き上げた後、前記出力電圧の低下が解消されたときに前記エラーアンプのゲインを元に戻すことを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
前記ゲイン切替部は、前記帰還電圧と所定の検出電圧とを比較して比較信号を生成するコンパレータと、前記比較信号のパルスをカウントして前記エラーアンプのゲイン切替信号を生成するカウンタと、を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のDC/DCコンバータ。
単一の抵抗ラダーを用いて所定の電圧を異なる分圧比で分圧することにより前記基準電圧及び前記検出電圧を生成する分圧部をさらに有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のDC/DCコンバータ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<電子機器>
図1は、電子機器の全体構成を示す図である。本構成例の電子機器1は、システム電源IC10と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(本図では、インダクタL1及びL2、並びに、キャパシタC1〜C4)を有する。
【0020】
システム電源IC10は、入力電圧VIの供給を受けて複数系統の出力電圧(本図では出力電圧VO1〜VO3の3系統)を生成する半導体集積回路装置である。なお、システム電源IC10は、IC外部との電気的な接続を確立するための手段として、複数の外部端子(本図では、外部端子T11〜T15、外部端子T21〜T24、並びに、外部端子T31〜T34)を有する。
【0021】
システム電源IC10の外部において、外部端子T11は、キャパシタC2の第1端に接続されている。外部端子T12は、入力電圧VIの印加端に接続されている。なお、外部端子T12と接地端との間には、バイパスキャパシタを接続してもよい。外部端子T13は、インダクタL1の第1端とキャパシタC2の第2端に接続されている。外部端子T14は、インダクタL1の第2端及びキャパシタC1の第1端と共に、出力電圧VO1の印加端に接続されている。外部端子T15及びキャパシタC1の第2端は、いずれも接地端に接続されている。
【0022】
外部端子T21は、出力電圧VO1の印加端に接続されている。なお、外部端子T21と接地端との間には、バイパスキャパシタを接続してもよい。外部端子T22は、インダクタL2の第1端に接続されている。外部端子T23は、インダクタL2の第2端及びキャパシタC3の第1端と共に、出力電圧VO2の印加端に接続されている。外部端子T24及びキャパシタC3の第2端は、いずれも接地端に接続されている。
【0023】
外部端子T31は、出力電圧VO1の印加端に接続されている。なお、外部端子T31と接地端との間には、バイパスキャパシタを接続してもよい。また、外部端子T31と出力電圧VO1の印加端との間には、フィルタFLT(後出の
図3を参照)を接続してもよい。外部端子T32及びT33は、キャパシタC4の第1端と共に、出力電圧VO3の印加端に接続されている。外部端子T34及びキャパシタC4の第2端は、いずれも接地端に接続されている。
【0024】
<システム電源IC(内部構成)>
引き続き、
図1を参照しながら、システム電源IC10の内部構成について説明する。システム電源IC10は、DC/DCコンバータ100及び200と、リニアレギュレータ300と、を集積化して成る。
【0025】
より具体的に述べると、システム電源IC10は、DC/DCコンバータ100及び200やロジック制御クロック(不図示)などを集積化した半導体チップ10A(=第1チップ)と、リニアレギュレータ300を集積化した半導体チップ10B(=第2チップ)と、を単一のパッケージに封止して成る。
【0026】
このようなマルチチップ構成を採用することにより、単一のパッケージでありながら、ノイズ源となり得るDC/DCコンバータ100及び200と、低ノイズが要求されるリニアレギュレータ300とを分離することが可能となる。
【0027】
DC/DCコンバータ100は、システム電源IC10の内部において、外部端子T11〜T15に接続されており、入力電圧VI(例えば4.5〜36V)を降圧して所望の出力電圧VO1(例えば4.0V)を生成するプライマリ電源である。なお、出力電圧VO1は、システム電源IC10に内蔵されたセカンダリ電源(本図では、DC/DCコンバータ200及びリニアレギュレータ300)への電力供給にのみ用いられる。
【0028】
DC/DCコンバータ200は、システム電源IC10の内部において、外部端子T21〜T24に接続されており、出力電圧VO1を降圧して所望の出力電圧VO2(例えば1.25V)を生成するセカンダリ電源の一つである。なお、出力電圧VO2は、MCU[micro controller unit]などに供給される。
【0029】
リニアレギュレータ300は、システム電源IC10の内部において、外部端子T31〜T34に接続されており、出力電圧VO1を降圧して所望の出力電圧VO3(例えば、3.3V)を生成するセカンダリ電源の一つであり、例えば、LDO[low drop-out] レギュレータを好適に用いることができる。なお、出力電圧VO3は、ミリ波レーダー用MMIC[monolithic microwave integrated circuit]などに供給される。
【0030】
上記のミリ波レーダーは、周波数をスイープした送信波を送信した後、障害物によって反射された送信波を受信波として受信し、送信波と受信波の周波数差分を取得することにより、障害物を検知する。このような障害物検知時(特に送信波の送信中)にMMICの電源変動が生じると、送信波と受信波の周波数差分を正しく取得することができなくなるおそれがある。そのため、MMICに供給される出力電圧VO3(延いてはリニアレギュレータ300に供給される出力電圧VO1)には、低ノイズが要求されている。
【0031】
なお、システム電源IC10には、上記以外の機能ブロックを設けてもよい。例えば、セカンダリ電源として、昇圧型のDC/DCコンバータを有してもよいし、或いは、リニアレギュレータのチャンネル数を増やしてもよい。その場合、ノイズ源となり得る昇圧型のDC/DCコンバータは、先出のDC/DCコンバータ100及び200と共に、半導体チップ10Aに集積化することが望ましい。一方、増設されたリニアレギュレータは、低ノイズを要求されるリニアレギュレータ300と共に、半導体チップ10Bに集積化することが望ましい。
【0032】
また、システム電源IC10には、ロジック制御回路、ロジック制御クロック、内部基準電圧生成回路、通信インターフェイス(I/O)、マイコン監視回路(WDT[watch dog timer])、自己診断回路(BIST[built-in self test])、各種の異常保護回路(UVLO[under voltage locked out]、OCP[over current protection]、OVD[over voltage detection]、UVD[under voltage detection]、SCP[short circuit protection]、TSD[thermal shut down])なども集積化されている。
【0033】
<システム電源IC(パッケージ)>
図2は、システム電源IC10のパッケージ外観(トップ面及びボトム面)を示す図である。本図で示すように、システム電源IC10のパッケージとしては、例えばVQFN[very thin quad flat Non-leaded]パッケージを採用するとよい。
【0034】
より具体的に述べると、システム電源IC10は、平面視矩形状の樹脂封止体11を持ち、そのボトム面には、樹脂封止体11から突出することなく各辺14本ずつ計56本の外部端子12が露出されている。このようなノンリードのVQFNパッケージであれば、リードを持つパッケージ(QFP[quad flat package]など)と比べて、その実装面積を縮小することが可能となる。
【0035】
なお、樹脂封止体11には、そのボトム面がトップ面よりも若干小さくなるように、側面からボトム面に向けたテーパが付けられている。また、外部端子12は、樹脂封止体11のボトム面から側面にかけて露出されている。このような構成であれば、プリント配線基板(不図示)への実装作業を容易かつ確実に実施することができる。
【0036】
また、樹脂封止体11のボトム面には、半導体チップ(不図示)を搭載するアイランド13の裏面(=チップ搭載面の裏側)が放熱パッドとして露出されている。このような構成であれば、システム電源IC10の放熱性を高めることが可能となる。
【0037】
なお、アイランド13の四隅のうち、少なくとも一つには、切欠部13a(=樹脂封止体11のボトム面側からトップ面側に向けて窪んだ薄肉部)を設けておくとよい。この切欠部13aに樹脂封止体11の材料が入り込むことにより、アイランド13は、切欠部13aの形成領域において、上下両側から樹脂封止体11に挟持されている。このような構成とすることにより、樹脂封止体11との密着性を高めて、アイランド13の脱落を防止することが可能となる。
【0038】
<システム電源IC(ピン配置)>
図3は、システム電源IC10のピン配置(56ピンのVQFN採用時)を示す図である。なお、本図では、特に、
図1で示した外部端子(T11〜T15、T21〜T24、及び、T31〜T34)に着目して、それぞれの配置例が描写されている。
【0039】
システム電源IC10の第1辺(本図下辺)には、本図の左から右に向けて、14本の外部端子(1ピン〜14ピン)が順に並べられている。1ピン及び2ピンは、DC/DCコンバータ200用のパワーグランド端子(外部端子T24に相当)であり、いずれも接地端に接続されている。3ピン及び4ピンは、DC/DCコンバータ200用のパワー電源入力端子(外部端子T21に相当)であり、いずれも出力電圧VO1の印加端に接続されている。なお、3ピン及び4ピンと接地端との間には、バイパスキャパシタ(不図示)を接続してもよい。6ピンは、DC/DCコンバータ200用のフィードバック端子(外部端子T23に相当)であり、出力電圧VO2の印加端(=インダクタL2の第2端)に接続されている。なお、出力電圧VO2の印加端と接地端との間には、出力平滑用のキャパシタC3が接続されている。
【0040】
システム電源IC10の第2辺(本図右辺)には、本図の下から上に向けて、14本の外部端子(15ピン〜28ピン)が順に並べられている。21ピンは、リニアレギュレータ300用の接地端子(外部端子T34に相当)であり、接地端に接続されている。25ピンは、リニアレギュレータ300用のフィードバック端子(外部端子T33に相当)であり、出力電圧VO3の印加端に接続されている。26ピン及び27ピンは、リニアレギュレータ300用の出力端子(外部端子T32に相当)であり、いずれも出力電圧VO3の印加端に接続されている。なお、出力電圧VO3の印加端と接地端との間には、出力平滑用のキャパシタC4が接続されている。
【0041】
システム電源IC10の第3辺(本図上辺)には、本図の右から左に向けて、14本の外部端子(29ピン〜42ピン)が順に並べられている。29ピン及び30ピンは、リニアレギュレータ300用のパワー電源入力端子(外部端子T31に相当)であり、フィルタ済み出力電圧VO1FILの印加端(=フィルタFLTの出力端)に接続されている。フィルタFLT(例えばLCフィルタ)は、出力電圧VO1のノイズ成分を除去することによりフィルタ済み出力電圧VO1FILを生成する。なお、29ピン及び30ピンと接地端との間には、バイパスキャパシタ(不図示)を接続してもよい。31ピンは、リニアレギュレータ300用の接地端子(外部端子T34に相当)であり、接地端に接続されている。このように、リニアレギュレータ300用の接地端子は、システム電源IC10の異なる2辺(例えば第2辺及び第3辺)に設けられている。37ピン〜39ピンは、DC/DCコンバータ100用のパワー電源入力端子(外部端子T12に相当)であり、いずれも入力電圧VIの印加端に接続されている。37ピン〜39ピンと接地端との間には、バイパスキャパシタ(不図示)を接続してもよい。41ピン及び42ピンは、DC/DCコンバータ100用のパワーグランド端子(外部端子T15に相当)であり、接地端に接続されている。なお、39ピンと41ピンとの間には、パワー電源入力端子とパワーグランド端子とのショートを防止するために、不使用端子(40ピン)が設けられている。
【0042】
システム電源IC10の第4辺(本図左辺)には、本図の上から下に向けて、14本の外部端子(43ピン〜56ピン)が順に並べられている。43ピンは、DC/DCコンバータ100用のブート端子(外部端子T11に相当)であり、キャパシタC2の第1端に接続されている。45ピン〜47ピンは、DC/DCコンバータ100用のスイッチング端子(外部端子T13に相当)であり、いずれもインダクタL1の第1端とキャパシタC2の第2端に接続されている。50ピンは、DC/DCコンバータ100用のフィードバック端子(外部端子T14に相当)であり、出力電圧VO1の印加端(=インダクタL1の第2端)に接続されている。なお、出力電圧VO1の印加端と接地端との間には、出力平滑用のキャパシタC1が接続されている。55ピン及び56ピンは、DC/DCコンバータ200用のスイッチング端子(外部端子T22に相当)であり、いずれもインダクタL2の第1端に接続されている。
【0043】
<DC/DCコンバータ(プライマリ電源)>
図4は、DC/DCコンバータ100の一構成例を示す図である。本構成例のDC/DCコンバータ100は、駆動部110と、制御部120と、ゲイン切替部140と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN1及びN2と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタP1と、を有する。
【0044】
なお、上記構成要素のうち、トランジスタN1及びN2並びにP1は、システム電源IC10に外付けされたディスクリート部品(インダクタL1、キャパシタC1及びC2)と共に、ブートストラップ形式のスイッチ出力段を形成する。以下、これらの接続関係について詳細に説明する。
【0045】
トランジスタN1のドレインは、外部端子T12(=入力電圧VIの印加端)に接続されている。トランジスタN1のソースは、外部端子T13(=スイッチ電圧Vswの印加端)に接続されている。トランジスタN1のゲートは、上側ゲート信号HGの印加端に接続されている。トランジスタN1は、上側ゲート信号HGがハイレベル(≒VB)であるときにオンして、上側ゲート信号HGがローレベル(≒Vsw)であるときにオフする。なお、トランジスタN1は、スイッチ出力段の上側トランジスタ(=出力トランジスタ)として機能する。
【0046】
トランジスタN2のドレインは、外部端子T13に接続されている。トランジスタN2のソースは、外部端子T15(=接地電圧GNDの印加端)に接続されている。トランジスタN2のゲートは、下側ゲート信号LGの印加端に接続されている。トランジスタN2は、下側ゲート信号LGがハイレベル(≒Vreg)であるときにオンして、下側ゲート信号LGがローレベル(≒GND)であるときにオフする。なお、トランジスタN2は、スイッチ出力段の下側トランジスタ(=同期整流トランジスタ)として機能する。
【0047】
トランジスタP1のドレインは、内部電源電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタP1のソースは、外部端子T11(=ブート電圧VBの印加端)に接続されている。このように接続されたトランジスタP1は、システム電源IC10に外付けされたキャパシタC2と共に、ブートストラップ回路を形成する。
【0048】
上記のブートストラップ回路は、スイッチ電圧Vswよりも常にキャパシタC2の両端間電圧VC2(=キャパシタC2の満充電時には、VC2≒Vreg−Vds(P1)、ただし、Vds(P1)はトランジスタP1のドレイン・ソース間電圧)だけ高いブート電圧VB(≒Vsw+VC2)を生成する。
【0049】
すなわち、ブート電圧VBは、スイッチ電圧Vswのハイレベル期間(Vsw≒VI、N1=ON、N2=OFF)にはVB≒VI+VC2となり、スイッチ電圧Vswのローレベル期間(Vsw≒GND、N1=OFF、N2=ON)にはVB≒VC2となる。
【0050】
このようにして生成されるブート電圧VBは、駆動部110(特に、後述の上側ドライバ111)に供給されており、上側ゲート電圧HGのハイレベル(=トランジスタN1をオンするためのゲート電圧)として用いられる。従って、トランジスタN1のオン期間には、上側ゲート電圧HGのハイレベル(≒VB)がスイッチ電圧Vswのハイレベル(≒VI)よりも高い電圧値(≒VI+VC2)まで引き上げられるので、トランジスタN1のゲート・ソース間電圧を高めてトランジスタN1を確実にオンすることが可能となる。
【0051】
なお、ブートストラップ回路の構成要素としては、上記のトランジスタP1に代えて、アノードが内部電源電圧Vregの印加端に接続されてカソードが外部端子T11に接続されたダイオードを用いてもよい。この場合、キャパシタC2の両端間電圧VC2は、満充電時にVC2≒Vreg−Vf(ただしVfはダイオードの順方向降下電圧)となる。
【0052】
駆動部110は、ブートストラップ形式のスイッチ出力段(特にトランジスタN1及びN2)を駆動する機能ブロックであり、上側ドライバ111と、下側ドライバ112と、ロジック部113と、を含む。
【0053】
上側ドライバ111は、ブート電圧VBとスイッチ電圧Vswの供給を受けて動作し、ロジック部113から入力される上側制御信号HSに基づいて、上側ゲート信号HGを生成する。例えば、上側ドライバ111は、上側制御信号HSがハイレベルであるときに、上側ゲート信号HGをハイレベル(≒VB)とし、上側制御信号HSがローレベルであるときに、上側ゲート信号HGをローレベル(≒Vsw)とする。
【0054】
下側ドライバ112は、内部電源電圧Vreg及び接地電圧GNDの供給を受けて動作し、ロジック部113から入力される下側制御信号LSに基づいて、下側ゲート信号LGを生成する。例えば、下側ドライバ112は、下側制御信号LSがハイレベルであるときに、下側ゲート信号LGをハイレベル(≒Vreg)とし、下側制御信号LSがローレベルであるときに、下側ゲート信号LGをローレベル(≒GND)とする。
【0055】
ロジック部113は、所定のスイッチング周波数Fsw(例えば475kHz)でパルス駆動されるオン信号Sonと、制御部120から入力されるオフ信号Soffに基づいて、上側制御信号HS及び下側制御信号LSを生成する。
【0056】
例えば、スイッチ出力段の通常動作時(=各種の異常保護動作が掛かっていない状態)において、オン信号Sonにパルスエッジが生成されたときには、トランジスタN1をオンしてトランジスタN2をオフすべく、上側制御信号HSをハイレベルとして下側制御信号LSをローレベルとする。一方、オフ信号Soffにパルスエッジが生成されたときには、トランジスタN1をオフしてトランジスタN2をオンすべく、上側制御信号HSをローレベルとして下側制御信号LSをハイレベルとする。
【0057】
このように、スイッチ出力段のトランジスタN1及びN2を相補的にオン/オフすることにより、外部端子T13には、矩形波状(ハイレベル:VIN、ローレベル:GND)のスイッチ電圧Vswが生成される。このスイッチ電圧VswをLCフィルタ(=インダクタL1及びキャパシタC1)で整流及び平滑することにより、スイッチ出力段のオンデューティDon(=スイッチング周期Tsw(=1/Fsw)に占めるトランジスタN1のオン期間Tonの割合、Don=Ton/Tsw)に応じた出力電圧VO1(=VI×Don)を生成することができる。
【0058】
なお、ロジック部113は、トランジスタN1及びN2に過大な貫通電流が流れないように、トランジスタN1及びN2の相補的なオン/オフに際して、両トランジスタの同時オフ期間(いわゆるデッドタイム)を設ける機能も備えている。
【0059】
制御部120は、スイッチ出力段で入力電圧VIから所望の出力電圧VO1が生成されるように、具体的には、帰還入力される出力電圧VO1がその目標値と一致するように、オフ信号Soffを生成して駆動部120を制御する機能ブロックであり、エラーアンプ121と、オフ信号生成部122と、抵抗123〜125と、キャパシタ126を含む。
【0060】
抵抗123及び124は、外部端子T14(=出力電圧VO1の印加端)と接地端との間に直列接続されており、相互間の接続ノードから帰還電圧Vfb(=出力電圧VO1の分圧電圧)を出力する。なお、出力電圧VO1が後段の入力ダイナミックレンジに収まっていれば、抵抗123及び124を割愛し、出力電圧VO1を後段にスルーしてもよい。
【0061】
エラーアンプ121は、2系統の非反転入力端(+)にそれぞれ入力される基準電圧Vref及びソフトスタート電圧Vssのいずれか低い方と、反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfbとの差分に応じた誤差電流Ierrを出力する。
【0062】
なお、誤差電流Ierrの流れる方向は、Vref(Vss)>Vfbであるときに、第1方向(=エラーアンプ121からキャパシタ126に向かう方向、すなわち、キャパシタ126を充電する方向)となり、逆に、Vref(Vss)<Vfbであるときに、第2方向(=キャパシタ126からエラーアンプ121に向かう方向、すなわち、キャパシタ126を放電する方向)となる。また、誤差電流Ierrの大きさ(絶対値)は、基準電圧Vref(またはソフトスタート電圧Vss)と帰還電圧Vfbとの差分が大きいほど増大し、逆に、両電圧の差分が小さいほど減少する。
【0063】
また、ソフトスタート電圧Vssは、DC/DCコンバータ100の初回起動時ないし再起動時において、ゼロ値から所定のソフトスタート期間Tss(例えば3ms)を掛けて基準電圧Vrefを上回るように緩やかに上昇する。従って、ソフトスタート期間Tssの満了前は、ソフトスタート電圧Vssと帰還電圧Vfbとの差分に応じた誤差電流Ierrが生成され、ソフトスタート期間Tssの満了後は、ソフトスタート電圧Vssと帰還電圧Vfbとの差分に応じた誤差電流Ierrが生成される。このようなソフトスタート動作により、キャパシタC1への突入電流を防止することができる。
【0064】
抵抗125及びキャパシタ126は、エラーアンプ121の出力端と接地端との間に直列接続されており、誤差電流Ierrを誤差電圧Verrに変換する電流/電圧変換回路として機能すると共に、エラーアンプ121の発振を防止するための位相補償回路としても機能する。なお、誤差電圧Verrは、Vref(Vss)>Vfbであるときに上昇し、逆に、Vref(Vss)<Vfbであるときに低下する。
【0065】
オフ信号生成部122は、誤差電圧Verrに基づいてオフ信号Soffを生成する。より具体的に述べると、オフ信号生成部122は、誤差電圧Verrが高いほどオフ信号Soffのパルスエッジ生成タイミング(=トランジスタN1のオフタイミングに相当)を遅らせ、逆に、誤差電圧Verrが低いほどオフ信号Soffのパルスエッジ生成タイミングを早める。このようなオフ信号Soffは、例えば、誤差電圧Verrと三角波状または鋸波状のスロープ電圧Vslpとを比較するコンパレータを用いることにより、容易に生成することができる。
【0066】
また、例えば、スイッチ出力段に流れる電流(トランジスタN1に流れる上側スイッチ電流、トランジスタN2に流れる下側スイッチ電流、インダクタL1に流れるインダクタ電流、若しくは、負荷に流れる出力電流)を検出してオフ信号生成部122に帰還入力してやれば、電流モード制御方式を実現することもできる。
【0067】
もちろん、制御部120の出力帰還制御方式は、電圧モード制御方式や電流モード制御方式に限定されるものではなく、非線形のヒステリシス制御方式(リップル制御方式)などを採用してもよい。
【0068】
ところで、複数のセカンダリ電源(DC/DCコンバータ200またはリニアレギュレータ300)それぞれの負荷が非同期で動作している場合には、プライマリ電源(DC/DCコンバータ100)の出力電圧VO1において、短時間または一定時間に複数回の出力低下を生じることがある。
【0069】
このような出力電圧VO1の変動を抑制するためには、DC/DCコンバータ100の負荷応答性を改善する必要がある。一般に、エラーアンプ121のゲインを高めることにより、DC/DCコンバータ100の負荷応答性を改善し得るが、背反として、エラーアンプ121が発振し易くなり、DC/DCコンバータ100の動作安定性が損なわれる。
【0070】
そこで、本構成例のDC/DCコンバータ100には、DC/DCコンバータ100の負荷応答性と動作安定性を両立する手段として、ゲイン切替部140が設けられている。
【0071】
ゲイン切替部140は、出力電圧VO1の低下が所定の検出期間(例えば300μs)内に規定回数以上(例えば2回以上)生じたときにエラーアンプ121(=gmアンプ/トランスコンダクタンスアンプ)のゲインを引き上げる機能ブロックであり、コンパレータ141とカウンタ142を含む。
【0072】
コンパレータ141は、反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfbと、非反転入力端(+)に入力される所定の検出電圧Vdetとを比較して、比較信号S1を生成する。比較信号S1は、Vfb>Vdetであるときにローレベルとなり、Vfb<Vdetであるときにハイレベルとなる。なお、ノイズ等による誤動作を防止するために、コンパレータ141には、ヒステリシスを持たせておくことが望ましい。
【0073】
カウンタ142は、比較信号S1のパルスをカウントしてエラーアンプ121のゲイン切替信号S2を生成する。ゲイン切替信号S2は、エラーアンプ121のゲインを定常値とするときにローレベルとなり、エラーアンプ121のゲインを定常値から引き上げるときにハイレベルとなる。カウンタ142の動作については、後ほど詳細に説明する。
【0074】
なお、本図では明示されていないが、DC/DCコンバータ100は、共通の定電圧VREFから基準電圧Vref及び検出電圧Vdetの双方を生成する分圧部150を備えている。以下、分圧部150について、図面を参照しながら説明する。
【0075】
<分圧部>
図5は、分圧部150の一構成例を示す図である。本構成例の分圧部150は、定電圧VREFの印加端と接地端との間に、図示の順序で直列に接続された抵抗151〜153(抵抗値:R1〜R3)を含む。
【0076】
なお、抵抗151及び152相互間の接続ノードは、基準電圧Vrefの出力端に相当する。従って、基準電圧Vrefは、所定の定電圧VREFを所定の分圧比α(=(R2+R3)/(R1+R2+R3))で分圧した電圧値(=α×VREF)となる。
【0077】
また、抵抗152及び153相互間の接続ノードは、検出電圧Vdetの出力端に相当する。従って、検出電圧Vrefは、所定の定電圧VREFを所定の分圧比β(=R3/(R1+R2+R3))で分圧した電圧値(=β×VREF)となる。
【0078】
このように、分圧部150では、単一の抵抗ラダー(=抵抗151〜153)を用いて定電圧VREFを異なる分圧比α及びβ(ただしα>β)で分圧することにより、基準電圧Vref及び検出電圧Vdetが生成される。本構成によれば、抵抗151〜153の抵抗値がばらついても、基準電圧Vref及び検出電圧Vdetの高低関係が逆転することはないので、ゲイン切替制御の誤動作を招くおそれがなくなる。
【0079】
<エラーアンプ>
図6は、エラーアンプ121の一構成例(出力段周辺)を示す図である。本構成例のエラーアンプ121は、その出力段を形成する構成要素として、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM1と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM2と、を含む。
【0080】
トランジスタM1は、内部電源電圧Vregの印加端と誤差電流Ierrの出力端との間に接続されており、誤差電流Ierrの出力端に向けてソース電流I1を流し出す第1トランジスタに相当する。
【0081】
トランジスタM2は、誤差電流Ierrの出力端と接地端との間に接続されており、誤差電流Ierrの出力端からシンク電流I2を引き込む第2トランジスタに相当する。
【0082】
ここで、エラーアンプ121のゲインが引き上げられていないとき(S2=L)には、トランジスタM1及びM2の双方が動作される。
【0083】
従って、例えば、Vref>Vfbであるときには、トランジスタM1の導通度がトランジスタM2の導通度よりも大きくなるように、言い換えれば、ソース電流I1がシンク電流I2よりも大きくなるように、それぞれのゲート制御が行われる。その結果、誤差電流Ierr(=I1−I2>0)は、第1方向(=エラーアンプ121からキャパシタ126に向かう方向、すなわち、キャパシタ126を充電する方向)に流れる。
【0084】
逆に、Vref<Vfbであるときには、トランジスタM1の導通度がトランジスタM2の導通度よりも小さくなるように、言い換えれば、ソース電流I1がシンク電流I2よりも小さくなるように、それぞれのゲート制御が行われる。その結果、誤差電流Ierr(=I1−I2<0)は、第2方向(=キャパシタ126からエラーアンプ121に向かう方向、すなわち、キャパシタ126を放電する方向)に流れる。
【0085】
一方、エラーアンプ121のゲインが引き上げられているとき(S2=H)には、トランジスタM2が停止されてトランジスタM1のみが動作される。その結果、誤差電流Ierrは、トランジスタM1に流れるソース電流I1そのものとなる。すなわち、エラーアンプ121の電流シンク能力をオフすることで、相対的に電流ソース能力が強化される。
【0086】
このような構成であれば、エラーアンプ121の駆動電流(=バイアス電流)を増強する手法と異なり、不必要な消費電力の増大を招くことなく、エラーアンプ121のゲインを引き上げることが可能となる。
【0087】
<ゲイン切替制御>
図7は、ゲイン切替制御の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、出力電圧VO1、比較信号S1、カウンタ142のカウント値CNT、及びゲイン切替信号S2が描写されている。なお、本図中のVdetH(一点鎖線)及びVdetL(二点鎖線)は、それぞれ、コンパレータ141の出力低下解除閾値及び出力低下検出閾値である。
【0088】
まず、時刻t41〜t43を参照しながら、出力電圧VO1の単発的な低下が生じた場合の挙動について説明する。
【0089】
時刻t41において、出力電圧VO1が出力低下検出閾値VdetLを下回ると、比較信号S1がハイレベルに立ち上がる。このとき、カウンタ142は、カウント値CNTをインクリメント(0→1)するとともに、所定の検出期間Tdet(例えば300μs)を計時し始める。この時点では、カウント値CNTが規定回数(例えば2回)に達していないので、ゲイン切替信号S2がローレベル(=定常時の論理レベル)のままとなる。
【0090】
時刻t42において、出力電圧VO1が出力低下解除閾値VdetHを上回ると、比較信号S1がローレベルに立ち下がる。この時点では、検出期間Tdetの計時が満了していないので、その計時動作が継続される。
【0091】
時刻t43において、出力電圧VO1が出力低下検出閾値VdetLを再び下回ることなく検出期間Tdetの計時が満了すると、カウンタ142は、カウント値CNTをリセット(1→0)すると共に、検出期間Tdetの計時動作を終了する。
【0092】
このように、出力電圧VO1の低下が検出期間Tdet内に規定回数以上発生しない限り、ゲイン切替信号S2がローレベルに維持されるので、エラーアンプ121のゲインが定常値に維持される。
【0093】
次に、時刻t44〜t48を参照しながら、出力電圧VO1の周期的な低下が生じた場合の挙動について説明する。
【0094】
時刻t44において、出力電圧VO1が出力低下検出閾値VdetLを下回ると、比較信号S1がハイレベルに立ち上がる。このとき、カウンタ142は、カウント値CNTをインクリメント(0→1)するとともに、所定の検出期間Tdet(例えば300μs)を計時し始める。この時点では、カウント値CNTが規定回数(例えば2回)に達していないので、ゲイン切替信号S2がローレベル(=定常時の論理レベル)のままとなる。
【0095】
時刻t45において、出力電圧VO1が出力低下解除閾値VdetHを上回ると、比較信号S1がローレベルに立ち下がる。この時点では、検出期間Tdetの計時が満了していないので、その計時動作が継続される。ここまでの動作は、先出の時刻t41〜t42と何ら変わらない。
【0096】
時刻t46において、検出期間Tdetの計時が満了する前(=時刻t48以前)に、出力電圧VO1が出力低下検出閾値VdetLを下回ると、比較信号S1がハイレベルに立ち上がる。このとき、カウンタ142は、カウント値CNTを更に1つインクリメント(1→2)する。その結果、カウント値CNTが規定回数に達するので、ゲイン切替信号S2がハイレベル(=ゲイン引き上げ時の論理レベル)に立ち上がる。これにより、エラーアンプ121のゲインが定常値から引き上げられるので、出力電圧VO1の低下が抑制される(図中の破線で示した丸枠内を参照)。
【0097】
時刻t47において、出力電圧VO1が出力低下解除閾値VdetHを上回ると、比較信号S1がローレベルに立ち下がる。この時点で、ゲイン切替信号S2がローレベルに立ち下げられる。
【0098】
すなわち、ゲイン切替部140は、時刻t46でエラーアンプ121のゲインを引き上げた後、時刻t47で出力電圧VO1の低下が解消されたときに、エラーアンプ121のゲインを元に戻す。このとき、出力電圧VO1の上昇速度が若干緩やかとなる。
【0099】
なお、先出の時刻t46において、比較信号S1がハイレベルに立ち上がったときに、カウンタ142は、それまで行ってきた検出期間Tdetの計時動作をリセットし、改めて最初から検出期間Tdetの計時動作を開始するとよい。このような動作(=検出期間Tdetの実質的な延長動作)により、出力電圧VO1の周期的な低下が繰り返される状況でも、その都度、エラーアンプ121のゲインを適切に引き上げることが可能となる。
【0100】
以上で説明したように、出力電圧VO1の低下が検出期間Tdet内に規定回数以上生じたときにのみ、エラーアンプ121のゲインを引き上げる構成であれば、定常時の動作安定性を損なうことなく、出力低下時の負荷応答性を高めることが可能となる。
【0101】
<車両への適用>
図8は、車両Xの一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器(車載機器)X11〜X18を搭載している。なお、本図における電子機器X11〜X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0102】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0103】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0104】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0105】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0106】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0107】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、電動シート、若しくは、ミリ波レーダーなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0108】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0109】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0110】
なお、先に説明したシステム電源IC10は、電子機器X11〜X18のいずれにも組み込むことが可能である。すなわち、電子機器X11〜X18は、それぞれ、先に説明した電子機器1の具体例として理解することができる。
【0111】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。