【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例をあらわすもっとも一般的な形態の風車翼自動折り畳み式サボニウス型風力発電装置1の概念図を示す。図は水平方向から見たものである。
図3は、風車翼2の構造を分かり易くするために、風車翼2だけを抜き出して描いた斜視図である。
【0031】
風車翼自動折り畳み式サボニウス型風力発電装置1は、大きく分けて風車、架台、電気装置からなる。まず風車翼について説明する。サボニウス型の風車翼2は、通常の金属製ではなく、水平に伸びる複数の骨格材4を、帆布など風を通しにくい布などで覆って半円筒形状としたものとしたことが本発明の特徴である。本実施例では
図1、
図3から見て取れるように、3段の骨格材4と被覆材6からなっている。
【0032】
図5はサボニウス型風車の骨格材4の平面図である。骨格材4は中央に4角形の穴403が空いた座板401の両側に梁402を固定して、左右に延伸したものである。梁402の両側(図で上下)に、半円形の円弧状材5をそれぞれの端が梁402の別々の端の近くになるように固定してある。破線で示したのは、次に説明する被覆材6で骨格材4と円弧状材5を覆った状態の被覆材6の断面を示している。
【0033】
図6(a)はサボニウス型風車の被覆材6の平面展開図である。図に示すように、長方形の布などの両端から複数のV字状の切込みを入れてある。この実施例では(両端をまとめて1つと勘定して)切込みは6箇所である。
【0034】
このV字状の切込みの箇所で、切り込んで隣り合う位置を、V字が閉じるように縫い合わせると
図6(b)に示すように半円筒形の風車翼2がかたち作られる。ここに破線で示した骨格となる円弧状材5を縫い付けるなどして固定すれば、
図3に示すようなサボニウス型風車の2つの内の片側が出来上がる。本実施例では、破線で示したように、被覆材6の上下と中央部の3箇所に円弧状材5を固定してある。
【0035】
なお、被覆材6の縫い合わせたV字状の切込みの箇所がかたち作る上部および下部の半円錐状天井部の中央部が凸状であり、傾斜がついているのは、雨や雪が頂部に滞留しないようにするためである。
【0036】
骨格材4の中央にある座板401の中央にある穴403は回転軸3とわずかの隙間を持った嵌めあいになっている。したがって、垂直に立っている回転軸3に骨格材4の穴403を通すと、骨格材4は水平を保ったまま、自由に上下に滑って移動できる。このように、骨格材4が回転軸3の上を上下に滑って移動し、それによって被覆材6を折り畳むことを可能としていることが本発明の重要な特徴である。
【0037】
上で説明したように、骨格材4を被覆材6で覆って組み立てられた2つの同じ形の風車翼の上部ならびに下部の半円錐状天井部の中央部が、
図1または
図3に示すように、上部連結梁16ならびに下部連結梁17にそれぞれ固定され、お互いに反対向きに向き合わされて結合される。
【0038】
上部連結梁16の中心部には、骨格材4の座板401と同じように、穴が空いており、回転軸3とわずかの隙間を持った嵌めあいになっている。したがって、骨格材4と同様に、自由に上下に滑って移動できる。下部連結梁17は上部連結梁16と同様の構造であるが、組み立てるときに回転軸3の下の位置に動かないように固定される。
【0039】
次にあらためて全体の構造について説明する。
図1および
図3で見て取れるように、風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置1は地面あるいは基礎の上に据え付けられた架台30の上に組み立てられている。風車翼2の回転軸3は架台30によって垂直に支えられている。
【0040】
すなわち、回転軸3は架台上部梁31ならびに架台中間梁32に空けられた穴を貫通し、それぞれに固定設置されている回転軸受10ならびに回転軸受11によって垂直に支えられている。さらに、架台下部梁33に設置されているスラスト軸受12によって重量を支えられている。
【0041】
図1に示されているように、連結梁16はロープ9によって吊り上げられている。ロープ9は回転軸3に取り付けられた滑車7、中空である回転軸3の中を通って、回転軸3に取り付けられた電動ウィンチ8で巻き取られている。
図1ではロープ9は中空である回転軸3の中を通っているが、回転軸3の中を通らず単に回転軸3に沿っていても良い。なお、ロープ9によって吊った状態で、下方におろすことを吊り下げると称している。
【0042】
回転軸3の下部の位置にはスリップリング23が配置されており、回転しない外部と電気接続ができる。スリップリング23と図示しない配膳を通して、回転軸3に取り付けられて風車翼2と一緒に回転する電動ウィンチ8と、固定された架台中間梁32の上に設置された電気制御ボックス21が接続されている。
【0043】
同じく、架台中間梁32の上に発電機20が設置されており、図示していない配線によって電気制御ボックス21に接続されている。発電機20の回転軸は架台中間梁32にある穴を通って下に伸びており、先端には小プーリ14が設置されている。
【0044】
回転軸3の最下部には大プーリ13が固定されている。大プーリ13と小プーリ14は駆動ベルト15で連結されており、増速機構を形成している。大プーリ13が回転すると小プーリ14が高速で回転して発電機20が電力を発生する。このようにして風車翼2が発生した動力は電力に変換される。
【0045】
図7は電気制御盤21の内部にある電気制御回路の概念的なブロック図を示している。図中で太い矢印は電力を、細い矢印は信号をそれぞれ示す。架台30の柱に設置された操作盤22には、
図7の上部に示すように、「自動・手動切替スイッチ」、「風車翼上下スイッチ」ならびに「風速設定スイッチ」があり、それらの設定信号が、
図1には図示していない配線を通して電気制御盤21の「風車翼制御回路」に入力される。
【0046】
「風車翼制御回路」には、別に架台の頂部に設置された風速計34からの風速情報ならびに発電機20の出力電圧、すなわち風車翼2の回転速度を示す情報が入力されている。風速計34の配線は図示していない。「風車翼制御回路」はこれらの情報から風車翼2を展開するか縮小するかを自動的に判断し、電動ウィンチ8にロープ9を巻き取るまたは巻き戻す電圧を送る。そのために「電池」に蓄えられた電力が「充放電制御回路」を通して使われる。
【0047】
発電機20の出力は、直流の場合はそのまま、交流の場合は整流されて、電気制御盤21にある「DC/DCコンバーター」に入力され、所定の一定電圧に変換される。「DC/DCコンバーター」の出力は「充放電制御回路」を通って「電池」の充電に使われる。蓄電された電力は、スイッチを通じて外部の機器に「電池」を接続して消費することができる。また、「電池」に蓄電された電力を「DC/ACコンバーター」によって交流に変換され、コンタクター(電磁開閉器)を通じて外部の電力系統に送り出すこともできる。
【0048】
風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置1の発電作用について、電気制御盤21のシーケンス図に沿って説明する。
図8は、「風車翼制御回路」の制御のシーケンス図を示している。このシーケンス図の内容は代表的な動作の概念を示したものである。
【0049】
最初に自動運転の場合について説明する。S01では、操作盤から、なんらかの入力を行ってシーケンスが進む。S02で、操作盤22の「自動・手動切替スイッチ」が「自動」なっていると次のS03に進む。S03では、風速計34で測った風速を一定時間観測して最大値を求める。次にS04で風速の最大値が操作盤22の「風速設定スイッチ」を用いて設定した値より小さければ、S05に進む。
【0050】
S05では、風車翼2を既に展開しているならば何も起こらずS02に戻る。風力発電装置を設置した直後であれば、風車翼2を縮小している状態であり、その場合はS06に進み、電動ウィンチ8を駆動してロープ9を巻き上げて風車翼2を展開する。この時、電動ウィンチ8を駆動する電力は、回転軸3に設置されたスリップリング23を通って電気制御盤21に内蔵されている「電池」から供給される。その後、自動運転を継続するのであればシーケンスはS02からS06のループを回り続ける。
【0051】
この間に風が吹いて展開した風車翼2が回転すれば、回転軸2の大プーリ13と発電機20の小プーリ14が構成する増速装置によって発電機20が高速で回転して発電を行う。発電された電力は、
図7のブロック図に示した電気制御盤21に内蔵されている「DC/DCコンバーター」によって所定の一定電圧に変換される。
【0052】
発電された電力は、電気制御盤21に内蔵された「充放電制御回路」を通って「電池」に蓄えられる。さらに「DC/ACインバーター」によって交流に変換され、コンタクター(電磁開閉器)を通って外部の電力系統におくりだしても良い。
【0053】
風が強くなって、S04において或る一定時間内の最大風速が操作盤22の「風速設定スイッチ」を用いて設定した値より大きくなった場合は、シーケンスはループから抜けて、S07に進む。S07で風車翼2が展開していることを確認してS08に進む。S08で、電動ウィンチ8を駆動してロープ9を巻き戻すと、展開している風車翼2は自重で下に落ちて縮小され、
図2に示されている状態になる。
【0054】
そのとき、風車翼2は縮小している途中で回転しなくなって、発電機20も停止する。シーケンスはS02からS04、S07のループを回り続けて待機状態になる。この場合、風速の測定は継続しているので、しばらくして一定時間内の最大風速が設定値より小さくなった場合は、S07ではなく、S05に進んで、S06で風車翼2は再び展開されて発電を行う。
【0055】
次に、手動による操作を説明する。操作盤22の「自動・手動切替スイッチ」を「手動」にして操作を始めた場合、または既に運転中であってS02以下のループを回っているときに「自動・手動切替スイッチ」を「手動」に切り替えた場合には、シーケンスはS09に進む。
【0056】
S09で、操作盤22の「風車翼上下スイッチ」が「上」なっている場合はS10に進み、風車翼2が縮小している場合はS11に進み、巻き取りモータ8がロープ9を巻き上げて風車翼2を展開する。もし風車翼2が既に展開している場合は、何も起こらずS01に戻る。
【0057】
S09で、操作盤22の「風車翼上下スイッチ」が「下」となっている場合はS12からS13に進み、風車翼2を展開している場合はS14に進み、巻き取りモータ8がロープ9を巻き戻して風車翼2を縮小する。もし風車翼2が既に縮小している場合は、何も起こらずS01に戻る。
【0058】
以上の説明では風速の測定には風速計34の出力を使ったが、発電機20の出力電圧は風速に連係しているので、これから求めた速度を使っても良い。
【0059】
また、風車翼2の被覆材6帆布など風を通しにくい布などと説明したが、風を通しにくい布とは通常の木綿など自然素材の布に高分子材料を塗布したものでも良い。または、高分子材料製の布に別の高分子材料を塗布したものでも良い。さらに、織った布ではなく高分子材料のシートであっても良い。すなわち、柔軟で、風を通さず、加工しやすいシート状の材質であれば良い。
【0060】
また、骨格材4、円弧状材5となる材料は、木材、竹材、高分子製の丸または角パイプ、金属製の丸または角パイプなどが適合する。
【0061】
また、架台30となる材料は、木材、高分子製の丸または角パイプ、金属製の丸または角パイプなどが適合する。