特開2020-204108(P2020-204108A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204108(P2020-204108A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】ポット精紡機
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/08 20060101AFI20201127BHJP
   D01H 7/78 20060101ALI20201127BHJP
   D01H 9/06 20060101ALI20201127BHJP
   D01H 7/74 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   D01H1/08
   D01H7/78
   D01H9/06
   D01H7/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-112570(P2019-112570)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】槌田 大輔
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA08
4L056BD65
4L056BE15
4L056DA22
4L056DA74
4L056EB13
(57)【要約】
【課題】ダンパー部材を用いてポットを支持する場合に、ポットの傾きを調整してポット回転時の空気摩擦抵抗を低減することができるポット精紡機を提供する。
【解決手段】円筒状のポット10と、ポット10を回転自在に支持するポット軸受12とを備え、ポット軸受12はポット軸受外輪16を有する、ポット精紡機において、固定状態に設けられるフランジ部36と、フランジ部36とポット軸受外輪16との間に配置されるダンパー部材46と、ポット10の円周方向でダンパー部材46の変形量を異なるように調整する調整機構50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のポットと、前記ポットを回転自在に支持するポット軸受とを備え、前記ポット軸受はポット軸受固定輪を有する、ポット精紡機において、
固定状態に設けられる支持部と、
前記支持部と前記ポット軸受固定輪との間に配置されるダンパー部材と、
前記ポットの円周方向で前記ダンパー部材の変形量を異なるように調整する調整機構と
を備えることを特徴とするポット精紡機。
【請求項2】
前記調整機構は、前記ポットの円周方向の異なる位置に配置された2つ以上の螺合部材を含み、前記2つ以上の螺合部材の回転量によって前記ポットの傾きを調整する
請求項1に記載のポット精紡機。
【請求項3】
前記ダンパー部材は、前記螺合部材の外側に配置されている
請求項2に記載のポット精紡機。
【請求項4】
前記調整機構は、前記ダンパー部材の変形量を規定するための規定部材を有する
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポット精紡機。
【請求項5】
前記ダンパー部材の変形方向は、前記ポットの中心軸と平行な方向に設定されている
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポット精紡機。
【請求項6】
前記調整機構は、前記ポット軸受固定輪に固定され、前記ポット軸受固定輪からラジアル方向に延在するホルダ部材を有し、
前記ダンパー部材は、前記ホルダ部材の上面および下面に接触する状態で配置されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポット精紡機。
【請求項7】
前記ダンパー部材はOリングである
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポット精紡機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポット精紡機に関する。
【背景技術】
【0002】
ポット精紡機においては、導糸管によってポット内に導入した糸を、ポットの高速回転にともなう遠心力を利用してポットの内壁に積層させてケークを形成した後、ポット内でボビンに糸を巻き返している。その際、ポットの高速回転によってポットの外周に空気摩擦が生じ、この空気摩擦がポットを回転させるときの抵抗となる。このため、ポットの回転に消費されるモータの駆動出力を減らすために、特許文献1には、ポットの外側に固定カバーを設けた構成が記載されている。この構成においては、ポットの回転に消費されるモータの駆動出力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−520940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ポットをマグネット軸受によって支持している。このため、アンバランスを持ったポットが回転したり、ポットと固定カバーとの間に生じる圧力分布によって両者が低圧側に引き寄せたりして振動が発生し、この振動を抑制することが難しいという課題があった。また、実際に振動を抑制するには非常に高精度な制御が必要になるため、高コストになるという課題があった。
【0005】
そこで低コスト化のために、マグネット軸受よりも安価な転がり軸受によってポットを支持する構成を採用することが考えられる。その場合、転がり軸受の回転抵抗は軸受の直径が大きくなるほど増加する。このため、ポットの回転に消費されるモータの駆動出力を減らすには、転がり軸受の直径が小さいことが好ましい。また、ポット回転時の振幅を小さく抑えるには、ポット中心軸方向の一方側(上側)と他方側(下側)の両方でポットを軸受により支持することが好ましい。
【0006】
ただし、ポットの内側に精紡領域を確保することや、ボビン交換のためのドッフィングを考慮すると、ポットはポット中心軸方向の一方側だけで軸受により支持された片側支持の構成となる。このため、ポットを回転させる回転系の固有振動数が低く、ポットの回転数の領域内で共振が生じ、アンバランスが振動の加振源となる。さらに、ポットの回転数の領域内において、共振を超えた範囲では別の振動が発生する。これにより、ポット精紡機の定常運転時にポットを実用回転域で回転させた場合に、転がり軸受の寿命が短くなるなどの影響がでる。
【0007】
また、ポットを転がり軸受(以下、「ポット軸受」ともいう。)によって支持する場合に、ポット回転中の振動を低減するために、ポット軸受の外輪をダンパー部材で支持することが考えられる。ただし、その場合は、上述した片側支持の構成によってポット軸受の外輪をダンパー部材で支持することになるため、ポットの傾きを部品精度で規制することが困難になる。したがって、ポットと固定カバーとの間にポットの傾きに起因する偏心が生じ、この偏心によってポットの空気摩擦抵抗が増加してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、ダンパー部材を用いてポットを支持する場合に、ポットの傾きを調整してポット回転時の空気摩擦抵抗を低減することができるポット精紡機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円筒状のポットと、ポットを回転自在に支持するポット軸受とを備え、ポット軸受はポット軸受固定輪を有する、ポット精紡機において、固定状態に設けられる支持部と、支持部とポット軸受固定輪との間に配置されるダンパー部材と、ポットの円周方向でダンパー部材の変形量を異なるように調整する調整機構とを備える。
【0010】
本発明に係るポット精紡機において、調整機構は、ポットの円周方向の異なる位置に配置された2つ以上の螺合部材を含み、2つ以上の螺合部材の回転量によってポットの傾きを調整するものであってもよい。
【0011】
本発明に係るポット精紡機において、ダンパー部材は、螺合部材の外側に配置されていてもよい。
【0012】
本発明に係るポット精紡機において、調整機構は、ダンパー部材の変形量を規定するための規定部材を有するものであってもよい。
【0013】
本発明に係るポット精紡機において、ダンパー部材の変形方向は、ポットの中心軸と平行な方向に設定されていてもよい。
【0014】
本発明に係るポット精紡機において、調整機構は、ポット軸受固定輪に固定され、ポット軸受固定輪からラジアル方向に延在するホルダ部材を有し、ダンパー部材は、ホルダ部材の上面および下面に接触する状態で配置されていてもよい。
【0015】
本発明に係るポット精紡機において、ダンパー部材はOリングであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダンパー部材を用いてポットを支持する場合に、ポットの傾きを調整してポット回転時の空気摩擦抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るポット精紡機の構成を示す概略側断面図である。
図2】ポットの円周方向におけるボルトの配置を示す概略平面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るポット精紡機の構成を示す概略側断面図である。
図4】ダンパー部材の変形量を調整可能な構成例を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るポット精紡機の構成を示す概略側断面図である。
図1に示すように、ポット10は円筒状に形成されている。ポット10はポット軸受12によって回転自在に支持されている。ポット10の中心軸Jは、鉛直方向と平行に配置されている。このため、ポット10の中心軸方向の一方は上方、他方は下方となる。
【0020】
ポット軸受12は、ポット軸受内輪14、ポット軸受外輪16および転動体18を備えた転がり軸受によって構成されている。ポット軸受内輪14は、ポット軸受外輪16の内側に、ポット軸受外輪16と同軸状に配置されている。ポット軸受内輪14の下端部にはポット10が取り付けられている。ポット10はポット軸受内輪14と一体に回転する。
【0021】
ポット軸受外輪16は、ポット10およびポット軸受内輪14と一体に回転しないよう、円周方向(回転方向)への動きが規制された状態、すなわち固定状態で設けられている。ポット軸受外輪16はポット軸受固定輪に相当する。転動体18は、ポット軸受内輪14と転動体18との間に配置されている。転動体18は、ポット軸受12の上側と下側に設けられている。転動体18は、玉やコロによって構成される。本実施形態においては、転動体18が玉によって構成されている。
【0022】
ポット軸受外輪16にはホルダ部材20が固定されている。ホルダ部材20はポット軸受12を支持するものである。ホルダ部材20は、ポット軸受外輪16からラジアル方向に延在するように円板状に形成されている。ホルダ部材20には複数の貫通孔22が設けられている。各々の貫通孔22は円周方向の異なる位置に設けられている。また、各々の貫通孔22はホルダ部材20を厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0023】
ホルダ部材20の上方にはプレート24が配置されている。プレート24は図2に示すように円板状に形成されている。プレート24は、ポット軸受12のポット軸受外輪16に対して上下方向に移動可能に係合されている。また、プレート24とポット軸受外輪16との係合部分には、後述するポット10の傾き調整を許容し得るだけの隙間が確保されている。プレート24には複数のボルト取付用孔24a,24bが設けられている。各々のボルト取付用孔24a,24bは、上述した複数の貫通孔22と同じ位置関係となるよう、円周方向の異なる位置に設けられている。また、各々のボルト取付用孔24a,24bはプレート24を厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0024】
一方、ホルダ部材20の下方には、固定カバー30が配置されている。固定カバー30は円筒状に形成されている。固定カバー30は、ポット10の外側を囲むように配置されている。固定カバー30の上側にはフランジ部36が設けられている。
【0025】
フランジ部36は、図示しない固定部材に固定されることにより、上下方向および円周方向(回転方向)のいずれの方向にも動かないよう、固定状態で設けられている。フランジ部36は、支持部に相当するもので、板状部40と筒状部42とを有している。板状部40と筒状部42とは一体構造になっている。板状部40は円板状に形成されると共に、上下方向でホルダ部材20と対向するように配置されている。板状部40には複数のネジ孔44が設けられている。各々のネジ孔44は、上述した複数の貫通孔22と同じ位置関係となるよう、円周方向の異なる位置に設けられている。また、各々のネジ孔44は板状部40を厚さ方向に貫通するように設けられている。筒状部42は板状部40の内周部から下方に延在するように形成されている。
【0026】
このように、ポット10の外側に固定カバー30を配置することにより、ポット10の外周に生じる空気摩擦抵抗を低減し、ポット10の回転に消費されるモータの駆動出力を低減することができる。
【0027】
ポット軸受外輪16とフランジ部36との間にはダンパー部材46が配置されている。具体的には、ポット軸受外輪16に固定されたホルダ部材20の上側と下側にそれぞれダンパー部材46が配置されている。上側のダンパー部材(以下、「上側ダンパー部材」ともいう。)46は、ホルダ部材20とプレート24との間に配置され、下側のダンパー部材(以下、「下側ダンパー部材」ともいう。)46は、ホルダ部材20とフランジ部36との間に配置されている。
【0028】
ダンパー部材46は、部材自体が弾性変形する弾性体によって構成されている。ダンパー部材46は、ポット10の回転によって生じる振動を減衰させる性能をもつ。ダンパー部材46の変形方向は、ポット10の中心軸Jと平行な方向(図1の上下方向)に設定されている。本実施形態においては、ダンパー部材46がOリングによって構成されている。
【0029】
上側ダンパー部材46は、ホルダ部材20とプレート24とに挟まれて上下方向に押し潰されている。下側ダンパー部材46は、ホルダ部材20とフランジ部36の板状部40とに挟まれて上下方向に押し潰されている。このため、上側ダンパー部材46はホルダ部材20の上面20aに接触する状態で配置され、下側ダンパー部材46はホルダ部材20の下面20bに接触する状態で配置されている。
【0030】
また、ポット軸受12の周囲には、ダンパー部材46の変形量を調整可能な調整機構50が設けられている。調整機構50は、ポット10の円周方向でダンパー部材46の変形量を異なるように調整するものである。調整機構50は、上述したホルダ部材20、プレート24およびフランジ部36を含むと共に、図1および図2に示す第1ボルト51および第2ボルト52を含む機構である。
【0031】
第1ボルト51は、ダンパー部材46の変形量を調整機構50によって調整する場合に、基準となるダンパー部材46の変形量(以下、「基準変形量」ともいう。)を規定するためのものである。すなわち、第1ボルト51は、ダンパー部材46の変形量を規定するための規定部材に相当する。第1ボルト51は、ポット10の円周方向の1箇所に配置されている。これに対し、第2ボルト52は、ダンパー部材46の変形量を調整機構50によって調整する場合に、ポット10の傾きを調整(補正)するようにダンパー部材46の変形量を調整するためのものである。すなわち、第2ボルト52は、ポット10の傾きを調整する螺合部材に相当する。ポット10の傾きとは、鉛直軸に対するポット10の中心軸Jの傾きを意味する。第2ボルト52は、ポット10の円周方向の2箇所に配置されている。ポット10の円周方向で隣り合う第1ボルト51と第2ボルト52との間の角度間隔は120°に設定されている。すなわち、第1ボルト51および第2ボルト52を含む計3つのボルトは、ポット10の円周方向に等間隔で配置されている。
【0032】
第1ボルト51は、頭部51a、軸部51bおよびネジ部51cを一体に有する。軸部51bはネジ部51cよりも大きな径で形成され、これによって軸部51bとネジ部51cとの境界に段部51dが形成されている。すなわち、第1ボルト51は段付きボルトによって構成されている。第1ボルト51は、プレート24のボルト取付用孔24aとホルダ部材20の貫通孔22とを通してフランジ部36のネジ孔44に螺合されている。
【0033】
第2ボルト52は、頭部52aおよびネジ部52bを一体に有する。第2ボルト52は、プレート24のボルト取付用孔24bとホルダ部材20の貫通孔22とを通してフランジ部36のネジ孔44に螺合されている。
【0034】
続いて、本発明の第1実施形態に係るポット精紡機が備える調整機構50を用いてポット10の傾きを調整する手順について説明する。
まず、ホルダ部材20とプレート24との間に上側ダンパー部材46を配置すると共に、ホルダ部材20とフランジ部36との間に下側ダンパー部材46を配置し、その状態で第1ボルト51と第2ボルト52を取り付ける。その際、第1ボルト51はプレート24のボルト取付用孔24aとホルダ部材20の貫通孔22とを通してフランジ部36のネジ孔44に螺合させ、第2ボルト52はプレート24のボルト取付用孔24bとホルダ部材20の貫通孔22とを通してフランジ部36のネジ孔44に螺合させる。
【0035】
そうすると、第1ボルト51を締め付け方向に回転させる過程で、上下のダンパー部材46がそれぞれ押し潰されて弾性変形すると共に、第1ボルト51の段部51dがフランジ部36の上面36aに突き当たる。これにより、フランジ部36の上面36aを基準面(座面)として、第1ボルト51の軸部51bの長さにより、ダンパー部材46の基準変形量が規定されると共に、上下方向におけるポット軸受12の位置が決められる。
【0036】
一方、第2ボルト52を締め付け方向に回転させる過程でも、上下のダンパー部材46がそれぞれ押し潰されて弾性変形する。ただし、第2ボルト52は段付きのネジになっていないため、ダンパー部材46の変形量は任意に調整可能である。また、第2ボルト52は、ポット10の円周方向の2箇所に配置されている。このため、各々の第2ボルト52の回転量および回転方向を調整することにより、ポット10の円周方向でダンパー部材46の変形量を変えることができる。
【0037】
このように、第1ボルト51および第2ボルト52の回転によって上下のダンパー部材46を変形させた状態では、フランジ部36の上に下側ダンパー部材46を介してホルダ部材20が配置され、さらにホルダ部材20の上に上側ダンパー部材46を介してプレート24が配置される。また、ホルダ部材20は、上下のダンパー部材46によって弾性的に支持される。このため、調整機構50が有する2つの第2ボルト52を用いて、ポット10の円周方向でダンパー部材46の変形量を異なるように調整することが可能となる。以下、詳しく説明する。
【0038】
まず、第1ボルト51の締め付けによって規定されるダンパー部材46の基準変形量に対して、第2ボルト52の締め付けによるダンパー部材46の変形量(潰れ量)が基準変形量よりも多くなるように、第2ボルト52の回転量および回転方向を調整すると、第2ボルト52の締め付け部ではホルダ部材20がフランジ部36の上面36aに近づく方向に変位する。これにより、ホルダ部材20の姿勢は、第1ボルト51の締め付け部よりも第2ボルト52の締め付け部のほうが低くなるように傾く。
【0039】
また、第1ボルト51の締め付けによって規定されるダンパー部材46の基準変形量に対して、第2ボルト52の締付けによるダンパー部材46の変形量が基準変形量よりも少なくなるように、第2ボルト52の回転量および回転方向を調整すると、第2ボルト52の締め付け部ではホルダ部材20がフランジ部36の上面36aから離れる方向に変位する。これにより、ホルダ部材20の姿勢は、第1ボルト51の締め付け部よりも第2ボルト52の締め付け部のほうが高くなるように傾く。
【0040】
また、2つの第2ボルト52のうち、一方の第2ボルト52の締め付けによるダンパー部材46の変形量が、他方の第2ボルト52の締め付けによるダンパー部材46の変形量よりも多くなるように、各々の第2ボルト52の回転量および回転方向を調整すると、ホルダ部材20の姿勢は、ダンパー部材46の変形量が多い第2ボルト52の締め付け部のほうが、変形量が少ない第2ボルト52の締め付け部よりも低くなるように傾く。
【0041】
このように、本発明の第1実施形態に係るポット精紡機においては、調整機構50が有する2つの第2ボルト52を用いて、ポット10の円周方向でダンパー部材46の変形量を異なるように調整することができる。また、ポット10の円周方向でダンパー部材46の変形量を異なるように調整すると、その調整の仕方に応じて、ホルダ部材20の姿勢に傾きが生じる。このホルダ部材20はポット軸受12のポット軸受外輪16に固定されているため、ホルダ部材20の姿勢が傾くと、それにしたがってポット10とポット軸受12とが傾く。このため、調整機構50が有する2つの第2ボルト52を用いて、ポット10の傾きを調整(補正)することができる。したがって、ポット10の傾きを部品精度で規制しなくても、ポット精紡機の組立後にポット10の傾きを調整することにより、ポット10と固定カバー30との偏心を抑制することができる。その結果、ポット回転時にポット10の空気摩擦抵抗を低減することができる。また、ポット軸受外輪16とフランジ部36との間にダンパー部材46を配置しているため、ポット10の回転にともなう振動エネルギーをダンパー部材46によって減衰させることができる。これにより、ポット回転時の振動を抑制することができる。
【0042】
また、一般に振動モードの変位が大きい箇所に減衰性能を付与する方が振動モードの減衰比は大きくなる。本実施形態においては、ポット10の実用回転域で主な振動モードとなるポット10の傾き方向の振動に対し、ダンパー部材46を構成するOリングが第1ボルト51や第2ボルト52の外側に配置されるよう、Oリングの直径を大きく設定している。このため、Oリングを用いて振動を減衰させる場合に、Oリングの変形による変位をより大きくし、振動モードの減衰比を大きく確保することができる。
【0043】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係るポット精紡機の構成を示す概略側断面図である。
本発明の第2実施形態においては、上記第1実施形態と比較して、ダンパー部材46と調整機構50の位置関係が異なる。すなわち、上記第1実施形態においては、図1に示すように、ポット軸受外輪16に固定されたホルダ部材20を上下方向から挟むように上側ダンパー部材46と下側ダンパー部材46を配置している。これに対し、本第2実施形態においては、図3に示すように、ポット軸受外輪16に固定されたホルダ部材20の下方にプレート24を配置し、このプレート24を上下方向から挟むように上側ダンパー部材46と下側ダンパー部材46を配置している。そして、第1ボルト51は、ホルダ部材20の貫通孔22とプレート24のボルト取付用孔24aを通してフランジ部36のネジ孔44に螺合させ、第2ボルト52は、ホルダ部材20の貫通孔22とプレート24のボルト取付用孔24bを通してフランジ部36のネジ孔44に螺合させている。プレート24は図示しない固定部材に固定されている。
【0044】
本発明の第2実施形態に係るポット精紡機においては、上記第1実施形態と同様に、調整機構50が有する2つの第2ボルト52を用いて、ポット10の円周方向でダンパー部材46の変形量を異なるように調整し、これによってポット10の傾きを調整(補正)することができる。このため、ポット10と固定カバー30との偏心を抑制し、ポット回転時の空気摩擦抵抗を低減することができる。また、ポット10の回転にともなう振動エネルギーをダンパー部材46によって減衰させ、ポット回転時の振動を抑制することができる。
【0045】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0046】
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態においては、第2ボルト52の回転によってダンパー部材46の変形量を調整可能な構成としたが、本発明はこれに限らず、たとえば、図4に示すような構成を採用することも可能である。図4においては、固定状態に設けられた支持部60の上面にテーパー付きのワッシャ62を載置すると共に、ワッシャ62の上方にプレート64を配置し、ワッシャ62とプレート64との間にダンパー部材(Oリング)66を配置した構成となっている。また、ポット軸受外輪68の外周部に雄ネジ部材70を取り付け、雄ネジ部材70にナット部材72を螺合した構成となっている。この構成においては、雄ネジ部材70に螺合するナット部材72を締め付けることにより、ワッシャ62とプレート64との間でダンパー部材66を変形させることができる。また、ワッシャ62の上面62aには、内周側から外周側に向かってワッシャ62の厚さが薄くなるようにテーパーが設けられている。このため、たとえば、支持部60上でワッシャ62を水平方向にずらすと、ワッシャ62の移動方向と移動量に応じてダンパー部材66の変形量が変化(増減)する。したがって、ワッシャ62の移動方向と移動量を調整することにより、ポットの円周方向でダンパー部材66の変形量を異なるように調整することができる。
【0047】
また、上記第1実施形態においては、ポット10の円周方向の異なる位置に計3つのボルト51,52を配置し、このうち2つの第2ボルト52の回転量によってポット10の傾きを調整する構成を採用したが、傾き調整のためのボルトの数は2つに限らず3つ以上であってもよい。
【0048】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、ポット軸受外輪16にホルダ部材20を固定するとしたが、本発明はこれに限らず、ポット軸受外輪16とホルダ部材20とを一体構造としてもよい。
【0049】
また、上記第2実施形態においては、ホルダ部材20の下方に、プレート24を挟むように上側ダンパー部材46と下側ダンパー部材46とを配置したが、これに限らず、上下方向でホルダ部材20とプレート24の位置関係を逆にし、ダンパー部材46の上方に、プレート24を挟むように上側ダンパー部材46と下側ダンパー部材46とを配置することも可能である。また、ダンパー部材46は、必ずしも上下に分けて配置する必要はなく、ホルダ部材20の上側または下側にのみ配置してもよい。
【0050】
また、上記第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態においては、ダンパー部材46,66の変形方向を、ポット10の中心軸Jと平行な方向に設定したが、これに限らず、ダンパー部材の変形方向をポットの中心軸と直交する方向に設定してもよい。
【0051】
また、上記第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態においては、ダンパー部材46,66をOリングによって構成したが、ダンパー部材はOリングなどの弾性体に限らず、たとえば、金属製のバネとオイルとを組み合わせたものであってもよい。
【0052】
また、ダンパー部材による振動減衰機能に加えて、オイルの封入によりオイルダンパーの機能を付加してもよい。具体的には、直径の異なる2つのダンパー部材(Oリング)の間にオイルを封入し、このオイルがダンパー部材の変形に応じて円周方向に移動する際の粘性を利用して振動を減衰させる機能(オイルダンパー機能)を付加してもよい。
【0053】
また、上記第1実施形態においては、ポット10の外側に固定カバー30を設けているが、固定カバー30に代えて回転カバー(図示せず)を設けた構成としてもよい。
【0054】
また、調整機構50を用いたポット10の傾き調整は、固定カバー30や回転カバーに対するポット10の偏心を低減する目的とする以外にも、その他の部材や軸に対してポット10の傾きを調整する場合に利用してもよい。
【0055】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、第2ボルト51の回転によってダンパー部材46の変形量を調整可能な構成としたが、本発明はこれに限らず、雄ネジに対してナットの回転によってダンパー部材46の変形量を調整可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 ポット、12 ポット軸受、16 ポット軸受外輪(ポット軸受固定輪)、20 ホルダ部材、36 フランジ部(支持部)、46,66 ダンパー部材、50 調整機構、51 第1ボルト(規定部材)、52 第2ボルト(螺合部材)、60 支持部、J 中心軸。
図1
図2
図3
図4