(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203265(P2020-203265A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20060101AFI20201127BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20201127BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20201127BHJP
B01D 33/29 20060101ALI20201127BHJP
B01D 33/333 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
C02F3/12 K
C02F3/12 S
C02F3/34 101A
C02F11/04 Z
B01D33/32
C02F3/34 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-113562(P2019-113562)
(22)【出願日】2019年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】矢次 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 翔
(72)【発明者】
【氏名】永江 信也
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 善男
【テーマコード(参考)】
4D028
4D040
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D028AA08
4D028AB00
4D028BA01
4D028BB07
4D028BC18
4D028BC24
4D028BC26
4D028BC28
4D028BD06
4D028BD12
4D028BD17
4D028BE08
4D028CA09
4D028CA11
4D028CB03
4D040DD03
4D040DD14
4D059AA05
4D059BA12
4D059CA11
4D059CA22
4D059CA28
4D116BA13
4D116DD01
4D116FF11A
4D116GG34
4D116KK01
4D116QA02C
4D116QA02D
4D116QA45C
4D116QA45E
4D116RR22
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】有機性排水に対して消化処理及び脱窒処理を適切に管理できる水処理方法を提供する。
【解決手段】有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、前記曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過工程と、前記ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、前記ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、活性汚泥を前記生物処理工程から前記曝気工程に送る送泥工程と、前記生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥工程で前記曝気工程に送る活性汚泥の量を調整する調整工程と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、
被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、
前記曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過工程と、
前記ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、
前記ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、
活性汚泥を前記生物処理工程から前記曝気工程に送る送泥工程と、
前記生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥工程で前記曝気工程に送る活性汚泥の量を調整する調整工程と、
を備えている、水処理方法。
【請求項2】
前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、前記曝気工程に送る活性汚泥を減量する、請求項1記載の水処理方法。
【請求項3】
前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、前記曝気工程に送る活性汚泥を増量する、請求項1記載の水処理方法。
【請求項4】
有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、
複数の曝気槽で被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、
前記曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過工程と、
前記ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、
前記ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、
活性汚泥を前記生物処理工程から前記曝気工程に送る送泥工程と、
前記生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥工程で送る曝気槽の数を調整する調整工程と、
を備えている、水処理方法。
【請求項5】
前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、活性汚泥を送泥する前記曝気槽の数を減少させる、請求項4記載の水処理方法。
【請求項6】
前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、活性汚泥を送泥する曝気槽の数を増加させる、請求項4記載の水処理方法。
【請求項7】
有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、
被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、
前記曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過面が循環するフィルタでろ過するろ過工程と、
前記ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、
前記ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、
活性汚泥を前記生物処理工程から前記曝気工程に送る送泥工程と、
前記生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記ろ過面の循環速度を調整する調整工程と、
を備えている、水処理方法。
【請求項8】
前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、前記ろ過面の循環速度を上昇させる、請求項7に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、前記ろ過面の循環速度を低下させる、請求項7に記載の水処理方法。
【請求項10】
有機性排水を含む被処理水を処理する水処理装置であって、
被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気装置と、
前記曝気装置で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過装置と、
前記ろ過装置で捕捉された固形物を消化処理する消化処理装置と、
前記ろ過装置を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理装置と、
活性汚泥を前記生物処理装置から前記曝気装置に送る送泥装置と、
前記生物処理装置で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥装置で前記曝気装置に送る活性汚泥の量を調整する調整装置と、
を備えている、水処理装置。
【請求項11】
前記曝気装置が複数の曝気槽を備えて構成され、
前記調整装置は前記生物処理装置で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥装置で前記曝気装置に送る曝気槽の数を調整する、請求項10記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、下水などの有機性排水を含む被処理水を固液分離し、沈殿成分でなる生汚泥を嫌気性消化処理してメタンガスを回収し、上澄みを嫌気好気法などにより生物処理して脱窒処理する水処理方法が採用されている。嫌気性消化処理して得られるメタンガスを用いて発電することで、商用電源からの受電量を低減して省エネルギーを図っている。
【0003】
最初沈澱池で固液分離する場合には、沈殿しない微細なSS及びBODや溶解性のBODが生汚泥側に取り込まれずに上澄み側に流出するため、嫌気性消化処理で生じるガス量が低下する。
【0004】
沈殿しない微細なSS及びBODや溶解性のBODを回収するために、活性汚泥の初期吸着作用を活用する方法が考えられている。初期吸着作用とは、主に活性汚泥中の好気性微生物が分泌する粘着性のゼラチン状物質によって被処理水中の微粒子及び溶解性のBODが活性汚泥の表面に集められる物理吸着作用をいう。
【0005】
例えば、
図5に示すように、初沈流入渠AからスクリーンBで処理されて原水槽Cに貯水された被処理水を曝気槽Dで曝気状態の活性汚泥と接触させて初期吸着処理を行ない、その後に沈殿槽Eで固液分離して沈殿成分を消化処理設備に供給し、上澄みを生物処理設備に供給して脱窒処理する水処理方法である。
図5中、符号Fは有機及び無機凝結剤添加装置であり、符号Gは有機凝集剤添加装置である。
【0006】
しかし、上述した水処理方法では、曝気槽と沈澱槽を設置する必要があり、最初沈澱池を用いた単純な分離方法と比較すると設備の所要スペースが増加するという問題があった。
【0007】
そこで、最初沈澱池の代替設備として、特許文献2に記載されたような微細なフィルタで原水をろ過するロータリーフィルタを用いることも可能であるが、溶解性のBODを捕捉することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−10400号公報
【特許文献2】WO2015−142586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に示した従来の水処理方法では、曝気槽Dの滞留時間が0.5時間程度、沈澱池Eの滞留時間が1.5時間程度、合計で2時間と長い時間を要するため、初期吸着処理で被処理水からBODを除去し過ぎて、固液分離された後の上澄みに対する生物処理で十分な脱窒処理を行なうことができなくなった場合に、例えば生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて、充分な脱窒処理が行なわれていないと検出して、曝気槽DでのBODの除去率を低下するように運転を切り替えても、十分な脱窒処理が行なわれた処理水を得る迄に長い時間を要するという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、有機性排水に対して消化処理及び脱窒処理を適切に管理できる水処理方法及び水処理装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による水処理方法の第一の特徴構成は、有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、前記曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過工程と、前記ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、前記ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、活性汚泥を前記生物処理工程から前記曝気工程に送る送泥工程と、前記生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥工程で前記曝気工程に送る活性汚泥の量を調整する調整工程と、を備えている点にある。
【0012】
曝気工程で被処理水に含まれる微細なSS及びBODや溶解性のBODが初期吸着され、ろ過工程で捕捉された固形物が微細なSS及びBODとともに消化処理工程に送られて、効率的な消化処理が実行される。ろ過工程を経たろ過水は生物処理工程に送られて活性汚泥により脱窒処理される。生物処理工程で増加した活性汚泥が送泥工程によって曝気工程に送られることにより、曝気工程での初期吸着性能が維持される。そして、調整工程では生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて送泥工程によって曝気工程に送られる活性汚泥の量が調整されることにより、生物処理工程における適切な脱窒処理と、消化処理工程における効率的な消化処理が実現できる。
【0013】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、前記曝気工程に送る活性汚泥を減量する点にある。
【0014】
処理水の窒素濃度が基準値より高い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が上昇しているために脱窒効率が低下していると判断して、曝気工程に送る活性汚泥を減量して初期吸着処理の程度を調整することで、低下した脱窒効率が迅速に改善されるようになる。
【0015】
同第三の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、前記曝気工程に送る活性汚泥を増量する点にある。
【0016】
処理水の窒素濃度が基準値より低い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が低下しているために脱窒効率が上昇していると判断して、曝気工程に送る活性汚泥を増量して初期吸着処理の程度を調整することで、脱窒効率を基準値に迅速に戻すことができるようになる。
【0017】
同第四の特徴構成は、有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、複数の曝気槽で被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、前記曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過工程と、前記ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、前記ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、活性汚泥を前記生物処理工程から前記曝気工程に送る送泥工程と、前記生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥工程で送る曝気槽の数を調整する調整工程と、を備えている点にある。
【0018】
曝気工程で複数の曝気槽を用いて初期吸着処理する場合には、生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて送泥工程で送る曝気槽の数を調整する調整工程を設けることにより、生物処理工程における適切な脱窒処理と、消化処理工程における効率的な消化処理が実現できる。
【0019】
同第五の特徴構成は、上述の第四の特徴構成に加えて、前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、活性汚泥を送泥する前記曝気槽の数を減少させる点にある。
【0020】
処理水の窒素濃度が基準値より高い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が上昇しているために脱窒効率が低下していると判断して、活性汚泥を返送する曝気槽の数を減少させることにより、曝気工程における初期吸着処理の程度を調整することで、低下した脱窒効率が迅速に改善されるようになる。
【0021】
同第六の特徴構成は、上述の第四の特徴構成に加えて、前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、活性汚泥を送泥する曝気槽の数を増加させる点にある。
【0022】
処理水の窒素濃度が基準値より低い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が低下しているために脱窒効率が上昇していると判断して、活性汚泥を返送する曝気槽の数を増加させることにより、曝気工程に送る活性汚泥を増量して初期吸着処理の程度を調整することで、脱窒効率を基準値に迅速に戻すことができるようになる。
【0023】
同第七の特徴構成は、有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、前記曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過面が循環するフィルタでろ過するろ過工程と、前記ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、前記ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、活性汚泥を前記生物処理工程から前記曝気工程に送る送泥工程と、前記生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記ろ過面の循環速度を調整する調整工程と、を備えている点にある。
【0024】
ろ過面が循環するフィルタを用いてろ過工程を実行する場合には、生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいてろ過面の循環速度を調整する調整工程を設けることにより、生物処理工程における適切な脱窒処理と、消化処理工程における効率的な消化処理が実現できる。しかも、ろ過面が循環するフィルタであれば、沈澱池のような大きな設置面積を要することもない。
【0025】
同第八の特徴構成は、上述の第七の特徴構成に加えて、前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、前記ろ過面の循環速度を上昇させる点にある。
【0026】
処理水の窒素濃度が基準値より高い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が上昇しているために脱窒効率が低下していると判断して、ろ過面の循環速度を上昇させることでろ過面に付着堆積する固形物層を薄くして微細なSS及びBODや溶解性のBODの固形物側への捕捉を抑制することで、低下した脱窒効率が迅速に改善されるようになる。
【0027】
同第九の特徴構成は、上述の第七の特徴構成に加えて、前記調整工程は、前記処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、前記ろ過面の循環速度を低下させる点にある。
【0028】
処理水の窒素濃度が基準値より低い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が低下しているために脱窒効率が上昇していると判断して、ろ過面の循環速度を低下させることでろ過面に付着堆積する固形物層を厚くして微細なSS及びBODや溶解性のBODの固形物側への捕捉を促進することで、脱窒効率を基準値に迅速に戻すことができるようになる。
【0029】
本発明による水処理装置の第一の特徴構成は、有機性排水を含む被処理水を処理する水処理装置であって、被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気装置と、前記曝気装置で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過装置と、前記ろ過装置で捕捉された固形物を消化処理する消化処理装置と、前記ろ過装置を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理装置と、活性汚泥を前記生物処理装置から前記曝気装置に送る送泥装置と、前記生物処理装置で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥装置で前記曝気装置に送る活性汚泥の量を調整する調整装置と、を備えている点にある。
【0030】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記曝気装置が複数の曝気槽を備えて構成され、前記調整装置は前記生物処理装置で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて前記送泥装置で前記曝気装置に送る曝気槽の数を調整する点にある。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、有機性排水に対して消化処理及び脱窒処理を適切に管理できる水処理方法及び水処理装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)は本発明による水処理装置の説明図、(b)は本発明による水処理方法を示す説明図
【
図2】ろ過装置として用いるロータリーフィルタの説明図
【
図4】(a)は、(b)は第4の実施形態による有機性排水処理装置の説明図
【
図5】曝気槽及び沈殿槽を備え、曝気槽で初期吸着処理を行なう従来の水処理装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明による水処理方法及び水処理装置を、図面に基づいて説明する。
図1(a)には、下水などの有機性排水を含む被処理水を処理する水処理装置100が示されている。当該水処理装置100は、被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気装置10と、曝気装置10で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過装置20と、ろ過装置20で捕捉された固形物を消化処理する消化処理装置30と、ろ過装置20を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理装置40と、活性汚泥を生物処理装置40から曝気装置10に送る送泥装置50と、生物処理装置40で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて送泥装置50で曝気装置10に送る活性汚泥の量を調整する調整装置60などを備えている。なお、曝気槽10に供給される被処理水は予めスクリーン機構を介して大きな夾雑物は除去され、原水槽に充填されている。
【0034】
曝気装置10は単一または複数の曝気槽と各曝気槽の底部に設置された散気装置を備えて構成され、送泥装置50により生物処理装置40から送泥された活性汚泥が充填されている。
【0035】
曝気装置10に流入した被処理水が活性汚泥によって初期吸着処理され、被処理水に浮遊する微細なSS及びBODや溶解性のBODが活性汚泥中の好気性微生物により分泌される粘着性のゼラチン状物質によって物理吸着される。
【0036】
初期吸着処理された被処理水がろ過装置20によって固液分離され、活性汚泥とともに固形分が消化処理装置30に送られて嫌気性消化処理される。消化処理装置30で発生するメタンガスは燃料ガスとして回収され、当該燃料ガスを熱源として得られる蒸気や燃焼ガスにより駆動される発電装置70で発電される。
【0037】
ろ過装置20によって固液分離された液分は生物処理装置40に送られて活性汚泥により消化脱窒処理され、浄化された処理水が河川などに放流される。生物処理装置40として脱窒処理を行なう無酸素槽41(
図1(b)参照。)と、膜分離装置43(
図1(b)参照。)が浸漬配置された好気槽42(
図1(b)参照。)を備えて構成され、膜分離活性汚泥法(MBR)を採用した装置が好適に用いられる。曝気装置10で微細なSS及びBODや溶解性のBODが初期吸着されるので、膜分離装置43で膜詰まりが発生し難くなる点で整合性がよい。
【0038】
被処理水に含まれるアンモニア性窒素が好気槽42で好気処理されて硝酸性窒素となり、硝酸性窒素が活性汚泥とともに無酸素槽41に循環返送されて脱窒される。好気槽42で好気処理されてBODが分解された被処理水は膜分離装置43で固液分離されて処理水として取り出される。
【0039】
なお、生物処理装置40は膜分離活性汚泥法(MBR)を採用するものに限るものではなく、循環式硝化脱窒法など脱窒処理可能な他のプロセスを採用するものであってもよい。
【0040】
生物処理装置40で生じる余剰汚泥の一部がポンプなどで構成される送泥装置50を介して曝気装置10に供給され、曝気装置10で被処理水に対する初期吸着処理が行なわれる。
【0041】
図2には、ろ過装置20として好適に用いられるロータリーフィルタ装置20の基本的な構成が示されている。ロータリーフィルタ装置20は、一端面に被処理水の投入口21が形成されたケーシング22と、ケーシング22の内部に収容されたフィルタ23と、フィルタ23によって捕捉された固形物を受止めて搬送するスクリューコンベア24と、フィルタ23を通過した液分を流出する排水路26を備えている。
【0042】
フィルタ23は、被処理水の投入口21側から斜め上方に傾斜する傾斜姿勢となるように、少なくとも2本のローラR1,R2間に架け渡された無端ベルトで構成され、ベルト面が300〜500μm程度の目幅のろ過面に形成されている。なお、ろ過面の目幅はこの値に限定されるものではなく、ろ過対象の特性に応じて適宜設定されるものである。
【0043】
上述の無端ベルトが下方のローラR1から上方のローラR2に向けて循環移動する往路で被処理水に含まれる固形分がそのろ過面で捕捉され、上方のローラR2から下方のローラR1に向けて循環移動する復路でろ過面に捕捉された固形分がスクレーパ25により取り除かれてスクリューコンベア24に落下し、ケーシング22の背面側に搬送される。また、投入口21から流入した被処理水の液分はフィルタ23を通過した後に排水路24から排水される。
【0044】
なお、ろ過装置20は上述したロータリーフィルタ装置に限るものではなく、他にドラムスクリーン装置や高速ろ過装置などを用いることができる。何れのろ過装置20を採用しても、従来の沈殿地を用いる場合よりも設置面積が小さなコンパクトな装置で構成できるようになる。
【0045】
曝気装置10で実行される初期吸着処理により被処理水に含まれるBODの除去率が目標値よりも上昇すると、生物処理装置40の無酸素槽41で脱窒処理に要するBOD濃度が低下して、充分な脱窒処理が困難になる虞がある。
【0046】
そのため、当該水処理装置100では、生物処理装置40で生物処理された処理水の窒素濃度を窒素濃度計TN(
図1(b)参照。)で計測し、その値に基づいて曝気装置10における初期吸着処理の程度を調整する調整装置60を備えている。
【0047】
以下、上述した水処理装置100に備えた調整装置60に視点を当てて、本発明の水処理方法を詳述する。
[水処理方法の第一の態様]
図1(b)に示すように、水処理方法は、有機性排水を含む被処理水を処理する水処理方法であって、被処理水を曝気して初期吸着処理する曝気工程と、曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過するろ過工程と、ろ過工程で捕捉された固形物を消化処理する消化処理工程と、ろ過工程を経たろ過水を活性汚泥により脱窒する生物処理工程と、活性汚泥を生物処理工程から曝気工程に送る送泥工程と、生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて送泥工程で曝気工程に送る活性汚泥の量を調整する調整工程と、を備えている。
【0048】
上述した曝気装置10により曝気工程が実行され、ろ過装置20によりろ過工程が実行され、消化処理装置30により消化処理工程が実行され、生物処理装置40により生物処理工程が実行され、送泥装置50により送泥工程が実行され、調整装置60により調整工程が実行される。
【0049】
曝気工程で被処理水に含まれる微細なSS及びBODや溶解性のBODが初期吸着され、ろ過工程で捕捉された固形物が微細なSS及びBODとともに消化処理工程に送られて、効率的な消化処理が実行される。ろ過工程を経たろ過水は生物処理工程に送られて活性汚泥により脱窒処理される。生物処理工程で増加した活性汚泥が送泥工程によって曝気工程に送られることにより、曝気工程での初期吸着性能が維持される。
【0050】
曝気工程では、水理学的滞留時間HRTが0.5時間に設定され、溶存酸素濃度DOは1mg/L程度に調整されている。なお、活性汚泥処理法では、水理学的滞留時間HRTが6.0時間に設定され、BODの充分な取込みと分解処理が行なわれるのに対して、当該曝気工程では初期吸着処理を目的とするため、活性汚泥処理法と比較して非常に短いHRTに設定されている。また、溶存酸素濃度を低く抑えることにより、消化処理の対象となる固液分の酸素含有量を低く抑えている。
【0051】
調整工程では生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて送泥工程によって曝気工程に送られる活性汚泥の量が調整されることにより、生物処理工程における適切な脱窒処理と、消化処理工程における効率的な消化処理が実現されている。この場合、調整装置60は、送泥装置50を構成する送泥管に流れる汚泥量を調整するために、送泥管に備えたバルブ機構の開度や、送泥管に汚泥を供給するポンプの回転数を制御する制御装置などで構成することができる。
図1(b)中、符号TNは窒素濃度計である。
【0052】
調整工程では、処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、曝気工程に送る活性汚泥を減量し、処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、曝気工程に送る活性汚泥を増量する。
【0053】
処理水の窒素濃度が基準値より高い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が上昇しているために脱窒効率が低下していると判断して、曝気工程に送る活性汚泥を減量して初期吸着処理の程度を調整することで、低下した脱窒効率が迅速に改善されるようになる。
【0054】
また、処理水の窒素濃度が基準値より低い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が低下しているために脱窒効率が上昇していると判断して、曝気工程に送る活性汚泥を増量して初期吸着処理の程度を調整することで、脱窒効率を基準値に迅速に戻すことができるようになる。
【0055】
この例では、曝気槽10でMLSSが500mg/L、無酸素槽41でMLSSが7,500mg/L、好気槽42でMLSSが10,500mg/Lの各値に目標値が設定され、被処理水の流入量Qに対して、処理水の流出量Q、好気槽42から無酸素槽41への循環汚泥量3Q、生物処理装置40から曝気装置10への送泥量0.03Qに調整される。
【0056】
[水処理方法の第二の態様]
次に第二の態様を説明する。この態様では、曝気装置10が複数の曝気槽(本実施形態では3槽)を備えて構成され、生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて送泥工程で送る曝気槽の数を調整する調整工程を備えている。
【0057】
この様に、曝気工程で複数の曝気槽を用いて初期吸着処理する場合には、生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいて送泥工程で送る曝気槽の数を調整する調整工程を設けることにより、生物処理工程における適切な脱窒処理と、消化処理工程における効率的な消化処理が実現できる。
【0058】
この場合、調整装置60は、複数の曝気槽のそれぞれ接続された送泥管に流れる汚泥量を調整するために、各送泥管に備えたバルブ機構を開閉調整する制御装置などで構成することができる。
【0059】
調整工程では、処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、活性汚泥を送泥する曝気槽の数を減少させ、処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、活性汚泥を送泥する曝気槽の数を増加させる。
【0060】
処理水の窒素濃度が基準値より高い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が上昇しているために脱窒効率が低下していると判断して、活性汚泥を返送する曝気槽の数を減少させることにより、曝気工程における初期吸着処理の程度を調整することで、低下した脱窒効率が迅速に改善されるようになる。
【0061】
また、処理水の窒素濃度が基準値より低い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が低下しているために脱窒効率が上昇していると判断して、活性汚泥を返送する曝気槽の数を増加させることにより、曝気工程に送る活性汚泥を増量して初期吸着処理の程度を調整することで、脱窒効率を基準値に迅速に戻すことができるようになる。
【0062】
送泥停止時間が短時間であれば曝気槽に充填された汚泥が腐敗する虞が無く、初期吸着量を抑制することができる。このとき、同時に曝気槽に備えた散気装置による散気量を抑制することで、初期吸着量を抑制することもできる。また、送泥停止することなく、曝気槽に備えた散気装置による散気量を抑制するだけであってもよい。散気量を抑制することにより初期吸着量を抑制することができる。
【0063】
さらに、原水槽から各曝気槽に送水する被処理水の送水量を調整してもよい。例えば、処理水の窒素濃度が基準値より低い場合には、総量を一定に保ちながら曝気量を抑制した曝気槽への被処理水の供給量を増加させ、他の曝気槽への供給量を抑制してもよい。
【0064】
送泥停止時間が長時間に及ぶ場合には、曝気槽に撹拌機構を備えて汚泥を撹拌することで汚泥の沈澱腐敗を回避する必要がある。撹拌機構を設けない場合には、送泥を停止し、或いは曝気を停止する曝気槽からドレン管を介して汚泥とともに被処理水を排出し、被処理水が貯留される原水槽に戻すように構成すればよい。
【0065】
[水処理方法の第三の態様]
次に第三の態様を説明する。この態様では、ろ過装置20に上述したロータリーフィルタ装置を備え、ろ過工程が、曝気工程で初期吸着処理された被処理水をろ過面が循環するフィルタでろ過するように構成されている。
【0066】
調整工程では、生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいてろ過面の循環速度を調整するように構成されている。
【0067】
即ち、ろ過面が循環するフィルタを用いてろ過工程を実行する場合には、生物処理工程で生物処理された処理水の窒素濃度に基づいてろ過面の循環速度を調整する調整工程を設けることにより、生物処理工程における適切な脱窒処理と、消化処理工程における効率的な消化処理が実現できる。しかも、ろ過面が循環するフィルタであれば、沈澱池のような大きな設置面積を要することもない。
【0068】
処理水の窒素濃度が基準値より高い場合に、ろ過面の循環速度を上昇させ、処理水の窒素濃度が基準値より低い場合に、前記ろ過面の循環速度を低下させる。
【0069】
処理水の窒素濃度が基準値より高い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が上昇しているために脱窒効率が低下していると判断して、ろ過面の循環速度を上昇させることでろ過面に付着堆積する固形物層を薄くして微細なSS及びBODや溶解性のBODの固形物側への捕捉を抑制することで、低下した脱窒効率が迅速に改善されるようになる。
【0070】
また、処理水の窒素濃度が基準値より低い場合には、初期吸着処理におけるBODの除去率が低下しているために脱窒効率が上昇していると判断して、ろ過面の循環速度を低下させることでろ過面に付着堆積する固形物層を厚くして微細なSS及びBODや溶解性のBODの固形物側への捕捉を促進することで、脱窒効率を基準値に迅速に戻すことができるようになる。
【0071】
[水処理方法の第四の態様]
図4(a),(b)には、合流式下水道の下水を被処理水とする場合の例が示されている。
図4(a)は晴天時の水処理方法が示され、
図4(b)は雨天時の水処理方法が示されている。晴天時には、上述した水処理方法の第一の態様で被処理水が処理され、最大2Qの処理水が放流される。
【0072】
被処理水の流入量が増加する雨天時には、曝気装置10の汚泥濃度を引上げて初期吸着処理された汚泥の一部を沈殿槽44に導き、沈殿槽44で固液分離した処理水を消毒槽46で消毒した後に、膜分離装置43で濾過した処理水とともに河川などに放流することでピーク流量に対応することができる。この場合には、沈殿槽44で沈殿した汚泥とともに好気槽42の余剰汚泥を曝気装置10に送泥すればよい。
図4(b)に示した符号45は沈澱効率を向上させるための傾斜板である。
【0073】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
10:曝気装置
20:ろ過装置
30:消化処理装置
40:生物処理装置
50:送泥装置
60:調整装置
70:発電装置
100:水処理装置