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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203500(P2020-203500A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20201127BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20201127BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20201127BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20201127BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   B60C11/13 C
   B60C11/03 100C
   B60C11/00 D
   B60C11/12 A
   B60C11/12 D
   B60C11/01 B
   B60C11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-110816(P2019-110816)
(22)【出願日】2019年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】冨田 達也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA04
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC20
3D131BC34
3D131EA03U
3D131EB11X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB27V
3D131EB39V
3D131EB39X
3D131EB43V
3D131EB43X
3D131EB44V
3D131EB44X
3D131EB46V
3D131EB46X
3D131EB81V
3D131EB81X
3D131EB86V
3D131EB86X
3D131EB87V
3D131EB87X
3D131EB91V
3D131EB91X
3D131EB94V
3D131EB94X
3D131EB99V
3D131EB99X
3D131EC01V
3D131EC01X
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】本発明は、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることのできる、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有し、幅方向溝(幅方向サイプ)(周方向サイプ)は、溝底側(サイプ底側)に、溝幅(サイプ幅)が前記トレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、少なくとも基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向溝を有し、
前記幅方向溝は、溝底側に、溝幅が前記トレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、前記幅方向溝の前記拡幅部の溝幅が、前記幅方向溝の前記トレッド踏面における開口幅の2.5倍以上となるタイヤ径方向最外側の溝深さ位置を基準深さ位置とするとき、
少なくとも前記基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きいことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記幅方向サイプは、サイプ底側に、サイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、前記幅方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅が、前記幅方向サイプの前記トレッド踏面における開口幅の2.5倍以上となるタイヤ径方向最外側のサイプ深さ位置を基準深さ位置とするとき、
少なくとも前記基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きいことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項3】
トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド周方向に延びる1本以上の周方向サイプを有し、
前記周方向サイプは、サイプ底側に、サイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、前記周方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅が、前記周方向サイプの前記トレッド踏面における開口幅の2.5倍以上となるタイヤ径方向最外側のサイプ深さ位置を基準深さ位置とするとき、
少なくとも前記基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きいことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤ径方向領域は、前記基準深さ位置からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含む領域である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、前記タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、前記タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.8倍以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
少なくともトレッド端により区画される前記陸部に、前記拡幅部を有する前記幅方向溝を有する、請求項1又は請求項1に従属する請求項4〜6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
少なくともトレッド端により区画される前記陸部に、前記拡幅部を有する前記幅方向サイプを有する、請求項2又は請求項2に従属する請求項4〜6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
少なくともトレッド端により区画される前記陸部に、前記拡幅部を有する前記周方向サイプを有する、請求項3又は請求項3に従属する請求項4〜6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
摩耗進展時のタイヤの排水性を向上させる技術として、タイヤのトレッド踏面に、摩耗進展時に溝幅が大きくなる溝を設けることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−540077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、摩耗進展時に溝幅が大きくなる部分が現れようとする際に、かかる部分の剛性が低くなって局所摩耗を生じさせ、タイヤに偏摩耗を生じさせるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることのできる、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向溝を有し、
前記幅方向溝は、溝底側に、溝幅が前記トレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、前記幅方向溝の前記拡幅部の溝幅が、前記幅方向溝の前記トレッド踏面における開口幅の2.5倍以上となるタイヤ径方向最外側の溝深さ位置を基準深さ位置とするとき、
少なくとも前記基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きいことを特徴とする、空気入りタイヤ。
これによれば、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0007】
(2)トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記幅方向サイプは、サイプ底側に、サイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、前記幅方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅が、前記幅方向サイプの前記トレッド踏面における開口幅の2.5倍以上となるタイヤ径方向最外側のサイプ深さ位置を基準深さ位置とするとき、
少なくとも前記基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きいことを特徴とする、空気入りタイヤ。
これによっても、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0008】
(3)トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド周方向に延びる1本以上の周方向サイプを有し、
前記周方向サイプは、サイプ底側に、サイプ幅が前記トレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、前記周方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅が、前記周方向サイプの前記トレッド踏面における開口幅の2.5倍以上となるタイヤ径方向最外側のサイプ深さ位置を基準深さ位置とするとき、
少なくとも前記基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きいことを特徴とする、空気入りタイヤ。
これによっても、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0009】
ここで、「トレッド踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填して、最大負荷荷重を負荷した際に路面と接地することとなるトレッド表面の、トレッド周方向全域にわたる面をいう。
また、「周方向主溝」とは、トレッド周方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、1.5mm以上のものをいう。
また、「トレッド端」とは、上記トレッド踏面のタイヤ幅方向両側の最外側点をいう。
また、「幅方向溝」とは、トレッド幅方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、1.0mm以上のものをいう。
また、「幅方向サイプ」とは、トレッド幅方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、1.0mm未満のものをいう。
また、「周方向サイプ」とは、トレッド周方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、1.5mm未満のものをいう。
また、「貯蔵弾性率」とは、JIS K7244に準拠し、温度25℃で測定したものをいうものとする。
【0010】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記タイヤ径方向領域は、前記基準深さ位置からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含む領域であることが好ましい。
上記の範囲とすることにより、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をより一層抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0012】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記タイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、前記タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上であることが好ましい。
上記の範囲とすることにより、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をさらに抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0013】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記タイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、前記タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.8倍以上であることが好ましい。
上記の範囲とすることにより、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を特に抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0014】
(7)上記(1)又は上記(1)における上記(4)〜(6)のいずれかにおいて、少なくともトレッド端により区画される前記陸部に、前記拡幅部を有する前記幅方向溝を有することが好ましい。
この構成によれば、特に少なくともトレッド端により区画される陸部において、摩耗進展時に、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0015】
(8)上記(2)又は上記(2)における上記(4)〜(6)のいずれかにおいて、少なくともトレッド端により区画される前記陸部に、前記拡幅部を有する前記幅方向サイプを有することが好ましい。
この構成によれば、特に少なくともトレッド端により区画される陸部において、摩耗進展時に、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0016】
(9)上記(3)又は上記(3)における上記(4)〜(6)のいずれかにおいて、少なくともトレッド端により区画される前記陸部に、前記拡幅部を有する前記周方向サイプを有することが好ましい。
この構成によれば、特に少なくともトレッド端により区画される陸部において、摩耗進展時に、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることのできる、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図2】幅方向溝の一例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の他の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図4】幅方向サイプの一例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の別の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図6】周方向サイプの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
ここで、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)の内部構造等については、従来のものと同様の構造とすることができる。一例としては、該タイヤは、一対のビード部と、該一対のビード部に連なる一対のサイドウォール部と、該一対のサイドウォール部間に配置されたトレッド部とを有するものとすることができる。また、該タイヤは、一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、を有するものとすることができる。
以下、特に断りのない限り、寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の寸法等を指す。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
【0021】
図1に示すように、本例のタイヤは、トレッド踏面1に、トレッド周方向に延びる複数本(図示例では3本)の周方向主溝2(2a、2b、2c)と、複数本の周方向主溝2のうちトレッド幅方向に隣接する周方向主溝2間に、又は、周方向主溝2(2a、2c)とトレッド端TEとにより、区画される複数(図示例では4つ)の陸部3(3a、3b、3c、3d)と、を有している。この例では、1つの周方向主溝2bは、タイヤ赤道面CL上に位置しており、他の周方向主溝2a、2cは、それぞれタイヤ赤道面CLを境界としたトレッド幅方向の一方の半部、他方の半部に位置している。そして、この例では、各トレッド幅方向半部に2つずつの陸部3が配置されている。図示のように、陸部3b、3cは、トレッド幅方向中央側の陸部であり、陸部3a、3dは、トレッド端TEに隣接する陸部である。
【0022】
図1に示した例では、周方向主溝2の本数は、3本であるが、2本又は4本以上とすることもできる。従って、陸部3の個数も、3つ又は5つ以上とすることができる。また、本例では、全ての陸部がリブ状陸部3であるが、少なくとも1つの陸部が、非リブ状陸部、すなわちブロック状陸部であっても良い。なお、「リブ状陸部」とは、陸部が、トレッド幅方向に延びる幅方向溝によってトレッド周方向に完全に分断されていない陸部をいう。従って、本明細書では、幅方向サイプによってトレッド周方向に完全に分断されていても、「リブ状陸部」である。
【0023】
周方向主溝2の溝幅(開口幅(平面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、周方向主溝2の本数にもよるため特には限定されないが、例えば5〜25mmとすることができる。同様に、周方向主溝2の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば6〜18mmとすることができる。
【0024】
図示例では、トレッド踏面1の平面視において、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1つの周方向主溝2がトレッド周方向に対して傾斜して延びていても良く、その場合、トレッド周方向に対して、例えば5°以下の角度で傾斜して延びるものとすることができる。また、図示例では、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の周方向主溝2が、ジグザグ状、湾曲状などの形状を有していても良い。
【0025】
図示例では、各陸部3は、トレッド幅方向に延びる幅方向溝4を複数本有している。具体的には、本例では、トレッド端TEに隣接する(図示例でリブ状の)陸部3a、3dにおいては、トレッド端TEからトレッド幅方向内側に延びて(図示例でリブ状の)陸部3a、3d内で終端する幅方向溝4を、図示の範囲で3本ずつ有している。また、トレッド幅方向中央側の(図示例でリブ状の)陸部3b、3cにおいては、タイヤ赤道面CL上に位置する周方向主溝2bからトレッド幅方向外側に延びて(図示例でリブ状の)陸部3b、3c内で終端する幅方向溝4を図示の範囲で3本ずつ有している。幅方向溝4の本数は適宜設定することができる。なお、図示例では、全ての陸部3が幅方向溝4を有しているが、トレッド踏面1に幅方向溝4を有する場合は、いずれかの陸部3が幅方向溝4を有していれば良く、トレッド端TEにより区画される陸部3(図示例では陸部3a、3d)が幅方向溝4を有していることが好ましい。
ここで、幅方向溝4の溝幅(開口幅(平面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、幅方向溝4の本数にもよるため特には限定されないが、例えば1.0〜1.5mmとすることができる。同様に、幅方向溝4の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば4〜18mmとすることができる。
なお、図示例では、いずれの幅方向溝4も、トレッド幅方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1本の幅方向溝4がトレッド幅方向に対して傾斜して延びていても良く、この場合、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましく、また、30°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。また、図示例では、幅方向溝4は、いずれも、トレッド幅方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の幅方向溝4が、屈曲した部分を有していても良い。
ここで、幅方向溝4は、排水性を向上させる観点から、例えば図示例のように、トレッド端TE又は周方向主溝2に開口していることが好ましい。一方で、陸部3の剛性を高めるために、幅方向溝4は、トレッド端TE及び周方向主溝2のいずれにも開口せず、両端が陸部3内で終端するものとすることもできる。また、トレッド幅方向に隣接する2本の周方向主溝2間に区画される陸部3においては、幅方向溝4は、該2本の周方向主溝2のうちいずれの方に開口していても良い。
【0026】
図示例では、各陸部3に複数本の幅方向溝4を有し、サイプを有していない。一方で、少なくとも1以上の陸部3において、幅方向溝4に代えて、あるいは、幅方向溝4に加えて、サイプを有する構成とすることもできる。なお、陸部3がサイプを有する実施形態については、後述する。
【0027】
図2は、幅方向溝の一例を模式的に示す断面図である。図2は、トレッド幅方向に沿って延びる幅方向溝のトレッド周方向断面図である。図2は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態を示している。図2に示す例では、幅方向溝4は、トレッド踏面1側に、溝幅(断面視において、トレッド踏面に平行に測った幅)が(トレッド踏面1での開口幅に等しく)一定である、溝幅一定部分4aを有し、且つ、溝底側に、溝幅がトレッド踏面1側より大きくなる拡幅部4bを有している。図示例では、拡幅部4bは、溝底側に向かって溝幅が漸増する第1の拡幅部分4b1と、溝幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である第2の拡幅部分4b2とからなる。
図示例では、拡幅部4bは、上記第1の拡幅部分4b1及び上記第2の拡幅部分4b2からなるが、拡幅部4bは、溝幅が溝の深さ方向に変化する部分(例えば上記第1の拡幅部分4b1)のみを有する構成とすることもでき、あるいは、溝幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である部分(第2の拡幅部分4b2)のみを有する構成とすることもできる。あるいは、溝幅が溝の深さ方向に変化する部分(例えば上記第1の拡幅部分4b1)、及び/又は、溝幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である部分(第2の拡幅部分4b2)は、溝深さ方向に複数箇所設けられていても良い。
なお、本例では、拡幅部4bよりタイヤ径方向外側の部分は、溝幅が一定である溝幅一定部分4aとしているが、当該部分は、溝幅が変化する部分とすることもできる。
また、本例では、第1の拡幅部分4b1は、タイヤ径方向外側から内側に向かって溝幅が線形に漸増している(溝幅の増加率が一定である)が、溝幅の増加率が変化していても良い。
【0028】
溝幅一定部分4aの溝幅W1は、特には限定されないが、例えば1.0〜1.5mmとすることができる。拡幅部4bの最大幅W2は、特には限定されないが、例えば1.2〜6.0mmとすることができる。幅方向溝4の溝深さhは、特には限定されないが、例えば4.0〜18.0mmとすることができる。なお、幅方向溝4の溝底における溝幅は、2.5W1より大きいことが好ましい。
溝幅一定部分4aの深さ方向に延在長さh1は、特には限定されないが、例えば2.0〜12mmとすることができる。拡幅部4bの深さ方向の延在長さh2+h3は、特には限定されないが、例えば2.5〜11.0mmとすることができる。図2に示した例では、第1の拡幅部分4b1の深さ方向の延在長さh2は、特には限定されないが、例えば1.0〜3.0mmとすることができ、第2の拡幅部分4b2の深さ方向の延在長さh3は、特には限定されないが、例えば1.5〜8.0mmとすることができる。
【0029】
ここで、図2に示すように、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、幅方向溝4のトレッド踏面1における開口幅を(すなわち、本例では、サイプ幅一定部分4aの幅)W1とするとき、拡幅部4bの溝幅が2.5W1以上となるタイヤ径方向最外側の溝深さ位置を基準深さ位置Dとする。なお、図示例のように、第1の拡幅部分4b1及び第2の拡幅部分4b2を有している場合、本例では、第1の拡幅部分4b1において基準深さ位置Dを有しているが、第2の拡幅部分4b2において基準深さ位置Dを有していても良い。
上記基準深さ位置Dでは、通常、摩耗進展時において剛性が低くなり始める。
そして、本実施形態のタイヤでは、少なくとも基準深さ位置Dを含むタイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R2のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい(具体的には、本実施形態では、タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R2のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上である)。
本実施形態では、上記タイヤ径方向領域R1は、基準深さ位置Dからタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含むタイヤ径方向領域(特に本例では、基準深さ位置Dからタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ1.0mmまでの領域)である。
貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムの延在態様は、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムを適用する陸部において、以下にようにすることができる。
本例では、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムは、トレッド周方向に連続して延びるものである。一方で、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムは、トレッド幅方向に延びるものとすることもでき、あるいは、トレッド踏面1側から見た透過平面視にて、拡幅部4bの最大幅を囲む領域(例えば該最大幅より1mm〜10mm大きく囲む領域)のみに存在するようにしても良い。
また、本例では、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの厚さは、一定である。一方で、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの厚さは、変化していても良く、あるいは、途切れた部分を有していても良い。
例えば、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムは、トレッド周方向に連続して延びる場合において、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの厚さがトレッド周方向で変化する場合には、幅方向溝4及びその付近のトレッドゴムの厚さを、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向溝4のトレッド周方向の中央及びその付近のトレッドゴムの厚さより厚くすることが好ましい。また、例えば、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムは、トレッド周方向に延びる場合において、トレッド周方向に途切れた部分を有する場合、その途切れた部分は、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向溝4のトレッド周方向の中央及びその付近とすることが好ましい。
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0030】
本実施形態の空気入りタイヤは、陸部3に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向溝4を有し、幅方向溝4は、溝底側に、溝幅がトレッド踏面1側より大きくなる拡幅部4bを有している。これにより、摩耗進展時において溝幅の大きい拡幅部4bがトレッド表面に露出することで、摩耗進展時の排水性を向上させることができる。
そして、本実施形態の空気入りタイヤは、少なくとも基準深さ位置Dを含むタイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R2のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい。これにより、摩耗進展時に、基準深さ位置D及びその付近の剛性を高めて、局所摩耗を抑制し、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、上記タイヤ径方向領域R1は、基準深さ位置Dからタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含むタイヤ径方向領域であるため、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をより一層抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
また、本実施形態では、タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R2のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上としているため、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をさらに抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図3は、本発明の他の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図3に示すトレッドパターンは、図1に示したトレッドパターンと比較して、各陸部3が、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプ5をさらに有している点で異なっている。図3に示す他の実施形態における、周方向主溝2、陸部3、及び幅方向溝4については、図示の構成やその変形例も含め、図1に示した一実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略し、以下、主に幅方向サイプ5について例示説明する。
【0033】
図示例では、各陸部3は、トレッド幅方向に延びる幅方向サイプ5を複数本有している。具体的には、本例では、トレッド端TEに隣接する陸部3a、3dにおいては、周方向主溝2a、2cのそれぞれからトレッド幅方向外側に延びて陸部3a、3d内で終端する幅方向サイプ5を、図示の範囲で3本ずつ有している。また、トレッド幅方向中央側の陸部3b、3cにおいては、周方向主溝2a、2cのそれぞれからトレッド幅方向内側に延びて陸部3b、3c内で終端する幅方向サイプ5を図示の範囲で3本ずつ有している。幅方向サイプ5の本数は適宜設定することができる。なお、図示例では、全ての陸部3が幅方向サイプ5を有しているが、トレッド踏面1に幅方向サイプ5を有する場合は、いずれかの陸部3が幅方向サイプ5を有していれば良く、トレッド端TEにより区画される陸部3(図示例では陸部3a、3d)が幅方向サイプ5を有していることが好ましい。
ここで、幅方向サイプ5のサイプ幅(開口幅(サイプの延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、幅方向サイプ5の本数にもよるため特には限定されないが、例えば0.2〜1.0mmとすることができる。同様に、幅方向サイプ5のサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば4.0〜18.0mmとすることができる。
なお、図示例では、いずれの幅方向サイプ5も、トレッド幅方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1本の幅方向サイプ5がトレッド幅方向に対して傾斜して延びていても良く、この場合、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましく、また、30°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。また、図示例では、幅方向サイプ5は、いずれも、トレッド幅方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の幅方向サイプ5が、屈曲した部分を有していても良い。
ここで、幅方向サイプ5は、排水性を向上させる観点から、トレッド端TE又は図示例のように周方向主溝2に開口していることが好ましい。一方で、陸部3の剛性を高めるために、幅方向サイプ5は、トレッド端TE及び周方向主溝2のいずれにも開口せず、両端が陸部3内で終端するものとすることもできる。また、トレッド幅方向に隣接する2本の周方向主溝2間に区画される陸部3においては、幅方向サイプ5は、該2本の周方向主溝2のうちいずれの方に開口していても良い。
【0034】
ここで、図示例では、幅方向溝4と幅方向サイプ5とがトレッド周方向で見た際に、交互に配置されている。これにより陸部3の剛性のバランスをより適正化することができる。一方で、トレッド周方向で見た際に、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向サイプ5間に幅方向溝4が2本以上連続して配置されている箇所を有していても良く、また、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向溝4間に幅方向サイプ5が2本以上連続して配置されている箇所を有していても良い。
また、図示例では、幅方向溝4及び幅方向サイプ5は、いずれも陸部3のトレッド幅方向中央で終端しているが、幅方向溝4と幅方向サイプ5とは、トレッド周方向に投影した際に重なる部分を有していても良く、あるいは、重ならないように配置しても良い。
【0035】
図4は、幅方向サイプの一例を模式的に示す断面図である。図4は、トレッド幅方向に沿って延びる幅方向サイプのトレッド周方向断面図である。図4は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態を示している。図4に示すように、幅方向サイプ5は、トレッド踏面1側に、サイプ幅(断面視において、トレッド踏面1に平行に測った幅)が(トレッド踏面1での開口幅に等しく)一定である、サイプ幅一定部分5aを有し、且つ、サイプ底側に、サイプ幅がトレッド踏面1側より大きくなる拡幅部5bを有している。図示例では、拡幅部5bは、サイプ底側に向かってサイプ幅が漸増する第1の拡幅部分5b1と、サイプ幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である、第2の拡幅部分5b2とからなる。
図示例では、拡幅部5bは、上記第1の拡幅部分5b1及び上記第2の拡幅部分5b2からなるが、拡幅部5bは、サイプ幅がサイプの深さ方向に変化する部分(例えば上記第1の拡幅部分5b1)のみを有する構成とすることもでき、あるいは、サイプ幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である部分(第2の拡幅部分5b2)のみを有する構成とすることもできる。あるいは、サイプ幅が溝の深さ方向に変化する部分(例えば上記第1の拡幅部分5b1)、及び/又は、サイプ幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である部分(第2の拡幅部分5b2)は、サイプの深さ方向に複数箇所設けられていても良い。
なお、本例では、拡幅部5bよりタイヤ径方向外側の部分は、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分5aとしているが、当該部分は、サイプ幅が変化する部分とすることもできる。
また、本例では、第1の拡幅部分5b1は、タイヤ径方向外側から内側に向かってサイプ幅が線形に漸増している(溝幅の増加率が一定である)が、サイプ幅の増加率が変化していても良い。
【0036】
サイプ幅一定部分5aのサイプ幅W3は、特には限定されないが、例えば0.2〜1.0mmとすることができる。拡幅部5bの最大幅W4は、特には限定されないが、例えば1.2〜6.0mmとすることができる。幅方向サイプ5のサイプ深さgは、特には限定されないが、例えば4.0〜18.0mmとすることができる。なお、幅方向サイプ5のサイプ底におけるサイプ幅は、2.5W3より大きいことが好ましい。
サイプ幅一定部分5aの深さ方向の延在長さg1は、特には限定されないが、例えば2.0〜12mmとすることができる。拡幅部5bの深さ方向の延在長さg2+g3は、特には限定されないが、例えば2.5〜11.0mmとすることができる。図4に示した例では、第1の拡幅部分5b1の深さ方向の延在長さg2は、特には限定されないが、例えば1.0〜3.0mmとすることができ、第2の拡幅部分5b2の深さ方向の延在長さg3は、特には限定されないが、例えば1.5〜8.0mmとすることができる。
【0037】
ここで、図4に示すように、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、幅方向サイプ5のトレッド踏面1における開口幅(すなわち本例では、サイプ幅一定部分5aの幅)をW3とするとき、拡幅部5bのサイプ幅が2.5W3以上となるタイヤ径方向最外側の溝深さ位置を基準深さ位置D´とする。なお、図示例のように、第1の拡幅部分5b1及び第2の拡幅部分5b2を有している場合、本例では、第1の拡幅部分5b1において基準深さ位置D´を有しているが、第2の拡幅部分5b2において基準深さ位置D´を有していても良い。
上記基準深さ位置D´では、通常、摩耗進展時において剛性が低くなり始める。
なお、製造性の観点から、基準深さ位置Dと基準深さ位置D´とは同じ深さであることが好ましいが、異ならせることもでき、基準深さ位置Dを基準深さ位置D´より大きくすることも小さくすることもできる。
そして、本実施形態のタイヤでは、少なくとも基準深さ位置D´を含むタイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R4のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい(具体的には、本実施形態では、タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R4のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上である)。
本実施形態では、上記タイヤ径方向領域R3は、基準深さ位置D´からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含むタイヤ径方向領域(特に本例では、基準深さ位置D´からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ1.0mmまでの領域)である。
なお、上記タイヤ径方向領域R4におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率に対する、上記タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率の比は、製造性の観点からは、上記タイヤ径方向領域R2におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率に対する、上記タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率の比と同じとすることが好ましいが、異ならせることもでき、いずれが大きくても小さくても良い。
貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムの延在態様は、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムを適用する陸部において、以下にようにすることができる。
本例では、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムは、トレッド周方向に連続して延びるものである。一方で、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムは、トレッド幅方向に延びるものとすることもでき、あるいは、トレッド踏面1側から見た透過平面視にて、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R3における拡幅部5bの最大幅を囲む領域(例えば該最大幅より1mm〜10mm大きく囲む領域)のみに存在するようにしても良い。
また、本例では、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムの厚さは、一定である。一方で、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムの厚さは、変化していても良く、あるいは、途切れた部分を有していても良い。
例えば、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムは、トレッド周方向に連続して延びる場合において、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムの厚さがトレッド周方向で変化する場合には、幅方向サイプ5及びその付近のトレッドゴムの厚さを、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向サイプ5のトレッド周方向の中央及びその付近のトレッドゴムの厚さより厚くすることが好ましい。また、例えば、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムは、トレッド周方向に延びる場合において、トレッド周方向に途切れた部分を有する場合、その途切れた部分は、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向サイプ5のトレッド周方向の中央及びその付近とすることが好ましい。
以下、図3図4に示した他の実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0038】
図3図4に示した他の実施形態の空気入りタイヤによれば、まず、周方向主溝2、陸部3、及び幅方向溝4について、図1に示した一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
加えて、図3図4に示した本実施形態の空気入りタイヤは、陸部3に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプ5を有し、幅方向サイプ5は、サイプ底側に、サイプ幅がトレッド踏面1側より大きくなる拡幅部5bを有している。これにより、摩耗進展時においてサイプ幅の大きい拡幅部5bがトレッド表面に露出することで、摩耗進展時の排水性を向上させることができる。
そして、図3図4に示した実施形態の空気入りタイヤは、少なくとも基準深さ位置D´を含むタイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R4のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい。これにより、摩耗進展時に、基準深さ位置D´及びその付近の剛性を高めて、局所摩耗を抑制し、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
以上のように、図3図4に示した他の実施形態の空気入りタイヤによれば、摩耗進展時において、より一層、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、上記タイヤ径方向領域R3は、基準深さ位置D´からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含むタイヤ径方向領域であるため、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をより一層抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
また、本実施形態では、タイヤ径方向領域R3におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R4のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上としているため、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をさらに抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0040】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。図5は、本発明の別の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図5に示すトレッドパターンは、図1に示したトレッドパターンと比較して、各陸部3が、トレッド周方向に延びる複数本の周方向サイプ6をさらに有している点で異なっている。図5に示す別の実施形態における、周方向主溝2、リブ状陸部3、及び幅方向溝4については、図示の構成やその変形例も含め、図1に示した一実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略し、以下、主に周方向サイプ6について例示説明する。
【0041】
図示例では、各陸部3は、トレッド周方向に延びる周方向サイプ6を複数本有している。具体的には、本例では、トレッド端TEに隣接する各陸部3において、トレッド周方向に延びて、両端が陸部3内で終端する周方向サイプ6を、図示の範囲で4本ずつ有している。周方向サイプ6の本数は適宜設定することができる。なお、本例では、周方向サイプ6の両端が陸部3内で終端しているが、周方向サイプ6をトレッド周方向に連続して延びる1本の周方向サイプ6とすることもできる。なお、図示例では、全ての陸部3が周方向サイプ6を有しているが、トレッド踏面1に周方向サイプ6を有する場合は、いずれかの陸部3が周方向サイプ6を有していれば良く、トレッド端TEにより区画される陸部3(図示例では陸部3a、3d)が周方向サイプ6を有していることが好ましい。
ここで、周方向サイプ6のサイプ幅(開口幅(周方向サイプの延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、周方向サイプ6の本数にもよるため特には限定されないが、例えば0.2〜1.5mmとすることができる。同様に、周方向サイプ6のサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば4.0〜18.0mmとすることができる。
なお、図示例では、いずれの周方向サイプ6も、トレッド周方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1本の周方向サイプ6がトレッド周方向に対して傾斜して延びていても良く、この場合、トレッド周方向に対して25°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましく、また、10°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。また、図示例では、周方向サイプ6は、いずれも、トレッド周方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の周方向サイプ6が、屈曲した部分を有していても良い。
【0042】
ここで、図示例では、各陸部3において、幅方向溝4及び周方向サイプ6は、トレッド幅方向に投影した際に重ならないように配置されているが、重なる部分を有するように配置しても良い。
【0043】
図6は、周方向サイプの一例を模式的に示す断面図である。図6は、トレッド周方向に沿って延びる周方向サイプのトレッド幅方向断面図である。図6は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態を示している。図6に示すように、周方向サイプ6は、トレッド踏面1側に、サイプ幅(断面視において、トレッド踏面1に平行に測った幅)が(トレッド踏面1での開口幅に等しく)一定である、サイプ幅一定部分6aを有し、且つ、サイプ底側に、サイプ幅がトレッド踏面1側より大きくなる拡幅部6bを有している。図示例では、拡幅部6bは、サイプ底側に向かってサイプ幅が漸増する第1の拡幅部分6b1と、サイプ幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である、第2の拡幅部分6b2とからなる。
図示例では、拡幅部6bは、上記第1の拡幅部分6b1及び上記第2の拡幅部分6b2からなるが、拡幅部6bは、サイプ幅がサイプの深さ方向に変化する部分(例えば上記第1の拡幅部分6b1)のみを有する構成とすることもでき、あるいは、サイプ幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である部分(第2の拡幅部分6b2)のみを有する構成とすることもできる。あるいは、サイプ幅が溝の深さ方向に変化する部分(例えば上記第1の拡幅部分6b1)、及び/又は、サイプ幅が(トレッド踏面1での開口幅より大きく)一定である部分(第2の拡幅部分)6b2は、サイプの深さ方向に複数箇所設けられていても良い。
なお、本例では、拡幅部6bよりタイヤ径方向外側の部分は、サイプ幅が一定であるサイプ幅一定部分6aとしているが、当該部分は、サイプ幅が変化する部分とすることもできる。
また、本例では、第1の拡幅部分6b1は、タイヤ径方向外側から内側に向かってサイプ幅が線形に漸増している(溝幅の増加率が一定である)が、サイプ幅の増加率が変化していても良い。
【0044】
サイプ幅一定部分6aのサイプ幅W5は、特には限定されないが、例えば0.2〜1.5mmとすることができる。拡幅部6bの最大幅W6は、特には限定されないが、例えば1.2〜6.0mmとすることができる。周方向サイプ6のサイプ深さg´は、特には限定されないが、例えば4.0〜18.0mmとすることができる。なお、周方向サイプ6のサイプ底におけるサイプ幅は、2.5W5より大きいことが好ましい。
サイプ幅一定部分6aの深さ方向の延在長さg1´は、特には限定されないが、例えば2.0〜12mmとすることができる。拡幅部6bの深さ方向の延在長さg2´+g3´は、特には限定されないが、例えば2.5〜11.0mmとすることができる。図6に示した例では、第1の拡幅部分6b1の深さ方向の延在長さg2´は、特には限定されないが、例えば1.0〜3.0mmとすることができ、第2の拡幅部分6b2の深さ方向の延在長さg3´は、特には限定されないが、例えば1.5〜8.0mmとすることができる。
【0045】
ここで、図6に示すように、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、周方向サイプ6のトレッド踏面1における開口幅(すなわち、本例では、サイプ幅一定部分6aの幅)をW5とするとき、拡幅部6bのサイプ幅が2.5W5以上となるタイヤ径方向最外側の溝深さ位置を基準深さ位置D´´とする。なお、図示例のように、第1の拡幅部分6b1及び第2の拡幅部分6b2を有している場合、本例では、第1の拡幅部分6b1において基準深さ位置D´´を有しているが、第2の拡幅部分6b2において基準深さ位置D´´を有していても良い。
上記基準深さ位置D´´では、通常、摩耗進展時において剛性が低くなり始める。
なお、製造性の観点から、基準深さ位置Dと基準深さ位置D´´とは同じ深さであることが好ましいが、異ならせることもでき、基準深さ位置Dを基準深さ位置D´´より大きくすることも小さくすることもできる。
そして、本実施形態のタイヤでは、少なくとも基準深さ位置D´´を含むタイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R6のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい(具体的には、本実施形態では、タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R6のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上である)。
本実施形態では、上記タイヤ径方向領域R5は、基準深さ位置D´´からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含むタイヤ径方向領域(特に本例では、基準深さ位置D´´からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ1.0mmまでの領域)である。
なお、上記タイヤ径方向領域R6におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率に対する、上記タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率の比は、製造性の観点からは、上記タイヤ径方向領域R2におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率に対する、上記タイヤ径方向領域R1におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率の比と同じとすることが好ましいが、異ならせることもでき、いずれが大きくても小さくても良い。
貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムの延在態様は、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムを適用する陸部において、以下にようにすることができる。
本例では、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムは、トレッド周方向に連続して延びるものである。一方で、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くするトレッドゴムは、トレッド幅方向に延びるものとすることもでき、あるいは、トレッド踏面1側から見た透過平面視にて、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R5における拡幅部6bの最大幅を囲む領域(例えば該最大幅より1mm〜10mm大きく囲む領域)のみに存在するようにしても良い。
また、本例では、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの厚さは、一定である。一方で、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの厚さは、変化していても良く、あるいは、途切れた部分を有していても良い。
例えば、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムは、トレッド周方向に連続して延びる場合において、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの厚さがトレッド周方向で変化する場合には、周方向サイプ6及びその付近のトレッドゴムの厚さを、トレッド周方向に隣接する2つの周方向サイプ6のトレッド周方向の中央及びその付近のトレッドゴムの厚さより厚くすることが好ましい。また、例えば、貯蔵弾性率を上記のように相対的に高くする、タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムは、トレッド周方向に延びる場合において、トレッド周方向に途切れた部分を有する場合、その途切れた部分は、トレッド周方向に隣接する2つの周方向サイプ6のトレッド周方向の中央及びその付近とすることが好ましい。
以下、図5図6に示した別の実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0046】
図5図6に示した別の実施形態の空気入りタイヤによれば、まず、周方向主溝2、リブ状陸部3、及び幅方向溝4について、図1に示した一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
加えて、図5図6に示した本実施形態の空気入りタイヤは、陸部3に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向サイプ6を有し、周方向サイプ6は、サイプ底側に、サイプ幅がトレッド踏面1側より大きくなる拡幅部6bを有している。これにより、摩耗進展時においてサイプ幅の大きい拡幅部6bがトレッド表面に露出することで、摩耗進展時の排水性を向上させることができる。
そして、図5図6に示した実施形態の空気入りタイヤは、少なくとも基準深さ位置D´´を含むタイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R6のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい。これにより、摩耗進展時に、基準深さ位置D´´及びその付近の剛性を高めて、局所摩耗を抑制し、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
以上のように、図5図6に示した別の実施形態の空気入りタイヤによれば、摩耗進展時において、より一層、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、上記タイヤ径方向領域R5は、基準深さ位置D´´からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含むタイヤ径方向領域であるため、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をより一層抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
また、本実施形態では、タイヤ径方向領域R5におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域R6のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上としているため、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をさらに抑制しつつも、排水性を向上させることができる。
【0048】
以上の各例において、(トレッドゴムの貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くする)上記タイヤ径方向領域(例えば上記の各実施形態ではR1、R3、R5)は、基準深さ位置からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ0.5mmまでの領域を含む領域であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をより一層抑制しつつも、排水性を向上させることができるからである。一方で、陸部の剛性が高くなり過ぎて乗り心地性が低下しないようにするため、上記タイヤ径方向領域は、基準深さ位置からタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ2.0mmまでの領域とすることが好ましく、1.0mmまでの領域とすることがより好ましい。なお、タイヤ径方向内側と外側とで貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムの厚さを異ならせても良い。
【0049】
また、上記タイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、上記タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.5倍以上であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、摩耗進展時において、偏摩耗の発生をさらに抑制しつつも、排水性を向上させることができるからである。
【0050】
また、上記タイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、上記タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率の1.8倍以上であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、摩耗進展時において、偏摩耗の発生を特に抑制しつつも、排水性を向上させることができるからである。
一方で、タイヤ径方向の剛性段差が大きくなり過ぎないようにする観点からは、上記タイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率は、上記タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率の3.5倍以下であることが好ましい。
【0051】
また、少なくともトレッド端により区画される陸部に、(上記貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムを用いる、)拡幅部を有する幅方向溝を有することが好ましい。特に少なくともトレッド端により区画される陸部において、摩耗進展時に、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができるからである。
また、少なくともトレッド端により区画される陸部に、(上記貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムを用いる、)上記拡幅部を有する幅方向サイプを有することが好ましい。特に少なくともトレッド端により区画される陸部において、摩耗進展時に、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができるからである。
また、少なくともトレッド端により区画される陸部に、(上記貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムを用いる、)上記拡幅部を有する周方向サイプを有することが好ましい。特に少なくともトレッド端により区画される陸部において、摩耗進展時に、偏摩耗の発生を抑制しつつも、排水性を向上させることができるからである。
これらの構成は、トレッド端により区画される陸部での摩耗量が相対的に多いタイヤに特に好適である。
【0052】
なお、上記の幅方向溝は、例えば対応する形状を有する金型を用いて作製することができる。また、上記の幅方向サイプ及び周方向サイプは、例えば対応する形状を有するブレードを用いて作製することができる。また、貯蔵弾性率の高いトレッドゴムと、貯蔵弾性率の低いトレッドゴムとを併用するには、例えば、トレッドゴムの押し出し装置において、例えば該当する溝位置に相当する範囲に限定して貯蔵弾性率が高いトレッドゴムを配し、他の範囲では貯蔵弾性率が低いトレッドゴムを配することが可能な口金(例えば分割された口金)を用いて作製することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には何ら限定されない。例えば、図3図4に示した他の実施形態においては、幅方向溝4が図2に示した形状を有し、且つ、幅方向サイプ5が図4に示した形状を有しているが、例えば、幅方向溝4が断面U字状、断面V字状の溝であり、且つ、幅方向サイプ5が図4に示した形状を有するものとすることもできる。同様に、図5図6に示した別の実施形態においては、幅方向溝4が図2に示した形状を有し、且つ、周方向サイプ6が図6に示した形状を有しているが、例えば、幅方向溝4が断面U字状、断面V字状の溝であり、且つ、周方向サイプ6が図6に示した形状を有するものとすることもできる。
また、例えば、図1図6に示した実施形態は、いずれも陸部が幅方向溝を有するものであったが、幅方向溝を有さず、いずれかの陸部が幅方向サイプ及び/又は周方向サイプのみを有する構成とすることもできる。その場合の幅方向サイプ及び/又は周方向サイプの配置、サイプ幅、サイプ深さ、形状等は、図3図6に示した実施形態について説明したのと同様の構成とすることができる。すなわち、陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、幅方向サイプは、サイプ底側に、サイプ幅がトレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、少なくとも基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい、及び/又は、陸部に、トレッド周方向に延びる1本以上の周方向サイプを有し、周方向サイプは、サイプ底側に、サイプ幅がトレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、少なくとも基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい、構成とすることができる。
さらに、図1図6に示した構成とは異なり、幅方向溝を有し又は有さず、且つ、幅方向サイプ及び周方向サイプの両方を有する構成とすることもできる。この場合、幅方向サイプと周方向サイプとは交差していても、あるいは、交差していなくても良い。そして、幅方向サイプと周方向サイプとの両方又は一方のみについて、サイプ底側に、サイプ幅がトレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、少なくとも基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい、構成とすることができる。
以上のように、トレッド踏面に、幅方向溝、幅方向サイプ、及び周方向サイプは、少なくともいずれかを有していれば良い。そして、幅方向溝、幅方向サイプ、及び周方向サイプのうち、いずれか1つ以上において、溝底側(サイプ底側)に、溝幅(サイプ幅)がトレッド踏面側より大きくなる拡幅部を有し、少なくとも基準深さ位置を含むタイヤ径方向領域におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率が、該タイヤ径方向領域よりタイヤ径方向内側及び外側の領域のトレッドゴムの貯蔵弾性率より大きい、構成とすれば良い。
なお、製造性の観点から、基準深さ位置D、基準深さ位置D´、及び基準深さ位置D´´は互いに同じ深さであることが好ましいが、異ならせることもでき、その場合、基準深さ位置D、基準深さ位置D´、基準深さ位置D´´の大小関係は問わない。
また、製造性の観点からは、幅方向溝、幅方向サイプ、及び周方向サイプを区画するトレッドゴムに関し、上記貯蔵弾性率の比は、互いに同じとすることが好ましいが、異ならせることもでき、その場合の大小関係は問わない。
また、製造上の観点からは、上記貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムを用いる、タイヤ径方向領域R1、R3、R5については、いずれもトレッド周方向に連続して延びるものとすることが好ましい。一方で、上記貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムを用いる、タイヤ径方向領域R1、R3、R5のいずれか1つ以上の領域において、トレッドゴムは、トレッド幅方向に延びるものとすることもでき、あるいは、トレッド踏面1側から見た透過平面視にて、該タイヤ径方向領域における拡幅部の最大幅を囲む領域(例えば該最大幅より1mm〜10mm大きく囲む領域)のみに存在するようにしても良い。
また、製造上の観点からは、上記貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムを用いる、タイヤ径方向領域R1、R3、R5におけるトレッドゴムの厚さは、一定であることが好ましい。一方で、上記貯蔵弾性率を他の領域より相対的に高くするトレッドゴムを用いる、タイヤ径方向領域R1、R3、R5のいずれか1つ以上の領域において、トレッドゴムの厚さは、変化していても良く、あるいは、途切れた部分を有していても良い。
また、幅方向溝、幅方向サイプ、周方向サイプが角部を有する場合、いずれか1以上の角部に、面取り等により丸み部を形成してもよい。
本発明の空気入りタイヤは、特に、乗用車用タイヤや重荷重用タイヤ(特にトラック・バス用タイヤ)として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0054】
1:トレッド踏面、
2:周方向主溝、
3:陸部、
4:幅方向溝、4a:溝幅一定部分、4b:拡幅部、4b1:第1の拡幅部分、
4b2:第2の拡幅部分、
5:幅方向サイプ、5a:サイプ幅一定部分、5b:拡幅部、5b1:第1の拡幅部分、
5b2:第2の拡幅部分、
6:周方向サイプ、6a:サイプ幅一定部分、6b:拡幅部、6b1:第1の拡幅部分、
6b2:第2の拡幅部分、
CL:タイヤ赤道面、
TE:トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6