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特開2020-203390インクジェット画像形成装置および膜厚検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203390(P2020-203390A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】インクジェット画像形成装置および膜厚検査方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20201127BHJP
【FI】
   B41J2/01 121
   B41J2/01 123
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
   B41J2/01 127
   B41J2/01 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-111128(P2019-111128)
(22)【出願日】2019年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒須 重隆
(72)【発明者】
【氏名】間宮 佑介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】徳竹 伸也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芽衣
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB06
2C056EB29
2C056EC06
2C056EC26
2C056EC28
2C056FD13
2C056HA42
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】転写体に担持されるインクの転写性を確保することが可能なインクジェット画像形成装置および膜厚検査方法を提供する。
【解決手段】インクジェット画像形成装置は、インクジェットヘッドから転写体に吐出されたインクを転写部で記録媒体に転写するインクジェット画像形成装置であって、転写体の移動方向におけるインクジェットヘッドの上流で転写体にプレコート剤を供給するプレコート剤供給部と、転写体の表面処理を行う表面処理部と、移動方向におけるインクジェットヘッドの下流かつ転写部の上流で、プレコート剤供給部から供給された転写体上のプレコート剤の厚みを転写時コート膜厚として検出する厚み検出部と、検出された転写時コート膜厚に応じて表面処理部の動作を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドから転写体に吐出されたインクを転写部で記録媒体に転写するインクジェット画像形成装置であって、
前記転写体の移動方向における前記インクジェットヘッドの上流で前記転写体にプレコート剤を供給するプレコート剤供給部と、
前記転写体の表面処理を行う表面処理部と、
前記移動方向における前記インクジェットヘッドの下流かつ前記転写部の上流で、前記プレコート剤供給部から供給された前記転写体上の前記プレコート剤の厚みを転写時コート膜厚として検出する厚み検出部と、
検出された前記転写時コート膜厚に応じて前記表面処理部の動作を制御する制御部と、
を備えるインクジェット画像形成装置。
【請求項2】
前記転写体上の前記プレコート剤の厚みが正常範囲内であるか否かを判定する判定部を有し、
前記厚み検出部は、前記移動方向における前記プレコート剤供給部の下流かつ前記インクジェットヘッドの上流で、前記転写体上の前記プレコート剤の厚みをインク吐出時コート膜厚として検出し、
前記制御部は、前記インク吐出時コート膜厚が正常範囲内であり前記転写時コート膜厚が正常範囲内でないと判定された場合、前記表面処理部に前記転写体の前記表面処理を実行させる、
請求項1に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項3】
前記厚み検出部は、前記移動方向における前記プレコート剤供給部の下流かつ前記インクジェットヘッドの上流で、前記転写体上の前記プレコート剤の厚みをインク吐出時コート膜厚として検出し、
前記制御部は、前記インク吐出時コート膜厚と前記転写時コート膜厚との差分が閾値を超えている場合、前記表面処理部に前記転写体の前記表面処理を実行させる、
請求項1に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項4】
前記差分は、前記転写体上の同一部分における前記インク吐出時コート膜厚と前記転写時コート膜厚との差分である、
請求項3に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項5】
前記厚み検出部は、
前記プレコート剤供給部の下流かつ前記インクジェットヘッドの上流の領域に配置されて前記インク吐出時コート膜厚を検知する第1の厚み検知センサーと、
前記インクジェットヘッドの下流かつ前記転写部の上流の領域に配置されて前記転写時コート膜厚を検知する第2の厚み検知センサーと、を備える、
請求項2から4のいずれか一項に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記インク吐出時コート膜厚が正常範囲内でないと判定された場合、前記プレコート剤供給部における前記プレコート剤の供給条件を変更する、
請求項2に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記プレコート剤供給部における前記プレコート剤の供給条件を変更した後、前記判定部によって前記インク吐出時コート膜厚が正常範囲内でないと判定された場合、前記表面処理部に前記転写体の前記表面処理を実行させる、
請求項6に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記表面処理の実行の後、前記インク吐出時コート膜厚と前記転写時コート膜厚との差分が閾値を超えている場合、前記転写体が寿命である旨を報知する、
請求項7に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記表面処理の実行の後、前記インク吐出時コート膜厚と前記転写時コート膜厚との差分が閾値以内である場合、前記プレコート剤供給部に異常がある旨を報知する、
請求項7または8に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記プレコート剤の供給条件を変更することまたは前記表面処理部に前記転写体の前記表面処理を実行させることを、前記インクジェットヘッドから前記インクが吐出されないときに行う、
請求項6に記載のインクジェット画像形成装置。
【請求項11】
インクジェットヘッドから転写体に吐出されたインクを転写部で記録媒体に転写するインクジェット画像形成装置において前記転写体に供給されたプレコート剤の膜厚を検査する膜厚検査方法であって、
前記転写体の移動方向における前記インクジェットヘッドの上流で前記転写体にプレコート剤を供給し、
前記移動方向における前記インクジェットヘッドの下流かつ前記転写部の上流で供給された前記転写体上の前記プレコート剤の厚みを転写時コート膜厚として検出し、
検出された前記転写時コート膜厚に応じて前記転写体の表面処理を行う、
膜厚検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット画像形成装置および膜厚検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙、布帛等の種々の記録媒体に対して高精細な画像を記録する装置として、インクジェット方式による画像形成装置(以下、インクジェット画像形成装置という)が広く普及している。
【0003】
近年、インクジェット画像形成装置では、低コスト化を図るために、インクジェットヘッドからのインク吐出量ひいては記録媒体へのインク付着量を出来るだけ抑えることが求められている。しかしながら、かかるインク付着量を減らした場合、ベタ画像の印刷において隠蔽率が低下してベタムラが発生する問題がある。
【0004】
この問題に対し、インクジェットヘッドから吐出された球状の液滴を記録媒体上で扁平化する(広げる)ことができれば、隠蔽率の低下を解消することができる。一方、このような方法とした場合、インク粘度によっては(特にインク粘度が低い場合)、記録媒体へのインク滲みが発生するおそれがある。
【0005】
上記問題に対処するため、インクジェットヘッドから吐出されるインクによる画像を転写ベルトなどの転写体に一旦担持させ、かかる画像を転写ニップで記録媒体に転写する中間転写方式のインクジェット画像形成装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。かかる中間転写方式のインクジェット画像形成装置によれば、転写体上にインクを滲ませずに広げることが可能であるため、インクジェットヘッドからのインク吐出量を抑えつつ、記録媒体上に綺麗に拡がったベタ画像を印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−171783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、中間転写方式のインクジェット画像形成装置では、インクジェットヘッドの前段に、インクの混色防止や位置精度確保などのためのプレコート剤を供給する構成が設けられている機種がある。このような機種では、プレコート剤が載った転写体にインクジェットヘッドから吐出されたインクが載ることで、記録媒体への転写時におけるインクの混色防止や位置精度の確保が図られる。
【0008】
一方、このような機種では、転写体に供給されるプレコート剤の厚み(膜厚)を適正に保つことが重要な課題となり、プレコート剤の膜厚が適正に保たれないと、プレコート剤の本来の機能が十分に発揮できず、画像品質が劣化するおそれがある。また、転写体上のプレコート剤の膜厚は、該プレコート剤に対して吐出(着弾)されたインク滴の濡れ拡がり(ドット径)や記録媒体への転写性にも影響を与える。
【0009】
かかる問題に対し、転写体上のプレコート剤の膜厚や膜厚の変化をインクジェットヘッドによるインク吐出前に検知し、該検知結果に基づいてプレコート剤の供給量を調整する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、このような従来の技術では、インク吐出時から転写時までにプレコート剤の膜厚が変化し得ることを考慮していないことから、転写体に担持されたインクの転写性が安定しないおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、転写体に担持されるインクの転写性を確保することが可能なインクジェット画像形成装置および膜厚検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るインクジェット画像形成装置は、
インクジェットヘッドから転写体に吐出されたインクを転写部で記録媒体に転写するインクジェット画像形成装置であって、
前記転写体の移動方向における前記インクジェットヘッドの上流で前記転写体にプレコート剤を供給するプレコート剤供給部と、
前記転写体の表面処理を行う表面処理部と、
前記移動方向における前記インクジェットヘッドの下流かつ前記転写部の上流で、前記プレコート剤供給部から供給された前記転写体上の前記プレコート剤の厚みを転写時コート膜厚として検出する厚み検出部と、
検出された前記転写時コート膜厚に応じて前記表面処理部の動作を制御する制御部と、
を備える。
【0013】
本発明に係る膜厚検査方法は、
インクジェットヘッドから転写体に吐出されたインクを転写部で記録媒体に転写するインクジェット画像形成装置において前記転写体に供給されたプレコート剤の膜厚を検査する膜厚検査方法であって、
前記転写体の移動方向における前記インクジェットヘッドの上流で前記転写体にプレコート剤を供給し、
前記移動方向における前記インクジェットヘッドの下流かつ前記転写部の上流で供給された前記転写体上の前記プレコート剤の厚みを転写時コート膜厚として検出し、
検出された前記転写時コート膜厚に応じて前記転写体の表面処理を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写体に担持されるインクの転写性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置の概略構成図である。
図2図1のインクジェット画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
図3】通常の印刷ジョブ実行時における処理を説明するフローチャートである。
図4】プレコート剤の供給量と転写時におけるインクのドット径との関係を示すグラフである。
図5】プレコート剤の膜厚が適正な場合の転写時におけるインクドットの状態を模式的に示す図である。
図6】プレコート剤の膜厚が小さ過ぎる場合のインクドットの状態を模式的に示す図である。
図7】プレコート剤の膜厚が大き過ぎる場合の転写時におけるインクドットの状態を模式的に示す図である。
図8】本実施の形態におけるプレコート剤の膜厚検査に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係るインクジェット画像形成装置1の概略構成を示す図である。また、図2は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0017】
インクジェット画像形成装置1は、インクジェットヘッド102(図2を参照)が搭載されたヘッドユニット10と、像担持体または転写体としての転写ベルト20と、転写ベルト20を回転可能に張架する従動ローラー21,22および駆動ローラーとしての転写ローラー23と、記録媒体Pを搬送する搬送ドラム24と、装置全体の制御を行う制御部40(図2を参照)と、を備える。
【0018】
また、インクジェット画像形成装置1は、画像形成(インク吐出)に先立って転写ベルト20にプレコート剤を供給するプレコート剤供給部26と、転写ベルト20から記録媒体Pに転写されたインクを硬化させるUV照射部25と、転写ベルト20をクリーニングするクリーニング部27と、転写ローラー23および搬送ドラム24等の各部を駆動する搬送駆動部51(図2を参照)と、を備える。
【0019】
さらに、インクジェット画像形成装置1は、プレコート剤供給部26から転写ベルト20上に供給されたプレコート剤の厚み(膜厚)を検出する厚み検出部31,32と、転写ベルト20の表面処理を行う表面処理部33と、を備える。
【0020】
なお、図示しないが、インクジェット画像形成装置1は、記録媒体Pを積載して搬送ドラム24に給送する給送部、画像が転写された記録媒体Pを搬送ドラム24の搬送方向下流側に排出する排出部、等を備える。これらは公知の構成であるため、図示および説明を省略する。
【0021】
記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0022】
転写ベルト20は、上方に配置された従動ローラー21,22および下方に配置された転写ローラー23に架け渡されており、搬送駆動部51の転写モーター(図示せず)の駆動力が転写ローラー23に伝達されることにより、図1中の時計方向に回転する。
【0023】
一具体例として、転写ベルト20は、ポリイミド(PI)の基材上に、シリコンゴムの弾性層と、ポリイミド(PI)の表層と、が積層された無端ベルトが用いられる。また、転写ローラー23の一具体例としては、直径100mmで、表層のゴム厚が10mmのゴムローラーが用いられる。
【0024】
転写ベルト20は、制御部40の制御信号に基づいて上記の転写モーターが駆動され転写ローラー23が図1中の時計方向に回転することによって、時計方向に回転する(図1中の白抜き矢印参照)。一具体例では、制御部40の制御の下、転写ベルト20が600mm/秒の速さ(印画速度)で回転するように、転写ローラー23の回転速度が制御される。
【0025】
搬送ドラム24は、円柱面状の外周曲面(搬送面)上に記録媒体Pを保持した状態で図1の図面に垂直な方向(以下、「直交方向」と称する)に延びた回転軸の回りで回転することで、記録媒体Pを搬送面に沿った搬送方向に搬送する。具体的には、搬送ドラム24は、搬送ドラムモーター(図示せず)を備え、制御部40の制御によりかかるモーターが駆動されることにより、図1中の反時計方向に回転する。一具体例では、搬送ドラム24は、大型(例えば印刷機用3倍胴)の金属製ドラムが用いられる。
【0026】
一具体例では、上述した転写ベルト20、転写ローラー23および搬送ドラム24は、800mmの幅すなわち軸方向の長さを有する。
【0027】
転写ローラー23は、搬送ドラム24の上部に対向して配置され、転写ベルト20を介して搬送ドラム24を加圧する。また、転写ベルト20を挟んで、搬送ドラム24が転写ローラー23に圧接されることにより、転写ベルト20から記録媒体Pへインク像を転写する転写ニップNPが形成される。かかる転写ニップNPは、インクジェット画像形成装置1における「転写部」として機能する。
【0028】
一具体例では、転写ニップNPにおける加重ないし圧接力(以下、「転写圧」という)の初期値は、80Nに設定されている。また、転写圧は、制御部40の制御により、転写ローラー23が図1中の上下方向に僅かに移動することによって、変更可能となっている。一具体例では、転写ローラー23の軸が搬送駆動部51のソレノイド等(図示せず)に連結され、制御部40の制御の下、かかるソレノイド等が駆動されることにより、転写ローラー23の軸が図1中の下方または上方向に微小移動して、転写圧を80Nよりも高い又は低い値に変えることができる。
【0029】
ヘッドユニット10は、転写ベルト20に対向するインク吐出面(ノズル面ともいう)に設けられたノズル開口部から転写ベルト20に対してインクを吐出して画像を転写ベルト20に担持させる。搬送ドラム24は、転写ベルト20に担持された画像が転写ニップNPで記録媒体Pの所定の位置に転写されるように、記録媒体Pを搬送する。
【0030】
本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット10が転写ベルト20の回転方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0031】
各ヘッドユニット10は、インクジェットヘッド102(図2を参照)を備える。インクジェットヘッド102には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズルとを各々有する複数の記録素子が設けられている。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0032】
インクジェットヘッド102に含まれるノズルの直交方向についての配置範囲は、搬送ドラム24により搬送される記録媒体Pのうち画像が記録される領域の直交方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット10は、画像の記録時には搬送ドラム24の回転軸に対して位置が固定されて用いられる。すなわち、インクジェット画像形成装置1は、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置である。
【0033】
この例では、インクジェットヘッド102から転写ベルト20に吐出されるインクとして、供給されるエネルギー量(この例ではUV照射部25から出力される紫外線(UV:ultra violet)の光量)に応じて粘度が変化するインクが用いられる。具体的には、UV照射部25から照射される紫外線の光量が多いほど、粘度が高くなる性質のインクが用いられる。すなわち、このインクジェット画像形成装置1の画像形成部は、UV硬化型インクジェット方式を採用している。
【0034】
UV照射部25は、転写ニップNPの下流側に搬送される記録媒体Pに紫外線(以下「UV光」という。)を照射するように配置されており、制御部40の制御の下、転写ニップNPにより転写ベルト20から転写された記録媒体P上のインクを硬化させる役割を担う。一具体例では、UV照射部25は、波長395nmのUV光を出力するUV光源を備え、通常の印刷ジョブにおける照射強度のデフォルト値が5mW/cmとされる。
【0035】
なお、使用されるインクの種類によっては、搬送方向におけるヘッドユニット10の下流かつ転写ニップNPの上流側に、転写ベルト20に吐出されたインクの粘度を調整するプレ硬化部としてのUV照射部(図示せず)を付加してもよい。
【0036】
クリーニング部27は、従動ローラー21と転写ローラー23との間の転写ベルト20の表面に対向配置され、かかる転写ベルト20の表面を清掃するドライウェブを備える。クリーニング部27のドライウェブは、転写ベルト20に対して離接可能に構成されており、制御部40の制御により転写ベルト20に対して当接することにより、転写ベルト20の表面の残インク等を除去する。
【0037】
なお、他の例として、クリーニング部27は、転写ベルト20の表面を清掃するクリーニングローラー、クリーニングローラーの表面を清掃するブレード等を備える構成としてもよい。この場合、制御部40の制御によってクリーニングローラーが所定速度で回転して、転写ベルト20をクリーニングする。
【0038】
プレコート剤供給部26は、搬送方向におけるヘッドユニット10の上流側に配置され、制御部40の制御の下、転写ベルト20にプレコート剤を供給する。この例では、プレコート剤供給部26は、図1に示すように、貯液槽261内に収容されたプレコート剤PEを、複数のローラー262、264を通じて転写ベルト20の表面まで搬送して塗布(供給)する構成となっている。これらローラー262、264は、図示しないローラー駆動モーターの駆動力が伝達されることにより、図1中に示す各々の方向に回転する。
【0039】
ここで、ローラー262は、プレコート剤PEを、貯液槽261から汲み上げて、対向する他のローラー264に供給する汲み上げローラー262である。図1に示すように、汲み上げローラー262には、ブレード263が当接されることにより、貯液槽261から汲み上げられるプレコート剤PEの量が規制される。
【0040】
また、ローラー264は、汲み上げローラー262から供給されたプレコート剤PEを転写ベルト20の表面(この例では従動ローラー21に対向する領域)に塗布する塗布ローラーである。本実施の形態では、制御部40の制御の下、塗布ローラー264が所定の速度で回転することにより、転写ベルト20の表面に一定量のプレコート剤PEを供給する。
【0041】
なお、厚み検出部31,32および表面処理部33の詳細については後述する。
【0042】
次に、主として図2を参照して、インクジェット画像形成装置1における他の主要な機能構成を説明する。インクジェット画像形成装置1は、ヘッドユニット10が有するヘッド駆動部101およびインクジェットヘッド102と、操作表示部34と、制御部40と、搬送駆動部51と、入出力インターフェース52とを備える。
【0043】
ヘッド駆動部101は、制御部40の制御に基づいてインクジェットヘッド102の記録素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を出力することにより、インクジェットヘッド102のノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0044】
操作表示部34は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部及び操作部として機能する。表示部は、制御部40から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況、印刷に関する情報等の表示を行う。操作部は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部40に出力する。
【0045】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。
【0046】
なお、制御部40は、本発明の「判定部」および「制御部」に対応する。
【0047】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0048】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0049】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0050】
記憶部44には、入出力インターフェース52を介して外部装置2から入力された印刷ジョブ(印刷枚数などの種々のユーザー設定情報を含む画像形成指示)および当該印刷ジョブに係る画像データが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0051】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム24の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム24を所定の速度およびタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて転写ローラー23の転写モーターに駆動信号を供給して、転写ベルト20を所定の速度およびタイミングで回転させる。
【0052】
入出力インターフェース52は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース52は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、または、これらの組み合わせで構成される。
【0053】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース52を介して印刷ジョブおよび画像データ等を制御部40に供給する。
【0054】
次に、図3のフローチャートを参照して、通常の印刷ジョブの実行時において制御部40が実行する処理を説明する。
【0055】
印刷ジョブおよび画像データ等を受信した後、制御部40は、搬送ドラム24および転写ローラー23を駆動して記録媒体Pの搬送を開始するように、搬送駆動部51を制御する(ステップS10)。
【0056】
また、制御部40は、プレコート剤供給部26のローラー駆動モーターに駆動信号を出力して転写ベルト20上にプレコート剤PEを供給するとともに、転写ベルト20を上述した回転速度(周速度)で回転させるように搬送駆動部51を制御する(ステップS20)。
【0057】
続いて、制御部40は、受信された画像データおよびユーザー設定情報に基づいて、当該印画(画像形成)で使用する色のヘッドユニット10のインクジェットヘッド102から、転写ベルト20上にインクを吐出するようにヘッド駆動部101を制御する(ステップS30)。かかる動作により、プレコート剤PEが付着された転写ベルト20の表面に、入力画像データに基づく画像(インク像)が重畳的に付着(担持)される。
【0058】
ステップS40において、制御部40は、所定のタイミングで記録媒体Pを転写ニップNPに搬送するように搬送駆動部51を制御して、転写ベルト20上に担持されたインク像を記録媒体Pに転写させる。このとき、予め設定された転写圧でインク像が押圧される(転写ニップNPで挟持される)ことにより、転写ベルト20上に担持されたインク像は、当該転写圧等に応じて全体的に広がるように記録媒体Pに転写される。
【0059】
ステップS50において、制御部40は、インク像が転写された記録媒体PがUV照射部25の位置に来るタイミングでUV照射部25の出力を制御することにより、インク像の硬化ないし定着工程を実施する。この後、記録媒体Pは、図示しない排出部に排出される。
【0060】
ステップS60において、制御部40は、クリーニング部27を作動させることにより、転写ベルト20上のプレコート剤PEや残インク等の残存物を除去して転写ベルト20をクリーニングする処理を実行する。
【0061】
ステップS70において、制御部40は、印刷ジョブが終了したか否かを判定する。ここで、制御部40は、未だ印刷ジョブが終了していないと判定した場合(ステップS70、NO)、ステップS10に戻り、上述したステップS10〜ステップS70の処理を繰り返し実行する。一方、制御部40は、印刷ジョブが終了したと判定した場合(ステップS70、YES)、一連の処理を終了する。
【0062】
かくして、中間転写方式のインクジェット画像形成装置1では、インクジェットヘッド102から吐出するインクの液量を抑えながら、インクを滲ませることなく記録媒体P上に平滑に広げることができるので、インクの節約を図ることができるメリットがある。
【0063】
また、転写ベルト20に対して、インクが吐出される前にプレコート剤供給部26から例えばインクの混色防止や位置精度確保用のプレコート剤PEを供給することで、転写ニップNPでの記録媒体Pへの転写時に、インクの混色防止や位置精度の確保が図られる。
【0064】
ところで、上記のようにプレコート剤PEを供給する方式のインクジェット画像形成装置1では、プレコート剤供給部26から転写ベルト20に供給されるプレコート剤PEの厚み(膜厚)を適正に保つことが重要な課題となる。
【0065】
具体的には、転写ベルト20に供給されるプレコート剤PEの膜厚が適正でない場合、プレコート剤PEの本来の機能(例えばインクの混色防止や位置精度確保の機能)が十分に発揮できず、転写ニップNPで記録媒体Pに転写される画像(インク像)の品質が劣化するおそれがある。また、転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚は、当該プレコート剤PEの膜に対して吐出(着弾)されたインク滴の濡れ拡がり(ドット径)や記録媒体Pへの転写性(言い換えると、プレコート剤PEの離型剤としての性能)にも影響を与える。
【0066】
かかる問題に関し、特許文献1に記載の技術では、プレコート剤の安定的な付与を目的として、転写体上のプレコート剤の膜厚や膜厚の変化をインクジェットヘッドによるインク吐出前に検知し、該検知結果に基づいてプレコート剤の供給量を調整することが提案されている。
【0067】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、インク吐出時におけるプレコート剤の膜厚は適正化できても、転写時における膜厚の適正化までは保障されないため、転写体に担持されたインクの転写性が安定しないおそれがある。
【0068】
かかる従来技術に関し、本発明者らが鋭意研究を行った結果、転写体上のプレコート剤の状態(接触角ひいては濡れ性)が、転写ニップに到達するまでの間に変化して膜厚が変わる現象が起こり得る、との知見を得るに至った。
【0069】
言い換えると、従来技術では、かかる現象に気付いていない(少なくとも着目または考慮していない)ため、転写体上のプレコート剤の膜厚調整を転写ニップNP到達時の膜厚に照準を合わせるという発想がなかった、との知見を得るに至った。
【0070】
かかる本発明者らの知見を、図4図7を参照してより具体的に説明する。
【0071】
図4は、プレコート剤PEの供給量と転写時におけるインクのドット径との関係を説明するための特性グラフである。図4のグラフでは、転写時におけるインクのドット径(μm)を縦軸に、転写時における転写ベルト20上の液体のプレコート剤PEの膜厚(μm)を各々示している。
【0072】
ここで、転写時における転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚が適正な場合、すなわち図4中に両矢印で示す「所定の範囲」内に収まる場合、転写ベルト20上のインクは転写ニップNPで記録媒体Pに良好に転写される。この場合の転写ニップNP付近における転写時のインク(インクドット)の状態等を図5に模式的に示す。
【0073】
図5に示すように、転写時に転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚が適正であれば、転写ベルト20上のインクドットIdは、転写ニップNPのニップ圧(白抜き矢印参照)によって、プレコート剤PEの膜とともに適度に広がりながら記録媒体Pに転写される(両矢印参照)。
【0074】
一方、転写時における転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚が適正よりも足りない(薄い)場合、すなわち図4中の「所定の範囲」よりも左側の領域Aの範囲である場合、転写ベルト20上のインクドットIdは、狙いのドット径よりも大きくなって転写される。この場合の転写ニップNP付近におけるインクドットIdの状態等を図6に模式的に示す。
【0075】
図6に示すように、転写時に転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚が適正値よりも薄い場合、転写ニップNPのニップ圧によって、プレコート剤PE(液体)の膜に液寄り(各矢印参照)が生じる。このとき、転写ベルト20上のインクドットIdは、かかるプレコート剤PEの液寄りに引っ張られることにより、ドット径の変動(この例では径の拡大)が発生する。
【0076】
他方、転写時における転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚が適正値よりも大きい(厚い)場合(図4中の所定の範囲よりも右側の領域Bの範囲である場合)、転写ベルト20上のインクドットIdは、ニップ圧の作用に伴って位置ずれしやすくなり、記録媒体Pへの付着性が悪くなる。この場合の転写ニップNP付近におけるインクドットIdの状態等を図7に模式的に示す。
【0077】
図7に示すように、転写時に転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚が適正値よりも厚い場合、転写ベルト20上のプレコート剤PEは、転写ニップNPのニップ圧の加重によって、断面形状が記録媒体P側に歪みやすくなる。また、転写ベルト20上のインクドットIdは、かかるプレコート剤PEの歪みに従った移動(位置ずれ)が生じることに加え、図7に示すように、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚い膜の中に埋没しやすくなる。この結果、転写ベルト20上のインクドットIdの記録媒体Pへの付着性が悪くなり、記録媒体Pへの転写率が低下する結果となる。
【0078】
このように、転写時における転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚が適正値(所定の範囲)内から外れる場合、転写ベルト20に担持されたインク(インクドットId)の転写性を確保することができない。
【0079】
加えて、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みは、プレコート剤供給部26の供給条件(主として供給量)により制御されるが、転写ベルト20の表面性(材質、表面の平滑度、耐久による表面の傷や凹凸等の劣化の程度、など)によっても影響を受ける。
【0080】
また、転写ベルト20(転写体)の表面は、耐久や使用する紙種、周囲温度や放置時間等により変動することがあり、その結果としてプレコート剤PEの濡れ性が低下する(結果としてプレコート剤PEの膜厚が変化する)場合があることが分かった。
【0081】
さらに、プレコート剤PEは、塗布後の時間経過と転写ベルト20の表面性により厚み(転写ベルト20上の膜厚)が変化し得る。このため、インクジェットヘッド102からインクを吐出する前の段階で転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みを調整しても、記録媒体Pへの転写時には、転写ベルト20の表面状態により、適正な厚みの範囲(図4中の「所定の範囲」)を外れる場合がある。
【0082】
かかる実情に鑑みると、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みを調整する処理は、従来技術のようにインク吐出前段階における転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みではなく、むしろ、転写ニップNPに突入する直前段階における転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みに基づいて行うべきである、とも考えられる。
【0083】
一方で、インク吐出前段階におけるプレコート剤PEの厚み(膜厚)が適正でない場合、該プレコート剤PEの膜上に吐出されたインク滴の濡れ拡がり性(初期のドット状態)が悪くなるおそれがあり、この場合、記録媒体Pに転写されるインク像の品質も悪くなる。
【0084】
したがって、記録媒体Pに印刷(出力)されるインク像の品質を保証する観点からは、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みは、インクが吐出される前の段階と、インク吐出後転写前の段階と、の各々で適正範囲を保つ必要があると考えられる。このため、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みの測定(検出)は、インク吐出前の位置とインク吐出後(転写前)との少なくとも2ヵ所で行う必要がある、との知見を得た。
【0085】
上述した知見に基づき、本実施の形態では、転写ベルト20上に供給されたプレコート剤PEの厚みを検出する厚み検出部として、第1の厚み検知センサー31および第2の厚み検知センサー32の2つを設ける構成とした(図1参照)。
【0086】
ここで、第1の厚み検知センサー31は、転写ベルト20の回転方向におけるプレコート剤供給部26の下流かつヘッドユニット10の上流の領域に配置される。また、第2の厚み検知センサー32は、ヘッドユニット10の下流かつ転写ニップNPの上流の領域に配置される。
【0087】
このため、本実施の形態では、第1の厚み検知センサー31による検出結果が転写ベルト20上のプレコート剤PEの「インク吐出時コート膜厚」に対応し、下流側の第2の厚み検知センサー32による検出結果が転写ベルト20上のプレコート剤PEの「転写時コート膜厚」に対応する。
【0088】
第1および第2の厚み検知センサー31,32は、非接触式のセンサーであり、各々、転写ベルト20の対応する領域に対向して配置され、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みを検出し、検出結果を検出信号として制御部40に出力する(図2参照)。
【0089】
一具体例では、第1および第2の厚み検知センサー31,32は、各々、光照射部および光受信部を備えた光学式のセンサーである。この場合、光照射部から転写ベルト20に対して、転写ベルト20の幅に対応した幅の光を照射し、転写ベルト20で反射された反射光の強度を光受信部で測定することにより、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚み(以下、単に「膜厚」ともいう)を検出する。
【0090】
他にも、厚み検知センサー31(32)は、転写ベルト20で反射した反射光の干渉縞から膜厚を算出する構成、または転写ベルト20で反射した反射光のスペクトルを解析して膜厚を算出する構成としてもよい。なお、上述した構成は、適宜選択することができる。
【0091】
そして、制御部40は、第1の厚み検知センサー31により検出された膜厚(インク吐出時コート膜厚)が適正範囲内か否か、および、第2の厚み検知センサー32により検出された膜厚(転写時コート膜厚)が適正範囲内か否か、をそれぞれ判定する「判定部」としての機能を有する。
【0092】
本実施の形態では、膜厚の適正範囲の値(数値範囲)については、使用するプレコート剤PEの種類等に応じて、ユーザーが任意に設定できるようになっている。かかる設定は、例えば操作表示部34の図示しない表示画面を通じて行うことができる。
【0093】
本実施の形態では、インク吐出前のタイミングで検出される膜厚(第1の厚み検知センサー31により検出されるインク吐出時コート膜厚)の適正範囲と、転写前のタイミングで検出される膜厚(第2の厚み検知センサー32により検出される転写時コート膜厚)の適正範囲と、が各々別個に設定できるようになっている。
【0094】
表面処理部33は、制御部40の制御の下、転写ベルト20の表面にエネルギーを加えることにより、主として転写ベルト20の表面の化学的な性質(分子間結合の状態など)を改質して、転写ベルト20の表面エネルギー(濡れ性)を改善させる処理を行う。
【0095】
一具体例では、表面処理部33は、転写ベルト20の表面にコロナ放電を行うことで、転写ベルト20の表面を改質するコロナ処理式の表面改質処理装置を用いることができる。
【0096】
なお、表面処理部33の他の具体例として、転写ベルト20の表面にエキシマUVなどのエキシマ光を照射することで転写ベルト20の表面を改質するエキシマ光照射式の表面改質処理装置を用いてもよい。
【0097】
あるいは、表面処理部33の他の具体例として、転写ベルト20の表面に大気圧プラズマ処理を施すことで転写ベルト20の表面を改質するプラズマ処理式の表面改質処理装置を用いてもよい。
【0098】
上記のような表面改質処理装置を用いて転写ベルト20の表面を改質することで、転写ベルト20の濡れ性を改善し、転写ベルト20に供給されるプレコート剤PEが各部で均等に広がり、転写ベルト20上の膜厚が全体的に均一化されることが期待できる。
【0099】
一方、上記のような表面改質処理装置を頻繁に使用すると転写ベルト20の耐久性が低下することから、表面処理部33は、必要な場合にのみ稼働させることが望ましい。このため、本実施の形態では、表面処理部33の使用をできるだけ抑えるようになっており、表面処理部33を稼働させる場合については図8で後述する。
【0100】
次に、図8に示すフローチャートを参照して、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚みを検査する検査モードにおいて制御部40が実行する処理の一例について説明する。簡明のため、図8では、第1の厚み検知センサー31を「第1センサー」と、第2の厚み検知センサー32を「第2センサー」と表記している。
【0101】
本実施の形態では、図8に示す検査モードの処理は、印刷ジョブの実行時とは別の期間(すなわち非画像形成時)に実行されるようになっている。検査モードの処理が上記のような非画像形成時に行われることにより、印刷画像の出力中に画質が変動することによるヤレ紙発生や画質調整に要するロスタイムの発生を防止することができる。
【0102】
一具体例では、上述した操作表示部34の図示しない設定画面を通じてユーザーが設定操作することにより、インクジェット画像形成装置1の起動時、印刷ジョブの終了後やメンテナンス時など、図8に示す処理の実行時を選択できるようにしてもよい。
【0103】
検査モードに移行した後のステップS110において、制御部40は、プレコート剤供給部26に駆動信号を出力して転写ベルト20上にプレコート剤PEを供給するとともに、転写ベルト20を印刷ジョブ実行時と同一の回転速度(周速度)で回転させるように搬送駆動部51を制御する。
【0104】
なお、制御部40は、この後も転写ベルト20を継続的に回転させ、通常の印刷ジョブ実行時と同様にプレコート剤供給部26によるプレコート剤PEの供給およびクリーニング部27によるプレコート剤PEの清掃を行うが、記録媒体Pの搬送は行わない。
【0105】
続くステップS120において、制御部40は、第1の厚み検知センサー31の検知結果(検出信号)に基づいて、転写ベルト20上のプレコート剤PEの膜厚(インク吐出時コート膜厚)を検出ないし特定し、かかる膜厚の絶対値が所定の範囲内であるか否かを判定する。
【0106】
より具体的には、制御部40は、少なくとも転写ベルト20が一回転するまでは第1の厚み検知センサー31からの検出信号をモニタリングし続けて、転写ベルト20の全面(一周分)におけるプレコート剤PEの膜厚(インク吐出時コート膜厚)を検査する。
【0107】
すなわち、制御部40は、検出ないし特定されたプレコート剤PEの膜厚(インク吐出時コート膜厚)の値が転写ベルト20の全面(一周分)に亘って所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS120)。
【0108】
ここで、制御部40は、膜厚の絶対値が所定の範囲内であると判定した場合(ステップS120、YES)、インクが吐出されるタイミングでのプレコート剤PEの厚みは適正(転写時コート膜厚が正常範囲内)であると判断してステップS130に移行する。
【0109】
一方、制御部40は、膜厚の絶対値が所定の範囲内でないと判定した場合(ステップS120、NO)、インクが吐出されるタイミングでのプレコート剤PEの厚みは適正でない(インク吐出時コート膜厚が過多である又は過少である)と判断して、ステップS140に移行する。
【0110】
ステップS140において、制御部40は、転写ベルト20へのプレコート剤PEの塗布(供給)条件を変えるようにプレコート剤供給部26を制御する。具体的には、制御部40は、転写ベルト20上に供給(塗布)するプレコート剤PEの量を変える(過多である場合は減らし、過少である場合は増やす)ようにプレコート剤供給部26に駆動信号を出力して、ステップS150に移行する。
【0111】
この例では、制御部40は、転写ベルト20上に供給するプレコート剤PEの量を減らす場合、塗布ローラー264から転写ベルト20に塗布されるプレコート剤PEの量が減少するようにプレコート剤供給部26を制御する。
【0112】
より具体的には、制御部40は、ブレード263の押圧力を上げて汲み上げローラー262によるプレコート剤PEの汲み上げ量を減らすこと、あるいは塗布ローラー264の回転速度を下げることにより、転写ベルト20に塗布するプレコート剤PEの量を減らす。
【0113】
一方、制御部40は、転写ベルト20上に供給するプレコート剤PEの量を増やす場合、上記の逆すなわち塗布ローラー264から転写ベルト20に塗布されるプレコート剤PEの量が増加するようにプレコート剤供給部26を制御する。この場合、制御部40は、ブレード263の押圧力を下げて汲み上げローラー262によるプレコート剤PEの汲み上げ量を増やすこと、あるいは塗布ローラー264の回転速度を上げることにより、転写ベルト20に塗布するプレコート剤PEの量を増やす。
【0114】
なお、ステップS140では、制御部40は、他にも例えば、図示しないヒーターの温度を制御して、転写ベルト20の表面温度を変えるなど、転写ベルト20へのプレコート剤PEの供給条件(主に供給量)を変えるための種々の処理を行うことができる。
【0115】
ステップS150において、制御部40は、第1の厚み検知センサー31の検知結果(検出信号)に基づいて、転写ベルト20上の膜厚を検出ないし特定し、かかる膜厚の絶対値(インク吐出時コート膜厚)が所定の範囲内(図4参照)であるか否かを判定する。
【0116】
ここで、制御部40は、膜厚の絶対値が所定の範囲内であると判定した場合(ステップS150、YES)、インクが吐出されるタイミングでのプレコート剤PEの厚みは適正化された(インク吐出時コート膜厚が正常範囲内である)と判断してステップS130に移行する。
【0117】
一方、制御部40は、膜厚の絶対値が所定の範囲内でないと判定した場合(ステップS150、NO)、転写ベルト20へのプレコート剤PEの塗布条件を変えてもプレコート剤PEの厚み(インク吐出時コート膜厚)を適正化することができないと判断して、ステップS160に移行する。
【0118】
なお、多くの場合は、上述したステップS140で転写ベルト20へのプレコート剤PEの塗布条件を変える処理を行うことにより、第1の厚み検知センサー31を通じて検出される膜厚の絶対値(インク吐出時コート膜厚)は、所定の範囲内に収まる(ステップS150でYESと判定される)ものと考えられる。
【0119】
これに対して、例えば、プレコート剤供給部26自体に異常がある場合、あるいは転写ベルト20の耐久末期である場合(表面の傷や凹凸状態が酷い場合など)には、ステップS140でいかなる処理を行っても転写ベルト20上の膜厚(インク吐出時コート膜厚)が所定範囲内に収まらないケースが発生し得る。
【0120】
このため、制御部40は、ステップS140の処理後の膜厚測定段階で、転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚み(インク吐出時コート膜厚)が所定範囲内に収まらない場合(ステップS150、NO)、プレコート剤供給部26又は転写ベルト20に欠陥ないし異常があると判断してステップS160に移行する。なお、ステップS160以下の処理については後述する。
【0121】
かくして、制御部40は、第1の厚み検知センサー31を通じてのヘッドユニット10側での膜厚(インク吐出時コート膜厚)が所定の範囲内である(ステップS120またはS150でYES)と判定した後のステップS130で、転写ニップNP側の膜厚(転写時コート膜厚)が所定範囲内か否かを判定する。
【0122】
すなわち、ステップS130において、制御部40は、第2の厚み検知センサー32の検知結果(検出信号)に基づいて、転写ニップNP側の転写ベルト20上のプレコート剤PEの厚み(膜厚)を検出ないし特定し、かかる膜厚の絶対値(転写時コート膜厚)が所定の範囲内であるか否かを判定する。
【0123】
より詳しくは、制御部40は、少なくとも転写ベルト20が一回転するまでは第2の厚み検知センサー32からの検出信号をモニタリングし続けて、転写ベルト20の全面(一周分)におけるプレコート剤PEの膜厚(転写時コート膜厚)を検査する。
【0124】
すなわち、制御部40は、検出ないし特定されたプレコート剤PEの膜厚(転写時コート膜厚)の値が転写ベルト20の全面(一周分)に亘って所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS130)。
【0125】
ここで、制御部40は、膜厚の絶対値(転写時コート膜厚)が所定の範囲内であると判定した場合(ステップS130、YES)、プレコート剤PEの膜厚は、インク吐出時と転写時の両方のタイミングにおいて適正(正常範囲内)であり、現在の設定で適正な画質が得られると判断して、本ルーチンを終了する。
【0126】
この場合、制御部40は、現在のプレコート剤供給部26におけるプレコート剤PEの供給条件を、後の印刷ジョブの実行時における印刷条件として設定する。したがって、後の印刷ジョブの実行時において、高い転写効率で印刷することができる。
【0127】
なお、ステップS130における他の判定基準として、制御部40は、後述するステップS180と同様に、各厚み検知センサー31,32の検知結果(検出信号)に基づいて、各々の膜厚検出値の差分が予め設定された閾値内(すなわち誤差等の許容範囲)であるか否かを判定してもよい。この場合、制御部40は、転写ベルト20の同一部分同士における膜厚(インク吐出時コート膜厚と転写時コート膜厚)の差分を比較する。このような比較を行うことにより、プレコート剤PEの塗布後の時間経過や転写ベルト20の表面状態等によるプレコート剤PEの厚みの変化の実態(場所毎の変化具合)を、より詳細に把握することができる。
【0128】
一方、制御部40は、第2の厚みセンサー32による膜厚検出値が所定の範囲内でないと判定した場合(ステップS130、NO)、転写時におけるプレコート剤PEの膜厚(転写時コート膜厚)は適正でない(過多である又は過少である)と判断して、ステップS210に移行する。
【0129】
ステップS210において、制御部40は、プレコート剤PEの供給を停止するようにプレコート剤供給部26を制御するとともに、転写ベルト20上のプレコート剤PEを全てクリーニング部27で除去(清掃)する処理を行う。この後、制御部40は、ステップS220に移行する。
【0130】
ステップS220において、制御部40は、表面処理部33を作動させて、転写ベルト20の表面を化学的に改質させるように表面処理(改質処理)を行う。この後、制御部40は、ステップS110に戻り、プレコート剤PEの膜厚がインク吐出時と転写時の両方のタイミングにおいて適正である旨(ステップS130、YES)が判定されるまで、上述した処理を繰り返し行う。
【0131】
一方、制御部40は、プレコート剤供給部26又は転写ベルト20に欠陥(異常)があると判断した後のステップS160において、上述したステップS210と同様に、クリーニング部27を作動させて、転写ベルト20上のプレコート剤PEを全て除去(清掃)する。この後、制御部40は、ステップS170に移行する。
【0132】
ステップS170において、制御部40は、上述したステップS220と同様に、表面処理部33を作動させて、転写ベルト20の表面を化学的に改質させる表面処理を行った後に、ステップS180に移行する。
【0133】
ステップS180において、制御部40は、プレコート剤供給部26に駆動信号を出力して転写ベルト20上にプレコート剤PEを供給し、各厚み検知センサー31,32の検出信号に基づいて、各々の膜厚検出値の差分が予め設定された閾値内(すなわち誤差等の許容範囲)であるか否かを判定する。
【0134】
すなわち、制御部40は、ステップS180において、転写ベルト20の同一部分同士における上流側での膜厚(インク吐出時コート膜厚)と下流側での膜厚(転写時コート膜厚)の差分を比較して、その差分を求める。
【0135】
このような比較を行うことにより、プレコート剤PEの塗布後の時間経過や転写ベルト20の表面状態等によるプレコート剤PEの厚みの変化の実態(場所毎の変化具合)を、より詳細に検査できるので、異常の原因を特定しやすくなる。
【0136】
そして、制御部40は、上流側での膜厚(インク吐出時コート膜厚)と下流側での膜厚(転写時コート膜厚)の差分が閾値(許容値)を超えていると判定した場合(ステップS180、NO)、転写ベルト20が寿命であるとみなしてステップS190に移行する。
【0137】
ステップS190において、制御部40は、ユーザーに報知すべく、転写ベルト20が寿命であり交換すべき旨のメッセージを操作表示部34の表示部に表示した後、一連の処理を終了する。
【0138】
一方、制御部40は、上流側での膜厚(インク吐出時コート膜厚)と下流側での膜厚(転写時コート膜厚)の差分が閾値(許容値)以下であると判定した場合(ステップS180、YES)、プレコート剤供給部26に異常があるとみなしてステップS200に移行する。
【0139】
すなわち、転写ベルト20の同一部分同士における上流側での膜厚(インク吐出時コート膜厚)と下流側での膜厚(転写時コート膜厚)の差分が許容値以下である場合、転写ベルト20の表面に異常はないと考えられる一方、プレコート剤PEの供給態様に異常(むら等)があると考えられるからである。
【0140】
かくして、ステップS200において、制御部40は、ユーザーに報知すべく、プレコート剤供給部26に異常があり検査すべき旨のメッセージを操作表示部34の表示部に表示した後、一連の処理を終了する。
【0141】
このような処理を行う本実施の形態によれば、転写ベルト20上のプレコート剤の膜厚を、インク吐出時および転写時の両方のタイミングで適正な範囲に保持することができる。したがって、本実施の形態によれば、後の印刷時において、転写ベルト20に担持されるインクの濡れ性(初期ドット径)を適正化しつつ、転写ニップNPでの転写性を確保することができる。すなわち、本実施の形態によれば、転写ベルト20上でのインクの濡れ性と転写時におけるインクの転写性の両立を図ることができる。
【0142】
また、本実施の形態によれば、表面処理部33の作動による転写ベルト20の改質処理をできるだけ少なくすることにより、転写ベルト20の耐久性を確保することができる。
【0143】
上述した実施の形態では、プレコート剤供給部26がローラー塗布式の構成(いわゆるローラーコーター)である場合について説明した。
【0144】
他の例として、プレコート剤供給部26は、プレコート剤PEをノズルから射出するヘッドを備えたヘッド射出式のものであってもよい。この場合、転写ベルト20へのプレコート剤PEの塗布条件を変更するステップS140において、制御部40は、ヘッドから射出されるプレコート剤PEの量を直接変更する(増減させる)処理の他に、ヘッド(ノズル)から射出されるプレコート剤PEの温度を調整することができる。
【0145】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 インクジェット画像形成装置
10 ヘッドユニット
20 転写ベルト(転写体)
21,22 従動ローラー
23 転写ローラー
24 搬送ドラム
25 UV照射部
26 プレコート剤供給部
27 クリーニング部
31,32 厚み検出部
31 第1の厚み検知センサー
32 第2の厚み検知センサー
33 表面処理部
34 操作表示部
40 制御部(判定部)
51 搬送駆動部
261 貯液槽
262 汲み上げローラー
263 ブレード
264 塗布ローラー
NP 転写ニップ(転写部)
Id インクドット
P 記録媒体
PE プレコート剤
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8