【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図7に基づいて説明する。
本実施例1に係るエンジン1は、例えば、過給機付き圧縮自己着火式エンジンである。
このエンジン1は、燃焼室8が吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返すことで運転される4ストローク多気筒エンジンである。本実施例では、エンジン1の燃料がガソリンとされるが、少なくともガソリンを含む液体燃料であれば適宜選択可能である。
【0020】
まず、エンジン1の概略構成について説明する。
図1に示すように、エンジン1は、シリンダブロック2と、その上に載置されるシリンダヘッド3とを備えている。シリンダブロック2の内部には、複数のシリンダ4が形成されている。各シリンダ4内には、ピストン5が摺動自在に内挿されている。ピストン5は、コネクティングロッド6を介してクランクシャフト7に連結され、シリンダ4及びシリンダヘッド3と協働して燃焼室8を区画している。
【0021】
エンジン1の幾何学的圧縮比は、例えば、13以上30以下に設定されている。
エンジン1は、後述するように、一部の運転領域において、SI(Spark Ignition)燃焼とCI(Compression Ignition)燃焼とを組み合わせたSPCCI(Spark Controlled Compression Ignition)燃焼を行う。SPCCI燃焼は、SI燃焼による発熱と圧力上昇とを利用して、CI燃焼をコントロールする。このエンジン1は、混合気を自己着火させるためにピストン3が圧縮上死点に至ったときの燃焼室8の温度を高くする必要がない。即ち、エンジン1は、CI燃焼を実行するものの、幾何学的圧縮比を、比較的低く設定することが可能である。
【0022】
図1に示すように、シリンダヘッド3には、吸気ポート10と、排気ポート11とがシリンダ4毎に夫々形成されている。吸気ポート10と排気ポート11には、開閉タイミングとリフト量を変更可能な吸気バルブ12と排気バルブ13が夫々配設されている。
シリンダヘッド3は、インジェクタ14と、点火プラグ15等を備えている。インジェクタ14は、燃料タンク(図示略)と燃料通路16を介して接続されている。
燃料通路16の途中部には、燃料ポンプ17と、コモンレール18が介装されている。
燃料ポンプ17は、クランクシャフト7によって駆動されるプランジャ式ポンプである。燃料ポンプ17から圧送された燃料は高圧力でコモンレール18内に蓄えられているため、インジェクタ14が開弁したとき、インジェクタ14の噴口から燃焼室8に燃料が噴射される。
【0023】
吸気ポート10には、吸気通路20が連通されている。
吸気通路20は、上流端部に配設されたエアクリーナ(図示略)と、このエアクリーナの下流側位置に配設されたスロットル弁(図示略)と、このスロットル弁の下流側位置に配設されたサージタンク21を備えている。また、吸気通路20には、スロットル弁とサージタンク21との間に過給機22が配設されている。
この過給機22は、エンジン1によって駆動される機械式過給機である。本実施例では、リショルム式過給機とされるが、ルーツ式、ベーン式、或いは遠心式であっても良い。
【0024】
過給機22とエンジン1との間には、電磁クラッチ23が介設されている。
電磁クラッチ23は、過給機22とエンジン1との間において、エンジン1からの駆動力を伝達又は遮断可能に構成されている。後述する制御ユニット40が、電磁クラッチ23の接続及び遮断を切り替えることにより、過給機22のオン(過給)状態とオフ(非過給)状態が切り替えられる。過給機22の下流側には、水冷式のインタクーラ24が設置されている。インタクーラ24は、過給機22によって圧縮された吸気を冷却水と熱交換させることにより強制的に冷却するように構成されている。
【0025】
図1に示すように、吸気通路20には、バイパス通路25が接続されている。
バイパス通路25は、過給機22の上流側位置とインタクーラ24の下流側位置とを接続して、過給機22とインタクーラ24をバイパスしている。バイパス通路25には、バイパス通路25を流れる吸気流量を調整可能なバイパス弁26が配設されている。
過給機22がオフ(電磁クラッチ23が遮断)のとき、バイパス弁26を全開にする。
これにより、吸気通路20を流れる吸気は、過給機22をバイパスして燃焼室8に供給される。エンジン1は、非過給、つまり、NA(Natural Aspiration)状態で稼動される。
過給機22がオン(電磁クラッチ23が接続)のとき、吸気の大半は、燃焼室8に供給される。過給機22を通過した吸気の一部は、バイパス通路25を通って過給機22の上流側位置に還流する。バイパス弁26の開度を調整することにより、吸気の逆流量を調整できるため、燃焼室8に導入される吸気の過給圧を調整している。
【0026】
次に、エンジン1の冷却系について説明する。
エンジン1には、エンジン側冷却回路と、過給機側冷却回路(冷却水回路)とが設けられている。
エンジン側冷却回路は、シリンダブロック2やシリンダヘッド3等を冷却している。
エンジン1の駆動によって機械式ポンプを作動させてエンジン1とメインラジエータとヒータとに亙って冷却水を循環させている(何れも図示略)。
図1に示すように、過給機側冷却回路は、サブラジエータ27と、電動ポンプ28(冷却水ポンプ)と、EGRクーラ29と、サブラジエータ27で走行風と熱交換された冷却水をインタクーラ24に流すための第1水路30と、インタクーラ24で圧縮吸気と熱交換された冷却水をサブラジエータ27に流すための第2水路31を備えている。
【0027】
サブラジエータ27は、車体前部のメインラジエータの後方位置に配設されている。
電動ポンプ28は、第1水路30の途中部に介設されている。この電動ポンプ28の駆動モータは、PWM制御される直流モータである。電動ポンプ28の吐出量は、駆動モータに印加される所定電圧のパルス幅を変更することでオンタイムとオフタイムの比であるデューティ比(%)が変更され、この駆動電流の出力時間によって制御される。
EGRクーラ29は、バイパス水路32の途中部に設けられ、排気系から吸気系に還流するEGRガスを冷却可能に構成されている。バイパス水路32は、第1水路30のインタクーラ24と電動ポンプ28との間に相当する途中部相当位置と第2水路31の途中部相当位置を接続している。
【0028】
次に、制御ユニット40について説明する。
このエンジン1は、エンジン1を制御するための制御ユニット40を備えている。
制御ユニット40は、各種プログラムを実行する中央演算処理部、メモリ(RAM、ROM)、及び入出力バス等によって構成されている。
図2に示すように、制御ユニット40は、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ41と、エンジン1の負荷(エンジントルク)を検出する負荷センサ42と、車両の走行速度を検出する車速センサ43と、過給機側冷却回路(第1水路30)の冷却水温を検出する水温センサ44(冷却水温検出手段)とに電気的に接続されている。この制御ユニット40は、各々のセンサ41〜44からの各検出信号を入力し、電磁クラッチ23及び電動ポンプ28に指令信号を夫々出力している。
【0029】
制御ユニット40は、エンジン回転数と負荷によって規定された運転領域マップを有し、この運転領域マップに基づきエンジン1の燃焼を制御している。
図3に示すように、所定回転数n(例えば、4000rpm)未満で且つ低負荷である低回転低負荷領域A1のとき、非過給条件成立により過給機22がオフ状態にされ、SPCCI燃焼が実行される。所定回転数n未満で且つ高負荷である低回転高負荷領域A2では、過給条件成立により過給機22がオン状態にされ、SPCCI燃焼が実行される。
また、所定回転数n以上の高回転領域A3では、非過給条件成立により過給機22がオフ状態にされ、SI燃焼が実行される。
【0030】
制御ユニット40は、車速と水温によって規定された2種類の制御マップを有し、これらの制御マップに基づき電動ポンプ28を制御している。
図4に示すように、過給機22がオン状態にされる過給条件成立時(領域A2)では、第2設定温度T2(例えば、−10℃)未満である領域B1のとき、電動ポンプ28は、第2冷却水量に相当する低デューティ比(例えば、40%)で制御される(低デューティ制御)。低温に起因する不具合を解消するためである。尚、デューティ比40%は、過給機側冷却回路内の冷却水の温度勾配を解消可能な最低冷却水量である。
また、第2設定温度T2(例えば、−10℃)以上である領域B2のとき、電動ポンプ28は、第1冷却水量に相当する高デューティ比(例えば、95%)で制御される(高デューティ制御)。圧縮空気の温度を冷却するためである。
【0031】
図5に示すように、過給機22がオフ状態にされる非過給条件成立時(領域A1,A3)では、第2設定温度T2(例えば、−10℃)未満である領域C1のとき、電動ポンプ28は低デューティ比(例えば、40%)で制御される。低温に起因する不具合を回避するためである。また、第1設定温度T1(例えば、50℃)以上である領域C2のとき、電動ポンプ28は高デューティ比(例えば、95%)で制御される。高温に起因する熱害を回避するためである。
【0032】
非過給条件成立時において、第2設定温度T2以上で且つ第1設定温度T1未満では、所定車速v(例えば、10km/h)未満である領域C3のとき、電動ポンプ28は60sec周期のうち54sec間停止されると共に6secの間低デューティ比(例えば、40%)で間欠的に制御されている。領域C3は、車速が低く、直ぐに過給条件が成立する可能性が低いため、燃費改善を重視して電動ポンプ28の起動頻度を低くした長周期低デューティ制御を実行している。
【0033】
また、所定車速v以上である領域C4のとき、電動ポンプ28は10sec周期のうち9sec間停止されると共に1secの間低デューティ比(例えば、40%)で間欠的に制御されている。領域C4は、車速が高く、直ぐに過給条件が成立する可能性が高いため、燃費よりも制御上の応答性等制御性を重視して冷却水の流動周期を短くした短周期低デューティ制御を実行している。これにより、最小限の電動ポンプ28の駆動で過給機側冷却回路内の冷却水の温度勾配の発生を回避し、水温センサ44の検出精度を向上している。
尚、第1,第2水路30,31、電動ポンプ28、及び制御ユニット40は、間欠供給手段に相当している。
【0034】
次に、
図6に示すフローチャートを参照しながら、制御ユニット40による冷却制御動作の一例について説明する。尚、図中、Si(i=1,2,…)は、各ステップを示す。
【0035】
まず、S1にて、制御ユニット40が各センサ41〜44から入力された各種信号及び各種制御マップ等を読み込み、S2へ移行する。
S2では、過給機側冷却回路の冷却水温が−10℃以上か否か判定する。
S2の判定の結果、冷却水温が−10℃以上の場合、S3へ移行する。
S2の判定の結果、冷却水温が−10℃未満の場合、故障診断等制御系に係る低温に起因する不具合が懸念されるため、S9へ移行する。
S9では、電動ポンプ28を低デューティ比で制御した後、リターンする。電動ポンプ28を低デューティ比で制御することにより、冷却水の凝固を回避している。
【0036】
S3では、運転領域マップに基づき過給条件が成立したか否か判定する。
S3の判定の結果、過給条件が成立する領域A2の場合、過給機22によって圧縮された圧縮吸気を早急に冷却するため、S4へ移行する。
S4では、電動ポンプ28を高デューティ比で制御した後、リターンする。
S3の判定の結果、過給条件が成立しない、つまり、非過給条件が成立する領域A1,A3の場合、S5へ移行する。
【0037】
S5では、過給機側冷却回路の冷却水温が50℃以上か否か判定する。
S5の判定の結果、冷却水温が50℃以上の場合、インタクーラ24等各種機器の高温に起因する熱害が懸念されるため、S4へ移行する。
S5の判定の結果、冷却水温が50℃未満の場合、S6へ移行する。
【0038】
S6では、車速が10km/h以上か否か判定する。
S6の判定の結果、車速が10km/h以上の場合、非過給条件成立で且つ領域C4であるため、S7へ移行する。S7では、電動ポンプ28を短周期低デューティ比で制御した後、リターンする。S6の判定の結果、車速が10km/h未満の場合、非過給条件成立で且つ領域C3であるため、S8へ移行する。S8では、電動ポンプ28を長周期低デューティ比で制御した後、リターンする。
【0039】
次に、
図7のタイムチャートを参照して、過給機側冷却回路の冷却水温と電動ポンプ28のデューティ比との変化態様について説明する。
時刻t0〜t1において非過給条件成立且つ領域C4であるため、過給機22がオフであっても、水温センサ44の検出精度が高い短周期低デューティ制御が実行される。
時刻t1において、非過給条件成立状態で領域C4から領域C3に移行されたため、燃費効率の高い長周期低デューティ制御が実行される。ここで、短周期低デューティ制御と長周期低デューティ制御の過渡期が存在しても、単位時間当たりの冷却水量を一定にしているため、冷却水の流動周期の切換前後に亙って電動ポンプ28の駆動に必要な負荷を平滑化することができ、負荷変動に伴うショックの発生を回避している。
【0040】
時刻t2において、非過給条件成立状態のまま領域C3から領域C4に移行されたため、短周期低デューティ制御が実行される。
時刻t3において、過給条件が成立して領域A2に移行されたため、高デューティ制御が実行される。前段階で短周期低デューティ制御が実行されているため、高精度の冷却水温を確保しており高い制御性を得ることが可能である。
【0041】
次に、上記エンジン1の冷却装置の作用、効果について説明する。
このエンジン1の冷却装置によれば、制御ユニット40は、過給機22を駆動する過給条件成立時、電動ポンプ28を制御してインタクーラ24に供給される冷却水量を水温センサ44に検出された冷却水の温度が高いときは冷却水の温度が低いときよりも増加するため、冷却水温に応じて冷却水量を増加することができ、燃焼室8に供給される吸気温度を過給状態に合わせて効果的に低下させることができる。
過給機22の駆動を停止させる非過給条件成立時、電動ポンプ28を制御して冷却水をインタクーラ24に間欠的に供給するため、最小限の電動ポンプ28の駆動で冷却水を流動させることができ、冷却水の温度勾配の発生を回避することができる。
【0042】
サブラジエータ27と、このラジエータ27とインタクーラ24とを接続する第1水路30、及び第2水路31とから構成される過給機側冷却回路を備え、
制御ユニット40は、過給機側冷却回路の冷却水の温度勾配を回避するに当り、冷却水の温度勾配を解消可能な最低冷却水量を供給するため、電動ポンプ28の駆動力を最小化することができ、燃費改善を図ることができる。
【0043】
制御ユニット40は、冷却水の供給及び供給停止を周期的に繰り返すように設定しているため、電動ポンプ28の駆動制御を簡単化することができる。
【0044】
制御ユニット40は、車速が高いときの周期を車速が低いときの周期に比べて短くなるように設定しているため、過給条件成立の可能性が高い高車速時、冷却水の流動周期を短くして温度勾配の発生を確実に回避することができる。また、過給条件成立の可能性が低い低車速時、電動ポンプ28の起動頻度を抑えて一層燃費改善を図ることができる。
【0045】
制御ユニット40は、単位時間当たりの冷却水量を車速に拘らず一定に設定しているため、冷却水の流動周期の切換前後に亙って電動ポンプ28の駆動に必要な負荷を平滑化でき、負荷変動に伴うショックの発生を回避することができる。
【0046】
制御ユニット40は、非過給条件成立時、第1設定温度T1以上において、デューティ比95%の冷却水量をインタクーラ24に供給し、第1設定温度T1よりも低く設定された第2設定温度T2未満において、デューティ比40%の冷却水量をインタクーラ24に供給し、第1設定温度T1と第2設定温度T2の間において、間欠供給手段を介して冷却水の間欠供給を行っている。この構成によれば、第1設定温度T1以上において、インタクーラ24等各種機器の高温に起因する熱害を回避することができ、第2設定温度T2未満において、故障診断等制御系に係る低温に起因する不具合を回避することができる。
【0047】
過給機22が、エンジン1によって駆動される機械式過給機とされると共に電磁クラッチ23の制御によりエンジン1に対する連結状態を切換可能に構成されたため、電磁クラッチ23を介して切替可能に構成された機械式過給機を備えたエンジン1において、燃費改善を図りつつ冷却水温の検出精度を確保することができる。
【0048】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、過給条件成立時、第1設定温度T1以上の領域C2のデューティ比(95%)を第1設定温度T1未満の領域C3,C4のデューティ比(40%)よりも増加した例を説明したが、設定温度を増加してデューティ比を多段に切替えても良い。また、デューティ比を冷却水温に応じてリニアに制御しても良い。
【0049】
2〕前記実施形態においては、非過給条件成立時、領域C3で60sec周期、領域C4で10sec周期の例を説明したが、少なくとも、間欠的に冷却水を供給できれば良く、各領域の周期及びデューティ比は任意に設定可能である。また、領域C3,C4において、冷却水量が同じになるように設定した例を説明したが、敢えて冷却水量を異ならせることも可能である。
【0050】
3〕前記実施形態においては、SI燃焼及びSPCCI燃焼可能なエンジン1を対象とした例を説明したが、SI燃焼のみを行うエンジンにも適用可能である。
また、低回転高負荷領域で過給機をオン状態にする例を説明したが、低回転高負荷領域及び高回転領域、或いは回転数に拘らず高負荷領域で過給機をオン状態にしても良い。
【0051】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。