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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203430(P2020-203430A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】ゴム製品の造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20201127BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20201127BHJP
【FI】
   B29C64/153
   B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-112262(P2019-112262)
(22)【出願日】2019年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100202636
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 麻菜美
(72)【発明者】
【氏名】大澤 靖雄
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA45
4F213AB07
4F213AB16
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL23
4F213WL25
(57)【要約】
【課題】製品の形状変更に柔軟に対応できるとともに、高い造形精度を実現できる、ゴム製品の造形方法を提供すること。
【解決手段】ゴム製品の材料となる未架橋ゴム粉末に該粉末相互の付着防止処理を施し、前記付着防止済の原料ゴム粉末を供給するとともに、該供給部分に電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を順次繰り返すことによって、前記ゴム製品の形状に倣って前記架橋部分を積み重ねることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製品を造形する方法であって、
該ゴム製品の材料となる未架橋ゴム粉末に該粉末相互の付着防止処理を施し、
前記付着防止済の原料ゴム粉末を供給するとともに、該供給部分に電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を順次繰り返すことによって、前記ゴム製品の形状に倣って前記架橋部分を積み重ねることを特徴とする、ゴム製品の造形方法。
【請求項2】
前記成形は、ゴムの融点よりも低い温度環境下で行われる、請求項1に記載のゴム製品の造形方法。
【請求項3】
前記未架橋ゴム粉末は、酸化カルシウムを含む、請求項1又は2に記載のゴム製品の造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴム製品の造形方法に関し、特に、製品の形状変更に柔軟に対応できる、ゴム製品の造形に好適な方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム製品の造形においては、未加硫ゴムを製品の形状に合わせた金型に入れて、熱及び圧力を加えて加硫することによって製品を造形する方法(特許文献1)や、未加硫ゴムを製品よりも大きい金型に入れて、熱及び圧力を加えて加硫した後に、切削等の機械加工を経て製品の形状とする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−107514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、製品の形状に合わせた金型を用いる方法では、製品の仕様変更等によって製品の形状に変更が生じた場合に、金型の修正や金型を新たに作り直すことが必要とされ、加工の手間や製造コストが課題とされていた。また、製品よりも大きな金型を用いる方法では、ゴムの物性によって、機械加工による寸法精度等の造形精度に改善の余地がある場合があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、製品の形状変更に柔軟に対応できるとともに、高い造形精度を実現できる、ゴム製品の造形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らが、前記課題を解決する手段について鋭意究明したところ、材料の供給及び材料の性質に応じた処理による成形を繰り返して、所望の製品の形状に倣って積み重ねることにより、金型を用いることなく、所望の製品形状を得ることができることに想到した。発明者らは、上記積層造形についてさらに究明したところ、ゴム製品においては、材料となる未架橋ゴムの粉末に適切な処理を施し、さらに、未架橋ゴムの粉末を架橋させることによって、積層造形を適用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
本発明のゴム製品の造形方法は、
該ゴム製品の材料となる未架橋ゴム粉末に該粉末相互の付着防止処理を施し、
前記付着防止済の原料ゴム粉末を供給するとともに、該供給部分に電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を順次繰り返すことによって、前記ゴム製品の形状に倣って前記架橋部分を積み重ねることを特徴とする。
本発明の造形方法によれば、製品の形状変更に柔軟に対応できるとともに、高い造形精度を実現できる。
なお、「原料ゴム粉末を供給するとともに、該噴射部分に電子線を照射する」とは、原料ゴム粉末の供給と、電子線の照射が同時に行われることが好ましいが、原料ゴム粉末の供給が電子線の照射よりも先であったり、電子線の照射が原料ゴム粉末の供給よりも先であることも含まれる。
【0008】
本発明のゴム製品の造形方法において、前記成形は、ゴムの融点よりも低い温度環境下で行われることが好ましい。
この構成によれば、熱によってゴムに発生する虞のある気泡を抑制し、気泡部分から割れや裂けが生じるのを防止することができる。
【0009】
本発明のゴム製品の造形方法において、前記未架橋ゴム粉末は、酸化カルシウムを含むことが好ましい。
この構成によれば、熱によってゴムに発生する虞のある気泡を抑制し、気泡部分から割れや裂けが生じるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、金型を用いることなく、製品の形状変更に柔軟に対応できるとともに、高い造形精度を実現できる、ゴム製品の造形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るゴム製品の造形方法の概要を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係るゴム製品の造形方法によって造形されるゴム製品の一例を示す図である。
図3】薄片について説明するための図である。
図4】積層造形装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図5A】原料ゴム粉末の始端部の成形について説明するための模式的斜視図である。
図5B】薄片に対応する層が造形された状態を示す模式的斜視図である。
図5C】薄片に対応する層が造形された状態を示す模式的断面図である。
図5D】薄片に対応する層が造形された後の処理について説明するための模式的断面図である。
図5E】次の薄片に対応する次の層の造形について説明するための模式的断面図である。
図5F】成形が繰り返されて、層が積み重ねられた状態を示す、模式的断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るゴム製品の造形方法によって造形されるゴム製品の他の例を示す透視斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るゴム製品の造形方法によって造形されるゴム製品の別の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るゴム製品の造形方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るゴム製品の造形方法の概要を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るゴム製品の造形方法は、ゴム製品の材料となる未架橋ゴム粉末に該粉末相互の付着防止処理を施し(工程S1)、ゴム製品の複数の薄片のデータを取得し(工程S2)、付着防止済の原料ゴム粉末を供給するとともに、該供給部分に電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を順次繰り返すことによって、ゴム製品の形状に倣って架橋部分を積み重ねる(工程S3)ことによって、ゴム製品を造形する。
【0014】
図2は、本実施形態に係るゴム製品の造形方法で造形されるゴム製品の一例である、ゴム製品10を示している。図2に示すように、ゴム製品10は、例えば円筒状とすることができる。
【0015】
ここで、薄片とは、造形されるゴム製品の積層方向に沿う軸と直交する多数の面で切断して区画される層を意味している。
【0016】
ゴム製品10の例では、Z軸方向を積層方向(高さ)とするとき、円筒状の三次元形状を、Z軸方向と直交する多数の面で切断すると、複数のスライスされた層が形成される。図3に示される、複数のスライスされた層の各層が、ゴム製品10の薄片である。なお、図2及び図3では、ゴム製品10の積層造形の積層方向は、Z軸方向を指すが、造形されるゴム製品の形状や大きさ等に応じて、好適な向きを積層方向とすることができる。
【0017】
また、図3では、ゴム製品10のZ軸方向における最初の層から3層目までの薄片L1〜L3を示しているが、実際には、ゴム製品10は、ゴム製品10の造形に必要な層数の薄片L1〜LN(Nは自然数)のデータに変換される。
【0018】
このように、ゴム製品10の形状を、複数の薄片のデータに変換した上で、このデータに基づく造形経路に従って架橋部分を積み重ねることによって、ゴム製品10を造形する。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0019】
[付着防止処理]
付着防止処理工程S1においては、ゴム製品10の材料となる未架橋ゴム粉末に、該粉末相互の付着防止処理を施す。
【0020】
本発明における未架橋ゴム粉末を構成する材料は、ゴム製品に適した材料を用いることができる。ゴム粉末としては、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムの粉末を使用することができ、なかでも天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)の粉末が好ましい。これらゴム粉末は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、未架橋ゴム粉末は、天然ゴム及び合成ゴム以外の他の材料を含んでいてもよい。他の材料として、カーボンブラックやシリカ等の充填剤、軟化剤、老化防止剤、亜鉛華、架橋促進剤、等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択することができる。なお、他の材料は、予め未架橋ゴム粉末に含まれている場合だけでなく、未架橋ゴム粉末の付着防止処理後に配合してもよい。
【0022】
さらに、他の材料の例として、酸化カルシウムを配合してもよい。未架橋ゴム粉末に酸化カルシウムを配合することによって、ゴムの架橋時に、ゴムが融点以上の温度に加熱された場合であっても、熱によってゴムに発生する虞のある気泡を抑制し、気泡部分から割れや裂けが生じるのを防止することができる。
【0023】
未架橋ゴム粉末に対する粉末相互の付着防止処理とは、各粉末が相互に付着することを防止する処理を施すことを指し、未架橋ゴム粉末の表面を、付着防止剤によって被覆することが好適である。付着防止剤として、例えば、合成樹脂、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、カーボンブラック、等のいずれか又は複数の付着防止剤を組み合わせて用いることができる。
【0024】
未架橋ゴム粉末の表面を、付着防止剤によって被覆する手段は特に限定されないが、例えば、未架橋ゴム粉末よりも小さい径を有する粉末状の付着防止剤を、未架橋ゴム粉末と撹拌混合して、未架橋ゴム粉末の表面を被覆することができる。また、付着防止剤の溶解液又は水分散液を未架橋ゴム粉末の表面に塗布して、未架橋ゴム粉末の表面を被覆してもよい。付着防止剤の溶解液又は水分散液を用いる手段によれば、未架橋ゴム粉末の表面に均一な厚みの被覆層を形成しやすいが、塗布後に未架橋ゴム粉末の乾燥工程が必要となる。製造工程の増加を防止する観点からは、粉末状の付着防止剤を用いる手段が好ましい。
なお、上記付着防止処理工程は、ゴム製品10の材料となる未架橋ゴム粉末の準備に含まれる工程としてもよく、未架橋ゴム粉末の準備の後に別工程として行ってもよい。
【0025】
上記付着防止処理工程によれば、未架橋ゴム粉末同士の付着を防ぐことができる。即ち、未架橋ゴム粉末同士が付着することによる塊が形成されることがなく、未架橋ゴム粉末のハンドリングが容易になる。特に、未架橋ゴム粉末を保存、又は後述する積層造形装置100に適用した際に、ゴム製品の造形精度を高めるとともに、未架橋ゴム粉末の保存及び供給を容易に行うことができる。
【0026】
なお、付着防止処理が施された未架橋ゴム粉末(以下、原料ゴム粉末という)の平均径は、1〜500μmとすることが好ましい。1μm以上とすることによって、保存時等における浮遊を抑制できるとともに、原料ゴム粉末同士の粉末の付着をより効果的に抑制することができ、500μm以下とすることによって、ゴム製品の造形精度をより高めることができる。
【0027】
以下に示す薄片データ取得工程以降では、原料ゴム粉末を用いて、ゴム製品10の造形を行う。本発明に係るゴム製品の造形方法を実現できれば、造形装置は特に限定されないが、例えば、以下の態様の積層造形装置100を用いることができる。
【0028】
図4は、積層造形装置100の構成を模式的に示す斜視図である。なお、以下、積層方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する任意の面における、直交する2方向をX軸及びY軸として説明する。
【0029】
積層造形装置100は、図4に示すとおり、造形テーブル110、粉末供給ノズル120及び電子線照射手段130を備えている。
【0030】
造形テーブル110は、ゴム製品を造形するための造形テーブル本体111を備え、造形テーブル111の頂面に表面111aが配置されている。造形テーブル110は、図示例では矩形板状であるが、円柱形状や多角形柱状等としてもよい。
【0031】
また、造形テーブル110は、支持部112によって支持されていてもよい。支持部112は、位置を可変に支持することができる。支持部112は、XYZ軸方向のうち、一部又は全ての方向に、造形テーブル110の位置を調整することができる。造形テーブル110のZ軸方向における位置を調整する手段として、例えば、油圧や空圧を用いたピストン部材、又は、ボールねじを備えることができる。また、造形テーブル110のXY軸方向における位置を調整する手段として、例えば、XY軸方向に案内するガイド部材や、造形テーブル110の平面視における一点を中心として回転させる回転部材を備えることができる。
なお、造形テーブル110は、不動に支持されることもできる。
【0032】
積層造形装置100には、表面111aに対してZ軸方向に離隔して、粉末供給ノズル120が配置されている。粉末供給ノズル120は任意のものを用いることができるが、図示例では、粉末供給ノズル120は、粉末収容部121及び粉末吐出部122を備えている。
【0033】
粉末供給ノズル120において、粉末収容部121は、原料ゴム粉末を内部に収容することができる。図示例では、円柱形状に区画された空間であるが、形状は特に限定されない。また、粉末収容部121は、粉末収容部121に原料ゴム粉末を直接充填できる構成としても良く、他の収容部(図示せず)に充填された原料ゴム粉末を、管等を介して受容する構成としても良い。
【0034】
粉末吐出部122は、粉末収容部121に連通する粉末吐出通路122aと、粉末吐出通路122aから外部に開口する粉末吐出口122bとを有している。粉末吐出部122は、粉末収容部121に充填された原料ゴム粉末を、粉末吐出通路122aを介して、粉末吐出口122bから外部に供給することができる。
【0035】
なお、粉末供給ノズル120は、原料ゴム粉末を外部に噴射して供給する構成としてもよい。例えば、粉末吐出口122b又は粉末吐出口122bの周辺に、不活性ガスの噴出手段を備え、粉末吐出口122bから、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウム等の不活性ガスを、原料ゴム粉末とともに吐出することによって、原料ゴム粉末を造形テーブル110の表面111aに噴射して供給することができる。
【0036】
また、粉末供給ノズル120は、支持機構123(図示せず)を備えていてもよい。支持機構123は、粉末供給ノズル120を支持するとともに、XYZ軸方向における位置を調整することができる。
【0037】
さらに、粉末供給ノズル120は、原料ゴム粉末の供給量、供給速度及び供給径等を調整することができる。
【0038】
なお、図4では、粉末供給ノズル120は、2つ記載されているが、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
【0039】
積層造形装置100には、表面111aに対してZ軸方向に離隔して、電子線照射手段130が配置されている。電子線照射手段130は任意のものを使用することができるが、少なくとも1つの電子線源131及び電子線調整手段132を備えることが好適である。
【0040】
電子線源131は、熱電子放出型の電子銃とすることができる。より具体的には、例えば、タングステン、LaB6、CeB6等で構成される陰極の加熱によって熱電子を発生させ、熱電子を加速させることによって電子線を生成する。
【0041】
また、電子線調整手段132は、例えば、磁場発生部132a及びフォーカス制御部132bを備えることができる。磁場発生部132aは、電子線源131によって生成された電子線に対して、永久磁石、電磁石等の磁力によって、収束、偏向等の調整を行うことができる。また、フォーカス制御部132bは、光学レンズ、電磁性のレンズ等によって、電子線の照射対象における焦点を調整することができる。なお、図示例では、1つの電子線源131が記載されているが、電子線源131は、複数としてもよく、各々が異なる照射条件によって制御されるものとしてもよい。
【0042】
また、電子線照射手段130は、支持機構133(図示せず)を備えていてもよい。支持機構133は、電子線照射手段130を不動に支持してもよく、電子線照射手段130を支持するとともに、粉末供給ノズル120のXYZ軸方向における位置を調整することができる。
【0043】
また、積層造形装置100は、チャンバ(図示せず)等に収容されることによって、電子線照射手段130の動作中、真空に近い環境で用いることができる。
【0044】
さらに、積層造形装置100は、制御装置200にネットワーク接続されることができる。制御装置200は、中央処理装置等のハードウェアプロセッサを含み、薄片データ取得部201及び造形制御部202を有している。
【0045】
薄片データ取得部201は、ゴム製品10を造形するのに必要な薄片のデータを取得することができる。
【0046】
造形制御部202は、薄片のデータに基づいて、ネットワークを介して、積層造形装置100の各構成部に指示及び情報提供を行い、積層造形を制御することができる。即ち、造形制御部202は、積層造形装置100を構成する、造形テーブル110、粉末供給ノズル120及び電子線照射手段130等の各動作を制御することができる。
【0047】
本実施形態に係るゴム製品の造形方法における、薄片データ取得工程S2以降の各工程について、積層造形装置100を用いた例によって、以下に詳述する。
【0048】
[薄片データ取得]
薄片データ取得工程S2においては、ゴム製品10を造形するために必要な、ゴム製品10の薄片データを、制御装置200の薄片データ取得部201によって取得する。
【0049】
薄片データは、例えば、ゴム製品10の三次元造形データを変換することによって、取得することができる。より具体的には、薄片データ取得部201は、制御装置200に接続され、又は制御装置200に情報送信が可能な他のコンピュータ等の装置から、三次元造形データを取得する。ここで、ゴム製品10を造形するための三次元造形データとは、例えば、三次元CADで設計された三次元造形データ、又は、三次元スキャナやデジタイザ等で取り込んだ三次元造形データ等である。三次元造形データは、三次元のゴム製品10の表面が三角形の集合体として表現されたSTLフォーマット(Standard Triangulated Language)に変換されていてもよい。このゴム製品10の三次元造形データを、薄片データ取得部201が取得し、薄片L1〜LN(Nは自然数)のデータに変換する。なお、薄片データは、薄片L1〜LNのデータを指し、薄片L1〜LNのデータに基づく造形経路のデータを含むことができる。
【0050】
また、制御装置200に接続され、又は制御装置200に情報送信が可能な他のコンピュータ等の装置によって、三次元造形データから薄片データに変換された後に、その薄片データを薄片データ取得部201が取得するものとしてもよい。
【0051】
[原料ゴム粉末供給及び電子線照射]
薄片データ取得後の工程S3以降について、図5A図5Fを参照して説明する。なお、図5A以降の図面では、制御装置200は省略している。
【0052】
薄片データ取得後、付着防止済の原料ゴム粉末を供給するとともに、該供給部分に電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を行い、成形を順次繰り返すことによって、ゴム製品の形状に倣って架橋部分を積み重ねる。
【0053】
図5Aは、薄片L1に対応する層M1において最初に成形される部分である、始端部LM1の成形について説明するための図である。なお、始端部LM1の位置は、薄片L1のデータに基づく造形経路に従って決定することができる。
【0054】
図5Aに示すように、付着防止済の原料ゴム粉末を、造形テーブル110の表面111a上に供給する。付着防止済の原料ゴム粉末の供給手段は特に限定されないが、例えば、粉末供給ノズル120を用いることができる。粉末供給ノズル120は、粉末収容部121に原料ゴム粉末が充填され、原料ゴム粉末を、粉末吐出部122の粉末吐出通路122aを介して、粉末吐出口122bから外部に供給することができる。
【0055】
なお、粉末供給ノズル120は、粉末吐出口122bからの原料ゴム粉末の供給速度等を調整するため、不活性ガスを用いることもできる。例えば、粉末吐出口122bから、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウム等の不活性ガスを、原料ゴム粉末とともに吐出することによって、原料ゴム粉末を造形テーブル110の表面111aに噴射して供給することができる。
【0056】
粉末供給ノズル120による原料ゴム粉末の供給位置は、始端部LM1が成形されるべき位置であり、粉末供給ノズル120の支持機構123によって調整することができる。
【0057】
さらに、始端部LM1の形状及び厚みに応じて、粉末供給ノズル120によって、原料ゴム粉末の供給量、供給速度及び供給径を調整することができる。
【0058】
なお、始端部LM1の厚みt1は、薄片L1に対応する厚みであり、後述する電子線の照射条件や、原料ゴム粉末の平均粒径等に応じて適宜調整することができるが、厚み方向に亘って均一に架橋させるため、500μm以下とすることが好適である。
【0059】
また、図示例では、2つの粉末供給ノズル120を用いて、原料ゴム粉末を供給しているが、1つ又は3つ以上の粉末供給ノズル120を用いてもよい。複数の粉末供給ノズル120を用いる場合は、各粉末供給ノズル120に、それぞれ異なる種類の原料ゴム粉末を充填してもよく、一部の粉末供給ノズル120に、原料ゴム粉末以外の材料を充填してもよい。各粉末供給ノズル120に異なる種類の原料ゴム粉末を充填すれば、ゴム製品10の造形条件によって、造形途中で原料ゴム粉末の種類を変更することができるため、複数の異なる原料ゴム粉末を用いたゴム製品を容易に造形することができる。また、複数の粉末供給ノズル120から、複数の原料ゴム粉末又は原料ゴム粉末と他の材料を同時に供給することによって、粉末供給ノズル内で材料を混合することなく、造形テーブル110の表面111a上で混合することができる。
【0060】
上記の原料ゴム粉末の供給とともに、原料ゴム粉末の供給部分に、電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を行う。電子線の照射手段は特に限定されないが、例えば、電子線照射手段130を用いることができる。電子線照射手段130の電子線源131によって生成された電子線は、磁場発生部132aによって、収束及び偏向され、始端部LM1が成形されるべき位置に照射される。なお、電子線の照射位置は、支持部112によって、造形テーブル110の位置を調整することによって、始端部LM1が成形されるべき位置に、電子線が照射されるように調整されてもよい。あるいは、磁場発生部132aによって調整されてもよく、支持機構133によって電子線照射手段130の位置を調整することによって、調整されてもよい。また、フォーカス制御部132bによって、電子線がジャストフォーカスとなる位置、即ち焦点を調整することができる。
【0061】
電子線を、造形テーブル110の表面111a上における、原料ゴム粉末の供給部分であるとともに、始端部LM1が形成されるべき位置に照射すると、各原料ゴム粉末のゴム分子に、高速電子によるエネルギーが与えられる。高速電子によって、分子結合が開裂してラジカルが生成され、分子鎖間でラジカルが反応して三次元構造が形成されることによって、架橋反応が生じる。
【0062】
電子線による架橋手段によれば、電子線を照射する位置を制御することによって、架橋させたい箇所を変えられるため、金型の準備等の手間が不要であり、製品の形状変更にも柔軟に対応することができる。さらに、高い造形精度を実現することができる。また、金型から抜けにくい形状や、金型では造形できない、複雑な形状のゴム製品も造形することができる。
【0063】
電子線の照射条件は、造形しようとするゴム製品10の薄片データに基づき、制御装置200によって制御することができる。電子線の具体的な照射条件は、始端部LM1の形状や厚み、及び原料ゴム粉末の平均径等によって適宜調整することができる。例えば、以下の照射条件とすることができる。
【0064】
例えば、電子線のフォーカシングは、ゴムの架橋反応を十分に発生させるため、供給部分の表面(始端部LM1の表面)にジャストフォーカスとなるように設定することが好適である。
【0065】
なお、電子線の照射時の温度は特に限定されないが、原料ゴム粉末の供給及び電子線の照射は、ゴムの融点よりも低い温度環境下で行われることが好適である。上記構成によれば、加熱を伴うゴムの加硫手段に比べて、低い温度で架橋反応を生じさせることができるため、加熱によってゴムに発生する虞のある気泡を抑制し、気泡部分から割れや裂けが生じるのを防止することができる。
【0066】
さらに、電子線の照射は、酸素によるラジカルの失活を防ぐため、高真空環境において行われることが好ましい。例えば、積層造形装置100がチャンバ等に収容されている場合、チャンバ内を高真空とする。
【0067】
上記のとおり、原料ゴム粉末の供給及び供給部分への電子線の照射によって、始端部LM1として、架橋部分を成形することができる。
【0068】
図5Bは、薄片L1に対応する層M1が造形された状態を示す模式的な斜視図である。図5Cは、薄片L1に対応する層M1が造形された状態を示す模式的断面図であり、図5BのII―II線に沿う断面を模式的に示している。薄片データに基づく造形経路のデータに従って、原料ゴム粉末の供給位置及び電子線の照射位置を調整しながら、原料ゴム粉末の供給及び供給部分への電子線の照射を順次繰り返すことによって、図示例のとおり、薄片L1に対応する、円環状の層M1を造形することができる。
【0069】
図5Dは、薄片L1に対応する層M1が造形された後の処理について説明するための図である。層M1が造形された後、薄片L1に積み上げられる次の薄片L2に対応する層M2を造形するために、Z軸方向における、原料ゴム粉末の供給位置及び電子線の照射位置を調整する。図示例では、造形テーブル110を、層M1の厚み分だけ下降させることによって、原料ゴム粉末の供給位置及び電子線の照射位置を調整している。なお、図示例の調整手段に限定されず、粉末供給ノズル120及び電子線照射手段130のZ軸方向における位置を、層M1の厚み分だけ上昇させることによって、原料ゴム粉末の供給位置及び電子線の照射位置を調整してもよい。
【0070】
図5Eは、次の薄片L2に対応する次の層M2の造形について説明するための図である。図5Eに示すように、原料ゴム粉末を、粉末供給ノズル120によって層M1の表面の上に供給する。
【0071】
粉末供給ノズル120による原料ゴム粉末の供給位置、供給量、供給速度及び供給径等は、層M1における始端部LM1の成形と同様に、適宜調整することができる。
【0072】
上記の原料ゴム粉末の供給とともに、層M1の表面の上における、原料ゴム粉末の供給部分に、電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を行う。
【0073】
電子線の照射条件は、層M1における始端部LM1の成形時における照射条件と同様であっても良く、異ならせることもできる。
【0074】
例えば、最初の層M1においては、電子線のフォーカシングは、供給部分の表面にジャストフォーカスとなるように制御し、次の層M2においては、複数の電子線供給源によって、供給部分の表面と、層M2の直下に隣接した層M1の境界のそれぞれに、電子線がジャストフォーカスとなるように制御してもよい。上記構成によれば、層M2における供給部分を十分に架橋させるとともに、隣接する層M1及びM2の架橋部分同士を貼り合わせることができる。
なお、電子線のフォーカシングは、常に同じフォーカシングとなるように制御することもでき、フォーカシングを変更することもできる。
【0075】
また、層M2の造形においても、電子線の照射時の温度は特に限定されないが、層M1の造形時と同様に、ゴムの融点よりも低い温度環境下で行われることが好適である。上記構成によれば、造形精度をさらに高められるとともに、ゴム製品の加熱による劣化を防止することができる。
【0076】
図5Fでは、架橋部分の成形が繰り返されて、層M1〜M8が積層された状態を示している。上述のように層M2の造形を行った後、薄片L2に積み上げられる次の薄片L3に対応する層M3を造形するために、Z軸方向における、原料ゴム粉末の供給位置及び電子線の照射位置を調整し、直前に造形された層の表面に原料ゴム粉末を供給するとともに、該供給部分に電子線を照射して、該照射部分を架橋させる、成形を順次繰り返すことによって、ゴム製品10の形状に倣って架橋部分を積み重ねて、ゴム製品10を造形する。
【0077】
上記の各工程を含むゴム製品の造形方法によって、製品の形状変更に柔軟に対応可能できるとともに、高い造形精度を実現できる。さらに、ゴム製品10の形状に倣って原料ゴム粉末を供給するので、未架橋の原料ゴム粉末の処理を行う必要がなく、仮に未架橋の原料ゴム粉末が残っても少量であるため、作業時間を短縮することができる。
【0078】
なお、ゴム製品の他の例として、図6に示すように、円柱の内部に、円柱形状の中空11aが形成された形状のゴム製品11とすることもできる。上記工程S1〜S3を含むゴム製品の造形方法によれば、中空11aを有するゴム製品11を造形することができる。さらに、上記造形方法によれば、ゴム製品11の形状に倣って原料ゴム粉末を供給するため、中空11aに未架橋の原料ゴム粉末がほとんど残留しない。よって、未架橋の原料ゴム粉末の処理を行うことなく、容易に中空のゴム製品を造形することができる。
【0079】
ゴム製品の別の例として、図7に示すように、外周全体が曲線からなり、内部に中空が形成された形状のゴム製品12とすることもできる。上記工程S1〜S3を含むゴム製品の造形方法によれば、中空を有するゴム製品12を造形することができる。さらに、上記造形方法によれば、ゴム製品12の形状に倣って原料ゴム粉末を供給するので、中空に未架橋の原料ゴム粉末がほとんど残留しない。よって、容易に中空のゴム製品を造形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のゴム製品の造形方法は、防振ゴム、免震ゴム、タイヤ及びタイヤ用トレッド等のゴム製品の造形に適用されると、好適なものである。
【符号の説明】
【0081】
10、11、12:ゴム製品、 100:積層造形装置、 110:造形テーブル、 111:造形テーブル本体、 111a:表面、 112:支持部、 120:粉末供給ノズル、 121:粉末収容部、 122:粉末吐出部、 122a:粉末吐出通路、 122b:粉末吐出口、 130:電子線照射手段、 131:電子線源、 132a:磁場発生部、 132b:フォーカス制御部、 200:制御装置、 201:薄片データ取得部、 202:造形制御部、 L1、L2、L3:薄片、 LM1:始端部、 M1〜M8:層
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7