【解決手段】耐水性を有する透明の基材2と、基材2上に配置される第一のインク受容層4と、第一のインク受容層4上に配置される第二のインク受容層6とを備える記録媒体10である。第一のインク受容層4が、カチオン性の第一の水不溶性樹脂を含有し、第二のインク受容層6が、無機粒子と、アニオン性の第二の水不溶性樹脂とを含有し、第一のインク受容層4及び第二のインク受容層6中の水溶性樹脂の合計の含有量が、第一のインク受容層4中の第一の水不溶性樹脂の含有量と、第二のインク受容層6中の第二の水不溶性樹脂の含有量と、第一のインク受容層4及び第二のインク受容層6中の水溶性樹脂との合計に対して、20質量%以下である。
耐水性を有する透明の基材と、前記基材上に配置される第一のインク受容層と、前記第一のインク受容層上に配置される第二のインク受容層と、を備える記録媒体であって、
前記第一のインク受容層が、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性の第一の水不溶性樹脂を含有し、
前記第二のインク受容層が、無機粒子と、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のアニオン性の第二の水不溶性樹脂と、を含有し、
前記第二のインク受容層中、前記第二の水不溶性樹脂の含有量が、前記無機粒子の含有量に対して、40質量%以上85質量%以下であり、
前記第一のインク受容層及び前記第二のインク受容層中の水溶性樹脂の合計の含有量が、前記第一のインク受容層中の前記第一の水不溶性樹脂の含有量と、前記第二のインク受容層中の前記第二の水不溶性樹脂の含有量と、前記第一のインク受容層及び前記第二のインク受容層中の水溶性樹脂との合計に対して、20質量%以下であり、
前記基材と前記第一のインク受容層を合わせたヘイズ値が、30%以下であることを特徴とする記録媒体。
前記第一のインク受容層中の前記第一の水不溶性樹脂の含有量が、前記第一のインク受容層全体に対して、60質量%以上100質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録媒体。
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の記録媒体にインクジェット方式により水性顔料インクを吐出して付与し、画像を記録する工程を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明者らは、屋外掲示用途にも適した耐水性を得るための記録媒体の構成について検討した。その結果、バインダーとしてインク受容層に含有させる水溶性樹脂の量を減少させるとともに、水溶性樹脂に代えて、疎水性が高く加水分解しにくい水不溶性樹脂を含有させることが有効であることを見出した。具体的には、インク受容層(第一のインク受容層及び第二のインク受容層)中の水溶性樹脂の合計の含有量を、インク受容層(第一のインク受容層及び第二のインク受容層)中の水不溶性樹脂及び水溶性樹脂の含有量の合計に対して、20質量%以下とする。
【0013】
特許文献1〜3で提案された記録媒体のインク受容層は水溶性樹脂を多く含有するため、耐水性が不十分であった。水不溶性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂の少なくとも1種を用いる。ポリエステル樹脂やポリエステル変性ウレタン樹脂は、疎水性が高い一方で、比較的加水分解しやすい樹脂である。このため、ポリエステル樹脂やポリエステル変性ウレタン樹脂をバインダーとして用いると、記録媒体の耐水性高めることが困難になる。
【0014】
さらに、本発明者らは、水性顔料インクを用いてバックプリント方式の記録媒体に高品位な画像を記録するための構成について検討した。その結果、以下に示す(i)〜(iii)の構成を採用することが有効であることを見出した。
(i)耐水性を有する透明の基材と、基材上に配置される第一のインク受容層と、第一のインク受容層上に配置される第二のインク受容層とを備える。
(ii)第二のインク受容層が、無機粒子と、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のアニオン性の第二の水不溶性樹脂とを含有する。
(iii)第二のインク受容層中、第二の水不溶性樹脂の含有量が、無機粒子の含有量に対して、40質量%以上85質量%以下である。
【0015】
図1は、本発明の記録媒体の一実施形態を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態の記録媒体10は、耐水性を有する透明の基材2と、基材2上に配置される第一のインク受容層4と、第一のインク受容層4上に配置される第二のインク受容層6とを備えるバックプリント方式の記録媒体である。この記録媒体10に画像を記録するには、記録面30であるインク受容層(第二のインク受容層6)に、例えば、インクジェット方式により吐出した水性顔料インク50を付与する。付与された水性顔料インク50は、インク受容層(第一のインク受容層4及び第二のインク受容層6)内に順次浸透するとともに、インク受容層内で顔料が凝集及び定着して画像が記録される。記録された画像は、鑑賞面20となる透明な基材20側から観察される。
【0016】
鑑賞面20側から観察される画像の品位を高めるには、記録面30に付与された水性顔料インク50中の顔料が、第二のインク受容層6の表面又はその近傍のみで凝集するのを抑制する必要がある。さらに、第一のインク受容層4と、第二のインク受容層6との界面近傍にまで水性顔料インク50を浸透させてから、水性顔料インク50中の顔料を凝集させて定着させることが好ましい。一般的な水性顔料インクに含まれる顔料は、アニオン性基を有する。このため、第二のインク受容層6に付与された水性顔料インクは、アニオン性の第二の水不溶性樹脂を含有する第二のインク受容層6の表面又はその近傍では定着しにくい。さらに、第二のインク受容層6中の第二の水不溶性樹脂の含有量が、無機粒子の含有量に対して、40質量%以上85質量%以下であると、水性顔料インク50は無機顔料の表面に定着しにくくなる。その結果、記録面30に付与された水性顔料インク50は、第一のインク受容層4と、第二のインク受容層6との界面近傍にまで浸透しやすくなる。
【0017】
さらなる検討の結果、本発明者らは、以下に示す(iv)及び(v)の構成を採用することで、鑑賞面側から観察される画像の品位を高めることが可能となることを見出した。
(iv)基材と第一のインク受容層を合わせたヘイズ値が、30%以下である。
(v)第一のインク受容層が、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性の第一の水不溶性樹脂を含有する。
【0018】
対象物(基材と第一のインク受容層の積層体)を透過するすべての光の透過率を全光線透過率「Tt」、対象物を透過するすべての光のうち、拡散光の透過率を拡散光透過率「Td」とする。この場合、対象物のヘイズ値(%)は「(Td/Tt)×100」で表され、対象物の透明性を示す指標となる。ヘイズ値が0%に近くなるほど拡散光の透過率が低くなるので、対象物の透明性は高くなる。
【0019】
また、特定のカチオン性の水不溶性樹脂を第一のインク受容層に含有させることで、第一のインク受容層と、第二のインク受容層との界面近傍に水性顔料インクを有効に定着させ、印字濃度が高く、インクの滲みが抑制された画像を記録することができる。
【0020】
<記録媒体>
本発明の記録媒体は、耐水性を有する透明の基材と、基材上に配置される第一のインク受容層と、第一のインク受容層上に配置される第二のインク受容層とを備える。本発明の記録媒体は、インクジェット用の記録媒体として好適である。以下、本発明の記録媒体の構成について詳細に説明する。
【0021】
(基材)
基材は、耐水性を有する、透明なフィルム状、シート状、又は板状の構成材である。基材としては、従来の記録媒体に用いられる公知のものを用いることができる。基材としては、ポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、セロハン、セルロイド、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルホン樹脂などの樹脂製のフィルム(プラスチックフィルム)や板(プラスチック板);ガラス板などを挙げることができる。基材は、これらは単独の材料で構成されていてもよく、2種以上の材料の混合物で形成されていてもよい。さらには、2種以上の材料を貼り合わせたものを基材として用いることもできる。
【0022】
基材としては、耐久性及びコストの観点から、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの樹脂製のフィルムを用いることが好ましい。画像濃度の観点から、基材のヘイズ値は30%以下であることが好ましい。
【0023】
基材の厚さ(膜厚)は、50μm以上400μm以下であることが好ましく、70μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。基材の厚さは、以下の方法にしたがって測定及び算出することができる。まず、マイクロトームで切り出した記録媒体の断面を走査型電子顕微鏡で観察する。そして、基材の任意の100点以上の厚さを測定し、その平均値を基材の厚さとする。なお、基材以外の層(膜)の厚さも同様の方法で測定及び算出する。
【0024】
(インク受容層)
本発明の記録媒体は、基材上に配置される第一のインク受容層と、第一のインク受容層上に配置される第二のインク受容層とを備える。すなわち、インク受容層は、第一のインク受容層及び第二のインク受容層を含む2層以上の積層構造を有する。以下、単に「インク受容層」というときは、「第一のインク受容層」と「第二のインク受容層」のいずれをも意味する。
【0025】
第一のインク受容層は、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性の第一の水不溶性樹脂を含有する。また、第二のインク受容層は、無機粒子と、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のアニオン性の第二の水不溶性樹脂とを含有する。以下、単に「水不溶性樹脂」というときは、「第一の水不溶性樹脂」と「第二の水不溶性樹脂」のいずれをも意味する。
【0026】
インク受容層の全体(第一のインク受容層及び第二のインク受容層)は、水溶性樹脂を実質的に含有しない(すなわち、0質量%)か、又は、少量の水溶性樹脂を含有する。具体的には、第一のインク受容層及び第二のインク受容層中の水溶性樹脂の合計の含有量は、以下に示すA、B、及びCの合計に対して、20質量%以下である。また、好ましくは0質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上10質量%以下である。水溶性樹脂としては、従来の記録媒体のインク受容層に一般的に配合されるポリビニルアルコールやポリビニルアルコール誘導体などを挙げることができる。
A:第一のインク受容層中の第一の水不溶性樹脂の含有量
B:第二のインク受容層中の第二の水不溶性樹脂の含有量
C:第一のインク受容層及び第二のインク受容層中の水溶性樹脂の含有量
【0027】
記録媒体を構成するインク受容層中の、水不溶性樹脂の合計含有量に対する、水溶性樹脂の合計含有量の比率(質量%)は、以下に示す方法にしたがって測定することができる。まず、記録媒体から掻き取ったインク受容層10gを80℃の温水1,000g以上に投入して撹拌し、得られた液体をろ過する。固形分を乾燥させた後、質量(X(g))を測定する。そして、[10(g)−X(g)]で算出される値を、インク受容層10g中の水溶性樹脂の含有量とする。次いで、記録媒体から掻き取ったインク受容層10gを600℃で2時間加熱し、得られた残存物の質量(Y(g))を測定する。そして、[10(g)−Y(g)]で算出される値を、インク受容層10g中のバインダー(水不溶性樹脂と水溶性樹脂の合計)の含有量とする。したがって、下記式(1)により、「水不溶性樹脂と水溶性樹脂の合計含有量に対する、水溶性樹脂の合計含有量の比率(質量%)」を得ることができる。
{[10(g)−X(g)]/[10(g)−Y(g)]}
×100 ・・・(1)
【0028】
第一のインク受容層中の第一の水不溶性樹脂の含有量は、第一のインク受容層全体に対して、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
インク受容層は、例えば、水不溶性樹脂を含有するインク受容層用の塗工液を基材などに塗工して形成した塗工層を乾燥することにより形成することができる。水不溶性樹脂は、インク受容層用の塗工液に樹脂粒子の状態(エマルジョンの状態)で含有されていることが好ましい。
【0030】
第一のインク受容層の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。第一のインク受容層の厚さを上記の範囲とすることで、鑑賞面側から観察される画像の品位をさらに高めることができる。
【0031】
第二のインク受容層の厚さは、5μm以上30μm以下であることが好ましく、7μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。第二のインク受容層の厚さを上記の範囲とすることで、鑑賞面側から観察される画像の品位をさらに高めることができる。
【0032】
第二のインク受容層に含有させる第二の水不溶性樹脂の水分散粒子径は、150nm以下であることが好ましい。その水分散粒子径が150nm以下である第二の水不溶性樹脂は、無機粒子に存在する一次細孔の内部に侵入しやすく、一次細孔を適度に塞ぐことになる。その結果、付与された水性顔料インクが無機粒子の表面に定着しにくくなり、第一のインク受容層と第二のインク受容層の界面近傍までより浸透しやすくなる。このため、鑑賞面側から観察される画像の品位をさらに高めることができる。
【0033】
[水不溶性樹脂]
インク受容層に含有させる水不溶性樹脂は、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、及びポリエーテル変性ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。イオン性が異なること以外、第一のインク受容層に含有されるカチオン性の第一の水不溶性樹脂と、第二のインク受容層に含有されるアニオン性の第二の水不溶性樹脂は、同様のものを用いることができる。
【0034】
(1)アクリル樹脂
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとして用いて得られる重合体を意味する。(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとして用いたものであれば、単重合体であっても、その他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0035】
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリルなどを挙げることができる。
【0036】
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどを挙げることができる。
【0037】
その他のモノマーとしては、ビニル系モノマーを挙げることができる。ビニル系モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、スチレンスルホン酸などのスチレン類及びその誘導体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドンなどのビニルエーテル類及びその誘導体;などを挙げることができる。
【0038】
アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。なかでも、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体は、モノマーの共重合比率によってガラス転移点を制御することができるために好ましい。
【0039】
アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は、−10℃以上20℃以下であることが好ましい。アクリル樹脂のガラス転移点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定することができる。
【0040】
(2)ウレタン樹脂(ポリカーボネート変性ウレタン樹脂、ポリエーテル変性ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂とは、その分子構造中にウレタン結合を有する樹脂を意味する。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、ポリオール、及び鎖延長剤を反応させて得られる樹脂であることが好ましい。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネート;などを挙げることができる。ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネート系ポリオールを挙げることができる。鎖延長剤としては、エチレングリコールなどの低分子グリコール、低分子ジアミン、低分子アミノアルコールなどの活性水素原子を含有する化合物を挙げることができる。
【0041】
ウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)は、−60℃以上0℃以下であることが好ましい。ウレタン樹脂のガラス転移点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定することができる。
【0042】
[無機粒子]
第二のインク受容層は、無機粒子を含有する。無機粒子としては、アルミナ水和物、アルミナ、シリカ、コロイダルシリカ、二酸化チタン、ゼオライト、カオリン、タルク、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムなどを挙げることができる。なかでも、インクの吸収性に優れた多孔質構造を形成しうるシリカを用いることが好ましい。
【0043】
シリカは、その製法により湿式法と乾式法(気相法)に大別される。湿式法としては、ケイ酸塩の酸分解により生成した活性シリカを適度に重合させた後、凝集沈降させて含水シリカを得る方法が知られている。一方、乾式法(気相法)としては、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)や、ケイ砂とコークスを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が知られている。なかでも、湿式法により得られるシリカ(湿式法シリカ)を用いることが好ましい。湿式法シリカとしては、沈降法シリカやゲル法シリカを挙げることができる。
【0044】
無機粒子は、インク受容層用の塗工液に分散剤によって分散されている状態で含有させることができる。分散状態での無機粒子の平均二次粒子径は、1μm以上17μm以下であることが好ましく、3μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。無機粒子の平均二次粒子径は、レーザー回折式の粒子径分布測定装置を使用して測定及び算出される体積平均粒子径を意味する。
【0045】
[その他の添加剤]
インク受容層には、上述の各種成分以外のその他の添加剤を含有させてもよい。その他の添加剤としては、架橋剤、pH調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料などを挙げることができる。
【0046】
架橋剤としては、アルデヒド系化合物、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、アミド系化合物、アルミニウム系化合物、ホウ酸、ホウ酸塩、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物などを挙げることができる。
【0047】
また、前述の水不溶性樹脂以外のカチオン性樹脂や多価金属塩をインク定着剤として第一のインク受容層に含有させることができる。カチオン性樹脂としては、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリジアリルアミン系樹脂、ジシアンジアミド縮合物などを挙げることができる。多価金属塩としては、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物などを挙げることができる。多価金属塩としては、カルシウム化合物が好ましく、硝酸カルシウム・4水和物がさらに好ましい。
【0048】
(記録媒体の製造方法)
本発明の記録媒体は、以下の各工程を有する製造方法にしたがって製造することができる。すなわち、本発明の記録媒体の製造方法は、インク受容層用の塗工液を基材に塗布して塗工層を形成する工程(塗工層形成工程)と、塗工層を乾燥してインク受容層を形成する工程(インク受容層形成工程)とを有する。なお、本発明の記録媒体は、第一のインク受容層及び第二のインク受容層が基材上に順次配置されたものである。このため、第一のインク受容層用の塗工液及び第二のインク受容層の塗工液をそれぞれ調製し、塗工層形成工程とインク受容層形成工程を順次繰り返すことで、第一のインク受容層及び第二のインク受容層を基材上に順次配置し、目的とする記録媒体を得る。
【0049】
塗工層形成工程では、インク受容層用の塗工液を基材に塗布して塗工層を形成する。基材に塗工液を塗布するには、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、トランスファーコーター、ダイコーター、キスコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーターなどを用いることができる。なお、適度に加温した塗工液を塗布してもよい。
【0050】
塗工液を塗工する前に、表面処理剤を含有する表面処理液を基材の表面に付与してもよい。これにより、基材に対する塗工液の濡れ性を向上させることができ、第一のインク受容層と基材との密着性を向上させることができる。表面処理剤としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンブタジエン共重合体などの熱可塑性樹脂;シランカップリング剤;などを挙げることができる。表面処理液には、必要に応じて無機粒子を含有させてもよい。無機粒子としては、第二のインク受容層に含有させることができる無機粒子と同様のものを挙げることができる。
【0051】
インク受容層形成工程では、塗工液を塗布して形成した塗工層を乾燥する。これにより、基材上に第一のインク受容層及び第二のインク受容層を順次形成して、目的とする記録媒体を得ることができる。塗工層を乾燥するには、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機を使用することができる。また、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波などを利用した乾燥機などを使用することもできる。
【0052】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、前述の記録媒体にインクジェット方式により水性顔料インクを吐出して付与し、画像を記録する工程を有する。インクジェット方式としては、インクに力学的エネルギーを付与して吐出する方式や、インクに熱エネルギーを付与して吐出する方式を挙げることができる。本発明のインクジェット記録方法の工程は、水性顔料インクを用いること、及び前述の記録媒体を用いること以外、公知のインクジェット記録方法の工程と同様にすればよい。
【0053】
水性顔料インクは、通常、水及び顔料を含有する。さらに、必要に応じて、水溶性有機溶剤及びその他の成分を含有する。その他の成分としては、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0054】
水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性顔料インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水性顔料インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0055】
顔料としては、公知の顔料を用いることができる。顔料の平均粒子径は、50nm以上180nm以下であることが好ましい。顔料の平均粒子径は、レーザー回折式の粒子径分布測定装置を使用して測定及び算出される体積平均粒子径を意味する。また、水性顔料インクは、アニオン性基を有する顔料を含有することが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは、特に断らない限り質量基準である。
【0057】
<基材の用意>
基材として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「テトロンHL92W」、帝人製)を用意した。このフィルムは、耐水性を有する透明な基材であり、ヘイズ値は0%である。
【0058】
<無機粒子分散液の調製>
表1に示す無機粒子をそれぞれ純水に添加した後、ミキサーで30分間撹拌し、固形分含有量が15.0質量%である無機粒子分散液を調製した。
【0059】
【0060】
<水不溶性樹脂エマルジョンの用意>
表2に示す種類の水不溶性樹脂のエマルジョンを用意した。
【0061】
【0062】
<水溶性樹脂の用意>
水溶性樹脂Aとして、ポリビニルアルコールの水溶液(商品名「JM−26」、日本酢ビ・ポバール製)を用意した。
【0063】
<インク受容層用の塗工液の調製>
(第一のインク受容層用塗工液)
表3に示す種類の水不溶性樹脂(エマルジョン)、水溶性樹脂、及び無機粒子(分散液)を、表3に示す乾燥固形分質量比となるように混合して、全固形分の含有量が15.0%である第一のインク受容層用塗工液を調製した。
【0064】
(第二のインク受容層用塗工液)
表4に示す種類の水不溶性樹脂(エマルジョン)、水溶性樹脂、及び無機粒子(分散液)を、表4に示す乾燥固形分質量比となるように混合して、全固形分の含有量が15.0%である第一のインク受容層用塗工液を調製した。
【0065】
<記録媒体の製造>
各成分を表3に示す組み合わせで含有する第一のインク受容層用塗工液を、表3に示す厚さとなるように基材表面に塗工して塗工層を形成した。その後、110℃の熱風で塗工層を乾燥して第一のインク受容層を形成した。形成した第一のインク受容層の厚さを表3に示す。次いで、形成した第一のインク受容層の表面に、各成分を表4に示す組み合わせで含有する第二のインク受容層用塗工液を、表4に示す厚さとなるように塗工して塗工層を形成した。その後、110℃の熱風で塗工層を乾燥して第二のインク受容層を形成し、各記録媒体を得た形成した第二のインク受容層の厚さを表4に示す。
【0066】
形成した第二のインク受容層を掻き取り、基材と第一のインク受容層を合わせたヘイズ値を測定した。測定したヘイズ値を表3に示す。また、ヘイズ値は、ヘーズメーター(商品名「NDH4000」、日本電色工業製)を使用し、JIS K 7105及びJIS K 7136に準拠して測定した。
【0067】
【0068】
【0069】
<評価>
以下に示す各項目の評価基準において、「AA」及び「B」を好ましいレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表5に示す。
【0070】
(耐水性)
各記録媒体を80℃の温水中に5時間浸漬した後で乾燥させた。第二のインク受容層の表面に75g/cm
2の荷重をかけて黒紙(商品名「ニューカラーR」、リンテック製)を押し付けるとともに、学振型摩擦堅牢度試験機を使用して黒紙を20回往復させる摩擦試験を行った。学振型摩擦堅牢度試験機としては、商品名「AB−301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER」(テスター産業製)を使用した。摩擦試験前後の黒紙の表面(第二のインク受容層の表面と接していた側の面)の光学濃度を、光学反射濃度計(商品名「500分光濃度計」、X−Rite製)を使用して測定した。そして、光学濃度の変化率を算出し、以下に示す評価基準にしたがって記録媒体の耐水性を評価した。光学濃度の変化率が大きいほど、削れたインク受容層が黒紙に付着していることになる。すなわち、水に濡れた後のインク受容層の強度が低下し、記録媒体の耐水性が低いことを意味する。
A:光学濃度の変化率が20%未満であった。
B:光学濃度の変化率が20%以上40%未満であった。
C:光学濃度の変化率が40%以上であった。
【0071】
(画像品位:印字濃度)
インクタンク(商品名「PFI−106」、キヤノン製)を装着したインクジェット記録装置(商品名「imagePROGRAF iPF6400」、キヤノン製)を用意した。このインクジェット記録装置では、解像度1,200dpi×1,200dpiで1/1,200インチ×1/1,200インチの単位領域に約4.5ngのインクを1滴付与する条件で記録した画像の記録デューティを100%と定義する。このインクジェット記録装置を使用し、温度23℃、相対湿度50%の条件で、記録デューティ150%のシアンインク(アニオン性基を有する顔料を含む水性顔料インク)のベタ画像を各記録媒体に記録した。光学反射濃度計(商品名「500分光濃度計」、X−Rite製)を使用し、記録してから24時間経過後の画像の光学濃度を基材側から測定し、以下に示す評価基準にしたがって印字濃度を評価した。
A:光学濃度が1.3以上であった。
B:光学濃度が0.8以上1.3未満であった。
C:光学濃度が0.8未満であった。
【0072】
(画像品位:インクの滲み)
上記の「印字濃度」の評価の同一の条件でベタ画像を各記録媒体に記録した。記録してから24時間経過後の画像を基材側から目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがってインクの滲みを評価した。
AA:インクの滲みがほとんど認められなかった。
A:インクの滲みが僅かに認められた。
B:インクの滲みが認められた。
C:インクの滲みが顕著に認められた。
【0073】