【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図9に基づいて説明する。
本実施例1に係る車両Vは、車室前側のエンジンルームに縦置き配置されたエンジン(図示略)を備え、後輪で駆動されるFR(Front engine Rear drive)自動車である。
以下、図において、矢印F方向を車体前後方向前方とし、矢印L方向を車幅方向左方とし、矢印U方向を車体上下方向上方として説明する。また、この車両Vは、左右対称の構造であるため、以下、特段の説明がない限り、右側部材及び右側部分について主に説明する。
【0020】
まず、全体構成について説明する。
図1に示すように、車両Vは、前後に延びる左右1対のサイドシル1と、これら1対のサイドシル1の間に掛け渡されると共に車室床面を構成するフロアパネル2と、前後に延びてルーフパネル3(
図9参照)を支持する左右1対のルーフサイドレール10と、これら1対のルーフサイドレール10から1対のサイドシル1に亙って夫々下方に延びる左右1対のA〜Dピラー4〜7等を備えている。
【0021】
サイドシル1は、鋼板をプレス成形したアウタ部材とインナ部材とにより構成され、両部材が協働して前後に延びる略直線状の閉断面を形成している。
サイドシル1の前端部分に、Aピラー4の下半部に相当するヒンジピラーの下端が接続され、中間部分に、Bピラー5の下端が接続されている。
Aピラー4とルーフサイドレール10の前側部分とBピラー5とサイドシル1の前側部分とによって、フロントドア(図示略)のドア用開口縁部を形成している。
サイドシル1の後端部分に、リヤホイールハウス8の前端部分が接続されている。
Bピラー5とルーフサイドレール10の後側部分とCピラー6とリヤホイールハウス8の前側部分とサイドシル1の後側部分とによって、リヤドア(図示略)のドア用開口縁部を形成している。尚、Bピラー5は、上部側約2/3相当の上側部材の曲げ剛性が下部側約1/3相当の下側部材の曲げ剛性よりも大きくなるように構成されている。
【0022】
図1に示すように、1対のルーフサイドレール10は、ルーフパネル3の左右端部に夫々対応するように配設され、前後1対のヘッダ21,22と、2つのルーフレインフォースメント(以下、ルーフレインと略す)23,30等を備えている。
フロントヘッダ21は、1対のルーフサイドレール10の前端部を連結し、リヤヘッダ22は、1対のルーフサイドレール10の後端部を連結している。リヤヘッダ22には、リフトゲート(図示略)を開閉するための左右1対のヒンジ(図示略)が設置されている。
ルーフレイン23は、1対のCピラー6の上端部に対応する部位を左右に連結する位置に配置され、ルーフレイン30は、1対のBピラー5の上端部に対応する部位を左右に連結する位置に配置されている。
【0023】
次に、ルーフサイドレール10について説明する。
図2〜
図4に示すように、ルーフサイドレール10は、右側壁部(車幅方向外側壁部)を構成するルーフレールアウタ11と、このルーフレールアウタ11と協働して前後に延びる断面略台形状の閉断面を形成するルーフレールインナ12と、台形状閉断面を内外に仕切るルーフレールレイン13と、ルーフレールアウタ11の前後に延びる上側稜線を覆う断面略L字状補強部材14等によって構成されている。
Bピラーのアウタ部材5aは、上端部がルーフレールアウタ11の右側部に接合され、インナ部材5bは、上端側部分がルーフレールアウタ11の下端部とルーフレールレイン13の下端部を挟み込んで三重接合されている。ルーフレールレイン13の上端部は、ルーフレールアウタ11の上壁部に接合されている。
【0024】
図2,
図5に示すように、ルーフレールアウタ11の左側端部(車幅方向内側端部)は、側面視にて凹凸状(湾曲波状)に形成されている。ルーフレールアウタ11の端部には、上壁部の大半を占める基準面に対して上方に膨出する膨出部11aが前後に並んで複数形成されている。これら複数の膨出部11aがルーフパネル3の下面に溶接にて接合される。更に、ルーフレールアウタ11の左側端部には、ルーフレイン30が接合されている。
【0025】
次に、ルーフレイン30について説明する。
図2,
図5に示すように、ルーフレイン30は、例えば、高張力鋼板によって一体形成され、断面略U字状の前後1対の下溝部31と、前側下溝部31の後側上端部と後側下溝部31の前側上端部を連結して断面逆U字状の上溝部32を形成する連結部33と、前側下溝部31の前側上端部から前方に延びると共に後側下溝部31の後側上端部から後方に延びる前後1対のフランジ部34等を備えている。
【0026】
ルーフレイン30の右側端部、所謂連結部33と前後1対のフランジ部34の右側端部は、ルーフレールアウタ11の左側端部に対して僅かな隙間を空けて対向配置されている。
連結部33と前後1対のフランジ部34には、各々の端部から右方に延設された3つの突出部35が夫々形成されている。各突出部35は、隣り合う膨出部11aの間においてルーフレールアウタ11の上面(基準面)に溶接にて夫々接合されている。
図5に示すように、ルーフレールアウタ11の左側凹凸状端部とルーフレイン30の右側凹凸状端部は、側面視にて、少なくともルーフレールアウタ11の厚さ分交差している。また、膨出部11aが形成されている部位では、ルーフレイン30の凹凸状端部が膨出部11aの断面に交差しているため、ルーフレールアウタ11の厚さ分よりも大きな交差領域を形成している。
【0027】
図6〜
図9に示すように、1対のBピラー5に対応した領域においてルーフサイドレール10とルーフレイン30との間を車室内側から補強する左右1対のガセット40が設けられている。ガセット40は、例えば、断面略ハット状の高張力鋼板によって一体形成され、前後1対の縦壁部41と、これら1対の縦壁部41の下端部を連結する底壁部42と、前側縦壁部41の上端部から前方に延びると共に後側縦壁部41の上端部から後方に延びる前後1対の上部フランジ部43と、車幅方向外側端部に側部フランジ部44等を備えている。
【0028】
底壁部42には、車幅方向外側部分に前後方向に長い楕円状の開口部42aと、車幅方向に延びる下方に突出した前後2本のビード部42bと、開口部42aの外周部に沿って延びる下方に突出した環状ビード部42cとが設けられ、前後2本のビード部42bは環状ビード部42cに接続されている。開口部42aは、溶接用開口部である。
図2,
図7に示すように、ルーフレイン30の右側端部は、ルーフサイドレール10の左側端部に対して僅かに隙間を空けて略前後方向に沿っているため、ビード部42bは、平面視にてルーフレイン30の右側端部に対して略直交するように形成されている。
【0029】
図8に示すように、底壁部42が前後の下溝部31の底壁部に夫々接合され、1対の上部フランジ部43が1対のフランジ部34(突出部35)に夫々接合されている。
底壁部42と上溝部32は、ルーフサイドレール10とルーフレイン30との下側領域において両者間を跨る略矩形状の閉断面Cを形成している。
底壁部42に形成されたビード部42bは、下方に突出した断面略台形状に形成され、車幅方向に延びる4本の稜線を有している。それ故、ビード部42bによって底壁部42と上溝部32が形成する閉断面の断面積Cを増加している。
【0030】
ルーフサイドレール10とルーフレイン30とガセット40は、第1〜第4接合部P1〜P4で夫々接合されている。第1,第2接合部P1,P2は、ガセット40の前後端部に対応する部分に設定されている。
図3に示すように、第1接合部P1では、突出部35(フランジ部34)と上部フランジ部43がルーフレールアウタ11を挟み込んで溶接により三重接合している。第1接合部P1よりも車幅方向外側に設定された第2接合部P2では、ルーフレールインナ12と側部フランジ部44が溶接により接合されている。
【0031】
第3,第4接合部P3,P4は、ガセット40の前後中間部に対応する部分に設定されている。
図4に示すように、ルーフレールインナ12が部分的に左方に延設されているため、第3接合部P3では、突出部35(連結部33)とルーフレールインナ12がルーフレールアウタ11を挟み込んで溶接により三重接合している。第3接合部P3よりも車幅方向外側に設定された第4接合部P4では、側部フランジ部44とインナ部材5bがルーフレールインナ12を挟み込んで溶接により三重接合している。
【0032】
本実施例では、第1,第2,第4接合部P1,P2,P4における各部材の接合方法を同じにし、更に、第3接合部P3におけるルーフレールアウタ11とルーフレールインナ12とルーフレイン30の接合方法を第1,第2,第4接合部P1,P2,P4における各部材の接合方法と同じにすることで、同一の溶接ステーションで作業することができ、生産効率の向上を図っている。
【0033】
次に、上記上部車体構造の作用、効果について説明する。
実施例1に係る上部車体構造によれば、ルーフサイドレール10が、車幅方向外側壁部を構成するルーフレールアウタ11と、このルーフレールアウタ11と協働して前後方向に延びる閉断面を形成するルーフレールインナ12とを有し、ガセット40が、ルーフレールインナ12の車幅方向内側部分とルーフレイン30との間に架設されているため、車両の側面衝突時、ガセット40によりルーフレールインナ12の車幅方向内側下方への変位を抑制することができる。ルーフレールアウタ11が、ガセット40の上側にてルーフレイン30及びガセット40に対して上下方向に重複するように接合されたため、車両Vの側面衝突時、ガセット40によりルーフレールアウタ11の車幅方向内側下方への変位を抑制することができ、ルーフサイドレール10の断面崩れを抑制することによりBピラー5の車幅方向内側への侵入量低減を図ることができる。
【0034】
ルーフレールアウタ11が、ルーフレイン30及びガセット40に挟み込まれた第1接合部P1にてルーフレイン30及びガセット40に接合されたため、車両Vの側面衝突時、ルーフレールアウタ11の車幅方向内側下方への変位をガセット40とルーフレイン30とによる三重接合によって抑制することができる。
【0035】
ルーフレールアウタ11の車幅方向端部が、ガセット40とルーフレールインナ12の車幅方向内側部分とが接合された第2接合部P2よりも車幅方向内側に延設され、第1接合部P1が、第2接合部P2よりも車幅方向内側に延設された部分に設定されたため、ルーフレールアウタ11の車幅方向内側下方への変位を一層抑制することができる。
【0036】
第1接合部P1が、ガセット40の前後方向端部に対応する部分に設定されたため、ルーフレールアウタ11の車幅方向内側下方への変位をガセット40自体の剛性によって抑制することができる。
【0037】
ルーフレールアウタ11が、ルーフレイン30及びルーフレールインナ12に挟み込まれた第3接合部P3にてルーフレイン30及びルーフレールインナ12に接合され、第3接合部P3が、ガセット40の前後方向中間部に対応する部分に設定されたため、車両Vの側面衝突時、ルーフレールアウタ11の車幅方向内側下方への変位をルーフレールインナ12とルーフレイン30とによる三重接合によって抑制することができる。
【0038】
Bピラー5が、アウタ部材5aと、このアウタ部材5aと協働して上下方向に延びる閉断面を形成するインナ部材5bとを有し、ルーフレールインナ12が、インナ部材5b及びガセット40に挟み込まれた第4接合部P4にてインナ部材5b及びガセット40に接合されたため、車両Vの側面衝突時、ルーフレールインナ12の車幅方向内側下方への変位をガセット40とインナ部材5bとによる三重接合によって抑制することができる。
【0039】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、ルーフレイン30を一体形成した例を説明したが、複数部材を接合してルーフレイン30を形成しても良い。例えば、前側下溝部31と後側下溝部31を別々に準備し、パネルである連結部33を用いて前側下溝部31と後側下溝部31を接続することも可能である。また、前後1対の下溝部31を有するルーフレイン30の例を説明したが、1の下溝部31を設けても良く、3以上の下溝部31を設けても良い。この場合、突出部35の数を任意に設定しても良い。
【0040】
2〕前記実施形態においては、第1接合部P1が三重接合された例を説明したが、少なくとも、ルーフレールアウタ11とガセット40の接合及びルーフレールアウタ11とルーフレイン30の接合が上下に重複すれば良い。
【0041】
3〕前記実施形態においては、第1,第2,第4接合部P1,P2,P4を同じ溶接にて接合された例を説明したが、夫々別の接合方法で接合しても良く、第4接合部P4をボルト締結によって連結しても良い。
【0042】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。