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特開2020-203348ロボット制御装置、及びロボット制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203348(P2020-203348A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】ロボット制御装置、及びロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20201127BHJP
   B23K 9/127 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   B25J13/08 A
   B23K9/127 508A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-112798(P2019-112798)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 祥
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS13
3C707BS14
3C707DS01
3C707KS07
3C707KS36
3C707KV11
3C707KX07
3C707LT07
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】より精度の高い線倣い作業を実現できるロボット制御装置を提供する。
【解決手段】ロボット制御装置1は、教示データが記憶される記憶部11と、作業ツール4、及び作業ツール4に装着され、作業ツール4の作業に先行して作業対象物の形状を検出するレーザセンサ5を備えたロボット2から、レーザセンサ5によるセンシング結果を受け付ける受付部12と、教示データに基づいて作業ツール4を移動させ、センシング結果に基づいて作業ツール4の移動を補正すると共に、センシング結果によって示される作業点が、レーザセンサ5の視野範囲の中心となるようにツール軸周りの角度を調整する制御部14とを備える。このようにして、レーザセンサ5の視野範囲の中心付近において作業線を検出できるため、より精度の高い検出が可能となり、その結果、線倣い作業の精度が向上することになる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
教示データが記憶される記憶部と、
作業ツール、及び当該作業ツールに装着され、当該作業ツールの作業に先行して作業対象物の形状を検出するレーザセンサを備えたロボットであって、前記作業ツールのツール軸周りの角度を調整可能なロボットから、前記レーザセンサによるセンシング結果を受け付ける受付部と、
前記教示データに基づいて前記作業ツールを移動させ、前記センシング結果に基づいて前記作業ツールの移動を補正すると共に、前記センシング結果によって示される作業点が、前記レーザセンサの視野範囲の中心となるように前記ツール軸周りの角度を調整する制御部と、を備えたロボット制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記センシング結果によって示される作業点が、前記レーザセンサの視野範囲の中心となるように、積分動作を含むフィードバック制御を行う、請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御は、PID制御である、請求項2記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ツール軸周りの角度の調整において、あらかじめ設定された上限までの範囲内で角度の調整を行う、請求項1から請求項3のいずれか記載のロボット制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか記載のロボット制御装置と、
当該ロボット制御装置によって制御される前記ロボットと、を備えたロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザセンサのセンシング結果に基づいて作業ツールを移動させるロボット制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットによる溶接中、ワークの熱歪みによって狙い位置がずれ、溶接欠陥が発生することがある。そこで、レーザセンサによって継手の位置を検出し、ロボットによる狙い位置補正(溶接線倣い)を行うことによって、位置ずれを解消している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−129217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レーザセンサの視野範囲には制限があるため、作業線が曲率の大きい曲線である場合には、作業線が視野範囲から外れて線倣い作業を継続できなくなることがある。なお、レーザセンサの視野範囲とは、レーザセンサによって形状を検出できる範囲(センシング範囲)である。例えば、レーザセンサの視野範囲は、レーザセンサによってレーザが照射される線状の範囲であってもよい。
【0005】
なお、上記特許文献1では、ツールの位置において、作業線(溶接線)の接線と、ツールとレーザセンサとを結ぶ直線との角度γが所定の値になるように制御することができる。しかしながら、ツールの位置における角度γを制御しているため、例えば、曲率が一定である曲線の作業線に沿って、γが0となるように倣い作業を行う場合には、視野範囲が曲線の外側にずれることになる。すなわち、視野範囲の周辺付近において作業線の位置を検出して倣い作業を行うことになる。レーザセンサは、通常、視野範囲の中心付近の精度が高く、周辺付近の精度が低いという特性があるため、視野範囲の周辺付近において作業線の位置を検出して倣い作業を行う場合には、それだけ精度の低い倣い作業になるという問題があった。また、作業線の曲率が大きい場合には、作業線が視野範囲から外れる可能性もあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、レーザセンサによるセンシング結果を用いて線倣い作業を行う場合に、作業線がレーザセンサの視野範囲から外れないようにできると共に、より精度の高い線倣い作業を行うことができるロボット制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるロボット制御装置は、教示データが記憶される記憶部と、作業ツール、及び作業ツールに装着され、作業ツールの作業に先行して作業対象物の形状を検出するレーザセンサを備えたロボットであって、作業ツールのツール軸周りの角度を調整可能なロボットから、レーザセンサによるセンシング結果を受け付ける受付部と、教示データに基づいて作業ツールを移動させ、センシング結果に基づいて作業ツールの移動を補正すると共に、センシング結果によって示される作業点が、レーザセンサの視野範囲の中心となるようにツール軸周りの角度を調整する制御部と、を備えたものである。
このような構成により、溶接線等の作業線がレーザセンサの視野範囲の中心となるように線倣い作業を行うことができるため、作業線の曲率が大きい曲線である場合であっても、作業線が視野範囲から外れないようにすることができる。また、レーザセンサの最も精度の高い領域で作業線の位置を検出できるため、より精度の高い線倣い作業を実現することができる。
【0008】
また、本発明によるロボット制御装置では、制御部は、センシング結果によって示される作業点が、レーザセンサの視野範囲の中心となるように、積分動作を含むフィードバック制御を行ってもよい。
このような構成により、曲率が一定の曲線である作業線に対して線倣い作業を行う場合において、その作業線がレーザセンサの視野範囲の中心となるようにするためのフィードバック制御の追従性を高めることができる。
【0009】
また、本発明によるロボット制御装置では、フィードバック制御は、PID制御であってもよい。
このような構成により、フィードバック制御に微分動作が含まれるようになる。したがって、作業線の曲率が大きく変化する場合(例えば、曲率の正負が入れ替わるような場合)において、作業線がレーザセンサの視野範囲の中心となるようにするためのフィードバック制御の追従性を高めることができる。
【0010】
また、本発明によるロボット制御装置では、制御部は、ツール軸周りの角度の調整において、あらかじめ設定された上限までの範囲内で角度の調整を行ってもよい。
このような構成により、あらかじめ決められた範囲内での角度調整が行われることになり、例えば、急激な角度調整に起因する不具合が発生しないようにすることができる。
【0011】
また、本発明によるロボット制御システムは、ロボット制御装置と、ロボット制御装置によって制御されるロボットと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるロボット制御装置等によれば、作業線がレーザセンサの視野範囲の中心となるようにツール軸周りの角度を調整するため、作業線の曲率が大きい場合であっても、作業線が視野範囲から外れないようにすることができると共に、より精度の高い線倣い作業を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態によるロボット制御装置の構成を示す模式図
図2】同実施の形態によるロボット制御装置の動作を示すフローチャート
図3】同実施の形態におけるレーザセンサのセンシング結果の一例を示す図
図4】同実施の形態におけるツール軸周りの角度調整について説明するための図
図5】従来の線倣い作業における課題について説明するための図
図6】従来例の線倣い作業と本実施の形態による線倣い作業とを比較するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるロボット制御システム、及びロボット制御装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるロボット制御装置は、線倣い作業において、作業線がレーザセンサの視野範囲の中心となるようにツール軸周りの角度を調整するものである。
【0015】
図1は、本実施の形態によるロボット制御システム100の構成を示すブロック図である。本実施の形態によるロボット制御システム100は、ロボット制御装置1と、ロボット2と、溶接電源3とを備える。
【0016】
ロボット制御装置1は、ロボット2及び溶接電源3を制御する。ロボット2は、モータによって駆動される関節によって連結された複数のアームを有するマニピュレータを有しており、そのマニピュレータの先端に、作業ツール4と、作業ツール4の作業に先行して作業対象物(ワーク)6の形状を検出するレーザセンサ5とを有している。ロボット2は、作業ツール4のツール軸周りの角度を調整可能であるとする。ツール軸は、例えば、作業ツール4の先端部分の長手方向の軸であってもよい。作業ツール4が溶接トーチである場合には、ツール軸は、例えば、作業ツール4の先端部分における溶接ワイヤの長手方向の軸であってもよい。また、レーザセンサ5は、作業ツール4に装着されているものとする。したがって、作業ツール4のツール軸周りの角度を調整することによって、レーザセンサ5のセンシング範囲を、作業ツール4のツール軸を中心として回転させることができる。ロボット2は、特に限定されるものではないが、例えば、垂直多関節ロボットであってもよい。ロボット2が垂直多関節ロボットである場合に、軸数は問わないが、6軸であってもよく、または、7軸以上であってもよい。作業ツール4の姿勢を変更せずに、作業ツール4のツール軸周りの角度を調整できるようにするためには、ロボット2は、冗長解を用いることができる7軸以上の垂直多関節ロボットであることが好適である。また、ロボット2のマニピュレータは、例えば、作業ツール4をツール軸周りに回転させることができる回転軸を有していてもよい。
【0017】
レーザセンサ5は、作業対象物6にライン状のレーザ光を照射し、そのレーザ光を撮像することによって作業対象物6までの複数のサンプリング点の距離を測定するレーザセンサであってもよい。また、レーザセンサ5は、ライン状に走査を行うことによって作業対象物6までの複数のサンプリング点の距離を測定する走査型のレーザセンサであってもよい。作業対象物6に照射されたライン状のレーザ光、または作業対象物6に照射されたレーザ光の照射点のライン状の軌跡を、以下、照射ラインと呼ぶことがある。その照射ラインは通常、直線状である。レーザセンサ5によって、例えば、開先などの溶接箇所の形状を取得することができる。なお、本実施の形態では、作業ツール4が溶接トーチであり、作業ツール4によって行われる作業が溶接である場合について主に説明する。また、作業ツール4やレーザセンサ5を備えたロボット2の構成はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0018】
溶接電源3は、溶接で用いられる高電圧を作業ツール(溶接トーチ)4とワーク6とに供給する。また、溶接に溶接ワイヤが用いられる場合には、溶接電源3は、溶接ワイヤの送給に関する制御を行ってもよい。なお、溶接電源3の構成はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0019】
ロボット制御装置1は、レーザセンサ5によるセンシング結果に基づいて、倣い作業を行うようにロボット2を制御するものであり、図1で示されるように、記憶部11と、受付部12と、メモリ13と、制御部14とを備える。
【0020】
記憶部11には、教示データが記憶される。教示データによって、ロボット2の作業ツール4の移動経路(例えば、位置や姿勢等)が示されるものとする。なお、教示データには、溶接の開始点や終了点、溶接電流や溶接電圧等の溶接条件に関する情報が含まれていてもよい。
【0021】
記憶部11に情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して情報が記憶部11で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された情報が記憶部11で記憶されるようになってもよく、または、入力デバイスを介して入力された情報が記憶部11で記憶されるようになってもよい。例えば、ロボット制御装置1に接続されたティーチングペンダント等を用いて入力された教示データが記憶部11で記憶されてもよい。記憶部11での記憶は、RAM等における一時的な記憶でもよく、または、長期的な記憶でもよい。記憶部11は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスクなど)によって実現されうる。
【0022】
受付部12は、ロボット2から、レーザセンサ5によるセンシング結果を受け付け、そのセンシング結果に応じた情報をメモリ13に蓄積する。メモリ13に蓄積される情報は、所定の周期ごとの情報であってもよい。レーザセンサ5によるセンシング結果は、例えば、作業対象物6における照射ライン上の複数の点に関する高さ方向の距離(例えば、レーザセンサ5から作業対象物6までの距離)であってもよい。センシング結果は、2次元または3次元の撮像センサ(例えば、CCDアレイ等)によって取得されてもよい。センシング結果は、通常、作業対象物6の形状を示す複数のサンプリング点の情報であるため、受付部12は、そのようなセンシング結果から、作業対象物6の形状を作成し、その作成した形状を用いて、作業ツール4によって作業が行われる位置、例えば、作業線(溶接線)の位置を取得してもよい。その位置を、以下、特徴点の位置と呼ぶこともある。例えば、重ね継手の溶接を行う場合には、センシング結果によって示される段差部の位置が特徴点の位置となる。また、例えば、突き合わせ継手の溶接を行う場合には、センシング結果によって示される開先の位置が特徴点の位置となる。
【0023】
また、センシング結果は、レーザセンサ5の座標系における位置を示すものであるため、受付部12は、その座標系における位置を、所定の基準座標系における位置に変換してもよい。その基準座標系は、例えば、ロボット2の座標系であってもよい。そのため、受付部12は、制御部14から作業ツール4の基準座標系における位置及び姿勢を受け取り、その受け取った位置及び姿勢とセンシング結果とを用いて、基準座標系における特徴点の位置を取得してもよい。なお、作業ツール4の姿勢には、ツール軸周りの角度が含まれていてもよい。メモリ13に蓄積される、センシング結果に応じた情報は、例えば、この基準座標系における特徴点の位置を示す情報であってもよく、センシング結果そのものであってもよく、センシング結果に応じたその他の情報であってもよい。本実施の形態では、センシング結果に応じた情報が、基準座標系における特徴点の位置を示す情報である場合について主に説明する。また、後述するツール軸周りの角度調整において用いる場合には、例えば、レーザセンサ5の座標系における特徴点の位置を示す情報もメモリ13に蓄積されてもよい。
【0024】
メモリ13では、倣い作業で用いられる情報が一時記憶される。具体的には、メモリ13には、前述のように、センシング結果に応じた情報が記憶される。
【0025】
制御部14は、記憶部11で記憶されている教示データに基づいて作業ツール4を移動させると共に、レーザセンサ5によるセンシング結果に基づいて作業ツール4の移動を補正する。センシング結果に基づいた作業ツール4の移動の補正は、メモリ13で記憶されているセンシング結果に応じた情報を用いて行われてもよい。このようにして、いわゆる倣い補正が行われることになる。より具体的には、制御部14は、作業ツール4の移動に先行して、教示データに基づいて、作業ツール4の目標位置及び目標姿勢を算出する。その目標位置及び目標姿勢の算出は、例えば、教示データに含まれる教示位置や教示姿勢を補間することによって行われてもよい。この算出された目標位置や目標姿勢によって、作業ツール4の移動に関する情報、すなわち作業ツール4の位置及び姿勢の時間変化が示されることになる。また、制御部14は、例えば、ロボット2のマニピュレータのエンコーダ等から読み出された各関節の角度に基づいて、作業ツール4の現在の位置及び姿勢を算出する。この情報は、上記のように、受付部12に渡されてもよい。また、制御部14は、メモリ13からセンシング結果に応じた情報を読み出し、その読み出した情報に応じて、作業ツール4の目標位置及び目標姿勢を算出し、教示データから算出した目標位置及び目標姿勢を、センシング結果に応じた情報から算出した目標位置及び目標姿勢に置き換えてもよい。なお、現在の位置及び姿勢から、センシング結果に応じた情報に基づいて算出された目標位置及び目標姿勢まで移動させることが困難な場合(例えば、位置や姿勢の変化があらかじめ決められた閾値以上の変化となる場合など)には、教示データに基づいて算出された目標位置及び目標姿勢と、センシング結果に応じた情報に基づいて算出された目標位置及び目標姿勢との間の目標位置及び目標姿勢が新たに生成され、教示データに基づいて算出された目標位置及び目標姿勢が、その新たに生成された情報に置き換えられてもよい。また、制御部14は、作業ツール4の現在の位置及び姿勢と、目標位置及び目標姿勢とを用いて、作業ツール4が目標位置及び目標姿勢となるようにロボット2を制御してもよい。このようにして、倣い補正が行われる。なお、作業ツール4のツール軸周りの角度の制御については後述する。また、結果として、センシング結果に基づいて倣い補正が行われるのであれば、上記した以外の方法によって倣い補正が行われてもよい。また、倣い補正についてはすでに公知であるため、その詳細な説明を省略する。また、制御部14は、センシング結果に応じた情報をメモリ13から読み出した場合に、その情報をメモリ13から削除してもよい。また、制御部14は、教示データに基づいて、溶接の開始や終了を溶接電源3に指示してもよく、また、溶接条件を溶接電源3に出力してもよい。
【0026】
なお、上記した線倣い作業では、目標姿勢に応じた制御が行われるが、その目標姿勢に応じて決まるのは、ワーク6に対する作業ツール4の角度、例えば、狙い角と前進後退角である。ここで、狙い角は、作業線を含む基準平面と、作業線及び作業ツール4の長手方向軸線(例えば、溶接ワイヤ等の作業ツール4の先端部分の長手方向軸線であってもよい)を含む平面とのなす角度であってもよい。また、前進後退角は、作業線と作業ツール4の長手方向軸線とを含む平面における、作業線の法線と作業ツール4の長手方向軸線とのなす角度であってもよい。したがって、ツール軸周りの角度は、目標姿勢と独立して変化させることができるため、制御部14は、センシング結果によって示される作業点が、レーザセンサ5の視野範囲の中心となるようにツール軸周りの角度を調整する。作業点とは、作業ツール4によって作業が行われる点であり、溶接線などの作業線上の点である。例えば、作業線と、レーザセンサ5の照射ラインとの交点が作業点となる。本実施の形態では、上記の特徴点が作業点である場合について説明する。
【0027】
図3は、レーザセンサ5によるセンシング結果の一例を示す図である。図3において、照射ラインの延びる方向を左右方向と呼ぶものとする。図3では、レーザセンサ5によって取得された複数のサンプリング点の位置に基づいて推定された作業対象物6の形状を近似直線で示している。また、その近似直線で示される作業対象物6の形状において、段差部の箇所のレーザセンサ5に近い側の角を特徴点としている。したがって、例えば、メモリ13で記憶されている情報によって、この特徴点の位置が示されることになる。レーザセンサ5の視野範囲において、原点を図3で示されるように取ると、制御部14は、メモリ13で記憶されている情報を用いて、原点から特徴点までの左右方向の長さYdを取得することができる。制御部14は、例えば、基準座標系における原点の位置と特徴点の位置とを用いて長さYdを取得してもよい。また、原点から視野範囲の中心線までの左右方向長さYcは、あらかじめ決まっているため、制御部14は、次式によって、視野範囲の中心から特徴点までの左右方向の距離Dを取得することができる。なお、図3において、特徴点が視野範囲の中心線よりも右側に存在する場合には距離Dは正の値となり、左側に存在する場合には距離Dは負の値となる。
D=Yd−Yc
【0028】
制御部14は、この距離Dが0になるように、ツール軸周りの角度を調整すればよいことになる。図4は、そのツール軸周りの角度の調整について説明するための図である。図4は、作業ツール4のツール軸が紙面に垂直な方向となるように、作業ツール4や、レーザセンサ5の照射ライン、作業線等を示した図である。先見距離Lは、作業ツール4の先端の位置と、レーザセンサ5のレーザ照射位置との距離である。作業ツール4の先端とレーザセンサ5の視野範囲の中心線(照射ラインの中心)とを結ぶ直線LN1と、作業ツール4の先端とセンシング結果に応じた特徴点(作業点)とを結ぶ直線LN2とのなす角度をeとすると、角度eは、先見距離Lと、視野範囲の中心から作業点までの距離Dとを用いて、次式のように算出することができる。なお、特徴点が、作業ツール4の先端とレーザセンサ5の視野範囲の中心線とを結ぶ直線よりも上側に存在する場合には、角度eは負の値となる。
e=tan−1(D/L)
【0029】
その角度eは、センシングによって検出された作業点が視野範囲の中心からずれていることに応じた角度のずれを示すものであるため、ずれ角度eと呼ぶこともある。したがって、制御部14は、ずれ角度eが0になるように、作業ツール4のツール軸周りの角度を制御するものとする。作業ツール4をツール軸周りに回転させることによって、照射ライン(視野範囲)は、図4の矢印Aまたは矢印Bの方向に移動する。したがって、図4においては、ずれ角度eを0にする方向に、すなわち、照射ラインが矢印Aの方向に移動するように、作業ツール4をツール軸周りに回転させればよいことになる。その制御により、センシング結果によって示される作業点が、レーザセンサ5の視野範囲の中心となるようにツール軸周りの角度が調整されることになる。なお、制御部14は、センシング結果によって示される作業点が、レーザセンサ5の視野範囲の中心となるようにフィードバック制御を行ってもよい。具体的には、ずれ角度eを0にするフィードバック制御が行われてもよい。
【0030】
そのフィードバック制御の内容は問わないが、例えば、比例動作を含んでいてもよい。また、そのフィードバック制御は、例えば、積分動作を含んでいてもよい。積分動作を含むフィードバック制御は、例えば、PI制御や、PID制御であってもよい。積分動作が含まれることによって、曲率が一定である曲線である作業線に対して線倣い作業を行う場合であっても、その作業線がレーザセンサ5の視野範囲の中心となるようにするためのフィードバック制御の追従性を高めることができる。また、そのフィードバック制御は、例えば、微分動作を含んでいてもよい。微分動作を含むフィードバック制御は、例えば、PID制御であってもよい。微分動作が含まれることによって、作業線の曲率が大きく変化する場合(例えば、蛇行している曲線のように、曲率の正負が入れ替わるような場合)であっても、作業線がレーザセンサ5の視野範囲の中心となるようにするためのフィードバック制御の追従性を高めることができる。
【0031】
制御部14は、ツール軸周りの角度の調整において、あらかじめ設定された上限までの範囲内で角度の調整を行ってもよい。その上限は、例えば、1回の回転における角度の上限(すなわち、1回の制御における角度の変化量に関する上限)であってもよい。そのような上限を設けることによって、ツール軸周りの急激な角度変化がない、滑らかな角度調整を行うことができるようになる。また、その上限は、例えば、累積の角度の上限であってもよい。そのような上限を設けることによって、ツール軸周りの角度が、機械的に不可能な角度となることを防止でき、ロボット2のマニピュレータのモータ等が損傷することを防止することができる。
【0032】
ここで、制御部14によって角度eが0になるようにツール軸周りの角度が調整されることによる効果について説明する。図5は、そのようなツール軸周りの角度調整を行わない従来例による線倣い作業を示す図である。ツール軸周りの角度調整を行わない場合には、図5(a)で示されるように、作業線(溶接線)の直線的な箇所の作業(溶接)においては、レーザセンサの視野範囲内に作業線が含まれることになり、適切な線倣い作業を行うことができる。一方、図5(b)で示されるように、作業線の曲率の大きい箇所になると、作業線が視野範囲から外れることになり、線倣い作業を継続できなくなるという問題があった。一方、本実施の形態によるロボット制御装置1のように、制御部14によって、角度eが0となるように作業ツール4をツール軸周りに回転させることによって、作業線が、レーザセンサ5の視野範囲の中心となるようにすることができる。その結果、作業線の曲率が大きい箇所になっても、作業線が視野範囲から外れることを防止することができ、線倣い作業を継続できるようになるというメリットがある。
【0033】
なお、上記特許文献1の手法においても、作業ツールの位置における角度γを適宜、設定することによって、レーザセンサの視野範囲が作業線に追従するようにすることができる。しかしながら、上記したように、特許文献1では、ツールの位置において、作業線(溶接線)の接線と、ツールとレーザセンサとを結ぶ直線との角度γが所定の値になるように制御する。そのため、図6(a)で示されるように、曲率が一定である作業線(溶接線)について、γが0となるように線倣い作業を行う場合には、レーザセンサの視野範囲の周辺付近において作業線の位置を検出することになる。上記のように、レーザセンサによるセンシングの精度は、視野範囲の中心付近の方が高いため、視野範囲の周辺付近で作業線を検出した場合には、それだけ精度が低くなる。一方、本実施の形態によるロボット制御装置1においては、図6(b)で示されるように、レーザセンサ5の視野範囲の中心に作業線が位置するように、作業ツール4のツール軸周りの角度を制御することができる。そのため、より精度の高い視野範囲の中心付近において作業線の位置を検出することができ、従来例(特許文献1)よりも精度の高い線倣い作業を実現することができるようになる。また、本実施の形態によるロボット制御装置1では、レーザセンサ5の視野範囲の中心に作業線が位置するように制御されるため、その後、作業線が視野範囲のどちら側にずれたとしても、作業線に容易に追従することができる。
【0034】
なお、記憶部11と、メモリ13とは、通常、異なる記録媒体によって実現されるが、そうでなくてもよい。例えば、記録媒体におけるある領域が記憶部11として用いられ、他の領域がメモリ13として用いられてもよい。
【0035】
次に、ロボット制御装置1の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受付部12は、センシング結果を受け付けるかどうか判断する。そして、センシング結果を受け付ける場合には、レーザセンサ5からのセンシング結果を受け付けてステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS104に進む。例えば、受付部12は、センシング結果を受け付けると所定の周期ごとに判断してもよい。
【0036】
(ステップS102)受付部12は、レーザセンサ5から受け付けたセンシング結果に応じた情報を取得する。この情報は、例えば、基準座標系における特徴点(作業点)の位置を示す情報であってもよい。
【0037】
(ステップS103)受付部12は、ステップS102で取得した情報をメモリ13に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。
【0038】
(ステップS104)制御部14は、作業ツール4を移動させるかどうか判断する。そして、作業ツール4を移動させる場合には、ステップS105に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、制御部14は、例えば、作業ツール4を移動させると定期的に判断してもよい。
【0039】
(ステップS105)制御部14は、メモリ13で記憶されている情報を用いて、レーザセンサ5の視野範囲の中心から、作業点(特徴点)までの距離Dを取得する。
【0040】
(ステップS106)制御部14は、ステップS105で取得した距離Dを用いて、作業ツール4のツール軸周りのずれ角度eを算出する。
【0041】
(ステップS107)制御部14は、記憶部11で記憶されている教示データ、及びメモリ13で記憶されているセンシング結果に応じた情報に基づいて、作業ツール4の移動の制御を行う。また、制御部14は、ステップS106で算出したずれ角度eが0になるように、ツール軸周りの角度を調整するための制御を行う。この制御に応じて、ロボット2の作業ツール4が、目的位置及び目的姿勢に移動されることになる。また、作業線がレーザセンサ5の視野範囲の中心となるように制御されることになる。さらに、制御部14は、作業ツール4の作業に関する制御を行ってもよい。具体的には、制御部14は、溶接電源3を制御することによって、溶接の開始や終了、溶接電圧や溶接電流等を制御してもよい。そして、ステップS101に戻る。ステップS107の処理が繰り返されることによって、作業対象物6に対する一連の作業が行われることになる。
【0042】
なお、図2のフローチャートにおいて、ステップS105,S106は、新たなセンシング結果が受け付けられない限り、同じ結果にしかならないため、例えば、ステップS104において作業ツール4を移動させると判断する周期の方が、センシングの周期よりも短い場合には、新たなセンシングが行われたときにのみ、ステップS105,S106の処理を行い、そうでないときには、過去の算出結果を用いるようにしてもよい。また、図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。また、図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。例えば、作業ツール4による一連の作業が終了した際には、図2のフローチャートにおける処理は終了してもよい。
【0043】
以上のように、本実施の形態によるロボット制御装置1によれば、作業線がレーザセンサ5の視野範囲の中心となるように線倣い作業を行うことができる。したがって、作業線の曲率が大きい場合であっても、作業線が視野範囲から外れないようにすることができる。また、レーザセンサ5の視野範囲の中心付近は、センシングの精度が最も高いため、作業線の位置をより精度高く検出することができ、その結果、より精度の高い倣い作業を実現することができる。また、溶接等の作業においては、作業ツール4の位置や姿勢が作業に応じて決まることになるが、その姿勢に関する制約は、狙い角や前進後退角に関するものであり、通常、ツール軸周りの角度は狙い角や前進後退角と独立して制御することができる。したがって、本実施の形態によるロボット制御装置1は、作業の精度を落とすことなく、作業線がレーザセンサ5の視野範囲の中心となるように、作業ツール4のツール軸周りの角度を調整することができるようになる。
【0044】
また、上記実施の形態では、倣い作業が溶接である場合について説明したが、倣い作業は、溶接以外の作業であってもよい。溶接以外の倣い作業は特に限定されるものではないが、例えば、シーリングやバリ取りなどの線倣い作業を挙げることができる。倣い作業がシーリングである場合には、作業ツールは、シーリングガン(コーキングガン)等であってもよい。また、倣い作業がバリ取りである場合には、作業ツールは、バリ取りユニット等であってもよい。なお、倣い作業が溶接でない場合には、ロボット制御システム100は、溶接電源3を備えていなくてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0048】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0049】
また、上記実施の形態において、ロボット制御装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0050】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0051】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上より、本発明によるロボット制御装置等によれば、より精度の高い線倣い作業を実現できるという効果が得られ、線倣い作業を行うロボットを制御するロボット制御装置等として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 ロボット制御装置、2 ロボット、4 作業ツール、5 レーザセンサ、6 作業対象物(ワーク)、11 記憶部、12 受付部、14 制御部、100 ロボット制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6