【解決手段】性能計算装置20は、複数の機器それぞれを取得元機器として、取得元機器の使用環境に関する環境情報のパターンと、取得元機器が運転された際の対象パラメータの値の経時変化を示す経時変化情報とを取得する。性能計算装置20は、環境情報の各パターンを対象として、対象のパターンに対応する取得元機器についての経時変化情報が示す対象パラメータの値の経時変化から、対象のパターンにおける機器40の運転性能を計算する。開始時刻計算装置30は、接続された機器40の使用環境に関する環境情報のパターンに対応する運転性能を示す性能情報に基づき、接続された機器40によって目標時刻に対象パラメータを目標値にするための運転開始時刻を計算する。
複数の機器それぞれを取得元機器として、前記取得元機器の使用環境に関する1つ以上の環境情報からなる環境情報のパターンと、前記取得元機器が運転された際に計測された対象パラメータの値の経時変化を示す経時変化情報とを取得する運転情報取得部と、
前記運転情報取得部によって取得された環境情報の各パターンを対象として、対象のパターンに対応する前記取得元機器についての前記経時変化情報が示す前記対象パラメータの値の経時変化から、前記対象のパターンに対応する使用環境における機器の運転性能を計算する性能計算部と、
前記取得元機器と同種の対象の機器によって目標時刻に前記対象パラメータを目標値にするための前記対象の機器の運転開始時刻を計算する開始時刻計算装置に、前記性能計算部によって計算された運転性能のうち、前記対象の機器の使用環境に関する環境情報のパターンに対応する前記運転性能を示す性能情報を送信する性能送信部と
を備える性能計算装置。
前記性能計算部は、前記対象のパターンに対応する複数の前記取得元機器についての前記経時変化情報が示す前記対象パラメータの値の経時変化から計算された運転性能の平均値を、前記対象のパターンに対応する使用環境における機器の前記運転性能として計算する
請求項1に記載の性能計算装置。
前記性能計算部は、前記各パターンについての前記運転性能に基づき、各環境情報について、前記運転性能に与える影響を表す補正係数を計算し、前記補正係数と前記機器の基本性能とから、前記複数の機器を取得元機器として取得された環境情報のパターンに含まれない環境情報のパターンについての運転性能を計算する
請求項1又は2に記載の性能計算装置。
前記性能計算部は、前記各パターンについての前記運転性能を、前記基本性能と、そのパターンに含まれる環境情報についての前記補正係数との和として表すことにより、前記各環境情報についての前記補正係数を計算する
請求項3に記載の性能計算装置。
前記時刻計算部は、前記対象パラメータの値を取得して、取得された前記対象パラメータの値と、前記性能情報が示す運転性能とに基づき、前記運転開始時刻を計算し、前記運転開始時刻の基準時間前になると、前記対象パラメータの値を取得し直して、取得し直された前記対象パラメータの値と、前記性能情報が示す運転性能とに基づき、前記運転開始時刻を計算し直す
請求項5に記載の開始時刻計算装置。
運転情報取得部が、複数の機器それぞれを取得元機器として、前記取得元機器の使用環境に関する1つ以上の環境情報からなる環境情報のパターンと、前記取得元機器が運転された際に計測された対象パラメータの値の経時変化を示す経時変化情報とを取得し、
性能計算部が、取得された環境情報の各パターンを対象として、対象のパターンに対応する前記取得元機器についての前記経時変化情報が示す前記対象パラメータの値の経時変化から、前記対象のパターンに対応する使用環境における機器の運転性能を計算し、
性能送信部が、前記取得元機器と同種の対象の機器によって目標時刻に前記対象パラメータを目標値にするための前記対象の機器の運転開始時刻を計算する開始時刻計算装置に、計算された運転性能のうち、前記対象の機器の使用環境に関する環境情報のパターンに対応する前記運転性能を示す性能情報を送信する性能計算方法。
複数の機器それぞれを取得元機器として、前記取得元機器の使用環境に関する1つ以上の環境情報からなる環境情報のパターンと、前記取得元機器が運転された際に計測された対象パラメータの値の経時変化を示す経時変化情報とを取得する運転情報取得処理と、
前記運転情報取得処理によって取得された環境情報の各パターンを対象として、対象のパターンに対応する前記取得元機器についての前記経時変化情報が示す前記対象パラメータの値の経時変化から、前記対象のパターンに対応する使用環境における機器の運転性能を計算する性能計算処理と、
前記取得元機器と同種の対象の機器によって目標時刻に前記対象パラメータを目標値にするための前記対象の機器の運転開始時刻を計算する開始時刻計算装置に、前記性能計算処理によって計算された運転性能のうち、前記対象の機器の使用環境に関する環境情報のパターンに対応する前記運転性能を示す性能情報を送信する性能送信処理と
を行う性能計算装置としてコンピュータを機能させる性能計算プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1を参照して、実施の形態1に係る開始時刻計算システム10の構成を説明する。
開始時刻計算システム10は、性能計算装置20と、複数の開始時刻計算装置30とを備える。性能計算装置20と各開始時刻計算装置30とは、通信路50を介して接続されている。
各開始時刻計算装置30は、通信路60を介して機器40が接続されている。各開始時刻計算装置30は、機器40に内蔵されていてもよい。各開始時刻計算装置30に接続された機器40は、同種の機器である。実施の形態1では、機器40は、空調機であるとする。しかし、機器40は、空調機に限らず、加湿器と給湯器と蓄電装置と暖気が必要な機器といったものであってもよい。
【0011】
図2を参照して、実施の形態1に係る性能計算装置20の構成を説明する。
性能計算装置20は、機器40の使用環境に応じた、機器40の運転性能を計算する装置である。性能計算装置20は、コンピュータである。
性能計算装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信インタフェース24とのハードウェアを備える。プロセッサ21は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0012】
性能計算装置20は、機能構成要素として、運転情報取得部211と、実行判定部212と、性能計算部213と、性能送信部214とを備える。性能計算装置20の各機能構成要素の機能はソフトウェアにより実現される。
ストレージ23には、性能計算装置20の各機能構成要素の機能を実現するプログラムが格納されている。このプログラムは、プロセッサ21によりメモリ22に読み込まれ、プロセッサ21によって実行される。これにより、性能計算装置20の各機能構成要素の機能が実現される。
【0013】
図3を参照して、実施の形態1に係る開始時刻計算装置30の構成を説明する。
開始時刻計算装置30は、目標時刻に対象パラメータが目標値となるように機器40を動作させるための機器40の運転開始時刻を計算する装置である。開始時刻計算装置30は、コンピュータである。
開始時刻計算装置30は、プロセッサ31と、メモリ32と、ストレージ33と、通信インタフェース34とのハードウェアを備える。プロセッサ31は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0014】
開始時刻計算装置30は、機能構成要素として、設定取得部311と、環境情報取得部312と、性能取得部313と、時刻計算部314と、運転制御部315と、運転情報送信部316とを備える。開始時刻計算装置30の各機能構成要素の機能はソフトウェアにより実現される。
ストレージ33には、開始時刻計算装置30の各機能構成要素の機能を実現するプログラムが格納されている。このプログラムは、プロセッサ31によりメモリ32に読み込まれ、プロセッサ31によって実行される。これにより、開始時刻計算装置30の各機能構成要素の機能が実現される。
【0015】
プロセッサ21,31は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ21,31は、具体例としては、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0016】
メモリ22,32は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ22,32は、具体例としては、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。
【0017】
ストレージ23,33は、データを保管する記憶装置である。ストレージ23,33は、具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)である。また、ストレージ23,33は、SD(登録商標,Secure Digital)メモリカード、CF(CompactFlash,登録商標)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD(Digital Versatile Disk)といった可搬記録媒体であってもよい。
【0018】
通信インタフェース24,34は、外部の装置と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース24,34は、具体例としては、Ethernet(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標,High−Definition Multimedia Interface)のポートである。
【0019】
図2では、プロセッサ21は、1つだけ示されていた。しかし、プロセッサ21は、複数であってもよく、複数のプロセッサ21が、各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。同様に、
図3では、プロセッサ31は、1つだけ示されていた。しかし、プロセッサ31は、複数であってもよく、複数のプロセッサ31が、各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。
【0020】
***動作の説明***
図4から
図10を参照して、実施の形態1に係る開始時刻計算システム10の動作を説明する。
【0021】
図4を参照して、実施の形態1に係る性能計算装置20の動作を説明する。
実施の形態1に係る性能計算装置20の動作手順は、実施の形態1に係る性能計算方法に相当する。また、実施の形態1に係る性能計算装置20の動作を実現するプログラムは、実施の形態1に係る性能計算プログラムに相当する。
【0022】
(ステップS101:運転情報取得処理)
運転情報取得部211は、複数の機器40それぞれを取得元機器として、取得元機器の使用環境に関する1つ以上の環境情報からなる環境情報のパターンと、取得元機器が運転された際に計測された対象パラメータの値の経時変化を示す経時変化情報とを、取得元機器が接続された開始時刻計算装置30から取得する。
具体的には、運転情報取得部211は、後述する開始時刻計算装置30の動作において、運転情報送信部316によって1つ以上の環境情報の項目の組合せである環境情報のパターンと経時変化情報とが送信される度に、環境情報のパターンと経時変化情報とを通信インタフェース24を介して取得する。運転情報取得部211は、環境情報のパターンと経時変化情報とをストレージ23に書き込む。これにより、
図5に示すように、環境情報のパターン毎に、経時変化情報が蓄積される。
実施の形態1では、機器40は空調機であるため、環境情報は、空調対象の部屋のサイズと、空調対象の部屋に設置された窓の数及び窓のサイズと、空調対象の部屋を含む建物の構造と、外気温といった情報である。また、対象パラメータは、空調対象の部屋の温度である。
【0023】
(ステップS102:実行判定処理)
実行判定部212は、運転性能の更新処理を実行するか否かを判定する。
具体的には、実行判定部212は、少なくとも一部の環境情報のパターンについて、前回運転性能を計算した後に、基準数以上の経時変化情報がストレージ23に書き込まれた場合に、運転性能の更新処理を実行すると判定する。基準数は、具体例としては、取得元機器の数に対する割合(例えば、5割又は6割)によって計算される。あるいは、実行判定部212は、指定されたタイミングになった場合に、運転性能の更新処理を実行すると判定する。指定されたタイミングは、毎日1度、毎週1度といった、ユーザによって指定された任意のタイミングである。
実行判定部212は、運転性能の更新処理を実行すると判定した場合には、処理をステップS103に進める。一方、実行判定部212は、運転性能の更新処理を実行しないと判定した場合には、処理をステップS101に戻す。
【0024】
(ステップS103:性能計算処理)
性能計算部213は、環境情報の各パターンを対象として、対象のパターンに対応する取得元機器についての経時変化情報が示す対象パラメータの値の経時変化から、対象のパターンに対応する使用環境における機器40の運転性能を計算する。
具体的には、まず、性能計算部213は、対象のパターンについて、対応する経時変化情報毎に、その経時変化情報から得られる運転性能を計算する。この際、性能計算部213は、経時変化情報が示す対象パラメータの値の経時変化から、単位時間当たりの対象パラメータの変化量を、その経時変化情報から得られる運転性能として計算する。例えば、
図6に示すように、目標値まで到達するのにかかった到達時間Tと、目標値と現在値との差Dと、単位時間当たりの対象パラメータの変化量である運転性能αとの関係をD=T×αとすると、運転性能αは、差Dを到達時間Tで除すことにより計算される。
次に、性能計算部213は、対象のパターンについて、対応する経時変化情報毎に計算された運転性能の平均値を、対象のパターンについての運転性能として計算する。つまり、対象のパターンについての運転性能αは、数1に示すように計算される。ここで、経時変化情報の数はNであり、α
kはk番目の経時変化情報について計算された運転性能である。
【数1】
性能計算部213は、計算された運転性能を示す性能情報をストレージ23に書き込む。これにより、
図7に示すように、環境情報の各パターンについて、対応する1つ以上の経時変化情報から運転性能がストレージ23に記憶される。
【0025】
なお、ステップS102では、基準数以上の経時変化情報が書き込まれたことにより、運転性能の更新処理を実行すると判定される場合がある。この場合には、性能計算部213は、全てのパターンを対象とするのではなく、基準数以上の経時変化情報が書き込まれたパターンのみを対象として運転性能を計算してもよい。
【0026】
図8を参照して、実施の形態1に係る開始時刻計算装置30の動作を説明する。
実施の形態1に係る開始時刻計算装置30の動作手順は、実施の形態1に係る開始時刻計算方法に相当する。また、実施の形態1に係る開始時刻計算装置30の動作を実現するプログラムは、実施の形態1に係る開始時刻計算プログラムに相当する。
【0027】
ここでは、開始時刻計算装置30に接続された機器40が制御対象の機器40であるため、開始時刻計算装置30に接続された機器40を対象の機器40と呼ぶ。
【0028】
(ステップS201:設定取得処理)
設定取得部311は、目標時刻と対象パラメータの目標値とを取得する。
具体的には、対象の機器40のユーザによって、対象の機器40のコントローラが操作される等して目標時刻及び目標値が入力される。設定取得部311は、入力された目標時刻及び目標値を通信路60を介して取得する。
目標時刻及び目標値は、目標時刻に対象パラメータが目標値になるように制御されることを想定して設定される。ここでは、対象パラメータは、空調対象の部屋の温度である。したがって、目標時刻及び目標値は、目標時刻に部屋の温度が目標値になるように制御されることを想定して設定される。
【0029】
(ステップS202:環境情報取得処理)
環境情報取得部312は、対象の機器40の運転性能に影響を与える対象の機器40の使用環境に関する環境情報のパターンを取得する。
環境情報は、上述した通り、ここでは、空調対象の部屋のサイズと、空調対象の部屋に設置された窓の数及び窓のサイズと、空調対象の部屋を含む建物の構造と、外気温といった情報である。空調対象の部屋のサイズと、空調対象の部屋に設置された窓の数及び窓のサイズと、空調対象の部屋を含む建物の構造といった情報については、対象の機器40の設置時に、対象の機器40のユーザによって入力され、ストレージ33に記憶される。したがって、これらの情報については、環境情報取得部312は、ストレージ33から読み出すことにより取得する。外気温については、環境情報取得部312は、対象の機器40である空調機の室外機に設けられた温度センサーによって計測された温度を取得するといった方法により取得する。
【0030】
(ステップS203:性能取得処理)
性能取得部313は、ステップS202で取得された環境情報のパターンに対応する運転性能を示す性能情報を性能計算装置20から取得する。
具体的には、性能取得部313は、ステップS202で取得された環境情報のパターンを、通信インタフェース34を介して性能計算装置20に送信する。すると、性能計算装置20の性能送信部214は、送信された環境情報のパターンに対応する運転性能を示す性能情報をストレージ23から読み出す。そして、性能送信部214は、読み出された性能情報を、通信インタフェース24を介して開始時刻計算装置30に送信する。性能取得部313は、性能計算装置20から送信された性能情報を取得する。
【0031】
(ステップS204:時刻計算処理)
時刻計算部314は、ステップS203で取得された性能情報が示す運転性能に基づき、対象の機器40によって目標時刻に対象パラメータを目標値にするための対象の機器40の運転開始時刻を計算する。
具体的には、まず、時刻計算部314は、対象パラメータの現在値を取得する。実施の形態1では、時刻計算部314は、空調対象の部屋の現在の温度を現在値として取得する。時刻計算部314は、ステップS201で取得された目標値と現在値との差Dと、ステップS203で取得された運転性能αとから、目標値まで到達するのにかかる到達時間Tを計算する。目標値と現在値との差Dと、運転性能αと、到達時間Tとの関係が
図6に示す関係である場合には、時刻計算部314は、目標値と現在値との差Dを運転性能αで除すことにより、到達時間Tを計算することができる。
そして、時刻計算部314は、現在時刻の到達時間Tだけ前の時刻を運転開始時刻として計算する。
【0032】
(ステップS205:時刻判定処理)
運転制御部315は、ステップS204で計算された運転開始時刻になったか否かを判定する。
運転制御部315は、運転開始時刻になった場合には、処理をステップS206に進める。一方、運転制御部315は、運転開始時刻になっていない場合には、一定時間経過後に再び運転開始時刻になったか否かを判定する。
【0033】
(ステップS206:運転開始処理)
運転制御部315は、対象の機器40に運転を開始させる。
具体的には、運転制御部315は、通信インタフェース34を介して、対象の機器40に運転開始の信号を送信して、対象の機器40に運転を開始させる。
【0034】
(ステップS207:時刻判定処理)
運転制御部315は、ステップS201で取得された目標時刻になったか否かを判定する。
運転制御部315は、目標時刻になった場合には、処理をステップS208に進める。一方、運転制御部315は、目標時刻になっていない場合には、一定時間経過後に再び目標時刻になったか否かを判定する。
【0035】
(ステップS208:運転制御処理)
運転制御部315は、対象の機器40の運転制御を行う。
具体的には、運転制御部315は、通信インタフェース34を介して、対象の機器40に運転制御の信号を送信して、対象の機器40に目標値を維持するような運転をさせる。この際、運転制御部315は、必要に応じて、対象の機器40に運転を停止させてもよい。
【0036】
ここで、運転制御部315は、ステップS206で対象の機器40に運転開始の信号を送信してから、ステップS208で対象の機器40に運転制御の信号を送信するまでの間、対象パラメータの値を定期的に取得する。運転制御部315は、取得した対象パラメータの値をメモリ32に書き込む。
【0037】
(ステップS209:運転情報送信処理)
運転情報送信部316は、ステップS206で対象の機器40が運転を開始してから、ステップS207で目標時刻になったと判定されるまでの対象パラメータの値の経時変化を示す経時変化情報を性能計算装置20に送信する。
具体的には、運転情報送信部316は、ステップS206で対象の機器40が運転を開始してから、ステップS207で目標時刻になったと判定されるまでの間にメモリ32に書き込まれた対象パラメータの値を読み出す。運転情報送信部316は、対象パラメータの値を時系列に並べた情報を経時変化情報として、通信インタフェース34を介して性能計算装置20に送信する。
【0038】
図9を参照して、実施の形態1に係る運転開始時刻の計算例を説明する。
図9に示すように、環境情報のパターンが、窓のサイズと、部屋のサイズと、建物の構造とのパターンによって設定されており、性能計算装置20によって環境情報の各パターンについての運転性能が計算されているとする。
このとき、
図8のステップS201で、ある開始時刻計算装置30に接続された機器40に対して、目標時刻が11時30分であり、目標値が27℃であると入力されたとする。また、この機器40についての環境情報のパターンは、窓のサイズが小であり、部屋のサイズが大であり、建物の構造が木造であるとする。
すると、
図8のステップS203で性能取得部313は、環境情報のパターンに対応するパターンEの性能情報を取得する。パターンEの性能情報が示す運転性能は、10分当たりに4℃上昇させることを示す。ここで、現在値である部屋の現在の温度は18℃であるとする。すると、
図8のステップS204で時刻計算部314は、(27℃−18℃)/4℃×10分を計算することにより、目標値まで到達するのにかかる到達時間Tは22.5分であると計算する。そして、時刻計算部314は、目標時刻11時30分の22.5分前である11時7分30秒を運転開始時刻として計算する。
【0039】
図10を参照して、実施の形態1に係る運転性能の更新例を説明する。
パターンEに対応する環境情報のパターンに該当する機器40の制御が基準数以上実行されたとする。すると、
図4のステップS101でパターンEについての経時変化情報が基準数以上取得される。そのため、
図4のステップS102で運転性能の更新処理を実行すると判定される。そして、
図4のステップS103で性能計算部213は、蓄積された経時変化情報に基づき、運転性能を計算する。これにより、
図10に示すように、パターンEについての運転性能が更新される。
【0040】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る開始時刻計算システム10は、性能計算装置20が、複数の機器40を取得元機器として、環境情報のパターンと経時変化情報とを取得し、環境情報のパターン毎に機器40の運転性能を計算する。そして、開始時刻計算装置30は、接続された機器40についての環境情報のパターンに対応する運転性能を示す性能情報を性能計算装置20から取得して、性能情報が示す運転性能に基づき運転開始時刻を計算する。
これにより、開始時刻計算装置30は、接続された機器40が新規に接続され運転実績がないような場合であっても、機器40について適切な運転開始時刻を計算可能になる。
【0041】
また、実施の形態1に係る開始時刻計算システム10は、性能計算装置20が開始時刻計算装置30から送信される経時変化情報に基づき、運転性能を更新する。
これにより、運転実績が増えるほど運転性能の精度が高くなり、適切な運転開始時刻を計算可能になる。
【0042】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、
図8のステップS204で取得された現在値である部屋の温度に基づき運転開始時刻を計算し、運転開始時刻になると機器40である空調機の運転が開始された。ここで、運転開始時刻は、目標値と現在値との差Dに基づき計算される。そのため、運転開始時刻を計算するタイミングによって部屋の温度が変わる場合には、運転開始時刻を計算するタイミングによって計算される運転開始時刻が異なってしまう。この場合には、運転開始時刻が適切でなくなる可能性がある。
例えば、
図9を参照して説明した例では、目標時刻が11時30分であり、目標値が27℃であり、現在値である部屋の温度は18℃であった。このとき、運転開始時刻は、11時7分30秒と計算された。しかし、例えば、時刻が11時00分になったときには、部屋の温度が23℃になっていたとする。すると、(27℃−23℃)/4℃×10分を計算することにより、目標値まで到達するのにかかる到達時間Tは10分になる。つまり、運転開始時刻は、11時30分の10分前である11時20分になる。すなわち、運転開始時刻を計算した時点よりも、現在値である部屋の温度が目標値に近づいたため、運転開始時刻を遅くした方が適切であったことになる。なお、逆に、運転開始時刻を計算した時点よりも、現在値である部屋の温度が目標値から遠くなった場合には、運転開始時刻を早くした方が適切であったことになる。
【0043】
また、環境情報として外気温のように時刻によって変化する情報が含まれている場合には、
図8のステップS203で性能情報を取得するタイミングによって取得される性能情報が異なってしまう。そのため、現在値が変わる場合と同様に、性能情報を取得するタイミングによって計算される運転開始時刻が異なってしまう。この場合にも、運転開始時刻が適切でなくなる可能性がある。
【0044】
そこで、一旦計算された運転開始時刻の基準時間前に、環境情報及び性能情報を再取得し、運転開始時刻を再計算してもよい。基準時間は、例えば1時間といった時間である。これにより、より適切な運転開始時刻を計算することが可能になる。
【0045】
図11を参照して、変形例1に係る開始時刻計算装置30の動作を説明する。
ステップS301からステップS304の処理は、
図8のステップS201からステップS204の処理と同じである。また、ステップS309からステップS313の処理は、
図8のステップS205からステップS209の処理と同じである。
【0046】
(ステップS305:再計算判定処理)
時刻計算部314は、ステップS304で計算された運転開始時刻の基準時間前になったか否かを判定する。
時刻計算部314は、運転開始時刻の基準時間前になった場合には、処理をステップS306に進める。一方、時刻計算部314は、運転開始時刻の基準時間前になっていない場合には、一定時間経過後に再び運転開始時刻の基準時間前になったか否かを判定する。
【0047】
(ステップS306:環境情報取得処理)
環境情報取得部312は、対象の機器40の運転性能に影響を与える対象の機器40の使用環境に関する環境情報のパターンを取得する。
【0048】
(ステップS307:性能再取得処理)
性能取得部313は、ステップS306で取得された環境情報のパターンに対応する運転性能を示す性能情報を性能計算装置20から取得する。
【0049】
(ステップS308:時刻再計算処理)
時刻計算部314は、ステップS304と同様の方法により、運転開始時刻を計算し直す。つまり、時刻計算部314は、改めて対象パラメータの現在値を取得する。そして、時刻計算部314は、取得された現在値と、ステップS307で取得された性能情報とに基づき、運転開始時刻を計算する。
【0050】
<変形例2>
実施の形態1では、各機能構成要素がソフトウェアで実現された。しかし、変形例2として、各機能構成要素はハードウェアで実現されてもよい。この変形例2について、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0051】
図12を参照して、変形例2に係る性能計算装置20の構成を説明する。
各機能構成要素がハードウェアで実現される場合には、性能計算装置20は、プロセッサ21とメモリ22とストレージ23とに代えて、電子回路25を備える。電子回路25は、性能計算装置20の各機能構成要素と、メモリ22と、ストレージ23との機能とを実現する専用の回路である。
【0052】
図13を参照して、変形例2に係る開始時刻計算装置30の構成を説明する。
各機能構成要素がハードウェアで実現される場合には、開始時刻計算装置30は、プロセッサ31とメモリ32とストレージ33とに代えて、電子回路35を備える。電子回路35は、開始時刻計算装置30の各機能構成要素と、メモリ32と、ストレージ33との機能とを実現する専用の回路である。
【0053】
電子回路25,35としては、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA(Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)が想定される。
各機能構成要素を1つの電子回路25,35で実現してもよいし、各機能構成要素を複数の電子回路25,35に分散させて実現してもよい。
【0054】
<変形例3>
変形例3として、一部の各機能構成要素がハードウェアで実現され、他の各機能構成要素がソフトウェアで実現されてもよい。
【0055】
プロセッサ21,31とメモリ22,32とストレージ23,33と電子回路25,35とを処理回路という。つまり、各機能構成要素の機能は、処理回路により実現される。
【0056】
実施の形態2.
実施の形態2は、複数の機器40を取得元機器として取得された環境情報のパターンに含まれない環境情報のパターンについての運転性能を計算する点が実施の形態1と異なる。実施の形態2では、この異なる点を説明し、同一の点については説明を省略する。
【0057】
***構成の説明***
図14を参照して、実施の形態2に係る性能計算装置20の構成を説明する。
性能計算装置20は、パターン指定部215を備える点が
図2に示す性能計算装置20と異なる。
【0058】
***動作の説明***
図15及び
図16を参照して、実施の形態2に係る開始時刻計算システム10の動作を説明する。
【0059】
図15を参照して、実施の形態2に係る性能計算装置20の動作を説明する。
実施の形態2に係る性能計算装置20の動作手順は、実施の形態2に係る性能計算方法に相当する。また、実施の形態2に係る性能計算装置20の動作を実現するプログラムは、実施の形態2に係る性能計算プログラムに相当する。
【0060】
(ステップS401:パターン指定処理)
パターン指定部215は、運転性能を計算する環境情報のパターンの指定を受け付ける。
具体的には、パターン指定部215は、通信インタフェース24を介して、ユーザによって指定された環境情報のパターンを受け付ける。
ここでは、複数の機器40を取得元機器として取得された環境情報のパターンに含まれない環境情報のパターンが指定されたものとして説明する。つまり、
図4に示す処理において、運転性能が未だ計算されていない環境情報のパターンが指定されたものとして説明する。しかし、複数の機器40を取得元機器として取得された環境情報のパターンに含まれる環境情報のパターンが指定されてもよい。複数の機器40を取得元機器として取得された環境情報のパターンに含まれる環境情報のパターンが指定された場合には、以下で説明する方法により計算された運転性能により指定されたパターンについての運転性能が更新される。
【0061】
(ステップS402:補正係数計算処理)
性能計算部213は、複数の機器40を取得元機器として取得された環境情報の各パターンについての運転性能に基づき、各環境情報について、運転性能に与える影響を表す補正係数を計算する。つまり、性能計算部213は、
図4に示す処理において、運転性能が計算された環境情報の各パターンの運転性能に基づき、各環境情報について、運転性能に与える影響を表す補正係数を計算する。
具体的には、性能計算部213は、各パターンについての運転性能を、機器40の固有の運転性能である基本性能と、そのパターンに含まれる環境情報についての補正係数との和として表す。つまり、基本性能をα
0とし、L個の環境情報それぞれについての補正係数をα
1,α
2,...,α
Lとし、パターンにおける各環境情報についての重みをβ
1,β
2,...,β
Lとして、運転性能αを数2によって表す。ここで、パターンにおける各環境情報についての重みとは、例えば、環境情報が窓であれば、窓の個数等である。
【数2】
パターン数をNとすると、i=1,...,Nの各整数iについてのパターンの運転性能α
iは数3のように表される。
【数3】
性能計算部213は、数3の式を解くことにより、L個の環境情報それぞれについての補正係数であるα
1,α
2,...,α
Lを計算する。
【0062】
(ステップS403:性能計算処理)
性能計算部213は、ステップS401で受け付けされたパターンにおける各環境情報についての重みと、ステップS402で計算された各環境情報についての補正係数と、機器40の基本性能とから、ステップS401で受け付けされたパターンについての運転性能を計算する。
具体的には、ステップS401で受け付けされたパターンについての運転性能をαとし、各環境情報についての補正係数をα
1,α
2,...,α
Lとし、各環境情報についての重みをβ
1,β
2,...,β
Lとして、数2を解くことにより、運転性能αを計算する。
【0063】
図16を参照して、実施の形態2に係る運転性能の計算例を説明する。
環境情報1及び環境情報2を持つパターンAと、環境情報1及び環境情報3を持つパターンBと、環境情報2を2つ持つパターンCとの運転性能が既に計算されているとする。このとき、環境情報2及び環境情報3を持つパターンDについての運転性能が計算されるとする。
この場合には、i=1,...,3の各整数iについてのパターンの運転性能α
iは数4のように表される。
【数4】
そのため、補正係数α
1,α
2,α
3は、数5のように表される。
【数5】
ここで、α
0=0.5である。したがって、α
1=0.8、α
2=0.2、α
3=0.5になる。その結果、パターンDの運転性能α=α
0+α
2+α
3=0.5+0.2+0.5=1.2になる。
【0064】
***実施の形態2の効果***
以上のように、実施の形態2に係る開始時刻計算システム10は、性能計算装置20が複数の機器40を取得元機器として取得された環境情報のパターンに含まれない環境情報のパターンについての運転性能を計算する。特に、性能計算装置20は、複数の機器40を取得元機器として取得された環境情報のパターンの運転性能に基づき、含まれない環境情報のパターンについての運転性能を計算する。
これにより、これまで存在しなかった環境情報のパターンについての運転性能を精度よく計算することが可能である。その結果、開始時刻計算装置30は、接続された機器40が新規に接続され運転実績がないような場合であっても、機器40について適切な運転開始時刻を計算可能になる。