【解決手段】シャフト14の遠位端側にバルーン12が設けられたバルーンカテーテル10において、前記バルーン12の長さ方向に延びる第1の制御体32と編組体からなる第2の制御体34とが互いに別体とされており、これら第1及び第2の制御体32,34が該バルーン12に対して位置決めされて装着されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の如きバルーンカテーテルでは、患者の症状等に合わせて膨張後のバルーンの形状等が予め設定された形状等となるようにバルーンにおける例えば長さ方向や径方向の変形量が制御されることが好ましい。具体的に例示すると、血管の石灰化が進行して狭窄部位が硬くなった患者では、より大きな圧力をもって狭窄部位を押し広げる必要があり、バルーン内を通常よりも高圧にした際にも、バルーンが予め設定された形状となるようにバルーンにおける長さ方向や径方向の変形量が適切に制御されることが望ましい。
【0005】
本発明の解決課題は、バルーンの変形量を安定して且つ効率良く制御することのできる、新規な構造のバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0007】
第1の態様は、シャフトの遠位端側にバルーンが設けられたバルーンカテーテルにおいて、前記バルーンの長さ方向に延びる第1の制御体と編組体からなる第2の制御体とが互いに別体とされており、これら第1及び第2の制御体が該バルーンに対して位置決めされて装着されているものである。
【0008】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、バルーンの長さ方向の変形量を第1の制御体により制御すると共に、バルーンの径方向の変形量を第2の制御体により制御することで、所定の形状を保ちつつバルーン内をより高圧にすることができる。また、第1の制御体と第2の制御体が互いに別体とされることで、バルーンの長さ方向の変形量の制御と径方向の変形量の制御とを各別に効率良く行うことができて、例えばバルーンに要求される特性等に応じてバルーンの長さ方向や径方向の変形量をそれぞれ適宜に設定することが容易となる。
【0009】
なお、本発明における編組体としては、例えば複数の糸状体による編物や組紐、織物等が挙げられる。即ち、現在の編成、製織、及び編組の各技術は、カテゴリの境界があいまいであって各用語も限定的に解釈されるものでなく、編組には、編組みや製織の技術や構成が単独で又は組み合わされて採用され得る。
【0010】
第2の態様は、前記第1の態様に係るバルーンカテーテルにおいて、前記バルーンに対して前記第1の制御体が一体成形されているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、第1の制御体を別途形成して後固着するといった面倒な手間を省くことができる。また、バルーンから第1の制御体が脱落することが防止されて、例えば第1の制御体の破片が血管内を流動することが回避され得る。更に、第1の制御体はバルーンと一体成形されることから生体適合性を有しており、例えば接着剤や熱や光を利用して第1の制御体をバルーンに固着する必要もないことから、バルーンや第1の制御体の組成が変性することもなく、患者に対して安全なバルーンカテーテルを提供することもできる。
【0012】
第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係るバルーンカテーテルにおいて、前記バルーンの内周側に前記第1の制御体が設けられているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、第1の制御体によるバルーンの外周側への突出量を小さく抑えることができて、血管内の挿通性が向上される。また、第1の制御体がバルーンの外周側へ周方向で部分的に突出することも回避されることから、バルーンの膨張時に狭窄部位を周方向の全周に亘って略均一に押し広げることも可能となる。
【0014】
また、第1の制御体の形成位置においてバルーンの剛性を向上させることができて、バルーンの収縮後の形状を制御することもできる。これにより、バルーンカテーテルの抜去や再突入に際してバルーンが血管壁に引っ掛かったりすることを回避することもできる。
【0015】
第4の態様は、前記第1〜第3の何れかの態様に係るバルーンカテーテルにおいて、前記バルーンの外周側に前記第1の制御体が設けられているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、例えば第1の制御体がバルーンとは別体として形成される場合には、第1の制御体をバルーンに対して容易に固着することができる。また、この場合には、第1の制御体の材質の選択自由度が向上されることから、バルーンの長さ方向の変形量がより容易に制御され得る。
【0017】
第5の態様は、前記第1〜第4の何れかの態様に係るバルーンカテーテルにおいて、前記第1の制御体よりも外周側に前記第2の制御体が設けられているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、第1及び第2の制御体が設けられたバルーンの外周面をより滑らかな環状面とすることも可能となり、血管内の挿通性が向上されたり、バルーンの膨張時に狭窄部位を周方向の全周に亘って略均一に押し広げることも可能となる。
【0019】
第6の態様は、前記第1〜第5の何れかの態様に係るバルーンカテーテルにおいて、前記第1の制御体が周方向で離隔して複数設けられていると共に、前記第2の制御体が筒状とされているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、第一及び第二の制御体によるバルーン膨張時の変形抑制力を効率的に広い範囲に及ぼすことも可能になって、バルーンを全体としてより均一に膨張させることも可能になる。
【0021】
第7の態様は、前記第1〜第6の何れかの態様に係るバルーンカテーテルにおいて、前記第1及び第2の制御体が前記バルーンの全長に亘って設けられているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、バルーンの膨張時に、第1及び第2の制御体が設けられていない箇所においてバルーンが局所的に膨張することを回避することもできる。
【0023】
第8の態様は、前記第1〜第7の何れかの態様に係るバルーンカテーテルにおいて、前記第2の制御体が、前記バルーンの長さ方向に対して傾斜する糸状体のみで編組されているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、バルーン長さ方向の変形抑制に関して、第2の制御体の寄与を抑えて第1の制御体へより大きく担わせることができる。それ故、バルーンの長さ方向の変形量の抑制と径方向の変形量の抑制とをより効率的に制御することも可能になる。
【0025】
また、第2の制御体においてバルーン長さ方向へ平行に延びる糸状体を採用した場合に比して、バルーンの外径寸法が小さくなる長さ方向両端部分(コーン部分やレッグ部分)への第2の制御体を構成する糸状体の集中し過ぎによるバルーンの柔軟性の低下等を回避することもできる。
【0026】
第9の態様は、シャフトの遠位端側にバルーンが設けられたバルーンカテーテルにおいて、前記バルーンの長さ方向に延びると共に周方向で離隔する複数の制御体が、該バルーンの内周側に位置決めされて設けられているものである。
【0027】
本態様に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、バルーンの長さ方向に延びる複数の制御体を、周方向で離隔させて設けることで、バルーンの特に長さ方向の変形量を、簡単な構造をもって効率的に制御することができる。また、このような制御体をバルーンの内周側に設けることで、バルーンの外周側への突出寸法を小さくしたり、バルーンを周方向の全周に亘って略均一に押し広げることも可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に従う構造とされたバルーンカテーテルによれば、バルーンの変形量を安定して制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
先ず、
図1〜4には、本発明の第1の実施形態としてのバルーンカテーテル10がバルーン12の膨張状態で示されている。バルーンカテーテル10は、長尺のシャフト14を備えており、シャフト14の遠位端側(
図1中の左方)にバルーン12が設けられていると共に、シャフト14の近位端側(
図1中の右方)にハブ16が設けられている。
【0032】
より詳細には、
図2,3にも示されているように、シャフト14は、それぞれ管状とされたインナシャフト18とアウタシャフト20とが相互に内外挿された二重管構造とされている。
【0033】
また、インナシャフト18の遠位端部分は、アウタシャフト20の遠位端から所定長さで突出しており、インナシャフト18の突出端部には先端チップ22が取り付けられている。先端チップ22は、略筒状とされており、その中心軸上には、インナシャフト18の内孔に連通する中心孔が貫通形成されている。なお、インナシャフト18及び/又はアウタシャフト20には、例えば環状又はC字状とされた造影マーカーが外挿固着されてもよい。
【0034】
さらに、アウタシャフト20から突出したインナシャフト18の遠位端部分には、バルーン12が外挿状態で配されている。バルーン12は、例えば変形可能な合成樹脂材等からなる膜で形成された筒状体で構成されており、長さ方向(
図1中の左右方向)及び径方向(
図1中の上下方向)で拡縮変形可能とされている。
【0035】
なお、バルーン12の材質としては、従来から公知のものが採用可能であり、例えばポリエチレンテレフタレートやナイロン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルブロックアミド共重合体、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレン、シリコンゴム、ラテックスゴムなどが好適に採用される。
【0036】
本実施形態のバルーン12は、膨張状態で、長さ方向の中間部分が略ストレートに延びる円筒形状とされると共に、その長さ方向両端部分から各外方に向かって次第に小径になるテーパ筒形状のコーン部分12a,12aが一体的に延び出した形状とされている。また、各コーン部分12aの長さ方向端部分(外径寸法が最も小さくされた部分)からは、外方に向かって略ストレートに延びる円筒形状のレッグ部分12bが一体的に延び出している。なお、バルーン12の収縮状態では、例えば周上の複数箇所で折り畳まれるようにして周方向にラッピングされたりする、所定の折り畳み形状が設定されていても良い。
【0037】
そして、バルーン12の近位端側のレッグ部分12bの内周面が、アウタシャフト20の遠位端部の外周面に対して流体密に固着されていると共に、遠位端側のレッグ部分12bの内周面が、インナシャフト18の遠位端部及び/又は先端チップ22の外周面に対して流体密に固着されている。これにより、バルーン12内部の空間が、インナシャフト18とアウタシャフト20との径方向間の環状空間に連通されていると共に、当該環状空間が、ハブ16に設けられた給排ポート24に連通されている。この結果、給排ポート24に接続されたシリンジ等により、環状空間を通じてバルーン12の内部に流体を供給及びバルーン12の内部から流体を排出することが可能であり、インナシャフト18とアウタシャフト20との径方向間の環状空間を含んでバルーン12に流体を給排する給排ルーメン26が形成されている。
【0038】
また、先端チップ22の中心孔がインナシャフト18の内孔に連通していると共に、当該インナシャフト18の内孔がハブ16に設けられたガイドワイヤポート28に連通されている。これにより、本実施形態では、バルーンカテーテル10の遠位端から近位端までの略全長に亘って連通するガイドワイヤルーメン30がインナシャフト18の内孔を含んで形成されており、当該ガイドワイヤルーメン30に挿通されるガイドワイヤにより、患者への挿入時においてバルーンカテーテル10が案内され得る。即ち、本実施形態では、バルーンカテーテル10が、オーバーザワイヤ型のカテーテルとされている。なお、本発明に係るカテーテルは、ラピッドエクスチェンジ型のカテーテルとされてもよい。
【0039】
ここにおいて、バルーン12には、
図2〜4にも示されているように、長さ方向に延びる第1の制御体32と、編組体からなる第2の制御体34とが位置決めされて装着されている。第2の制御体34は、複数の糸状体36を編組することによって形成されている。
【0040】
なお、本発明において、編組とは、編組みだけでなく、製織の技術も単独で又は組み合わされて採用され得て、第2の制御体34を構成する編組体は、例えば編物や組紐、織物等の何れか1つ又は複数の組み合わせを含んで構成されている。本実施形態では、第2の制御体34が、複数の糸状体36の組紐として形成されている。なお、糸状体36は、狭義の糸、即ち繊維体を細く撚り合わせたものに限定されるものではなく、例えば糸より断面積の大きな紐状であってもよいし、矩形断面とされた帯状であってもよい。更に、糸状体36の断面形状は限定されるものではなく、円形(長円や楕円、半円を含む)や、三角形や四角形等の多角形であってもよい。
【0041】
第1及び第2の制御体32,34は、相互に別体とされており、本実施形態では、第2の制御体34を構成する編組体(組紐)において、バルーン12の長さ方向に延びる糸状体が含まれておらず、バルーン12の長さ方向に対して傾斜する糸状体36のみで編組されている。尤も、糸状体36は、編組されることで全体としてバルーン12の長さ方向に対して傾斜していればよく、部分的にはバルーン12の長さ方向に延びていてもよい。なお、
図1,2では、第2の制御体34(編組体)をメッシュ状に示しているが、メッシュに限定されるものではなく、また、
図3,4においても第2の制御体34が複数の糸状体36の編組体として図示されているが、編組構造が限定されるものではない。
図3,4においては、第2の制御体34が複数の糸状体36の編組体であることを判り易く図示するため、第2の制御体34を誇張して示す。
【0042】
第1の制御体32の材質は、要求されるバルーン12の変形特性等に合わせて適宜に選択されて、例えば硬質や軟質の合成樹脂や、ゴム、金属等から形成されて、例えばポリアラミドや液晶ポリマー、超高分子量ポリエチレン等の、高強度で伸度がないか小さい(略非弾性の)材質を採用することもできる。本実施形態では、バルーン12の内周面において、第1の制御体32が、バルーン12に対して一体成形されている。特に、本実施形態では、第1の制御体32が、周方向で離隔して略等間隔に複数設けられており、各第1の制御体32が、バルーン12の長さ方向の略全長に亘って形成されている。
【0043】
なお、第1の制御体32の内周側への突出寸法は、長さ方向中間部分のストレート部分に比べて、長さ方向両端部分のコーン部分12a,12aの方が大きくされており、第1の制御体32が設けられた部分の剛性が大きくされている。また、使用前のバルーン12の収縮状態では、第1の制御体32が設けられた部分が山部とされると共に、第1の制御体32が設けられない部分が谷部とされて、周方向で凹凸が形成される。そして、バルーン12を膨張させて使用した後、再び収縮させることで、第1の制御体32の有無に応じて周方向で山部と谷部が設けられる上記形状に復元する。一般に、バルーンを膨張させて再び収縮させると少し横に延びて扁平な形状となり易く、カテーテルの抜去や再突入に際して引っ掛かったりして問題となり易かったが、本実施形態の如き第1の制御体32を設けることで、収縮状態のバルーン12の形状をコントロールすることもできて、上記の如き問題を解消することもできる。
【0044】
このような第1の制御体の数は2つ以上であることが好適である。また、第1の制御体は、バルーンの柔軟性が大きく損なわれない程度の数とされることが望ましい。更に、第1の制御体は周方向で等間隔に設けられる必要はなく、例えば第1の制御体が周方向の一部のみにある等、周方向で大きな偏りがなければよい。
【0045】
第2の制御体34を構成する糸状体36の材質も、要求されるバルーン12の変形特性等に合わせて適宜に選択されるが、例えばポリアラミドや液晶ポリマー、超高分子量ポリエチレン等の、高強度で伸度がないか小さい(略非弾性の)材質が好適に採用され得る。また、第2の制御体34を構成する糸状体36の編組構造も、要求されるバルーン12の変形特性等に合わせて適宜に選択されて、第2の制御体34としては、例えば平織や綾織、朱子織等の織物、メリアス編やゴム編、パール編等の編物、角打ちや平打ち等の組み方による組紐等、従来公知の編織構造が採用され得る。本実施形態では、第2の制御体34が、バルーン12とは別体として形成されており、バルーン12の略全長に亘って延びる略筒状とされている。特に、本実施形態では、第2の制御体34がバルーン12に外挿された後、略全体に亘ってバルーン12の外周面に接着されており、これにより、第2の制御体34がバルーン12に対して位置決めされて装着されている。
【0046】
以上のように第1及び第2の制御体32,34が装着されたバルーン12を膨張させることで、バルーン12の長さ方向の変形量が第1の制御体32により制御されると共に、バルーン12の径方向の変形量が第2の制御体34により制御される。即ち、本実施形態では、第1の制御体32の形成位置において、バルーン12が部分的に厚肉とされており、バルーン12の長さ方向の変形剛性が向上されている。また、バルーン12に対して筒状とされた第2の制御体34が外挿されることで、バルーン12の径方向の変形量が抑制されている。これにより、バルーン12の内圧を比較的大きくすることも可能であり、例えば石灰化の進行した血管の狭窄部位においても、血管の押し広げ効果が安定して発揮され得る。なお、バルーンを全体的に厚肉とすることでもバルーンの長さ方向や径方向の変形剛性が向上されるが、バルーンを部分的に厚肉とすることでバルーンの柔軟性が大幅に損なわれることが回避されて、血管への挿通性の悪化等を小さく抑えることができる。
【0047】
特に、バルーン12の長さ方向の変形量を制御する第1の制御体32と径方向の変形量を制御する第2の制御体34とを別体として設けることで、第1の制御体32と第2の制御体34との材質を異ならせることも可能であり、バルーン12の長さ方向の変形量と径方向の変形量とを各別に設定することも可能となる。この結果、バルーン12の膨張後の形状を患者の症状等に合わせて設定することができて、例えば第1の制御体32によりバルーン12の長さ方向の変形量が制御されることで、バルーン12が長さ方向に伸び過ぎて、血管中における狭窄部位以外の部分を傷つけることが回避され得る。また、本実施形態のように、第2の制御体34が組紐とされることで適度な伸縮性を有しており、バルーン12の膨張を妨げたり、バルーン12の膨張を全く抑制しないということが回避されて、バルーン12の内圧を安定して大きくすることができる。
【0048】
更にまた、本実施形態では、第1の制御体32がバルーン12の内周側に一体成形されており、第1の制御体32がバルーン12の外周側へ突出することが回避される。更に、第2の制御体34が略筒状とされてバルーン12に外挿されることで、第2の制御体34が装着されたバルーン12の外周面を略滑らかな環状面とすることができる。これにより、バルーン12の血管への挿通性が良好に維持されると共に、バルーン12の膨張時において、バルーン12を周方向の略全周に亘って血管壁に対して略均一に押し付けることができる。また、第1の制御体32がバルーン12に一体成形されることで、バルーン12から第1の制御体32が脱離するおそれがなく、また、第1の制御体のバルーンへの固着に伴って第1の制御体及びバルーンの組成が変性することがなく、患者への悪影響がない、又は小さく抑えることができるバルーン12及びバルーンカテーテル10が提供され得る。
【0049】
なお、本実施形態では、第2の制御体34が、バルーン12の長さ方向に対して傾斜する糸状体36のみで編組されていることから、例えば第2の制御体が、バルーンの長さ方向と平行に延びる糸状体を含んで編組されている場合に比べて、糸状体36の量を低減させることもできる。特に、バルーン12におけるコーン部分12aやレッグ部分12bでは、外径寸法が小さくされることから、第2の制御体34を構成する糸状体36が集中することとなるが、糸状体36の量を低減させることで、コーン部分12aやレッグ部分12bの柔軟性の悪化を回避することもできる。
【0050】
ここにおいて、本発明者らは、第1の制御体32と第2の制御体34とを備えるバルーン12を実際に試作して(実施例1)、第1の制御体32と第2の制御体34により、それぞれバルーン12の長さ方向と径方向の変形量が制御されることを確認した。その結果を、
図5,6に示す。なお、
図5においては、比較例1として第2の制御体のみを設けたバルーンを作製して、第1の制御体32による長さ方向の変形量の制御効果を確認した。また、
図6においては、比較例2として第1の制御体のみを内周面に設けたバルーンを作製して、第2の制御体34による径方向の変形量の制御効果を確認した。ここで、
図5において、バルーン内圧力を最小にした際に実施例1と比較例1とでバルーンの全長に差があるのは、バルーンの製造時のばらつき、即ちバルーンを一度膨らませて第2の制御体を取り付けた後、再び収縮させてバルーン内圧力を最小にした際のばらつきによるものである。また、
図6において、バルーン内圧力を最小にした際に実施例1と比較例2とでバルーンの外径寸法に差があるのは、実施例1では第2の制御体34を設けた分だけ外径寸法が大きくなったためである。なお、バルーンの全長とは、バルーンのレッグ部分を含めない(長さ方向両側のコーン部分までを含む)バルーンの長さ方向寸法である。また、以下の説明において、実施例及び比較例のバルーンは、それぞれ37度程度に温めて試験材料とした。
【0051】
図5に示されるように、実施例1と比較例1とを比較することで、第1の制御体32が、バルーン12の長さ方向の変形量の制御に寄与していることが理解できる。即ち、実施例1では、10atm程度までは、長さ方向の変形が略抑制されており、10atm以上では、比較例2に比べて長さ方向の変形が緩やかとされている。
【0052】
また、
図6に示されるように、実施例1と比較例2とを比較することで、第2の制御体34が、バルーン12の径方向の変形量の制御に寄与していることが理解できる。即ち、実施例1では、バルーン12内が比較的高い圧力となってもバルーン12の外径寸法の変形量が抑制されており、バルーン12の外径寸法が略一定の値で維持されている。
【0053】
これら
図5,6の結果から、バルーン12に対して第1及び第2の制御体32,34を設けることでバルーン12の長さ方向及び径方向の変形量が抑制されて、バルーン12内が比較的大きい圧力となってもバルーン12が略所定の形状で維持されることが理解できる。従って、第1及び第2の制御体32,34を設けることでバルーン12内の圧力を大きくすることが可能であり、例えば石灰化が進行して硬くなった血管の狭窄部位でも押し広げることができる。
【0054】
次に、
図7には、本発明の第2の実施形態としてのバルーンカテーテルに設けられるバルーン40が示されている。本実施形態におけるバルーンカテーテルにおいてバルーン40以外の部分は前記第1の実施形態と同様の構造が採用され得ることから、詳細な説明を省略する。また、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材及び部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態のバルーン40においても、バルーン40の長さ方向に延びる第1の制御体32と編組体からなる第2の制御体34とが設けられているが、本実施形態では、第1の制御体32がバルーン40の外周面において一体成形されている。そして、第1の制御体32が設けられたバルーン40の外周側から、前記第1の実施形態と同様の構造とされた第2の制御体34が外挿されて、全面に亘って接着されることで位置決めされて装着されている。
【0056】
本実施形態のバルーン40についても実際に試作して(実施例2)、第1及び第2の制御体32,34により、それぞれバルーン40の長さ方向と径方向の変形量が制御されることを確認した。その結果を、
図8,9に示す。なお、
図8においては、比較例3として第2の制御体のみを設けたバルーンを作製して、第1の制御体32による長さ方向の変形量の制御効果を確認した。また、
図9においては、比較例4として第1の制御体のみを外周面に設けたバルーンを作製して、第2の制御体34による径方向の変形量の制御効果を確認した。
【0057】
これら
図8,9の結果から、外周面に第1の制御体32を設けたバルーン40であっても、第1及び第2の制御体32,34によりバルーン40の長さ方向及び径方向の変形量が抑制されることから、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0058】
次に、
図10には、本発明の第3の実施形態としてのバルーンカテーテルに設けられるバルーン50が示されている。本実施形態では、バルーン50とは別体とされた第1の制御体52が略全長に亘ってバルーン50の外周面に接着されることで位置決めされて装着されていると共に、第1の制御体52が設けられたバルーン50に対して、前記第1の実施形態と同様の構造とされた第2の制御体34が外挿されて、略全面に亘って接着されることで位置決めされて装着されている。
【0059】
上記の如き構造とされた本実施形態のバルーン50においても、第1及び第2の制御体52,34が設けられることで前記実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態では第1の制御体52がバルーン50とは別体とされていることから、第1の制御体52の材質の選択自由度が向上されて、要求されるバルーン50の変形特性により合った材質を選択することができる。例えばバルーン50よりも伸び剛性の大きい材質を第1の制御体52に採用して、要求される長さ方向の変形抑制効果を、より小さな断面積で実現することも可能になる。また、第1の制御体52がバルーン50の外周面に設けられることで、第1の制御体52がバルーン50とは別体とされる場合にも、バルーン50への第1の制御体52の固着が容易とされ得る。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0061】
例えば、前記実施形態では、第2の制御体34が、バルーン12,40,50に対して略全面に亘って接着されることで位置決めされて装着されていたが、略筒状とされた第2の制御体が単にバルーンに外挿されたり長さ方向の両端部分等の適切な箇所で部分的に固定されたりすることで位置決めされるようになっていてもよい。また、前記第3の実施形態では、別体とされた第1の制御体52がバルーン50に対して略全長に亘って接着されることで位置決めされて装着されていたが、長さ方向の両端部分を含む部分的な箇所において固定されることで位置決めされるようになっていてもよい。なお、第1の制御体は、バルーンの長さ方向で中心軸と平行にストレートに延びる必要はなく、バルーンの中心軸に対して一定の又は変化する角度をもって傾斜して、例えば螺旋状等の態様で長さ方向に延びていてもよい。そして、例えば第1の制御体の中心軸方向に対する傾斜角度を調節することで、バルーンの長さ方向の変形抑制度合いを変更することもできる。
【0062】
また、前記実施形態では、第1の制御体32,52が、バルーン12,40,50の内周側と外周側の何れか一方に設けられていたが、両方に設けられてもよい。
【0063】
更に、前記実施形態では、筒状とされた第2の制御体34がバルーン12,40,50に外挿されることでバルーン12,40,50よりも外周側に位置していたが、第2の制御体がバルーンの内周側に設けられて、例えば接着等により全体又は部分的に固着されて位置決めされてもよいし、内周側と外周側の両方に設けられてもよい。また、前記実施形態では、第1の制御体32,52の外周側に第2の制御体34が位置していたが、第1の制御体の内周側に第2の制御体が位置していてもよい。
【0064】
更にまた、前記実施形態では、第1及び第2の制御体32,34,52が、バルーン12,40,50の全長に亘って設けられていたが、長さ方向で部分的に設けられてもよい。また、第2の制御体は、全周に亘る筒状とされる必要はなく、周方向で部分的に設けられてもよい。
【0065】
更に、前記実施形態では、複数の糸状体36が組紐状に編組されることで第2の制御体34が構成されていたが、第2の制御体を構成する糸状体は、複数の繊維体を撚り合わせた一般的な糸である必要はなく、天然繊維の他に合成樹脂や金属などの各種素材のスパン糸やモノフィラメント、マルチフィラメントなどであってもよい。また、複数の金属線等を撚り合わせ断面積を大きくして紐状としたものを編組して第2の制御体を形成してもよいし、帯状の金属線等を編組して第2の制御体を形成してもよい。なお、第2の制御体を構成する糸状体は編組されており、例えば単に径方向で重ね合わされた糸状体は第2の制御体でない。一方、第1の制御体は編組されておらず、第1の制御体は第2の制御体を構成する糸状体として編組されて第2の制御体へ一体的に組み込まれるものでない。また、第1の制御体は、前述のとおりバルーン中心軸に対して傾斜していても良いが、かかる傾斜角度(中心軸に平行な方向を0度とし、中心軸に直交する方向を90度とする傾斜角度)は、第2の制御体を構成する各糸状体のうちで傾斜角度が最大の糸状体よりも傾斜角度(平均傾斜角度)を小さくすることが望ましい。これにより、第1の制御体によってバルーン長さ方向の変形量をより効率的に抑えることも可能になり、また、同様な目的から、第1の制御体の傾斜角度は、60度以下が好ましく、より好適には30度以下、更に好適には15度以下の傾斜角度とされる。
【0066】
尤も、本発明に係るバルーンカテーテルに設けられるバルーンは、第1の制御体と第2の制御体との両方を備えている態様に限定されるものではなく、
図11に示されるバルーン60のように、バルーン60の内周側に制御体としての第1の制御体32を備えるのみであってもよい。即ち、第1の制御体の数や長さ、材質等を適切に設定することで、バルーンの特に長さ方向の変形量を制御することが可能となる。なお、
図11に示される態様では、第1の制御体32がバルーン60と一体的に形成されているが、前記第3の実施形態のように、バルーン60とは別体とされた第1の制御体52が採用されてもよい。このように、バルーンの変形量が制御されるのであれば、バルーンの長さ方向に延びる第1の制御体が設けられるだけでもよく、第2の制御体を備えない態様も、本発明の一態様として把握され得る。