【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したNb炭化物は、一定の温度域まで鋼を加熱し、冷却することで析出する。例えば、鋳造の際、鋼は融点以上の温度から冷却される。このため、鋳造により製造された鋼片には、Nb炭化物が含まれている。
【0006】
そして、Nb炭化物を形成させ、強度向上効果を得るためには、鋳造後の各工程、具体的には、熱延、冷延、焼鈍、その他加熱冷却工程等において、Nb炭化物を析出させる必要がある。このため、鋳造時に形成したNb炭化物は、予め、溶体化処理といった加熱処理により、母相に固溶させておく必要がある。
【0007】
溶体化処理は、鋼の材質のばらつきを低減するためにも重要である。特に、素材厚の大きい厚鋼板は、鋼片の表面と中心とにおいて、加熱のされやすさが異なることから、Nbを十分に固溶させるための調整が難しくなる。このため、材質のばらつきを低減するため、必要以上に高温長時間、溶体化処理を行うことになる場合が多い。このような溶体化処理は、製造時の燃料使用量を増加させ、製造コストを増加させるため、好ましくない。
【0008】
つまり、Nbを含有する鋼では、鋼片の溶体化処理の条件について、過剰な加熱を防止しつつ、材質のばらつきを低減することが難しいという問題があった。
【0009】
以上を踏まえ、本発明は、鋼片の溶体化処理について、過剰な加熱を防止しつつ、かつ材質のばらつきを低減することができる、鋼片を加熱し圧延する際の鋼片の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、適切な鋼片の溶体化処理の条件について検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0011】
(a)鋼材のばらつきを低減するためには、溶体化処理を行うことで、Nbを十分に固溶させることが有効である。溶体化処理は、主として温度と時間とのパラメータを調整することで、条件を制御する。そこで、本発明者らは、以下に示す条件で予備実験を行った。
【0012】
C含有量が0.06質量%、Nb含有量が0.024質量%であり、厚さが300mmである、ラインパイプ用鋼板に用いられるスラブを用意した。このスラブの1/4tの部位から
図1に示すt11mm角、長さ60mmの試験片を採取し、加熱炉での溶体化処理を模した熱サイクル試験を行った。
【0013】
上記熱サイクル試験では、試験片の中央部1が
図2に示す熱サイクルパターンとなるよう、誘導加熱装置を用い、条件を制御した。熱サイクルパターンにおける条件では、保持温度を980〜1260℃の範囲で、保持時間を10〜90分間の範囲で変化させた。また、比較試験として、熱サイクル試験を行っていないスラブの試験片(以下、「比較試験片」ともいう。)も用意した。
【0014】
上記熱サイクル試験を行った試験片および比較試験片について抽出残渣試験を行い、鋼の母相に固溶したNb固溶量を調べた。抽出残渣試験では、
図1のように、試験片の中心面2を挟む2mm厚の中心部1を切り出して、電解液(10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライドを含むメタノール溶液)を用いて電解後、ろ過して残渣を抽出、ICP質量分析法を用いてNb固溶量を算出した。
【0015】
(b)
図3は、Nb固溶量と溶体化処理温度および保持時間との関係を示すグラフである。
図3から分かるように、Nb固溶量は、溶体化処理温度に大きく依存する一方、保持時間には影響を受けにくい。特に、保持時間を10〜30分間としても、十分なNb量を固溶させることができる。これは、本発明における重要な知見であり、従来、1時間程度、またはそれ以上を要していた溶体化時間を30分間以下にできることが明らかになった。また、スラブの化学組成を変えた場合であっても、上記と同様の傾向が観察された。
【0016】
(c)
図4は、Nb固溶量と溶体化処理温度との関係を示すグラフである。
図4には、実測値(丸印プロット)と併せ、熱力学平衡計算により算出されたNb固溶量の計算値も示す。
図4より、Nb固溶量の実測値は、1150℃以上の温度で、計算値と大きく乖離し飽和することから、溶体化処理温度を1150℃以下とするのが望ましい。一方、1020℃以下の溶体化処理温度の場合において、処理前のスラブのNb固溶量の方が、処理後のNb固溶量より高く、溶体化処理の効果を得られないことがあった。
【0017】
このように、Nbを含む鋼片の溶体化においては、所定時間経過後において、時間の影響は、極めて小さくなる。一方、温度の影響は大きく、適切な温度制御を行わない場合は、溶体化の効果を得られないばかりか、却って逆効果となることが明らかになった。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼片の管理方法を要旨とする。
【0019】
(1)鋼片を加熱し圧延する際の鋼片の管理方法であって、
前記鋼片は、質量%で、Nbを0.005〜0.050%、Cを0.03〜0.70%含有し、
前記鋼片の全厚をtとしたとき、前記鋼片の1/4t部における温度Tが下記(i)式を満足する状態で10〜30分間保持する工程、
を有する、鋼片の管理方法。
T
bh≦T≦1260 ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各記号は以下のように定義される。
T(℃):鋼片の1/4t部における温度
T
bh(℃):溶解度曲線において加熱前の鋼片中のNb固溶量に対応する温度
【0020】
(2)前記(i)式中におけるT
bhを、下記(ii)式を用いて算出する、上記(1)に記載の鋼片の管理方法。
T
bh=B/(A−log[Nb][C]) ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の各記号は以下のように定義される。
T
bh(℃):溶解度曲線において加熱前の鋼片中のNb固溶量に対応する温度
B:定数
A:定数
[Nb]:加熱前の鋼片中のNb固溶量(質量%)
[C]:鋼片中のC含有量(質量%)
【0021】
(3)下記(iii)式をさらに満足する、上記(1)または(2)に記載の鋼片の管理方法。
T
bh≦T≦1150 ・・・(iii)
但し、上記(iii)式中の各記号は以下のように定義される。
T(℃):鋼片の1/4t部における温度
T
bh(℃):溶解度曲線において加熱前の鋼片中のNb固溶量に対応する温度