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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203621(P2020-203621A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/14 20060101AFI20201127BHJP
【FI】
   B62D55/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-113067(P2019-113067)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土原 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 康成
(72)【発明者】
【氏名】山本 大二郎
(57)【要約】
【課題】トラックガイドおよびトラックリンクの双方の摩耗が抑制でき、これらの交換作業の負担も軽減できる作業機械を提供する。
【解決手段】回転するクローラ25を誘導する下側ガイドローラ27の周囲に設けられて、クローラ25の横ずれを規制するトラックガイド30Aを備える。トラックガイド30Aは、クローラフレーム22に着脱可能に取り付けられた一対の取付部31A,31Aに架設された一対の当板部32A,32Aを有している。当板部32Aが、クローラ25の端部を受け止める規制プレート40と補強プレート41とを有し、規制プレート40の板面と、補強プレート41の上方に向いた板面との双方に面接触した状態で、取付部31Aに当板部32Aが支持されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のクローラ装置を備えた下部走行体の上に、作業を行う機械本体が搭載されている作業機械であって、
前記クローラ装置の各々は、
遊動輪と駆動輪とを前後の端部にそれぞれ軸支しているクローラフレームと、
前記遊動輪および前記駆動輪に架け渡されて、前記駆動輪の駆動によって回転するクローラと、
前記クローラフレームの下部に回転可能に設けられて、前記遊動輪と前記駆動輪との間を移動する前記クローラを誘導する下側ガイドローラと、
前記下側ガイドローラの周囲に設けられて、前記クローラの横ずれを規制するトラックガイドと、
を備え、
前記トラックガイドは、
前記下側ガイドローラの回転軸に沿って延びるように前記下側ガイドローラの両側に配置されて、前記クローラフレームに着脱可能に取り付けられた一対の取付部と、
前記下側ガイドローラを跨いだ状態で前記取付部の各々の両端部に架設された一対の当板部と、
を有し、
前記当板部の各々は、前記クローラが所定以上に横ずれした場合に、前記クローラの端部と接触するように構成されていて、
前記当板部が、
横方に向く一方の板面で前記クローラの端部を受け止める規制プレートと、
前記規制プレートの他方の板面に略直交するように固定された補強プレートと、
を有し、
前記規制プレートの前記他方の板面と、前記補強プレートの上方に向いた板面との双方に面接触した状態で、前記取付部に前記当板部が支持されている作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記取付部の各々は、
締結具を挿通する貫通孔が形成されているフランジ部と、
前記フランジ部の一方の側部に立設されて前記当板部の各々が架設される支持板部と、
を有し、
前記一対の取付部は、前記フランジ部を前記下側ガイドローラの側に向けた状態で、前記締結具を締結することによって前記クローラフレームに取り付けられており、
前記補強プレートの板面のうち、前記貫通孔と上下方向に重なる部位に切欠部が形成されている作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記取付部の各々は、
締結具を挿通する貫通孔が形成されているフランジ部と、
前記フランジ部の一方の側部に立設されて前記当板部の各々が架設される支持板部と、
を有し、
前記一対の取付部は、前記フランジ部を前記下側ガイドローラの側に向けた状態で、前記締結具を締結することによって前記クローラフレームに取り付けられており、
前記当板部の各々が、前記取付部の各々に着脱可能な状態で架設されている作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
締結された前記締結具の下方が前記補強プレートで覆われている作業機械。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載の作業機械において、
前記取付部の端部に、前記支持板部と前記フランジ部との境界部分を覆うリブが設けられている作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、油圧ショベル等の作業機械に関し、その中でも、クローラの脱輪を防止するトラックガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械は、大略、下部走行体と、その上に搭載された機械本体とで構成されている。機械本体には、ブームやアーム、バケット等で構成されたアタッチメントが備えられており、アタッチメントを油圧制御することによって掘削等の作業が行われる。
【0003】
下部走行体には、一対のクローラが備えられている。具体的には、下部走行体の左右には、前後方向に延びて、その前後の端部に遊動輪と駆動輪とを軸支した一対のクローラフレームが設けられている。各クローラは、隣接する履板(シュー)の間で互いのトラックリンクを連結することにより、環状に構成されていて、各クローラフレームの駆動輪と遊動輪とに架け渡されている。駆動輪を回転駆動することで、下部走行体は、建設現場などの荒場でも走行可能となっている。
【0004】
駆動輪と遊動輪との間の上下には、トラックリンクを受け止めることによってクローラの回転を誘導する複数のガイドローラ(下側ガイドローラおよび上側ガイドローラ)が設けられている。下側ガイドローラには、クローラの脱輪を防止するため、トラックリンクの過剰な横ずれを規制するトラックガイドが付設されているのが一般的である。
【0005】
トラックガイドの従来例としては、特許文献1〜3がある。特許文献1には、クローラの堆積物を除去する部材を取り付けたトラックガイドが開示されている。特許文献2には、トラックリンクとの接触部位に着脱可能なガードを取り付けたトラックガイドが開示されている。特許文献3には、下側ガイドローラの全域を覆うフルトラックガイドを、その長手方向に分割して交換容易にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−107547号公報
【特許文献2】実開平7−21487号公報
【特許文献3】特開平5−305882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トラックガイドは、トラックリンクとの接触によって摩耗する。従って、トラックガイドは、摩耗が進めば交換が必要になる(消耗品)。ところが、トラックガイドは、高重量なうえ、クローラフレームの下側に設置されているため、脱着が困難で、その作業負担は大きいという問題がある。
【0008】
更に、トラックガイドとの接触でトラックリンクも摩耗する。しかも、トラックガイドよりもトラックリンクの方が摩耗し易い傾向がある。トラックリンクの交換時は、クローラをクローラフレームから取り外して分解する必要がある。そのため、トラックガイドの交換よりも作業負担は大きい。交換に要するコストも、トラックガイドよりも高額である。
【0009】
そのため、トラックガイドだけでなく、トラックリンクの摩耗も抑制することで、これら双方の交換作業の負担を軽減する対策が望まれる。
【0010】
開示する技術の主たる目的は、トラックガイドおよびトラックリンクの双方の摩耗が抑制でき、これらの交換作業の負担も軽減できる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、一対のクローラ装置を備えた下部走行体の上に、作業を行う機械本体が搭載されている作業機械に関する。
【0012】
前記クローラ装置の各々は、遊動輪と駆動輪とを前後の端部にそれぞれ軸支しているクローラフレームと、前記遊動輪および前記駆動輪に架け渡されて、前記駆動輪の駆動によって回転するクローラと、前記クローラフレームの下部に回転可能に設けられて、前記遊動輪と前記駆動輪との間を移動する前記クローラを誘導する下側ガイドローラと、前記下側ガイドローラの周囲に設けられて、前記クローラの横ずれを規制するトラックガイドと、を備える。
【0013】
前記トラックガイドは、前記下側ガイドローラの回転軸に沿って延びるように前記下側ガイドローラの両側に配置されて、前記クローラフレームに着脱可能に取り付けられた一対の取付部と、前記下側ガイドローラを跨いだ状態で前記取付部の各々の両端部に架設された一対の当板部と、を有している。前記当板部の各々は、前記クローラが所定以上に横ずれした場合に、前記クローラの端部と接触するように構成されている。
【0014】
そして、前記当板部が、横方に向く一方の板面で前記クローラの端部を受け止める規制プレートと、前記規制プレートの他方の板面に略直交するように固定された補強プレートと、を有し、前記規制プレートの前記他方の板面と、前記補強プレートの上方に向いた板面との双方に面接触した状態で、前記取付部に前記当板部が支持されている。
【0015】
すなわち、この作業機械によれば、クローラの横ずれを防止するトラックガイドが、回転するクローラを受け止めながら誘導する下側ガイドローラの周囲に設けられていて、そのトラックガイドが、一対の取付部に架設された一対の当板部を有している。これら当板部の各々が、規制プレートと、それに略直交して固定された補強プレートとを有しており、規制プレートの外方に向いた板面と、補強プレートの上方に向いた板面との双方に面接触した状態で、取付部に当板部が支持されている。
【0016】
従って、規制プレートは、補強プレートにより、剛性が構造的に強化されている。その結果、規制プレートの板厚を相対的に薄くできる。その結果、クローラの端部と規制プレートとの間の隙間を大きくできる。クローラの端部と規制プレートとの間の隙間が大きくなれば、これらの接触回数や接触強度が低減されるので、これら双方の摩耗を抑制できる。また、トラックガイドの重量が低減するので、これらの交換作業の負担も軽減できる。
【0017】
通常、クローラの端部は、クローラが異常に傾斜して斜め下方から衝突する場合を除けば、当板部の板面に向かって衝突する。それに対し、当板部は、これらの衝突方向に対して効率よく支持できるように、面接触した状態で取付部に支持されているので、板厚が薄くても効果的に変形を防止できる。
【0018】
前記作業機械はまた、前記取付部の各々は、締結具を挿通する貫通孔が形成されているフランジ部と、前記フランジ部の一方の側部に立設されて前記当板部の各々が架設される支持板部と、を有し、前記一対の取付部は、前記フランジ部を前記下側ガイドローラの側に向けた状態で、前記締結具を締結することによって前記クローラフレームに取り付けられている場合には、前記補強プレートの板面のうち、前記貫通孔と上下方向に重なる部位に切欠部を形成するのが好ましい。
【0019】
貫通孔に挿通した締結具を締結するには、その下方から所定の工具を装着し、その工具を強い力で回転させる必要があるが、そのためには、貫通孔の下方に、これら工具を装着して操作が可能になる、ある程度開放されたスペースが必要である。
【0020】
それに対し、このトラックガイドでは、補強プレートに切欠部が形成されているので、補強プレートを設けても、支障なく締結できる。従って、トラックガイドを容易に脱着できる。
【0021】
また、上述した場合には、前記当板部の各々が、前記取付部の各々に着脱可能な状態で架設されている、としてもよい。
【0022】
そうすれば、当板部を外した状態で締結することで、補強プレートを設けても、支障なく締結できる。
【0023】
しかも、取付部および当板部の各々を、個別に取り付けることができるので、取付作業時に扱う部材の重量を分散することが可能になる。また、摩耗の程度に応じて、当板部を個別に交換できる。その結果、更に交換作業の負担が軽減され、作業性に優れる。
【0024】
材質を変えて当板部だけを摩耗し易くできるので、クローラの摩耗をより効果的に抑制できる。取付部を個別にクローラフレームに取り付けることができるので、取付ピッチが異なる場合にも対応できる。当板部の全長を長くしたり幅を広くしたりするなど、仕様に応じて当板部の形状も変更できる。従って、汎用性に優れる。
【0025】
その場合、特に、締結された前記締結具の下方が前記補強プレートで覆われているようにするとよい。
【0026】
そうすれば、補強プレートが強化されるので、当板部の剛性を更に高めることができる。岩石等が締結具に下方から衝突することも防止できる。
【0027】
前記作業機械はまた、前記取付部の端部に、前記支持板部と前記フランジ部との境界部分を覆うリブが設けられている、としてもよい。
【0028】
そうすれば、構造的に取付部の端部の剛性が強化されるので、貫通孔を更に端に近づけることができる。従って、クローラの端部と当板部との間の隙間をよりいっそう大きくできる。そして、リブによって岩石等が締結具に横方から衝突することも防止できる。
【発明の効果】
【0029】
開示する技術を適用した作業機械によれば、トラックガイドおよびトラックリンクの双方の摩耗が抑制できるので、耐久性に優れる。そして、これらの交換作業の負担も軽減できるので、作業性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】開示する技術の適用に好適な油圧ショベルを示す概略図である。
図2図1に二点鎖線Rで示す部分を拡大して示す概略斜視図である。
図3】改良前のトラックガイドを示す概略斜視図である。
図4】改良前のトラックガイドとクローラとの位置関係を示す概略図である。
図5】開示する技術を適用した改良トラックガイドを示す概略斜視図である。
図6A】改良当板部を示す概略斜視図である。
図6B】改良取付部を示す概略斜視図である。
図7】補強プレートと貫通孔との関係を説明するためにトラックガイドの要部を下方から見た概略図である。
図8】改良トラックガイドの変形例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。各図には、上下や前後、左右の方向を矢印で示してある。特に言及しない限り、説明で用いる上下等の方向は、これら矢印で示す方向に従うものとする。
【0032】
<作業機械>
図1に、開示する技術の適用に好適な作業機械として、油圧ショベル1を例示する。油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2の上に搭載された上部旋回体3(機械本体の一例)とを備えている。上部旋回体3は、下部走行体2に旋回自在に支持されたアッパーフレーム5を有している。そのアッパーフレーム5の上に、アタッチメント6、キャブ7、機械室8等が設置されている。
【0033】
アタッチメント6は、上部旋回体3の前部に設置されている。アタッチメント6は、ブーム6a、アーム6b、およびバケット6c等で構成されている。これらブーム6a等は、油圧制御された油圧シリンダ6dの伸縮に連動して動作し、掘削等の作業を行う。これらブーム6a等の操作は、キャブ7において行われる。キャブ7は、矩形箱形の運転室である。キャブ7は、アタッチメント6に隣接して上部旋回体3の左前部に設置されている。
【0034】
機械室8は、上部旋回体3の後部に設置されている。機械室8の内部には、図示しないが、エンジンや油圧ポンプなど、油圧ショベル1を駆動する駆動装置が設置されている。アッパーフレーム5の後端部には、アタッチメント6との間で前後のバランスを確保するカウンタウエイト9が設置されている。
【0035】
(下部走行体)
下部走行体2は、大略、支持ボディ20と一対のクローラ装置21とで構成されている。クローラ装置21は、支持ボディ20の左右両サイドに1台ずつ取り付けられている。支持ボディ20の中央部には、油圧で駆動制御される旋回モータ20aが設置されている。アッパーフレーム5は、その旋回モータ20aを介して支持ボディ20に旋回自在に支持されている。
【0036】
クローラ装置21の各々は、クローラフレーム22、遊動輪23、駆動輪24、クローラ25、上側ガイドローラ26、下側ガイドローラ27、後述するトラックガイド30などで構成されている。
【0037】
各クローラフレーム22は、前後方向に延びる高剛性の柱状部材からなり、その幅方向(左右方向)の内側が支持ボディ20によって支持されている。クローラフレーム22の前端部には、遊動輪23が回転自在に軸支されている。クローラフレーム22の後端部には、駆動輪24が回転自在に軸支されている。駆動輪24は、油圧制御によって駆動され、操作に応じた速度で正逆双方向に回転するように構成されている。
【0038】
クローラ25は、複数の履板(シュー25a)で構成された無端帯状の部材からなる。各シュー25aの内面側には、詳細は省略するが、一対のリンクプレート、ピン、ブッシュなどで構成されたトラックリンク25bが取り付けられている(図4参照)。これらトラックリンク25bを、隣接するシュー25aの間で互いに連結することにより、クローラ25は、環状に構成されている。各クローラ25は、各クローラフレーム22の駆動輪24と遊動輪23とに架け渡されている。駆動輪24が駆動されることで各クローラ25は回転する。
【0039】
クローラフレーム22の中間部分(遊動輪23と駆動輪24との間の部分)の上部には、複数の上側ガイドローラ26が前後方向に間隔を空けて設けられている。クローラフレーム22の中間部分の下部には、複数の下側ガイドローラ27が前後方向に間隔を空けて設けられている。
【0040】
上側ガイドローラ26および下側ガイドローラ27の各々は、クローラフレーム22に軸支されており、クローラ25の回転方向に直交して左右方向に延びる回転軸Jを中心に回転自在となっている(図2参照)。これら上側ガイドローラ26および下側ガイドローラ27の各々は、トラックリンク25bと係合する。そうすることにより、これらは、遊動輪23と駆動輪24との間を移動するクローラ25を誘導する。
【0041】
(開示する技術を適用する前のトラックガイド)
一部の下側ガイドローラ27の周囲には、クローラ25の横ずれを規制するトラックガイドが設置されている。図2図3に、開示する技術を適用する前のトラックガイド30を具体的に示す。トラックガイド30は、一対の取付部31,31、および一対の当板部32,32を有し、これらが溶接によって一体化されている。
【0042】
取付部31の各々は、金属の厚板を折り曲げることによって形成された横長な部材からなる。各取付部31は、帯板状のフランジ部31aと、その一方の側部に立設された支持板部31bとを有している。支持板部31bはフランジ部31aと略直交している。
【0043】
フランジ部31aの各端部には、クローラフレーム22に締結する固定ボルトB1(締結具の一例)を挿通する貫通孔33が板面を貫通して形成されている。支持板部31bの下方に向く突端の中間部分には、その突端側から凹むことにより、トラックリンク25bとの接触を回避する下向き凹部34が形成されている。それにより、支持板部31bの長手方向の両端部分は相対的に突出し、一対の架設受部35,35が構成されている。
【0044】
当板部32の各々は、金属の厚板によって形成された横長な板部材からなる。各当板部32の上方に向く一方の側縁の中間部分には、その突端側から凹むことにより、下側ガイドローラ27との接触を回避する上向き凹部36が形成されている。それにより、当板部32の長手方向の両端部分は相対的に突出し、一対の架設部37,37が構成されている。
【0045】
溶接による接合により、一対の当板部32,32は一対の取付部31,31に架設されている。具体的には、一対の取付部31,31は、各々のフランジ部31aを向き合わせ、所定の間隔を隔てて平行に配置される。各々のフランジ部31aを向き合わせることで、トラックガイド30の取付間隔を狭くでき、フランジ部31aを支持板部31bで外部から保護できる。一対の当板部32,32は、一対の取付部31,31に対して直交した状態で、一対の貫通孔33,33の間に、所定の間隔を隔てて配置される。
【0046】
そうした状態で、各架設受部35の突端部分に各架設部37を溶接することにより、一対の当板部32,32は、一対の取付部31,31に架設されている。それにより、トラックガイド30は、矩形枠形状に一体化されている。
【0047】
図2に示すように、トラックガイド30は、所定の下側ガイドローラ27を囲むような状態で、クローラフレーム22に取り付けられている。具体的には、クローラフレーム22の下側ガイドローラ27が設置されている部分の両側には、貫通孔33に対応した複数の固定孔22aが形成されている。
【0048】
トラックガイド30は、図3に示すように、これら固定孔22aに各貫通孔33を通じて固定ボルトB1を締結することにより、クローラフレーム22に着脱可能に取り付けられる。それにより、一対の取付部31,31は、下側ガイドローラ27の回転軸Jに沿って延びるように下側ガイドローラ27の両側に配置され、一対の当板部32は、下側ガイドローラ27を跨いだ状態となる。
【0049】
そして、図4に示すように、下側ガイドローラ27に受け止めて誘導されるトラックリンク25bは、所定の隙間Gを隔てた状態で、一対の当板部32,32の間に位置するように構成されている。それにより、当板部32の各々は、トラックリンク25bが所定以上に横ずれした場合に、その対向面(規制面32a)が、トラックリンク25bの端部と接触し、クローラ25の脱輪が防止できるようになっている。
【0050】
従って、当板部32はトラックリンク25bとの接触によって摩耗するため、トラックガイド30は、摩耗が進めば交換が必要になる(消耗品)。ところが、トラックガイド30は、高重量(機種によっては30kg以上)である。しかも、クローラフレーム22の下側に設置されているため、脱着が困難で、その交換作業の負担は大きい。
【0051】
更に、トラックガイド30との接触により、トラックリンク25bも摩耗する。しかも、トラックリンク25bは、トラックガイド30よりも摩耗し易い傾向がある。トラックリンク25bを交換するには、クローラ25をクローラフレーム22から取り外して分解する必要がある。そのため、トラックガイド30の交換よりも作業負担は大きい。交換に要するコストも、トラックガイド30よりも高額である。
【0052】
そのため、トラックガイド30とトラックリンク25bの双方の摩耗を抑制することが要望されている。その対策の1つに、クローラ25の脱輪が防止できる範囲内で、トラックリンク25bと当板部32との間の隙間Gを大きくし、これらが接触し難くすることが考えられる。ところが、そのようにトラックリンク25bと当板部32との間の隙間Gを大きくすると、各当板部32が各取付部31の端に寄っていくため、トラックガイド30をクローラフレーム22に取り付けることが困難になる。
【0053】
すなわち、クローラフレーム22へ締結する固定ボルトB1を挿通する貫通孔33が、各当板部32よりも各フランジ部31aの端に位置しているため、各当板部32と貫通孔33との間が狭くなり、固定ボルトB1を締結する工具等が当板部32と干渉する。その干渉を避けて貫通孔33をフランジ部31aの端に近づけると、構造的に締結部位の強度が確保できなくなる。当板部32の板厚は、適正な強度を考慮して設定されているため、薄くすると、当板部32が大きく変形するおそれがある。
【0054】
このような理由から、上述した形態のトラックガイド30では、トラックリンク25bと当板部32との間の隙間Gを大きくするには限界があり、トラックガイド30とトラックリンク25bの双方の摩耗を効果的に抑制するには改善の余地があった。
【0055】
そこで、開示する技術では、トラックガイド30を改良し、そのような不具合を招くことなく、トラックリンク25bと当板部32との間の隙間Gを大きくできるようにした。
【0056】
<改良トラックガイド>
図5に、開示する技術を適用したトラックガイドの一例を具体的に示す(改良トラックガイド30Aともいう)。改良トラックガイド30Aの基本的構成は、上述したトラックガイド30と同様であり、改良トラックガイド30Aが設置される作業機械も、上述した油圧ショベル1と同様である。従って、これらで共通する構成については、同じ符号を用いることにより、その説明は省略する。
【0057】
改良トラックガイド30Aでは、特に、当板部32が改良されている(改良当板部32Aともいう)。すなわち、図6Aに示すように、各改良当板部32Aは、規制プレート40、補強プレート41、一対のリブプレート42,42などで構成されている。
【0058】
規制プレート40は、金属製の細長い帯板状の部材からなり、上述した当板部32よりも薄い板厚に設定されている。規制プレート40の上方に向く側縁の中間部分には上向き凹部36が形成されている。両規制プレート40のうち、互いに対向した状態で横方に向く板面が、トラックリンク25bの端部を受け止める規制面32aとなっている。
【0059】
補強プレート41もまた、上述した当板部32よりも薄い板厚に設定された金属製の細長い帯板状の部材からなる。補強プレート41は、規制面32aとは逆向きの板面(反規制面)に略直交するように配置されている。補強プレート41はまた、規制プレート40に沿って延びるように、規制プレート40の下方に向く側縁の側に配置されている。そして、補強プレート41は、溶接することによって規制プレート40に固定されている。
【0060】
それにより、規制プレート40は、補強プレート41により、剛性が構造的に強化されている。その結果、規制プレート40の板厚を相対的に薄くしても規制面32aへ作用する強い負荷に対して対応できる。その結果、トラックリンク25bと規制プレート40との間の隙間Gを大きくできる。また、トラックガイド30の重量を低減できる。
【0061】
補強プレート41は、その板面のうち、貫通孔33と上下方向に重なる部位、つまり、補強プレート41の両端部の2箇所に、外縁部から湾曲して凹む切欠部41aが形成されている。切欠部41aについては別途後述する。
【0062】
各リブプレート42は、矩形板状の小さな金属部材からなる。各リブプレート42は、改良当板部32Aの各端部における規制プレート40と補強プレート41との境界部分(隅部)に対向配置されており、規制プレート40および補強プレート41の各板面に接する端面をこれら板面に溶接することで、規制プレート40および補強プレート41の双方に固定されている。
【0063】
それにより、規制プレート40は、リブプレート42により、剛性がよりいっそう構造的に強化されている。その結果、規制プレート40の板厚をより薄くできる。その結果、トラックリンク25bと規制プレート40との間の隙間Gを、より大きくできる。また、トラックガイド30の重量をよりいっそう低減できる。
【0064】
改良トラックガイド30Aでは、取付部31の一部も改良されている(改良取付部31Aともいう)。すなわち、図6Bに示すように、改良取付部31Aの各端部、詳細には、改良取付部31Aの長手方向における各貫通孔33よりも端の部分に、貫通孔33の外方から、支持板部31bとフランジ部31aとの境界部分を覆う略L形状をした外側リブ45が増設されている。各外側リブ45は、支持板部31bおよびフランジ部31aの各板面に接する端面をこれら板面に溶接することで、支持板部31bおよびフランジ部31aの双方に固定されている。
【0065】
すなわち、改良取付部31Aでは、外側リブ45によって剛性が構造的に強化されている。従って、改良取付部31Aも板厚を薄くできるので、トラックガイド30を軽量化できる。
【0066】
同様に、改良取付部31Aの長手方向における各貫通孔33よりも中間側の部分に、一対の内側リブ46,46が増設されている。内側リブ46も略L形状をしており、各内側リブ46は、各貫通孔33の内方から、支持板部31bとフランジ部31aとの境界部分を覆っている。従って、内側リブ46により、改良取付部31Aでは、更に剛性が構造的に強化されている。従って、その板厚を更に薄くできるので、トラックガイド30をよりいっそう軽量化できる。
【0067】
そして、改良取付部31Aでは、下向き凹部34が略矩形に形成されていて、一対の架設受部35には、互いに平行した状態で対向する端面(対向端面47)が形成されている。また、各架設受部35の突端部分には、対向端面47に略直交して連なる端面(直交端面48)が形成されている。
【0068】
各改良当板部32Aは、各々の補強プレート41を逆方向に向け、各リブプレート42を、各改良取付部31Aの架設受部35の互いに対向している板面に接するように配置する。それにより、図5に拡大して示すように、各規制プレート40の反規制面は、各改良取付部31Aの対向端面47に面接触した状態となり、補強プレート41の上方に向いた板面は、改良取付部31Aの直交端面48に面接触した状態となる。
【0069】
そのような状態で、各リブプレート42、各補強プレート41、および各規制プレート40と、各架設受部35との間の境界部分を、これに沿って溶接して固定することにより、改良取付部31Aに改良当板部32Aが支持されている。
【0070】
トラックリンク25bは、クローラ25が異常に傾斜すれば、下方から各改良当板部32Aに衝突するおそれはあるが、通常は、横方から各改良当板部32Aの規制面32aに衝突する。いずれの場合であっても、各改良当板部32Aは、これらの衝突方向に対して効率よく支持できるように、面接触した状態で各改良取付部31Aに支持されているので、板厚が薄くても効果的に変形を防止できる。
【0071】
更に、この改良トラックガイド30Aでは、補強プレート41を設けても、改良トラックガイド30Aをクローラフレーム22に容易に脱着できるように、補強プレート41に切欠部41aが形成されている。
【0072】
図7に示すように、切欠部41aは貫通孔33と上下方向に重なる部位に形成されていて、改良トラックガイド30Aをクローラフレーム22に取り付ける固定ボルトB1の締結に必要なスペースが確保されている。すなわち、貫通孔33に挿通してクローラフレーム22の固定孔22aに固定ボルトB1を締結するには、固定ボルトB1の頭部にその下方から所定の工具を装着し、その工具を強い力で回転させる必要がある。
【0073】
例えば、棒状のボックスレンチを固定ボルトB1に同軸に装着し、そのボックスレンチに直交するようにクロスレンチを取り付けて、クロスレンチを回転させることで固定ボルトB1を締結する。そのためには、貫通孔33の下方に、これら工具を装着して操作が可能になる、ある程度開放されたスペースが必要である。
【0074】
それに対し、この改良トラックガイド30Aでは、補強プレート41に切欠部41aが形成されていて、貫通孔33の下方が開放されているので、補強プレート41が設けられていても、支障なく固定ボルトB1を締結できる。従って、改良トラックガイド30Aは、クローラフレーム22に容易に脱着できる。
【0075】
更に、改良取付部31Aの端部には、外側リブ45や内側リブ46が設けられていて、構造的に剛性が強化されているので、貫通孔33も、より端部側に近づけることができる。従って、トラックリンク25bと当板部32との間の隙間Gをよりいっそう大きくできる。そして、これら外側リブ45および内側リブ46の間に固定ボルトB1が位置するので、岩石等が固定ボルトB1に衝突することも防止できる。
【0076】
このように、この改良トラックガイド30Aを採用した油圧ショベル1によれば、トラックリンク25bと当板部32との間の隙間Gが大きくなり、これらが接触する頻度や程度が軽減されるので、トラックガイド30およびトラックリンク25bの双方の摩耗を抑制できる。従って、耐久性に優れる。改良トラックガイド30Aが軽量化されていて、これらの交換作業の負担も軽減できるので、作業性にも優れる。
【0077】
<改良後のトラックガイド30Aの変形例>
図8に、改良トラックガイド30Aの変形例を示す(第2改良トラックガイド30Bともいう)。この第2改良トラックガイド30Bは、改良当板部32Aの各々が、改良取付部31Aの各々に着脱可能な状態で架設されている点で、特に、上述した改良トラックガイド30Aと異なっている。
【0078】
すなわち、第2改良トラックガイド30Bでは、各改良当板部32Aの各リブプレート42の板面に、締結孔50が形成されている。そして、各改良取付部31Aの各架設受部35の板面にも、挿通孔51が形成されている。
【0079】
そして、改良トラックガイド30Aと同様に、一対の改良当板部32A,32Aを一対の改良取付部31A,31Aに組み付けることにより、各リブプレート42と各架設受部35とが接して、各挿通孔51と各締結孔50とが重なり合うように構成されている。重なり合ったこれら挿通孔51および締結孔50に連結ボルトB2を締結することで、各改良当板部32Aは各改良取付部31Aに着脱可能な状態で固定される。
【0080】
この第2改良トラックガイド30Bの場合、各改良取付部31Aは、個別にクローラフレーム22に締結できるので、その締結時には各貫通孔33の下方を開放状態にできる。従って、補強プレート41は、改良トラックガイド30Aのように、切欠部41aを形成する必要性はない。そのため、補強プレート41は、その全長にわたって幅が広く形成されていて、締結された固定ボルトB1の下方が、補強プレート41によって覆われるようになっている。
【0081】
その結果、補強プレート41は、よりいっそう強化され、改良当板部32Aの剛性を更に高めることができる。岩石等が固定ボルトB1の下方から衝突することも防止できる。
【0082】
改良取付部31Aおよび改良当板部32Aの各々を、個別に取り付けることができるので、取付作業時に扱う部材の重量を分散することが可能になる。また、摩耗の程度に応じて、改良当板部32Aを個別に交換できる。その結果、更に交換作業の負担が軽減され、作業性に優れる。
【0083】
改良当板部32Aだけの交換が可能になるので、軟鋼材など、改良当板部32Aに、改良取付部31Aよりも軟らかい素材を用いることができる。そうすれば、改良当板部32Aが摩耗し易くなるので、トラックリンク25bの摩耗をより効果的に抑制できる。
【0084】
改良取付部31Aを個別にクローラフレーム22に取り付けることができるので、改良取付部31Aの取付ピッチが異なる場合にも対応できる。従って、第2改良トラックガイド30Bは、異なる機種間で共用できるので、汎用性にも優れる。例えば、改良当板部32Aの全長を長くしたり幅を広くしたりするなど、仕様に応じて改良当板部32Aの形状も変更できる。従って、よりいっそう汎用性に優れる。
【符号の説明】
【0085】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体(機械本体)
21 クローラ装置
22 クローラフレーム
23 遊動輪
24 駆動輪
25 クローラ
27 下側ガイドローラ
30A 改良トラックガイド(トラックガイド)
30B 第2改良トラックガイド(トラックガイド)
31A 改良取付部
32A 改良当板部
33 貫通孔
40 規制プレート
41 補強プレート
41a 切欠部
B1 固定ボルト
B2 連結ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8