【解決手段】ガスバリア性積層体は、樹脂基材と、樹脂基材の少なくとも一方の面に積層された、2層以上の透明酸化物層で構成される透明酸化物層積層体とを含み、透明酸化物層積層体を構成する前記透明酸化物層のそれぞれは、波長550nmの光の屈折率が1.43以上2.4以下であり、かつ、互いに異なり光学膜厚が14.3以上840以下であり、透明酸化物層積層体の少なくとも1層は、珪素(Si)と錫(Sn)とを含み、前記透明酸化物層積層体を構成する前記透明酸化物層の表面での視感反射率が樹脂基材以下である、反射防止機能を有する反射防止機能を有する。
前記透明酸化物層積層体は、前記樹脂基材から順に、波長550nmの光の屈折率が1.6以上1.9未満の前記透明酸化物層と、波長550nmの光の屈折率が1.9以上2.4以下の前記透明酸化物層と、波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.6未満の前記透明酸化物層とで構成される、請求項1に記載の反射防止機能を有するガスバリア性積層体。
前記透明酸化物層積層体は、前記樹脂基材から順に、波長550nmの光の屈折率が1.75以上2.4以下の前記透明酸化物層と、波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.75未満の前記透明酸化物層とで構成される、請求項1に記載の反射防止機能を有するガスバリア性積層体。
珪素(Si)と錫(Sn)とを含む前記透明酸化物層の珪素(Si)の原子数と、珪素(Si)および錫(Sn)の合計の原子数との比(Si/(Si+Sn))が0.1以上0.98以下であり、酸素(O)の原子数と、珪素(Si)と錫(Sn)の合計の原子数の比(O/(Si+Sn))が、0.80以上2.00以下である、請求項1から5のいずれかに記載の反射防止機能を有するガスバリア性積層体。
前記透明酸化物層積層体が珪素(Si)と錫(Sn)とを含む前記透明酸化物層のみにより構成されている、請求項1から6のいずれかに記載の反射防止機能を有するガスバリア性積層体。
前記透明酸化物層がAl、Ga、Ge、Nb、Ta、W、Zn、Tiから選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含有する、請求項1から8のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
前記樹脂基材と前記透明酸化物層積層体との間にアンダーコート層をさらに有し、前記アンダーコート層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂の少なくとも1つ以上から形成される、請求項1から10のいずれかに記載の反射防止機能を有するガスバリア性積層体。
前記アンダーコート層は、有機酸基を有するアクリル樹脂を含む組成物の硬化物からなる層であり、前記組成物がポリイソシアネートをさらに含み、前記アクリル樹脂がアクリルポリオール樹脂である、請求項1から11のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
請求項1から12のいずれかに記載のガスバリア性積層体の製造方法であって、電極に電圧を周期的に印加可能であるマグネトロンスパッタリング装置を用いることにより透明酸化物層を成膜する工程を含む、ガスバリア性積層体の製造方法。
前記透明酸化物層を成膜する工程において、前記マグネトロンスパッタリング装置が、電圧印加のオフタイムに、電圧印加とは正負の異なるパルス電圧を印加する、請求項13に記載のガスバリア性積層体の製造方法。
請求項1から12のいずれかに記載のガスバリア性積層体の製造方法であって、二つの電極が並列に位置し、各前記電極に正負交互に電圧を印加可能であり、各々の前記電極が交互にカソード、アノードの役割を果たすマグネトロンスパッタリング装置を用いることにより透明酸化物層を成膜する工程を含む、ガスバリア性積層体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは屋内外に問わず、外光が入射するような環境下で使用されると、この外光がディスプレイ内部において正反射され光源の虚像をディスプレイ表面に映し出す。このため、ディスプレイに蛍光灯が映りこみ、本来の表示画面が見えにくくなるなどの問題を生じさせる。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須である。
【0003】
そこで、外光のディスプレイ内への入射を防止するため、透明基材表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層した、あるいは透明基材表面に無機化合物や有機フッ素化合物などの低屈折率層を単層で積層した反射防止機能を有するフィルム、即ち反射防止フィルムをディスプレイ表面上に貼り合せることなどがなされている。
【0004】
また、食品や医療等の包装、精密電子部品の包装材料には内容物の変質を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、包装材料を通過する各種ガスによる影響を防止する機能が必要であり、これらを遮断する性質(ガスバリア性)を備えることが求められている。
【0005】
求められるガスバリア性は用途により様々だが、食品等の包装材料であれば数g/(m
2・day)が必要とされ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)や電子ペーパーなどディスプレイ用封止フィルムでは、0.01g/(m
2・day)以下の高い水蒸気バリア性が必要とされ、また、バリア性だけでなく光学性能(透明性や反射防止機能)を併せ持つことが求められている。
【0006】
近年、フレキシブル化、破損防止、軽量化などの理由から、基材として、ガラスではなく樹脂が用いられる傾向にある。しかし、樹脂基材は、酸素ガスや水蒸気に対するガスバリア性が低いため、これらの阻止や電子部材等の劣化が問題となる。
【0007】
そのため、樹脂基材を用いて高いガスバリア性と透明性を実現するために、種々のものが開発されているが、近年は酸化珪素、酸化アルミニウムのような金属酸化物膜、各種金属の酸窒化物膜をナノスケールで樹脂基材上に設けたガスバリア性積層体が数多く提案されている。
【0008】
例えば、下記特許文献1では、透明性が高く、かつ、高い水蒸気バリア性能を持つ透明樹脂基板(ガスバリア性積層体)が記載されている。係るガスバリア性積層体では、酸化錫と、添加元素として珪素(Si)を、SiとSnの総和に対して46原子%以上63原子%以下の割合で含み、非晶質膜であり、かつ、波長633nmにおける屈折率が1.75以下である透明酸化物膜を、ガスバリア層として、樹脂基材の少なくとも一方の面に、直流(DC)パルススパッタ法により形成している。
【0009】
しかしながら、係るガスバリア性積層体は、JIS規格のK7129法に従って、モコン法により測定された水蒸気透過率が、0.01g/(m
2・day)未満であると記載されており、確かに高い水蒸気ガスバリア性ではあるが、近年要求されている、より高い水準の水蒸気バリア性に応えるためには、更なる改善が求められているのが実情である。
【0010】
また、下記特許文献2では、反射防止層を有し、水蒸気バリア性が10g/(m
2・day)以上の反射防止性を有する偏光フィルムが提案されているが、前記と同様に水蒸気バリア性としては更なる改善が求められているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、良好な反射防止機能と水蒸気バリア性を有する、樹脂基材を用いた透明な反射防止機能を有するガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための本発明の一局面は、樹脂基材と、樹脂基材の少なくとも一方の面に積層された、2層以上の透明酸化物層で構成される透明酸化物層積層体とを含み、透明酸化物層積層体を構成する前記透明酸化物層のそれぞれは、波長550nmの光の屈折率が1.43以上2.4以下であり、かつ、互いに異なり光学膜厚が14.3以上840以下であり、透明酸化物層積層体の少なくとも1層は、珪素(Si)と錫(Sn)とを含み、前記透明酸化物層積層体を構成する前記透明酸化物層の表面での視感反射率が樹脂基材以下である、反射防止機能を有するガスバリア性積層体である。
【0014】
本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、透明酸化物層積層体は、樹脂基材から順に、波長550nmの光の屈折率が1.6以上1.9未満の透明酸化物層と、波長550nmの光の屈折率が1.9以上2.4以下の透明酸化物層と、波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.6未満の透明酸化物層とで構成されていても良い。
【0015】
本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、透明酸化物層積層体は、樹脂基材から順に、波長550nmの光の屈折率が1.75以上2.4以下の透明酸化物層と、波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.75未満の透明酸化物層とで構成されていても良い。
【0016】
本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、測定条件40℃、90%R.H.における水蒸気透過度が0.01g/(m2・day)以下であってもよい。
【0017】
本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、視感平均反射率が2.0%以下であってもよい。
【0018】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、珪素(Si)と錫(Sn)とを含む透明酸化物層の珪素(Si)の原子数と、珪素(Si)および錫(Sn)の合計の原子数との比(Si/(Si+Sn))が0.1以上0.98以下であり、酸素(O)の原子数と、珪素(Si)と錫(Sn)の合計の原子数の比(O/(Si+Sn))が、0.80以上2.00以下であってもよい。
【0019】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、透明酸化物層積層体に含まれる波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.75未満の透明酸化物層が酸化珪素(SiOx)を含み、且つ、透明酸化物層積層体に含まれる他の前記透明酸化物層が珪素(Si)と錫(Sn)とを含んでも良い。
【0020】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体は、透明酸化物層積層体が珪素(Si)と錫(Sn)とを含む透明酸化物層のみにより形成されていても良い。
【0021】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、樹脂基材と透明酸化物層積層体との間にアンダーコート層をさらに有し、アンダーコート層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂の少なくとも1つ以上から形成されても良い。
【0022】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、透明酸化物層がAl、Ga、Ge、Nb、Ta、W、Zn、Tiから選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含有していても良い。
【0023】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体は、透明酸化物層が窒素(N)を含んでいても良い。
【0024】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、樹脂基材と透明酸化物層との間にアンダーコート層を有し、該アンダーコート層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂の少なくとも1つ以上から形成されても良い。
【0025】
また、本発明に係る反射防止機能を有するガスバリア積層体において、アンダーコート層は、有機酸基を有するアクリル樹脂を含む組成物の硬化物からなる層であり、前記組成物がポリイソシアネートをさらに含み、前記アクリル樹脂がアクリルポリオール樹脂であってもよい。
【0026】
また、本発明の他の局面は、上述のガスバリア性積層体の製造方法であって、電極に電圧を周期的に印加可能であるマグネトロンスパッタリング装置を用いることにより透明酸化物層を成膜する工程を含む、ガスバリア性積層体の製造方法である。
【0027】
また、本発明に係るガスバリア性積層体の製造方法は、透明酸化物層を成膜する工程において、マグネトロンスパッタリング装置が、電圧が周期的に印加可能であり、電圧印加のオフタイムに、電圧印加とは正負の異なるパルスを印加してもよい。
【0028】
また、本発明の他の局面は、上述のガスバリア性積層体の製造方法は、二つの電極が並列に位置し、各電極に正負交互に電圧を印加可能であり、各々の電極が交互にカソード、アノードの役割を果たすマグネトロンスパッタリング装置を用いることにより透明酸化物層を成膜する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、良好な反射防止機能と水蒸気バリア性を有する、樹脂基材を用いた透明なガスバリア性積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態ついて図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る反射防止機能を有するバリア性積層体は、樹脂基材11と、樹脂基材11上に形成された屈折率の異なる透明酸化物層13、14で構成される透明酸化物層積層体20とを含む。透明酸化物層積層体20を構成する透明酸化物層13、14はそれぞれ、波長550nmの光の屈折率が1.43以上2.4以下であり、かつ、互いに異なり、光学膜厚(屈折率(n)×膜厚(d)で規定される値)が14.3以上840以下である。また、透明酸化物層積層体20を構成する透明酸化物層13、14の少なくとも1層は、珪素(Si)と錫(Sn)とを含む。さらに、透明酸化物層積層体20の表面での視感平均反射率が樹脂基材11の視感平均反射率以下である。透明酸化物層13、14は、一例であって、透明酸化物層積層体20に含まれる透明酸化物層は、2層以上であれば限定されない。
【0032】
(樹脂基材)
樹脂基材11の材料としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリイミド系、ポリアミド系(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等)などが挙げられるが特に限定されない。実際的には、用途や要求物性により適宜選定をすることが望ましく、電子部材、光学部材等の極端に水分を嫌う内容物を保護する包装には、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド類、ポリエーテルスルホンなどのそれ自体も高いガスバリア性を有する樹脂基材11を用いることが望ましいが、これらの例に限定されない。樹脂基材11の視感平均反射率は、使用する樹脂基材11の種類やグレードにもよるが、6%から10%程度であることが一般的である。
【0033】
また、樹脂基材11の厚みは限定するものではないが、用途に応じて、12μmから300μm程度が使用しやすい。この範囲内の厚さの樹脂基材11は、フレキシブルであるとともに、ロール状に巻き取ることもできるので好ましい。
【0034】
また、樹脂基材11の表面には、必要に応じて帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑り剤といった添加剤が含まれていてもよい。さらに、樹脂基材11の表面に、密着性を高めるため、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、易接着処理等の物理的処理や、酸やアルカリによる薬液処理等の化学的処理改質処理を施してもよい。樹脂基材11表面は真空成膜の初期成長段階における緻密性や密着性に寄与するものであり、平滑であることが望ましい。
【0035】
(透明酸化物層)
第1実施形態に係るバリア性積層体に用いられる透明酸化物層積層体20は、一例として、波長550nmの光の屈折率が1.75以上2.4以下の高屈折率である透明酸化物層13と、波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.75未満の低屈折率層である透明酸化物層14とを積層することで構成される。屈折率の異なる2以上の層により透明酸化物層積層体20を構成することで、反射率が極めて低く、反射防止性機能が高いバリア性積層体を得ることができる。透明酸化物層13,14の膜厚は、それぞれ10nm以上350nm以下であることが好ましい。10nm未満では、透明酸化物層で樹脂基材11表面を覆うことができず、十分なガスバリア性を得ることができない。また、350nmを超えると積層する際にクラックが発生しやすくなり、ガスバリア性が低下することがある。つまり、光学膜厚が14.3以上840以下であることが好ましい。
【0036】
透明酸化物層13,14の材料としては、インジウム(In)、錫(Sn)、チタン(Ti)、珪素(Si)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)、ビスマス(Bi)、セリウム(Ce)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、カリウム(K)、アンチモン(Sb)、ネオジウム(Nd)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)等の金属、あるいは、これらの金属の2種類以上からなる合金、これらの酸化物、窒化物、酸窒化物から選ぶことができる。ガスバリア性の向上及び、樹脂基材11との密着性向上、温湿度耐久性の向上、屈折率nの調整などが可能となる。
【0037】
また、珪素(Si)と錫(Sn)とを含む透明酸化物層13,14は、珪素(Si)の原子数と、珪素(Si)および錫(Sn)の原子数の合計との比(Si/(Si+Sn))が0.1以上0.98以下であり、酸素(O)の原子数と、珪素(Si)および錫(Sn)の原子数の合計との比(O/Si+Sn))は0.8以上2.00以下となるようにすることができる。また、珪素(Si)と錫(Sn)との原子数の比を変えることにより屈折率を調整することができる。上記の膜組成であるか否かを求める方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、XPS(X線光電子分析装置)等の分析装置で得られた結果で評価できる。
【0038】
また、透明酸化物層13,14は、珪素(Si)と錫(Sn)の金属元素に加え、Al、Ga、Ge、Nb、Ta、W、Zn、Tiから選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含有していてもよい。透明酸化物層13,14が、珪素(Si)と錫(Sn)のほかに、Al、Ga、Ge、Nb、Ta、W、Zn、Tiから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することで、ガスバリア性の向上および、樹脂基材11との密着性向上、温湿度耐久性の向上、屈折率nの調整などが可能となる。
【0039】
また、透明酸化物層積層体20に含まれる波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.75未満の透明酸化物層13、14が酸化珪素(SiOx)を含み、且つ、透明酸化物層積層体20に含まれる他の前記透明酸化物層13、14が珪素(Si)と錫(Sn)とを含んでもよい。
【0040】
また、透明酸化物層積層体20が珪素(Si)と錫(Sn)とを含む透明酸化物層13、14のみにより構成されていてもよい。
【0041】
また、珪素(Si)と錫(Sn)とを含む透明酸化物層13、14が窒素(N)を含んでもよい。
【0042】
透明酸化物層13、14は、従来公知の成膜方法によって形成される。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法等の物理的気相析出法やCVD法等の化学的気相析出法によって形成される。特に、膜厚均一性が高く、ピンホール等の欠陥が少ないため、視認性に優れ、緻密であり、耐摩擦性などの機械特性に優れた薄膜の形成が可能であるスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0043】
スパッタリング法の中でも、電極に電圧を周期的に印加可能であるマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリング法を用いることができる。さらに、電極に電圧を周期的に印加可能であり、電圧印加のオフタイムに、電圧印加とは正負の異なるパルスがかかる(パルス電圧を印加する)マグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリング法を用いてもよい。また、二つの電極が並列に位置し、各電極に正負交互に電圧を印加可能であり、その各々の電極が交互にカソード、アノードの役割を果たすマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリング法を用いてもよい。
【0044】
好ましくは、二つの電極が並列に位置し、各電極に正負交互に電圧を印加可能であり、その各々の電極が交互にカソード、アノードの役割を果たすマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリング法を用いる。このスパッタリング法は、真空チャンバー内に設置された二つの電極に、材料のターゲットを設置し、高電圧をかけてイオン化した希ガス元素(通常はアルゴンを用いる)をターゲットに衝突させて、ターゲット表面の原子をはじき出し、樹脂基材11上にターゲット元素を付着させ、透明酸化物層13を成膜する方法である。このスパッタリング法では、二つのターゲット間でアノードとカソードが交互に入れ替わるため、片側のターゲットが放電し成膜している際に、もう片方のターゲットが弱い逆電荷を帯びて、ターゲット表面の帯電を解消する。そのため、アーキング起因による膜へのダメージを、DCスパッタリング法やDCパルススパッタ法よりも抑えることができ、より安定的に高品質な膜を成膜することが可能である。このとき、電極に電圧を印加する電源は、特に指定は無く、交流(AC)でもDCでも良いが、DCパルス電源であることが望ましい。これは、印加する電圧波形をパルス波にした方が、電圧印加のオフタイムの際、アノードでのチャージアップの緩和に効果的であるためである。DCパルス電源の周波数は、特に限定されるものではなく適宜設定することができる。好ましくは、1kHz以上100kHz以下が望ましく、より好ましくは10kHz以上50kHz以下が望ましい。
【0045】
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、樹脂基材11上に上述した透明酸化物層13,14を積層して構成される。これにより、測定条件40℃、90%R.H.における水蒸気透過度を0.01g/(m
2・day)以下とすることができる。したがって、本実施形態によれば、良好なガスバリア性を有するガスバリア性積層体及びその製造方法を実現できる。
【0046】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係るガスバリア性積層体は、
図2に示すガスバリア性積層体のように、樹脂基材11と、樹脂基材11上に形成された屈折率の異なる透明酸化物層23、24、25で構成される透明酸化物層積層体21とを含む。透明酸化物層積層体21も透明酸化物層積層体20と同様に、透明酸化物層積層体21を構成する透明酸化物層23、24、25はそれぞれ、波長550nmの光の屈折率が1.43以上2.4以下であり、かつ、互いに異なり、光学膜厚(屈折率(n)×膜厚(d)で規定される値)が14.3以上840以下である。また、透明酸化物層積層体21を構成する透明酸化物層23、24、25の少なくとも1層は、珪素(Si)と錫(Sn)とを含む。さらに、透明酸化物層積層体21の表面での視感反射率が樹脂基材11の視感反射率以下である。
【0047】
透明酸化物層積層体21を構成する3層の屈折率としては、透明酸化物層23は、波長550nmの光の屈折率が1.6以上1.9未満である中屈折率層であり、透明酸化物層24は、波長550nmの光の屈折率が1.9以上2.4未満の高屈折率層であり、透明酸化物層25は、波長550nmの光の屈折率が1.43以上1.6未満の低屈折率層である。透明酸化物層23,24,25それぞれの膜厚は、10nm以上350nm以下が好ましい。10nm未満では、透明酸化物層で樹脂基材11表面を覆うことができず、十分なガスバリア性を得ることができない。また、350nm以上になると積層する際にクラックが発生しやすくなり、ガスバリア性が低下することがある。つまり、光学膜厚が14.3以上840以下であることが好ましい。
【0048】
透明酸化物層23,24,25は、透明酸化物層13,14と同様の材料種及び成膜方法を用いて形成することができる。
【0049】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、
図3に示すガスバリア性積層体のように、
図1に示すガスバリア性積層体の樹脂基材11と透明酸化物層13との間に、アンダーコート層12を設けたものである。
【0050】
アンダーコート層12は、樹脂基材11上に、樹脂基材11と透明酸化物層13との密着性を高め、透明酸化物層13の剥離発生を防止し、さらに引っ掻き傷や擦り傷などの機械的外傷から保護するために設けられる。アンダーコート層12の材料としては、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができる。
【0051】
アンダーコート層12を形成する熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも、OH基を含有するアクリルポリオールと、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート系化合物との複合物を用いて形成されることにより、樹脂基材11と透明酸化物層13との密着性を高めることができる。
【0052】
アクリルポリオールとは、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、又は(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物等のうち、末端と側鎖とにOH基を有するもので、イソシアネート系化合物のNCO基と反応するものである。(メタ)アクリル酸誘導体モノマーは、末端と側鎖とにOH基を有する。(メタ)アクリル酸誘導体モノマーの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等がある。
【0053】
上記のその他のモノマーは、末端と側鎖とにOH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーと共重合可能である。上記のその他のモノマーの例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の側鎖にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、(メタ)アクリル酸等の側鎖にCOOH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の側鎖に芳香環や環状構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー等が考えられる。(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外では、スチレンモノマー、シクロヘキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマー等が考えられる。上記のその他のモノマーは、それ自身が末端と側鎖とに、OH基を有していても良い。
【0054】
アクリルポリオールは、特に(メタ)アクリル酸等の側鎖にCOOH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。アンダーコート層12を形成する際、COOH基を有するモノマーを重合させて得られるアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物を用いて形成することにより、より高い水蒸気バリア性を有するガスバリア性積層フィルムを得ることができる。
【0055】
アンダーコート層12に使用可能な、OH基を含有するアクリルポリオールについて、特に限定しないが、OH基価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが望ましい。ここで、OH基価(mgKOH/g)とは、アクリルポリオール中の、OH基量の指標であり、アクリルポリオール1g中の、OH基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。また、アクリルポリオールの重量平均分子量は特に限定しないが、具体的には、3000以上200000以下であると好ましい。特に、5000以上100000以下であると好ましい。更に、5000以上40000以下であると、より好ましい。
【0056】
イソシアネート系化合物とは、その分子中に2個以上のNCO基を有するものである。モノマー系イソシアネートの例として、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)等の脂肪族系イソシアネート等が考えられる。また、これらのモノマー系イソシアネートの重合体若しくは誘導体も使用可能である。例えば、3量体のヌレート型、1,1,1−トリメチロールプロパン等と反応させたアダクト型、ビウレットと反応させたビウレット型等がある。
【0057】
イソシアネート系化合物は、上記のイソシアネート系化合物若しくはその重合体、誘導体から任意に選択して良く、1種類若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
アンダーコート層12の一例としては、上記のアクリルポリオールと上記のイソシアネート系化合物との複合物と溶媒とからなる溶液を樹脂基材11上に塗工し、反応硬化させることにより形成される。アクリルポリオールのOH基に対するイソシアネート化合物のNCO基の当量比(NCO/OH)は、0.3以上、2.5以下であることが好ましい。ここで用いられる溶媒は、上記アクリルポリオール及びイソシアネート系化合物を溶解する溶媒であれば良い。溶媒の例として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。なお、実際には、これらの溶媒を1種類若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
アンダーコート層12を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、エポキシポリオール、などの、OH基を2個以上有するポリオールや、ポリ酢酸ビニルやポリ塩化ビニルなどのポリビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂などから適宜選択される。さらに、これらを任意の比率で混合してもよい。ポリオールのOH基価は、特に限定しないが、10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが望ましい。
【0060】
アンダーコート層12を形成する紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂としては、有機高分子樹脂として、特に限定しないが、OH基価が10以上100mgKOH/g以下の範囲にある樹脂を少なくとも含むことが望ましい。また、有機高分子樹脂として、特に限定しないが、酸価が10以上100mgKOH/g以下の範囲にある樹脂を少なくとも含むことが望ましい。ここで、酸価(mgKOH/g)とは、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を示す。また、有機高分子樹脂として熱可塑性樹脂を少なくとも含むことが望ましい。OH基価又は酸価が10mgKOH/g未満であると、官能基と透明酸化物層13の表面との化学的な結合力が弱くなり、透明酸化物層13との密着性が低くなる傾向がある。OH基価又は酸価が100mgKOH/gを超えると、耐湿熱試験などの耐久性試験でアンダーコート層12の分解により生じたOH基を含む析出物がアンダーコート層12と透明酸化物層13との密着を阻害する傾向がある。
【0061】
アンダーコート層12を形成する紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂に利用できるモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルプロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレートなどが使用できる。この紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂に利用できるオリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどがある。
【0062】
アンダーコート層12を形成する有機高分子樹脂として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選択される2種以上を併用する場合、その配合比は特に限定されるものではない。
【0063】
アンダーコート層12は、有機高分子樹脂以外に必要に応じて添加物を更に含有していてもよい。添加物としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0064】
アンダーコート層12の膜厚は、0.05μm以上7.0μm以下が望ましい。特に、0.05μm以上0.3μm以下であると好ましい。0.05μmよりも薄いと、樹脂基材11と透明酸化物層13との密着性が不十分となる。7.0μmよりも厚いと内部応力の影響が大きくなり、透明酸化物層13がきれいに積層されず、バリア性の発現が不十分となり、さらに、透明性、塗工精度も不十分となる。
【0065】
アンダーコート層12の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法、有機蒸着法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射、電子線照射等の熱を加える方法を1種類若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、上記形成方法で別の樹脂基材にあらかじめコーティングされた膜を、粘着材転写、熱転写、UV転写等の転写法を用いて樹脂基材11に転写するのでもよい。
【0066】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、
図4に示すガスバリア積層体のように、
図2に示すガスバリア性積層体の樹脂基材11と透明酸化物層23の間にアンダーコート層12を設けたものである。アンダーコート層12の材料、形成方法、機能は、第3実施形態と同様である。
【実施例】
【0067】
<実施例1>
[樹脂基材の配置工程]
樹脂基材11として、厚さ50μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製、品名「ルミラーT60」)を使用した。
【0068】
[透明酸化物層の積層工程]
樹脂基材11の片面上に、透明酸化物層13,14を、二つの電極が並列に位置し、各電極に正負交互に電圧を印加可能であり、その各々の電極が交互にカソード、アノードの役割を果たすマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタ法(方式Aとする)により連続に積層し形成した。成膜条件としては、成膜圧力を0.30Pa、電力密度を3.3W/cm
2とした。また、2つの電極への電力投入手段としては、MF電源を用いた。その際、周波数40kHzの矩形電圧を、二つの並置した電極に加えた。ガスとしては、アルゴンガス、酸素ガスを用いた。このとき、ターゲット表面の状態が、金属モードから酸化物モードに遷移する途中の状態である遷移状態となるように、プラズマの発光強度および放電の電圧値を検知することで酸素ガスの流量を制御した。透明酸化物層13の形成には、ターゲットはSiとSnの合金ターゲット(原子組成比Si:Sn=10:90)を用いた。透明酸化物層14の形成には、Siのターゲットを用いた。膜厚100nm屈折率2.03の透明酸化物層13、膜厚100nm屈折率1.46の透明酸化物層14を順に積層することで、反射防止機能を有するガスバリア性積層体を得た。
【0069】
<実施例2>
透明酸化物層13の膜厚を10nm、透明酸化物層14の膜厚を120nmとした以外は実施例1と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0070】
<実施例3>
透明酸化物層13の膜厚を401nm、透明酸化物層14の膜厚を87nmとした以外は実施例1と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0071】
<実施例4>
[樹脂基材の配置工程]
実施例1と同様に、樹脂基材11として、厚さ50μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製、品名「ルミラーT60」)を使用した。
【0072】
[透明酸化物層の積層工程]
実施例1と同様のスパッタ条件として、透明酸化物層23の形成には、ターゲットはSiとSnの合金ターゲット(原子組成比Si:Sn=50:50)を用いた。透明酸化物層24の形成には、ターゲットはNbターゲットを用いた。透明酸化物層25は、Siのターゲットを用いた。膜厚50nm屈折率1.8の透明酸化物層23、膜厚100nm屈折率2.36の透明酸化物層24、膜厚100nm屈折率1.46の透明酸化物層25を順に積層することで、反射防止機能を有するガスバリア性積層体を得た。
【0073】
<実施例5>
透明酸化物層23の膜厚を50nm、透明酸化物層24の膜厚を10nm、透明酸化物層25の膜厚を100nmとした以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0074】
<実施例6>
透明酸化物層23の膜厚を50nm、透明酸化物層24の膜厚を350nm、透明酸化物層25の膜厚を100nmとした以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0075】
<実施例7>
透明酸化物層23の膜厚を10nm、透明酸化物層24の膜厚を10nm、透明酸化物層25の膜厚を100nmとした以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0076】
<実施例8>
透明酸化物層23の膜厚を350nm、透明酸化物層24の膜厚を350nm、透明酸化物層25の膜厚を100nmとした以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0077】
<実施例9>
透明酸化物層23の膜厚を50nm、透明酸化物層24の膜厚を100nm、透明酸化物層25の膜厚を55nmとした以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0078】
<実施例10>
透明酸化物層23の膜厚を50nm、透明酸化物層24の膜厚を100nm、透明酸化物層25の膜厚を291nmとした以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0079】
<実施例11>
実施例2と同様のスパッタ条件として、透明酸化物層24の形成に、SiとSnの合金ターゲット(原子組成比Si:Sn=10:90)を用いたこと以外は、実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0080】
<実施例12>
[樹脂基材の配置工程]
実施例1と同様に、樹脂基材11として、厚さ50μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製、品名「ルミラーT60」)を使用した。
【0081】
[アンダーコート層用の溶液の調液・塗工工程]
アンダーコート層12用の溶液として、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA)をモノマーとして共重合させて得られたアクリルポリオール(重量平均分子量10×10
3)を主剤とし、HDIヌレート型のイソシアネート系硬化剤を主剤のOH基量に対して1当量配合したメチルエチルケトン5%溶液を調製した。その後、樹脂基材11上に上記調製した溶液を塗工し、乾燥後の膜厚が200nmのアンダーコート層12を積層した。
【0082】
[屈折率層の積層工程]
アンダーコート層12上に、実施例1と同様に透明酸化物層13、14を積層し、ガスバリア性積層体を得た。
【0083】
<実施例13>
実施例12と同様に樹脂基材11上にアンダーコート層12を積層し、実施例2と同様に透明酸化物層23,24,25を積層することでガスバリア性積層体を得た。
【0084】
<実施例14>
透明酸化物層23の形成にSiとSnの合金ターゲット(原子組成比Si:Sn=62:38)を用いたこと以外は、実施例13と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0085】
<実施例15>
透明酸化物層13の成膜方法として、電極に電圧を周期的に印加可能であり、電圧印加のオフタイムに、電圧印加とは正負の異なるパルスがかかるマグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリング法(方式Bとする)を用いたこと以外は、実施例1と同様としてガスバリア性積層体を得た。このとき、電極への電力投入手段としては、DC電源を用いた。その際、周波数10kHz(オンタイム:95%、オフタイム:5%、オンタイムには負の電圧がかかり、オフタイムには正の電圧がかかる)のパルス電圧を電極へ加えた。成膜条件としては、成膜圧力を0.30Pa、電力密度を3.3W/cm
2とした。ガスとしては、アルゴンガス、酸素ガスを用い、酸化膜が得られるように酸素ガスの流量を調整した。
【0086】
<実施例16>
透明酸化物層13の形成に、SiとSnとAlから形成されるターゲットを用いたこと以外は、実施例1と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0087】
<実施例17>
透明酸化物層13の形成に、スパッタ条件における導入ガスとして、アルゴンガスと酸素ガスと窒素ガスを用いたこと以外は、実施例1と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0088】
<比較例1>
透明酸化物層14を用いず、透明酸化物層13のみの単層構成とした以外は実施例1と同様として、ガスバリア性積層体を得た。
【0089】
<比較例2>
透明酸化物層13の形成にNbターゲットを用いた以外は実施例1と同様として、ガスバリア性積層体を得た。
【0090】
<比較例3>
透明酸化物層13の形成に、ターゲットはSiとSnの合金ターゲット(原子組成比Si:Sn=10:90)を用い、膜厚を416nmとした以外は実施例1と同様として、ガスバリア積層体を得た。
【0091】
<比較例4>
透明酸化物層24の形成にNbターゲットを用い、透明酸化物層23にAlターゲットを用いた以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0092】
<比較例5>
透明酸化物層24の形成に、ターゲットはSiとSnの合金ターゲット(原子組成比Si:Sn=10:90)を用い、膜厚を416nmと以外は実施例4と同様として、ガスバリア性積層体を得た。
<比較例6>
透明酸化物層13の形成にNbターゲットを用いた以外は実施例4と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0093】
<比較例7>
透明酸化物層23の形成にNbターゲットを用い、透明酸化物層24にAlターゲットを用いた以外は実施例13と同様としてガスバリア性積層体を得た。
【0094】
<評価及び方法>
【0095】
[ガスバリア性積層体の視感平均反射率の測定]
実施例1から実施例17、及び比較例1から比較例7で作製したガスバリア性積層体について、自動分光光度計(日立製作所製、U―4000)を用い、光源及び受光器の入出角度をガスバリア性積層体に対して垂直から5°に設定し、2°視野の条件下で正反射方向の分光反射率を測定し、視感平均反射率を測定した。
【0096】
[ガスバリア性積層体のガスバリア性の測定]
実施例1から実施例17、及び比較例1から比較例7で作製したガスバリア性積層体について、JIS−K7129に準ずる方法を用いて、米国MOCON社製の水蒸気透過度計(AQUATRAN−ModelII)により、40℃90%RH(温度40℃、相対湿度90%)環境下での水蒸気透過度(g/m
2・day)を測定した。
【0097】
[測定結果]
測定結果を下記表1、表2に示す。
【表1】
【表2】
【0098】
第1実施形態に対応する実施例1から実施例3と比較例1を比較すると、透明酸化物層13、透明酸化物層14を積層した実施例1のほうが、透明酸化物層14のみの比較例1から比較例3に比べて、水蒸気透過率に良好な結果が得られた。
【0099】
第1実施形態に対応する実施例1から実施例3、実施例15と比較例2、比較例3を比較すると、透明酸化物層13にSiとSnの合金ターゲットを用いた実施例1から実施例3のほうが、透明酸化物層13にNbターゲットを用いた比較例2、比較例3に比べて、視感平均反射率、水蒸気透過率ともに良好な結果が得られた。
【0100】
第2実施形態に対応する実施例4から実施例11と比較例4と比較例5の比較においても、SiとSnの合金ターゲットを用いた実施例4から実施例11のほうが、比較例4と比較例5に比べ、水蒸気透過率が良好な結果が得られた。
【0101】
第3実施形態に対応する実施例12と比較例6を比較すると、SiとSnの合金ターゲットを用いた実施例12のほうが、比較例6に比べ、視感平均反射率、水蒸気透過率ともに良好な結果が得られた。
【0102】
第4実施形態に対応する実施例13、14、と比較例7を比較すると、SiとSnの合金ターゲットを用いた実施例13,14のほうが、比較例7に比べ、視感平均反射率、水蒸気透過率ともに良好な結果が得られた
【0103】
実施例16では、ターゲットの金属元素としてSiおよびSn以外の金属元素であるAlを含むターゲットを用いたが、ターゲットの金属元素としてSiおよびSnのみを含むターゲットを用いた実施例1と同様に、良好な視感平均反射率、水蒸気透過率の結果が得られた。
【0104】
実施例17では、スパッタ工程における反応ガスに、酸素ガスと同時に窒素ガスを用いたが、スパッタ工程における反応ガスに、酸素ガスのみを用いた実施例1と同様に、良好な視感平均反射率、水蒸気透過率の結果が得られた。
【0105】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。