特開2020-203885(P2020-203885A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-203885スイカ由来の新規化合物とそれを用いた組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-203885(P2020-203885A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】スイカ由来の新規化合物とそれを用いた組成物
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/203 20060101AFI20201127BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20201127BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20201127BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20201127BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20201127BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20201127BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20201127BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20201127BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20201127BHJP
【FI】
   C07H15/203CSP
   A61K31/7034ZNA
   A61P17/18
   A61P39/06
   A61P17/16
   A61K8/60
   A61Q19/08
   A23L33/105
   C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-104153(P2020-104153)
(22)【出願日】2020年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2019-111654(P2019-111654)
(32)【優先日】2019年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593192830
【氏名又は名称】株式会社萩原農場生産研究所
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 利治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智広
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 守
(72)【発明者】
【氏名】二ノ宮 真之
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018MD52
4B018MD53
4B018ME06
4B018MF01
4C057AA06
4C057BB02
4C057CC01
4C057DD01
4C057JJ23
4C083AD391
4C083AD392
4C083BB47
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スイカ幼果に含まれる抗酸化作用を有する新規化合物を提供する。
【解決手段】スイカ幼果に含まれる(1)式で表される2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック4’−β−D−グルコピラノシルオキシ−3’−ヒドロキシベンジルエステル、および、2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック4’−β−D−グルコピラノシルオキシベンジルエステルは、抗酸化作用を有し、さらに抗皮膚老化作用を有する。これらの化合物は元々食性のある植物からの抽出物であるので、ヒトに対する安全性は非常に高い。したがって、これらの化合物を有効成分とする抗酸化用医薬組成物、抗酸化用加工食品組成物、抗皮膚老化用組成物は、安全性の高い組成物として利用価値が高い。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式若しくは(2)式で表される化合物。
【化101】
【化102】
【請求項2】
(1)式若しくは(2)式で表される化合物の少なくとも何れかを含む抗皮膚老化用組成物。
【化103】
【化104】
【請求項3】
(1)式若しくは(2)式で表される化合物の少なくとも何れかを含む医薬組成物。
【化105】
【化106】
【請求項4】
(1)式若しくは(2)式で表される化合物の少なくとも何れかを含む加工食品組成物。
【化107】
【化108】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイカ由来の抗酸化作用を有する新規化合物とそれを用いた医薬組成物、加工食品組成物および抗皮膚老化用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体内において、活性酸素は、エネルギー産生や侵入異物攻撃、細胞情報伝達に必要な物質である。しかし、スーパーオキサイド自由ラジカル等は活性酸素種と呼ばれ、生体内では毒性物質ともなり得る。自由ラジカルは不対電子であり、強酸化剤である。そして、脂質、タンパク質、核酸、炭水化物といった生体物質の酸化を誘発し、様々な影響を生体に与えることが知られている。
【0003】
例えば、アトピー性疾患、癌、高血圧、心筋梗塞、動脈硬化、リューマチ、白内障、パーキンソン病などさまざまな慢性疾患の進行に多くの影響を与え、免疫系機能を弱化させる要因として作用されるとも言われている。
【0004】
一方、生体内には、アスコルビン酸やグルタチオンなどの抗酸化物質や、スーパーオキシドディスムターゼやカタラーゼなど活性酸素によって生じた障害を修復する抗酸化酵素があり、活性酸素に対する生体内防御システムとして機能している。
【0005】
しかし、活性酸素は、喫煙、ストレスによって、過剰に産生されることが知られており、生体内防御システムを補助する抗酸化剤の要請が高まっている。特にすでに食用として実績のある食物(天然物)に含まれる物質は、安全性がある程度確認されているので、好適である。
【0006】
特許文献1には、カシス葉由来の新規物質で、α−グルコシダーゼ等の糖尿病モジュレーターの抑制作用、ラジカル生成阻害作用やLDLの抗酸化作用、チロシナーゼ活性阻害作用等の薬理活性を有する新規化合物が開示されている。
【0007】
また特許文献2はオリーブ葉抽出物を酵母処理することにより得られる抗酸化物質が開示されている。また、特許文献3には、乳癌、肝癌、前立腺癌腫瘍細胞の生長抑制に応用可能なベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物が開示されている。
【0008】
また、抗酸化性を有する物質は抗皮膚老化特性を有する場合がある。抗皮膚老化特性とは、皮膚に生じるシワの予防改善が可能な特性をいう。シワの中でも、光皮膚老化と呼ばれる現象は紫外線が皮膚に照射されることで、シワができるというものである。
【0009】
より詳しくは、光皮膚老化とは,UV照射によって線維芽細胞の細胞膜上に存在する1回膜貫通セリン/スレオニン内蔵型受容体transforming growth factor−β receptor type II(TβRII)の発現が下方制御され、コラーゲンの前駆体であるI型プロコラーゲンの合成を促すtransforming growth factor−β(TGF−β)シグナル経路が減弱し、コラーゲンの発現が低下したり、後述するコラーゲン非架橋結合などが原因で、肌にシワやたるみが生じる現象である。
【0010】
コラーゲン非架橋結合形成のメカニズムは以下のように考えられている。皮膚の脂腺や口腔,胃腸などに生息するPropionibacterium acnes(P. acnes)が、グルタミン酸をアミノレブリン酸に変換するC5経路を介し、最終的に光増感物質のプロトポルフィリンIVを産生する。このプロトポルフィリンIVが、皮膚に照射されるUVを吸収することで一重項酸素()を発生させ、コラーゲンの構成アミノ酸の1つであるヒスチジンが酸化する。
【0011】
その結果、コラーゲン非架橋結合が形成され、肌の弾力が低下し、シワなどの皮膚老化を引き起こすこととなる。また,生体内でポルフィリンなどの光増感物質は一重項酸素()だけでなく、他の活性酸素種(reactive oxygen species、以下ROS)であるスーパーオキシド()、ヒドロキシルラジカル(OH)も発生させる。
【0012】
これらのROSは、酸化ストレス応答性mitogen−activated protein 3 kinase(MAP3K)のapotosis signal−regulating kinase 1(ASK−1)を活性化し、炎症性サイトカインtumor necrosis factor−α(TNF−α)、interleukin−6(IL−6)などを過剰産生し、皮膚に炎症反応を引き起こす。
【0013】
この炎症反応により、表皮の細胞膜上に存在する6回膜貫通イオンチャネル型受容体transient receptor potential vanilloid type 1 (TRPV1)の発現が上方制御され、細胞内に流入するCa2+量が増加し、コラーゲンを分解するマトリックスメタロプロテアーゼ−1(matrix metallo proteinase−1、以下MMP−1)の発現が誘導される。
【0014】
その結果、コラーゲンの分解が生じ、肌にシワやたるみなどの皮膚老化の症状が現れる。
【0015】
さらに、MMP−1のコラーゲンの分解により生成されるコラーゲン断片は、インテグリンファミリーのvitronectin receptor(αβ)を活性化し、低分子guanosine triphosphate(GTP)結合タンパク質の1つであるRas homolog kinase(ROCK)によるコフィリンのリン酸化を阻害することで、その下流のリン酸化したmitogen−activated protein kinase(MAPK)ファミリーのextracellular signal−regulated kinase1/2(ERK1/2)や転写因子ELK−1へのシグナル経路を減弱し、ヒアルロン酸合成酵素hyaluronan synthase 2(HAS2)の発現を減少させる。
【0016】
その結果として、肌の水分保持能力を持つヒアルロン酸の合成が阻害され、肌にシワやたるみなどの皮膚老化が生じる。なお、MMPを阻害することで抗シワ効果を奏する発明としては、特許文献4が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2016−020338号公報
【特許文献2】特開2011−021025号公報
【特許文献3】特開2008−169194号公報
【特許文献4】特開2020−002053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のように、抗酸化性を有する物質であって、安全性が確保されている物質は、生体保護という観点からさまざまな疾病や、健康維持に効果が期待できる。発明者らは、スイカについて長年の経験および生産実験を有しており、スイカ由来の抗酸化物質を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記課題に鑑みてスイカ幼果に含まれる物質を抽出することで得られた従来知られていなかった新規化合物に抗酸化作用を有することを確認することで完成した。
【0020】
より具体的に、本発明に係る抗酸化化合物(新規化合物)は(1)式若しくは(2)式で表される。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【発明の効果】
【0023】
(1)式および(2)式の化合物は、スイカの幼果から抽出された新規物質であり、安全性が高く、抗酸化作用を有する。したがって、生体におけるラジカルを除去する医薬組成物および加工食品組成物などへの応用が期待できる。より具体的には、老化防止全般に効果が期待でき、動脈硬化、癌などの生活習慣病の予防や改善、白髪やしみ、シワといった皮膚の老化の予防若しくは改善などに対して効果が期待される。
【0024】
特に抗酸化用医薬組成物、抗酸化用加工食品組成物、抗皮膚老化用組成物は具体的な効果が確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】スイカの幼果から抽出物を得る溶媒分配フロー図である。
図2】スイカの幼果より抽出単離した2つの新規化合物のラジカル消去率を求めた結果を示すグラフとマイクロプレートの状態を撮影した写真である。
図3】MMP−1の発現阻害を調べた(a)ウエスタンブロッティングの結果と(b)リアルタイムPCRによる遺伝子発現率を示すグラフである。
図4】シグナル分子の活性化を調べた(a)ウエスタンブロッティングの結果と(b)デンシトメトリー解析した結果を示すグラフである。
図5】AP−1転写活性を調べたグラフである。
図6】細胞内活性酸素種(ROS)の量への影響を調べたグラフである。
図7】カルボニル化タンパク質産生への影響を調べた(a)ウエスタンブロッティングの結果と(b)デンシトメトリー解析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明に係る化合物とそれを有効成分として有する医薬組成物、加工食品組成物および抗皮膚老化用組成物について実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0027】
本発明に係る化合物は、(1)式若しくは(2)式で表されることを特徴とする。
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
(1)式の化合物は、2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック 4’−β−D−グルコピラノシルオキシ−3’−ヒドロキシベンジル エステル(2−Caffeoyl−3−hydroxy−3−methylbutyric 4’−β−D−glucopyranosyloxy−3’−hydroxybenzyl ester)で、略して4G3HBE、別名「Citrulluside H」とする。以後4G3HBEと呼ぶ。
【0031】
また、(2)式の化合物は、2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック 4’−β−D−グルコピラノシルオキシベンジル エステル(2−Caffeoyl−3−hydroxy−3−methylbutyric 4’−β−D−glucopyranosyloxybenzyl ester)で、略して4GBE、別名「Citrulluside T」とする。以後4GBEと呼ぶ。
【0032】
4G3HBEと4GBEはスイカの幼果から得られる。スイカ(学名:Citrullus lanatus)は、ウリ科のつる性一年草の果実をいう。幼果とは、結実以後熟成に至るまで10〜20日の果実をいう。種類は、特に限定されず、赤肉系大玉品種、種無し赤肉系品種、黒皮系品種、長形品種、黄肉系品種、オレンジ色品種といった品種が好適に利用できる。
【0033】
図1にスイカ幼果抽出物の溶媒分配フロー図を示す。抽出方法としては、スイカの幼果を洗浄し、破砕した後、破砕物をエタノールに浸漬し、エタノール抽出物を得る。エタノール抽出物をヘキサン(Hexane Fr.)、酢酸エチル(EtOAc Fr.)、ブタノール(n−BuOH Fr.)および蒸留水溶解物(Water Fr.)に溶媒分配し、分画物を調製した。その後、酢酸エチル抽出物をカラム分画で単離することで、上記の2つの新規化合物を得た。
【0034】
本発明に係る医薬組成物は、4G3HBEと4GBEが抗酸化作用を有することを見出して想到された。したがって、本発明に係る医薬組成物は、抗酸化用医薬組成物であり、4G3HBEと4GBEの少なくとも一方を含む、これらの化合物は、水、メタノール、エタノール、アセトン等の溶媒中で、薬学上許容される酸と混合することで、塩に変換してもよい。薬学上許容される酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸塩、リン酸、硝酸等の無機酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。
【0035】
また、これらの化合物は、経口的または非経口的(例えば、静脈内、皮下、もしくは筋肉内注射、局所的、経直腸的、経皮的、または経鼻的)に投与することができる。
【0036】
経口投与のための医薬組成物としては、薬学的に許容され通常用いられる、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、界面活性剤、流動性促進剤などを添加して調製できる。賦形剤として、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどを用いることができる。
【0037】
また、結合剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを用いることができる。また、滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などが好適に利用できる。
【0038】
また、崩壊剤としては、澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウムなどが利用できる。また、界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80などが利用できる。
【0039】
また、流動性促進剤としては、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが利用できる。そして、その他の添加剤としては、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硝酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどを利用することもできる。
【0040】
また、投与形態に応じた剤形とすることができ、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤などの経口的投与剤や、注射剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水性坐剤といった非経口的投与剤などの各種製剤に調製することができる。また、本発明の医薬組成物は、本発明の上記化合物に加えて、他の薬理活性成分を含んでいてもよい。
【0041】
本発明に係る抗酸化用医薬組成物は、抗酸化活性によって改善されるとされる公知の症状の治療薬として利用できる。例えば、心血管疾病、アトピー性疾患、癌、リューマチ、白内障、パーキンソン病等が挙げられる。
【0042】
本発明に係る化合物は、加工食品組成物として提供することも可能である。本発明に係る加工食品組成物は、抗酸化用加工食品組成物と言ってもよい。加工食品組成物としては、飴、ガム、ゼリー、ビスケット、クッキー、煎餅、パン、麺、魚肉・畜肉練製品、茶、清涼飲料、コーヒー飲料、乳飲料、乳清飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン等といった嗜好食品や健康食品を含む一般加工食品だけでなく、厚生労働省の保健機能食品制度に規定された特定保健用食品や栄養機能食品などの保健機能食品を含み、さらに、栄養補助食品(サプリメント)、飼料、食品添加物等も加工食品組成物に含まれる。
【0043】
また、本発明に係る化合物は、抗皮膚老化用組成物として提供することもできる。抗皮膚老化用組成物として、本発明に係る化合物のうちの少なくとも何れかをそのまま用いてもよいし、通常有効成分以外に外用薬に用いられる成分を加えてもよい。なお、上述した医薬組成物の場合と重複することを妨げない。
【0044】
他の成分として、好適に利用できるものとしては、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などが挙げられる。高分子としては、例えばカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどが例示できるが、これらに限定されるものでもない。
【0045】
蛋白質及びその加水分解物としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン、それらの加水分解物、加水分解物の塩、加水分解物のエステル、あるいは酵素処理されたものが挙げられるが、特にコラーゲンが好ましい。紫外線によってコラーゲンの生成が阻害されているからである。
【0046】
ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ムコイチン硫酸、ヘパリンとその誘導体、及びそれらの塩類などが挙げられるが、特にコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びこれらのナトリウム塩が好ましい。特にヒアルロン酸は合成が阻害されるため、抗皮膚老化用組成物と共に使用するのが望ましい。
【0047】
また、抗皮膚老化用組成物としての効果を損なわない範囲で、保湿剤、水溶性高分子、油成分、着色剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、香料、紫外線吸収・散乱剤などを添加してもよい。
【0048】
なお、抗皮膚老化用組成物は、抗皮膚老化用医薬組成物、抗皮膚老化用加工食品組成物として提供されることを妨げない。
【実施例】
【0049】
<化合物の抽出方法>
スイカCS種の幼果(結実してから15日後のもの)2kg(湿重量)を粉砕し、この粉砕物にエタノールを5L加え、攪拌しながら常温にてエタノール溶出物を調製した。
【0050】
エタノール溶出物を、ヘキサン、酢酸エチル、ブタノールを用いて順に溶媒分配法により各溶出画分および蒸留水溶解物を調製した。酢酸エチル層をカラムで精製することで複数の分画を得た。そのうちの2つの分画から2つの新規化合物を得た。
【0051】
<物質の特定>
抽出された2つの新規物質は、NMRによって構造を決定した。
【0052】
2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック 4’−β−D−グルコピラノシルオキシ−3’−ヒドロキシベンジル エステル(2−Caffeoyl−3−hydroxy−3−methylbutyric 4’−β−D−glucopyranosyloxy−3’−hydroxybenzyl ester):
H NMR (400MHz,Acetone−d):δ7.63(1H,d,J=15.6Hz,H−γ’’),7.16(1H,d,J=1.8Hz,H−2’’),7.12(1H,d,J=8.2Hz,H−5’),7.03(1H,dd,J=8.2 and 1.8Hz,H−6’’),6.91(1H,d,J=2.3Hz,H−2’),6.85(1H,d,J=7.8Hz,H−5’’),6.80(1H,d,J=8.2 and 2.3Hz,H−6’),6.35(1H,d,J=16.0Hz,H−β’’),5.07(2H,s,H−α’),4.85(1H,s,H−2),4.74(1H,d,J=7.3Hz,H−1’’’),3.92−3.84(1H,m,H−6α’’’),3.73−3.68(1H,m,H−6β’’’),3.52−3.43(4H,m,H−2’’’,H−3’’’,H−4’’’, and H−5’’’),1.31(3H,s,H−4),1.30(3H,s,H−5);13C NMR (100MHz,Acetone−d):δ168.5,166.3,148.3,147.9,146.1,145.6,145.3,131.9,126.6,122.0,119.6,118.4,116.0,115.6,114.5,113.8,103.4,79.3,77.2,76.6,73.9,70.5,70.4,66.1,61.7,25.8(2C):HRESITOFMS:m/z 603.1678 [M+Na] (calcd. for C273214Na,603.1690).
以上(1)式の4G3HBEであった。
【0053】
2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック 4’−β−D−グルコピラノシルオキシベンジル エステル(2−Caffeoyl−3−hydroxy−3−methylbutyric 4’−β−D−glucopyranosyloxybenzyl ester):
H NMR (400MHz,Acetone−d):δ7.63(1H,d,J=16.0Hz,H−γ’’),7.31(2H,d,J=8.7Hz,H−2’ and H−6’),7.16(1H,d,J=1.8Hz,H−2’’),7.05−7.00(3H,m,H−3’,H−5’, and H−6’’),6.85(1H,d,J=8.3Hz,H−5’’),6.35(1H,d,J=16.0Hz,H−β’’),5.11(2H,s,H−α’),4.94(1H,d,J=7.8Hz,H−1’’’),4.84(1H,s,H−2),3.89−3.84(1H,m,H−6α’’’),3.72−3.65(1H,m,H−6β’’’),3.53−3.42(4H,m,H−2’’’,H−3’’’,H−4’’’, and H−5’’’),1.30(3H,s,H−4),1.28(3H,s,H−5);13C NMR (100MHz,Acetone−d):δ168.5,166.3,157.9,148.3,146.2,145.6,129.8(2C),129.6,126.6,122.0,116.4(2C),115.6,114.5,113.8,100.9,79.3,77.1,76.9,73.8,70.5,70.4,66.0,61.8,25.7(2C);HRESITOFMS:m/z 587.1716 [M+Na] (calcd. for C273213Na,587.1741).
以上(2)式の4GBEであった。
【0054】
<抗酸化作用>
単離した2つの新規化合物について抗酸化能を評価するために、試薬として50%エタノールで溶解した200μMのDPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl)を調製した。試薬の調製手順は、はじめにエタノールでDPPHを溶解後、同量のMilliQ水を加えた。その後、0.45μmのシリンジフィルターで濾過することで未溶解物を除去した。
【0055】
試料溶液150μLと200μMのDPPHエタノール溶液150μLを96穴プレート中で十分混合し、30分間静置後、520nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(Thermo Fisher Scientific, Multiscan −LUX)で測定した。ラジカル消去率は(F1)式により求めた。
【0056】
【数1】
【0057】
なお、ここで、RD(%)は、ラジカル消去率(%)を表す。また、ODblank520nmは、試薬(DPPH)に各試料溶液を添加していない状態での520nmの吸収であり、ODsample520nmは、試薬(DPPH)に各試料溶液を添加混合し、30分間静置後の520nmの吸収である。
【0058】
結果を図2に示す。図2は、結果を示すグラフとマイクロプレートの状態を撮影した写真である。また図2のグラフは横軸が試料溶液種およびその濃度(μM)であり、縦軸はラジカル消去率(Radical scavenging activity(%)と記した。)を示す。
【0059】
試料溶液種は、4G3HBEが2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック 4’−β−D−グルコピラノシルオキシ−3’−ヒドロキシベンジル エステルであり、4GBEが2−カフェオイル−3−ヒドロキシ−3−メチルブチリック 4’−β−D−グルコピラノシルオキシベンジル エステルである。
【0060】
L−AsAはL−アスコルビン酸である。L−アスコルビン酸(ビタミンC)は、抗酸化作用を有する物質として知られている。
【0061】
4G3HBEおよび4GBEは、抗酸化能の高いビタミンCの半分程度ではあるが,抗酸化活性を有していた。
【0062】
<抗皮膚老化作用>
4G3HBEおよび4GBEの抗皮膚老化作用について、以下の5つの項目で検証を行った。
(1)MMP−1の発現阻害
(2)MMPs産生に寄与するp38MAPおよびSAPK/JNKやNK−κBのシグナル分子の活性化(リン酸化)
(3)そのシグナル経路の下流にあたるAP−1転写活性
(4)細胞内活性酸素種(ROS)の量への影響
(5)カルボニル化タンパク質産生への影響
【0063】
[MMP−1の発現阻害]
皮膚へのUV照射によって皮膚に炎症反応が生じ、その結果コラーゲンを分解するMMP−1(マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現が上方制御され、皮膚老化の現象が発生する。そこで、本発明に係る4G3HBEおよび4GBEのMMP−1の発現阻害能について調べた。
【0064】
ヒト新生児正常皮膚線維芽細胞(NHDF: Normal Human Dermal Fibroblast−Neo、以下単に「NHDF細胞」と呼ぶ。)を1×10cells/mLに調整し、12ウェルマルチプレートに1mLずつ播種し、コンフルエントになるまで培養した。その後、供試サンプル(終濃度が50および100μM(各溶媒分画物)(各単離物質))を添加し24時間前培養した。その後、PBSにて二度洗浄し、UV−Bを25mJ/cmの照度で照射した。
【0065】
紫外線照射後24時間後の細胞をSDS−PAGEした後に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:polyvinylidene difluoride)に転写し、ウエスタンブロッティングを行い、MMP−1のタンパク質発現を検出した。
【0066】
また、NHDF細胞を上記同様に培養したものに、UV−Bを25mJ/cmの照度で照射した細胞から全RNAを抽出し(全RNA液)、High Capacity RNA−to−cDNA Kit(Applied Biosystems, Thermo Ficher Scientific)を用いて表1の組成の逆転写酵素液でcDNAへ逆転写した。表1において、「total RNA solution」は全RNA液である。
【0067】
【表1】
【0068】
そして、リアルタイムPCRで遺伝子(MMP−1とMMP−3)の発現量を調べた。用いたプライマーは表2の通りである。また、リアルタイプPCR反応液の組成は表3の通りである。コントロールにはハウスキーピング遺伝子(GAPDH)を用いた。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
図3に結果を示す。図3(a)はウエスタンブロッティングの写真であり、図3(b)は、遺伝子発現率のグラフを示す。
【0072】
図3(a)を参照して、写真上部の2段の欄は、上の欄がUV照射の有無(有りは「+」、無は「−」)を表し、下の欄がサンプル(無は「−」であり、4G3HBEおよび4GBE)を表す。また、写真左方の縦方向には、検出対象(MMP−1およびβ−Actin)を表す。β−Actinは、コントロールとして測定している。
【0073】
4G3HBEおよび4GBEは、MMP−1についての検出影が薄く、明らかにMMP−1の発現を抑制していた。
【0074】
図3(b)は、横軸がUVの照射の有無およびサンプルを表し、縦軸はハウスキーピング遺伝子(GAPDH)に対する遺伝子(MMP−1とMMP−3の合計)の発現率(Gene/GAPDH)を求めたものである。
【0075】
UV照射によって、MMP−1は、ハウスキーピング遺伝子に対して4.8倍程発現するのに対して、4G3HBEおよび4GBEは、およそ1.8〜2.2倍程度に抑制していた。この事からも、4G3HBEおよび4GBEは、MMP−1の発現を抑制することが確認できた。
【0076】
[シグナル分子の活性化]
UV−B照射後に産生誘導されるMMPsにはp38MAPキナーゼおよびSAPK/JNKや炎症反応に関わるNF−κB活性化が深く関与していることからウェスタンブロット法にてこれらシグナル分子の活性化(リン酸化)について検討した。
【0077】
より具体的には、上記同様に24時間前培養し、PBSにて二度洗浄し、UV−Bを25mJ/cmの照度で照射したNHDF細胞を、ウエスタンブロッティングし、p38MAP、SAPK/JNKおよびNF−κBのリン酸化を調べた。
【0078】
結果を図4に示す。図4(a)はウエスタンブロッティングのブロット像であり、図4(b)は、リン酸化の前後の変化をデンシトメトリー解析した結果を示す。データは、平均±標準誤差(n=3)で示した。多群間の比較は,Tukey−Kramer法により検定を行った(p<0.05)。
【0079】
図4(a)を参照して、写真上部の3段は、上からUBの照射の有無(有りは「+」、無は「−」)、4G3HBEの有無(有りは「+」、無は「−」)、4GBEの有無(有りは「+」、無は「−」)を表す。
【0080】
また、結果の写真は「p38」はp38MAP、「JNK:」はSAPK/JNK、「NF−κB」はNF−κBを表す。また、「p−p38」、「p−JNK」、「p−NF−κB」は、それぞれのリン酸化物である。β−Actinはコントロールとして同時に測定した。
【0081】
図4(b)を参照する。グラフの横軸はサンプルの状態を表し、UBの照射の有無(有りは「+」、無は「−」)、4G3HBEの有無(有りは「+」、無は「−」)、4GBEの有無(有りは「+」、無は「−」)を表す。また、縦軸はリン酸化の変化を表すものであり、リン酸化活性の相対比率を表す。図4(b)を参照すると、UV−Bの照射によってp38MAP、SAPK/JNK、リン酸化NF−κBは高くなったが、4G3HBE若しくは4GBEの存在によってシグナル分子の発現は抑制されていた。
【0082】
以上のことから、4G3HBEおよび4GBEによる処理細胞でp38MAPキナーゼおよびSAPK/JNK,NF−κBの活性化が有意に下方制御された。
【0083】
[AP−1転写活性]
UV−B照射後にp38MAPキナーゼおよびSAPK/JNKや炎症反応に関わるNF−κB活性化が4G3HBEおよび4GBE処理により減弱されることが示唆されたことから、つぎに下流のActivator Protein −1(AP−1)の転写活性についてルシフェラーゼレポーターアッセイにより検討した。
【0084】
NHDF細胞にpGL4.44[Luc2P/AP−1−RE/Hygro]と共にpRL−SV40(ウミシイタケルシフェラーゼ)を導入したのち、4G3HBEおよび4GBEをそれぞれ終濃度が50μMになるように添加し、24時間培養した。培養の後UV−Bを25mJ/cmの照度で照射し、その後12時間培養した。
【0085】
この細胞を溶解し、pRL−SV40に組み込まれているウミシイタケルシフェラーゼの発光強度をルミノメーターで測定した。結果を図5に示す。
【0086】
図5を参照して、横軸はサンプルの状態であり縦軸は、コントロールに対するAP−1転写比である。サンプルの状態は、UBの照射の有無(有りは「+」、無は「−」)、4G3HBEの有無(有りは「+」、無は「−」)、4GBEの有無(有りは「+」、無は「−」)を表す。コントロールは、UBの照射無、4G3HBE無、4GBE無の場合であり、この状態をAP−1転写比率1とした。
【0087】
UV−Bの照射によってAP−1の転写比率は7倍程度に高くなったが、4G3HBE若しくは4GBEの存在によって3〜4倍程度に抑制されていた。すなわち、4G3HBEおよび4GBEによる処理細胞でAP−1の転写活性が有意に低下した。
【0088】
[細胞内活性酸素種(ROS)の量への影響]
<抗酸化作用>の検討で4G3HBEおよび4GBEはビタミンCの能力の半分程度ではあるが、抗酸化活性を確認した。一方、[MMP−1の発現阻害]と[シグナル分子の活性化]より、UV−B照射により発生したROSを4G3HBEおよび4GBE自身の抗酸化能により消去することが、酸化ストレスシグナルの減弱を誘導しているのではないかと考えられた。そこで、細胞内の活性酸素種(ROS)の量をROSのインジケーターであるCM−HDCFDAを用いて測定した。
【0089】
NHDF細胞(1.0×10 cells/mL)をコンフルエントまで培養した。その後、4G3HBEおよび4GBEを終濃度が50μMとなるように添加し、24時間前培養した。紫外線照射前1時間に細胞透過性の活性酸素インジケーターであるCM−HDCFDAを終濃度が10μMとなるように添加した。その後、UV−Bを25mJ/cmの照度で照射し,インキュベータ内でさらに1時間培養した。その後、マルチモードマイクロプレートリーダーVarioscan LUXを用いて励起波長495nm、蛍光波長530nmにて蛍光測定を行った。
【0090】
結果を図6に示す。図6を参照して、横軸はサンプルの状態であり、UV−Bの照射の有無(有りは「+」、無は「−」)、4G3HBEの有無(有りは「+」、無は「−」)、4GBEの有無(有りは「+」、無は「−」)を表す。縦軸は細胞内ROSレベル(%)を表す。
【0091】
UV−Bが照射されることで、細胞内ROSの量は、1%から1.7%程度に増加した。しかし、4G3HBE若しくは4GBEの存在によって、1.4%程度に抑制されていた。
【0092】
以上のことから、4G3HBE若しくは4GBEは、有意にUV−B照射後の細胞内ROSレベルを低下させた。
【0093】
[カルボニル化タンパク質産生への影響]
細胞や組織で発生する活性酸素種(ROS)は近くに存在するタンパク質を非特異的に酸化する。タンパク質の酸化修飾体として、よく知られているのがカルボニル化タンパク質である。より詳しくは、カルボニル化タンパク質とは、タンパク質中のプロリン、アルギニン、リシン、スレオニンなどのアミノ酸がROSにより酸化修飾を受け、カルボニル誘導体となったタンパク質の総称をいう。カルボニル誘導体は化学的に安定である。
【0094】
肌における黄変、特に加齢による黄変(黄ぐすみ)は、肌悩みの1つに挙げられ、昨今の研究で真皮のタンパク質が過酸化物などによってカルボニル化することが黄変の大きな要因であることが分かってきた。そこで、今回スイカ幼果から単離した4G3HBEおよび4GBEが示す抗酸化能はこの「黄ぐすみ」に対しても有効ではないかと検討した。この黄変も皮膚老化の現象の1つである。
【0095】
より具体的には、NHDF細胞(1.0×10 cells/mL)をコンフルエントまで培養し、4G3HBEおよび4GBEを終濃度が50μMおよび100μMとなるように添加し、24時間前培養した。その後、UV−Bを25mJ/cmの照度で照射し,Millipore OxyBlotTM Protein Oxidation Detection Kitに準じて評価した。
【0096】
結果を図7に示す。図7(a)はサンプルの状態におけるウエスタンブロッティングのブロット像である。縦軸はkDaを表す。また、図7(b)はデンシトメトリー解析結果である。図7(b)を参照して、横軸はサンプルの状態を表し、縦軸はカルボニル化タンパク質のコントロールに対する比率を示す。
【0097】
コントロールをUV−Bの照射無、4G3HBE無、4GBE無とすると、コントロールのカルボニル化タンパク質の生成比が1%であるのに対して、UV−Bが照射されることで、カルボニル化タンパク質はおよそ1.5%に上昇した。一方、4G3HBE若しくは4GBEがあることによって、カルボニル化タンパク質はおよそ1.1%から1.2%程度に抑制されていた。結果、4G3HBEおよび4GBEにより処理した細胞のカルボニル化タンパク量は有意に低下した。
【0098】
以上のように、新規物質4G3HBEおよび4GBEの少なくとも何れかを含む医薬組成物は抗酸化用医薬組成物と言ってよく、新規物質4G3HBEおよび4GBEの少なくとも何れかを含む加工食品組成物は抗酸化用加工食品組成物と言ってもよい。また、新規物質4G3HBEおよび4GBEの少なくとも何れかを含めば、抗皮膚老化用組成物を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係るスイカ由来の新規化合物4G3HBEおよび4GBEは、抗酸化作用を有する化合物であり、活性酸素を除去することで、さまざまな局面で生体維持に効果が見込める。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]