(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-202760(P2020-202760A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20201127BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20201127BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20201127BHJP
B60K 5/04 20060101ALI20201127BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
A01D41/12 H
A01D67/00 A
B60K13/04 B
B60K5/04 A
B60K5/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-111160(P2019-111160)
(22)【出願日】2019年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】桑島 賢
(72)【発明者】
【氏名】村山 賢多
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 賢治
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB01
2B074AC02
2B074BA19
2B074CD02
2B074CD03
2B074CD10
2B074CH01
2B074DA01
2B074DA02
2B074DA03
2B074DE03
2B074DE05
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2B074DF11
2B076AA04
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2B076CC02
3D038BA07
3D038BA09
3D038BA13
3D038BB08
3D038BC15
3D235AA13
3D235BB23
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3D235EE13
3D235EE20
3D235FF12
3D235FF32
3D235FF37
3D235FF44
(57)【要約】
【課題】排ガス処理装置の放熱を運転部の搭乗空間に伝わり難くしつつ、排ガス処理装置を冷却されやすくする。
【解決手段】機体の左右一方側部分に機体前後方向に沿って延びる状態で設けられ、収穫部が収穫した作物を後方向きに搬送する搬送部8Bと、機体の左右他方側部分に搬送部と横並び状態で設けられた運転部3と、運転部3の下部に設けられた原動部と、が備えられている。運転部3は、サイド運転パネル17rを有している。原動部は、エンジン6の排ガスを浄化処理する排ガス処理装置24を有している。排ガス処理装置24は、エンジン6の上部と搬送部8Bとの間において、長手方向が前後方向に沿う状態で、サイド運転パネル17rの下方かつエンジン6の上部の横隣の位置に配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、
前記機体の左右一方側部分に機体前後方向に沿って延びる状態で設けられ、前記収穫部が収穫した作物を後方向きに搬送する搬送部と、
前記機体の左右他方側部分に前記搬送部と横並び状態で設けられた運転部と、
前記運転部の下部に設けられた原動部と、が備えられ、
前記運転部は、運転座席、及び、前記運転座席に対して前記搬送部が位置する側の横側方に設けられたサイド運転パネルを有し、
前記原動部は、エンジン、及び、前記エンジンの排ガスを浄化処理する排ガス処理装置を有し、
前記排ガス処理装置は、前記エンジンの上部と前記搬送部との間において、長手方向が前後方向に沿う状態で、前記サイド運転パネルの下方かつ前記エンジンの上部の横隣の位置に配置されている収穫機。
【請求項2】
前記搬送部の後方に設けられ、前記搬送部によって搬送された作物を脱穀処理する脱穀装置と、前記原動部の後方に設けられ、前記脱穀装置によって得られた脱穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記排ガス処理装置から後方に向けて延ばされ、前記排ガス処理装置から排出された排ガスを排出する排気管と、が備えられ、
平面視において、前記排気管は、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間を直線状に通されている請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記排気管の排気口は、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間の空間の上部に設定され、
前記排ガス処理装置は、当該排ガス処理装置の後上部に設けられた排出ポート、及び、前記排出ポートから前記排気口に向けて後上がりに延ばされた排出尾管を有している請求項2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記エンジンの機体左右方向での両横側部のうちの前記排ガス処理装置が位置する側の横側部に支持されたエンジン用のフライホイール、前記エンジンに支持され、前記フライホイールを収容するフライホイールケース、前記フライホイールの機体左右方向での両横側部のうちの前記エンジン側とは反対側の横側部に相対回転不能に支持された回転伝動部材が備えられ、
前記フライホイールケースから前記回転伝動部材の上方まで延ばされ、前記排ガス処理装置を下方から受け止め支持する支持部材が備えられている請求項1から3のいずれか一項に記載の収穫機。
【請求項5】
前記エンジンの機体左右方向での両横側部のうち、前記排ガス処理装置が位置する側の横側部における前後の角部のそれぞれを機体フレームに支持させる第1緩衝装置、及び、前記エンジンの機体左右方向での両横側部のうち、前記排ガス処理装置が位置しない側の横側部における前後の角部のそれぞれを前記機体フレームに支持させる第2緩衝装置が備えられ、
前記第1緩衝装置及び前記第2緩衝装置は、防振ゴムを有し、
前記第1緩衝装置が有する防振ゴムの外径は、前記第2緩衝装置が有する防振ゴムの外径よりも大きい請求項4に記載の収穫機。
【請求項6】
前記第1緩衝装置は、前記防振ゴムを構成する第1防振ゴム及び第2防振ゴムを上下方向に並べられて有し、
前記第1緩衝装置に前記エンジンの下降振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かるとき、前記第1防振ゴムが圧縮操作されて、前記第2防振ゴムが操作されず、前記第1緩衝装置に前記エンジンの上昇振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かるとき、前記第2防振ゴムが圧縮操作されて、前記第1防振ゴムが操作されない請求項5に記載の収穫機。
【請求項7】
前記第1緩衝装置は、前記機体フレームに支持される第1マウント部材、及び、前記エンジンに支持される第2マウント部材を有し、
前記第1マウント部材は、前記第1防振ゴムに対して下側に位置し、かつ、前記第2防振ゴムに対して上側に位置するゴム支持部を有し、
前記第2マウント部材は、前記第1防振ゴムに対して前記ゴム支持部側と反対側に位置する第1加圧部、及び、前記第2防振ゴムに対して前記ゴム支持部側と反対側に位置する第2加圧部を有し、
前記第1緩衝装置に前記エンジンの下降振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かったとき、前記ゴム支持部が前記第1防振ゴムを下方から受け止め支持し、前記第1加圧部が前記第1防振ゴムを圧縮操作し、前記第2加圧部が前記ゴム支持部に対して離間し、
前記第1緩衝装置に前記エンジンの上昇振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かったとき、前記ゴム支持部が前記第2防振ゴムを上方から受け止め支持し、前記第2加圧部が前記第2防振ゴムを圧縮操作し、前記第1加圧部が前記ゴム支持部に対して離間する請求項6に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫機には、機体の前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、機体の左右一方側部分に機体前後方向に沿って延びる状態で設けられ、収穫部が収穫した作物を後方向きに搬送する搬送部と、機体の左右他方側部分に搬送部と横並び状態で設けられた運転部と、運転部の下部に設けられた原動部と、が備えられ、原動部は、エンジン、及び、エンジンの排ガスを浄化処理する排ガス処理装置を有するものがある。
この種の収穫機としては、例えば特許文献1に示されるコンバインがある。特許文献1に示されるコンバインには、収穫部としての刈取部が備えられ、搬送部としてのフィーダが備えられ、排ガス処理装置としての第一排ガス浄化装置及び第二排ガス浄化装置が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−112992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の場合、排ガス処理装置がエンジンルームの狭い空きスペースに位置するので、排ガス処理装置の放熱によって温度上昇した空気が排ガス処理装置の周辺に淀みがちになり、排ガス処理装置が冷却され難い。
【0005】
本発明は、排ガス処理装置の放熱を運転部の搭乗空間に伝わり難くしつつ、排ガス処理装置が冷却されやすい収穫機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による収穫機は、
機体の前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記機体の左右一方側部分に機体前後方向に沿って延びる状態で設けられ、前記収穫部が収穫した作物を後方向きに搬送する搬送部と、前記機体の左右他方側部分に前記搬送部と横並び状態で設けられた運転部と、前記運転部の下部に設けられた原動部と、が備えられ、前記運転部は、運転座席、及び、前記運転座席に対して前記搬送部が位置する側の横側方に設けられたサイド運転パネルを有し、前記原動部は、エンジン、及び、前記エンジンの排ガスを浄化処理する排ガス処理装置を有し、前記排ガス処理装置は、前記エンジンの上部と前記搬送部との間において、長手方向が前後方向に沿う状態で、前記サイド運転パネルの下方かつ前記エンジンの上部の横隣の位置に配置されている。
【0007】
本構成によると、排ガス処理装置の上方にサイド運転パネルが位置するので、排ガス処理装置の放熱が運転部の搭乗空間に伝わることをサイド運転パネルによって抑制できる。エンジンの上部と搬送部との間に形成される広い空きスペースを排ガス処理装置の設置スペースに活用するので、排ガス処理装置の放熱によって温度上昇した空気が排ガス処理装置の周辺から流出し易くて排ガス処理装置が冷却されやすい。
【0008】
本発明においては、
前記搬送部の後方に設けられ、前記搬送部によって搬送された作物を脱穀処理する脱穀装置と、前記原動部の後方に設けられ、前記脱穀装置によって得られた脱穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記排ガス処理装置から後方に向けて延ばされ、前記排ガス処理装置から排出された排ガスを排出する排気管と、が備えられ、平面視において、前記排気管は、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間を直線状に通されていると好適である。
【0009】
本構成によると、排気管による放熱を脱穀装置及び穀粒タンクに及び難くしつつ排ガス処理装置の排ガスを機体の後方に排出できる。
【0010】
本発明においては、
前記排気管の排気口は、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間の空間の上部に設定され、前記排ガス処理装置は、当該排ガス処理装置の後上部に設けられた排出ポート、及び、前記排出ポートから前記排気口に向けて後上がりに延ばされた排出尾管を有していると好適である。
【0011】
本構成によると、排出尾管から排気口に至る排気管の形状を曲がりが少ないとか緩くて済む簡素な形状にできる。
【0012】
本発明において、
前記エンジンの機体左右方向での両横側部のうちの前記排ガス処理装置が位置する側の横側部に支持されたエンジン用のフライホイール、前記エンジンに支持され、前記フライホイールを収容するフライホイールケース、前記フライホイールの機体左右方向での両横側部のうちの前記エンジン側とは反対側の横側部に相対回転不能に支持された回転伝動部材が備えられ、前記フライホイールケースから前記回転伝動部材の上方まで延ばされ、前記排ガス処理装置を下方から受け止め支持する支持部材が備えられていると好適である。
【0013】
本構成によると、支持部材がフライホイールを収容する丈夫なフライホイールを介してエンジンに支持されるので、支持部材をエンジンに連結する連結部材にフライホイールケースを活用した簡素な構造の支持構造で排ガス処理装置をしっかり支持させることができる。
【0014】
本発明においては、
前記エンジンの機体左右方向での両横側部のうち、前記排ガス処理装置が位置する側の横側部における前後の角部のそれぞれを機体フレームに支持させる第1緩衝装置、及び、前記エンジンの機体左右方向での両横側部のうち、前記排ガス処理装置が位置しない側の横側部における前後の角部のそれぞれを前記機体フレームに支持させる第2緩衝装置が備えられ、前記第1緩衝装置及び前記第2緩衝装置は、防振ゴムを有し、前記第1緩衝装置が有する防振ゴムの外径は、前記第2緩衝装置が有する防振ゴムの外径よりも大きいと好適である。
【0015】
本構成によると、第1緩衝装置は、エンジンの両横側部のうちの排ガス処理装置が位置する側の横側部を支持し、第2緩衝装置は、エンジンの両横側部のうちの排ガス処理装置が位置しない側の横側部を支持するので、第1緩衝装置には、第2緩衝装置よりも重い荷重が掛かり、第2緩衝装置には、第1緩衝装置よりも軽い荷重が掛かる。しかし、第1緩衝装置の防振ゴムは、第2緩衝装置の防振ゴムの外径よりも大きい外径を有するので、第2緩衝装置に掛かる荷重よりも重い荷重に適切に対応した防振性能を発揮し、第2緩衝装置の防振ゴムは、第1緩衝装置の防振ゴムの外径よりも小さい外径を有するので、第1緩衝装置に掛かる荷重よりも軽い荷重に適切に対応した防振性能を発揮する。第1緩衝装置に掛かる荷重と第2緩衝装置に掛かる荷重との差にかかわらず、エンジンを傾かないようにバランスよく防振支持できる。
【0016】
本発明においては、
前記第1緩衝装置は、前記防振ゴムを構成する第1防振ゴム及び第2防振ゴムを上下方向に並べられて有し、前記第1緩衝装置に前記エンジンの下降振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かるとき、前記第1防振ゴムが圧縮操作されて、前記第2防振ゴムが操作されず、前記第1緩衝装置に前記エンジンの上昇振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かるとき、前記第2防振ゴムが圧縮操作されて、前記第1防振ゴムが操作されないと好適である。
【0017】
本構成によると、エンジンの振動によるエンジンの圧力が第1緩衝装置に掛かったとき、第1防振ゴム及び第2防振ゴムのいずれにも圧縮力が掛かっても、引張力が掛からないので、引張力が掛かる場合の如く防振ゴムが割れることを回避できる。
【0018】
本発明においては、
前記第1緩衝装置は、前記機体フレームに支持される第1マウント部材、及び、前記エンジンに支持される第2マウント部材を有し、前記第1マウント部材は、前記第1防振ゴムに対して下側に位置し、かつ、前記第2防振ゴムに対して上側に位置するゴム支持部を有し、前記第2マウント部材は、前記第1防振ゴムに対して前記ゴム支持部側と反対側に位置する第1加圧部、及び、前記第2防振ゴムに対して前記ゴム支持部側と反対側に位置する第2加圧部を有し、前記第1緩衝装置に前記エンジンの下降振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かったとき、前記ゴム支持部が前記第1防振ゴムを下方から受け止め支持し、前記第1加圧部が前記第1防振ゴムを圧縮操作し、前記第2加圧部が前記ゴム支持部に対して離間し、前記第1緩衝装置に前記エンジンの上昇振動に起因する前記エンジンの加圧力が掛かったとき、前記ゴム支持部が前記第2防振ゴムを上方から受け止め支持し、前記第2加圧部が前記第2防振ゴムを圧縮操作し、前記第1加圧部が前記ゴム支持部に対して離間すると好適である。
【0019】
本構成によると、第1マウント部材がゴム支持部を有し、第2マウント部材が第1加圧部及び第2加圧部を有するだけの簡素な構造の緩衝構造によって第1防振ゴム及び第2防振ゴムのいずれにも引張力が掛からないようにできるので、防振ゴムの割れを安価に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】普通型コンバインの全体を示す右側面図である。
【
図2】普通型コンバインの全体を示す平面図である。
【
図4】エンジン、排ガス処理装置及び排気管を示す左側面図である。
【
図5】フィーダ、排ガス処理装置及び排気管を示す正面図である。
【
図6】エンジン、排ガス処理処理装置、第1緩衝装置及び第2緩衝装置を示す後面図である。
【
図7】エンジン、排ガス処理装置及び排気管を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、普通型コンバイン(「収穫機」の一例)の機体に関し、
図1,2に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、
図1に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、
図2に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0022】
〔普通型コンバインの全体〕
図1,2に示されるように、普通型コンバインの走行可能な機体は、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成された機体フレーム1、及び、機体フレーム1の下部に装備された左右一対のクローラ式の走行装置2を備えている。機体の左右一方側部分としての右側部分に、運転部3が設けられている。運転部3には、運転座席4の上方に設けられた日除け5が備えられている。運転部3の下部に、エンジン6を有する原動部7が設けられている。機体の前部に、収穫搬送装置8が下降作業状態と上昇非作業状態とにわたって昇降可能に設けられている。収穫搬送装置8は、機体の前方において、圃場の稲、麦、大豆などの作物を刈取装置9によって刈り取って収穫する収穫部8A、及び、収穫部8Aによって収穫された作物を後方に搬送する搬送部としてのフィーダ8Bを有している。フィーダ8Bは、機体の左右他方側部分としての左側部分に、機体前後方向に沿って延びる状態で設けられている。フィーダ8Bと運転部3とは、機体の左右方向に並んだ状態、いわゆる横並び状態になっている。機体フレーム1の後部に、脱穀装置10及び穀粒タンク11が横並び状態で支持されている。脱穀装置10は、フィーダ8Bの後方に設けられ、穀粒タンク11は、運転部3の後方に設けられている。脱穀装置10は、フィーダ8Bによって搬送された作物の全稈を脱穀する脱穀処理を行い、脱穀によって得られた穀粒をワラ屑などの塵埃と選別する選別処理を行う。穀粒タンク11は、脱穀装置10から搬送された穀粒を貯留する。穀粒タンク11の後部に、穀粒タンク11から穀粒を取り出す穀粒排出装置12が接続されている。
【0023】
〔運転部について〕
運転部3は、
図1,2,3に示されるように、エンジンボンネット13の上方に設けられた運転座席4と、運転座席4の前下方に設けられた床部14、床部14の前端部に立設された操縦塔15、運転座席4の両横側方のうち、乗降口16が位置する側と反対の横側方(フィーダ8Bが位置する側の横側方)に設けられたサイド運転パネル17を有している。操縦塔15には、機体の操向操作を行う操作レバー18が設けられている。サイド運転パネル17の前部には、走行装置2の駆動速度を変更する主変速レバー19、及び、走行装置2の駆動速度を変更する副変速レバー20が設けられている。
【0024】
〔原動部について〕
原動部7は、
図3,4に示されるように、エンジンルーム13aを形成するエンジンボンネット13、エンジンルーム13aに設けられたディーゼル型のエンジン6を有している。エンジン6は、クランク軸が機体左右方向に沿う方向に延びる搭載姿勢で機体フレーム1に支持されている。
図4,6に示されるように、エンジン6の機体左方向での側部に、エンジン用のフライホイール21を収容するフライホイールケース22が支持されている。フライホイールケース22は、エンジン6に一体形成されている。フライホイール21の機体左方向での側部(エンジン側と反対側の側部)に、回転伝動部材としてのベルトプーリ23が相対回転不能に支持されている。エンジン6の動力がフライホイール21を介してベルトプーリ23に取り出され、ベルトプーリ23から走行装置2及び脱穀装置10のそれぞれに伝達される。
【0025】
〔エンジン排ガスの処理について〕
図4に示されるように、エンジン6に排ガス処理装置24が接続され、排ガス処理装置24から排気管25が延ばされている。エンジン6の排ガスが排ガス処理装置24によって浄化処理され、浄化処理された排ガスが排気管25によって機体外に排出されるよう構成されている。
【0026】
具体的には、
図2,4,5に示されるように、排ガス処理装置24は、エンジン6の上部とフィーダ8Bとの間において、サイド運転パネル17の後側部分17rの下方かつエンジン6の上部の横隣りの位置に配置されている。排ガス処理装置24は、長手方向が機体前後方向に沿う状態で支持部材26に支持されている。支持部材26は、
図6に示されるように、フライホイールケース22の上部からベルトプーリ23の上方まで延ばされ、ベルトプーリ23の上方において、排ガス処理装置24を下方から受け止め支持している。
図6,7に示されるように、排ガス処理装置24の前後二箇所に設けられた脚部24aが支持部材26に載置され、脚部24aと支持部材26とが連結ボルトによって連結されることにより、排ガス処理装置24が支持部材26に支持されている。排ガス処理装置24は、支持部材26及びフライホイールケース22を介してエンジン6に支持されている。本実施形態では、支持部材26をフライホイールケース22に連結ボルトによって脱着可能に支持する構成を採用しているが、これに限らない。たとえば、支持部材26をフライホイールケース22に一体形成する構成、支持部材26とフライホィール22とを噛み合い構造によって連結する構成の採用が可能である。サイド運転パネル17から下向きに延ばされたカバー29によって排ガス処理装置24がフィーダ側からカバーされている。
【0027】
図5に示されるように、排ガス処理装置24の前横側部に設けられた入力ポート24bと、エンジン6の排気マニホールド6aとが連通管27を介して接続されている。排ガス処理装置24は、
図4,8に示されるように、排ガス処理装置24の後上部に上向き突出する状態で設けられた排出ポート24c、及び、排出ポート24cから後上がりに延ばされた排出尾管28を有している。排出尾管28の延出端部が排気管25の前端部25aに挿入され、排ガス処理装置24の排出ポート24cと排気管25とが排出尾管28を介して接続されている。排気管25は、
図2,4,7に示されるように、排ガス処理装置24の排出尾管28から後方に向けて延びる状態、かつ、平面視において、脱穀装置10と穀粒タンク11との間を直線状に通る状態で配管されている。排気管25の排気口25bは、
図2,4に示されように、脱穀装置10と穀粒タンク11との間の空間の上部に設定されている。排気管25の排気口25bは、脱穀装置10と穀粒タンク11との間の空間の上部のうち、穀粒タンク11の後端部に対応する箇所に設定されている。排出尾管28は、排出ポート24cから排気管25の排気口25bに向けて後上がりに延ばされており、排気管25の形状を曲がりが少ないとか緩くて済む簡素な形状にできる。
【0028】
エンジン6の排気マニホールド6aから連通管27に排出された排気が入力ポート24bを介して排ガス処理装置24に取り入れられる。排ガス処理装置24において、取り入れられた排ガスに含まれる粒子状物質を低減する浄化処理が行われ、浄化処理された排ガスが排出ポート24cから吐出され、吐出された排ガスが排出尾管28を介して排気管25に流入し、排気管25によって案内されて機体の後部から機体後方に排出される。
【0029】
〔エンジンの支持構造について〕
図5,6,7に示されるように、エンジン6の機体左右方向での両横側部のうちの排ガス処理装置24が位置する側の横側部において、この横側部における前後の角部のそれぞれと、機体フレーム1のうちのエンジン支持フレーム部1aとにわたり、エンジン6をエンジン支持フレーム部1aに防振ゴム31を介して支持させる第1緩衝装置30が設けられている。エンジン6の機体左右方向での両横側部のうちの排ガス処理装置24が位置しない側の横側部において、この横側部における前後の角部のそれぞれと、機体フレーム1のうちのエンジン支持フレーム部1aとにわたり、エンジン6をエンジン支持フレーム部1aに防振ゴム41を介して支持させる第2緩衝装置40が設けられている。
【0030】
図6に示されるように、第1緩衝装置30の防振ゴム31の外径D1を第2緩衝装置40の防振ゴム41の外径D2よりも大きく設定されている。エンジン6の両横側部のうちの排ガス処理装置24が位置する側の横側部を支持する第1緩衝装置30には、エンジン6の両横側部のうちの排ガス処理装置24が位置しない側の横側部を支持する第2緩衝装置40よりも重い荷重が掛かり、第2緩衝装置40には、第1緩衝装置30よりも軽い荷重が掛かるが、第1緩衝装置30は、外径D1が大きい防振ゴム31によって重い荷重に適切に対応した防振性能を発揮し、第2緩衝装置40は、外径D2が小さい防振ゴム41によって軽い荷重に適切に対応した防振性能を発揮する。第1緩衝装置30に掛かる荷重と第2緩衝装置40に掛かる荷重との差にかかわらず、エンジン6は、第1緩衝装置30及び第2緩衝装置40によって傾かないようにバランスよく防振支持される。
【0031】
第1緩衝装置30の防振ゴム31は、
図10に示されるように、上下方向に並べられた第1防振ゴム31aと第2防振ゴム31bとによって構成されている。
【0032】
第1緩衝装置30においては、第1緩衝装置30にエンジン6の下降振動に起因するエンジン6の加圧力が掛かるとき、第1防振ゴム31aが圧縮操作されて、第2防振ゴム31bが操作されないように、かつ、第1緩衝装置30にエンジン6の上昇振動に起因するエンジン6の加圧力が掛かるとき、第2防振ゴム31bが圧縮操作されて、第1防振ゴム31aが操作されないように構成され、第1防振ゴム31a及び第2防振ゴム31bのいずれにも圧縮力が掛かっても、第1防振ゴム31a及び第2防振ゴム31bのいずれにも引張力が掛からないようになっている。
【0033】
具体的には、第1緩衝装置30は、
図10に示されるように、エンジン支持フレーム部1aに支持される第1マウント部材32、及び、前記エンジン6に支持される第2マウント部材33を有している。第1マウント部材32は、第1防振ゴム31aに対して下側に位置し、かつ、第2防振ゴム31bに対して上側に位置するゴム支持部32aを有している。ゴム支持部32aは、ベース部34及び厚肉部35を有している。第2マウント部材33は、第1防振ゴム31aに対してゴム支持部側と反対側に位置する第1加圧部33a、及び、第2防振ゴム31bに対してゴム支持部側と反対側に位置する第2加圧部33bを有している。第1加圧部33aと第2加圧部33bとの間隔を設定するスペーサ36が第1防振ゴム31a及び第2防振ゴム31bの中心部に嵌め込まれ、第1加圧部33a及び第2加圧部33bがスペーサ36を挟持する状態で連結ボルト37によって締め付け連結されている。これにより、第1防振ゴム31a及び第2防振ゴム31bが第1マウント部材32及び第2マウント部材33に支持され、かつ、第1加圧部33aと第2加圧部33bとが一体にゴム支持部32aに対して移動するように連結されている。
【0034】
第1緩衝装置30にエンジン6の下降振動に起因するエンジン6の加圧力が掛かったとき、ゴム支持部32aが第1防振ゴム31aを下方から受け止め支持し、第1加圧部33aが第1防振ゴム31aを上から圧縮操作して第1防振ゴム31aが圧縮操作され、第2加圧部33bがゴム支持部32aに対して離間して第2防振ゴム35bが操作されず、第2防振ゴム31bに引張力が掛からない状態で第1防振ゴム31aによって緩衝される。
【0035】
第1緩衝装置30にエンジン6の上昇振動に起因するエンジン6の加圧力が掛かったとき、ゴム支持部32aが第2防振ゴム31bを上方から受け止め支持し、第2加圧部33bが第2防振ゴム31bを下方から圧縮操作して第2防振ゴム31bが圧縮操作され、第1加圧部33aがゴム支持部32aに対して離間して第1防振ゴム31aが操作されず、第1防振ゴム31aに引張力が掛からない状態で第2防振ゴム31bによって緩衝される。
【0036】
第2緩衝装置40は、
図11に示されるように、エンジン支持フレーム部1aに支持される第3マウント部材42、及び、エンジン6に支持される第4マウント部材43を有している。第3マウント部材42のゴム支持部42aと、第4マウント部材43のゴム支持部43aとの間に、防振ゴム41が介装されている。防振ゴム41の第3マウント部材側に備えられた支軸44がゴム支持部42aに支持され、防振ゴム41の第4マウント部材側に備えられた支軸45がゴム支持部43aに支持され、防振ゴム41が第3マウント部材42及び第4マウント部材43に支持されている。
【0037】
第2緩衝装置40においては、第2緩衝装置40にエンジン6の下降振動に起因するエンジン6の操作力が掛かったとき、ゴム支持部42aが防振ゴム41を下方から受け止め支持し、ゴム支持部43aが防振ゴム41を上方から圧縮操作し、防振ゴム41が圧縮されて緩衝する。第2緩衝装置40にエンジン6の上昇振動に起因するエンジン6の操作力が掛かったとき、ゴム支持部42aが支軸44を介して防振ゴム41を下方から引き止め支持し、ゴム支持部43aが支軸45を介して防振ゴム41を上方に引張操作し、防振ゴム41が引っ張られて緩衝する。
【0038】
〔排気管カバーについて〕
図7,8に示されるように、脱穀装置10と穀粒タンク11との間において、排気管25の両横側方のうち、穀粒タンク側の横側方に、排気管25を覆う排気管カバー50が設けられている。脱穀装置10に接続されている揚穀装置51及び還元装置52を点検するなどの作業を行うとき、穀粒タンク11を
図2に破線で示される如く枢支軸芯Pを揺動支点にして機体横外側に揺動した開き状態に状態変更し、揚穀装置51の横側方、及び、還元装置52の横側方を開放する。このとき、作業者が排気管25に触れることを排気管カバー50によって防止される。揚穀装置51は、脱穀装置10の選別部から搬送された精粒を穀粒タンク11に搬送するものである。還元装置52は、脱穀装置10の選別部から搬送された未処理粒を脱穀装置10の選別部に還元するものである。
【0039】
排気管カバー50は、
図7,8に示されるように、前カバー部50A、中カバー部50B及び後カバー部50Cに分割可能に構成されている。前カバー部50Aは、
図8に示されるように、機体フレーム1に立設された支柱53、排気管25の上方に設けられた作業用ステップ54、及び、揚穀装置51の途中部分に設けられたブラケット55に脱着可能に支持されている。中カバー部50Bは、
図8に示されるように、作業用ステップ54、ブラケット55、脱穀装置10の横側部から延ばされたステー56に脱着可能に支持されている。還元装置52は、
図8,9に示されるように、脱穀装置10からの未処理粒を機体上下方向に沿わせて揚送する揚送部52a、及び、揚送部52aの終端部から前向きに延ばされ、揚送部52aから吐出された未処理粒を脱穀装置10の内部に投入する投入部52bを有している。投入部52bの上部52c(
図9参照)に堆積したワラ屑など、投入部52bと排気管25との間に詰まったワラ屑などを取り除く場合、中カバー部50Bのみを取り外すことにより、あるいは、前カバー部50A及び中カバー部50Bを取り外すことにより、投入部52bを開放できる。
【0040】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、排ガス処理装置24がエンジン6に支持される例を示したが、これに限らず、専用の支持部材に支持されるものであってもよい。
【0041】
(2)上記した実施形態では、運転部3が機体の右側部分に設けられ、フィーダ8Bが機体の左側部分に設けられた例を示したが、運転部3が機体の左側部分に設けられ、フィーダ8Bが機体の右側部分に設けられたものであってもよい。
【0042】
(3)上記した実施形態では、排ガスに含まれる粒子状物質を低減する排ガス処理装置24のみを備えた例を示したが、これに限らない、粒子状物質を低減する排ガス処理装置2に加え、排ガスに含まれる窒素酸化物を減少させる第2の排ガス処理装置を備え、排ガス処理装置2を設けた位置に、第2の排ガス処理装置を排ガス処理装置2に替えて設けるものであってもよい。
【0043】
(4)上記した実施形態では、排気管25が穀粒タンク11の後端部に対応する箇所まで延ばされた例を示したが、これに限らない。たとえば、穀粒タンク11の前後方向での中間部に対応する箇所まで延ばされているなど、どのような箇所まで延ばされているものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、自脱型コンバインに適用できる。また、穀粒の他、玉ねぎ、人参など各種の作物を収穫対象とする収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
3 運転部
4 運転座席
6 エンジン
7 原動部
8A 収穫部
8B 搬送部(フィーダ)
10 脱穀装置
11 穀粒タンク
17r サイド運転パネル(サイド運転パネルの後側部分)
21 フライホイール
22 フライホイールケース
23 回転伝動部材(ベルトプーリ)
24 排ガス処理装置
24c 排出ポート
25 排気管
25b 排気口
28 排出尾管
30 第1緩衝装置
31 防振ゴム
31a 第1防振ゴム
31b 第2防振ゴム
32 第1マウント部材
32a ゴム支持部
33 第2マウント部材
33a 第1加圧部
33b 第2加圧部
40 第2緩衝装置
41 防振ゴム