【解決手段】アクチュエータ1において、第1カバー部材31の第1平板部310と、第2カバー部材32の第2平板部320との間には可動体6が配置されており、可動体6を振動させて情報を出力する。第1平板部310には、第1平板部310を複数の領域に区画するように延在する第1突条部316が設けられており、可動体6と第1平板部310との間には、第1突条部316によって区画された複数の領域に第1粘弾性部材91が配置されている。第1平板部310は、第1突条部316の反対側が溝317になっている。溝317には、剛性部材あるいは弾性部材からなる充填部材16を配置してもよい。第2カバー部材32の第2平板部320も、第1平板部310と同様な構造になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアクチュエータにおいて、例えば、第1カバー部材の第1平板部を薄板化してアクチュエータの薄型化等を図った場合に、駆動信号として電圧変化が急峻なパルス信号をコイルに供給すると、可動体が振動した際に第1平板部の振動が原因で駆動音が発生するという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、カバー部材の平板部を薄板化しても駆動音が発生しにくいアクチュエータ、および触覚デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、第1平板部を備えた第1カバー部材、および前記第1平板部と第1方向で対向する第2平板部を備えた第2カバー部材を備えた支持体と、前記第1平板部と前記第2平板部との間に配置された可動体と、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備え、前記可動体および前記支持体の双方に接続された接続部材と、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向と交差する第2方向に振動させる磁気駆動回路と、を有し、前記第1平板部には、前記第1平板部を複数の領域に区画するように延在する第1突条部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
かかるアクチュエータは、触覚デバイス等として用いることができる。すなわち、本発明の触覚デバイスは、第1平板部を備えた第1カバー部材、および前記第1平板部と第1方向で対向する第2平板部を備えた第2カバー部材を備えた支持体と、前記第1平板部と前記第2平板部との間に配置された可動体と、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備え、前記可動体および前記支持体の双方に接続された接続部材と、出力すべき情報に応じて、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向と交差する第2方向に振動させる磁気駆動回路と、を有し、前記第1平板部には、前記第1平板部を複数の領域に区画するように延在する第1突条部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1カバー部材の第1平板部の薄板化を図った場合でも、第1平板部には、第1平板部を複数の領域に区画するように延在する第1突条部が設けられているため、第1平板部が振動しにくい。従って、電圧変化が急峻な駆動信号を磁気駆動回路に供給し
て可動体を振動させたときでも、第1平板部の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。
【0009】
本発明において、前記第1突条部は、前記第2平板部が位置する側に向けて突出している態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1突条部が第2平板部と反対側に向けて突出している場合よりアクチュエータの第1方向における寸法を短くすることができる。
【0010】
本発明において、前記接続部材は、前記第1平板部のうち、前記第1突条部によって区画された領域と前記可動体との間に配置された第1粘弾性部材を含む態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1粘弾性部材を第1平板部のうち、第1突条部を避けた平板部分に接続することができるので、第1粘弾性部材の粘弾性特性が変動しにくい。
【0011】
本発明において、前記第1突条部は、前記第1平板部の端部まで到達している態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1平板部を適正に区画できるので、第1平板部の振動を効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記第1平板部は、相対向する一対の長辺部、および前記一対の長辺部の間で相対向する一対の短辺部を備えた長方形であり、前記第1突条部は、少なくも、前記一対の長辺部が延在する方向の中央部分で前記一対の短辺部に沿う方向に延在している態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1平板部を長辺方向で分割することができるので、第1平板部の振動を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記第1平板部は、前記第1突条部の反対側が溝になっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1カバー部材をプレス加工によって製作する際、第1突条部を同時に形成することができる。
【0014】
本発明において、前記溝の内部には、充填部材が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、充填部材によって、第1平板部の振動特性を適正化することができる。例えば、前記充填部材は、剛性部材である態様を採用することができる。かかる態様によれば、溝に配置した剛性部材によって、第1平板部の剛性を高めるとともに、第1平板部の質量を増大させた場合と同様な効果を得ることができ、第1平板部の振動を効果的に抑制することができる。また、前記充填部材は、弾性部材である態様を採用することができる。かかる態様によれば、溝に配置した弾性部材によって、第1平板部の振動を吸収することにより、第1平板部の振動を効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明において、前記第1平板部は、鉄系金属からなる態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1平板部の振動を抑制しやすい。
【0016】
本発明において、前記第2平板部には、前記第2平板部を複数の領域に区画するように延在する第2突条部が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第2カバー部材の第2平板部の薄板化を図った場合でも、第2平板部は振動しにくい。従って、第2平板部の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。
【0017】
本発明において、前記第2突条部は、前記第1平板部が位置する側に向けて突出している態様を採用することができる。かかる態様によれば、第2突条部が第1平板部と反対側に向けて突出している場合よりアクチュエータの第1方向における寸法を短くすることができる。
【0018】
本発明において、前記接続部材は、前記第2平板部のうち、前記第2突条部によって区
画された領域と前記可動体との間に配置された第2粘弾性部材を含む態様を採用することができる。かかる態様によれば、第2粘弾性部材を第2平板部のうち、第2突条部を避けた平板部分に接続することができるので、第2粘弾性部材の粘弾性特性が変動しにくい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、第1カバー部材の第1平板部の薄板化を図った場合でも、第1平板部には、第1平板部を複数の領域に区画するように延在する第1突条部が設けられているため、第1平板部が振動しにくい。従って、電圧変化が急峻な駆動信号を磁気駆動回路に供給して可動体を振動させたときでも、第1平板部の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明において、第1カバー部材31の第1平板部310と第2カバー部材32の第2平板部320とが対向している側を第1方向Zとし、第1方向Zと交差する可動体6の振動方向を第2方向Xとし、第1方向Zおよび第2方向Xと交差する方向を第3方向Yとして説明する。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付して説明する。また、以下の説明では、コイル5が支持体2に保持され、永久磁石(第1永久磁石91および第2永久磁石92)が可動体6に保持されている場合を中心に説明する。
【0022】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータ1を第2カバー部材32の側からみた斜視図である。
図2は、
図1に示す状態から充填部材16、17を外した状態の斜視図である。
図3は、
図1に示すアクチュエータ1を第1カバー部材31の側からみた斜視図である。
図4は、
図1に示すアクチュエータ1のYZ断面図である。
図5は、
図1に示すアクチュエータ1のXZ断面図である。
図6は、
図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。なお、
図3、
図4、
図5および
図6では、充填部材16、17の図示を省略してある。
【0023】
図1、
図2、および
図3に示すように、アクチュエータ1は、第3方向Yに長手方向を向けた直方体形状を有しており、触覚デバイス等の情報伝達装置として用いることができる。アクチュエータ1を触覚デバイスとして用いた場合、アクチュエータ1を手にした利用者に対して第2方向Xの振動によって情報を報知する。従って、アクチュエータ1は、ゲーム機の操作部材等として利用することができ、振動等によって新たな感覚を実感することができる。但し、アクチュエータ1の用途は、触覚デバイス等の情報伝達装置に限定されるものではない。
図4、
図5および
図6に示すように、本形態のアクチュエータ1は、アクチュエータ1の外形を規定する角形のカバー3等を含む支持体2と、カバー3の内
部で支持体2に対して第2方向Xに移動可能に支持された可動体6とを有しており、可動体6が第2方向Xに振動することによって情報を出力する。
【0024】
支持体2は、カバー3、コイルホルダ4、第1プレート47、第2プレート48.コイル5、および給電基板10を有しており、可動体6は、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)、およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を有しており、コイル5および永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)によって磁気駆動回路1aが構成されている。また、可動体6は、可動体6と支持体2との間に設けられた接続部材9を介して支持体2に支持されている。接続部材9は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えており、可動体6は、接続部材9を介して支持体2に相対移動可能に支持されている。
【0025】
(可動体6の構成)
図7は、
図6に示す磁気駆動回路1aの分解斜視図である。
図4、および
図5に示すように、可動体6は、コイル5に対して第1方向Zの一方側Z1に配置された磁性板からなる第1ヨーク81と、コイル5に対して第1方向Zの一方側Z1で対向するように第1ヨーク81の第1方向Zの他方側Z2の面に保持された第1永久磁石71とを有している。また、可動体6は、コイル5に対して第1方向Zの他方側Z2に配置された磁性板からなる第2ヨーク82と、コイル5に第1方向Zの他方側Z2で対向するように第2ヨーク82の第1方向Zの一方側Z1の面に保持された第2永久磁石72とを有している。
【0026】
図4、
図5、および
図7に示すように、第1ヨーク81は、第1永久磁石71が第1方向Zの他方側Z2の面に固定された平板部811と、平板部811の第3方向Yの両側の端部から第1方向Zの他方側Z2に折れ曲がった一対の連結部812とを有している。第2ヨーク82は、第2永久磁石72が第1方向Zの一方側Z1の面に固定された平板部821を有しており、平板部821の第3方向Yの両端部が第1ヨーク81の一対の連結部812の第1方向Zの他方側Z2の端部に溶接等の方法で連結される(
図6参照)。
【0027】
第1永久磁石71は、非磁性のスペーサ710を介して第2方向Xに配列された2つの板状の磁石片711、712からなる。磁石片711、712は各々、第1方向Zで異なる極に着磁されている。また、磁石片711、712は各々、第1方向Zにおける着磁が反対になっている。従って、磁石片711は、第1方向Zの他方側Z2にN極を向けている一方、磁石片712は、第1方向Zの他方側Z2にS極を向けている。
【0028】
第2永久磁石72は、第1永久磁石71と同様、非磁性のスペーサ720を介して第2方向Xに配列された2つの板状の磁石片721、722からなる。磁石片721、722は各々、第1方向Zで異なる極に着磁されている。また、磁石片721、722は各々、第1方向Zにおける着磁が反対になっている。従って、磁石片721は、第1方向Zの一方側Z1にS極を向けている一方、磁石片722は、第1方向Zの一方側Z1にN極を向けている。それ故、第1永久磁石71と第2永久磁石72とは、コイル5を介して第1方向Zで対向する部分が異なる極に着磁されている。
【0029】
(支持体2の構成)
図8は、
図7に示すコイルホルダ4等の斜視図である。
図9は、
図8に示すコイルホルダ4からコイル5を外した状態の斜視図である。
図4、
図5および
図6に示すように、支持体2において、カバー3は、第1方向Zの一方側Z1に位置する第1カバー部材31と、第1方向Zの他方側Z2で第1カバー部材31と重なる第2カバー部材32とを有している。第1カバー部材31、および第2カバー部材32はSUS304等のステンレス鋼や、ステンレス鋼より鉄の含有量が多い鉄系金属からなる。本形態おいて、第1カバー部材31、および第2カバー部材32は、ステンレス鋼より鉄の含有量が多い鉄系金属から
なる。
【0030】
第1カバー部材31は、第1ヨーク81の平板部811に第1方向Zの一方側Z1で対向する長方形の第1平板部310と、第1平板部310の相対向する一対の長辺部の各々から第1方向Zの他方側Z2に向けて折れ曲がった一対の側板部311、312と、第1平板部310の相対向する一対の短辺部の各々から第1方向Zの他方側Z2に向けて折れ曲がった一対の側板部313、314とを有している。
【0031】
第2カバー部材32は、第2ヨーク82の平板部821に第1方向Zの他方側Z2で対向する長方形の第2平板部320と、第2平板部320の相対向する一対の長辺部の各々から第1方向Zの一方側Z1に向けて折れ曲がった一対の側板部321、322と、第1平板部310の相対向する一対の短辺部の各々から第1方向Zの一方側Z1に向けて折れ曲がった一対の側板部323、324とを有している。
【0032】
側板部323には穴323aが形成されている一方、側板部313には穴323aに嵌る板部313aが外側に向けて切り起こされている。側板部324には穴324aが形成されている一方、側板部314には穴324aに嵌る板部314aが外側に向けて切り起こされている。従って、第1カバー部材31と第2カバー部材32とを第1方向Zで重ねると、側板部323、324が各々、側板部313、314に第3方向Yの外側から重なり、板部313aが穴323aに嵌り、板部314aが穴324aに嵌る。この状態で、第1カバー部材31と第2カバー部材32とは接着等の方法で固定され、カバー3が構成される。
【0033】
側板部311、312には切り欠き311a、312aが形成され、側板部321、322には切り欠き321a、322aが形成されている。従って、第1カバー部材31と第2カバー部材32とが結合された際、側板部311、321との間には開口部が形成され、開口部からは、後述するコイルホルダ4の一部が突出した状態となる。また、第1カバー部材31と第2カバー部材32とが結合された際、側板部312、322との間には開口部が形成され、開口部からは、後述するコイルホルダ4の一部が突出した状態となる。
【0034】
図4、および
図5に示すように、支持体2において、カバー3の内側には、コイル5を保持した樹脂製のコイルホルダ4が配置されている。コイルホルダ4は、
図7に示すように、第1方向Zにおいて、第1永久磁石71と第2永久磁石72との間に配置される。また、コイルホルダ4は、第3方向Yにおいて、第1ヨーク81の一対の連結部812の間に配置される。
【0035】
図8および
図9に示すように、コイル5は、長円状に巻回された環状の平面形状を有する空芯コイルであり、第2方向Xで並列して第3方向Yに延在する2つの長辺部51と、2つの長辺部51の第3方向Yの両端を繋ぐ円弧状の2つの短辺部52とを備えている。このように構成したコイル5に対して、長辺部51には、第1方向Zの一方側Z1で第1永久磁石71が対向し、第1方向Zの他方側Z2で第2永久磁石72が対向している。
【0036】
コイルホルダ4は、コイル5が内側に配置される長円状の貫通穴からなるコイル配置穴410が第1方向Zで貫通する長方形の板部41と、板部41の第2方向Xの一方側X1の端部(長辺部)で第1方向Zの両側に突出した第1側板部42と、板部41の第2方向Xの他方側X2の端部(長辺部)で第1方向Zの両側に突出した第2側板部43とを有している。第1側板部42、および第2側板部43は各々、第1カバー部材31の側板部311、312に接着等の方法で固定されている。
【0037】
本形態において、板部41の4つの角の各々には、第1側板部42および第2側板部43の各々に沿って板部41から第1方向Zの両側に突出した柱状の突出部44が設けられている。
【0038】
第1側板部42には、第2方向Xの一方側X1に突出して段部421を構成する突出部420が形成されており、給電基板10は、段部421に当接した状態で第1側板部42に接着等の方法で固定されている。第1側板部42の第1方向Zの他方側Z2の端部には、コイル5から引き出されたコイル線を給電基板10のランド11に向けて通すスリット425が形成されている。なお、突出部420は、側板部311、321の切り欠き311a、321aから第2方向Xの一方側X1に向けて露出した状態となる。従って、給電基板10も、第2方向Xの一方側X1に向けて露出した状態となる。
【0039】
図3に示すように、第2側板部43には、第2方向Xの他方側X2に突出した突出部430が第3方向Yにおいて離間する2箇所に形成されており、突出部430は、側板部312、322の切り欠き312a、322aから第2方向Xの他方側X2に向けて露出した状態となる。従って、第1カバー部材31と第2カバー部材32は、コイルホルダ4の突出部420、430を挟んだ状態となって、第1方向Zで位置決めされる。
【0040】
図7および
図8に示すように、支持体2は、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの一方側Z1から重なる第1プレート47を有しており、少なくともコイル5の空芯部に充填された接着剤(図示せず)によって、コイル5は、第1プレート47および板部41に固定されている。従って、コイル5は、第1プレート47を介して第1永久磁石71と第1方向Zで対向している。また、第1プレート47は、接着剤によって板部41に固定される。
【0041】
支持体2は、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの他方側Z2から重なる第2プレート48を有しており、少なくともコイル5の空芯部に充填された接着剤によって、コイル5は、第2プレート48に固定されている。従って、コイル5は、第2プレート48を介して第2永久磁石72と第1方向Zで対向している。また、第2プレート48は、接着剤によって板部41に固定されている。
【0042】
第1プレート47および第2プレート48は、板部41と略同一サイズの略長方形の金属板からなる。本形態において、第1プレート47および第2プレート48は、非磁性のステンレンス板からなる。
【0043】
第1プレート47は、4つの角部の各々に、第2方向Xの両側から第1方向Zの一方側Z1に斜めに突出した爪状の係合部472を有しており、第1プレート47を板部41に第1方向Zの一方側Z1から重ねた際、係合部472は、突出部44と第1側板部42に弾性をもって当接し、第1プレート47はコイルホルダ4に仮固定される。また、第2プレート48は、4つの角部の各々に、第2方向Xの両側から第1方向Zの一方側Z1に斜めに突出した爪状の係合部472を有しており、第1プレート47を板部41に第1方向Zの一方側Z1から重ねた際、係合部472は、突出部44と第1側板部42に弾性をもって当接し、第2プレート48は、コイルホルダ4に仮固定される。
【0044】
第1プレート47は、第3方向Yの両端で第1方向Zの他方側Z2に折れ曲がった屈曲部473と、第2方向Xの両端で第1方向Zの一方側Z1に折れ曲がった屈曲部474とを有している。第2プレート48は、第3方向Yの両端で第1方向Zの一方側Z1に折れ曲がった屈曲部483と、第2方向Xの両端で第1方向Zの他方側Z2に折れ曲がった屈曲部484とを有している。従って、第1プレート47および第2プレート48は、屈曲部473、474、483、484によって折れ曲がりに対する強度が高められている。
【0045】
このように、本形態のアクチュエータ1は、コイルホルダ4の板部41のコイル配置穴410の内側にコイル5が配置されているとともに、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの一方側Z1から重なるように第1プレート47がコイルホルダ4に固定されている。このため、コイル5の空芯部に接着剤を充填すると、接着剤は、コイル5とコイルホルダ4との間、コイル5と第1プレート47との間、および第1プレート47とコイルホルダ4との間に流れ込む。従って、接着剤を硬化させると、コイル5、第1プレート47、およびコイルホルダ4が接着剤層によって固定される。このため、コイル5の外周面とコイル配置穴410の内周面との隙間に接着剤を流し込む場合と違って、コイルホルダ4のコイル配置穴410に配置したコイル5をコイルホルダ4と適正に接着することができる。また、第1永久磁石71とコイル5との間に第1プレート47が介在する。このため、可動体6が第1方向Zの一方側Z1に移動した場合でも、第1永久磁石71とコイル5とが直接、接触することがないので、コイル5が損傷しにくい。
【0046】
また、コイル5の空芯部に接着剤を充填した後、第2プレート48を重ねると、接着剤は、コイル5とコイルホルダ4との間、コイル5と第1プレート47との間、および第1プレート47とコイルホルダ4との間にスムーズに流れ込むとともに、コイル5と第2プレート48との間、および第2プレート48とコイルホルダ4との間に流れ込む。従って、接着剤を硬化させると、コイル5、第1プレート47、第2プレート48、およびコイルホルダ4が接着剤層によって固定される。この状態では、第2永久磁石72とコイル5との間に第2プレート48が介在する。このため、可動体6が第1方向Zの他方側Z2に移動した場合でも、第2永久磁石72とコイル5とが直接、接触することがないので、コイル5が損傷しにくい。
【0047】
また、第1プレート47および第2プレート48は、非磁性材料からなるため、第1永久磁石71からの磁束、および第2永久磁石72の磁束が、第1プレート47および第2プレート48の影響を受けずにコイル5と鎖交することになる。また、第1プレート47および第2プレート48は、金属板からなるため、コイル5で発生した熱を第1プレート47および第2プレート48を介して効率よく逃がすことができる。また、第1プレート47および第2プレート48は、ステンレンス板からなるため、第1プレート47および第2プレート48は、板厚が薄い場合でも、十分な強度を有する。
【0048】
また、第1プレート47および第2プレート48は各々、係合部472、482によってコイルホルダ4に仮固定される。従って、接着剤が硬化するまで、第1プレート47および第2プレート48を治具で支持する必要がない。
【0049】
(接続部材9の構成)
図4、
図5、および
図6に示すように、可動体6は、可動体6と支持体2との間において可動体6および支持体2の双方に接続された接続部材9によって支持体2に支持されている。本形態において、接続部材9は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えている。このため、可動体6は、第2方向Xおよび第3方向Yに移動可能に支持体2に支持されている。本形態において、接続部材9は、粘弾性を有する部材からなる。従って、板状バネ等を用いずに、可動体6を第2方向Xに移動可能に支持することができ、可動体6が共振することを抑制することができる。
【0050】
本形態において、接続部材9は、第1ヨーク81と第1平板部310とが第1方向Zで対向する部分に配置された第1粘弾性部材91と、第2ヨーク82と第2平板部320とが第1方向Zで対向する部分に配置された第2粘弾性部材92とを含んでいる。本形態において、接続部材9は、第1粘弾性部材91と第2粘弾性部材92とからなる。第1粘弾性部材91、および第2粘弾性部材92は各々、第3方向Yで離間する2箇所に配置され
ている。
【0051】
本形態において、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、シリコーンゲル等からなるゲル状部材である。本形態において、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。針入度とは、JIS−K−2207やJIS−K−2220で規定されているように、25℃で9.38gの総荷重をかけた1/4コーンの針が5秒間に入り込む深さを1/10mm単位で表わした値であり、この値が小さいほど硬いことを意味する。なお、第1粘弾性部材91と第1ヨーク81との接続、第1粘弾性部材91と第1平板部310との接続、第2粘弾性部材92と第2ヨーク82との接続、第2粘弾性部材92と第2平板部320との接続は、接着剤、粘着剤、あるいはシリコーンゲルの粘着性を利用して行われる。
【0052】
(基本動作)
本形態のアクチュエータ1において、出力すべき情報に対応する駆動信号を外部(上位の機器)から給電基板10を介してコイル5に給電すると、コイル5、第1永久磁石71および第2永久磁石72を備えた磁気駆動回路1aによって、可動体6が第2方向Xに往復移動する。従って、アクチュエータ1を手に持っていた利用者は、アクチュエータ1からの振動によって情報を得ることができる。その際、コイル5に印加される信号波形については、伝達すべき情報によって、周波数を変化させる。また、コイル5に印加される信号波形については極性を反転させるが、その際、駆動信号の極性が負の期間と正の期間とにおいて電圧の変化に対して緩急の差を設ける。その結果、可動体6が第2方向Xの一方側X1に移動する際の加速度と可動体6が第2方向Xの他方側X2に移動する際の加速度との間に差が発生する。従って、利用者に対して、アクチュエータ1は、触覚デバイスとして、第2方向Xの一方側X1あるいは他方側X2に移動するような感覚を感じさせることができる。
【0053】
ここで、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、支持体2と可動体6との間において第2方向X(振動方向)に対して交差する第1方向Zで対向する位置に設けられている。このため、可動体6が第2方向Xに振動した際、そのせん断方向に変形して共振を防止する。従って、可動体6が第2方向Xに振動しても、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92の弾性率の変化が小さいので、可動体6の共振を効果的に抑制することができる。
【0054】
すなわち、接続部材9(第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92)は、粘弾性部材(板状のゲル状部材)であって、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。また、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。本形態において、可動体6が第2方向Xに振動した際、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、せん断方向に変形する。従って、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92では、可動体6が第2方向Xに振動した際、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもって振動を実現することができる。
【0055】
本形態において、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、第1方向Zの両面
が各々、可動体6および支持体2に接着等の方法で接続されている。従って、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、可動体6の移動に確実に追従するので、可動体6の共振を効果的に防止することができる。また、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、支持体2と可動体6との間で第1方向Zに圧縮された状態にある。従って、第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92は、可動体6の移動に確実に追従するので、可動体6の共振を効果的に防止することができる。
【0056】
また、本形態では、外部からの衝撃によって、可動体6が第2方向Xおよび第3方向Yに移動した際の可動範囲を規定する度当たり部が設けられている。より具体的には、外部からの衝撃によって、可動体6が第2方向Xに移動した際、第1ヨーク81および第2ヨーク82がコイルホルダ4の第1側板部42、またはコイルホルダ4の第2側板部43に当接することにより、可動体6の第2方向Xにおける可動範囲が規定されている。また、外部からの衝撃によって、可動体6が第3方向Yに移動した際、第1ヨーク81の連結部812がコイルホルダ4の板部41に第1プレート47および第2プレート48の屈曲部473、483を介して当接することによって、可動体6の第3方向Yにおける可動範囲が規定されている。
【0057】
(第1カバー部材31および第2カバー部材32の詳細構成)
図6に示すように、本形態のアクチュエータ1において、第1カバー部材31の第1平板部310には、第1平板部310を複数の領域に区画するように延在するリブ状の第1突条部316が設けられている。本形態において、第1突条部316は、第1平板部310の端部まで到達している。
【0058】
本形態において、第1平板部310は、相対向する一対の長辺部、および一対の長辺部の間で相対向する一対の短辺部を備えた長方形であり、第1突条部316は、一対の長辺部が延在する方向の中央部分で一対の短辺部に沿う方向に延在している。このため、第1突条部316は、第1平板部310を長辺部が延在する方向で2等分割しており、2つの第1粘弾性部材91は各々、第1平板部310のうち、第1突条部316によって区画された2つの領域と可動体6との間に配置されている。
【0059】
かかる構成によれば、第1カバー部材31の第1平板部310の薄板化を図った場合でも、第1平板部310は、第1突条部316によって複数の領域に分割されているため、第1平板部310の剛性を高めることができ、振動しにくい。従って、第1カバー部材31の第1平板部310を薄板化してアクチュエータ1の薄型化等を図った場合において、コイル5に供給される駆動信号が、電圧変化が急峻なパルス信号等であっても、第1平板部310の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。特に本形態では、第1突条部316は、長方形の第1平板部310を長辺方向で2等分割しているため、第1平板部310が振動しにくい。また、第1カバー部材31は、第1平板部310を含む全体が鉄系金属からなるため、第1平板部310の振動を抑制しやすい。それ故、第1平板部310の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。
【0060】
本形態において、第1平板部310は、第1突条部316の反対側が溝317になっている。より具体的には、第1カバー部材31の製作するにあたっては、金属板に対する絞り加工等のプレス加工を行うが、本形態では、第1カバー部材31を製作するためのプレス加工の際、第1突条部316を同時に形成する。従って、第1平板部310には、第1突条部316の反対側に溝317が形成される。
【0061】
本形態において、第1突条部316は、第2平板部320が位置する側(内側)に向けて突出している。このため、第1平板部310の第2平板部320が位置する側と反対側の面(外面)には、第1突条部316と重なるように延在する溝317が形成されている
。従って、第1突条部316が外側に向けて突出している場合よりアクチュエータ1の第1方向Zにおける寸法を短くすることができる。
【0062】
また、2つの第1粘弾性部材91は各々、第1平板部310のうち、第1突条部316を避けた平板部分に接続されているため、第1突条部316に起因する変形が発生していない。それ故、第1粘弾性部材91の粘弾性特性が変動しにくい。
【0063】
さらに、本形態では、
図1および
図2に示すように、溝317の内部には充填部材16が設けられており、充填部材16は、溝317の全域において溝317の内面に接している。このため、充填部材16を利用して、第1平板部310の振動特性を適正化することができる。それ故、第1平板部310の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。
【0064】
例えば、充填部材16として、鉄や銅等の金属からなる剛性部材や、金属が分散された剛性の樹脂部材からなる剛性部材を溝317に配置した場合、第1平板部310の剛性を高めることができるとともに、第1平板部310の質量を増大させた場合と同様な効果を得ることができ、第1平板部310の振動を効果的に抑制することができる。それ故、第1平板部310の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。
【0065】
また、充填部材16として弾性樹脂やゲル状部材等の弾性部材を溝317に配置した場合、溝に配置した弾性部材によって、第1平板部310の振動を吸収することにより、第1平板部310の振動を効果的に抑制することができる。それ故、第1平板部310の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい。
【0066】
本形態のアクチュエータ1において、第2カバー部材32の第2平板部320は、第1平板部310と同様な構成になっている。より具体的には、第2平板部320には、第2平板部320を複数の領域に区画するように延在するリブ状の第2突条部326が設けられており、第2突条部326は、第2平板部320の端部まで到達している。また、第2突条部326は、第2平板部320を長辺部が延在する方向で2等分割しており、2つの第2粘弾性部材92は各々、第2平板部320のうち、第2突条部326によって区画された2つの領域と可動体6との間に配置されている。
【0067】
本形態において、第2カバー部材32を製作するためのプレス加工の際、第2突条部326を同時に形成する。従って、第2平板部320には、第2突条部326の反対側に溝327が形成される。本形態において、第2突条部326は、第1平板部310が位置する側(内側)に向けて突出している。このため、第2平板部320の第1平板部310が位置する側と反対側の面(外面)には、第2突条部326と重なるように延在する溝327が形成されている。
【0068】
従って、第2平板部320においても、第1平板部310と同様、コイル5に供給される駆動信号が、電圧変化が急峻なパルス信号等であっても、第2平板部320の振動が原因で駆動音が発生するという事態が発生しにくい等の効果を奏する。
【0069】
さらに、本形態では、
図1および
図2に示すように、溝327の内部には充填部材17が設けられており、充填部材17は、溝327の全域において溝327の内面に接している。このため、充填部材17を利用して、第2平板部320の振動特性を適正化することができる。例えば、充填部材17として、金属や、金属が分散された剛性の樹脂部材を溝327に配置した場合、第2平板部320の剛性を高めることができる等の利点がある。これに対して、充填部材17として弾性部材を溝327に配置した場合、溝に配置した弾性部材によって、第2平板部320の振動を吸収することにより、第2平板部320の振
動を効果的に抑制することができる。
【0070】
(変形例)
図10は、本発明の実施形態の変形例に係るアクチュエータの説明図であり、第1平板部310の構成を模式的に示してある。上記実施形態では、第1突条部316が、第1平板部310を長辺部が延在する方向で2等分割していたが、
図10に示すように、第1突条部316を第2方向Xおよび第3方向Yに延在させて、第1突条部316が、第1平板部310を4分割している態様であってもよい。この場合も、第1粘弾性部材91を第1突条部316によって分割された4つの領域の各々に配置すれば、第1突条部316と重ならない領域に第1粘弾性部材91を配置することができる。
【0071】
なお、
図10に符号をかっこ内に示すように、第2突条部326を第2方向Xおよび第3方向Yに延在させて、第2突条部326が、第2平板部320を4分割している態様としてもよく、この場合も、第2粘弾性部材92を第2突条部326によって分割された4つの領域の各々に配置すれば、第2突条部326と重ならない領域に第2粘弾性部材92を配置することができる。
【0072】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、溝317、327の双方に充填部材16、17を設けたが、溝317、327の一方のみに充填部材を設けた態様や、溝317、327のいずれにも充填部材を設けない態様であってもよい。上記実施の形態では、第1突条部316、および第2突条部326が各々、内側に向けて突出していたが、第1突条部316、および第2突条部326の一方あるいは双方が外側に向けて突出している態様であってもよい。上記実施の形態では、第1突条部316、および第2突条部326の双方において、反対側が溝317、327になっていたが、第1突条部316、および第2突条部326の一方あるいは双方に対して反対側が溝になっていない態様であってもよい。上記実施の形態では、第1突条部316、および第2突条部326の双方が設けられていたが、第1平板部310のみに第1突条部316が設けられ、第2平板部320に第2突条部326が設けられていない態様であってもよい。
【0073】
上記実施の形態では、コイル5に対する第1方向Zの両側に永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)を設けたが、コイル5に対する第1方向Zの一方のみに永久磁石を設けたアクチュエータに本発明を適用してもよい。上記実施の形態では、コイル5を支持体2に設け、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を可動体6に設けた。但し、コイル5を可動体6に設け、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を支持体2に設けたアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【0074】
上記実施の形態では、接続部材9としてゲル状部材(粘弾性部材)を用いたが、ゴムやバネ等を用いてもよい。ここで、粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。従って、粘弾性を備えた接続部材9として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。