【課題】側突時にセンタピラー等の第1のピラーに加わる車幅方向内側の荷重による、ルーフレールのルーフレールレインとの接合部における折れを、該ルーフレールの重量の増加を極力抑えつつ、抑制すること。
【解決手段】車両のルーフ部20の側部に沿って延びるルーフレール2の内部に有する閉断面空間2sに、該閉断面空間2sを画定する面に圧接してルーフレール2の長手方向に直交する断面の形状の変化を抑制する変形抑制部材5を備え、変形抑制部材5を、ルーフレール2の長手方向における、後側ルーフレイン3rとの接合部C3rの前縁32aの前後に亘って、上記接合部C3rの後縁32bと、中間ピラー4との接合部C4の前縁45fとの間に収まる範囲で設けた。
上記第2のピラーには、上記ルーフレールとの接合部において、上記変形抑制部材に対して車幅方向外側に、少なくとも該変形抑制部材の前縁から後縁に亘って第2ピラーアウタパネルを備えた
請求項3に記載の車両の上部車体構造。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印OUTは車幅方向外側(車両右方)を夫々示すものとする。但し、
図6(b)は
図6(a)のB−B線矢視断面図であるが、
図6(b)のみルーフパネル28を図示している。なお、以下に述べる本実施形態の側部車体構造は、車両の左右サイドに略左右略対称に備えている。また、以下の説明において車幅方向外側は「車幅外側」と称し、車幅方向内方は「車幅内側」と称する。
【0024】
図1は本実施形態の上部車体構造を備えた車両の要部を車体右側かつ前方から視た斜視図を示す。
図1に示すように本実施形態の車両は、車体下部にて車両前後方向に延びるトンネル部80が一体または一体的に形成されたフロアパネル81の左右両端部に、車両前後方向に延びるサイドシル82(車両右側のみ図示)を設ける一方、車両のルーフ部20の左右両側の側縁に、該側縁に沿って略車両前後方向に延びるルーフレール2(「ルーフサイドレール」とも称する)(車両右側のみ図示)を設けている。
これらサイドシル82とルーフレール2は共に、夫々の長手方向(車両前後方向)に延びる閉断面空間82s,2sを有する閉断面部材(車体剛性部材)である。
【0025】
サイドシル82とルーフレール2の各前縁は、共に上下方向に延びるフロントピラー83とヒンジピラー84とによって連結されている。フロントピラー83は前下状に傾斜して延びており、その後上端がルーフレール2の前縁に接合されている。ヒンジピラー84は略鉛直方向に延びており、上端がフロントピラー83の前下端に、下端がサイドシル82の前縁に、夫々接合されている。これらフロントピラー83とヒンジピラー84とは共に、夫々の長手方向(上下方向)に延びる閉断面空間83s,84sを有する閉断面部材(車体剛性部材)である。
【0026】
サイドシル82とルーフレール2の各車両前後方向中間部は、これら中間部間において上下方向に延びるセンタピラー1によって連結されている。
【0027】
このセンタピラー1は、上下方向の直交断面が車幅内側へ開口した断面ハット形状のピラーアウタパネル10と、概ね平板状のピラーインナパネル11とを備え、これらピラーアウタパネル10とピラーインナパネル11との各前縁フランジ10f,11f同士を接合するとともに、各後縁フランジ10r,11r同士を接合することによって、内部に上下方向に延びる閉断面空間10sを有して構成している。
【0028】
また、サイドシル82の後方には、後輪を上方から収容可能に車両側面視で上方へ突出するアーチ状に形成されたリヤホイールハウス85が配設されている。リヤホイールハウス85は、リヤホイールハウスインナ86とリヤホイールハウスアウタ87とを備え、これらのうち、リヤホイールハウスアウタ87の前下端87aは、サイドシル82の後縁に接合されている。
【0029】
リヤホイールハウス85の上方には、ルーフレール2の後縁から後下方向へ傾斜して延びるリヤピラー7を備えている。すなわち、リヤピラー7は、その前上端がルーフレール2の後縁に接合されている。なお、リヤピラー7の後下端は、車体後部にて車幅方向に延びる不図示のリヤエンドパネルの車幅外端に接合されている。
【0030】
車体側面視でリヤホイールハウス85とリヤピラー7との間には、荷室側壁を形成するサイドインナパネル88が配設されている。サイドインナパネル88は、下部がリヤホイールハウスインナ86とリヤホイールハウスアウタ87との間に挟み込まれるようにして配設されている。リヤホイールハウス85は、その下方を除く周縁(主に上方かつ前方)がサイドインナパネル88に接合されている。
【0031】
図1に示すように、サイドシル82とルーフレール2とは、センタピラー1よりも後方の位置で上下方向に延びる中間ピラー4(クォーターピラー)によって連結されている。
【0032】
中間ピラー4の下端部は、リヤホイールハウスアウタ87に対して、その頂部87tよりも前方に接合されており、さらに下端部に備えたガセット41がリヤホイールハウスアウタ87の前縁に沿って前下方向へ延び、サイドシル82の後縁に接合されている。
【0033】
中間ピラー4は、その上下方向(長手方向)の直交断面視で車幅内側に向けて開口する断面ハット形状の中間ピラーアウタパネル42を備え、サイドインナパネル88の前部との間で上下方向に延びる閉断面空間4sを構成している。
【0034】
図1に示すように、車体側部のセンタピラー1の前方には、該センタピラー1と、フロントピラー83と、ヒンジピラー84と、ルーフレール2と、サイドシル82とで囲繞された前席乗員乗降用のドア開口部90Fを形成している。
【0035】
車体側部のセンタピラー1の後方には、該センタピラー1と、リヤホイールハウス85の前縁および中間ピラー4と、ルーフレール2と、サイドシル82と、で囲繞された後席乗員乗降用のドア開口部90Rを形成している。
【0036】
図示省略するが、前席乗員乗降用のドア開口部90Fはフロントドアにより、後席乗員乗降用のドア開口部90Rはリヤサイドドアにより、夫々開閉されるように構成している。またフロントサイドドアとリヤサイドドアとは共に、夫々に対応するドア前縁とドア後縁とを繋ぐように車両前後方向に延びる不図示のドアインパクトバーを備えている。
【0037】
また、ルーフ部20には、その両サイドに備えたルーフレール2を、前後両端において車幅方向に連結するフロントヘッダ26、リヤヘッダ27を夫々設けている。
【0038】
フロントヘッダ26とリヤヘッダ27との車両前後方向の間には、複数のルーフレイン3が互いに車両前後方向に離間して互いに略平行に設けており、その車幅方向の両外側端が左右夫々に対応するルーフレール2に接合されている。さらにルーフ部20には、フロントヘッダ26、リヤヘッダ27および複数のルーフレイン3を上方から覆う後述するルーフパネル28(
図6(b)参照)を備えている。
【0039】
複数(当例では2本)のルーフレイン3(3f,3r)のうち前側ルーフレイン3fとルーフレール2との接合部C3fは、ルーフレール2とセンタピラー1との接合部C1と車両前後方向において略一致する。
【0040】
なお、車両の側面部分には、該側面部分の外装となるサイドアウタパネル9を備えている(
図6(b)参照)。サイドアウタパネル9は、車両の側面部分、詳しくは、少なくともルーフレール2、サイドシル82、フロントピラー83、ヒンジピラー84、センタピラー1、中間ピラー4を車幅方向外側から一体に覆うようにして取り付けられるパネルであり、プレス成型にて所定形状に成形するとともに、前後のドア開口部90F,90Rを打ち抜くことによって形成された一枚の鋼板である。
【0041】
続いて、ルーフレール2、後側ルーフレイン3rおよび中間ピラー4の各要部の構造、並びにルーフレール2に対する後側ルーフレイン3rおよび中間ピラー4の各接合部C3r,C4の構造について詳述する。
【0042】
図2は、
図1の要部のA−A線矢視拡大断面図である。
図2に示すように、ルーフレール2は、ルーフレールインナ21と、該ルーフレールインナ21よりも車幅外側かつ上方に位置するルーフレールアウタ22とを備えている。これらのうちルーフレールインナ21は、前側ルーフレールインナ21fと、該前側ルーフレールインナ21fの後縁に前縁が接合される後側ルーフレールインナ21rとを備えている。
【0043】
ルーフレールインナ21(前後各側のルーフレールインナ21f,21r)は、下壁21aと、該下壁21aの車幅内端から上方かつ車幅内側へ延びる内壁21bと、当該内壁21bの上端から下方かつ車幅内側に延びる内端フランジ21dと、該下壁21aの車幅外端から上方かつ車幅外側へ延びる外壁21eと、外壁21eの上端から下方かつ車幅外側に延びる外端フランジ21gと、で長手方向の直交断面が車幅外側かつ上方に向けて開口する略ハット形状に一体に形成している。
【0044】
ルーフレールアウタ22は、上壁22aと、該上壁22aの車幅内端から下方かつ車幅内側へ延びる内壁22bと、当該内壁22bの下端から下方かつ車幅内側に延びる内端フランジ22dと、該上壁22aの車幅外端から下方かつ車幅外側へ延びる外壁22eと、外壁22eの下端から下方かつ車幅外側に延びる外端フランジ22gと、で長手方向の直交断面が車幅内側かつ下方に向けて開口する略ハット形状(略Gの字形状)に一体に形成している。
【0045】
そしてルーフレール2は、ルーフレールインナ21とルーフレールアウタ22との各内端フランジ21d,22d同士、各外端フランジ21g,22g同士を、夫々車両前後方向に複数箇所に亘ってスポット溶接により接合することで、内部に車両前後方向に延びる閉断面空間2s(
図3、
図4参照)を構成している。
【0046】
図1に示すように、中間ピラーアウタパネル42の上部には、下方程後方に傾斜して延びる上側中間ピラーとしての中間ピラーアウタアッパパネル43(以下、「中間ピラーアッパ43」と略記する。)を備え、クォーターウインド用の開口部91の前辺を構成する。中間ピラーアッパ43は、クォーターウインド用の開口部91の前辺に沿って延びる中間ピラーアッパ本体部44と、ルーフレール2にスポット溶接等で接合される中間ピラー幅広上部45と、で一体形成されている。中間ピラー幅広上部45は、該中間ピラーアッパ本体部44の上端に対して上方に突出するとともに、車両前後各側に幅広に形成されている。
【0047】
図3は
図1における、ルーフレール2に対する後側ルーフレイン3rおよび中間ピラー4の各接合部C3r,C4周辺の拡大図であって、ルーフレールアウタ22を取り除いて示した拡大図である。
【0048】
図3に示すように、中間ピラーアッパ43の中間ピラー幅広上部45は、該中間ピラー幅広上部45の前部に、中間ピラーアッパ本体部44の前縁44fよりも前方に延出する前側延出部451を有するとともに、該中間ピラー幅広上部45の後部に、中間ピラーアッパ本体部44の後縁44rよりも後方に延出する後側延出部452を有している。すなわち、中間ピラーアッパ43の中間ピラー幅広上部45は、前縁45fが中間ピラーアッパ本体部44の前縁44fよりも前方に位置するとともに、後縁45rが中間ピラーアッパ本体部44の後縁44rよりも後方に位置する。
【0049】
中間ピラー幅広上部45の上端には、その車両前後方向の全体に亘って上端フランジ45cが形成されている。また、中間ピラーアッパ43の前縁に沿って形成される前縁フランジ43aは、中間ピラーアッパ本体部44の前縁44fから中間ピラー幅広上部45の前側延出部451に至るまで連続して延びている。中間ピラーアッパ43の後縁に沿って形成される後縁フランジ43bは、中間ピラーアッパ本体部44の後縁44rから中間ピラー幅広上部45の後側延出部452に至るまで連続して延びている。
【0050】
換言すると
図3に示すように、中間ピラーアッパ43の中間ピラー幅広上部45は、中間ピラーアッパ本体部44の上端から上方かつ車幅内側へ延びる基部45aを備え、該基部45aの上端から縦壁状の段部45bを介して上方かつ車幅内側へ延びる上端フランジ45cが形成されている。
【0051】
そして
図2、
図3に示すように、中間ピラー幅広上部45は、上端フランジ45cがルーフレールアウタ22の上壁22aに、基部45aにおける前側延出部451および後側延出部452がルーフレールアウタ22の外端フランジ22gに、夫々接合されている(
図3中の×参照)。これにより
図2に示すように、中間ピラー幅広上部45は、その段部45bの内面をルーフレールアウタ22の外壁22eに車幅方向外側かつ下方から突き当てるようにしてルーフレールアウタ22に接合されている。
【0052】
図4は
図3において中間ピラーアッパ43を取り除いた斜視図、
図5はルーフレール2の後側ルーフレイン3rと中間ピラー4との各接合部C3r,C4を下方から視た斜視図を示す。
図3〜
図5に示すように、後側ルーフレイン3rは、ルーフレイン本体部31と、該ルーフレイン本体部31の車幅外端に車幅内端がスポット溶接等により接合されるガセット32とを備えている(
図4中の×参照)。
【0053】
ルーフレイン本体部31とガセット32は、共に車幅方向(長手方向)の直交断面視が上方へ開口するハット形状に形成されている。後側ルーフレイン3rは、その前側に有する前縁フランジ3aと、後側に有する後縁フランジ3bとの各上面がルーフパネル28の下面に不図示の接着剤を用いてに接着固定されており、前後各縁フランジ3a,3bの間に、ルーフパネル28と協働して車幅方向に延びる閉断面空間3sを構成している(
図6(b)参照)。
【0054】
図5に示すように、後側ルーフレイン3rは、ルーフレールインナ21の後部に接合されている。
具体的には、ガセット32の前縁、後縁は、共にルーフレールインナ21の内端フランジ21dにその車幅内側かつ下方からスポット溶接により接合されている(
図3、
図5中の×参照)。さらに、ガセット32の車幅外端における前縁、後縁、下縁には、夫々前縁フランジ32f、後縁フランジ32r、下縁フランジ32dが形成され、何れもルーフレールインナ21の下壁21aにその車幅内側からスポット溶接により接合されている(
図3、
図5中の×参照)。
【0055】
図1〜
図5、
図6(a)(b)に示すように、ルーフレール2と後側ルーフレイン3rとの接合部C3rは、ルーフレール2と中間ピラー4との接合部C4と車両前後方向において略一致する。
【0056】
当例では
図3、
図5に示すように、後側ルーフレイン3rのガセット32は、中間ピラー4の中間ピラー幅広上部45よりも車両前後方向に幅小に形成されており、後側ルーフレイン3rのガセット32の前縁32aは、中間ピラー幅広上部45の前縁45fよりも後方に位置し、後側ルーフレイン3rのガセット32の後縁32bは、中間ピラー幅広上部45の後縁45rよりも前方に位置する。
【0057】
また
図2〜
図5に示すように、ルーフレール2の長手方向における、中間ピラー4との接合部C4の少なくとも一部に相当する部位に有する閉断面空間2sには、ルーフレール2の長手方向に直交する断面の形状の変化を抑制する変形抑制部材としての高剛性発泡体5(以下「発泡体5」と称する)を配置している。
【0058】
発泡体5は、硬質で高強度な発泡樹脂が用いられており、具体的には熱により発泡(膨張)するポリウレタンやエポキシ等の樹脂で、発泡倍率を例えば3倍以下にしたものを利用する。
【0059】
図2に示すように、発泡体5は、ルーフレール2の閉断面空間2sに車両前後方向の直交断面視で略充填することで、ルーフレール2の長手方向の、該発泡体5を備えた箇所およびその前後周辺において直交する断面の形状の変化を抑制する。
【0060】
当例では発泡体5は、ルーフレール2の長手方向における、中間ピラー4との接合部C4の前側部位に相当するの閉断面空間2sに配置している。
【0061】
詳しくは
図3に示すように、発泡体5は、ルーフレール2の長手方向において、後側ルーフレイン3rの接合部C3rの後縁32b(後側ルーフレイン3rのガセット32の後縁32b)と、中間ピラー4との接合部C4の前縁45f(中間ピラー幅広上部45の前縁45f)との間において、後側ルーフレイン3rとの接合部C3rの前縁32a(後側ルーフレイン3rのガセット32の前縁32a)の前後に亘って配置している。
【0062】
すなわち、発泡体5は、ルーフレール2の長手方向において、少なくとも一部が、後側ルーフレイン3rとの接合部C3r、および中間ピラー4との接合部C4に重複するように備えている。
【0063】
発泡体5は、ルーフレール2の閉断面空間2sにおける、発泡体5を備えた箇所において、ルーフレール2を構成するパネル状の壁、当例ではルーフレールアウタ22の外壁22eに取付けられた状態で備えている。
【0064】
具体的には、発泡前の発泡体5は板状に形成され、その一端部(基端部)には、該一端部から突出する係止片51(
図2〜
図4参照)が形成されている。一方、ルーフレールアウタ22の外壁22eの内面に有する、発泡体5の取付け箇所には、係止片51を差し込み可能に貫通形成された係止穴23(
図2参照)が形成されている。
【0065】
ここで車体の製造工程においては、車体の組立て工程の後に、該車体に電着液を電着塗装する塗装工程があり、この電着液に漬浸される電着塗装工程の後、電着液を乾燥させるために、車体が加熱炉内に導入され、車体が所定温度で一定時間だけ加熱される乾燥工程が実行される。
【0066】
そこで、当例では、車体の組立て工程の際に、発泡前の板状の発泡体5の基端部に有する係止片51を例えば、ルーフレールアウタ22の外壁22eに有する、該発泡体5の取付け箇所に設けた係止穴23に差し込んでその周縁に係止することで、発泡前の発泡体5を閉断面空間2sを臨むようにしてルーフレールアウタ22の上記取付け箇所に取り付けておく。そして乾燥工程の際に乾燥炉の熱を利用して発泡体5を発泡(膨張)させ、これにより、発泡体5を、ルーフレール2における閉断面空間2sを画定する面に圧接(密着)させる。
【0067】
図2、
図3に示すように、上述したように、発泡体5は、その前縁が中間ピラー4の中間ピラー幅広上部45の前縁よりも後方に備えたため、該発泡体5の車両前後方向の全体が中間ピラー幅広上部45(主に前側延出部451)によって、ルーフレールアウタ22を介して車幅外側から覆われるようにして配置される。
【0068】
また
図2〜
図5に示すように、前側のルーフレールインナ21と後側ルーフレールインナ21rとの接合部C21は、車両前後方向における、中間ピラー幅広上部45の前縁45f(中間ピラー4のルーフレール2との接合部C4の前縁45f)と後側ルーフレイン3rのガセット32の前縁32a(後側ルーフレイン3rのルーフレール2との接合部C3rの前縁32a)との間に位置している。
【0069】
そして発泡体5は、車両前後方向において、前側ルーフレールインナ21fと後側ルーフレールインナ21rとの接合部C21を跨ぐように備えている。
【0070】
なお
図3に示すように、前側のルーフレールインナ21と後側ルーフレールインナ21rとの接合部C21は、中間ピラー幅広上部45の前縁45fよりも後方、かつ中間ピラーアッパ本体部44の前縁44fよりも前方に位置している。換言すると接合部C21は、中間ピラー幅広上部45の前側延出部451を車両前後方向に横切るように位置している。
【0071】
ところで
図1、
図6(a)に示すように、本実施形態の車両後部の下部には、リヤシート(図示省略)を設置するリヤシートパン92と荷室を形成するためのリヤフロアパネル93と備え、これらリヤシートパン92およびリヤフロアパネル93の境界部には、車幅方向に延びる閉断面空間を内部に構成するクロスメンバ94が設けられている。また
図1、
図6(a)(b)に示すように、これらリヤシートパン92およびリヤフロアパネル93の両サイドには、車両前後方向に延びる閉断面空間95s(
図6(b)参照)を内部に構成するリヤサイドフレーム95を備えている。
なお、リヤサイドフレーム95は、リヤホイールハウス85の車室側にて車両前後方向に延びており、その前縁部がサイドシル82の後部に接合されている。
【0072】
また
図6(a)(b)に示すように、本実施形態の車両後部の側部の車室側には、車室側上下方向補強部材6が上下方向に延びている。車室側上下方向補強部材6は、リヤサイドフレーム95の高さ位置からリヤホイールハウスインナ86の上側周縁を上下方向に跨ぐように上方に延びており、これらリヤホイールハウスインナ86およびサイドインナパネル88との間に上下方向に延びる閉断面空間6sを有している(
図6(b)参照)。
【0073】
さらに
図6(b)に示すように、車室側上下方向補強部材6は、サイドインナパネル88における、車幅外側に備えた中間ピラーアッパ43の下端部に相当する高さ位置まで上方に延びている。
すなわち、車室側上下方向補強部材6は、上端部が中間ピラーアッパ43の下端部にサイドインナパネル88を介して連結されている。
【0074】
また上述したように、中間ピラーアッパ43の上端は、車両前後方向に延びるルーフレール2を介して後側ルーフレイン3rに連結されている。一方
図6(a)(b)に示すように、車室側上下方向補強部材6は、車体下部において該車室側上下方向補強部材6の下部に備えたガセット60を介してリヤサイドフレーム95の車両前後方向の中間部および、クロスメンバ94の車幅外端に接合されている。
【0075】
このように車体は、その前後方向における、後側ルーフレイン3rと中間ピラー4との各接合部C3r,C4に相当する部位において、内部に閉断面空間を有する複数の閉断面部材として、両サイドのルーフレール2、後側ルーフレイン3r、中間ピラー4(中間ピラーアッパ43)、車室側上下方向補強部材6、リヤサイドフレーム95およびクロスメンバ94が配設されている。
【0076】
そして
図1、
図6(b)に示すように、車体は、その前後方向における、上記各接合部C3r,C4に相当する部位において、これら複数の閉断面部材2,3,4,6,94,95によって車体正面視で車室内空間を環状に取り囲む環状構造体8を構成している。
【0077】
発泡体5は、ルーフレール2の長手方向における、環状構造体8の周方向の一部を成す部位、又はその近傍に備えており、当例では、ルーフレイン3の車両前後方向における、環状構造体8の一部を成す部位から、その前側近傍にかけて備えている(
図3参照)。
【0078】
上述した本実施形態の車両の上部車体構造は、車両のルーフ部20(ルーフ)の側部を構成するよう車体上側部に備えるとともに内部に略車両前後方向に延びる閉断面空間2s(内部空間)が画定されたルーフレール2と、ルーフレール2から下方に延びる第1のピラーとしてのセンタピラー1と、センタピラー1よりも後方の位置でルーフレール2から下方に延びる第2のピラーとしての中間ピラー4と、センタピラー1よりも後方の位置でルーフレール2から車幅方向内側に延びる後側ルーフレイン3r(ルーフレイン)と、を有する車両の上部車体構造であって(
図1参照)、ルーフレール2における、閉断面空間2sを画定する面に圧接して該ルーフレール2の長手方向に直交する断面の形状の変化を抑制する変形抑制部材としての発泡体5を、閉断面空間2sに備え、発泡体5は、ルーフレール2の長手方向において、後側ルーフレイン3rとの接合部C3rの後縁32b(すなわちガセット32の後縁32b)と、中間ピラー4との接合部C4の前縁45f(すなわち中間ピラー幅広上部45の前縁45f)との間において、後側ルーフレイン3rとの接合部C3rの前縁32a(すなわちガセット32の前縁32a)の前後の範囲に亘って設けたものである(
図2、
図3参照)。
【0079】
詳述すると、発泡体5は、後側ルーフレイン3rのルーフレール2との接合部C3rの前縁32aに対して前方から後方に亘る範囲に連続して設けられ、さらに発泡体5は、後縁が、後側ルーフレイン3rのルーフレール2との接合部C3rの後縁32bよりも前方に位置するとともに、前縁が、中間ピラー4のルーフレール2との接合部C4の前縁45fよりも後方に位置する範囲で設けられたものである。
【0080】
ここで側突時に例えば、センタピラー1に入力された荷重は、ルーフレール2の長手方向におけるセンタピラー1との接合部C1から後方へ向かうルートや、不図示のリヤサイドドアのドアインパクトバーから中間ピラー4に沿って上方へ向かうルートによってルーフレール2の後側ルーフレイン3rとの接合部C3rに伝達される場合がある。
【0081】
また、ルーフレール2の後側ルーフレイン3rとの接合部C3rは、ルーフレール2の後側ルーフレイン3rによって支持される部位に相当するが、例えば、接合部C3rの前方は、後側ルーフレイン3rによって支持されずに、該接合部C3rから前方へ片持ち状に延びる部位に相当する。このため、側突時に側突荷重が上述したように、ルーフレール2の後側ルーフレイン3rとの接合部C3rに伝達された場合には、接合部C3rとその前方の非接合部(接合部C3rの直前部)との剛性差に伴い、これらの間に応力が集中することに起因して、接合部C3rの前方近傍の非接合部の折れ、すなわちルーフレール2の非接合部の断面崩れが懸念される。
【0082】
これに対して、上述したように、発泡体5を、ルーフレール2の長手方向における、接合部C3rの前縁32aの前後の範囲に亘って設けることで、すなわち、ルーフレール2の長手方向における、接合部C3rの前縁32aに対して後側の、後側ルーフレイン3rによって支持された剛性の高い接合部C3rと、接合部C3rの前縁32aに対して前側の、荷重が集中し易く、後側ルーフレイン3rによって支持されていないが故に折れやすい部位(非接合部)とを発泡体5によって繋ぐことで、側突時に、ルーフレール2の後側ルーフレイン3rとの接合部C3rに伝達する荷重に対して、接合部C3rの前方近傍の非接合部における、断面崩れを効果的に抑制することができる。
【0083】
そして、発泡体5は、上記接合部C3rの後縁32bと接合部C4の前縁45fとの間に収まる範囲で必要な箇所のみにピンポイントで設けることで、側突時にルーフレール2の後側ルーフレイン3rとの接合部C3rに伝達する荷重に対してルーフレール2の後側ルーフレイン3rとの接合部C3rにおける折れを、ルーフレール2の重量の増加を極力抑えたうえで効果的に抑制することができる。
【0084】
この発明の態様として、発泡体5は、熱により発泡する高剛性発泡体5である(
図2〜
図4)。
【0085】
上記構成によれば、高剛性発泡体5は、車体表面に塗布した電着液(塗装剤)の乾燥工程の熱を利用して発泡させることができるため、ルーフレール2の重量の増加を抑制しつつ、ルーフレール2における、閉断面空間2sにおいても、該閉断面空間2sを画定する面に圧接するように容易に充填させることができる。
【0086】
この発明の態様として、ルーフレール2における後側ルーフレイン3rとの接合部C3rと中間ピラー4との接合部C4は、該ルーフレール2の長手方向において少なくとも一部が一致し(
図1〜
図6参照)、車体には、内部に閉断面空間2s,3s,4s,6s,94s,95sを有する複数の閉断面部材2,3,4,6,94,95を備え(
図6(b)参照)、車体前後方向における、後側ルーフレイン3rと中間ピラー4との各接合部C3r,C4が一致する部位周辺には、車体正面視で車室内空間を環状に取り囲むように複数の閉断面部材2,3,4,6,94,95を配設することにより環状構造体8が構成され(
図1、
図6(b)参照)、発泡体5は、ルーフレール2の長手方向における、環状構造体8の一部を成す部位又はその近傍に備えることができる(
図2参照)。
【0087】
上記構成によれば、ルーフレール2の長手方向における、環状構造体8の一部を成す部位又はその近傍に発泡体5を備えることで、ルーフレール2の長手方向における、当該部位における断面崩れを抑制でき、環状構造体8の剛性向上に寄与することができる。
【0088】
この発明の態様として、中間ピラー4には、ルーフレール2との接合部において、発泡体5に対して車幅方向外側に、少なくとも該発泡体5の前縁から後縁に亘って第2ピラーアウタパネルとしての中間ピラーアッパ43(主に中間ピラー幅広上部45の前側延出部451)を備えることができる(
図3参照)。
【0089】
上記構成によれば、発泡体5の車両前後方向の全体を、中間ピラーアッパ43の主に中間ピラー幅広上部45によって車幅外側から覆うように備えることができる。従って、側突時に例えば、センタピラー1に入力され、リヤサイドドアのドアインパクトバーを経由して中間ピラー4の中間ピラーアッパ43に備えた中間ピラー幅広上部45からルーフレール2へ伝達される側突荷重を、発泡体5の車両前後方向の全体で受け止めることができ、ルーフレール2の長手方向における、中間ピラー4との接合部C4に相当する部位の断面崩れを抑制することができる。
【0090】
この発明の態様として、ルーフレール2は、前側ルーフレールインナ21f(前側のルーフレール構成部材)と、該前側ルーフレールインナ21fの後縁に前縁が接合される後側ルーフレールインナ21r(後側のルーフレール構成部材)とを備え(
図2〜
図5参照)、発泡体5を、ルーフレール2の長手方向における、前側ルーフレールインナ21fと後側ルーフレールインナ21rとの接合部C21に相当する位置に、該接合部C21を前後に跨るように備えることができる(同図参照)。
【0091】
上記構成によれば、発泡体5を、前側ルーフレールインナ21fと後側ルーフレールインナ21rとの接合部C21を車両前後方向に跨ぐように配置することで、該発泡体5がルーフレール2における閉断面空間2sを画定する内面に対して圧接時に、接合部C21において前側ルーフレールインナ21fの後縁と後側ルーフレールインナ21rの前縁とが互いに重合するように圧接することができるため、側突時には、前側ルーフレールインナ21fと後側ルーフレールインナ21rとの相互間における側突荷重の伝達、分散効率を高めることができる。
【0092】
なお、ルーフレール2を、車両前後方向において、少なくとも前側ルーフレールインナ21fと後側ルーフレールインナ21rとに分割して構成することで、前後夫々において、車幅方向において対向する構成部材、すなわちルーフレールアウタ22との間で、内端フランジ21d,22d同士、外端フランジ21g,22g同士を接合するにあたり、スポット溶接等の接合箇所の数を確保するとともに、接合箇所を適所に設けたうえで互いに接合することができる。
【0093】
このため、ルーフレール2構成部材は、車両前後方向に沿って一部材で形成する場合と比して、車幅方向に対向する構成部材との間でしっかりと接合することができる。
【0094】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
具体的に第1のピラーは、ルーフレールのルーフレイン(後側ルーフレイン3r)との接合部よりも前方において、該ルーフレールから下方に延びるピラーであれば、センタピラーに限らず、例えばフロントピラー等他のピラーであってもよい。
すなわち、本発明の上部車体構造は、センタピラーを有しない車両に適用してもよい。
【0095】
また、側突時にルーフレールのルーフレイン(後側ルーフレイン3r)との接合部に伝達される荷重は、センタピラーに入力される車幅方向内側の荷重に基づくものに限らず、センタピラーを介さずに、第2のピラーからルーフレールに伝達される荷重やルーフレールのルーフレインとの接合部よりも前方からルーフレインに沿ってルーフレインとの接合部に伝達される荷重等、側突時に車体側部に入力される車幅方向内側の荷重に基づくものであればよい。