(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204175(P2020-204175A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】段差梁の接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20201127BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20201127BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
E04B1/58 505P
E04B1/24 Q
E04B1/30 K
E04B1/58 503G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-111727(P2019-111727)
(22)【出願日】2019年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】萱嶋 誠
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陸朗
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB11
2E125AC01
2E125AC15
2E125BB12
2E125CA01
2E125CA90
2E125EB11
(57)【要約】
【課題】端面の形態や梁の段差の大きさに関わらず、容易かつ安価に施工することのできる段差梁の接合構造を提供する。
【解決手段】柱10の左右に取り付けられる2本の鉄骨梁の高さが異なる段差梁の接合構造であって、高さが低い下段梁12は、柱10の一方の側面に剛接合され、高さが高い上段梁14は、柱10の他方の側面から突出するブラケット16の上面に接合され、上段梁14の端面は、柱10の側面に接合されていないことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の左右に取り付けられる2本の鉄骨梁の高さが異なる段差梁の接合構造であって、
高さが低い下段梁は、前記柱の一方の側面に剛接合され、
高さが高い上段梁は、前記柱の他方の側面から突出するブラケットの上面に接合され、
前記上段梁の端面は、前記柱の側面に接合されていない
ことを特徴とする段差梁の接合構造。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記柱を貫通している前記下段梁の端部であることを特徴とする請求項1に記載の段差梁の接合構造。
【請求項3】
前記上段梁は、調整部材を介して前記ブラケットに接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の段差梁の接合構造。
【請求項4】
前記ブラケットに接合される前記上段梁の端部のせいは、当該上段梁の端部以外のせいよりも小さく構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の段差梁の接合構造。
【請求項5】
前記柱は、鉄筋コンクリート造であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の段差梁の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁の接合構造に係り、特に、柱の左右の梁に段差がある(床のレベルが異なる)場合の梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ショッピングセンターや大規模物流倉庫において、柱を鉄筋コンクリート造、梁を鉄骨造とする複合架構がよく用いられる。互いに直交する梁を接合部内で定着するために、特許文献1に開示されているような定着用金物を介して、様々な形態の仕口を有する梁を接合する構造が開発され、実験や解析結果が蓄積されたことで、通常の耐震架構と同様に柱梁接合部は剛として設計されている。
【0003】
また、梁のせいの違いや床の段差に対応するための接合構造としては、例えば特許文献2や特許文献3に開示されている梁の下部を支持するブラケットを設けることが開示されている。特許文献2に開示されている接合構造は、鉄筋コンクリート造の柱に対して、梁高さに応じたアンカーを埋め込み、このアンカーに対して鋼製ブラケットを固定する。そして、鋼製ブラケットの上面に梁を固定することで、柱を介した梁の接合に際して、段差を有する場合にも適応可能な構造としている。
【0004】
また、特許文献2に開示されている接合構造は、鉄筋コンクリート造の柱の中心に、接合を予定する梁の幅と同等の面幅を有する角型鋼管を配置し、この角型鋼管に対して梁の端部を溶接し、角型鋼管を含む梁の端部をコンクリート内に埋設するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−240759号公報
【特許文献2】特開2005−126973号公報
【特許文献3】特開2019−7245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されているような接合構造によれば、様々な仕口の形態や、配置高さが異なる梁の接合に対応することができると考えられる。しかし、特許文献1に開示されているような定着用金物を介して鉄骨梁の接合を行う構造では、同方向に延設される鉄骨梁に段差を設けて接合することは難しい。また、定着金物は、梁の仕口の形態によって複雑な形状になったり、切欠きが設けられるなどの加工が施されるため、固定度も低くなりやすい。
【0007】
また、特許文献2に開示されている接合構造の場合、柱には予め、鋼製ブラケットを固定するためのアンカーを埋設する必要がある。さらに、梁の端部には必ず鋼製ブラケットの張り出しが生じるため、対応可能箇所が限定される場合も生じる。
【0008】
さらに特許文献3に開示されている接合構造の場合、鋼管に対する定着法次第で接合部の固定度が変わってくると共に、柱梁接合部の型枠が複雑になり、現場での作業が煩雑になる。
【0009】
本発明では、上記のような問題を解決し、柱に取り付く梁の段差の大きさ(レベル差)に関わらず、柱と梁の仕口の構造が単純で、容易に施工することのできる段差梁の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る段差梁の接合構造は、柱の左右に取り付けられる2本の鉄骨梁の高さが異なる段差梁の接合構造であって、高さが低い下段梁は、前記柱の一方の側面に剛接合され、高さが高い上段梁は、前記柱の他方の側面から突出するブラケットの上面に接合され、前記上段梁の端面は、前記柱の側面に接合されていないことを特徴とする。
【0011】
また、上記のような特徴を有する段差梁の接合構造において前記ブラケットは、前記柱を貫通している前記下段梁の端部であることを特徴とする。このような特徴を有することにより、柱に対する下段梁とブラケットの定着を一度に行うことができるようになる。
【0012】
また、上記のような特徴を有する段差梁の接合構造において前記上段梁は、調整部材を介して前記ブラケットに接合されていることを特徴とする。このような特徴を有することにより、段差の高さが下段梁、あるいは上段梁のせいの高さよりも大きい場合であっても、発明に係る接合構造を適用することが可能となる。
【0013】
また、上記のような特徴を有する段差梁の接合構造では、前記ブラケットに接合される前記上段梁の端部のせいは、当該上段梁の端部以外のせいよりも小さく構成されていることを特徴とする。このような特徴を有することによれば、段差の高さが下段梁、あるいは上段梁のせいの高さよりも小さい場合であっても、発明に係る接合構造を適用することが可能となる。
【0014】
さらに、上記のような特徴を有する段差梁の接合構造における前記柱は、鉄筋コンクリート造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有する段差梁の接合構造によれば、端面の形態や梁の段差の大きさに関わらず、容易に施工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】基本形態に係る段差梁の接合構造を説明するための図であり、梁の延設方向側面の構成を示す図である。
【
図3】段差梁の接合構造における第1応用形態を示す図である。
【
図4】段差梁の接合構造における第2応用形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の段差梁の接合構造に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1、
図2を参照して、本発明の段差梁の接合構造に係る基本形態について説明する。なお、
図1は、接合に係る梁を延設方向側面から見た様子を示す図であり、
図2は、
図1におけるA−A断面を示す図である。
【0018】
[基本形態]
本実施形態において接合対象とする梁は、柱10の左右に設置される2本の梁であり、柱の一方の側面に位置する梁と他方の側面に位置する梁の高さが異なるものである。
図1に示す例では、柱10の右側(一方の側面)に延設されている一方の梁の高さが、柱10の左側(他方の側面)に延設されている他方の梁の高さよりも低くなるように接合されている。よって、本実施形態では、一方の梁を下段梁12、他方の梁を上段梁14と称する。本実施形態では、下段梁12と上段梁14を鋼材により構成することとし、図面には一例として、下段梁12と上段梁14とをH形鋼により構成するよう示している。
【0019】
本実施形態では、柱10の一方の側面における下段梁12と、他方の面におけるブラケット16が同じ高さにある。本実施形態では、柱10を貫通するように下段梁12を配置し、柱10を貫通した下段梁12の端部によりブラケット16を構成することとしている。下段梁12とブラケット16を別体として構成する場合に比べ、部材の点数を減らすことができると共に、下段梁12とブラケット16の双方を柱10に対して個別に定着させる必要がなくなる。
【0020】
上段梁14は、ブラケット16の上面に接合する構成とし、柱10と上段梁14の端面(仕口)とは接合せず、わずかに隙間を持たせるようにしている。下段梁12と上段梁14との段差h1が、下段梁12のせいの高さh2よりも大きい場合には(
図1に示す例では、下段梁12のせいの高さh2と上段梁14のせいの高さh4は同一)、両者の間に隙間h3が生じる。このため、隙間h3が生じる場合には、調整部材18を介して下段梁12と上段梁14を接合する。ここで、調整部材18の構成については限定するものでは無いが、例えば所定の大きさに切断した形鋼材にリブを入れて補剛したブロック材などを用いれば良い。
【0021】
なお、下段梁12(ブラケット16)と上段梁14、および調整部材18の接合方法としては、溶接やボルト止めなど、既知の接合方法を採用すれば良い。
【0022】
[効果]
上記のような段差梁の接合構造によれば、調整部材18の高さを変えることにより、大きな段差にも対応することができる。また、柱10を貫通させた下段梁12の上面に上段梁14を接合するという簡単な構造であるため、鉄骨梁の加工の必要性が低く、施工も簡単である。また、下段梁12を柱10に剛接合すれば、ロングスパンや大きな積載荷重にも対応することが可能となる。
【0023】
また、柱10を構成するにあたっては、複雑な形状の型枠を構成する必要が無く、現場での作業性も良好に保つことができる。さらに、梁(下段梁12、上段梁14)の端面形態に関わらず、適用することができる。また、施工性が良好なため、安価に施工することができる。
【0024】
また、上段梁14は、柱10側に位置する端部を柱10に接合されていない。そして、上段梁14の接合は、下段梁12の端部により構成されるブラケット16の上面に接合される(
図1、
図2に示す例では、調整部材18を介在させて接合されている)ため、上段梁14を柱10の側面に接合したり、内部に定着させる場合に比べて施工が容易となる。
【0025】
[第1応用形態]
上述した基本形態では、下段梁12と上段梁14との段差h1が、下段梁12のせいの高さh2よりも大きな場合に、下段梁12の上面と上段梁14の下面の間に調整部材18を配置した上で接合を行う旨記載した。しかしながら、下段梁12と上段梁14との段差h1と、下段梁12のせいの高さh2とが等しい場合、
図3に示すように、下段梁12の上面に直接、上段梁14を接合する構成としても良い。
【0026】
下段梁12と上段梁14との間に隙間が生じない程度の段差の場合、両者を直接接合することが可能となり、接合に必要な部材を減らすことが可能となる。また、このような接合構造とした場合であっても、上述した基本形態と同様に、接合が簡単な構造であるため、鉄骨梁の加工度が低く、施工も簡単に行うことができる。
【0027】
また、柱を構成するにあたっては、複雑な形状の型枠を構成する必要が無く、現場での作業性も良好に保つことができる。さらに、梁の端面形態に関わらず、適用することができる。また、施工性が良好なため、安価に施工することができる。
【0028】
[第2応用形態]
上述した基本形態、および第1応用形態では、下段梁12と上段梁14との段差h1と、下段梁12のせいの高さh2との関係について、h1>h2、あるいはh1=h2の関係にある場合について説明した。
【0029】
ここで、下段梁12と上段梁14との段差h1が、下段梁12のせいの高さh2よりも小さい(h1<h2)場合には、
図4に示すように、上段梁14の端部のせいの高さh5を、上段梁14の他の部分のせいの高さh4よりも小さくすることで、段差の調整を行うようにすれば良い。
【0030】
このような構造とすることで、梁の強度を保ちつつ、段差h1が小さい場合への対応が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
なお、
図4に示す形態では、上段梁14の下側フランジを上側フランジに寄せるようにして端部のせいの高さh5をh4よりも小さくし、段差h1が下段梁12のせいの高さh2より小さい場合への対応を図っている。しかしながら、本発明に係る段差梁の接合構造では、下段梁12における上側フランジを下側フランジに寄せるようにして、ブラケット16のせいを小さくする調整を行うことで、段差h1への対応を図るようにしても良い。
【符号の説明】
【0032】
10………柱、12………下段梁、14………上段梁、16………ブラケット、18………調整部材。