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特開2020-203344心なし研削盤による研削方法及び心なし研削盤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203344(P2020-203344A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】心なし研削盤による研削方法及び心なし研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/30 20060101AFI20201127BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20201127BHJP
【FI】
   B24B5/30
   B24B41/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-112511(P2019-112511)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】391048245
【氏名又は名称】株式会社東振テクニカル
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】寺井 信之
(72)【発明者】
【氏名】長田 一馬
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034DD20
3C043AA08
3C043CC03
3C043DD01
3C043DD03
3C043DD05
(57)【要約】
【課題】 回転中の調整車の外周面に振れが生じている場合でも各ワークの仕上がり寸法を均一化できる心なし研削盤による研削方法及び心なし研削盤を提供する。
【解決手段】本発明の心なし研削盤による研削方法は、ワークWの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石102及び調整車104と、ワークの外周面を下方から支持するブレード20とを備える心なし研削盤による研削方法において、ワークの研削終了から次のワークの研削開始までの間に調整車を同位相で停止させることを特徴とする。研削開始時点での調整車の位相が常に一致するため、回転中の調整車の外周面104bに振れが生じている場合でも、各ワークは常に同じ程度だけ振れの影響を受けながら研削されていく。したがって、所定時間が経過して研削が終了した時点での各ワークの仕上がり寸法を同一にすることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤による研削方法において、
前記ワークの研削終了から次の前記ワークの研削開始までの間に前記調整車を同位相で停止させることを特徴とする心なし研削盤による研削方法。
【請求項2】
ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤による研削方法において、
前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットしてから、当該ワークの研削が終了し、次の前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットするまでのサイクルタイムをT1、前記調整車が1回転するのに要する時間をT2としたときに、T1=n×T2(nは1以上の整数)とすることを特徴とする心なし研削盤による研削方法。
【請求項3】
ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤において、
前記研削砥石及び前記調整車の駆動を制御する制御装置と、
前記調整車の回転位相を検出して位相信号を出力する位相検出装置を備えており、
前記制御装置は1つの前記ワークの研削終了から次の前記ワークの研削開始までの間に前記位相信号に基づいて前記調整車を同位相で停止させることを特徴とする心なし研削盤。
【請求項4】
ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤において、
前記研削砥石及び前記調整車の駆動を制御する制御装置を備えており、
1つの前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットしてから、当該ワークの研削が終了し、次の前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットするまでのサイクルタイムをT1、前記調整車が1回転するのに要する時間をT2としたときに、前記制御装置はT1=n×T2(nは1以上の整数)が成立するように前記研削砥石及び前記調整車の駆動を制御することを特徴とする心なし研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転中の調整車の外周面に振れが生じている場合でも各ワークの仕上がり寸法を均一化できる心なし研削盤による研削方法及び心なし研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状、円筒状等のワークの外周を研削する研削盤として、ワークの長手方向を前後方向とした場合に、ワークの外周面を研削砥石と調整車で左右方向から支持し、ワークレストに取り付けたブレードで下方から支持する心なし研削盤が知られている。
ワークの仕上がり寸法は研削砥石と調整車の間隔を調整することで行っているので、回転中の調整車の外周面に振れが生じるとワークの仕上がり寸法にばらつきが生じてしまう。調整車の外周面に振れが生じる原因としては例えば調整車の軸受部の不良、摩耗等による調整車の外周形状の歪み、調整車に対するドレッシングの不良等が挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には研削後の複数のワークの真円度を測定して将来の真円度の変化の程度、つまり真円度の予想曲線を求め、予想曲線が真円度の基準値を超えるときに調整車のドレッシングを行ない、調整車の外周形状の歪みを修正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−277384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では適当なタイミングで調整車のドレッシングを行うが、例えば調整車の内部組織の不均一性等が原因となって外周面に振れが生じない程度に調整車を正確にドレッシングすること自体が難しいという問題がある。また、調整車を正確にドレッシングしたとしても、例えば調整車の軸受部等の不良により回転軸心がずれて振れが生じることもある。
このように、回転中の調整車の外周面に振れが生じることは回避し難い現象であり、これに起因したワークの仕上がり寸法のばらつきを解消するのは容易ではない。
また、一般的に研削の終了後に切り込みを一定時間停止するスパークアウトにより所望の仕上がり寸法に仕上げている。そこで、例えば調整車が1回転するまでスパークアウトを継続することにすれば、調整車の外周面の振れに起因した仕上がり寸法のばらつきを抑制することができる。しかし、調整車が1回転するまでに数秒間要することが多く、数秒間スパークアウトするとサイクルタイムが延びてしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑み、回転中の調整車の外周面に振れが生じている場合でも各ワークの仕上がり寸法を均一化できる心なし研削盤による研削方法及び心なし研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の心なし研削盤による研削方法は、ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤による研削方法において、前記ワークの研削終了から次の前記ワークの研削開始までの間に前記調整車を同位相で停止させることを特徴とする。
本発明の心なし研削盤による研削方法は、ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤による研削方法において、前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットしてから、当該ワークの研削が終了し、次の前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットするまでのサイクルタイムをT1、前記調整車が1回転するのに要する時間をT2としたときに、T1=n×T2(nは1以上の整数)とすることを特徴とする。
【0008】
本発明の心なし研削盤は、ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤において、前記研削砥石及び前記調整車の駆動を制御する制御装置と、
前記調整車の回転位相を検出して位相信号を出力する位相検出装置を備えており、前記制御装置は1つの前記ワークの研削終了から次の前記ワークの研削開始までの間に前記位相信号に基づいて前記調整車を同位相で停止させることを特徴とする。
本発明の心なし研削盤は、ワークの外周面を左右方向から支持しながら軸回りに回転する研削砥石及び調整車と、ワークの外周面を下方から支持するブレードとを備える心なし研削盤において、前記研削砥石及び前記調整車の駆動を制御する制御装置を備えており、1つの前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットしてから、当該ワークの研削が終了し、次の前記ワークを前記ブレード上の所定位置にセットするまでのサイクルタイムをT1、前記調整車が1回転するのに要する時間をT2としたときに、前記制御装置はT1=n×T2(nは1以上の整数)が成立するように前記研削砥石及び前記調整車の駆動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
ワークの研削終了から次のワークの研削開始までの間に調整車を同位相で停止させておくことにすれば、研削開始時点での調整車の位相が常に一致するため、回転中の調整車の外周面に振れが生じている場合でも、各ワークは常に同じ程度だけ振れの影響を受けながら研削されていく。したがって、所定時間が経過して研削が終了した時点での各ワークの仕上がり寸法を同一にすることができる。従来のように調整車の外周面の振れを抑えるのではなく、本発明は各ワークに対して均等に振れの影響を与えることでワークの仕上がり寸法を同一にするという逆転の発想に基づくものである。
【0010】
また、T1=n×T2(nは整数)が成立するように研削砥石及び調整車の駆動を制御することにしてもよい。1回のサイクルタイムT1の間に調整車が整数回回転することにより各ワークの切削開始時点での調整車の位相が一致することになる。各ワークは常に同じ程度だけ調整車の振れの影響を受けながら研削され、切削終了時点での調整車の位相も一致する。したがって、サイクルタイムが経過して研削が終了した時点での各ワークの仕上がり寸法を同一にすることができる。この発明も同様に各ワークに対して均等に振れの影響を与えることでワークの仕上がり寸法を同一にするという逆転の発想に基づくものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】心なし研削盤の正面図
図2】心なし研削盤の構成の一部を示すブロック図
図3】研削中のワーク、研削砥石、調整車及びブレードを示す部分拡大図
図4】調整車の外周面に振れが生じている状態を示す部分拡大図
図5】ワークをブレード上の所定位置にセットしてから、研削が終了し、次のワークをセットするまでのサイクルタイムを示す図(a)〜(e)
図6】ワークをブレード上の所定位置にセットしてから、研削が終了し、次のワークをセットするまでのサイクルタイムを示す図(a)〜(d)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
本発明の心なし研削盤の第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように心なし研削盤100はベッド101上に研削砥石102、研削砥石台103、調整車104、調整車台105、ブレード20、ワークレスト10、研削砥石102にドレッシングを行うドレス装置106、調整車104用のドレス装置107、研削砥石台103を移動させる送り装置108、調整車台105を移動させる送り装置109等を備えている。周知技術であるため詳細な説明は省略するが、研削作業はまず送り装置108,109を駆動して研削砥石台103及び調整車台105を適宜移動させ、研削砥石102と調整車104でワークWを左右から支持し、ワークレスト10のブレード20の高さを調節してワークWを下方から支持する。そして、研削砥石102と調整車104を軸回りに回転させてワークWを研削加工する。研削加工終了後はワークWを取り出して次のワークWを供給する。ワークWの供給/排出方式はどのようなやり方でも構わない。
【0013】
図2に示すように心なし研削盤100は更に位相検出装置200、制御装置201、モータ202,203、ドライバ204、記憶装置205等を備えている。
位相検出装置200は調整車104の回転位相を検出して制御装置201に位相信号を出力する。回転位相の検出方法は特に限定されるものではなく周知の方法を使用できるが例えば図3に示すように調整車104の回転軸104aの一部や軸受部にドグ206を付けておき、このドグ206の位置を近接センサで読み取る方法が挙げられる。図4には回転中に外周面104bに振れが生じている調整車104を2点鎖線で示している。
制御装置201はドライバ204及びモータ203を介して調整車104の駆動を制御するために設けられる。制御装置201が心なし研削盤100を構成する他の機構、例えば上記研削砥石台103、調整車台105、ドレス装置106,107等の駆動も制御することにしてもよい。
詳しい説明は後述するが、制御装置201はワークWの研削終了から次のワークWの研削開始までの間に位相信号に基づいて調整車104を同位相で停止させておく。調整車104を同位相で停止させるためには高度な制御が必要になるため、モータ203としてACサーボモータを使用するのが好ましい。
【0014】
次に本発明の心なし研削盤100の研削方法について説明する。
心なし研削盤100では図5(a)に示すように1つのワークW1をブレード20上の所定位置にセットしてから、図5(b)に示すように当該ワークW1の研削を開始し、図5(c)に示すように研削が終了し、図5(e)に示すように次のワークW2をブレード20上の所定位置にセットする。なお、図5(a)と(e)は同じ状態を表している。
1つのワークW1の研削が終了して次のワークW2が供給されて研削が開始されるまでの間(図5(c)から図5(e)までの間)に、図5(d)に示すように制御装置201は位相検出装置200から出力される位相信号に基づいてACサーボモータ203の駆動を制御して調整車104を同位相まで回転させて停止させておく。調整車104の回転軸の一部にドグ206を付ける場合、ドグ206が常に同じ位置(例えば12時の位置)になるように調整車104を回転させて停止させておく。
各ワークW1,W2の研削開始時点での調整車104の位相が常に一致しているため、図4に示すように回転中の調整車104の外周面104bに振れが生じている場合でも、各ワークW1,W2は常に同じ程度だけ振れの影響を受けながら研削されていくので、所定時間が経過して研削が終了した時点(図5(c))では各ワークW1,W2の仕上がり寸法は同一になる。
【0015】
[第2の実施の形態]
本発明の心なし研削盤及びその研削方法の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、図6に示すように研削砥石102及び調整車104は1つのワークW3の研削が終了した後も回転し続け、そのまま次のワークW4の研削作業に入る。
図6(a)に示すように1つのワークW3をブレード20上の所定位置にセットしてから、図6(b)に示すように当該ワークW3の研削を開始し、図6(c)に示すように研削が終了し、図6(d)に示すように次のワークW4をブレード20上の所定位置にセットするまでのサイクルタイムをT1(s)、調整車104が1回転するのに要する時間をT2(s)としたときに、T1=n×T2(nは1以上の整数)が成立するように研削砥石102及び調整車104の駆動を制御する。なお、図6(a)と(d)は同じ状態を表している。
【0016】
本実施の形態では1回のサイクルタイムT1の間に調整車104がn回(整数回)回転することになる。これにより各ワークW3,W4の研削開始時点での調整車104の位相が一致することになる。各ワークW3,W4は常に同じ程度だけ調整車104の振れの影響を受けながら研削され、研削終了時点での調整車104の位相も一致する。したがって、サイクルタイムT1が経過して研削が終了した時点では各ワークW3,W4の仕上がり寸法は同一になる。
本実施の形態の場合、1つのワークW3の研削が完了してから次のワークW4の研削を開始するまでの間、調整車104を回転させ続けるので、上記第1の実施の形態と比較して調整車104を駆動するためにACサーボモータ203のような高価なモータを使用する必要がないというメリットがある。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、回転中の調整車の外周面に振れが生じている場合でも各ワークの仕上がり寸法を均一化できる心なし研削盤による研削方法及び心なし研削盤に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
T1 サイクルタイム
T2 調整車が1回転するのに要する時間
W,W1〜W4 ワーク
10 ワークレスト
20 ブレード
100 心なし研削盤
101 ベッド
102 研削砥石
103 研削砥石台
104 調整車
104a 回転軸
104b 外周面
105 調整車台
106,107 ドレス装置
108,109 送り装置
200 位相検出装置
201 制御装置
202,203 モータ
204 ドライバ
205 記憶装置
206 ドグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6