【解決手段】自脱型コンバインは、運転席4を有する運転部5と、運転部5を上方から覆うキャビン6と、運転部5のうち運転席4に対して機体左右方向の一方側に設けられる操向操作具25と、運転部5のうち運転席4に対して機体左右方向の他方側に設けられる計器盤31と、キャビン6の前面部に設けられるフロントガラス35とを備え、フロントガラス35はキャビン6の上部から運転席4の座面よりも下側まで延ばし、運転部5のうち床板18の前端部に前壁体41を立設し、フロントガラス35の下端部は前壁体41の上端部に支持させる構成とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の自脱型コンバインでは、運転席から前下方を視認する際に、フロントパネルに視界を遮られてしまうため、運転席から身を乗り出さなければならない。
【0005】
上記状況に鑑み、キャビン付きのコンバインにおいて、運転席の前下方の視認性を向上させることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
運転席を有する運転部と、
前記運転部を上方から覆うキャビンと、
前記運転部のうち前記運転席に対して機体左右方向の一方側に設けられる操向操作具と、
前記運転部のうち前記運転席に対して機体左右方向の他方側に設けられる計器盤と、
前記キャビンの前面部に設けられるフロントガラスと、を備えており、
前記フロントガラスは、前記キャビンの上部から前記運転席の座面よりも下側まで延びており、
前記運転部のうち床部の前端部に、前壁体が立設されており、
前記フロントガラスの下端部は、前記前壁体の上端部に支持されていることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、操向操作具及び計器盤が運転席の前方に位置していないと共に、フロントガラスが運転席の座面よりも下側まで延びている。これにより、操向操作具や計器盤に視界を遮られずに、運転席から身を乗り出すことなく、運転席の前下方を視認することができる。すなわち、キャビン付きのコンバインにおいて、運転席の前下方の視認性を向上させることができる。
【0008】
さらに、本発明において、
前記運転席の下方に設けられるエンジンと、
前記エンジンを上方から覆うエンジンボンネットと、が備えられており、
前記エンジンボンネットにおける天板部に、前記運転席が載置支持されており、
前記前壁体の上端は、前記天板部以下の高さに位置していると好適である。
【0009】
本特徴構成によれば、フロントガラスが天板部以下の高さまで延びていることになる。これにより、運転席の前下方の視認性を一層向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明において、
前記キャビンは、前記キャビンにおける屋根部の前部を支持する左右一対の前支柱を有しており、
前記前壁体の左右両端部のうち少なくとも何れかは、前記前支柱に連結されていると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、剛性の高い前支柱を利用して前壁体をしっかりと支持することができる。
【0012】
さらに、本発明において、
圃場の穀稈を刈り取る刈取装置と、前記キャビンに対して機体左右方向の左右何れかの側に位置すると共に前記刈取装置によって刈り取られた穀稈を後方に搬送する搬送装置と、を有する刈取搬送部を備えており、
前記キャビンのうち前記搬送装置側の前角部に、前記搬送装置が入り込む切欠部が形成されていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、搬送装置が切欠部に入り込むことにより、搬送装置とキャビンのうち搬送装置側の前角部とが干渉することがない。
【0014】
さらに、本発明において、
機体左右方向に並設されると共に圃場の穀稈を分草する複数の分草具と、前記分草具によって分草された圃場の穀稈を刈り取る刈取装置と、前記キャビンに対して機体左右方向の左右何れかの側に位置すると共に前記刈取装置によって刈り取られた穀稈を後方に搬送する搬送装置と、を有する刈取搬送部を備えており、
前記キャビンは、前記キャビンにおける屋根部の前部を支持する左右一対の前支柱と、前記キャビンのうち前記搬送装置側の側部に設けられる第一サイドガラスと、前記キャビンのうち前記搬送装置とは反対側の側部における前部に設けられると共に前記フロントガラスのうち前記搬送装置とは反対側の端部から後方に延びる第二サイドガラスと、を有しており、
左右一対の前記前支柱のうち前記搬送装置側の前記前支柱は、前記フロントガラスのうち前記搬送装置側の端部と前記第一サイドガラスの前端部との角部に位置しており、
左右一対の前記前支柱のうち前記搬送装置とは反対側の前記前支柱は、前記第二サイドガラスの後方に位置しており、
左右一対の前記前支柱のうち前記搬送装置側の前記前支柱の後方に、複数の前記分草具のうち機体左右方向で前記搬送装置側の最外に位置する前記分草具を、前記運転席側から見通す第一見通し空間が形成されており、
左右一対の前記前支柱のうち前記搬送装置とは反対側の前記前支柱の前方に、複数の前記分草具のうち機体左右方向で前記搬送装置とは反対側の最外に位置する前記分草具を、前記運転席側から見通す第二見通し空間が形成されていると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、運転席側から第一見通し空間を介して搬送装置側の最外に位置する分草具を見通すと共に、運転席側から第二見通し空間を介して搬送装置とは反対側の最外に位置する分草具を見通すことにより、圃場の穀稈に対する分草具の条合わせを行い易くなる。また、搬送装置側の前支柱がフロントガラスのうち搬送装置側の端部と第一サイドガラスの前端部との角部に位置していることにより、キャビンのうち搬送装置側の側部が第一サイドガラスによって広く開放されることになって、第一サイドガラスを介して搬送装置による穀稈の搬送状況を確認し易くなる。更に、搬送装置とは反対側の前支柱が第二サイドガラスの後方に位置していることにより、フロントガラスのうち搬送装置とは反対側の端部に前支柱が存在しない分キャビンの前部からの採光面積が広くなって、快適なキャビン空間を実現することができる。
【0016】
さらに、本発明において、
前記キャビンは、機体左右方向に延びて前記キャビンにおける屋根部の前部を支持する前横フレームを有しており、
前記フロントガラスの上端部は、前記前横フレームまで延びていると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、フロントガラスが前横フレームから運転席の座面よりも下側まで延びることになって、運転席の前上方から前下方までの広い範囲の視認性を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明において、
前記フロントガラスは、平面視において、前記キャビンの左側端部及び右側端部に対して前記キャビンの左右中央部が前方に膨出するように湾曲しており、
前記キャビンのうち機体左右方向の一側部に、乗降ドアが設けられており、
前記キャビンのうち前記乗降ドア側の側部は、正面視において、前記キャビンの上端部及び下端部に対して前記キャビンの上下中央部が前記キャビンの室外側に膨出するように湾曲していると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、キャビンの室内空間を前方及び側方にできるだけ広くして、キャビンの居住性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
【0022】
〔コンバインの全体構成〕
図1及び
図2には、自脱型コンバインを示している。本自脱型コンバインは、クローラ式の走行装置1と、走行装置1に支持される機体フレーム2と、を備えている。機体の前部には、運転キャビン3が設けられている。運転キャビン3は、運転席4を有する運転部5と、運転部5を上方から覆うキャビン6と、を有している。運転キャビン3は、機体フレーム2上に位置する閉じ位置(通常位置)と、機体の右方に位置する開き位置(メンテナンス位置)とに亘って、上下方向に延びる開閉支軸P周りで揺動可能である。運転部5の右側部には、乗降口5Aが設けられている。運転席4の下方には、原動部7が設けられている。原動部7には、エンジンEやエンジンE用のエアクリーナACが設けられている。
【0023】
運転キャビン3の前方には、複数刈り仕様(例えば、六条刈り仕様)の刈取搬送部8が設けられている。運転キャビン3の後方には、穀粒を貯留する穀粒貯留タンク9が設けられている。穀粒貯留タンク9の左方には、穀稈を脱穀する脱穀装置10が設けられている。穀粒貯留タンク9は、機体フレーム2上に位置する閉じ位置(通常位置)と、機体の右方に位置する開き位置(メンテナンス位置)とに亘って、上下方向に延びる軸心Z1周りで揺動可能である。穀粒貯留タンク9には、穀粒貯留タンク9内の穀粒を排出する穀粒排出装置11が設けられている。
【0024】
〔刈取搬送部〕
刈取搬送部8は、複数(例えば、七個)の分草具12と、複数(例えば、六個)の引起装置13と、刈取装置14と、搬送装置15と、を有している。刈取搬送部8は、機体左右向きの軸心X1周りで揺動して昇降可能である。分草具12は、機体左右方向に並設されている。分草具12は、圃場の穀稈を分草する。引起装置13は、機体左右方向に並設されている。引起装置13は、分草具12によって分草された圃場の穀稈を引き起こす。刈取装置14は、引起装置13によって引き起こされた圃場の穀稈を刈り取る。搬送装置15は、刈取装置14によって刈り取られた穀稈を後方に搬送する。搬送装置15は、キャビン6に対して左側に位置している。
【0025】
〔運転部〕
図3から
図6に示すように、運転席4は、その左右中心C2がキャビン6の左右中心C1に対して左側に位置するように配置されている。運転席4の下方には、エンジンEを上方から覆うエンジンボンネット16が設けられている。運転席4は、エンジンボンネット16における天板部16Aに載置支持されている。エンジンボンネット16における前壁部16Bは、平面視において、乗降口5A側(右側)ほど後方に位置するように傾斜している。運転席4の後方には、カバー体17が設けられている。カバー体17とエンジンボンネット16における天板部16Aとの間には、エアクリーナACが収容されている。
【0026】
運転部5のうち床部には、床板18が設けられている。床板18は、デッキフレーム19に支持されている。床板18には、開口部18aが形成されている。開口部18aには、蓋板20が着脱可能に取り付けられている。
【0027】
運転席4に対して機体左右方向で乗降口5A側(右側)には、第一サイドボックス21が設けられている。第一サイドボックス21は、運転席4に対して機体左右方向で乗降口5A側(右側)において機体前後方向に延びている。第一サイドボックス21は、運転席4の背部4Aに対応する位置から運転席4の座部4Bの前端よりも前側まで前方に延びている。第一サイドボックス21は、機体左右方向に延びる後支軸22を介してベース23に支持されている。第一サイドボックス21は、後支軸22周りにおいて、後支軸22から前方に延びる使用位置(
図5に示す実線の位置)と後支軸22から上方に延びる収納位置(
図5に示す二点鎖線の位置)とに亘って上下揺動可能である。第一サイドボックス21とベース23とに亘って、第一サイドボックス21を収納位置側に揺動付勢するダンパ24が設けられている。
【0028】
第一サイドボックス21には、操向レバー25(本発明に係る「操向操作具」に相当)やスタータスイッチ26A、コンビネーションスイッチ26Bが備え付けられている。操向レバー25は、機体の左右旋回や刈取搬送部8の昇降を行うものである。スタータスイッチ26Aは、エンジンEの始動・停止を行うものである。コンビネーションスイッチ26Bは、ホーンスイッチやウインカースイッチを有している。
【0029】
第一サイドボックス21の前部には、機体左右方向で運転席4とは反対側(右側)に膨出する膨出部21aが形成されている。第一サイドボックス21の前部のうち機体左右方向で運転席4側(左側)の縁部は、前端側ほど機体左右方向で運転席4とは反対側(右側)に位置するように湾曲している。第一サイドボックス21の上面部のうち操向レバー25よりも後側の部分には、操向レバー25を操作する際に手首を置く手首置き部21bが設けられている。第一サイドボックス21の上面部のうち手首置き部21bよりも後側の部分は、後端側ほど下側に位置するように湾曲している。これにより、第一サイドボックス21が収納位置に切り替えられた状態でカバー体17に当たることがない。第一サイドボックス21の底部における前端部には、前上がりに傾斜する傾斜面部21cが形成されている。これにより、第一サイドボックス21が収納位置に切り替えられた状態で乗降の際に第一サイドボックス21が一層邪魔になり難い。
【0030】
第一サイドボックス21のうち機体左右方向で運転席4側(左側)の部分には、操向レバー25が配置されている。第一サイドボックス21のうち操向レバー25よりも機体左右方向で運転席4とは反対側(右側)の部分には、スタータスイッチ26A及びコンビネーションスイッチ26Bが配置されている。膨出部21aには、コンビネーションスイッチ26Bが配置されている。コンビネーションスイッチ26Bは、操向レバー25よりも前側でかつ右側に位置している。スタータスイッチ26Aは、コンビネーションスイッチ26Bよりも前側でかつ左側(機体左右方向で操向レバー25とコンビネーションスイッチ26Bとの間)に位置している。
【0031】
手首置き部21bは、第一サイドボックス21の上面部が上方に膨出して形成されている。すなわち、手首置き部21bは、第一サイドボックス21と一体形成されている。手首置き部21bは、前下がりに傾斜する前傾斜部と、後下がりに傾斜する後傾斜部と、を有している。操向レバー25の機体前後方向の揺動を阻害しないように、手首置き部21bのうち前傾斜部と操向レバー25との間には、機体前後方向に間隔があけられている。手首置き部21bに手首を置いた際に、手首置き部21bのうち前傾斜部と後傾斜部との接続部に手首が当たって痛くならないように、手首置き部21bのうち前傾斜部と後傾斜部との接続部が丸みを帯びた形状に形成されている。手首置き部21bのうち前傾斜部と後傾斜部との接続部に、クッション材を設けてもよい。手首置き部21bのうち後傾斜部における機体左右方向で運転席4側(左側)の部分には、下方に凹入する凹入部21dが形成されている。凹入部21dには、詳しくは後述する解除レバー68が配置されている。
【0032】
運転席4に対して機体左右方向で乗降口5Aとは反対側(左側)には、第二サイドボックス27が設けられている。第二サイドボックス27は、運転席4に対して機体左右方向で乗降口5Aとは反対側(左側)において機体前後方向に延びている。第二サイドボックス27は、運転席4の背部4Aに対応する位置から第一サイドボックス21の前端よりも前側、具体的には、床板18の前端部に対応する位置まで前方に延びている。
【0033】
第二サイドボックス27には、変速レバー28やクラッチレバー29、操作パネル30、計器盤31が備え付けられている。変速レバー28は、機体の進行方向(前進、後進、停止)の切り替えや走行変速、刈取変速を行うものである。クラッチレバー29は、刈取・脱穀クラッチ(図示省略)の入・切を行うものである。操作パネル30は、各種の操作スイッチ群を有している。計器盤31には、例えば、作業速度計やエンジン回転計、燃料計等が設けられている。
【0034】
第二サイドボックス27には、変速レバー28用の機器(図示省略)やクラッチレバー29用の機器(図示省略)、操作パネル30用の機器(図示省略)、計器盤31用の機器(図示省略)が内装されている。このような機器としては、例えば、各種のセンサやハーネス、スイッチ等が該当する。すなわち、機体前後方向に延びてある程度の容量を有する第二サイドボックス27に、変速レバー28等が備え付けられているため、運転者が変速レバー28用の機器等に誤って接触して変速レバー28用の機器等が故障することがないように、変速レバー28用の機器等を第二サイドボックス27に内装することができる。
【0035】
第二サイドボックス27のうち機体左右方向で運転席4側(右側)の部分には、変速レバー28が配置されている。第二サイドボックス27の上面部のうち変速レバー28よりも機体左右方向で運転席4とは反対側(左側)の部分には、傾斜面部27aが形成されている。傾斜面部27aは、左上がりに傾斜、すなわち、運転席4から離れるほど高くなるように傾斜している(
図10参照)。傾斜面部27aには、操作パネル30が配置されている。
【0036】
計器盤31は、第二サイドボックス27の前端部において、前上がりの傾斜姿勢で前方及び右方に張り出している。計器盤31は、運転席4の左端よりも右側まで右方に張り出している。計器盤31は、運転席4の座面4aよりも上側に位置している。
【0037】
ここで、上述のように、運転席4は、その左右中心C2がキャビン6の左右中心C1に対して左側に位置するように配置されている。これにより、運転席4から変速レバー28に手が届き易くなり、変速レバー28の操作性を向上させることができる。
【0038】
〔キャビン〕
図3から
図6に示すように、キャビン6は、屋根部32と、左右一対の前支柱33L・33Rと、左右一対の後支柱34L・34Rと、フロントガラス35と、第一サイドガラス36と、第二サイドガラス37と、乗降ドア38と、を有している。キャビン6のうち左側の前角部には、搬送装置15が入り込む切欠部6Aが形成されている。ここで、
図3には、運転者の左側の目線e1及び運転者の右側の目線e2を、
図5には、運転者の上側の目線e3及び運転者の下側の目線e4を示している。なお、これらの目線e1、e2、e3、e4は、運転者の体格や姿勢等によって多少異なる。
【0039】
〔屋根部〕
屋根部32は、キャビン6の上部に設けられている。屋根部32は、アウタールーフ32Aと、インナールーフ32Bと、を有している。屋根部32(アウタールーフ32A、インナールーフ32B)の前部の厚さ(上下方向)をできるだけ薄くして、運転席4の前上方の視認性が向上するようにしている。屋根部32の内部には、屋根部32を支持するルーフフレーム39が設けられている。ルーフフレーム39は、機体左右方向に延びて屋根部32の前部を支持する前横フレーム39Aと、機体左右方向に延びて屋根部32の後部を支持する後横フレーム39Bと、機体前後方向に延びて屋根部32の左側部を支持する左前後フレーム39Cと、機体前後方向に延びて屋根部32の右側部を支持する右前後フレーム39Dと、を有している(
図7参照)。
【0040】
〔前支柱〕
左右一対の前支柱33L・33Rは、屋根部32の前部を支持している。左側の前支柱33Lは、正面視において、上下方向に真っ直ぐ延び、かつ、側面視において、前倒れに傾斜している。左側の前支柱33Lは、フロントガラス35の左端部と第一サイドガラス36の前端部との角部に位置している。左側の前支柱33Lの後方には、左側の最外に位置する分草具12を運転席4側から見通す第一見通し空間S1が形成されている(
図2参照)。
【0041】
右側の前支柱33Rは、正面視において、キャビン6の上端部及び下端部に対してキャビン6の上下中央部がキャビン6の室外側(右側)に膨出するように湾曲し、かつ、側面視において、上下方向に真っ直ぐ延びている。右側の前支柱33Rは、第二サイドガラス37の後方で乗降ドア38の前方に位置している。右側の前支柱33Rの前方には、右側の最外に位置する分草具12を運転席4側から見通す第二見通し空間S2が形成されている(
図2参照)。
【0042】
〔後支柱〕
左右一対の後支柱34L・34Rは、屋根部32の後部を支持している。左側の後支柱34Lは、正面視において、上下方向に真っ直ぐ延び、かつ、側面視において、上下方向に真っ直ぐ延びている。右側の後支柱34Rは、正面視において、キャビン6の上端部及び下端部に対してキャビン6の上下中央部がキャビン6の室外側(右側)に膨出するように湾曲し、かつ、側面視において、上下方向に真っ直ぐ延びている。
【0043】
〔フロントガラス〕
フロントガラス35は、キャビン6の前面部に設けられている。フロントガラス35は、屋根部32から運転席4の座面4aよりも下側まで延びている。具体的には、フロントガラス35は、前横フレーム39Aからエンジンボンネット16における天板部16Aの高さと同一の高さ(厳密には、エンジンボンネット16における天板部16Aの高さよりも若干下側)まで延びている。フロントガラス35は、側面視において、前倒れに傾斜している。フロントガラス35は、左側の前支柱33Lと第二サイドガラス37とに亘って設けられている。フロントガラス35は、平面視において、キャビン6の左側端部及び右側端部に対してキャビン6の左右中央部が前方に膨出するように湾曲している。
【0044】
フロントガラス35の下縁部に沿って延びる横フレーム40が設けられている。フロントガラス35は、横フレーム40を介して前壁板41(本発明に係る「前壁体」に相当)の上端部に支持されている。フロントガラス35の左下角部は、左上がりに傾斜する形状に切り欠かれている。フロントガラス35の左下角部に沿って延びる斜めフレーム42が設けられている。斜めフレーム42は、左側の前支柱33Lの下端部と横フレーム40の左端部とに亘って設けられている。
【0045】
〔前壁板〕
前壁板41は、床板18の前端部に立設されている。前壁板41の上端は、エンジンボンネット16における天板部16Aの高さよりも下側の高さに位置している。前壁板41は、平面視において、キャビン6の左側端部及び右側端部に対してキャビン6の左右中央部が前方に膨出するように湾曲している。前壁板41は、湾曲加工された板金によって構成されている。前壁板41の左端部は、切欠部6Aの右端部に連結されている。前壁板41の右端部は、右側の前支柱33Rに連結されている。
【0046】
ここで、
図5に示すように、刈取搬送部8が下降限界位置まで下降している状態(
図5に示す実線の状態)では、引起装置13の上端が前壁板41の上端よりも下側に位置している。そして、刈取搬送部8が上昇限界位置まで上昇している状態(
図5に示す二点鎖線の状態)では、引起装置13の上端が前壁板41の上端よりも上側に位置している。これにより、刈取作業中に、引起装置13が視界の妨げになり難くなる。
【0047】
このような構成によれば、操向レバー25及び計器盤31が運転席4の前方に位置していないと共に、フロントガラス35が運転席4の座面4aよりも下側まで延びている。これにより、操向レバー25及び計器盤31に視界を遮られずに、運転席4から身を乗り出すことなく、運転席4の前下方を視認することができる。すなわち、キャビン6付きの自脱型コンバインにおいて、運転席4の前下方の視認性を向上させることができる。
【0048】
〔第一サイドガラス〕
第一サイドガラス36は、キャビン6の左側部において、左側の前支柱33Lと左側の後支柱34Lとに亘って設けられている。第一サイドガラス36は、正面視において、上下方向に真っ直ぐ延びている。第一サイドガラス36は、左方に張り出した窓(出窓)である。すなわち、第一サイドガラス36と第二サイドボックス27の左端との間には、機体左右方向で間隔Dがあけられている。これにより、キャビン6の室内空間を側方にできるだけ広くして、キャビン6の居住性を向上させることができる。
【0049】
〔第二サイドガラス〕
第二サイドガラス37は、キャビン6の右側部において、フロントガラス35の右端部と右側の前支柱33Rとに亘って設けられている。すなわち、第二サイドガラス37は、フロントガラス35の右端部から右側の前支柱33Rまで後方に延びている。第二サイドガラス37は、側面視において、下方に窄まる三角形状(逆三角形状)に形成されている。第二サイドガラス37は、正面視において、キャビン6の上端部及び下端部に対してキャビン6の上下中央部がキャビン6の室外側(右側)に膨出するように湾曲している。
【0050】
〔乗降ドア〕
乗降ドア38は、キャビン6の右側部のうち乗降口5Aに対応する部分に設けられている。乗降ドア38は、右側の後支柱34Rに上下一対のヒンジ43を介して揺動可能に支持されている。乗降ドア38は、正面視において、キャビン6の上端部及び下端部に対してキャビン6の上下中央部がキャビン6の室外側(右側)に膨出するように湾曲している。乗降ドア38は、ガラス部38Aと、ガラス部38Aの周縁部に取り付けられるサッシ38Bと、を有している。
【0051】
〔切欠部〕
図6及び
図7に示すように、切欠部6Aは、キャビン6のうち左側の前角部において、左側の前支柱33Lの下端部とデッキフレーム19とに亘って形成されている。切欠部6Aは、折り曲げ加工された板金によって構成されている。切欠部6Aは、上板6aと、中板6bと、下前板6cと、下後板6dと、を有している。
【0052】
〔運転キャビンのフレーム構造〕
図7に示すように、左側の前支柱33Lの下端部と左側の後支柱34Lの下端部とに亘って、機体前後方向に延びる前後フレーム44が設けられている。開閉支軸Pの上端部からは、前下がりに傾斜する斜めフレーム45が前方に延びている。前後フレーム44の後端部と斜めフレーム45とに亘って、機体左右方向に延びる横フレーム46が設けられている。
【0053】
開閉支軸Pの上部のうち斜めフレーム45よりも下側からは、機体前後方向に延びる前後フレーム47が前方に延びている。前後フレーム47の前端部からは、上下方向に延びる縦フレーム48が下方に延びている。縦フレーム48の下端部からは、機体前後方向に延びる前後フレーム49が前方に延びている。前後フレーム49の前端部からは、上下方向に延びる縦フレーム50が下方に延びている。縦フレーム50の下端部は、デッキフレーム19に連結されている。前後フレーム44の前端部と前後フレーム49とに亘って、斜めフレーム51が設けられている。このような構成によれば、複数のフレームや板金等の組合せにより、斜めフレーム45をそれ程長くすることなく、切欠部6Aを形成することができる。
【0054】
〔運転キャビンの防振マウント構造〕
図7から
図9に示すように、運転キャビン3の前部は、防振マウント装置52を介して台座2Aに防振支持されている。台座2Aは、機体フレーム2の前端部に設けられている。防振マウント装置52は、上側ステー53と、一対の防振支持部54と、下側ステー55と、を有している。
【0055】
上側ステー53は、デッキフレーム19に沿って延びる状態でデッキフレーム19に固定されている。上側ステー53の長手方向両端部には、それぞれ、防振支持部54が設けられている。下側ステー55は、一対の防振支持部54に亘って設けられている。下側ステー55は、台座2Aにボルト56によって固定されている。
【0056】
防振支持部54は、上下一対の防振ゴム54Aと、上下一対の拘束板54Bと、を有している。上下一対の防振ゴム54A及び上下一対の拘束板54Bは、上下一対の防振ゴム54Aが下側ステー55を挟み込むと共に、上下一対の拘束板54Bが上下一対の防振ゴム54Aを挟み込む状態で、上側ステー53にボルト57によって固定されている。
【0057】
このような構成によれば、運転者に対する振動の伝播を防振マウント装置52によって抑制して、キャビン6の室内における快適性を向上させることができる。ここで、運転キャビン3を開き位置に移動させる際は、運転キャビン3側と機体フレーム2側との連結(防振マウント装置52と台座2Aとの連結)を解除すればよい。なお、運転キャビン3を開き位置に移動させるのに先立って、穀粒貯留タンク9を開き位置に移動させておく必要がある。
【0058】
詳述すると、キャビン6の室内において、蓋板20を開口部18aから取り外すと、防振マウント装置52が開口部18aを介してキャビン6内に露出する。これにより、キャビン6の室内から開口部18aを介してボルト56にアクセスして、ボルト56を取り外すことができる。こうして、防振マウント装置52と台座2Aとの連結を解除することができる。これにより、下側ステー55が台座2Aの上面に沿ってスライドする形態で、運転キャビン3を開き位置に移動させることができる。
【0059】
〔第一サイドボックス〕
図11から
図14に示すように、第一サイドボックス21は、上側カバー体21Aと下側カバー体21Bとが上下に組み合わされたボックス構造である。下側カバー体21Bの底部及び後壁部には、ダンパ24が伸長する際に下側カバー体21Bと干渉しないように、切欠部21eが形成されている。第一サイドボックス21には、支持機構58やポテンショメータ59A・59Bが内装されている。支持機構58は、操向レバー25を機体前後方向及び機体左右方向に揺動可能に支持するものである。ポテンショメータ59Aは、操向レバー25の機体前後方向の揺動位置を検出するものである。ポテンショメータ59Bは、操向レバー25の機体左右方向の揺動位置を検出するものである。その他、第一サイドボックス21には、ポテンショメータ59A・59B用のハーネス(図示省略)やスタータスイッチ26A用のハーネス(図示省略)、コンビネーションスイッチ26B用のハーネス(図示省略)が内装されている。すなわち、機体前後方向に延びてある程度の容量を有する第一サイドボックス21に、操向レバー25等が備え付けられているため、運転者が操向レバー25用の機器(例えば、ポテンショメータ59A・59Bやポテンショメータ59A・59B用のハーネス等)等に誤って接触して操向レバー25用の機器等が故障することがないように、操向レバー25用の機器等を第一サイドボックス21に内装することができる。
【0060】
第一サイドボックス21の内部には、第一サイドボックス21を支持するフレーム体60が設けられている。フレーム体60は、上方に開口する横断面形状が略C字形状の板状部材である。フレーム体60は、底板部60Aと、左側板部60Bと、右側板部60Cと、を有している。左側板部60B及び右側板部60Cには、上側カバー体21Aがビス61によって固定されていると共に、下側カバー体21Bがビス61によって固定されている。左側板部60Bの前端部及び右側板部60Cの前端部には、支持機構58がボルト62によって固定されている。底板部60Aには、ダンパ24が伸長する際に底板部60Aと干渉しないように、切欠部60aが形成されている。左側板部60Bの後端部と右側板部60Cの後端部とに亘って、後支軸22が挿通されるボス部63が設けられている。
【0061】
ベース23は、エンジンボンネット16における天板部16Aに立設された状態でボルト固定されている。ベース23は、ベース本体23Aと、取付支持部23Bと、を有している。ベース本体23Aは、右方から取付支持部23Bに支持されている。ベース本体23Aの上端部からは、後支軸22が右方に突出している。
【0062】
ダンパ24は、フレーム体60と取付支持部23Bとに亘って設けられている。ダンパ24の先端部は、取付ピン64に取り付けられている。底板部60Aには、取付ピン64を支持するダンパ取付部65が設けられている。ダンパ24の基端部は、取付ピン66に取り付けられている。取付ピン66は、取付支持部23Bに支持されている。
【0063】
〔ロック機構〕
第一サイドボックス21を使用位置にロックするロック機構67が設けられている。ロック機構67は、解除レバー68と、ロックフック69と、ロックピン70と、連係ロッド71と、スプリング72と、を有している。
【0064】
解除レバー68は、機体左右方向に延びる軸心X2周りで揺動可能にピン73に支持されている。ピン73は、左側板部60Bから右方に突出している。
【0065】
ロックフック69は、機体左右方向に延びる軸心X3周りで揺動可能にピン74に支持されている。ピン74は、左側板部60Bから右方に突出している。ロックフック69には、ロックピン70に係合可能な係合凹部69aが形成されている。
【0066】
ロックピン70は、ベース本体23Aから右方に突出している。左側板部60Bには、ロックピン70が挿通される溝60bが形成されている。溝60bは、後支軸22を中心とする円弧形状である。
【0067】
連係ロッド71は、解除レバー68とロックフック69とを連係するように、解除レバー68とロックフック69とに亘って設けられている。解除レバー68には、連係ロッド71のうち解除レバー68側の端部が取り付けられるピン75が設けられている。ロックフック69には、連係ロッド71のうちロックフック69側の端部が取り付けられるピン76が設けられている。
【0068】
スプリング72は、ロックフック69を軸心X3周りでロック側に揺動付勢するように、ロックフック69と左側板部60Bとに亘って設けられている。ロックフック69には、スプリング72のうちロックフック69側の端部が取り付けられるピン77が設けられている。左側板部60Bには、スプリング72のうち左側板部60B側の端部が取り付けられるピン78が設けられている。
【0069】
図15には、第一サイドボックス21が使用位置に切り替えられた状態を示している。第一サイドボックス21が使用位置に切り替えられた状態では、ロックピン70が溝60bの上端部に係合している。すなわち、ロックピン70が溝60bの上端部に係合することにより、第一サイドボックス21が使用位置に位置決めされている。そして、ロックフック69がスプリング72によってロック側に揺動付勢されて、係合凹部69aがロックピン70に係合している。こうして、第一サイドボックス21がロック機構67によって使用位置にロックされている。
【0070】
そして、
図16に示すように、解除レバー68を軸心X2周りでロック解除側に揺動操作すると、ロックフック69が軸心X3周りでロック解除側に揺動されるように、解除レバー68とロックフック69とが連係ロッド71によって連係される。そして、ロックフック69が軸心X3周りでロック解除側に揺動されることにより、ロックピン70に対する係合凹部69aの係合が解除される。こうして、ロック機構67による第一サイドボックス21の使用位置へのロックが解除される。
【0071】
そして、ロック機構67による第一サイドボックス21の使用位置へのロックが解除されると、ダンパ24が伸長することにより、第一サイドボックス21がダンパ24の付勢力によって後支軸22周りで上方に揺動して、第一サイドボックス21が収納位置に切り替わる。その際、ダンパ24が切欠部21e・60aに入り込むことにより、ダンパ24が第一サイドボックス21と干渉することがない。
【0072】
図17には、第一サイドボックス21が収納位置に切り替えられた状態を示している。第一サイドボックス21が収納位置に切り替えられた状態では、ロックピン70が溝60bの下端部に係合している。すなわち、ロックピン70が溝60bの下端部に係合することにより、第一サイドボックス21が収納位置に位置決めされている。こうして、第一サイドボックス21を収納位置に切り替えることにより、乗降の際に第一サイドボックス21や操向レバー25が邪魔になり難く、スムーズに乗降することができる。
【0073】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、操向レバー25が運転席4に対して右側に設けられ、計器盤31が運転席4に対して左側に設けられているが、操向レバー25が運転席4に対して左側に設けられ、計器盤31が運転席4に対して右側に設けられていてもよい。
【0074】
(2)上記実施形態では、フロントガラス35がエンジンボンネット16における天板部16Aの高さと同一の高さ(厳密には、エンジンボンネット16における天板部16Aの高さよりも若干下側)まで延びているが、運転席4の座面4aよりも下側まで延びていれば、エンジンボンネット16における天板部16Aの高さよりも上側まで延びているものでもよい。
【0075】
(3)上記実施形態では、前壁板41の上端がエンジンボンネット16における天板部16Aの高さよりも下側の高さに位置しているが、エンジンボンネット16における天板部16Aの高さと同一の高さに位置していてもよい。あるいは、フロントガラス35が運転席4の座面4aよりも下側まで延びていれば、前壁板41の上端がエンジンボンネット16における天板部16Aの高さよりも上側の高さに位置していてもよい。
【0076】
(4)上記実施形態では、前壁板41の右端部が右側の前支柱33Rに連結されているが、これに代えてあるいはこれと共に、前壁板41の左端部が左側の前支柱33Lに連結されていてもよい。
【0077】
(5)上記実施形態では、刈取搬送部8が六条刈り仕様であるが、二〜五条刈り仕様又は七条刈り以上の仕様であってもよい。すなわち、上記実施形態では、分草具12が七個であるが、三個〜六個又は八個以上であってもよい。また、上記実施形態では、引起装置13が六個であるが、二個〜五個又は七個以上であってもよい。
【0078】
(6)上記実施形態では、搬送装置15がキャビン6に対して左側に位置しているが、キャビン6に対して右側に位置していてもよい。この場合、キャビン6のうち右側の前角部に、切欠部6Aが形成されていてもよい。
【0079】
(7)上記実施形態では、キャビン6のうち左側の前角部に、切欠部6Aが形成されているが、切欠部6Aが形成されていなくてもよい。
【0080】
(8)上記実施形態では、フロントガラス35が平面視において、キャビン6の左側端部及び右側端部に対してキャビン6の左右中央部が前方に膨出するように湾曲しているが、機体左右方向に真っ直ぐ延びていてもよい。また、上記実施形態では、第二サイドガラス37や乗降ドア38が正面視において、キャビン6の上端部及び下端部に対してキャビン6の上下中央部がキャビン6の室外側(右側)に膨出するように湾曲しているが、上下方向に真っ直ぐ延びていてもよい。