【課題】低電圧下で使用された場合であっても過剰電流の発生を良好に抑制することができるハニカム構造体、電気加熱式ハニカム構造体、電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁13とを有する柱状のハニカム構造体10であって、隔壁13及び外周壁12が、少なくともケイ素を含有するセラミックスで構成されており、セラミックスにおけるケイ素の含有率が30質量%以上であり、ケイ素中のドーパントの濃度が、10
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体であって、
前記隔壁及び外周壁が、少なくともケイ素を含有するセラミックスで構成されており、
前記セラミックスにおけるケイ素の含有率が30質量%以上であり、
前記ケイ素中のドーパントの濃度が、1016〜5×1020個/cm3であるハニカム構造体。
前記隔壁及び外周壁が、さらに、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミからなる群より選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体であって、
前記隔壁及び外周壁が、セラミックスで構成されており、前記セラミックスが、
ケイ素と、
アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミからなる群より選択される少なくとも一種と、
を含有し、
前記セラミックスにおけるケイ素の含有率が30質量%以上であり、
前記ケイ素は、ドーパントとしてBを含有し、
前記ハニカム構造体の体積抵抗率が、0.01Ω・cm以上5Ω・cm以下であるハニカム構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたハニカム構造体は、Si−SiC材料で形成されている。Si及びSiCは、体積抵抗率がやや高い。このため、特許文献1に記載されたハニカム構造体は、200〜500Vという高電圧下で使用されるEHCに用いても、数Ωcm〜200Ωcm程度の抵抗域内に調整することができる。この結果、200〜500Vという高電圧下で使用したとき、過剰の電流が流れることを抑制することができる。
【0008】
しかしながら、例えば、搭載する自動車の種類等によって、EHC用の電源には非常に広範囲の電圧が使用される。特に、EHC用の電源に、60V以下、例えば48Vといった低い電圧が使用される場合、過剰電流の発生を抑制するためには、0.1Ωcmオーダーの抵抗域内に調整することが必要となる。このように、広範囲の電圧が使用される近年のEHCにおいて、低電圧下で使用された場合であっても過剰電流の発生を良好に抑制する技術の研究・開発が望まれている。
【0009】
本発明は以上の課題を勘案してされたものであり、低電圧下で使用された場合であっても過剰電流の発生を良好に抑制することができるハニカム構造体、電気加熱式ハニカム構造体、電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討の結果、ハニカム構造体において、当該ハニカム構造体の隔壁及び外周壁に、少なくともケイ素を含有させ、当該ケイ素中のドーパントの濃度を所定の範囲に制御することで、上記課題を解決できることを見出した。そこで、本発明は以下のように特定される。
(1)外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体であって、
前記隔壁及び外周壁が、少なくともケイ素を含有するセラミックスで構成されており、
前記セラミックスにおけるケイ素の含有率が30質量%以上であり、
前記ケイ素中のドーパントの濃度が、10
16〜5×10
20個/cm
3であるハニカム構造体。
(2)(1)に記載のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周壁の表面に、前記ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設された一対の電極層と、
を有する電気加熱式ハニカム構造体。
(3)(2)に記載の電気加熱式ハニカム構造体と、
前記電気加熱式ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設され、前記一対の電極層上に設けられた一対の金属端子と、
を有する電気加熱式担体。
(4)(3)に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体を保持する缶体と、
を有する排気ガス浄化装置。
(5)外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体であって、
前記隔壁及び外周壁が、セラミックスで構成されており、前記セラミックスが、
ケイ素と、
アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミからなる群より選択される少なくとも一種と、
を含有し、
前記セラミックスにおけるケイ素の含有率が30質量%以上であり、
前記ケイ素は、ドーパントとしてBを含有し、
前記ハニカム構造体の体積抵抗率が、0.01Ω・cm以上5Ω・cm以下であるハニカム構造体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低電圧下で使用された場合であっても過剰電流の発生を良好に抑制することができるハニカム構造体、電気加熱式ハニカム構造体、電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明のハニカム構造体、電気加熱式ハニカム構造体、電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置の実施の形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0014】
(1.ハニカム構造体、電気加熱式ハニカム構造体)
図1は本発明の一実施形態におけるハニカム構造体10の外観模式図を示すものである。ハニカム構造体10は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセル15を区画形成する隔壁13とを有し、柱状に形成されている。
【0015】
ハニカム構造体10の隔壁13及び外周壁12は、少なくともケイ素を含有するセラミックスで構成されており、ケイ素中のドーパントの濃度が10
16〜5×10
20個/cm
3である。ハニカム構造体10の隔壁13及び外周壁12を構成するケイ素以外のセラミックス材料としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックス等を挙げることができる。これらのセラミックス材料は、ハニカム構造体10の骨材粒子として機能するため、ハニカム構造体10を強固にすることができる。
【0016】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体10は、隔壁13及び外周壁12に含まれるケイ素中のドーパントの濃度が10
16〜5×10
20個/cm
3であるため、ハニカム構造体10の体積抵抗率を下げることができる。隔壁13及び外周壁12に含まれるケイ素中のドーパントの濃度は、ハニカム構造体10において所望する体積抵抗率によって適宜調整することができる。一般に、ケイ素中のドーパントの濃度が高くなるとハニカム構造体10の体積抵抗率が下がり、ケイ素中のドーパントの濃度が低くなるとハニカム構造体10の体積抵抗率が上がる。本発明者らは、骨材粒子として機能する前述の炭化ケイ素、窒化ケイ素などのケイ素化合物ではなく、ケイ素単体にドーピングすることにより、ハニカム構造体10の体積抵抗率を有効に下げることができることを見出した。ケイ素中のドーパントの濃度について、より好ましくは、5×10
17〜5×10
20個/cmである。
【0017】
ハニカム構造体10の体積抵抗率は、印加する電圧に応じて適宜設定すればよく、特段の制限はないが、例えば0.001〜200Ω・cmとすることができる。60Vより大きい高電圧用には2〜200Ω・cmとすることができ、典型的には5〜100Ω・cmとすることができる。また、48V等の60V以下の低電圧用には0.001〜2Ω・cmとすることができ、典型的には0.001〜1Ω・cmとすることができ、より典型的には0.01〜1Ω・cmとすることができる。特に、本発明の実施形態に係るハニカム構造体10は、隔壁13及び外周壁12に含まれるケイ素中のドーパントの濃度が10
16〜5×10
20個/cm
3であるため、48V等の60V以下の低電圧用としても過剰電流が発生しないようにハニカム構造体10の体積抵抗率を下げることができる。また、ハニカム構造体の体積抵抗率は0.01Ω・cm以上5Ω・cm以下であってもよい。体積抵抗率が5Ω・cm以下のものは、48Vという低電圧下でも過剰電流の発生を良好に抑制することができる。一方、体積抵抗率が、5Ω・cmより大きいものは、48Vという低電圧下で過剰電流の発生を十分に抑制できない。
【0018】
隔壁13及び外周壁12に含まれるケイ素中のドーパントは、13族元素または15族元素であることが好ましい。13族元素または15族元素は、10
16〜5×10
20個/cm
3という濃度範囲でケイ素中に容易にドーパントとして含ませることができる。ここで、13族元素とは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等を指し、15族元素とは窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等を指す。隔壁13及び外周壁12に含まれるケイ素中のドーパントは同族元素であれば、カウンタードーピングの影響を受けずに導電性を発現できるため、複数の種類の元素を含んでいてもよい。また、ドーパントが、B及びAlからなる群から選択される一種または二種であるのがより好ましい。また、N及びPからなる群から選択される一種または二種であるのも好ましい。B、Al、N及びPは、10
16〜5×10
20個/cm
3という濃度範囲でケイ素中により容易にドーパントとして含ませることができる。
【0019】
ハニカム構造体10の体積抵抗率は、上述のように隔壁13及び外周壁12に含まれるケイ素中のドーパントの濃度を10
16〜5×10
20個/cm
3に制御することの他、隔壁13及び外周壁12を構成するケイ素以外のセラミックス材料の体積抵抗率、及び、隔壁13の気孔率を調整することにより適宜制御することができる。ハニカム構造体のケイ素中のドーパントの濃度については、例えば、以下の方法によって測定可能である。以下では、ドーパントとしてホウ素を含む場合について記載するが、ホウ素以外のドーパントにおいても同様の方法により測定することができる。
【0020】
まず、ハニカム構造体を中心軸に垂直な面で切断し、切断面を露出させる。次に、ハニカム構造体の断面の凹凸を樹脂で埋め、更に、樹脂で埋めた面に対して研磨を行う。次に、ハニカム構造体の研磨面について観察し、ハニカム構造体を構成する材料の元素分析をエネルギー分散型X線分析(EDX分析:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)で行う。
【0021】
次に、研磨面中の「ケイ素」と判断された部分について、当該ケイ素中に「その他の元素」が含まれるか否かの判別を、以下の方法で行う。まず、ケイ素元素が検出された部位について、研磨面の断面組織写真及び電子プローブマイクロアナライザー(EPMA分析:Electron Probe Micro Analyzer)によるマッピングで、ケイ素以外の元素が検出された部分を「その他の成分」と判別する。「その他の元素」としては、ホウ素、及びホウ素源としてケイ素中に存在する金属ホウ化物やホウ化物を挙げることができる。
【0022】
次に、EPMA分析にて、ケイ素元素のみ又はケイ素とホウ素が検出され、「ケイ素」と判別された部分について、以下の方法で、ケイ素中のホウ素の量を特定する。まず、「ケイ素」と判別された位置を含むハニカム構造体を、数ミリ厚に切断し、切断したハニカム構造体を、Broad Ion Beam法を用いて、その断面の調製を行うことにより、ホウ素の量を測定するための試料を作製する。Broad Ion Beam法とは、アルゴンイオンビームを使用した、試料断面の作製方法である。具体的には、試料の直上に遮蔽版を置き、その上からアルゴンのブロードイオンビームを照射して試料にエッチングを行うことで、遮蔽版の端面に沿った試料の断面を作製する方法のことをいう。次に、断面調製を行った試料について、飛行時間型二次イオン質量分析法(Time−of−Flight Secondary Mass Spectrometry:TOF−SIMS)にて、ケイ素中のホウ素の分析を行う。飛行時間型二次イオン質量分析法では、まず、試料に、一次イオンビームを照射し、試料の表面から二次イオンを放出する。そして、放出させた二次イオンを、飛行時間型質量分析計に導入し、試料の最表面の質量スペクトルを得る。そして、得られた質量スペクトルによって、試料の分析を行い、ケイ素中のホウ素の濃度(個/cm
3)について、ケイ素中のホウ素のスペクトル強度と予め測定した濃度に関する測定値(例えば、検量線など)との相関によって換算して求める。
【0023】
隔壁13及び外周壁12を100質量部としたとき、隔壁13及び外周壁12を構成するセラミックスがケイ素を30質量%以上含有する。このような構成により、低抵抗なドープケイ素含有材料が微構造的に直列的に配置された構造をとりやすくなる。その結果、ハニカム構造体10の体積抵抗率を下げることができ、48V等の60V以下の低電圧用としても過剰電流の発生を良好に抑制することができる。また、このような構成により、ハニカム構造体10における強度とヤング率との比が高くなり、耐熱衝撃性が良好となる。隔壁13及び外周壁12を構成するセラミックスがケイ素を30質量%以上100質量%未満含有するのがより好ましく、40質量%以上100質量%未満含有するのが更により好ましい。
【0024】
隔壁及び外周壁におけるケイ素の含有量の算出方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。以下の方法では、セラミックス原料として、ケイ素と炭化ケイ素を用いた場合の算出方法について説明する。セラミックス原料として、ケイ素と炭化ケイ素を用いた場合には、ハニカム構造体の形成後の隔壁及び外周壁の組成としては、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)及び二酸化珪素(SiO
2)で構成される。そして、この隔壁及び外周壁中のSi、SiC、SiO
2の組成量については、蛍光X線法により珪素元素量及び酸素元素量を測定し、抵抗加熱式赤外吸収法により炭素元素量を測定することができる。SiC量については、炭素元素は全てSiCによるものとし、分子量計算により隔壁及び外周壁中のSiC量を算出する。また、SiO
2量については、酸素元素が全てSiO
2によるものとし、分子量計算により隔壁及び外周壁中のSiO
2量を算出する。Si量については、蛍光X線法により珪素元素量から、上記で算出したSiC量、SiO
2量から、SiC中のSi量と、SiO
2中のSi量とを合計したSi量を全体の珪素元素量から差し引いたものをSi量として算出することができる。なお、セラミックス原料としては、炭化ケイ素以外を用いた場合は、ハニカム構造体の形成後の隔壁及び外周壁の組成を確認した後、蛍光X線法、抵抗加熱式赤外吸収法により元素量を測定して算出することが可能である。
【0025】
隔壁13の気孔率は、上述のように、ハニカム構造体10の所望する体積抵抗率に応じて適宜調整することができるが、例えば、35〜60%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。隔壁13の気孔率が、35%以上であると、ハニカム構造体10の熱容量を低く抑えることができ、ハニカム構造体10を早く温めることができる。隔壁13の気孔率が60%以下であると、ハニカム構造体10の強度が十分に維持される。隔壁13の気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0026】
ハニカム構造体10の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体10の大きさは、耐熱性を高める(外周側壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、底面の面積が2000〜20000mm
2であることが好ましく、5000〜15000mm
2であることが更に好ましい。
【0027】
ハニカム構造体10のセル15は、その流路方向に垂直な断面における形状に制限はなく、例えば、四角形、六角形、八角形、または、これらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状を四角形または六角形にすることにより、ハニカム構造体10に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点からは、長方形が特に好ましい。
【0028】
外周壁12を設けることは、ハニカム構造体10の構造強度を確保し、また、セル15を流れる流体が外周壁12から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁12の厚さは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周壁12を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁13との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁12の厚さは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁12の厚さは、厚さを測定しようとする外周壁12の箇所をセルの流路方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁12の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0029】
隔壁13の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。隔壁13の平均細孔径が2μm以上であると、体積抵抗率を上記範囲に制御しやすくなる。隔壁13の平均細孔径が15μm以下であると、体積抵抗率を上記範囲に制御しやすくなる。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0030】
隔壁13は、厚さが50〜200μmであり、セル密度が50〜150セル/cm
2であるのが好ましい。隔壁13の厚さ及びセル密度をこのような範囲に制御することで、ハニカム構造体10の体積抵抗率を容易に下げることができる。また、隔壁13の厚さを50μm以上にすることで、ハニカム構造体10の強度の低下を抑制することができる。隔壁13の厚さを200μm以下にすることで、ハニカム構造体10を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。また、隔壁13のセル密度を50セル/cm
2以上とすることで、触媒担持面積を大きくし、触媒の浄化性能を高くすることができる。隔壁13のセル密度を150セル/cm
2以下とすることで、ハニカム構造体10を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。隔壁13は、厚さが50〜150μmであり、セル密度が75〜150セル/cm
2であるのがより好ましい。なお、本発明において、隔壁13の厚さは、セル15の流路方向に垂直な断面において、隣接するセル15の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁13を通過する部分の長さとして定義される。また、本発明において、隔壁13のセル密度は、外周壁12部分を除くハニカム構造体10の一つの底面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態における電気加熱式ハニカム構造体30の外観模式図である。本発明の実施形態に係る電気加熱式ハニカム構造体30は、上述のハニカム構造体10と、ハニカム構造体10の外周壁12の表面に、ハニカム構造体10の中心軸を挟んで対向するように配設された一対の電極層14a、14bとを有している。各電極層14a、14bは、ハニカム構造体10と電気的に接合される。当該構成により、電気加熱式ハニカム構造体30は、電圧を印加した時に、ハニカム構造体10内を流れる電流の偏りを抑制することができ、ハニカム構造体10内の温度分布の偏りを抑制することができる。電極層14a、14bの形状及び大きさは、特に限定されず、電気加熱式ハニカム構造体30の大きさや通電性能等に応じて、適宜設計することができる。例えば、各電極層14a、14bは、ハニカム構造体10のセル15の延びる方向に延びる帯状に設けてもよい。
【0032】
電極層14a、14bは導電性を有する材料で形成される。電極層14a、14bは、酸化物セラミック、又は金属若しくは金属化合物と酸化物セラミックとの混合物であることが好ましい。金属として、単体金属又は合金のいずれでもよく、例えばシリコン、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン、タングステン、Ni−Cr合金などを好適に用いることができる。金属化合物として、酸化物セラミック以外の物であって、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属珪化物、金属ほう化物、複合酸化物等が挙げられ、例えばFeSi
2、CrSi
2、アルミナ、シリカ、酸化チタンなどを好適に用いることができる。金属と金属化合物は、いずれも、単独一種でもよく、二種以上を併用しても良い。酸化物セラミックとしては、具体的には、ガラス、コージェライト、ムライトなどがある。ガラスは、B、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種の成分からなる酸化物を更に含んでも良い。上記群より選択される少なくとも一種を更に含んでいると、電極層14a、14bの強度がより向上する点で更に好ましい。
【0033】
ハニカム構造体10の作製は、公知のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム構造体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、ドーパントを添加したケイ素粉末、または、当該ドーパントを添加したケイ素粉末に他のセラミックス材料を混合させた粉末に、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。成形原料に含ませるケイ素は、焼成工程等を経て作製されたハニカム構造体10の隔壁13及び外周壁12を100質量部としたとき、30質量部以上100質量部未満となるように混合するのが好ましい。また、ドーパント量は、焼成工程等を経て作製されたハニカム構造体10において、ケイ素中のドーパントの濃度が10
16〜5×10
20個/cm
3となるように、ドーパント元素に応じて適宜調整する。また、ケイ素粉末の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、3〜40μmが更に好ましい。ケイ素粉末の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0034】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、ドーパントを添加したケイ素粉末、または、当該ドーパントを添加したケイ素粉末に他のセラミックス材料を混合させた粉末の質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0035】
水の含有量は、ドーパントを添加したケイ素粉末、または、当該ドーパントを添加したケイ素粉末に他のセラミックス材料を混合させた粉末の質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0036】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、ドーパントを添加したケイ素粉末、または、当該ドーパントを添加したケイ素粉末に他のセラミックス材料を混合させた粉末の質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0037】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、ドーパントを添加したケイ素粉末、または、当該ドーパントを添加したケイ素粉末に他のセラミックス材料を混合させた粉末の質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μm以上であると、気孔を十分形成できるため好ましい。30μm以下であると、成形時に口金に詰まりにくくなり、より好ましい。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0038】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形して生の(未焼成の)柱状ハニカム構造体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られた未焼成の柱状ハニカム構造体について、乾燥を行うことが好ましい。柱状ハニカム構造体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、柱状ハニカム構造体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。
【0039】
次に、未焼成の柱状ハニカム構造体を焼成することで、ハニカム構造体10を作製する。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1300〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸化処理を行うことが好ましい。このようにして、本発明の実施形態に係るハニカム構造体10を作製することができる。
【0040】
本発明の実施形態に係る電気加熱式ハニカム構造体30は、ハニカム構造体10に対し、ハニカム構造体10の中心軸を挟んで対向するように一対の電極層14a、14bを配設することで作製することができる。
【0041】
(2.電気加熱式担体)
図3は、本発明の一実施形態における電気加熱式担体20のセルが延びる方向に垂直な断面模式図である。電気加熱式担体20は、電気加熱式ハニカム構造体30と、一対の金属端子21a、21bとを備える。一対の金属端子21a、21bは、ハニカム構造体10の中心軸を挟んで対向するように配設され、それぞれ一対の電極層14a、14b上に設けられており、電気的に接合されている。これにより、金属端子21a、21bは、電極層14a、14bを介して電圧を印加すると通電してジュール熱により電気加熱式ハニカム構造体30を発熱させることが可能である。このため、電気加熱式ハニカム構造体30はヒーターとしても好適に用いることができる。
【0042】
金属端子21a、21bの材質としては、金属であれば特段の制約はなく、単体金属及び合金等を採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe−Ni合金がより好ましい。金属端子21a、21bの形状及び大きさは、特に限定されず、電気加熱式担体20の大きさや通電性能等に応じて、適宜設計することができる。
【0043】
電気加熱式担体20に触媒を担持することにより、電気加熱式担体20を触媒体として使用することができる。複数のセル15の流路には、例えば、自動車排ガス等の流体を流すことができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NO
x)の吸蔵成分として含むNO
x吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNO
x選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される二種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0044】
(3.排気ガス浄化装置)
本発明の実施形態に係る電気加熱式担体20は、排気ガス浄化装置に用いることができる。当該排気ガス浄化装置は、電気加熱式担体20と、当該電気加熱式担体20を保持する缶体とを有する。排気ガス浄化装置において、電気加熱式担体20は、エンジンからの排ガスを流すための排ガス流路の途中に設置される。缶体としては、電気加熱式担体20を収容する金属製の筒状部材等を用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0046】
(1.ハニカム構造体の作製)
実施例2〜14、17〜21、及び、比較例1、15、16及び22として、それぞれ、ケイ素粉末、炭化ケイ素粉末、及び窒化ホウ素がそれぞれ表1の「レシピ」欄に記載の割合となるように混合して、セラミック原料を調製した。そして、セラミック原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量はケイ素粉末と炭化ケイ素粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量はケイ素粉末と炭化ケイ素粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量はケイ素粉末と炭化ケイ素粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。ケイ素粒子の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。ケイ素粒子及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0047】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いて成形し、各セルの断面形状が正方形である未焼成の柱状ハニカム構造部を得た。当該未焼成の柱状ハニカム構造部を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両底面を所定量切断し、ハニカム構造体とした。
【0048】
次に、乾燥後のハニカム構造体を、脱脂(仮焼)し、焼成し、更に酸化処理してハニカム焼成体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1400℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0049】
(2.電極層の形成)
ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように一対の電極層を配設した。電極層の形成条件は以下である。すなわち、まず、ステンレス粉(SUS430)とガラス粉を体積割合でステンレス粉比率40%、ガラス粉比率を60%で混合し、セラミック原料を作製した。平均粒子径はステンレス粉が10μm、ガラス粉が2μmであった。なお、平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0050】
次に、上記セラミック原料に対してバインダを1質量%、界面活性剤を1質量%、水を30質量%加えて、ペーストを作製した。続いて、ハニカム構造体に対してスクリーン印刷を用いて、当該ペーストを塗布した。塗布したペーストを熱風乾燥機で120℃30min乾燥後、ハニカム構造体と共に真空条件、1100℃、30minで焼成を行い、電極層を形成した。このようにして電気加熱式ハニカム構造体を作製した。
【0051】
(3.評価試験)
得られた電気加熱式ハニカム構造体のケイ素中のドーパントの濃度(ホウ素濃度)を上述の方法により、測定したところ、6×10
15個/cm
3であった。
【0052】
また、得られた電気加熱式ハニカム構造体の隔壁及び外周壁中のSi、SiC、SiO
2の組成は、上記の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0053】
また、得られた電気加熱式ハニカム構造体は、隔壁の厚さが125μmであり、セル密度が90セル/cm
2であった。セル密度は、外周壁部分を除くハニカム構造体の一つの底面部分の面積でセル数を除して算出した。
また、得られた電気加熱式ハニカム構造体の隔壁の気孔率を水銀ポロシメータにより測定した。
また、得られた電気加熱式ハニカム構造体の一対の電極層に、それぞれ金属端子を電気的に接合した。続いて、金属端子を通して電気加熱式ハニカム構造体に48Vの電圧を印加して、電流値を計測した。当該電圧と電流値とから、電気加熱式ハニカム構造体の体積抵抗率を算出した。
当該評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
(4.考察)
表1に示されるように、本発明の実施例2〜14、17〜21では、ハニカム構造体の隔壁及び外周壁が、少なくともケイ素を含有するセラミックスで構成されており、セラミックスにおけるケイ素の含有率が30質量%以上であり、ケイ素中のドーパントの濃度が10
16〜5×10
20個/cm
3であったため、体積抵抗率が低くなり、48Vという低電圧下でも過剰電流の発生を良好に抑制することができた。
比較例1では、ハニカム構造体の隔壁及び外周壁のケイ素中のドーパントの濃度が10
16個/cm
3未満であったため、体積抵抗率が大きくなった。
比較例15、16及び22では、ハニカム構造体の隔壁及び外周壁を構成するセラミックスにおけるケイ素の含有率が30質量%未満であったため、体積抵抗率が大きくなった。