特開2020-204299(P2020-204299A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204299(P2020-204299A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】車両の排熱回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20201127BHJP
   F01N 13/14 20100101ALI20201127BHJP
【FI】
   F01N5/02 Z
   F01N13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-112985(P2019-112985)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】市原 祐飛
(72)【発明者】
【氏名】池尾 真彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 多香子
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA09
3G004EA01
3G004EA03
3G004EA05
(57)【要約】
【課題】車両の排熱回収装置を改善する。
【解決手段】車両の排熱回収装置10は、排気管3の中央から外側へずれた位置において、排気管3の延在方向に沿って回転可能に設けられる回転軸13と、回転軸13により一端縁が軸支される熱交換器12と、熱交換器12を回転軸13の周囲で回転駆動する回転アクチュエータ17と、を有する。回転アクチュエータ17は、排熱を回収しない場合、熱交換器12を、排気管3の延在方向に沿うように倒姿勢とし、排熱を回収する場合、熱交換器12を、倒姿勢から回転させて排気管3において立てる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの排気ガスを排出する排気管の中央から外側へずれた位置において、前記排気管の延在方向に沿って回転可能に設けられる回転軸と、
前記回転軸により一端縁が軸支される熱交換器と、
前記熱交換器を前記回転軸の周囲で回転駆動する回転アクチュエータと、
を有し、
前記回転アクチュエータは、
排熱を回収しない場合、前記熱交換器を、前記排気管の延在方向に沿うように倒姿勢とし、
排熱を回収する場合、前記熱交換器を、前記倒姿勢から回転させて前記排気管において立てる、
車両の排熱回収装置。
【請求項2】
前記排気管には、周面の一部を外へ凸にしてなる収容凹部を形成し、
前記回転軸は、前記収容凹部において前記排気管の周面と接する方向に延在するように設けられ、
前記熱交換器は、倒姿勢において前記収容凹部に収容される、
請求項1記載の車両の排熱回収装置。
【請求項3】
前記回転軸は、前記収容凹部において倒姿勢の前記熱交換器より上流側に位置する、
請求項2記載の車両の排熱回収装置。
【請求項4】
前記収容凹部を覆う断熱カバーと、
前記断熱カバーを前記収容凹部からずらすように駆動する開閉アクチュエータと、
を有し、
前記開閉アクチュエータは、
排熱を回収しない場合、前記断熱カバーにより前記収容凹部を覆い、
排熱を回収する場合、前記断熱カバーを前記収容凹部からずらす、
請求項2または3記載の車両の排熱回収装置。
【請求項5】
前記熱交換器の表面を覆う断熱シャッタと、
前記熱交換器の表面を露出するように前記断熱シャッタを駆動する開閉アクチュエータと、
を有し、
前記開閉アクチュエータは、
排熱を回収しない場合、前記断熱シャッタにより前記熱交換器の表面を覆い、
排熱を回収する場合、前記断熱シャッタの表面を露出する、
請求項2または3記載の車両の排熱回収装置。
【請求項6】
車両のエンジンの排気ガスを排出する排気管に形成される開口と、
前記開口についての前記排気管の延在方向の中央部において、前記排気管の延在方向に沿って回転可能に設けられる回転軸と、
前記開口を塞ぐように前記回転軸により軸支される閉塞材と、
前記閉塞材に対して立設するように、一端部が前記回転軸に軸支される熱交換器と、
前記熱交換器を前記回転軸の周囲で回転駆動する回転アクチュエータと、
を有し、
前記回転アクチュエータは、
排熱を回収しない場合、前記熱交換器が前記開口の外に位置する状態で前記閉塞材が前記開口を塞ぐように回転駆動し、
排熱を回収する場合、前記熱交換器が前記開口の内に位置する状態で前記閉塞材が前記開口を塞ぐように回転駆動する、
車両の排熱回収装置。
【請求項7】
前記熱交換器は、前記開口の内に位置する際に、前記排気管の全体を塞ぐことがないように形成される、
請求項6記載の車両の排熱回収装置。
【請求項8】
前記回転アクチュエータは、
前記熱交換器を流れる熱媒体の温度が高温になると、前記熱交換器を倒すように回転駆動する、
請求項1から7のいずれか一項記載の車両の排熱回収装置。
【請求項9】
前記熱交換器は、前記排気管において触媒装置より下流側に設けられる、
請求項1から8のいずれか一項記載の車両の排熱回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、エンジンで空気と燃料との混合気を燃焼して、燃焼後の排気ガスを排気管から排出している。
このような車両では、エンジンでの燃焼により高温高圧となっている排気ガスの排熱を回収する装置が用いられることがある。
特許文献1または特許文献2の車両の排熱回収装置では、車両のエンジンの排気ガスを排出する排気管に分岐管を設け、分岐管に排熱回収用の熱交換器を設ける。熱交換器は、分岐管を流れる排気ガスから熱交換により排熱を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−312884号公報
【特許文献2】特開2008−133783号公報
【特許文献3】特開2009−013838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気管に分岐管を設ける場合、車両には分岐管を設けるための大きなスペースを新たに確保する必要がある。しかも、単に熱交換器を設ける場合とくらべて、少なくとも分岐管により、車両の重量が余分に増加する。
【0005】
そこで、特許文献3のように、車両のエンジンの排気ガスを排出する排気管に、熱交換器を回転可能に設けることが考えられる。
しかしながら、特許文献3の熱交換器は、排気管の中央に設けられる回転軸により軸支されている。
この場合、排熱を利用しない場合でも、熱交換器は、排気管の中央において排気管の延在方向に沿うように倒姿勢となって、排気管での排気ガスの流路の中央に存在する。排気管での排気ガスの流れは、熱交換器により常に妨げられる。排気管は、所定の流量を得るためには、その妨げを考慮して、排気のために本来的に必要とされるサイズより大径に形成しなければならない。排熱回収をするために、排気管を含めた車両の全体的な設計に影響を与える可能性がある。
しかも、特許文献3の熱交換器は、排熱を利用しない場合でも、常に高温の排気ガスにさらされる。常に高温の排気ガスにさらされる熱交換器により、熱交換器を流れる熱媒体が必要以上に高温に加熱されてしまう可能性がある。
【0006】
このように、車両の排熱回収装置は、改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の排熱回収装置は、車両のエンジンの排気ガスを排出する排気管の中央から外側へずれた位置において、前記排気管の延在方向に沿って回転可能に設けられる回転軸と、前記回転軸により一端縁が軸支される熱交換器と、前記熱交換器を前記回転軸の周囲で回転駆動する回転アクチュエータと、を有し、前記回転アクチュエータは、排熱を回収しない場合、前記熱交換器を、前記排気管の延在方向に沿うように倒姿勢とし、排熱を回収する場合、前記熱交換器を、前記倒姿勢から回転させて前記排気管において立てる。
【0008】
好適には、前記排気管には、周面の一部を外へ凸にしてなる収容凹部を形成し、前記回転軸は、前記収容凹部において前記排気管の周面と接する方向に延在するように設けられ、前記熱交換器は、倒姿勢において前記収容凹部に収容される、とよい。
【0009】
好適には、前記回転軸は、前記収容凹部において倒姿勢の前記熱交換器より上流側に位置する、とよい。
【0010】
好適には、前記収容凹部を覆う断熱カバーと、前記断熱カバーを前記収容凹部からずらすように駆動する開閉アクチュエータと、を有し、前記開閉アクチュエータは、排熱を回収しない場合、前記断熱カバーにより前記収容凹部を覆い、排熱を回収する場合、前記断熱カバーを前記収容凹部からずらす、とよい。
【0011】
好適には、前記熱交換器の表面を覆う断熱シャッタと、前記熱交換器の表面を露出するように前記断熱シャッタを駆動する開閉アクチュエータと、を有し、前記開閉アクチュエータは、排熱を回収しない場合、前記断熱シャッタにより前記熱交換器の表面を覆い、排熱を回収する場合、前記断熱シャッタの表面を露出する、とよい。
【0012】
本発明に係る他の車両の排熱回収装置は、車両のエンジンの排気ガスを排出する排気管に形成される開口と、前記開口についての前記排気管の延在方向の中央部において、前記排気管の延在方向に沿って回転可能に設けられる回転軸と、前記開口を塞ぐように前記回転軸により軸支される閉塞材と、前記閉塞材に対して立設するように、一端部が前記回転軸に軸支される熱交換器と、前記熱交換器を前記回転軸の周囲で回転駆動する回転アクチュエータと、を有し、前記回転アクチュエータは、排熱を回収しない場合、前記熱交換器が前記開口の外に位置する状態で前記閉塞材が前記開口を塞ぐように回転駆動し、排熱を回収する場合、前記熱交換器が前記開口の内に位置する状態で前記閉塞材が前記開口を塞ぐように回転駆動する。
【0013】
好適には、前記熱交換器は、前記開口の内に位置する際に、前記排気管の全体を塞ぐことがないように形成される、とよい。
【0014】
好適には、前記回転アクチュエータは、前記熱交換器を流れる熱媒体の温度が高温になると、前記熱交換器を倒すように回転駆動する、とよい。
【0015】
好適には、前記熱交換器は、前記排気管において触媒装置より下流側に設けられる、とよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、車両の排熱回収装置の熱交換器は、車両のエンジンの排気ガスを排出する排気管の中央から外側へずれた位置において、前記排気管の延在方向に沿って回転可能に設けられる回転軸により一端縁が軸支される。そして、回転アクチュエータは、前記熱交換器を前記回転軸の周囲で回転駆動する。
たとえば排熱を回収しない場合、回転アクチュエータは、前記熱交換器を、前記排気管の延在方向に沿うように倒姿勢とする。倒姿勢の熱交換器は、熱交換器の全体が排気管の中央から外へずれた位置になる。したがって、倒姿勢の熱交換器は、排気管を流れる排気ガスの流れを分断し難くなる。熱交換器が倒れている状態での排気ガスの流れは、排気管についての熱交換器の上流側の部位および下流側の部位と同様に、1つの流れとなりえる。排気ガスは、熱交換器が配置される部位を含めて、排気管を効率よく流れる。
これに対して、仮にたとえば熱交換器が排気管の中央の位置において回転可能に設けられる回転軸により軸支されている場合、熱交換器が排気管の延在方向に沿うように倒姿勢となったとしても、その全体が排気管の中央に残存する。排気管の中央で倒れている熱交換器により、排気ガスは、2つの流れに分断される。熱交換器の上流側において1つの流れになっている排気ガスは、熱交換器により二分され、熱交換器の下流側において再合流して1つの流れに戻る。この場合、熱交換器の下流側では、熱交換器の下流側へ巻き込まれるように2つの相反する向きの流れが合流する。2つの相反する向きの流れが合流すると、渦流が発生する。排気管において渦流が発生すると、排気管の延在方向に沿った排気ガスの流れが阻害され、排気効率が低下する。しかも、熱交換器により排気効率が定常的に低下するため、所定の流量を得るためには、排気管は、その低下分を補うように、熱交換器が無い場合より大径に形成しなければならない。排熱回収するために、排気管を大径化すると、車両の全体的な設計にも影響が生じえる。本発明では、このように排気管を大径化することなく、排気管に熱交換器を設けて、その排気管での排気ガスの流量を確保することが可能である。
また、本発明では、排熱回収用の熱交換器が排気管の内部において回転可能に設けられる。したがって、本発明では、排熱回収用の熱交換器を設けるために、排気管に分岐管を接続してその分岐管に熱交換器を設ける必要がない。本発明の排熱回収装置は、既存の排気管の内部空間を好適に使用して排気管の外に必要となるスペースを必要最小限とすることができ、車両において小型に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車の説明図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る自動車の排気管に設けられる排熱回収装置の機械的な構成の説明図である。
図3図3は、図2の排熱回収装置の制御系の説明図である。
図4図4は、図3の排熱回収ECUによる排熱回収制御のフローチャートである。
図5図5は、第一実施形態に係る排熱回収装置の第一変形例の説明図である。
図6図6は、第一実施形態に係る排熱回収装置の第二変形例の説明図である。
図7図7は、本発明の第二実施形態に係る自動車の排気管に設けられる排熱回収装置の機械的な構成の説明図である。
図8図8は、第二実施形態に係る排熱回収装置の変形例の説明図である。
図9図9は、本発明の第三実施形態に係る自動車の排気管に設けられる排熱回収装置の機械的な構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。自動車1は、車体の前部に配置されるエンジン2、排気管3、を有する。排気管3は、車体の前部から後縁までに延在する。自動車1は、エンジン2で空気と燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを排気管3から外へ排出する。排気管3の途中には、触媒装置4が設けられる。触媒装置4は、排気ガスに含まれる窒素酸化物などを吸着または無害化する。エンジン2が多気筒である場合、排気管3として集合管を用いてよい。この場合、排気ガスは、エンジン2の複数の気筒からの排気に応じた脈動をしながら排気管3を上流側から下流へ移動し、排気管3から排気されることになる。
【0020】
ところで、このような自動車1では、エンジン2での燃焼により高温高圧となっている排気ガスから排熱を回収する装置が用いることがある。従来の自動車1の排熱回収装置10では、自動車1のエンジン2の排気ガスを排出する排気管3に分岐管を設け、分岐管に排熱回収用の熱交換器12を設けている。熱交換器12は、分岐管を流れる排気ガスから熱交換により排熱を回収する。しかしながら、排気管3に分岐管を設ける場合、自動車1には分岐管を設けるための大きなスペースを新たに確保する必要がある。しかも、単に熱交換器12を設ける場合とくらべて、少なくとも分岐管により、自動車1の重量が余分に増加する。自動車1に排熱回収装置10を設けるために、自動車1の設計を変更することは、排熱回収装置10の利用の妨げになる。
このように、自動車1の排熱回収装置10は、改善することが求められている。
【0021】
図2は、本発明の第一実施形態に係る自動車1の排気管3に設けられる排熱回収装置10の機械的な構成の説明図である。
図2には、自動車1の排気管3に設けられる排熱回収装置10の機械的な構成として、収容凹部11、熱交換器12、回転軸13、断熱カバー14、が図示されている。
図2(A)は、熱交換器12を排気管3の延在方向に沿う倒姿勢にして収容凹部11に収容し、断熱カバー14により収容凹部11を塞いだ状態である。
図2(B)は、断熱カバー14を移動させて収容凹部11を開き、熱交換器12を倒姿勢から回転させて排気管3の内で立てた状態である。
【0022】
熱交換器12は、たとえば熱媒体が流れる細管を互いに隙間を開けて折り重ね、全体として略薄板の外形形状に形成される。熱交換器12は、排気管3の内に設けられる。排気管3の内に設けられる熱交換器12は、排気管3の延在方向に沿って上流側から下流側へ流れる高温高圧の排気ガスの排熱を、熱交換器12を流れる冷却水などの熱媒体へ伝える。熱交換器12は、排気ガスの排熱を熱媒体へ伝える熱交換を実行する。
熱媒体は、たとえば図示外の自動車1の空調装置の熱媒体の循環サイクルと連結される。この場合、熱交換器12において排気ガスの排熱により温められた熱媒体は、循環サイクルを通じて空調装置のヒータコアへ供給される。ヒータコアは、排気ガスから回収された排熱により、自動車1の室内へ供給される空気を温める。排気ガスから回収された排熱は、自動車1の車室の暖房に利用できる。排気ガスから回収された排熱は、この他にもたとえば、自動車1のバッテリの周囲に張り巡らされた熱媒体の循環サイクルと連結されて、バッテリを加温するために用いられてよい。また、排気ガスから回収された排熱は、熱交換器12と発電タービンとの間で熱媒体を循環ざせる循環サイクルにより、発電タービンを回転駆動して発電に用いられてよい。
【0023】
収容凹部11は、たとえば略円筒形状の排気管3の周面の一部を外へ凸にすることにより排気管3に形成される。
収容凹部11は、略薄板状の熱交換器12より一回り大きいサイズの略立方体の内形状を有する。これにより、図2(A)に示すように、略薄板状の熱交換器12は、排気管3の延在方向に沿って倒した倒姿勢において、その全体を収容凹部11に収容できる。
収容凹部11は、図1に示すように、排気管3において触媒装置4より下流側となる位置に形成される。これにより、熱交換器12は、排気管3において触媒装置4より下流側に設けられる。熱交換器12には、触媒装置4より温度および圧力の脈動が緩和された排気ガスが供給される。熱交換器12には、エンジン2から排気される非常に高温高圧の脈動する排気ガスに直接的にさらされなくなる。
【0024】
回転軸13は、後述する回転アクチュエータ17により回転駆動される軸部材である。回転軸13は、収容凹部11に回転可能に設けられる。回転軸13は、略円筒形状の排気管3の中心から外周側へずれた位置に設けられる。
回転軸13は、収容凹部11において、略円筒形状の排気管3の周面と接する接線方向に沿って延在するように設けられる。この場合、回転軸13は、排気管3の延在方向に沿って回転可能に設けられる。
回転軸13は、収容凹部11についての上流側の部位に設けられる。
略薄板状の熱交換器12は、収容凹部11に収容される倒姿勢における上流側の一端縁において、回転軸13により軸支される。回転軸13は、収容凹部11において倒姿勢にある熱交換器12のり上流側に位置する。この場合、図2(A)の倒姿勢にある略薄板状の熱交換器12は、排気管3の延在方向に沿って回転する回転軸13の回転にしたがって倒姿勢から回転して排気管3の内へ向かって立ち上がる。排気管3の内に立ち上がった略薄板状の熱交換器12は、図2(B)に示すように、排気管3の内部の略全体に位置する。排気管3を流れる排気ガスは、ほぼ熱交換器12を通過することになる。
【0025】
断熱カバー14は、収容凹部11についての排気管3への開口より一回り大きい板形状を有する。断熱カバー14は、排気管3と同様の材料で形成されたベース材と、ベース材の表面に貼着された断熱材との積層構造でよい。断熱カバー14は、収容凹部11を覆う位置と、収容凹部11から外れるようにずらした位置との間で移動できるように、排気管3の内に設けられる。断熱カバー14は、たとえば排気管3の延在方向へ移動可能である場合、排気管3の周面に沿って湾曲してよい。図2(A)の閉位置にある断熱カバー14は、排気管3の延在方向に沿って移動して、図2(B)に示すように収容凹部11から外れる。断熱カバー14が図2(B)の開位置にある場合、収容凹部11について倒姿勢に収容されていた略薄板状の熱交換器12は、排気管3の内へ向かって立ち上がる立姿勢に回転駆動可能になる。
【0026】
図3は、図2の排熱回収装置10の制御系の説明図である。
図3の排熱回収装置10の制御系は、熱媒体温度センサ15、タイマ16、回転アクチュエータ17、開閉アクチュエータ18、およびこれらが接続される排熱回収ECU19、を有する。
【0027】
熱媒体温度センサ15は、熱交換器12に循環する熱媒体の温度を検出する。熱媒体温度センサ15は、たとえば図2に示すように熱交換器12から排出される熱媒体の流路に設けられる。
タイマ16は、経過時間や時刻を計測する。
回転アクチュエータ17は、回転軸13を回転駆動する。これにより、熱交換器12は、回転軸13の周囲で回転駆動されて、倒姿勢と立姿勢との間で切り替わる。回転アクチュエータ17は、たとえばモータでよい。回転アクチュエータ17は、回転軸13を回転駆動するとともに、回転軸13を任意の回転量で保持可能でよい。回転軸13を任意の回転量で保持するために、任意のラチェット機構などを用いてよい。
開閉アクチュエータ18は、断熱カバー14を収容凹部11からずらすように移動駆動する。開閉アクチュエータ18は、たとえば断熱カバー14を閉位置に維持する付勢力に抗して開位置まで移動駆動するモータでよい。
【0028】
排熱回収ECU19は、排熱回収装置10のセンサの検出信号などに基づいて、排熱回収装置10の各部の作動または停止を制御する。
排熱回収ECU19は、自動車1を制御するために自動車1に設けられる複数のECUの一種である。図3には、この他にもエンジンECU21、空調ECU22、バッテリ管理ECU23、充電ECU24、が例示されている。これら複数のECUは、自動車1に設けられる車載ネットワーク20により双方向通信可能に接続される。
たとえばエンジンECU21は、寒い冬季においてエンジン2を始動すると、エンジン2始動を空調ECU22へ通知する。空調ECU22は、エンジン2始動の通知を受けた際に車室へ供給する空気をヒータコアにより加熱する必要がある場合、エンジン2に循環させていた熱媒体を排熱回収装置10に循環して加熱するために、排熱回収開始要求を排熱回収ECU19へ送信する。排熱回収ECU19は、開閉アクチュエータ18および回転アクチュエータ17を制御し、断熱カバー14を開位置に制御するとともに熱交換器12を立姿勢に制御する。これにより、空調ECU22は、始動直後であるために温まっていないエンジン2へ熱媒体を循環させるのではなく、エンジン2で燃焼された高温の排気ガスから排熱を回収する排熱回収装置10へ熱媒体を循環させて、エンジン2が温まる前に排気ガスで温めた暖気を車室へ供給することができる。
また、エンジン2が温まると、排熱回収ECU19は、空調ECU22からの排熱回収終了要求に基づいて開閉アクチュエータ18および回転アクチュエータ17を制御し、熱交換器12を倒姿勢に制御するとともに断熱カバー14を閉位置に制御する。これにより、熱媒体は、排熱回収装置10において加熱され難くなる。空調ECU22は、温まったエンジン2に熱媒体を循環させて、暖気を車室へ供給することができる。
【0029】
図4は、図3の排熱回収ECU19による排熱回収制御のフローチャートである。
排熱回収ECU19は、たとえば自動車1が起動されている期間において、または自動車1に乗員が乗車している期間において、図4の排熱回収制御を繰り返し実行する。
排熱回収装置10において、排熱回収ECU19は、起動時の初期状態において図2(A)に示すように熱交換器12を倒姿勢に制御して収容凹部11に収容し、断熱カバー14により収容凹部11を覆う。これにより、熱交換器12は、排気管3の内の排気ガスの流路から分離された状態に格納される。排気管3の内の排気ガスの排熱は、熱交換器12に略伝わらない。排熱回収装置10の熱交換器12は、排熱を回収しない。
【0030】
図4のステップST1において、排熱回収ECU19は、熱交換器12による排熱回収開始要求の有無を判断する。たとえば空調ECU22は、排熱回収が必要になると、車載ネットワーク20を通じて排熱回収開始要求を排熱回収ECU19へ送信する。排熱回収開始要求がない場合、排熱回収ECU19は、図4の排熱回収制御を終了する。排熱回収開始要求がある場合、排熱回収ECU19は、処理をステップST2へ進める。
【0031】
ステップST2において、排熱回収ECU19は、排熱回収開始要求に基づいて、開閉アクチュエータ18により断熱カバー14を移動駆動する。開閉アクチュエータ18は、断熱カバー14を、収容凹部11を塞ぐ閉位置から図2(B)に示す開位置へずらす。
【0032】
ステップST3において、排熱回収ECU19は、回転アクチュエータ17により熱交換器12を回転駆動する。回転アクチュエータ17は、熱交換器12を、倒姿勢から回転させて、図2(B)に示す立姿勢に回動する。これにより、熱交換器12は、最大に回転して排気管3において立ち、排気管3を流れる排気ガスの排熱を効率よく熱媒体へ伝達する。熱媒体は、高温高圧の排気ガスにより加熱される。
【0033】
ステップST4において、排熱回収ECU19は、熱媒体温度センサ15から熱媒体の検出温度を取得し、検出温度が上限温度と比較する。上限温度は、たとえば熱媒体の使用温度範囲の上限温度でよい。また、上限温度は、熱媒体の上限の耐熱温度でもよい。検出温度が上限温度以上である場合、排熱回収ECU19は、処理をステップST5へ進める。検出温度が上限温度より低い場合、排熱回収ECU19は、処理をステップST7へ進める。
【0034】
ステップST5において、排熱回収ECU19は、後述するステップST6での前回の調整の後に所定の調整後期間が経過したか否かを判断する。排熱回収ECU19は、タイマ16の計測時間に基づいて、前回の調整から調整後期間が経過したか否かを判断してよい。調整後期間は、たとえば後述するステップST6での熱交換器12の角度調整の後に、その調整後の状態において排気ガスから熱媒体への熱交換が平衡状態となり得る時間に相当する期間とすればよい。調整後期間が経過している場合、再調整のために、排熱回収ECU19は、処理をステップST6へ進める。調整後期間が経過していない場合、排熱回収ECU19は、処理をステップST7へ進める。
【0035】
ステップST6において、排熱回収ECU19は、熱媒体の加熱を抑制するための制御を実行する。
たとえば、排熱回収ECU19は、熱媒体を排気管3において倒すように、回転アクチュエータ17により熱交換器12を所定量で回転駆動する。回転アクチュエータ17は、熱交換器12を流れる熱媒体の温度が高温になると、熱交換器12を倒すように回転駆動する。これにより、熱交換器12についての排気管3での立角度が小さくなり、熱交換器12を通過する排気ガスの量が減り、熱媒体へ伝達される熱量が減る。
また、熱交換器12を複数回にわたって倒した場合、熱交換器12は、最終的には収容凹部11に収容されるまで倒れる。熱交換器12は、断熱カバー14を開いた収容凹部11に倒姿勢で収容され得る。この状態でも熱媒体が加熱されている場合、排熱回収ECU19は、開閉アクチュエータ18により断熱カバー14を移動駆動する。これにより、倒姿勢の熱交換器12を収容している収容凹部11は、断熱カバー14により塞がれる。なお、排熱回収ECU19は、断熱カバー14を開位置から閉位置までの移動を複数回の制御に分けてもよい。
【0036】
ステップST7において、排熱回収ECU19は、排熱回収終了要求の有無を判断する。たとえば空調ECU22は、排熱回収が不要になると、車載ネットワーク20を通じて排熱回収終了要求を排熱回収ECU19へ送信する。排熱回収終了要求がない場合、排熱回収ECU19は、処理をステップST4へ戻す。排熱回収ECU19は、排熱回収終了要求があるまで、ステップST4からステップST7までの処理を繰り返す。この間、熱交換器12は、排気ガスの排熱を熱媒体へ伝え続ける。排熱回収終了要求がある場合、排熱回収ECU19は、処理をステップST8へ進める。
【0037】
ステップST8において、排熱回収ECU19は、排熱を回収しないように、回転アクチュエータ17により熱交換器12を倒姿勢に回転駆動する。回転アクチュエータ17は、熱交換器12を、排気管3の延在方向に沿うように倒姿勢に回転駆動する。
ステップST9において、排熱回収ECU19は、開閉アクチュエータ18により断熱カバー14を移動駆動する。開閉アクチュエータ18は、断熱カバー14を、収容凹部11を覆う閉位置まで移動駆動する。熱交換器12は、断熱カバー14に覆われた収容凹部11に収容され、排気ガスの排熱から分離される。
【0038】
以上のように、本実施形態では、自動車1の排熱回収装置10の熱交換器12は、自動車1のエンジン2の排気ガスを排出する排気管3の中央から外側へずれた位置において、ここでは排気管3の周面と接するようになる位置において、排気管3の延在方向に沿って回転可能に設けられる回転軸13により一端縁が軸支される。そして、回転アクチュエータ17は、熱交換器12を回転軸13の周囲で回転駆動する。
【0039】
たとえば排熱を回収しない場合、回転アクチュエータ17は、熱交換器12を、排気管3の延在方向に沿うように倒姿勢とする。倒姿勢の熱交換器12は、熱交換器12の全体が排気管3の中央から外へずれた位置になる。したがって、倒姿勢の熱交換器12は、排気管3を流れる排気ガスの流れを分断し難くなる。熱交換器12が倒れている状態での排気ガスの流れは、排気管3についての熱交換器12の上流側の部位および下流側の部位と同様に、1つの流れとなりえる。排気ガスは、熱交換器12が配置される部位を含めて、排気管3を効率よく流れる。
これに対して、仮にたとえば熱交換器12が排気管3の中央の位置において回転可能に設けられる回転軸13により軸支されている場合、熱交換器12が排気管3の延在方向に沿うように倒姿勢となったとしても、その全体が排気管3の中央に残存する。排気管3の中央で倒れている熱交換器12により、排気ガスは、2つの流れに分断される。熱交換器12の上流側において1つの流れになっている排気ガスは、熱交換器12により二分され、熱交換器12の下流側において再合流して1つの流れに戻る。この場合、熱交換器12の下流側では、熱交換器12の下流側へ巻き込まれるように2つの相反する向きの流れが合流する。2つの相反する向きの流れが合流すると、渦流が発生する。排気管3において渦流が発生すると、排気管3の延在方向に沿った排気ガスの流れが阻害され、排気効率が低下する。しかも、熱交換器12により排気効率が定常的に低下するため、所定の流量を得るためには、排気管3は、その低下分を補うように、熱交換器12が無い場合より大径に形成しなければならない。排熱回収するために、排気管3を大径化すると、自動車1の全体的な設計にも影響が生じえる。本実施形態では、このように排気管3を大径化することなく、排気管3に熱交換器12を設けて、その排気管3での排気ガスの流量を確保することが可能である。
【0040】
しかも、本実施形態では、排熱を回収する場合、回転アクチュエータ17は、熱交換器12を、倒姿勢から回転させて排気管3に立てる。これにより、熱交換器12にあたって通過する排気ガスの量を増やして、熱交換器12は、排気ガスの排熱を効率よく回収することができる。しかも、この立てた状態においても、熱交換器12は、排気管3の外周の近くから中央へ向けて立っているので、立っている熱交換器12についての回転軸13の側の一端縁と排気管3との間へ向かうような排気ガスの流れは生じ難い。したがって、排気管3において熱交換器12が立っている状態においても、排気ガスの流れは、熱交換器12により二分されにくい。排気ガスの流れは、立っている熱交換器12を通過する際に大きな2つの流れに二分されにくくなり、熱交換器12の上流側から下流側にかけて1つの流れを維持し得る。
【0041】
また、本実施形態では、排熱回収用の熱交換器12が排気管3の内部において回転可能に設けられる。したがって、本実施形態では、排熱回収用の熱交換器12を設けるために、排気管3に分岐管を接続してその分岐管に熱交換器12を設ける必要がない。本実施形態の排熱回収装置10は、既存の排気管3の内部空間を好適に使用して、排気管3の外側に必要となるスペースを必要最小限とすることができ、自動車1において小型に設けることができる。自動車1の全体的な設計を、排熱回収装置10を設けるために変更する必要はない。
【0042】
本実施形態では、倒姿勢の熱交換器12は、回転軸13とともに、排気管3の周面の一部を外へ凸にしてなる収容凹部11に収容される。熱交換器12が倒姿勢にある状態での排気管3の断面は、熱交換器12の上流側の部位での断面や、下流側の部位での断面と同等のものになる。本実施形態では、熱交換器12が倒れている状態において、熱交換器12による排気ガスの圧損をほぼ無くすことができる。
【0043】
本実施形態では、回転軸13は、収容凹部11において倒姿勢の熱交換器12より上流側に位置する。これにより、倒位置から回転駆動されて排気管3の内側で立ち上がる熱交換器12は、排気ガスの流れの下流側から上流側へ向かうように回転して立ち上がる。
これに対して、仮にたとえば回転軸13が倒姿勢の熱交換器12より下流側に位置する場合、熱交換器12は、排気ガスの流れの上流側から下流側へ向かうように回転して立ち上がる。斜めの姿勢にある熱交換器12は、排気管3での排気ガスの流れの一部を直接的に巻き込んで、二分する。斜め状態にある熱交換器12によって、高い圧損が生じやすい。本実施形態では、このように高い圧損を生じ難くできる。
【0044】
本実施形態では、収容凹部11に対して、それを覆う断熱カバー14を設ける。そして、開閉アクチュエータ18は、断熱カバー14を収容凹部11からずらすように駆動する。たとえば排熱を回収しない場合、開閉アクチュエータ18は、断熱カバー14により収容凹部11を覆う。断熱カバー14により覆われる収容凹部11の内部には、排気管3を流れる排気ガスの熱が伝わり難くなる。収容凹部11に収容される倒姿勢の熱交換器12には、排気ガスの熱が伝わり難くなる。
しかも、排熱を回収する場合には、開閉アクチュエータ18は、断熱カバー14を収容凹部11からずらす。したがって、熱交換器12には、収容凹部11に収容される倒姿勢であっても、排気ガスの熱が伝わるようになる。また、回転アクチュエータ17が、熱交換器12を倒姿勢から回転駆動することで、熱交換器12は、排気ガスの排熱を効率よく回収できる。
【0045】
本実施形態では、回転アクチュエータ17は、熱交換器12を流れる熱媒体の温度が高温になると、熱交換器12を倒すように回転駆動する。これにより、熱交換器12を流れる熱媒体の温度が、異常に高温となることが起きないようにできる。
【0046】
本実施形態では、熱交換器12は、排気管3において触媒装置4より下流側に設けられる。よって、排熱回収装置10は、エンジン2から排気される非常に高温高圧の排気ガスではなく、触媒装置4において温度および圧力が低下した排気ガスから、排気ガスの排熱を回収することができる。排熱回収装置10の熱交換器12などには、エンジン2から排気される非常に高温高圧の排気ガスに耐えられるように高性能な材料を使用しないでよい。
【0047】
図5は、第一実施形態に係る自動車1の排熱回収装置10の第一変形例の説明図である。
図5(A)は、熱交換器12を排気管3の延在方向に沿う倒姿勢にして収容凹部11に収容した状態である。
図5(B)は、熱交換器12を倒姿勢から回転させて排気管3の内で立てた状態である。
図5の排熱回収装置10は、断熱カバー14を有さない。この場合でも、熱交換器12を、収容凹部11に収まるように倒姿勢と、排気管3において立つ立姿勢との間で切り替えるように回転駆動することにより、排気ガスの排熱を熱交換器12により効率よく回収したり、熱交換器12により回収し難くしたりできる。
【0048】
図6は、第一実施形態に係る自動車1の排熱回収装置10の第二変形例の説明図である。
図6(A)は、熱交換器12を排気管3の延在方向に沿う倒姿勢にした状態である。
図6(B)は、熱交換器12を倒姿勢から回転させて排気管3の内で立てた状態である。
図6の排熱回収装置10は、収容凹部11を有さない。この場合、回転軸13は、排気管3の中に設けられる。ただし、図6では、回転軸13は、排気管3の中央から外側へずれた位置に、ここでは排気管3の周面と接する程度に外側へずれた位置に設けられる。この場合、倒姿勢に制御される熱交換器12は、排気管3の外周に沿うように、排気管3の中央から外側へずれた位置において倒れる。排気管3の中央において倒姿勢にする場合と比べて、排気ガスの流れは、熱交換器12により二分され難い。
【0049】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の排熱回収装置10について説明する。以下の説明では、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。上述した実施形態と同様の構成要素については、上述した実施形態と同じ符号を使用し、その説明を省略する。
【0050】
図7は、本発明の第二実施形態に係る自動車1の排気管3に設けられる排熱回収装置10の機械的な構成の説明図である。
図7(A)は、熱交換器12を排気管3の延在方向に沿う倒姿勢にして収容凹部11に収容した状態である。
図7(B)は、熱交換器12を倒姿勢から回転させて排気管3の内側で立てた状態である。
【0051】
図7の排熱回収装置10は、収容凹部11に対して設けられる断熱カバー14の替わりに、熱交換器12の表面を覆う断熱シャッタ31、を有する。
断熱シャッタ31は、熱交換器12の表面において上下方向に配列される複数の短冊形状の板で構成される。各短冊形状の板は、その下縁において熱交換器12の表面に取り付けられる。
この場合、たとえば図7(B)に示すように熱交換器12が立姿勢にあるとき、各短冊形状の板は、その上縁が熱交換器12の表面から離れるように開く。
また、たとえば図7(A)に示すように熱交換器12が倒姿勢にあるとき、各短冊形状の板は、熱交換器12の表面に沿って閉じる。
【0052】
そして、排熱回収ECU19は、図4と同様の制御により、熱交換器12による排熱の回収を制御する。
ただし、開閉アクチュエータ18は、図4のステップST2の替わりにステップST3に続く処理により、複数の短冊形状の板で構成される断熱シャッタ31を、熱交換器12の表面を露出するように駆動する。排熱を回収する場合、開閉アクチュエータ18は、熱交換器12の表面に対して断熱シャッタ31を開くように、断熱シャッタ31を開く。これにより、熱交換器12の表面が露出し、排気ガスは効率よく熱交換器12を通過できる。
また、開閉アクチュエータ18は、図4のステップST9の替わりにステップST8に先んじる処理により、複数の短冊形状の板で構成される断熱シャッタ31を、熱交換器12の表面を覆うように駆動する。排熱を回収しない場合、開閉アクチュエータ18は、断熱シャッタ31により熱交換器12の表面を覆うように、断熱シャッタ31を閉じる。
【0053】
以上のように、本実施形態では、熱交換器12の表面を覆う断熱シャッタ31を設ける。そして、開閉アクチュエータ18は、熱交換器12の表面を露出するように断熱シャッタ31を駆動する。たとえば排熱を回収しない場合、開閉アクチュエータ18は、断熱シャッタ31により熱交換器12の表面を覆う。断熱シャッタ31により表面が覆われる熱交換器12には、排気ガスの熱が伝わり難くなる。
しかも、排熱を回収する場合には、開閉アクチュエータ18は、断熱シャッタ31の表面を露出するように断熱シャッタ31を駆動する。したがって、熱交換器12には、排気ガスの熱が伝わるようになる。また、回転アクチュエータ17が、熱交換器12を倒姿勢から回転駆動することで、熱交換器12は、排気ガスの排熱を効率よく回収できる。
【0054】
本実施形態では、断熱シャッタ31は、開閉アクチュエータ18により駆動されることにより、熱交換器12の表面に対して開閉する。
この他にもたとえば、断熱シャッタ31は、熱交換器12が立姿勢となる場合に侍従により熱交換器12の表面に対して開くようにしてもよい。この場合でも、熱交換器12を倒姿勢とした場合には、断熱シャッタ31は、自重により熱交換器12の表面に対して閉じることができる。断熱シャッタ31は、自重により熱交換器12の表面に対して開閉できる。
【0055】
図8は、第二実施形態に係る自動車1の排熱回収装置10の変形例の説明図である。
図8(A)は、熱交換器12を排気管3の延在方向に沿う倒姿勢にした状態である。
図8(B)は、熱交換器12を倒姿勢から回転させて排気管3の内で立てた状態である。
図8の排熱回収装置10は、収容凹部11を有さない。熱交換器12は、排気管3の中において回転駆動される。このような場合でも、熱交換器12の表面に対して断熱シャッタ31を開閉することにより、排気ガスの排熱が熱交換器12に伝わり難くすることができる。
【0056】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る自動車1の排熱回収装置10について説明する。以下の説明では、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。上述した実施形態と同様の構成要素については、上述した実施形態と同じ符号を使用し、その説明を省略する。
【0057】
図9は、本発明の第三実施形態に係る自動車1の排気管3に設けられる排熱回収装置10の機械的な構成の説明図である。
図9(A)は、熱交換器12を収容凹部11に収容させた状態である。
図9(B)は、熱交換器12を排気管3の内に立てた状態である。
図9の排熱回収装置10において、回転軸13は、収容凹部11によって排気管3の周面に形成される開口についての排気管3の延在方向の中央部に設けられる。回転軸13は、排気管3の延在方向に沿って回転可能に設けられる。
【0058】
開口は、回転軸13により軸支される閉塞材32により閉塞される。
熱交換器12は、閉塞材32に対して立設するように、一端部が回転軸13に軸支される。
【0059】
そして、排熱回収ECU19は、図4と同様の排熱回収制御により、熱交換器12による排熱の回収を制御する。ただし、開閉アクチュエータ18を用いた処理であるステップST2、ステップST9は不要である。回転アクチュエータ17は、熱交換器12を回転軸13の周囲で回転駆動する。
たとえば、排熱を回収しない場合、回転アクチュエータ17は、図9(A)に示すように熱交換器12が開口の外側の収容凹部11に位置するように、熱交換器12を回転駆動する。回転アクチュエータ17は、開口が閉塞材32により塞がれる位置において、熱交換器12の回転駆動を停止する。
排熱を回収する場合、回転アクチュエータ17は、図9(B)に示すように熱交換器12が排気管3の内に位置するように、熱交換器12を回転駆動する。回転アクチュエータ17は、開口が閉塞材32により塞がれる位置において、熱交換器12の回転駆動を停止する。
また、本実施形態の熱交換器12は、図9(B)のように排気管3の内に位置する場合でも、排気管3の全体を塞ぐことがないサイズに形成されている。これにより、排気管3の全体を略塞ぐサイズに熱交換器12を形成した場合より熱交換の効率が低下するが、その分、熱媒体が異常に高温となり難くできる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、上述した実施形態と同様に、排熱回収用の熱交換器12を、排気管3において回転可能に設けているため、排熱回収用の熱交換器12を設けるために排気管3に対して分岐管を設けたりする必要がない。本発明の排熱回収装置10は、既存の排気管3の内部を好適に利用して、小型で、かつ追加のスペースを最小限とするように、自動車1に設けることができる。
【0061】
なお、本実施形態の熱交換器12の表面に、断熱シャッタ31を設けてもよい。
【0062】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるのもではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…自動車(車両)、2…エンジン、3…排気管、4…触媒装置、10…排熱回収装置、11…収容凹部、12…熱交換器、13…回転軸、14…断熱カバー、15…熱媒体温度センサ、16…タイマ、17…回転アクチュエータ、18…開閉アクチュエータ、19…排熱回収ECU、31…断熱シャッタ、32…閉塞材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9