特開2020-204537(P2020-204537A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204537(P2020-204537A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20201127BHJP
   G01N 27/16 20060101ALI20201127BHJP
   G01N 27/18 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   G01N27/12 B
   G01N27/16 A
   G01N27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-112446(P2019-112446)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琴江
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046AA04
2G046BD01
2G046BD04
2G046BD05
2G046BD06
2G046BF01
2G046BF05
2G060AA01
2G060AB15
2G060AE19
2G060AF07
2G060BA01
2G060BA03
2G060BA05
2G060BB14
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】
被測定ガス中に腐食性ガスであるフッ化物系ガスを含む環境下であっても、被測定ガス中に含まれる検知対象ガスを検知する検知素子がフッ化物系ガスによる腐食作用を受けることなく検知性能を維持でき、長期安定的に検知対象ガスの高精度な検出が可能な耐久性に優れたガスセンサの提供。
【解決手段】
被測定ガス中の特定の検知対象ガスを検知するガスセンサ1において、検知対象ガスを検知する検知素子を含む検知部10と、被測定ガスが検知部10に流下するガス流路の検知部10の上流側に、被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスを吸着する吸着・転化部20と、を備え、吸着・転化部20は、塩基性水酸化物を不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材21、及び、強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材22から選択される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の特定の検知対象ガスを検知するガスセンサにおいて、
前記検知対象ガスを検知する検知素子を含む検知部と、
前記被測定ガスが前記検知部に流下するガス流路の前記検知部の上流側に、前記被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスを吸着する吸着・転化部と、を備え、
前記吸着・転化部は、塩基性水酸化物を不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材、及び、強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材から選択される少なくとも1つを含む、ガスセンサ。
【請求項2】
前記吸着・転化部は、前記上流側から、水酸化物系吸着・転化材、イオン交換系吸着・転化材の順に設けられている、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記塩基性水酸化物が、水酸化マンガン(II)(Mn(OH)2)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)2)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化銅(II)(Cu(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化ランタン(III)(La(OH)3)から選択される少なくとも1つである請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記強塩基性陰イオン交換基が、トリメチルアンモニウム基、又は、ジメチルエタノールアンモニウム基である請求項1〜3の何れか一項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記フッ化物系ガスが、フッ化水素である請求項1〜4の何れか一項に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記吸着・転化部は、前記フッ化物系ガスを吸着すると共に、前記検知対象ガスを分解して転化ガスを生成し、前記検知部は、生成した前記転化ガスを検知する検知素子を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記検知対象ガスが、炭酸エステルであり、前記吸着・転化部は、前記フッ化物系ガスを吸着すると共に、前記炭酸エステルを分解してアルコール生成し、前記検知部は、生成したアルコールを検知する検知素子を含む、請求項6に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関し、特に、被測定ガス中に腐食性ガスであるフッ化物系ガスを含む環境下における検知対象ガスの検知に適用でき、長期安定的に検知性能を維持できるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、例えば、可燃性ガスや毒性ガス検知等の保安用、ハイブリッド車や電気自動車等に搭載されるリチウムイオン電池(以下、「LIB」と称する場合がある)及び燃料電池車に搭載される燃料電池の制御及び保守並びに排ガス監視等の車載用、産業生産工程における燃焼制御や化学反応監視等の産業用、大気監視等の環境用等、その利用範囲は多岐にわたり、また、その使用環境も多様な状況が含まれる。そのため、被測定ガス中に、腐食性の高いガスが含まれる場合があり、そのような腐食性ガスに長時間が暴露されるとガスセンサの検知素子が劣化し検知性能が低下する。
【0003】
例えば、ハイブリッド車、及び、電気自動車、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の電源や蓄電システム等の用途に利用されるリチウムイオン電池は、典型的には、リチウム酸化物等のリチウム材を構成材料とする正極、炭素材等を構成材料とする負極、及び、電解液で構成される。電解液は、電解質塩と有機溶媒から構成されており、電極材料に応じた様々な化合物の組み合わせが使用されている。例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)やホウフッ化リチウム(LiBF4)等のフッ化物系塩と炭酸エステル系の有機溶媒の混合物が挙げられる。有機溶媒は、引火や爆発の恐れのある可燃性ガスあり、また、LIBの故障時等、LIBに起因して発生するガスの主要成分であることから、有機溶媒系ガスはガスセンサでの検知対象となる。したがって、かかる有機溶媒系ガスを検知することでLIBの故障及び故障の予兆を検知することができ、故障を未然に防ぐと共に適切な保守・点検等に役立つ。しかしながら、かかる有機溶媒系ガスをガスセンサで検知する際に、電解液中に存在するフッ化物系塩が水分と反応し腐食性の高いフッ化水素(HF)等のフッ化物系ガスを発生するため、ガスセンサはフッ化物系ガスにも曝露される。上記したようにフッ化物系ガスは腐食性ガスであるため、ガスセンサの検知素子が劣化し検知性能が低下するという問題が生じる。
【0004】
また、六フッ化硫黄(SF6)は、ガス変圧器、ガス遮断器、ガス絶縁開閉装置等の電力機器において絶縁体や消弧媒体として利用されている。SF6は、常温常圧では非常に安定であるが、700℃〜900℃に加熱した不鋳鋼や銅により熱分解され四フッ化硫黄(SF4)を生じ、SF4は、金属、例えば、アルカリ金属の水酸化物等と反応して金属硫化物と腐食性の高いHF等のフッ化物が生成する。水とは、常温付近では反応しないが、高温高圧下では、水と反応し有毒ガスであるフッ化スルフリル(SO2F2)等が生成される。更に、HF等のフッ化物系ガスは半導体製造過程においても使用される。したがって、ガスセンサの使用環境下においてフッ化物系ガスが存在する多くの状況が想定される。
【0005】
腐食性ガスであるフッ化物系ガスは、環境に対する負荷があることから、フッ化物系ガスを環境中に放出しないように監視するためのガスセンサが報告されている(例えば、特許文献1等を参照のこと)。特許文献1には、半導体製造過程においてエッチングガスやクリーニングガスとして用いられるフッ化物系ガスのヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(以下、「C4F6」と略する場合がある)を、加熱したパラジウム系触媒又は白金系触媒等の貴金属触媒に接触させて熱分解することで、HFに転化し、かかるHFを検知素子で検出することで、C4F6を検知する技術である。これにより、従来においては、センサ感度の問題により検知ができなかったC4F6を、HFに転化することで効率よく検知できるようになる。しかしながら、特許文献1の技術は、フッ化物系ガスであるC4F6を、熱分解によって生成した転化ガスであるHFの検出を介して検知することを目的とするものである。そのため、フッ化物系ガス等の腐食性ガスによる検知素子の劣化を抑制する技術の構築が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−80949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、被測定ガス中に腐食性ガスであるフッ化物系ガスを含む環境下であっても、被測定ガス中に含まれる検知対象ガスを検知する検知素子がフッ化物系ガスによる腐食作用を受けることなく検知性能を維持でき、長期安定的に検知対象ガスの高精度な検出が可能な耐久性に優れたガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、塩基性水酸化物や強塩基性陰イオン交換基等を利用することで被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスを吸着できること、かかる塩基性水酸化物や強塩基性陰イオン交換基等を担持した部材をガスセンサに搭載することで、被測定ガス中に腐食性ガスであるフッ化物系ガスを含む環境下における検知対象ガスの検知にも好適に適用でき、長期安定的に検知性能を維持できることを見出した。また、本発明者は、塩基性水酸化物や強塩基性陰イオン交換基等が、検知対象ガスを検知素子への感応性が良好な物質に転化でき、かかる転化されたガスを検知することにより良好なガス検知感度を担保できることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ガスセンサに関するものであり、その特徴構成は、被測定ガス中の特定の検知対象ガスを検知するガスセンサにおいて、前記検知対象ガスを検知する検知素子を含む検知部と、前記被測定ガスが前記検知部に流下するガス流路の前記検知部の上流側に、前記被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスを吸着する吸着・転化部と、を備え、前記吸着・転化部は、塩基性水酸化物を不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材、及び、強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材から選択される少なくとも1つを含む、点にある。
【0010】
本構成によれば、ガスセンサに、塩基性水酸化物を不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材、及び、強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材から選択される少なくとも1つを含む吸着・転化部を搭載することで、被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスを吸着でき、検知部、特には検知素子をフッ化物系ガスから保護できるガスセンサを提供できる。フッ化物系ガスは腐食性が強いことから、従来のガスセンサにおいては、被測定ガス中にフッ化物系ガスが含まれる環境下で使用した場合には、フッ化物系ガスが検知素子等を腐食させてガスセンサの検知性能の長期安定性が低下するという問題があった。これに対して、本構成のガスセンサは、被測定ガス中に腐食性ガスであるフッ化物系ガスを含む環境下における検知対象ガスの検知にも好適に適用でき、耐久性に優れ長期安定的に検知性能を維持できる。
【0011】
他の特徴構成は、前記吸着・転化部は、前記上流側から、水酸化物系吸着・転化材、イオン交換系吸着・転化材の順に設けられている、点にある。
【0012】
本構成によれば、吸着・転化部として、被測定ガスが検知素子へと流下するガス流路の上流側から水酸化物系吸着・転化材、イオン交換系吸着・転化材の順に設けることにより、上流側の水酸化物系吸着・転化材により吸着されなかったフッ化物系ガスが、下流側のイオン交換系吸着・転化材により吸着でき、これにより、検知素子をフッ化物系ガスから効果的に保護することができる。したがって、本構成のガスセンサによれば、更に長期安定的に検知性能を維持できる。
【0013】
他の特徴構成は、前記塩基性水酸化物が、水酸化マンガン(II)(Mn(OH)2)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)2)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化銅(II)(Cu(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化ランタン(III)(La(OH)3)から選択される少なくとも1つである、点にある。
【0014】
本構成によれば、塩基性水酸化物として、フッ化物系ガスを吸着するのに十分な塩基性を有する化合物を用いることから、検知部、特には検知素子をフッ化物系ガスから効果的に保護できる。また、これらの塩基性水酸化物は難水溶性であり、かつ、潮解性が低いことから、水酸化物系吸着・転化材の長期安定化を図れ、フッ化物系ガスの吸着性能を長期に亘って維持できる。したがって、本構成のガスセンサによれば、更に長期安定的に検知性能を維持できる。
【0015】
他の特徴構成は、前記強塩基性陰イオン交換基が、トリメチルアンモニウム基、又は、ジメチルエタノールアンモニウム基である、点にある。
【0016】
本構成によれば、強塩基性陰イオン交換基として、フッ化物系ガスを吸着するのに十分な塩基性を有する強塩基性陰イオン交換基を用いることから、検知部、特には検知素子をフッ化物系ガスから効果的に保護できる。したがって、本構成のガスセンサによれば、更に長期安定的に検知性能を維持できる。
【0017】
他の特徴構成は、前記フッ化物系ガスが、フッ化水素である、点にある。
【0018】
本構成によれば、フッ化物系ガスとして腐食性の高いフッ化水素から、検知部、特には検知素子を効果的に保護できる。したがって、本構成のガスセンサによれば、更に長期安定的に検知性能を維持できる。
【0019】
他の特徴構成は、前記吸着・転化部は、前記フッ化物系ガスを吸着すると共に、前記検知対象ガスを分解して転化ガスを生成し、前記検知部は、生成した前記転化ガスを検知する検知素子を含む、点にある。
【0020】
本構成によれば、ガスセンサに搭載された塩基性水酸化物を不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材、及び、強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材から選択される少なくとも1つを含む吸着・転化部が、フッ素物系ガスを吸着するだけなく、検知対象ガスを検知素子への感応性が良好な物質に転化でき、かかる転化ガスを検知することにより良好なガス検知感度を担保できる。また、低分子の物質に転化することで、反応性向上のための加温温度を低く設定することができ、低消費電力化を図ることができる。更に、フッ化物系ガスの吸着と検知対象ガスの転化を一の部材で行うことができるため、ガスセンサの構成を簡略化できる。従来においては、貴金属触媒等の存在下での熱分解によって生成した転化ガスを検出することにより検知対象ガスを検知する技術が利用されていた。一方、本構成のガスセンサによれば、塩基性水酸化物や強塩基性陰イオン交換基といった塩基性物質により検知対象ガスを検知素子への感応性が良好な物質に転化でき、触媒や高温での加熱が必要なくコストを低減することができる。
【0021】
他の特徴構成は、前記検知対象ガスが、炭酸エステルであり、前記吸着・転化部は、前記フッ化物系ガスを吸着すると共に、前記炭酸エステルを分解してアルコールを生成し、前記検知部は、生成したアルコールを検知する検知素子を含む、点にある。
【0022】
本構成によれば、検知対象ガスである炭化エステルを検知素子への感応性が良好な物質であるアルコールに転化でき、かかるアルコールを検知することにより良好なガス検知感度を担保できるガスセンサを提供できる。本構成のガスセンサによれば、例えば、炭酸エステルを電解液の有機溶媒等として利用するLIB等の故障及び故障の予兆の検知することができる。したがって、本構成のガスセンサは、LIB等の故障を未然に防ぐと共に、適切な保守・点検等の予兆検知技術の構築等に貢献でき、予兆検知センサとして構築することができ、しかも、長期安定的に検知性能を維持できるものを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ガスセンサの一例の構成を示す概略断面図。
図2】ガスセンサの一例の構成を示す斜視図であり、ケーシングを備えるガスセンサの構成の一例を示す。
図3】ガスセンサの検知対象ガスの一例である炭酸エステルの転化の反応機構を要約する図。
図4】ガスセンサの作動の概略を示すフロー図であり、炭酸エステルを検知対象ガスとする一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るガスセンサについて詳細に説明する。ただし、本発明は、後述する実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態に係るガスセンサ1は、検知対象ガスを検知する検知素子11を含む検知部10と、前記検知部10、特には検知素子11を、フッ化物系ガスから保護する吸着・転化部20を備える。フッ化物系ガスは、非常に強い酸化作用を有することから腐食性が強い。したがって、フッ化物系ガスがガスセンサ1の検知素子11に接触すると、検知素子11を腐食させてガスセンサ1の検知性能の長期安定性が低下する。そのため、検知素子11をフッ化物系ガスから保護する必要性がある。本実施形態に係るガスセンサ1は、フッ化物系ガスを吸着する吸着・転化部20を設けることで検知素子11をフッ化物系ガスから保護するものであり、これにより、本実施形態に係るガスセンサ1の被フッ化物系ガスに対する耐久性が向上し、検知性能の長期安定性を向上させることができる。
【0026】
ここで、検知部10、特には、検知素子11の劣化を招くフッ化物系ガスとしては、例えば、フッ化水素(HF)、フッ化硫黄、フッ化炭素等が例示されるが、これらに限定するものではない。フッ化硫黄は、例えば、二フッ化二硫黄(S2F2)、四フッ化硫黄(SF4)、六フッ化硫黄(SF6)、十フッ化二硫黄(S2F10)等が挙げられるが、これらに限定するものではない。フッ化炭素は、例えば、四フッ化炭素(CF4)、六フッ化エタン(C2F6)、八フッ化プロパン(C3F8)、ヘキサフルオロ1,3ブタジエン(C4F6)、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)、オクタフルオロシクロペンテン(C5F8)等が挙げられるが、これらに限定するものではない。なお、ここで例示したフッ化物系ガスには、常温常圧下において安定で、腐食性が低い、若しくは、腐食性を有しないガス種が含まれるが、熱分解等により、腐食性の高いフッ化水素等に分解される可能性があることから、検知素子11の劣化を招く可能性のあるものとして列挙している。
【0027】
本実施形態に係るガスセンサ1の被測定ガスは、検知対象ガスを含むガスである限り、環境中に存在する任意のガスを被測定ガスとすることができる。また。検知対象ガスについても検知素子11により検知可能なガスである限り制限はない。検知対象ガスとしては、例えば、リチウムイオン電池の電解液として用いられる炭酸エステル系ガス等の有機溶媒ガス等を含む可燃性ガス、ガス絶縁体やガス消弧媒体液晶用や半導体用等の材料ガス、毒性ガス等が挙げられるが、これらに限定するものではない。したがって、本実施形態に係るガスセンサ1は、可燃性ガスや毒性ガス検知等の保安用、ハイブリッド車や電気自動車等に搭載されるリチウムイオン電池(以下、「LIB」と称する場合がある)及び燃料電池車に搭載される燃料電池の制御及び保守並びに排ガス監視等の車載用、産業生産工程における燃焼制御や化学反応監視等の産業用、大気監視等の環境用等、種々の用途に利用できる。
【0028】
本実施形態に係るガスセンサ1を、図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一の構成については同一の符号を付し、重複する構成の詳細な説明は省略する。
【0029】
図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の一例における構成の概略断面図である。図1に示す通り、本実施形態に係るガスセンサ1は、検知対象ガスを検知する検知部10と、検知部10をフッ化物系ガスから保護するためフッ化物系ガスを吸着する吸着・転化部20と、を備えている。
【0030】
検知部10は、検知対象ガスと感応する検知素子11を備えている。検知素子11は、適当な基板等で構成される検知素子支持基材12上に配置することができる。本実施形態に係るガスセンサ1を、検知対象ガスを転化することにより生成した転化ガスを介して検知対象ガスを検知するように構成することができ、その場合には、検知素子11は、転化ガスに感応するものとして構成すればよい。
【0031】
検知素子11の種類は、ガスセンサ1の種類や検知対象ガスの種類等に応じて適宜選択される。本実施形態のガスセンサ1は、半導体式ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサ、熱伝導式ガスセンサ、電気化学式センサ等、公知の検出原理に基づくガスセンサ1として構築することができる。
【0032】
本実施形態に係るガスセンサ1を半導体式ガスセンサとする場合には、検知素子11は、例えば、ヒータコイルとアルミナ等の担体上に形成された酸化スズ(SnO2)、や酸化インジウム(III)(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物半導体を用いることができる。本実施形態に係るガスセンサ1を接触燃焼式ガスセンサとして構成する場合には、検知素子11としては、例えば、白金等の貴金属コイル等の表面が検知対象ガスに対して活性な白金やパラジウム等の貴金属等からなる触媒を坦持するアルミナ等の坦体で被覆されて形成されたものを用いることができ、補償素子としては、例えば、白金等の貴金属コイル等の上に検知対象ガスに不活性なアルミナとガラスの混合物を焼結したものを用いることができる。本実施形態のガスセンサ1を熱伝導式ガスセンサとして構成する場合には、検知素子11及び補償素子としては、例えば、白金等の貴金属コイル等の上に検知対象ガスに不活性なアルミナとガラスの混合物を焼結したもの、不活性金属等を被覆したもの等を用いることができ、補償素子は検知対象ガスに接触しない密閉構造としたものとする。本実施形態に係るガスセンサ1を電気化学式センサとする場合には、固体電解質のイオン伝導性を利用する固体電解質式ガスセンサとして構成することができ、検知素子11としては、例えば、ジルコニア(ZrO2)主な構成材料とし、そこに酸化カルシウム(CaO)や酸化イットリウム(Y2O3)を組み込んだ安定化ジルコニア等を用いることができる。
【0033】
検知素子11は、好ましくは、固体として構成される。このような検知素子11が固体であるガスセンサ1を固体式ガスセンサと称し、上記した半導体式ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサ、熱伝導式ガスセンサ、固体電解質を利用する電気化学式センサ等が該当する。固体式ガスセンサは、高温や低温に曝される車載用のガスセンサとしても好適に利用することができる。一般的に、固体式ガスセンサは、電解液等を利用する電気化学式ガスセンサに比べて、フッ化物系ガス等の腐食性ガスによる検知素子11の劣化が起こりやすい。しかし、本実施形態に係るガスセンサ1の構成を固体式ガスセンサに適用することで、フッ化物系ガス等の腐食性ガスによる検知素子11の劣化を、従来の固体式ガスセンサよりも抑制することができる。
【0034】
図1において、吸着・転化部20は、検知部10の上層に配置されている。図1では、被測定ガスが上方から下方に流下するものであり、吸着・転化部20は被測定ガスが、検知部10に流下するガス流路の検知部10の上流側に配置されている。このように構成することにより、被測定ガスは、吸着・転化部20を透過した後、検知部10に到達する。したがって、被測定ガスは、検知部10に流下する過程で、被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスは吸着・転化部20で除去されることから、検知部10はフッ化物系ガスの曝露から回避される。これにより、検知部10、特には検知素子11のフッ化物系ガスによる腐食を低減することができ、本実施形態に係るガスセンサ1の被フッ化物系ガスに対する耐久性が向上し、検知性能の長期安定性を向上させることができる。
【0035】
吸着・転化部20は、塩基性水酸化物を不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材21及び強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材22から選択される少なくとも1つを含んで構成される。吸着・転化部20の厚みや大きさ等に特に制限はなく、ガスセンサ1の検知素子11の種類や大きさ、測定対象ガスの種類やフッ化物系ガスの含有量、吸着・転化部20を設ける流路の大きさ等に応じて適宜設定できる。
【0036】
水酸化物系吸着・転化材21は、塩基性水酸化物21aを適当な不溶性担体に物理的吸着等により担持したものとでき、その担体としては、好ましくは、多孔質担体等を利用することができる。
【0037】
多孔質担体は、ガスを透過でき、その内部に塩基性水酸化物21aを担持できる微細な空孔が多数形成された三次元空孔構造を有する限りに特に制限ない。したがって、塩基性水酸化物21aをその内部に担持できる限り、多孔質担体の空孔径、空孔率、空孔分布等は適宜設定することができ、また、空孔の形状も制限はなく、空孔が連続する連続空孔であっても、各空孔が繋がっていない独立空孔のものであってもよい。多孔質担体としては、例えば、多孔質の織布材、不織布(フェルト)材、スポンジ材、ファイバ材等が挙げられる。材質は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリウレタン等の合成樹脂材料、炭素材料、ステンレスやアルミニウム、チタン、ニッケル等の金属・合金材料、シリカやアルミナ等の金属酸化物材料等が挙げられるが、これらに限定するものではない。図1のように、上記した合成樹脂材料や、炭素材料、金属・合金材料、金属酸化物材料等から成形された繊維材料の織布や不織布等を積層して形成したような粗密多層構造体等も多孔質担体に含むものとし、塩基性水酸化物21aは繊維材料の母材21bに物理吸着等により固定化される。これらの多孔質担体は、1種類のみ単独で用いてもよいし、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0038】
塩基性水酸化物21aは、一般式M(OH)nで表わされる水酸化物(Mは金属元素であり、nは金属元素Mの価数である)であり、好ましくは、難水溶性のものである。ここで、難水溶性とは、水に溶け難い、若しくは、実質的に水に溶けない不溶を意味するものとする。塩基性水酸化物21aは、フッ化物系ガス吸着性能の長期安定性の観点から、難水溶性であることに加え、潮解性の低いものであることが好ましい。例えば、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、亜鉛、銅(II)、アルミニウム、ランタン(III)、コバルト(II)等が例示される。水酸化物とは、具体的には、水酸化マンガン(II)(Mn(OH)2)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)2)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化銅(II)(Cu(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化ランタン(III)(La(OH)3)、水酸化コバルト(II)(Co(OH)2)等が例示されるが、これらに限定するものではない。これらの塩基性水酸化物21aは、1種類のみ単独で用いてもよいし、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0039】
水酸化物系吸着・転化材21において、不溶性担体内部に担持された塩基性水酸化物21aは、フッ化物系ガスの構成成分であるフッ素と反応し、フッ素を捕捉する。つまり、塩基性水酸化物21aの構成成分である金属とフッ化物系ガスのフッ素が反応しフッ化物系塩(MFn:nは金属元素Mの価数)を形成する。形成したフッ化物系塩は不溶性担体に担持されることで、フッ化物系ガスを、水酸化物系吸着・転化材21内部に吸着する。
【0040】
塩基性水酸化物21aとフッ化物系ガスとの反応の代表例を下記に示すが、これらの反応に限定するものではない。
【0041】
(A)塩基性水酸化物21aとの反応
(1)フッ化水素との反応
[化1]
M(OH)n + nHF → MFn + nH2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する金属元素であり、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、亜鉛、銅(II)、アルミニウム、ランタン(III)、コバルト(II)等であり、何れのMも同一の金属元素を示し、nは金属元素Mの価数であり、何れのnも同一の数である)
【0042】
(2)フッ化硫黄との反応
(2−1)二フッ化二硫黄(S2F2
[化2]
2S2F2 + 6MOH → M2SO3 + 3S + 4MF + 3H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する一価の金属元素であり、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり、何れのMも同一の金属元素を表す)
[化3]
2S2F2 + 3M(OH)2 → MSO3+ 3S + 2MF2 + 3H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する二価の金属元素であり、例えば、マンガン(II)、鉄(II)、亜鉛、銅(II)、コバルト(II)等であり、何れのMも同一の金属元素を表す)
[化4]
6S2F2 + 6M(OH)3 → M2(SO3)3+ 9S + 4MF3 + 9H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する三価の金属元素であり、例えば、鉄(III)、アルミニウム、ランタン(III)等であり、何れのMも同一の金属元素を表す)
【0043】
(2−2)四フッ化硫黄(SF4
[化5]
SF4 + 6MOH → M2SO3 + 4MF + 3H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する一価の金属元素であり、上記したものが例示され、何れのMも同一の金属元素を表す)
[化6]
SF4 + 3M(OH)2→ MSO3 + 2MF2 + 3H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する二価の金属元素であり、上記したものが例示され、何れのMも同一の金属元素を表す)
[化7]
SF4 + 6M(OH)3→ M2(SO3)3 + 4MF2 + 9H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する三価の金属元素であり、上記したものが例示され、何れのMも同一の金属元素を表す)
【0044】
(2−3)十フッ化二硫黄(S2F10
[化8]
S2F10 + 14MOH → M2SO3 + M2SO4 + 10MF + 7H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する一価の金属元素であり、上記したものが例示され、何れのMも同一の金属元素を表す)
[化9]
S2F10+7M(OH)2 → MSO3 + MSO4 + 5MF2 + 7H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する二価の金属元素であり、上記したものが例示され、何れのMも同一の金属元素を表す)
[化10]
3S2F10 + 14M(OH)3→ M2(SO3)3 + M2(SO3)4+ 10MF2 + 21H2O
(式中、Mは、水酸基と塩、好ましくは、難水溶性の塩を形成する三価の金属元素であり、上記したものが例示され、何れのMも同一の金属元素を表す)
【0045】
イオン交換系吸着・転化材22は、強塩基性陰イオン交換基を適当な不溶性担体に担持したものとできる。不溶性担体としては、好ましくは、高分子化合物等を利用することができる。したがって、高分子化合物の分子鎖を母材とし、かかる母材に強塩基性陰イオン交換基を導入したイオン交換樹脂として構成することができ、高分子化合物の分子鎖の網目状の三次元構造体内に強塩基性陰イオン交換基が導入された形態となる。イオン交換樹脂を構成する高分子化合物は、その分子構造内に強塩基性陰イオン交換基を導入できるものであれば特に制限はない。具体的には、スチレン系やアクリル系、メタクリル系等の合成樹脂を利用することができ、架橋剤としてジビニルベンゼン(DVB)の多官能性モノマー等を含めた共重合体とすることもできる。また、イオン交換樹脂は、ゲル型であっても、多孔性型であってもよく、その形状も特に制限はなく、ビーズ状等とすることができる。また、イオン交換樹脂を、更に、上記したような多孔質担体内部に担持したものをしてもよい。
【0046】
強塩基性陰イオン交換基は、好ましくは、第4級アンモニウム基である。したがって、トリメチルアンモニウム基を有するI型の強塩基性の陰イオン交換樹脂として構成してもよいし、ジメチルエタノールアンモニウム基を有するII型の強塩基性の陰イオン交換樹脂として構成してもよく、両者を併用したものとしてもよい。下記に、I型及びII型の強塩基性陰イオン交換樹脂の構造を示す(三菱ケミカルのイオン交換樹脂、分離精製用樹脂、ダイヤイオンTMセパビーズTM MCI GELTM: >商品のご紹介>イオン交換樹脂>強塩基性陰イオン交換樹脂、インターネット、2019年5月10日検索<URL:https://www.diaion.com/products/ion_03_01.html)。
【化11】
【化12】
【0047】
イオン交換系吸着・転化材22において、上記した水酸化物系吸着・転化材21と同様に不溶性担体に担持された強塩基性陰イオン交換基は、フッ化物系ガスの構成成分であるフッ素と反応し、フッ素を捕捉する。例えば、イオン交換樹脂等の母材である高分子の分子鎖の網目状の三次元構造体内導入された強塩基性陰イオン交換基がフッ素を取りこみ、フッ素は当該高分子の分子鎖の三次元構造体内部に固定されることで、フッ化物系ガスをイオン交換系吸着・転化材21に吸着する。
【0048】
強塩基性陰イオン交換基とフッ化物系ガスとの反応の代表例を下記に示すが、これらの反応に限定するものではない。したがって、下記の例では、強塩基性陰イオン交換基としてトリメチルアンモニウム基(I型)を用いた例を示すが、ジメチルエタノールアンモニウム基(II型)でも同様の反応が進行する。
【0049】
(B)強塩基性陰イオン交換基との反応
(1)フッ化水素との反応
[化13]
R-[N(CH3)3]+[OH]-+ HF → R-N(CH3)3F + H2O
(式中、Rは、イオン交換樹脂の母材となるスチレン系やアクリル系等の高分子の分子鎖を表す)
【0050】
(2)フッ化硫黄との反応
(2−1)二フッ化二硫黄(S2F2
[化14]
2S2F2+ 6(R-[N(CH3)3]+[OH]-) → (R-N(CH3)3)2SO3+ 3S + 4(R-N(CH3)3)F + 3H2O
(式中、Rは、イオン交換樹脂の母材となるスチレン系やアクリル系等の高分子の分子鎖を表す)
【0051】
(2−2)四フッ化硫黄(SF4
[化15]
SF4 + 6(R-[N(CH3)3]+[OH]-) → (R-N(CH3)3)2SO3 + 4((R-N(CH3)3)F) + 3H2O
(式中、Rは、イオン交換樹脂の母材となるスチレン系やアクリル系等の高分子の分子鎖を表す)
【0052】
図1においては、吸着・転化部20を、水酸化物系吸着・転化材21及びイオン交換系吸着・転化材22により構成し、被測定ガスが検知素子11を含む検知部10に流下するガス流路の上流側から、水酸化物系吸着・転化材21、イオン交換系吸着・転化材22を配置して積層した例を示した。これにより、水酸化物系吸着・転化材21により吸着されなかったフッ化物系ガスを、イオン交換系吸着・転化材22により吸着でき、検知部10、特には検知素子11を、フッ化物系ガスから効果的に保護することができる。しかしながら、上流側にイオン交換系吸着・転化材22を配置して積層してもよい。また、下流側に、更に水酸化物系吸着・転化材21を配置する等、複数の水酸化物系吸着・転化材21、及び、イオン交換系吸着・転化材22を積層する等してもよく、積層の順序や積層数等には制限はない。また、水酸化物系吸着・転化材21、イオン交換系吸着・転化材22の何れか単独で構成されていてもよい。
【0053】
図1に示すように、吸着・転化部20には、担持物支持体23を設け、かかる担持物支持体23の検知部10とは反対側の面をビーズ状のイオン交換樹脂等として構成したイオン交換吸着・転化材22を被覆するよう積層することができる。これにより、イオン交換吸着・転化材22を支持及び固定できると共に、その上流側に配置された塩基性水酸物系吸着・転化材21をも支持及び固定することができる。
【0054】
担持物支持体23は、イオン交換系吸着・転化材22、水酸化物系吸着・転化材21を支持できる強度が必要である。また、担持物支持体23は、塩基性水酸物系吸着・転化材21の塩基性水酸化物21aや、イオン交換吸着・転化材22として構成したイオン交換樹脂等の担持物が検知部10側に流下することを防止する仕切りとしての機能を有する一方で、検知対象ガスを透過できる透過性が必要である。したがって、担持物支持体23は、上記担持物を透過させない一方で、検知対象ガスを透過でき、かつ、イオン交換系吸着・転化材22、水酸化物系吸着・転化材21を支持できる強度がある限り、特に制限はなく、公知の材質のものを使用して、任意の大きさ及び形状のものとできる。例えば、合成樹脂材料や、金属・合金材料、金属酸化物材料、炭素材料等により構成することができる。好ましくは、メッシュ状の部材として構成され、上記したステンレス等の金属材料の細線を編んだ織物やパンチングメタル等の金属メッシュ、ポリエステル等の合成樹脂材料の細線を編んだ織物等の樹脂メッシュ等とすることができる。
【0055】
検知部10と吸着・転化部20との間には、吸着・転化部支持体30を配置することができ、吸着・転化部20を支持するように構成することができる。吸着・転化部支持体30の検知部10との反対側の面に、吸着・転化部20が配置される。吸着・転化部支持体30は、吸着・転化部20を検知部10と離間させる機能をも有することができる。吸着・転化部支持体30は、検知部10と離間して配置することができ、これにより検知部10と吸着・転化部20の間にガスが拡散する空間が形成される。
【0056】
吸着・転化部支持体30は、検知対象ガスを透過でき、吸着・転化部20を支持できる強度がある限り、特に制限はなく、公知の材質のものを使用して、任意の大きさ及び形状のものとできる。例えば、合成樹脂材料や、炭素材料、金属・合金材料、金属酸化物材料により構成することができ、所定の孔径のガス透過孔31が形成されたものを用いることができる。吸着・転化部支持体30に形成されるガス透過孔31の孔径や形状、個数等は、検知対象ガスを透過できる限り特に制限はない。吸着・転化部支持体30は、好ましくは、ステンレス等の上記した金属材料で形成され、下方に開口する逆カップ状の部材として構成することができ、上面(カップの底面)にはガス透過孔31が形成される。逆カップ状の部材として構成された吸着・転化部支持体30は検知素子11を被覆するように配置することができる。
【0057】
本実施形態に係るガスセンサ1は、図2に示すようなケーシング40内に検知部10、及び、吸着・転化部20を配置したものとできる。ケーシング40の形状や大きさ、材質等に制限はなく、例えば、円柱状や立方体や長方体等の角柱状等とすることができる。
【0058】
図2に示す通り、本実施形態のガスセンサ1は、被測定ガスを導入するためのガス導入口50を有するケーシング40と、ケーシング内部に、下層から検知部10、吸着・転化部20が配置されている。詳細には、下層から検知部10の構成要素である検知素子支持基材12(端子13が接続)、検知素子11、吸着・転化部支持体30、吸着・転化部20の構成要素である、担持物支持体23、水酸化物系吸着・転化材21及びイオン交換系吸着・転化材22から選択される少なくも1つが順に配置されている。吸着・転化部20の上面は、ケーシング40のガス導入口50に露出して配置してもよい。
【0059】
このように本実施形態に係るガスセンサ1を構築し、ケーシング40の外側とケーシング40の内側とのガス濃度差を駆動力として、被測定ガスはガス導入口50を介してケーシング40内部に自然拡散に導入されるように構成することができる。また、加圧手段等を設けて強制的にケーシング40内部に被測定ガスを導入してもよい。
【0060】
本実施形態に係るガスセンサ1の作動について説明する。本実施形態に係るガスセンサ1において、ガス導入口50等から導入された被測定ガスが、吸着・転化部20を介して検知部10に流下する過程において、吸着・転化部20で被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスが吸着される。検知部10まで流下した被測定ガス中には、フッ化物系ガスが含まれないか、含まれたとしても極微量であり、検知部10、特には、検知素子11を腐食性ガスであるフッ化物系ガスから効果的に保護することができる。
【0061】
本実施形態に係るガスセンサ1によれば、塩基性水酸化物21aを不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材21、及び、強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材22から選択される少なくとも1つを搭載する吸着・転化部20を設けることで、被測定ガス中に含まれるフッ化物系ガスを吸着でき、検知部10、特には検知素子11をフッ化物系ガスから保護できる。フッ化物系ガスは腐食性が強いことから、従来のガスセンサにおいては、被測定ガス中にフッ化物系ガスが含まれる環境下で使用した場合には、フッ化物系ガスが検知素子等を腐食させてガスセンサ1の検知性能の長期安定性が低下するという問題があった。これに対して、本実施形態に係るガスセンサ1は、被測定ガス中に腐食性ガスであるフッ化物系ガスを含む環境下における検知対象ガスの検知にも好適に適用でき、耐久性に優れ長期安定的に検知性能を維持できる。
【0062】
(別実施形態)
本実施形態に係るガスセンサ1は、検知対象ガスを検知素子11による感応性の良好な転化ガスに転化するように構成することができる。ここで、転化とは、一般には「熱分解によって生成した転化ガスを検出することで検知対象ガスを検知する」技術であると解されるが、ここでは、本実施形態に係るガスセンサ1のように塩基性物質による分解をも含んで解される。
【0063】
本実施形態に係るガスセンサ1において、検知部10における検知素子11は、転化ガスに感応性を有するものとして構成する。検知対象ガスの転化ガスへの転化は、吸着・転化部20で行うことができる。
【0064】
本実施形態に係るガスセンサ1における検知対象ガスとしては、炭酸エステル系ガス、アルコール系ガス等が好ましく例示できる。下記において、本実施形態に係るガスセンサ1を、検知対象ガスを炭酸エステル系ガスとして構成した実施形態を説明するが、他の種のガスを検知対象ガスとする場合も同様にして構成することができる。
【0065】
ここで、検知対象ガスとして好適な炭酸エステルは、LIBの電解液、溶剤、燃料添加剤、農薬や医薬品の原料等として広範な用途に使用されている有機溶媒であり、炭酸CO(OH)2の2個の水素原子のうち、少なくも1つを炭化水素基で置換した構造をもつ化合物である。炭酸エステルは、鎖状炭酸エステルであっても、環状炭酸エステルであってもよく、炭化水素基の炭素数についても特に制限はない。また、炭化水素基は、フッ素原子等のハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。炭酸エステルとしては、例えば、エチルカーボネート(以下、「EC」と称する場合がある)、ジエチルカーボネート(以下、「DEC」と称する場合がある)、プロピレンカーボネート(以下、「PC」と称する場合がある)、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」と称する場合がある)、メチルエチルカーボネート(以下、「EMC」と称する場合がある)、フルオロエチレンカーボネート(以下、「FEC」と称する場合がある)・・・等が挙げられる。LIBの電解液では、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液にLiPF6やLiBF4等の電解質塩を溶解したものが使用されており、炭酸エステル化合物は揮発性が高いことから炭酸エステル系ガスを検知は、LIBの制御及び保守等において有用である。
【0066】
したがって、本実施形態に係るガスセンサ1において、検知対象ガスである炭酸エステル系ガスをアルコールに転化し、検知素子11を含む検知部10で炭酸エステルから転化されたアルコールを検知するように構成することができる。したがって、検知素子11は、アルコールに対して感応するものとして構成することができる。炭酸エステルガスの転化は、吸着・転化部20で行うことができ、吸着・転化部20は、フッ化物系ガスを吸着すると共に、炭酸エステルガスを転化する。
【0067】
炭酸エステルのアルコールへの転化反応の代表例の反応式を図3に示す。図3では、水酸化物系吸着・転化材21による炭酸エステルの転化の反応例を示すが、イオン交換系吸着・転化材22によっても同様の反応が進行する。また、図3は、水酸化物系吸着・転化材を構成する塩基性水酸化物として、1価の金属の水酸化物を用いた例を示すが、2価及び3価の金属の水酸化物によっても同様の反応が進行する。
【0068】
図3において、ジエチルカーボネート(DEC)は、炭酸塩とエタノールに転化される。エチルカーボネート(EC)は、炭酸塩とエチレングリコールに転化される。プロピレンカーボネート(PC)は、炭酸塩とプロピレングリコールに転化される。ジメチルカーボネート(DMC)は、炭酸塩とメタノールに転化される。メチルエチルカーボネート(EMC)は、炭酸塩とメタノール、エタノールに転化される。転化されたアルコール類の方が炭酸エステルよりも沸点が低いことから、検知対象の炭酸エステルがガスとして存在する環境下では転化されたアルコールも同様にガスであり、かかるアルコールガスを検知部10で検出することにより、炭酸エステルを検知することができる。また、炭酸塩は、その一部又は全部が、二酸化炭素及び酸化物に更に転化されてもよい。
【0069】
本実施形態に係るガスセンサ1の作動について、図4に基づいて説明する。なお、図4では、検知対象ガスを炭酸エステル系ガスとした例を示すが、検知対象ガスを他種のガスとした場合にも同様に作動するように構成することができる。図4は、検知対象ガスである炭酸エステル系ガスに加え、腐食性ガスであるフッ化物系ガスとしてHFが含まれるガスを被測定ガスとし、図1に示すように、吸着・転化部20として塩基性水酸物系吸着・転化材21が上流側に、イオン交換系吸着・転化材22が下流側に配置したガスセンサ1の作動を示すフロー図である。炭酸エステル系ガス及びHFを含む被測定ガスが、ガスセンサ1内部を流下するガス流路において、塩基性水酸物系吸着・転化材21によりHFが吸着されると共に、炭酸エステルが、アルコールと炭酸塩に転化される。炭酸塩は、その一部又は全部が、更に、二酸化炭素及び酸化物に転化されてもよい。生成した炭酸塩(転化された二酸化炭素、酸化物を含んでもよい)は塩基性水酸物系吸着・転化材21に吸着される一方で、アルコールはガスの形態で塩基性水酸物系吸着・転化材21を下流側に透過する。続いて、イオン交換系吸着・転化材22にガスは流下し、イオン交換系吸着・転化材22で、塩基性水酸物系吸着・転化材21で吸着されなったHFが吸着されると共に、転化を受けなかった炭酸エステル系ガスも転化を受け、アルコールと炭酸塩に転化される。炭酸塩は、その一部又は全部が、更に、二酸化炭素及び酸化物に転化されてもよい。生成した炭酸塩(転化された二酸化炭素、酸化物を含んでもよい)はイオン交換系吸着・転化材22に吸着する。アルコールはガスの形態で検知部10に接触し、検知部10の検知素子11によりアルコールを検知し、かかるアルコールの検知を介して検知対象ガスである炭酸エステルを検知するものである。
【0070】
本実施形態に係るガスセンサ1によれば、ガスセンサ1に搭載された塩基性水酸化物21aを不溶性担体に担持する水酸化物系吸着・転化材21、及び、強塩基性陰イオン交換基を不溶性担体に担持するイオン交換系吸着・転化材22から選択される少なくとも1つを含む吸着・転化部20が、フッ素物系ガスを吸着するだけなく、炭酸エステル系ガス等の検知対象ガスを検知素子11への感応性が良好な物質に転化でき、かかる転化ガスを検知することにより良好なガス検知感度を担保できる。また、低分子の物質に転化することで、反応性向上のための加温温度を低く設定することができ、低消費電力化を図ることができる。更に、フッ化物系ガスの吸着と検知対象ガスの転化を一の部材で行うことができるため、ガスセンサ1の構成を簡略化できる。従来においては、貴金属触媒等の存在下での熱分解によって生成した転化ガスを検出することにより検知対象ガスを検知する技術が利用されていた。一方、本実施形態に係るガスセンサ1によれば、塩基性水酸化物21aや強塩基性陰イオン交換基といった塩基性物質により検知対象ガスを検知素子11への感応性が良好な物質に転化でき、触媒や高温での加熱が必要なくコストを低減することができる。
【0071】
本実施形態に係るガスセンサ1は、検知対象ガスを炭酸エステルとするように構成することができ、例えば、炭酸エステルを電解液の有機溶媒等として利用するLIB等の故障及び故障の予兆の検知することができる。したがって、本実施形態に係るガスセンサ1は、LIB等の故障を未然に防ぐと共に、適切な保守・点検等の予兆検知技術の構築等に貢献でき、予兆検知センサとして構築することができ、しかも、長期安定的に検知性能を維持できるものを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、被測定ガス中に腐食性ガスであるフッ化物系ガスを含む環境下において検知対象ガスを検知するガスセンサに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1・・・ガスセンサ
10・・・検知部
11・・・検知素子
12・・・検知素子支持基材
13・・・端子
20・・・吸着・転化部
21・・・水酸化物系吸着・転化材
21a・・・塩基性水酸化物
21b・・・母材
22・・・イオン交換系吸着・転化材
23・・・担持物支持体
30・・・吸着・転化部支持体
31・・・ガス透過孔
40・・・ケーシング
50・・・ガス導入口
図1
図2
図3
図4