特開2020-202959(P2020-202959A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-202959(P2020-202959A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20201127BHJP
【FI】
   A61B6/03 350G
   A61B6/03 330A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-111812(P2019-111812)
(22)【出願日】2019年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉野 史章
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA36
4C093FA13
4C093FA15
4C093FA32
4C093FA44
4C093FA55
4C093FA56
4C093FA57
4C093FA58
4C093FA59
4C093FC12
4C093FC16
4C093FD03
4C093FD08
(57)【要約】
【課題】
エアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減することが可能となるX線CT装置を提供する。
【解決手段】
X線管と前記X線管に対向配置されX線を検出するX線検出器とを回転させる回転板と、前記X線検出器の出力に基づいて被検体の断層画像を生成する画像生成部と、前記回転板の回転速度又は前記X線管の管電流を含むスキャン条件を設定する設定部と、複数のスキャン条件で予め計測された複数のエアデータと、前記複数のエアデータの中の一つである基準エアデータとから算出される変換係数をスキャン条件毎に記憶する記憶部と、前記被検体をスキャンするときのスキャン条件に対応する変換係数と更新された基準エアデータとを用いてエアキャリブレーション用のデータを算出する算出部を備え、前記画像生成部は前記算出部で算出されたデータを用いて前記断層画像を生成することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と前記X線管に対向配置されX線を検出するX線検出器とを回転させる回転板と、
前記X線検出器の出力に基づいて被検体の断層画像を生成する画像生成部と、
前記回転板の回転速度又は前記X線管の管電流を含むスキャン条件を設定する設定部と、
複数のスキャン条件で予め計測された複数のエアデータと、前記複数のエアデータの中の一つである基準エアデータとから算出される変換係数をスキャン条件毎に記憶する記憶部と、
前記被検体をスキャンするときのスキャン条件に対応する変換係数と更新された基準エアデータとを用いてエアキャリブレーション用のデータを算出する算出部を備え、
前記画像生成部は前記算出部で算出されたデータを用いて前記断層画像を生成することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記変換係数は、複数のスキャン条件で予め計測された複数のエアデータのそれぞれを前記基準エアデータで除して算出され、
前記算出部は、更新された基準エアデータに前記変換係数を乗じることによりエアキャリブレーション用のデータを算出することを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記基準エアデータは、予め定められたスキャン条件である基準スキャン条件で計測されるエアデータであることを特徴とするX線CT装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線CT装置であって、
前記基準スキャン条件は、スキャン条件に含まれるパラメータの値に、前記被検体をスキャンするときに最も用いられる値が設定されたときのスキャン条件であることを特徴とするX線CT装置。
【請求項5】
請求項3に記載のX線CT装置であって、
前記基準スキャン条件は、スキャン条件に含まれるパラメータの値に、前記パラメータの設定範囲の中央値が設定されたときのスキャン条件であることを特徴とするX線CT装置。
【請求項6】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記算出部は、スキャン条件に含まれるパラメータのいずれかを変数とする近似式で前記変換係数を近似し、前記近似式を用いてエアキャリブレーション用のデータを算出することを特徴とするX線CT装置。
【請求項7】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記X線管、前記X線検出器、前記回転板、前記記憶部を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記設定部で設定される全てのスキャン条件に対するエアデータを計測させ、計測されたエアデータを用いて前記変換係数を算出し、前記記憶部に記憶させることを特徴とするX線CT装置。
【請求項8】
請求項7に記載のX線CT装置であって、
前記制御部は、前記基準エアデータと、前記基準エアデータとは異なるエアデータとを交互に計測させることを特徴とするX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断層画像を生成するX線CT装置に係り、特にエアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体のX線投影像である投影データを様々な投影角度で計測し、複数の投影データを再構成演算することにより被検体の断層画像を生成する装置である。生成された断層画像は被検体の診断等に用いられる。X線CT装置では再構成演算に先立ち、被検体の投影データに対して、エアキャリブレーションと呼ばれる補正処理が施される。エアキャリブレーションは、X線CT装置に被検体が配置されない状態で計測される投影データであるエアデータを用いて被検体の投影データを正規化する演算である。投影データはX線管の管電圧に応じて変化するので、被検体の投影データが取得されるときの管電圧毎にエアデータが必要であり、複数種類の管電圧毎のエアデータを計測するには多くの時間と手間を要する。
【0003】
特許文献1には、被検体の投影データが計測されるときに設定可能な管電圧の種類よりも少ない種類の管電圧で計測したエアデータを用いて、所望の管電圧でのエアキャリブレーションを可能にする技術が開示されている。具体的には、複数種類の管電圧で計測したエアデータとエアデータの理論値との差分値を、管電圧を変数とする近似式で近似し、所望の管電圧と近似式とから計算される差分値にエアデータの理論値を加算して、エアキャリブレーション用のエアデータを得る技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5102953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では所望の管電圧でのエアキャリブレーションは可能になるものの、管電圧以外のパラメータに対する配慮はなされていない。投影データは、X線管の管電圧だけでなく、X線CT装置が設置される部屋の温度や気圧、スキャナの回転速度、X線管の管電流によっても変化するので、それらが変化する度にエアデータの再計測が必要であり、エアデータの再計測には多くの時間と手間を要する。
【0006】
そこで、本発明は、エアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減することが可能となるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、X線管と前記X線管に対向配置されX線を検出するX線検出器とを回転させる回転板と、前記X線検出器の出力に基づいて被検体の断層画像を生成する画像生成部と、前記回転板の回転速度又は前記X線管の管電流を含むスキャン条件を設定する設定部と、複数のスキャン条件で予め計測された複数のエアデータと、前記複数のエアデータの中の一つである基準エアデータとから算出される変換係数をスキャン条件毎に記憶する記憶部と、前記被検体をスキャンするときのスキャン条件に対応する変換係数と更新された基準エアデータとを用いてエアキャリブレーション用のデータを算出する算出部を備え、前記画像生成部は前記算出部で算出されたデータを用いて前記断層画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減することが可能となるX線CT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】X線CT装置の全体構成の一例を示す図
図2】第一実施形態の機能ブロックの一例を示す図
図3】第一実施形態の変換係数を記憶する書式の一例を示す図
図4】第一実施形態の変換係数を記憶する処理の流れの一例を示す図
図5】第一実施形態のエアキャリブレーションと画像再構成の処理の流れの一例を示す図
図6】第二実施形態の変換係数を記憶する処理の流れの一例を示す図
図7】第二実施形態の変換係数の近似曲線の一例を示す図
図8】第二実施形態のエアキャリブレーションと画像再構成の処理の流れの一例を示す図
図9】第三実施形態の変換係数を記憶する処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
以下、添付図面に従って本発明に係るX線CT装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0011】
図1を用いてX線CT装置の全体構成について説明する。X線CT装置は、スキャンガントリ部100と操作ユニット120を備える。
スキャンガントリ部100は、X線管101と、回転板102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集部107と、寝台105と、ガントリ制御部108と、寝台制御部109と、X線制御部110と、高電圧発生部111を備えている。X線管101は寝台105上に載置された被検体10にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線の照射範囲を制限する装置である。回転板102は、寝台105上に載置された被検体10が入る開口部104を備えるとともに、X線管101とX線検出器106を搭載し、X線管101とX線検出器106を被検体10の周囲で回転させる。
【0012】
X線検出器106は、X線管101と対向配置され、被検体10を透過したX線の空間的な分布を検出する装置である。X線検出器106の検出素子は、回転板102の回転方向と回転軸方向との二次元に配列される。データ収集部107は、X線検出器106で検出されたX線の空間的な分布をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御部108は回転板102の回転及び傾斜を制御する装置である。
【0013】
寝台制御部109は、寝台105の上下前後左右動を制御する装置である。高電圧発生部111はX線管101に印加される高電圧を発生する装置である。X線制御部110は、高電圧発生部111の出力を制御する装置である。
【0014】
操作ユニット120は、入力部121と、画像生成部122と、表示部125と、記憶部123と、システム制御部124を備えている。入力部121は、被検体10の氏名、検査日時、スキャン条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイス、タッチパネル等である。画像生成部122は、データ収集部107で収集されたデジタルデータを用いて断層画像を再構成する装置である。表示部125は、画像生成部122で再構成された断層画像などを表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイなどである。記憶部123は、データ収集部107で収集されたデジタルデータや画像生成部122で再構成された断層画像などを記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御部124は、ガントリ制御部108、寝台制御部109、X線制御部110等の各部を制御する装置である。
【0015】
入力部121から入力されて設定されたスキャン条件に基づき、X線管101に印加される管電圧や管電流を高電圧発生部111が発生することにより、スキャン条件に応じたX線がX線管101から被検体10に照射される。X線検出器106は、X線管101から照射され被検体10を透過したX線を多数の検出素子で検出し、透過X線の空間的な分布を取得する。回転板102はガントリ制御部108により制御され、入力部121から入力されたスキャン条件、特に回転速度等に基づいて回転する。寝台105は寝台制御部109によって制御され、入力部121から入力されたスキャン条件、特にらせんピッチ等に基づいて動作する。
【0016】
X線管101によるX線の照射とX線検出器106によるX線の検出が回転板102の回転とともに繰り返されることにより、被検体10のX線投影像である投影データが様々な投影角度で取得される。投影データは、各投影角度を表すビュー(View)と、X線検出器106の検出素子番号であるチャネル(ch)番号及び列番号と対応付けられる。取得された投影データは画像生成部122に送信される。画像生成部122は複数の投影データを逆投影処理することにより断層画像を再構成する。再構成して得られた断層画像は表示部125に表示される。
【0017】
なお、断層画像の再構成に先立ち、被検体10の投影データに対して、エアキャリブレーションと呼ばれる補正処理が施される。エアキャリブレーションは、回転板102の開口部104に被検体10が配置されない状態で取得される投影データ、いわゆるエアデータを用いて被検体10の投影データを正規化する演算である。投影データは、管電圧や管電流、回転速度等のスキャン条件、及びX線CT装置が設置される部屋の温度や気圧によって変化するので、エアキャリブレーションの精度を維持するには、それらが変化する度にエアデータの再計測が必要である。
【0018】
しかし、エアデータの再計測には多くの時間と手間を要する。そこで本実施形態では、エアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減できるようにする。具体的には、複数のスキャン条件で予め計測された複数のエアデータであるエアデータ群とエアデータ群の中の一つである基準エアデータとから算出される変換係数と、更新された基準エアデータとを用いて、エアキャリブレーション用のエアデータを算出する。
【0019】
図2を用いて本実施形態の要部について説明する。なおこれらの要部は、専用のハードウェアで構成されても良いし、システム制御部124上で動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では本実施形態の要部がソフトウェアで構成された場合について説明する。
【0020】
本実施形態は、変換係数算出部201とエアキャルデータ算出部202を備える。以下、各部について説明する。
【0021】
変換係数算出部201は、複数のスキャン条件で予め計測された複数のエアデータを用いて、スキャン条件毎に変換係数を算出する。変換係数は、各スキャン条件で計測されたエアデータと、基準スキャン条件で計測された基準エアデータとの関係を表す係数である。例えば次式によって変換係数が算出される。
【0022】
Cn=An/Aref … (式1)
ここで、Anは複数のスキャン条件の中のn番目のスキャン条件で計測されたエアデータ、Arefは基準エアデータ、Cnはn番目のスキャン条件に対する変換係数である。エアデータAnはビュー番号fやチャネル番号i、列番号jごとに計測されるので、変換係数Cnもビュー番号fやチャネル番号i、列番号jごとに算出される。(式1)によれば、基準スキャン条件に対する変換係数は、ビュー番号fやチャネル番号i、列番号jにかかわらず全て1となる。算出された変換係数Cnは、スキャン条件と対応付けられて記憶部123に記憶される。
【0023】
図3を用いて、変換係数Cnを記憶する書式の一例について説明する。複数のスキャン条件を識別するために、各スキャン条件にはスキャン条件番号nが割り付けられる。またスキャン条件には、X線管101の管電圧や管電流、回転板102の回転速度等の複数のパラメータP1〜Pmが含まれ、各パラメータP1〜Pmには複数種類の値がそれぞれ設定される。各スキャン条件は、いずれかのパラメータの値が重複しないように設定される。図3の例では、パラメータP1にA種類、パラメータP2にB種類、パラメータPmにZ種類の値がそれぞれ設定され、m=3、A=4、B=5、Z=4とした場合、スキャン条件の数Nは80(=4×5×4)となる。
【0024】
変換係数Cnはスキャン条件番号nと対応付けられ、ビュー番号fやチャネル番号i、列番号jごとに記憶される。図3の例では、ビュー番号fはF個、チャネル番号iはI個、列番号jはJ個をそれぞれ有している。例えば、F=2000、I=1000、J=320である場合、一つのスキャン条件に対する変換係数Cnの数は640×10(=2000×1000×320)となる。
【0025】
エアキャルデータ算出部202は、記憶部123から読み出される変換係数と基準エアデータとを用いてエアキャリブレーション用のデータを算出する。記憶部123から読み出される変換係数は、被検体10をスキャンするときのスキャン条件に対応する変換係数である。またエアキャリブレーション用のデータの算出に用いられる基準エアデータは最新のデータとして更新された基準エアデータである。更新された基準エアデータが用いられることにより、X線CT装置が設置される部屋の温度や気圧の変化がエアキャリブレーション用のデータに反映される。変換係数Cnが(式1)によって算出される場合、エアキャリブレーション用のデータAcは次式によって算出される。
【0026】
Ac=Aref×Cn … (式2)
データAcは、ビュー番号fやチャネル番号i、列番号jごとに算出される。
【0027】
図4を用いて、本実施形態において、変換係数が記憶されるまでの処理の流れの一例について説明する。図4の処理の流れは、X線CT装置の製造工程またはメンテナンス工程において実行される。
【0028】
(S401)
システム制御部124は、スキャン条件毎のエアデータを取得する。エアデータは、入力部121で設定される全てのスキャン条件に対して取得されることが望ましい。エアデータの計測は、システム制御部124がガントリ制御部108やX線制御部110を介して、X線管101やX線検出器106、回転板102を制御することにより実施されても良いし、操作者が入力部121を操作することにより実施されても良い。またスキャン条件毎のエアデータを計測する順番は任意で良い。
【0029】
(S402)
S401で取得されたエアデータに対応する複数のスキャン条件の中から基準スキャン条件が設定される。基準スキャン条件には、スキャン条件に含まれるパラメータの値が、例えば被検体10をスキャンするときに最も用いられる値であったり、パラメータの設定範囲の中央値であったりするスキャン条件が設定される。被検体10をスキャンするときに最も用いられる値のパラメータである場合、基準エアデータをそのままエアキャリブレーションに利用できることが多くなる。また設定範囲の中央値のパラメータである場合、エアキャルデータ算出部202で算出されるデータの誤差を抑制できる。
【0030】
(S403)
変換係数算出部201は、S401で取得されたエアデータと基準エアデータとを用いて、スキャン条件毎の変換係数を算出し、記憶部123に記憶させる。変換係数の算出には、例えば(式1)が用いられる。記憶部123に記憶される変換係数は、例えば図3に示す書式に従って記憶される。
【0031】
以上説明した処理の流れにより、変換係数が記憶部123に記憶される。
【0032】
図5を用いて、本実施形態におけるエアキャリブレーションと画像再構成の処理の流れの一例について説明する。なお、図5の処理の流れは、X線CT装置による被検体10のスキャンにともなって実行される。
【0033】
(S501)
エアキャルデータ算出部202は、更新された基準エアデータを取得する。基準エアデータは、例えば一日に一回程度、定期的にS402で設定された基準スキャン条件に従って計測される。基準エアデータが定期的に更新されることにより、X線CT装置が設置される部屋の温度や気圧の変化や、X線検出器106の各検出素子の感度変化が、基準エアデータに反映される。
【0034】
(S502)
エアキャルデータ算出部202は、被検体10をスキャンするときのスキャン条件を取得する。取得されるスキャン条件は、入力部121で設定されたスキャン条件であったり、記憶部123から読み出されるスキャン条件であったりする。
【0035】
(S503)
エアキャルデータ算出部202は、S502で取得されたスキャン条件に対応する変換係数を記憶部123から読み出す。すなわち、被検体10をスキャンするときのスキャン条件に対応する変換係数が記憶部123から読み出される。
【0036】
(S504)
エアキャルデータ算出部202は、S501で取得された基準エアデータとS503で読み出された変換係数とを用いて、エアキャリブレーション用のデータを算出する。エアキャリブレーション用のデータの算出には、例えば(式2)が用いられる。算出されたデータは画像生成部122に送信される。
【0037】
(S505)
画像生成部122は、S504で算出されたエアキャリブレーション用のデータを用いて、被検体10の投影データをエアキャリブレーションし、エアキャリブレーションされた投影データに基づいて被検体10の断層画像を再構成する。再構成された断層画像は表示部125に表示されて被検体10の診断等に用いられたり、記憶部123に保管されたりする。
【0038】
以上説明した処理の流れにより、更新された基準エアデータを用いて算出されるデータによりエアキャリブレーションができるので、被検体10の投影データを取得するときのスキャン条件に対応するエアデータを再計測しなくても良い。その結果、エアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減することが可能となる。
【0039】
[第二実施形態]
第一実施形態では、スキャン条件毎に算出される変換係数の全てを記憶部123に記憶させることについて説明した。変換係数の全てを記憶させる場合、スキャン条件に含まれるパラメータの数や各パラメータの種類によっては、記憶部123に記憶される変換係数の量が膨大になることがある。そこで本実施形態では、記憶部123に記憶される変換係数の量を低減することについて説明する。なお本実施形態には、第一実施形態で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については説明を省略する。
【0040】
図6を用いて、本実施形態において、変換係数が記憶されるまでの処理の流れの一例について説明する。第一実施形態と同様に、図6の処理の画流れは、X線CT装置の製造工程またはメンテナンス工程において実行される。本実施形態と第一実施形態の違いは、S401においてエアデータが取得されるスキャン条件の数が厳選される点と、S403の後にS604が追加された点である。以下、S401とS604について説明し、S402とS403の説明は省略する。
【0041】
(S401)
システム制御部124は、スキャン条件毎のエアデータを取得する。エアデータは、入力部121で設定される全てのスキャン条件ではなく、厳選されたスキャン条件に対して取得される。厳選されたスキャン条件とは、例えばスキャン条件に含まれるパラメータが、パラメータの設定範囲の最小値と中央値と最大値の3つに設定されるスキャン条件である。
【0042】
(S604)
変換係数算出部201は、スキャン条件に含まれるパラメータのいずれかを選択し、選択されたパラメータを変数とする近似式でS403にて算出された変換係数Cnを近似する。近似式には、例えば次式のような二次多項式が用いられる。
【0043】
Cn=a+aP+a … (式3)
ここで、Pは選択されたパラメータ、a、a、aは近似係数である。なお近似式が求められる際には、選択されたパラメータ以外のパラメータは固定値、例えば当該パラメータの設定範囲の中央値が用いられる。変換係数算出部201は、近似式を求めた結果として、近似係数a、a、aを記憶部123へ記憶させる。なお、近似式は(式3)に限定されず、高次多項式等であっても良い。
【0044】
図7を用いて、求められた近似式による変換係数の近似曲線の一例について説明する。図7(a)は管電流が、図7(b)は管電圧が、図7(c)は回転板102の回転速度であるスキャン速度が、それぞれパラメータPとして選択された場合の近似曲線の例である。近似式の変数が、管電流のときには近似式α、管電圧のときには近似式β、スキャン速度のときには近似式γといったように、近似式はパラメータに応じて変わるので、近似式の近似係数はパラメータに対応付けられて記憶される。
【0045】
以上説明した処理の流れにより、スキャン条件に含まれるパラメータのいずれかを変数とする変換係数の近似式が記憶部123に記憶される。
【0046】
図8を用いて、本実施形態におけるエアキャリブレーションと画像再構成の処理の流れの一例について説明する。第一実施形態と同様に、図8の処理の画流れは、X線CT装置による被検体10のスキャンにともなって実行される。本実施形態と第一実施形態の違いは、S503〜S505がS803〜S805に置き換わる点であるので、S501とS502の説明は省略し、S803〜S805について説明する。
【0047】
(S803)
エアキャルデータ算出部202は、S502で取得されたスキャン条件に対応する変換係数を、近似式を用いて算出する。すなわち、スキャン条件に含まれるパラメータ毎の近似式が記憶部123から読み出され、読み出された近似式に被検体10のスキャン時のスキャン条件のパラメータの値が代入されて変換係数が算出される。変換係数の算出には、例えば(式3)が用いられる。
【0048】
(S804)
エアキャルデータ算出部202は、S501で取得された基準エアデータとS803で算出された変換係数とを用いて、エアキャリブレーション用のデータを算出する。エアキャリブレーション用のデータの算出には、例えば(式2)が用いられる。算出されたデータは画像生成部122に送信される。
【0049】
(S805)
画像生成部122は、S804で算出されたエアキャリブレーション用のデータを用いて、被検体10の投影データをエアキャリブレーションし、エアキャリブレーションされた投影データに基づいて被検体10の断層画像を再構成する。再構成された断層画像は表示部125に表示されて被検体10の診断等に用いられたり、記憶部123に保管されたりする。
【0050】
以上説明した処理の流れにより、更新された基準エアデータを用いて算出されるデータによりエアキャリブレーションができるので、被検体10の投影データを取得するときのスキャン条件に対応するエアデータを再計測しなくても良い。その結果、エアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減することが可能となる。また、近似式を用いて変換係数が算出できるので、記憶部123に記憶される変換係数の量を低減することができる。
【0051】
[第三実施形態]
第一実施形態では、変換係数の算出に用いられるスキャン条件毎のエアデータを取得する順番は任意で良いことについて説明した。X線検出器106は、X線の照射が続けられることにより、各検出素子の感度が劣化する場合があり、基準エアデータとそれ以外のエアデータとが取得されるときに、検出素子の感度に差異が生じていると、算出される変換係数に誤差が含まれる。そこで本実施形態では、基準エアデータ取得時と基準エアデータ以外のエアデータ取得時とにおいて、検出素子の感度の差異をより低減できるようにすることについて説明する。なお本実施形態には、第一実施形態で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については説明を省略する。
【0052】
図9を用いて、本実施形態において、変換係数が記憶されるまでの処理の流れの一例について説明する。第一実施形態と同様に、図9の処理の画流れは、X線CT装置の製造工程またはメンテナンス工程において実行される。
【0053】
(S901)
システム制御部124は、記憶部123から一つのスキャン条件を読み出し、読み出されたスキャン条件を用いてエアデータを取得する。なお本ステップで取得されるエアデータは基準エアデータ以外のエアデータである。またエアデータの計測は、システム制御部124がガントリ制御部108やX線制御部110を介して、X線管101やX線検出器106、回転板102を制御することにより実施される。
【0054】
(S902)
システム制御部124は、記憶部123から基準スキャン条件を読み出し、基準エアデータを取得する。基準エアデータの計測は、システム制御部124がガントリ制御部108やX線制御部110を介して、X線管101やX線検出器106、回転板102を制御することにより実施される。
【0055】
(S903)
変換係数算出部201は、S901で取得されたエアデータとS902で取得された基準エアデータとを用いて、S901で用いられたスキャン条件の変換係数を算出し、記憶部123に記憶させる。変換係数は、例えば(式1)を用いて算出され、例えば図3に示す書式に従って記憶部123に記憶される。
【0056】
(S904)
システム制御部124は、全てのスキャン条件に対し、エアデータが取得されたか否かを判定する。エアデータが取得されていないスキャン条件があればS901に処理が戻り、全てのスキャン条件についてエアデータが取得されていれば処理の流れは終了となる。
【0057】
以上説明した処理の流れにより、基準エアデータとそれ以外のエアデータとが交互に取得されるので、両エアデータ取得時の検出素子の感度の差異を低減できる。その結果、S903において算出される変換係数に含まれる誤差を低減できる。
【0058】
なお、本実施形態におけるエアキャリブレーションと画像再構成の処理の流れは第一実施形態と同様であるので、本実施形態においても被検体10の投影データを取得するときのスキャン条件に対応するエアデータを再計測しなくても良い。その結果、エアキャリブレーションに用いられるデータであるエアデータの再計測の回数を低減することが可能となる。
【0059】
以上、本発明のX線CT装置に関して、複数の実施形態を説明した。本発明のX線CT装置は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0060】
10 被検体、100 スキャンガントリ部、101 X線管、102 回転板、103 コリメータ、104 開口部、105 寝台、106 X線検出器、107 データ収集部、108 ガントリ制御部、109 寝台制御部、 110 X線制御部、111高電圧発生部、120 操作ユニット、121 入力部、122 画像生成部、123 記憶部、124 システム制御部、125 表示部、201 変換係数算出部、202 エアキャルデータ算出部
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9