【実施例1】
【0015】
実施例1に係るアキュムレータにつき、
図1から
図5を参照して説明する。以下、
図1の紙面左右方向をアキュムレータの幅方向とし、紙面上下方向をアキュムレータの上下方向として説明する。
【0016】
図1の符号1は、本発明の適用されたアキュムレータであり、略中空球状のシェル2の内周面2aにブラダ3の周縁部が密着されてシェル2の内部空間をガス室Gと液体室Rとに区画されている。
【0017】
ブラダ3は、ガス室Gと液体室Rとに要求される特性に合わせて、耐液性のゴム材により形成された第1ブラダ4が液体室側に設置され、気体遮蔽性の良いゴム材により形成された第2ブラダ5がガス室側に設置されている。また、シェル2の底部には開口部2bが形成され、該開口部2bには液体ポート25が溶接して固定されている。一方、開口部2bに対向するシェル2の上部には、ガスプラグ26が着脱可能に配設されている。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、第1ブラダ4は、その周縁部6が内径側に位置する第2ブラダ5の周縁部7の外径側に位置するように配されている。そして、
図1及び
図3に示されるように、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とが、更に内径側に配されたリング状のホルダ8が配され、
図1に示されるように、シェル2の内面2aに押圧されて取付けられている。
【0019】
また、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7との間には、周方向に連続するリング9(剛性体)が配されている。このリング9は第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7よりも剛性の高い剛性体(例えば金属製)で形成され、断面が略矩形状となっている。
【0020】
第2ブラダ5の周縁部7には、第1ブラダ4の周縁部6から下方に連続する面部10と対向する面部11の上端縁から内径方向に略直角に延出する底部12と、この底部12の内径側端部から上方に略直角に延出する側部13と、この側部13の上端から外径方向に延出する上部14と、から構成される断面略コ字状の嵌合凹部15が形成されている。
【0021】
第1ブラダ4の周縁部6には、シェル2の内周面2aに沿う面部10の上端縁から内径方向に略直角に延出する凸条16を有しており、凸条16が第2ブラダ5の嵌合凹部15内に入り込む構造となっている。
【0022】
図3に示されるように、第2ブラダ5の嵌合凹部15と第1ブラダ4の凸条16との間隙を埋めるように前述したリング9が内包されるようになっている。また、これら3つの部材が組み合わせられることで、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とが嵌合状態となり、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7との上下方向の相対移動が規制されている。また、これら第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とが嵌合状態となることで、第1ブラダ4の面部10の内周面10aと凸条16の下面16aと、第2ブラダ5の嵌合凹部15の底部12の上面12aと側部13の外周面13aと、にリング9の4面がそれぞれ当接する。
【0023】
このように、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とが嵌合状態となることで、第1ブラダ4の面部10の外周面10bと凸条16の下面16aと、第2ブラダ5の嵌合凹部15の底部12の上面12aと側部13の外周面13aと、にリング9の4面がそれぞれ当接するように嵌合部分にリング9が内包されることになり、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とリング9とをシェル2の段23へ容易に組付けることができる。
【0024】
第1ブラダ4の周縁部6の上端縁から僅かに下方側の面部10の外周面10bには、外径方向に突出する第1環状突部17が形成されている。
【0025】
また、第2ブラダ5における嵌合凹部15の側部13の内周面13bの略上下方向中央に第2環状突部18が形成され、更に嵌合凹部15の上部14の外径方向端縁は、第1ブラダ4のシェル2の内周面2aに沿う外周面10bより外径方向に突出する第3環状突部19を構成している(
図3参照)。
【0026】
図3及び
図4に示されるように、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とが嵌合された状態で、リング状のホルダ8を第2ブラダの内径側に取り付ける。ホルダ8は、例えば金属などの剛体で形成されており、第2ブラダ5の側部13の内周面13bに面接する側部20を有し、側部20の下端は外径側上方向に折曲され下部片21が形成されており、この下部片21の端部21aが第2ブラダ5の底部12の下面12bに当接する構造であるため、第1ブラダ4の周縁部6と嵌合された第2ブラダ5の周縁部7の下方向への移動が規制されている。また、ホルダ8は、側部20の上端から外径方向に略直角に延出する上部片22を有し、この上部片22の下面22aが第2ブラダ5の上部14の上面14aに面接するようになっており、これにより、第1ブラダ4の周縁部6と嵌合された第2ブラダ5の周縁部7の上方向への移動が規制されている。
【0027】
図3及び
図4に示されるように、ブラダ3が配されるシェル2の内周面2aの上下方向略中央には、段23が形成されており、この段23を挟んだ上方が下方よりも若干小径となっている。ホルダ8の上部片22の外径側端部22bは、その外径がシェルの内周面の段23の上方より太径となっているため、上部片22の上面22cが段23の下面23aに当接してホルダ8の上方向への移動が規制されている。
【0028】
また、ホルダ8の上部片22の外径側端部の外径は、シェル2の段23を挟んだ下方の内径と略同径となっている。これによれば、シェル2は略中空球状であることから、その内周面2aは段23を挟んだ下方は、下方向に漸次小径となっている。そのため、段23を挟んだ下方の内径とホルダ8の上部片22の外径側端部が略同径であるホルダ8の下方向への移動が実質的に規制されている。
【0029】
自然状態における第1ブラダ4の周縁部6の面部10の外周面10bは、シェル2の内周面2aと比べて若干小径に形成されており、かつホルダ8の側部20の外周面20aは、自然状態における第2ブラダの側部13の内周面13bと比べて、若干小径に形成されている。そのため、ホルダ8が取付けられた状態では、第1ブラダ4の周縁部6及び第2ブラダ5の周縁部7が、シェル2の内周面2aとホルダ8の側部20の外周面20aにより圧縮された状態となる。そのため、弾性体である第1ブラダ4及び第2ブラダ5の反発力により、シェル2、第1ブラダ4、第2ブラダ5、ホルダ8が一体的に保持されるようになっている。
【0030】
図4に示されるように、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7との間、かつシェル2の内周面2aとホルダ8の側部20の外周面20aとの間にはリング9が配されているため、シェル2の内周面2aとホルダ8の側部20の外周面20aとの距離(即ち、リング9が配されていない第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7との嵌合状態における第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7の水平方向の合計の厚みT1)よりも、リング9が配されている部分における第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7の厚みの合計(即ち、第1ブラダ4の周縁部6における面部10の厚みT2と、第2ブラダ5の周縁部7における側部13の厚みT3との合計)が小さくなっている。
【0031】
アキュムレータ1は、液体室R側とガス室G側から圧力を受け、ブラダ3が上下に動作する構造であるため、この動作に対してブラダ3を保持する高い保持力が必要とされる。そのため、ホルダ8の下部片21が第2ブラダ5の底部12の下面12bに係止される構造とするために、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7に厚みを持たせている。
【0032】
このような構造であることから、上記構成とすることにより、リング9が配されている部分における第1ブラダ4の周縁部6及び第2ブラダ5の周縁部7の締め代を確保することができ、第1ブラダ4の面部10の外周面10b(強密封領域)とシェル2の内周面2aとの間に生じる面圧が高くなる。加えて、第2ブラダ5の側部13の内周面13bとホルダ8の外周面20aとの間に生じる面圧が高くなり、厚みのある第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7であっても密封性を高めることができ、液体室R側からガス室G側に液体が流れ込まないようになっている。
また、第1ブラダ4の周縁部6及び第2ブラダ5の周縁部7におけるホルダ8の側部20の外周面20aにより押圧される部分に比べ、リング9の軸方向の厚みが小さく形成されていることから、リング9が配されている部分における第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7の厚みは、リング9が配されていない部分の第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7全体の径方向の厚みよりも薄く、当該箇所は圧縮量の割合が大きくなる。そのため、当該箇所の第1ブラダ4の面部10の外周面10b(強密封領域)とシェル2の内周面2aとの間に生じる面圧が局所的に高められており、密封性が極めて高い。
【0033】
また、
図3に示されるように、リング9が配されている部分と水平方向に一部重なるように、第1ブラダ4の面部10の外周面10bには、第1環状突部17が形成されており、この第1環状突部17とシェル2の内周面2aとの間に生じる面圧が局所的に更に高められていることにより、液体が第1環状突部17とシェル2の内周面2aとの間から第2ブラダ5側に滲み出ることが防止されている。
【0034】
また、リング9が配されている部分における第2ブラダ5の周縁部7における側部13の内周面13b(強密封領域)とホルダ8の側部20の外周面20aとの間に生じる面圧が高くなっており、密封性が高くガス室G側から液体室R側に気体が流れ込まないようになっている。
【0035】
更に、リング9が配されている部分と水平方向に一部重なるように、第2ブラダ5の側部13の内周面13bには、第2環状突部18が形成されており、この第2環状突部18とホルダ8の側部20の外周面20aとの間に生じる面圧が局所的に更に高められていることにより、気体が第2環状突部18とホルダ8の側部20の外周面20aとの間から第1ブラダ4側に滲み出ることが防止されている。
【0036】
また、第2ブラダ5の嵌合凹部15の上部14の外径方向端縁には、第3環状突部19が形成されており、特に流体粒子の小さい気体が第3環状突部19とシェル2の内周面2aとの間から第1ブラダ4側に滲み出ることが防止されている。
【0037】
また、リング9は、周方向に連続する無端状であることから、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7が周方向に渡って均等に圧縮されるため、高い密封性を確保できる。尚、リング9を有端の略C字状とすることで、第1ブラダ4の周縁部6及び第2ブラダ5の周縁部7とを段23への取付けを容易に行うことのできる構造としてもよい。
【0038】
また、リング9の断面が略矩形であるため、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7との嵌合部分には、リング9の軸方向幅程度の強密封領域が形成されるため、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7のリング9が配されている部分に充分な変形代を設けることができる。更に、強密封領域をリング9の軸方向に広く形成することができることから、高い密封性を確保できる。
【0039】
また、ホルダ8の側部20の下端に形成された下部片21の外周面からシェルの内周面までの距離T4に比べ、嵌合状態の第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7の水平方向の合計の厚みT1が大きくなっていることから、ホルダ8の側部20の外周面20aとシェル2の内周面2aとの間から嵌合状態の第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とが抜けづらくなっている。
【0040】
更に、第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とは、その嵌合部分にリング9が内包されていることから、シェル2の内周面2aとホルダ8の側部20の外周面20aとにそれぞれ当接する部分の摩擦係数が高いことに加え、リング9の鉛直方向下方にホルダ8の側部20の下部片21の一部が重なるように位置することから、ホルダ8の側部20の外周面20aとシェル2の内周面2aとの間から嵌合状態の第1ブラダ4の周縁部6と第2ブラダ5の周縁部7とが抜けづらくなっている。
【0041】
更に、第1ブラダ4の面部10の内周面10aと凸条16の下面16aと、第2ブラダ5の嵌合凹部15の底部12の上面12aと側部13の外周面13aと、にリング9の4面がそれぞれ当接し、リング9と当接する各面との間に生じる面圧が高められていることから、第1ブラダ4と第2ブラダ5との間への気体及び液体の侵入が防止されている。
【実施例2】
【0042】
次に、実施例2に係るアキュムレータにつき、
図5から
図7を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0043】
図5及び
図6に示されるように、第1ブラダ34と第2ブラダ35とは、その面部40,41が周縁部36,37に亘り対向面40a,41aが面接するようになっており、これら対向面40a,41aにそれぞれ外径側,内径側に凹む凹部45,46が形成されており、これら凹部45,46同士を合わせて構成される断面略矩形状の空洞部分にリング39が嵌合され、第1ブラダ34の周縁部36と第2ブラダ35の周縁部37内にリング39が内包されるようになっている。
【0044】
このような構造とすることで第1ブラダ34の周縁部36と第2ブラダ35の周縁部37の接合時に、リング39を第1ブラダ34の周縁部36と第2ブラダ35の周縁部37とのいずれかの凹部45,46に嵌合させておくことで、仮保持が可能であるため、接合作業が容易となる。
【0045】
図7に示されるように、シェル2の内周面2aとホルダ8の側部20の外周面20aとの距離T11に対し、第1ブラダ34の周縁部36における面部40のリング39が配されている部分の厚みT12と、第2ブラダ35の面部41のリング39が配されている部分の厚みT13との合計が小さくなっている。
【0046】
また、リング39が配されている部分と水平方向に一部重なるように、第1ブラダ34の面部40の外周面40bには、第1環状突部47が形成されている。同様にリング39が配されている部分と水平方向に一部重なるように、第2ブラダ35の面部41の内周面41bには、第2環状突部48が形成されている。更に、第1ブラダ34の面部40の外周面40bの第1環状突部47の上方に第3環状凸部49が形成されている。
【0047】
尚、リング39は第1ブラダ34の周縁部36の凹部45と第2ブラダ35の周縁部37の凹部46とにそれぞれ嵌合される構成に限らず、例えば第1ブラダ34の周縁部36と第2ブラダ35の周縁部37とのいずれかにのみ凹部を設け、この凹部に嵌合される構成であってもよい。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例におけるリングは、第1ブラダの周縁部と第2ブラダの周縁部との間に環状のリングが1つ内包される構成となっているが、これに限らず、例えば第1ブラダの周縁部及び第2ブラダの周縁部の周方向に複数個点在して内包される構成であってもよい。また、リングの断面形状は略矩形状に限らず、例えば略円形、5角以上の多角形状等であってもよい。
【0050】
また、リングは当該リングを内包する前において第1ブラダの周縁部と第2ブラダの周縁部との嵌合部分に形成された当該リングの外形と略同内形の隙間に収まるような構成で説明したが、当該リングの外形を当該隙間よりも大きく構成してもよく、さらにこれらに限らず、例えば当該隙間が実質的に存在せずリング内包第1ブラダの周縁部と第2ブラダの周縁部との嵌合部分が隙間なく面接するように構成し、当該嵌合部分の変形代にリングが内包されるようになっていてもよい。
【0051】
また、前記実施例における第1環状凸部,第2環状凸部,第3環状凸部は、無端状に限らず、例えば複数に分断されて構成されていてもよい。更に、第2環状凸部と第3環状凸部とは、密封性が充分に確保できる場合には、いずれか一方が省略されてもよい。
【0052】
また、シェル2の形状は略球状に限らず、例えば円筒形状等であってもよい。