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特開2020-20274風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-20274(P2020-20274A)
(43)【公開日】2020年2月6日
(54)【発明の名称】風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20200110BHJP
   F03D 7/06 20060101ALI20200110BHJP
【FI】
   F03D3/06 A
   F03D7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-142893(P2018-142893)
(22)【出願日】2018年7月30日
(71)【出願人】
【識別番号】303050285
【氏名又は名称】株式会社ソシオリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100151471
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】岡野 達夫
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA14
3H178AA40
3H178AA43
3H178AA53
3H178BB08
3H178BB46
3H178BB73
3H178BB75
3H178CC02
3H178DD12Z
3H178DD22X
3H178DD54X
3H178EE05
3H178EE12
3H178EE25
(57)【要約】
【課題】
従来のサボニウス型風車は風が強くなって危険速度を超えても対処する方法が無かった。また、サボニウス型風車の翼には金属が使われており、重くて高価であるという課題が有った。
【解決手段】
風車の翼は、骨格材に布などの柔軟な材料を張った構造とした。さらに、骨格材を回転軸と一体化して回転するロープによって吊り上げまたは下げて、電動ウィンチでロープを巻き取りまたは巻き戻して、回転軸の方向に移動することによって、必要な時に展開しまたは折り畳む構造とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サボニウス型風車と該風車に連結した発電機を有する風力発電装置において、
風車の翼は、骨格材を布などの柔軟な材料で覆った構造であり、
かつ必要に応じて、展開して拡大するか、または折り畳んで縮小することができる構造であることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
請求項1に示す風力発電装置において、
該風車の翼は、該骨格材を該風車の回転軸の方向に移動することによって、展開しまたは折り畳む構造であることを特徴とする風力発電装置。
【請求項3】
請求項1に示す風力発電装置において、
該風車の翼は、該骨格材を該風車の回転軸の方向に移動することによって、展開しまたは折り畳む構造であり、
同じ構造の翼を回転軸方向に2段以上重ねた構造であって、それぞれの段の翼の回転方向の位相が異なっていることを特徴とする風力発電装置。
【請求項4】
請求項2または3に示す風力発電装置において、
該風車の翼の該骨格材を移動するとき、該回転軸と一体化して回転するロープによって吊り上げまたは吊り下げる構造であることを特徴とする風力発電装置。
【請求項5】
請求項2または3に示す風力発電装置において、
該風車の翼の該骨格材を移動するために該回転軸と一体化して回転する該ロープによって吊り上げて展開しまたは吊り下げて折り畳むとき、
電動ウィンチで該ロープを巻き取りまたは巻き戻す構造であることを特徴とする風力発電装置。
【請求項6】
請求項5に示す風力発電装置において、
風速または該風車の回転速度が予め設定した値を超えたとき、自動的に該電動ウィンチで該ロープを巻き戻して該風車の翼を折り畳み、
また風速が予め設定した値を超えなかったとき、自動的に該電動ウィンチで該ロープを巻き取って該風車の翼を展開することを特徴とする風力発電装置。
【請求項7】
請求項5に示す風力発電装置において、
該発電機の発電した電力を蓄電する電池を備えており、
該電動ウィンチを駆動する電力を該電池から供給することを特徴とする風力発電装置。
【請求項8】
請求項7に示す風力発電装置において、
該電池より、外部負荷に直接に直流電力を供給することができることを特徴とする風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サボニウス型風車を用いた風力発電装置に関する。とくに、サボニウス型風車は、骨格材に布などの柔軟な被覆材料を張って構成し、必要に応じて展開または折り畳みが可能である風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型風力発電装置は、ローカルなクリーンエネルギーとして多方面で研究・開発されており、回転翼を支持する支持軸が水平に配置された水平軸風車と、支持軸が地面に対して垂直に配置された垂直軸風車がある。
【0003】
水平軸風車は、風向きの変化に応じて風車の方向を転換制御する必要があるため、構造が複雑であり、相応のコストを要する。一方、垂直軸風車は、風向きの変化に応じて風車の方向を転換制御する必要がないため、簡素な構成とすることができ、幅広い用途で普及が期待されている。
【0004】
垂直軸風車は、例えば、ジャイロミル型と称される揚力型風車と、例えば、サボニウス型、風杯型と称される抗力型風車とに分類される。揚力型風車は、主として回転翼に生ずる揚力から回転力を得る風車であり、抗力型風車は、主として回転翼に生ずる抗力から回転力を得る風車である。
【0005】
代表的な抗力型風車であるサボニウス風車は低風速で良好な起動性を持ち、トルクも大きく、構造が簡単で製造が容易などの特長を有している。そこで、その特性をさらに改善するために各種の案が提示されている。たとえば、円弧状面を持つ羽根の外端部を分離して可動部とし、該外端部を復元バネ力に抗して風車の回転方向に回動可能にして抗力を増大する技術が開示されている(特許文献1)
【0006】
しかしながら、このような改善の方針では風車翼の構造が複雑になり、金属製の風車翼は一層重くて大きいものとなって、コストが増大するなどの欠点を有している。
【0007】
このような点を改善するために、発明者は既に、骨格材とそれを覆う布、高分子化合物のシートなどで製造した被覆材で構成した金属材料を使わない風車翼を製造し、設置現場で組み立てる技術を提示している。(特許文献2)
【0008】
この技術によれば、製造が容易であり、設置現場において簡単に組立が可能であり、軽量でコストの低い風車翼を実現できる。しかし、強風の時に破壊の恐れがあるというサボニウス風車の持つ基本的な課題が残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】公開特許公報 昭55−84871
【特許文献2】実用新案登録 第3170315号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
サボニウス風車の持つ基本的な課題である強風の時に破壊の恐れがあるという点を解決して、安全な製品を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
風車を剛構造ではなく柔構造とし、強風のときは折り畳める構造として破壊を避けることで、課題を解決する。すなわち、主として布・木材・ロープなどを材料として使用して柔構造化を図り、容易に折り畳めて、安価かつ輸送・据え付けが容易であり、導入し易い普及型の小型風力発電装置を提供するものである。
【0012】
これはまた、製造過程で大量の炭酸ガスを発生する鉄等の金属素材やビニール等の高分子材料の使用量をゼロまたは極小とし、自然素材による布、木材等のエコ素材を使用することによってカーボンニュートラルにも寄与しようとするものである。
【0013】
請求項1の発明は、サボニウス型風車を有する風力発電装置において、
風車の翼は、骨格材を布などの柔軟な材料で覆った構造であり、
かつ必要に応じて、展開して拡大するか、または折り畳んで縮小することができる構造であることを特徴とする風力発電装置である。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1に示す風力発電装置において、
該風車の翼は、該骨格材を該風車の回転軸の方向に移動することによって、展開しまたは折り畳む構造であることを特徴とする風力発電装置である。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1に示す風力発電装置において、
該風車の翼は、該骨格材を該風車の回転軸の方向に移動することによって、展開しまたは折り畳む構造であり、
同じ構造の翼を回転軸方向に2段以上重ねた構造であって、それぞれの段の翼の回転方向の位相が異なっていることを特徴とする風力発電装置である。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3に示す風力発電装置において、
該風車の翼の該骨格材を移動するとき、該回転軸と一体化して回転するロープによって吊り上げまたは吊り下げる構造であることを特徴とする風力発電装置である。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項2または請求項3に示す風力発電装置において、
該風車の翼の該骨格材を移動するために該回転軸と一体化して回転する該ロープによって吊り上げて展開しまたは吊り下げて折り畳むとき、
電動ウィンチで該ロープを巻き取りまたは巻き戻す構造であることを特徴とする風力発電装置である。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項5に示す風力発電装置において、
風速または該風車の回転速度が予め設定した値を超えたとき、自動的に該電動ウィンチで該ロープを巻き戻して該風車の翼を折り畳み、
また風速が予め設定した値を超えなかったとき、自動的に該電動ウィンチで該ロープを巻きとって該風車の翼を展開することを特徴とする風力発電装置である。
【0019】
図1に本発明の概要を示す装置全体を示した。図3は全体の図から風車翼だけを抜き取った斜視図である。図1は、風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置1を横から見たものである風車翼2は、図1および図3から見て取れるように、サボニウス型であり、円筒形を縦に2つに分割して、回転の中心軸から離れた位置にそれぞれの元の円筒形の中心を配置した構造である。
【0020】
回転翼2は、剛構造ではなく、中心軸と一緒に回転する骨格材とそれを覆う風を通さない布などの被覆材で構成されている柔構造であることが本発明の特徴である。
【0021】
図1または図3においては、回転翼2を展開して拡大している状態である。風を受けると、風に対して凹になっている側の抗力が、風に対して凸になっている側の抗力よりも大きいので、回転力を発生する。(図の上側から見たとき、右回転)
【0022】
風の速度が速くなると、回転速度が上昇する。風速がある値を超えると、風車は遠心力または風力で破壊する恐れがある。回転速度を下げて遠心力を小さくするためには回転軸に取り付けたブレーキを使う方法が考えられる。しかし、従来の技術では、過大な風力によって風車が破壊されるのを避ける方法は無かった。
【0023】
本発明は、サボニウス型風車を安全に運転するために、強風のときは、柔構造である風車を折り畳んで破壊を避ける方法を提供するものである。図2に示したのは、破壊を避けるために風車を折り畳んで風を受ける面を縮小した状態を示す概念図である。
【0024】
風車は骨格材とそれを覆う風を通さない布などの被覆材で構成されている。また、風車の円筒形の半分の形状をかたちづくるための骨格材の中心となる横梁の中央には四角形の穴が空けてあり、回転軸の外形と篏合しているので、骨格材を回転軸に通すと、骨格材は中心軸に沿って上下にスライドできる。図1に示すように、風車を展開して拡大するためには、風車の上部につないであるロープを巻き取って、ロープで吊ってある骨格材を回転軸の上の方向に引っ張り上げればよい。
【0025】
また反対に、風車を折り畳んで縮小するためには、風車の上部につないであるロープを巻き戻して、骨格材を回転軸の下の位置に下ろせばよい。
【0026】
風車翼を折り畳むことは、架台の頂部に取り付けた風速計により風速を測定し、あるいは風車の回転速度を計測することにより自動制御によって行うことができるので、無人運転が可能である。
【0027】
図4に示したのは、回転軸の方向に2段に積んだ風車翼の斜視図である。1段あたりの構造は図3と同じであるが、回転方向の位相に90度の差をつけてある。これによって、起動特性がさらに改善される。
【発明の効果】
【0028】
風車翼を折り畳み式とすることによって、強風時の破壊を免れることができる。簡単な構造であり、安価・安全な商品化が可能となる。風車翼を柔構造としたので、支持柱などの全体構造物にエコ素材をできるだけ使用することが可能となり、地球環境問題に対応し、さらに、材料・製品の輸送経費の大幅な削減効果がある。これらによって最終的に風力発電装置の普及の促進に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置の概念図
図2】風車翼を折り畳んだ状態を示す概念図
図3】風車翼の斜視図
図4】2段積方式の風車翼の斜視図
図5】サボニウス型風車の骨格材の平面図
図6】サボニウス型風車の被覆材の平面展開図
図7】電気制御回路のブロック図
図8】自動制御のシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の実施例をあらわすもっとも一般的な形態の風車翼自動折り畳み式サボニウス型風力発電装置1の概念図を示す。図は水平方向から見たものである。図3は、風車翼2の構造を分かり易くするために、風車翼2だけを抜き出して描いた斜視図である。
【0031】
風車翼自動折り畳み式サボニウス型風力発電装置1は、大きく分けて風車、架台、電気装置からなる。まず風車翼について説明する。サボニウス型の風車翼2は、通常の金属製ではなく、水平に伸びる複数の骨格材4を、帆布など風を通しにくい布などで覆って半円筒形状としたものとしたことが本発明の特徴である。本実施例では図1図3から見て取れるように、3段の骨格材4と被覆材6からなっている。
【0032】
図5はサボニウス型風車の骨格材4の平面図である。骨格材4は中央に4角形の穴403が空いた座板401の両側に梁402を固定して、左右に延伸したものである。梁402の両側(図で上下)に、半円形の円弧状材5をそれぞれの端が梁402の別々の端の近くになるように固定してある。破線で示したのは、次に説明する被覆材6で骨格材4と円弧状材5を覆った状態の被覆材6の断面を示している。
【0033】
図6(a)はサボニウス型風車の被覆材6の平面展開図である。図に示すように、長方形の布などの両端から複数のV字状の切込みを入れてある。この実施例では(両端をまとめて1つと勘定して)切込みは6箇所である。
【0034】
このV字状の切込みの箇所で、切り込んで隣り合う位置を、V字が閉じるように縫い合わせると図6(b)に示すように半円筒形の風車翼2がかたち作られる。ここに破線で示した骨格となる円弧状材5を縫い付けるなどして固定すれば、図3に示すようなサボニウス型風車の2つの内の片側が出来上がる。本実施例では、破線で示したように、被覆材6の上下と中央部の3箇所に円弧状材5を固定してある。
【0035】
なお、被覆材6の縫い合わせたV字状の切込みの箇所がかたち作る上部および下部の半円錐状天井部の中央部が凸状であり、傾斜がついているのは、雨や雪が頂部に滞留しないようにするためである。
【0036】
骨格材4の中央にある座板401の中央にある穴403は回転軸3とわずかの隙間を持った嵌めあいになっている。したがって、垂直に立っている回転軸3に骨格材4の穴403を通すと、骨格材4は水平を保ったまま、自由に上下に滑って移動できる。このように、骨格材4が回転軸3の上を上下に滑って移動し、それによって被覆材6を折り畳むことを可能としていることが本発明の重要な特徴である。
【0037】
上で説明したように、骨格材4を被覆材6で覆って組み立てられた2つの同じ形の風車翼の上部ならびに下部の半円錐状天井部の中央部が、図1または図3に示すように、上部連結梁16ならびに下部連結梁17にそれぞれ固定され、お互いに反対向きに向き合わされて結合される。
【0038】
上部連結梁16の中心部には、骨格材4の座板401と同じように、穴が空いており、回転軸3とわずかの隙間を持った嵌めあいになっている。したがって、骨格材4と同様に、自由に上下に滑って移動できる。下部連結梁17は上部連結梁16と同様の構造であるが、組み立てるときに回転軸3の下の位置に動かないように固定される。
【0039】
次にあらためて全体の構造について説明する。図1および図3で見て取れるように、風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置1は地面あるいは基礎の上に据え付けられた架台30の上に組み立てられている。風車翼2の回転軸3は架台30によって垂直に支えられている。
【0040】
すなわち、回転軸3は架台上部梁31ならびに架台中間梁32に空けられた穴を貫通し、それぞれに固定設置されている回転軸受10ならびに回転軸受11によって垂直に支えられている。さらに、架台下部梁33に設置されているスラスト軸受12によって重量を支えられている。
【0041】
図1に示されているように、連結梁16はロープ9によって吊り上げられている。ロープ9は回転軸3に取り付けられた滑車7、中空である回転軸3の中を通って、回転軸3に取り付けられた電動ウィンチ8で巻き取られている。図1ではロープ9は中空である回転軸3の中を通っているが、回転軸3の中を通らず単に回転軸3に沿っていても良い。なお、ロープ9によって吊った状態で、下方におろすことを吊り下げると称している。
【0042】
回転軸3の下部の位置にはスリップリング23が配置されており、回転しない外部と電気接続ができる。スリップリング23と図示しない配膳を通して、回転軸3に取り付けられて風車翼2と一緒に回転する電動ウィンチ8と、固定された架台中間梁32の上に設置された電気制御ボックス21が接続されている。
【0043】
同じく、架台中間梁32の上に発電機20が設置されており、図示していない配線によって電気制御ボックス21に接続されている。発電機20の回転軸は架台中間梁32にある穴を通って下に伸びており、先端には小プーリ14が設置されている。
【0044】
回転軸3の最下部には大プーリ13が固定されている。大プーリ13と小プーリ14は駆動ベルト15で連結されており、増速機構を形成している。大プーリ13が回転すると小プーリ14が高速で回転して発電機20が電力を発生する。このようにして風車翼2が発生した動力は電力に変換される。
【0045】
図7は電気制御盤21の内部にある電気制御回路の概念的なブロック図を示している。図中で太い矢印は電力を、細い矢印は信号をそれぞれ示す。架台30の柱に設置された操作盤22には、図7の上部に示すように、「自動・手動切替スイッチ」、「風車翼上下スイッチ」ならびに「風速設定スイッチ」があり、それらの設定信号が、図1には図示していない配線を通して電気制御盤21の「風車翼制御回路」に入力される。
【0046】
「風車翼制御回路」には、別に架台の頂部に設置された風速計34からの風速情報ならびに発電機20の出力電圧、すなわち風車翼2の回転速度を示す情報が入力されている。風速計34の配線は図示していない。「風車翼制御回路」はこれらの情報から風車翼2を展開するか縮小するかを自動的に判断し、電動ウィンチ8にロープ9を巻き取るまたは巻き戻す電圧を送る。そのために「電池」に蓄えられた電力が「充放電制御回路」を通して使われる。
【0047】
発電機20の出力は、直流の場合はそのまま、交流の場合は整流されて、電気制御盤21にある「DC/DCコンバーター」に入力され、所定の一定電圧に変換される。「DC/DCコンバーター」の出力は「充放電制御回路」を通って「電池」の充電に使われる。蓄電された電力は、スイッチを通じて外部の機器に「電池」を接続して消費することができる。また、「電池」に蓄電された電力を「DC/ACコンバーター」によって交流に変換され、コンタクター(電磁開閉器)を通じて外部の電力系統に送り出すこともできる。
【0048】
風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置1の発電作用について、電気制御盤21のシーケンス図に沿って説明する。図8は、「風車翼制御回路」の制御のシーケンス図を示している。このシーケンス図の内容は代表的な動作の概念を示したものである。
【0049】
最初に自動運転の場合について説明する。S01では、操作盤から、なんらかの入力を行ってシーケンスが進む。S02で、操作盤22の「自動・手動切替スイッチ」が「自動」なっていると次のS03に進む。S03では、風速計34で測った風速を一定時間観測して最大値を求める。次にS04で風速の最大値が操作盤22の「風速設定スイッチ」を用いて設定した値より小さければ、S05に進む。
【0050】
S05では、風車翼2を既に展開しているならば何も起こらずS02に戻る。風力発電装置を設置した直後であれば、風車翼2を縮小している状態であり、その場合はS06に進み、電動ウィンチ8を駆動してロープ9を巻き上げて風車翼2を展開する。この時、電動ウィンチ8を駆動する電力は、回転軸3に設置されたスリップリング23を通って電気制御盤21に内蔵されている「電池」から供給される。その後、自動運転を継続するのであればシーケンスはS02からS06のループを回り続ける。
【0051】
この間に風が吹いて展開した風車翼2が回転すれば、回転軸2の大プーリ13と発電機20の小プーリ14が構成する増速装置によって発電機20が高速で回転して発電を行う。発電された電力は、図7のブロック図に示した電気制御盤21に内蔵されている「DC/DCコンバーター」によって所定の一定電圧に変換される。
【0052】
発電された電力は、電気制御盤21に内蔵された「充放電制御回路」を通って「電池」に蓄えられる。さらに「DC/ACインバーター」によって交流に変換され、コンタクター(電磁開閉器)を通って外部の電力系統におくりだしても良い。
【0053】
風が強くなって、S04において或る一定時間内の最大風速が操作盤22の「風速設定スイッチ」を用いて設定した値より大きくなった場合は、シーケンスはループから抜けて、S07に進む。S07で風車翼2が展開していることを確認してS08に進む。S08で、電動ウィンチ8を駆動してロープ9を巻き戻すと、展開している風車翼2は自重で下に落ちて縮小され、図2に示されている状態になる。
【0054】
そのとき、風車翼2は縮小している途中で回転しなくなって、発電機20も停止する。シーケンスはS02からS04、S07のループを回り続けて待機状態になる。この場合、風速の測定は継続しているので、しばらくして一定時間内の最大風速が設定値より小さくなった場合は、S07ではなく、S05に進んで、S06で風車翼2は再び展開されて発電を行う。
【0055】
次に、手動による操作を説明する。操作盤22の「自動・手動切替スイッチ」を「手動」にして操作を始めた場合、または既に運転中であってS02以下のループを回っているときに「自動・手動切替スイッチ」を「手動」に切り替えた場合には、シーケンスはS09に進む。
【0056】
S09で、操作盤22の「風車翼上下スイッチ」が「上」なっている場合はS10に進み、風車翼2が縮小している場合はS11に進み、巻き取りモータ8がロープ9を巻き上げて風車翼2を展開する。もし風車翼2が既に展開している場合は、何も起こらずS01に戻る。
【0057】
S09で、操作盤22の「風車翼上下スイッチ」が「下」となっている場合はS12からS13に進み、風車翼2を展開している場合はS14に進み、巻き取りモータ8がロープ9を巻き戻して風車翼2を縮小する。もし風車翼2が既に縮小している場合は、何も起こらずS01に戻る。
【0058】
以上の説明では風速の測定には風速計34の出力を使ったが、発電機20の出力電圧は風速に連係しているので、これから求めた速度を使っても良い。
【0059】
また、風車翼2の被覆材6帆布など風を通しにくい布などと説明したが、風を通しにくい布とは通常の木綿など自然素材の布に高分子材料を塗布したものでも良い。または、高分子材料製の布に別の高分子材料を塗布したものでも良い。さらに、織った布ではなく高分子材料のシートであっても良い。すなわち、柔軟で、風を通さず、加工しやすいシート状の材質であれば良い。
【0060】
また、骨格材4、円弧状材5となる材料は、木材、竹材、高分子製の丸または角パイプ、金属製の丸または角パイプなどが適合する。
【0061】
また、架台30となる材料は、木材、高分子製の丸または角パイプ、金属製の丸または角パイプなどが適合する。
【実施例2】
【0062】
本実施例は、折り畳める複数のサボニウス型風車を回転軸の方向に複数積み上げた多段風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置である。複数積み上げたサボニウス型風車は、それぞれの段に回転方向の位相差をつけておくことにより、起動特性を改善するものである。
【0063】
図4に示したのは、回転軸の方向に2段に積んだ風車翼の斜視図である。1段あたりの構造は実施例1で示した図3と同じであるが、2つの風車翼2aと風車翼2bには回転方向の位相に90度の差をつけてある。それ以外の点については実施例1とおなじである。
【0064】
この実施例ではサボニウス型風車を2段に積み重ねたが、さらに段数を増やしても良い。その場合、隣り合う各段の位相差は同じとする。これによって、起動特性が1段の場合とくらべてさらに改善される。
【0065】
以上に説明したように、本発明によれば、サボニウス型風車の持つ基本的な課題である強風の時に破壊の恐れがあるという点を解決して安全に運転できる風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置を提供できる。
【符号の説明】
【0066】
1 風車翼折り畳み式サボニウス型風力発電装置
2 風車翼
3 回転軸
4 骨格材
401 座板
402 梁
403 穴
5 円弧状材
6 被覆材
7 滑車
8 電動ウィンチ
9 ロープ
10 回転軸受
11 回転軸受
12 スラスト軸受
13 大プーリ
14 小プーリ
15 駆動ベルト
16 上部連結梁
17 下部連結梁
20 発電機
21 電気制御盤
22 操作盤
23 スリップリング
30 架台
31 架台上部梁
32 架台中間梁
33 架台下部梁
34 風速計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8