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特開2020-204559位置調整方法、位置調整装置、及び、位置調整プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204559(P2020-204559A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】位置調整方法、位置調整装置、及び、位置調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20201127BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   G01C15/00 103A
   G01C15/06 T
   G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-112816(P2019-112816)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000213909
【氏名又は名称】朝日航洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 一也
(57)【要約】
【課題】精度を向上可能な位置調整方法等を提供する。
【解決手段】 位置調整方法は、計測点群G1を取得する工程S3と、計測点群G1に対して標識Aの中心に対応する初期位置P1を指定する指工程S4と、初期位置P1から標識Aのサイズに応じた範囲に含まれる点G2aから構成される調整用点群G2を計測点群G1から抽出する工程5と、点G2aの反射強度を重みとした調整用点群G2の加重平均により、調整用点群G2の中心座標P2を算出する工程S6と、初期位置P1と中心座標P2とに基づいて、計測点群G1を構成する点G1aの位置座標を調整する工程S8と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置された標識を含むエリアの移動体によるレーザ計測により生成され、3次元の位置座標を有する点から構成された計測点群を取得する取得工程と、
前記計測点群に対して、前記標識の中心に対応する初期位置を指定する指定工程と、
前記初期位置から前記標識のサイズに応じた範囲に含まれる点から構成される調整用点群を前記計測点群から抽出する抽出工程と、
前記調整用点群を構成する点の反射強度を重みとした前記調整用点群の加重平均により、前記調整用点群の中心座標を算出する算出工程と、
前記初期位置と前記中心座標とに基づいて、前記計測点群を構成する点の位置座標を調整する調整工程と、
を備える位置調整方法。
【請求項2】
前記算出工程の後であって前記調整工程の前に、前記中心座標を基準として前記標識の外縁に応じた図形を前記調整用点群にフィッティングすることにより、前記図形の中心として前記調整用点群の代表座標を取得するフィッティング工程をさらに備え、
前記調整工程においては、前記初期位置と前記代表座標との較差に基づいて、前記計測点群を構成する点の位置座標を調整する、
請求項1に記載の位置調整方法。
【請求項3】
前記標識は、外縁が円形状の標識平面を含み、
前記フィッティング工程においては、前記中心座標を基準として、前記標識平面の直径を有する円を前記調整用点群にフィッティングすることにより、前記円の中心として前記代表座標を取得する、
請求項2に記載の位置調整方法。
【請求項4】
前記フィッティング工程は、
前記中心座標を基準として前記円を前記調整用点群にフィッティングする第1工程と、
前記調整用点群に対するドローネ三角形分割により、分割平面を生成する第2工程と、
前記円を外縁とする基準平面と前記分割平面との差分に基づいて前記中心座標を更新する第3工程と、
前記第3工程において更新された前記中心座標を基準として、前記円を前記調整用点群にフィッティングする共に、前記基準平面との距離に応じて前記調整用点群を構成する点の取捨選択を行うことによって、前記調整用点群を更新する第4工程と、
を含み、
前記フィッティング工程においては、前記第3工程において更新される前の前記中心座標である更新前座標と、前記第3工程において更新された後の前記中心座標である更新後座標と、の差が閾値未満となるまで、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、及び前記第4工程を繰り返し実施すると共に、前記更新前座標と前記更新後座標との差が閾値未満となった後に前記更新前座標又は前記更新後座標を前記代表座標として取得する、
請求項3に記載の位置調整方法。
【請求項5】
前記第4工程においては、平面の式を用いて前記基準平面を算出すると共に、前記基準平面との距離が閾値を超過した点を、前記調整用点群から排除することによって当該点の取捨選択を行う、
請求項4に記載の位置調整方法。
【請求項6】
前記調整工程においては、前記較差が閾値よりも小さい場合には前記計測点群を構成する点の座標移動を行い、前記較差が閾値以上である場合には前記レーザ計測のための前記移動体の移動軌跡の調整により前記計測点群を再生成する、
請求項2〜5のいずれか一項に記載の位置調整方法。
【請求項7】
地上に設置された標識を含むエリアの移動体によるレーザ計測により生成され、3次元の位置座標を有する点から構成された計測点群を取得する取得部と、
前記計測点群に対して、前記標識の中心に対応する初期位置を指定する指定部と、
前記初期位置から前記標識のサイズに応じた範囲に含まれる点から構成される調整用点群を前記計測点群から抽出する抽出部と、
前記調整用点群を構成する点の反射強度を重みとした前記調整用点群の加重平均により、前記調整用点群の中心座標を算出する算出部と、
前記初期位置と前記中心座標とに基づいて、前記計測点群を構成する点の位置座標を調整する調整部と、
を備える位置調整装置。
【請求項8】
コンピュータを、
地上に設置された標識を含むエリアの移動体によるレーザ計測により生成され、3次元の位置座標を有する点から構成された計測点群を取得する取得部、
前記計測点群に対して、前記標識の中心に対応する初期位置を指定する指定部、
前記初期位置から前記標識のサイズに応じた範囲に含まれる点から構成される調整用点群を前記計測点群から抽出する抽出部、
前記調整用点群を構成する点の反射強度を重みとした前記調整用点群の加重平均により、前記調整用点群の中心座標を算出する算出部、及び、
前記初期位置と前記中心座標とに基づいて、前記計測点群を構成する点の位置座標を調整する調整部として機能させる、
位置調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置調整方法、位置調整装置、及び、位置調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、校正システムが記載されている。この校正システムは、レーザ光を出射し、反射光によって、反射物体の位置を計測するレーザ計測装置と、レーザ計測装置から出射されたレーザ光を反射するマーカを有する校正装置と、レーザ計測装置を校正するための計算をする計算機と、を備えている。校正装置は、予め定められた相対的な位置関係を有する少なくとも3つのマーカを有している。レーザ計測装置は、各マーカの位置を計測する。計算機は、レーザ計測装置によって計測された第2のマーカの位置及びレーザ計測装置によって計測された第3のマーカの位置から、第1のマーカの位置である参照位置を計算する。また、計算機は、レーザ計測装置によって計測された第1のマーカの位置と、参照位置との差によって、レーザ計測装置の計測誤差を計算する。そして、計算機は、計算された計測誤差から、反射物体までの距離の関数を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−250110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された校正システムは、複数のマーカの相対的な空間位置のみを用いて、レーザ計測装置の正確な校正を可能とすることを図っている。このように、上記技術分野にあっては、レーザ計測の精度向上や計測点の整合性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、精度を向上可能な位置調整方法、位置調整装置、及び、位置調整プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位置調整方法は、地上に設置された標識を含むエリアの移動体によるレーザ計測により生成され、3次元の位置座標を有する点から構成された計測点群を取得する取得工程と、計測点群に対して、標識の中心に対応する初期位置を指定する指定工程と、初期位置から標識のサイズに応じた範囲に含まれる点から構成される調整用点群を計測点群から抽出する抽出工程と、調整用点群を構成する点の反射強度を重みとした調整用点群の加重平均により、調整用点群の中心座標を算出する算出工程と、初期位置と中心座標とに基づいて、計測点群を構成する点の位置座標を調整する調整工程と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る位置調整装置は、地上に設置された標識を含むエリアの移動体によるレーザ計測により生成され、3次元の位置座標を有する点から構成された計測点群を取得する取得部と、計測点群に対して、標識の中心に対応する初期位置を指定する指定部と、初期位置から標識のサイズに応じた範囲に含まれる点から構成される調整用点群を計測点群から抽出する抽出部と、調整用点群を構成する点の反射強度を重みとした調整用点群の加重平均により、調整用点群の中心座標を算出する算出部と、初期位置と中心座標とに基づいて、計測点群を構成する点の位置座標を調整する調整部と、を備える。
【0008】
さらに、本発明に係る位置調整プログラムは、コンピュータを、地上に設置された標識を含むエリアの移動体によるレーザ計測により生成され、3次元の位置座標を有する点から構成された計測点群を取得する取得部、計測点群に対して、標識の中心に対応する初期位置を指定する指定部、初期位置から標識のサイズに応じた範囲に含まれる点から構成される調整用点群を計測点群から抽出する抽出部、調整用点群を構成する点の反射強度を重みとした調整用点群の加重平均により、調整用点群の中心座標を算出する算出部、及び、初期位置と中心座標とに基づいて、計測点群を構成する点の位置座標を調整する調整部として機能させる。
【0009】
これらの方法、装置、及び、プログラムにおいては、標識を含むエリアのレーザ計測によって生成された計測点群に対して、標識の中心に対応する初期位置が指定される。また、計測点群から、当該初期位置から標識のサイズの範囲に含まれる点が調整用点群として抽出される。さらに、調整用点群の加重平均により、調整用点群の中心座標が算出される。加重平均においては、調整用点群を構成する各点の反射強度が重みとされる。そして、初期位置と中心座標とに基づいて、計測点群の位置座標が調整される。これにより、例えば作業者の判断に基づいて標識に対応する点群の中心を決定する場合と比較して、観測のバラつきの介在が避けられ、精度が向上される。
【0010】
本発明に係る位置調整方法は、算出工程の後であって調整工程の前に、中心座標を基準として標識の外縁に応じた図形を調整用点群にフィッティングすることにより、図形の中心として調整用点群の代表座標を取得するフィッティング工程をさらに備え、調整工程においては、初期位置と代表座標との較差に基づいて、計測点群を構成する点の位置座標を調整してもよい。このように、加重平均による中心座標の算出に加えて、フィッティングによって図形の中心として代表座標を取得し、その代表座標を調整に用いることにより、調整用点群の密度が比較的小さい場合であっても、確実に精度を向上可能である。
【0011】
本発明に係る位置調整方法においては、標識は、外縁が円形状の標識平面を含み、フィッティング工程においては、中心座標を基準として、標識平面の直径を有する円を調整用点群にフィッティングすることにより、円の中心として代表座標を取得してもよい。この場合、代表座標の取得が容易且つ確実となる。
【0012】
本発明に係る位置調整方法においては、フィッティング工程は、中心座標を基準として円を調整用点群にフィッティングする第1工程と、調整用点群に対するドローネ三角形分割により、分割平面を生成する第2工程と、円を外縁とする基準平面と分割平面との差分に基づいて中心座標を更新する第3工程と、第3工程において更新された中心座標を基準として、円を調整用点群にフィッティングする共に、基準平面との距離に応じて調整用点群を構成する点の取捨選択を行うことによって、調整用点群を更新する第4工程と、を含み、フィッティング工程においては、第3工程において更新される前の中心座標である更新前座標と、第3工程において更新された後の中心座標である更新後座標と、の差が閾値未満となるまで、第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程を繰り返し実施すると共に、更新前座標と更新後座標との差が閾値未満となった後に更新前座標又は更新後座標を代表座標として取得してもよい。この場合、より確実に精度を向上可能である。
【0013】
本発明に係る位置調整方法においては、第4工程においては、平面の式を用いて基準平面を算出すると共に、基準平面との距離が閾値を超過した点を、調整用点群から排除することによって当該点の取捨選択を行ってもよい。この場合、中心座標等の算出の基となる調整用点群が好適に抽出され、より確実な精度の向上が図られる。
【0014】
本発明に係る位置調整方法においては、調整工程においては、較差が閾値よりも小さい場合には計測点群を構成する点の座標移動を行い、較差が閾値以上である場合にはレーザ計測のための移動体の移動軌跡の調整により計測点群を再生成してもよい。この場合、較差の大小に応じた調整方法が行われる結果、より確実に精度が向上される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、精度を向上可能な位置調整方法、位置調整装置、及び、位置調整プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る位置調整装置の機能ブロック図である。
図2図1に示された位置調整装置に係るコンピュータシステムのハードウェア構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る位置調整方法を含む方法のフローチャートである。
図4図3に示されたフィッティング工程の詳細を示すフローチャートである。
図5図3に示された方法の一工程を説明するための図である。
図6図3に示された方法の一工程を説明するための図である。
図7図3に示された方法の一工程を説明するための図である。
図8図3に示された方法の一工程を説明するための図である。
図9図3に示された方法の一工程を説明するための図である。
図10図3に示された方法の一工程を説明するための図である。
図11】変形例に係る方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本実施形態について説明を行う。なお、各図においては、同一又は相当する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る位置調整装置の機能ブロック図である。図2は、図1に示された位置調整装置に係るコンピュータシステムのハードウェア構成を示す図である。位置調整装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス等のコンピュータを含む。位置調整装置1を含むコンピュータシステム10は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)11、記録媒体であるRAM(Random Access Memory)12又はROM(Read Only Memory)13、通信モジュール14、出力装置15、及び、入力装置16等を含んでいる。
【0019】
位置調整装置1の各機能部は、CPU11、RAM12等のハードウェア上に、本実施形態に係る位置調整プログラムを読み込ませることにより、CPU11の制御のもとで、通信モジュール14、出力装置15、及び入力装置16等を動作させると共に、RAM12におけるデータの読み出し及び書き込み、およびROM13からのデータの読み出しを行うことで実現され得る。すなわち、本実施形態に係る位置調整プログラムは、コンピュータシステム10を、各機能部(後述する取得部2、指定部3、抽出部4、算出部5、フィッティング部6、及び、調整部7)として機能させる。
【0020】
位置調整装置1は、3次元の位置座標を有する点から構成された点群(点群データ)の位置座標を調整(位置合わせ)するための装置である。調整の対象となる点群は、移動体に搭載されたレーザ計測装置を用いて、計測対象エリアのレーザ計測を行うことにより生成される。すなわち、点群を構成する各点は、レーザ光の反射点に対応する。移動体は、例えば、有人・無人を問わず、車両や航空機等である。移動体は、一例としてUAV(Unmanned aerial vehicle)である。移動体には、レーザ計測装置、IMU(Inertial Measurement Unit)、及び、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等の要素が搭載され得る。
【0021】
レーザ計測装置は、それぞれ、移動体の移動に伴ってレーザ光を出力する。これにより、レーザ計測装置は、所望のエリアへのレーザ光のスキャンを行う。また、レーザ計測装置は、所望のエリアからのレーザ光の反射光を入力する。これにより、レーザ計測装置は、レーザ光の複数の反射点を含む点群に関する情報を取得する。一方で、レーザ計測装置は、IMUやGNSS受信機等からの各種の情報を入力する。そして、レーザ計測装置は、レーザ計測装置の位置と方向から、反射点の3次元位置を求める。これにより、移動体の移動に伴って、3次元の位置座標を有する点群が生成される。
【0022】
引き続いて、位置調整装置1の各機能部の説明を行う。なお、各機能部の動作(処理)の詳細については後述するため、ここでは概略について説明する。位置調整装置1は、機能的には、取得部2、指定部3、抽出部4、算出部5、フィッティング部6、及び、調整部7を含む。取得部2は、上述した点群を取得する。取得部2の点群の取得には、一例として上述した通信モジュール14や入力装置16を利用できる。ここでは、点群は、地上に設置された標識を含むエリアの移動体によるレーザ計測により生成された点群(以下、「計測点群」という)である。
【0023】
指定部3は、計測点群に対して、標識の中心に対応する初期位置を指定する。抽出部4は、初期位置から標識のサイズに応じた範囲に含まれる点から構成される点群(以下、「調整用点群」という)を計測点群から抽出する。算出部5は、調整用点群を構成する点の反射強度を重みとした調整用点群の加重平均により、調整用点群の中心座標を算出する。調整部は、初期位置と中心座標とに基づいて、計測点群を構成する点の位置座標を調整する。フィッティング部6は、標識の外形に応じた図形を調整用点群にフィッティングすることにより、図形の中心として調整用点群の代表座標を取得する。
【0024】
引き続いて、位置調整装置1の各機能部の動作(処理)の詳細、及び、本実施形態に係る位置調整方法について説明する。図3は、本実施形態に係る位置調整方法を含む方法のフローチャートである。図4は、図3に示されたフィッティング工程の詳細を示すフローチャートである。図3に示されるように、ここでは、まず、標識の設置を行う(工程S1)。標識は、例えば、白と黒といったコントラストを持つ矩形や円形等の標識である。図5の(a)に標識の一例を示す。この例では、標識Aは、平面状である。
【0025】
より具体的には、標識Aは、標識平面A1と、標識平面A1を囲う枠部A2と、を含む。標識平面A1は、例えば白色の平面であって、レーザ計測のためのレーザ光に対して、枠部A2の反射率よりも高い反射率を有する。標識平面A1の外縁A1aは、ここでは、直径DAを有する円形状である。すなわち、ここでは、標識Aは、外縁A1aが円形状の標識平面A1を含む。枠部A2は、例えば黒色であって、矩形の外縁を有する。標識Aの直径DAといったサイズは既知である。
【0026】
この工程S1では、以上のような標識Aを、所望の計測対象エリアの地表に少なくとも1つ設置する。また、この工程S1では、GNSS等からの情報に基づいて、設置した標識Aの座標計測を行い、標識平面A1の代表的な座標を特定する。ここでは、一例として標識平面A1の中心座標を特定する。なお、計測対象エリアに対して既に既知の標識A(或いは、標識として利用可能な構造物)が設置されている場合には、この工程S1を省略できる。
【0027】
続く工程においては、レーザ計測を行って計測点群を生成する(工程S2)。より具体的には、レーザ計測装置等を搭載したUAVといった移動体を、計測対象エリアを含む軌道に沿って運航しながら、計測対象エリアにレーザ光を走査する。それと共に、IMUやGNSS受信機等からの各種の情報に基づいて、レーザ光の反射点の3次元位置を求める。これにより、レーザ光の反射点の集合として、3次元の位置座標を有する点から構成される計測点群が生成される。
【0028】
図5の(b)は、生成された計測点群G1、及び、計測点群G1を構成する点G1aの一例を示す図である。生成された計測点群を示す情報は、位置調整装置1に提供される。点G1aのそれぞれは、レーザ光の反射強度に関する情報を有している。各図においては、反射強度の大きさを色の濃淡により示している。反射強度が小さい点G1aほど濃色として表示している。
【0029】
位置調整装置1の取得部2は、上述したように、地上に設置された標識Aを含む計測対象エリアの移動体によるレーザ計測により生成され、3次元の位置座標を有する点G1aから構成された計測点群G1を取得する(工程S3:取得工程、取得処理)。なお、計測点群G1の生成と、位置調整装置1による計測点群G1の取得とは、連続して(同期して)行われる必要はない。位置調整装置1は、予め生成されて準備された計測点群G1に関する情報を、生成のタイミングと無関係な任意のタイミングで取得することができる。
【0030】
続く工程においては、図6の(a)に示されるように、位置調整装置1の指定部3が、計測点群G1に対して、標識Aの中心に対応する初期位置P1を指定する(工程S4:指定工程、指定処理)。この工程S4では、工程S1において特定された標識平面A1の中心座標に関する情報を取得し、その中心座標に対応する初期位置P1を計測点群G1に対して指定する。ただし、工程S4では、入力装置16を介した作業者による入力を受け付けることによって、初期位置P1を指定してもよい。
【0031】
続いて、図6の(b)及び図7の(a)に示されるように、位置調整装置1の抽出部4が、初期位置P1から標識Aのサイズに応じた範囲に含まれる点G2aから構成される調整用点群G2を計測点群G1から抽出する(工程S5:抽出工程、抽出処理)。ここでは、一例として、初期位置P1を中心とし、標識平面A1の外縁A1aの直径DAの範囲に含まれる点G2aを抽出する。このとき、標識Aのサイズに応じた範囲、及び、直径DAの範囲とは、レーザ計測装置によるレーザ計測の誤差を考慮したものとされ得る。また、反射強度に閾値を設け、標識Aのサイズの範囲の外縁付近において当該閾値を下回る点G2aを含まないように、点G2aを抽出してもよい。
【0032】
続いて、図7の(b)に示されるように、位置調整装置1の算出部5が、調整用点群G2を構成する点の反射強度を重みとして、調整用点群G2の加重平均により、調整用点群G2の中心座標P2を算出する(工程S6:算出工程、算出処理)。
【0033】
続いて、位置調整装置1のフィッティング部6が、中心座標P2を基準として、標識Aの外縁(標識平面A1の外縁A1a)に応じた図形を調整用点群G2にフィッティングすることにより、図形の中心として調整用点群G2の代表座標を取得する(工程S7:フィッティング工程)。ここでは、中心座標P2を基準として、標識平面A1の直径DAを有する円C1を調整用点群G2にフィッティングすることにより、円C1の中心として代表座標を取得する。この工程S7について、図4等を参照して詳細に説明する。
【0034】
この工程S7では、まず、図8の(a)に示されるように、中心座標P2を基準として、円C1を調整用点群G2にフィッティングする(工程S71:第1工程)。ここでは、中心座標P2を中心として、標識平面A1の直径DAを有する円C1を生成し、調整用点群G2にフィッティングする。一方、図8の(b)に示されるように、加重平均の際(工程S6)に使用した調整用点群G2に対して、ドローネ三角形分割により平面(以下、「分割平面E1」という)を生成する(工程S72:第2工程)。この工程S71と工程S72との順序は逆であってもよい。
【0035】
続いて、円C1を外縁とする基準平面と分割平面E1との差分に基づいて、中心座標P2を更新する(工程S73:第3工程)。ここでは、基準平面と分割平面E1との面積や面の差分から求めた差異の面の大きさから中心座標P2を更新する。このとき、面積の算出に際して、点G2aの反射強度を考慮してもよい(反射強度に基づいて重みづけしてもよい)。
【0036】
続いて、工程S73において更新された中心座標P2を基準として、円C1を調整用点群G2にフィッティングする共に、基準平面との距離に応じて調整用点群G2を構成する点G2aの取捨選択を行うことによって、調整用点群G2を更新する(工程S74:第4工程)。ここでは、図9に示されるように、平面の式を用いて基準平面C1aを算出すると共に、基準平面C1aとの距離が閾値F1を超過した点G2aを、調整用点群G2から排除することによって、点G2aの取捨選択を行う。図9の例では、高さ方向(Z方向)について、基準平面C1aを中心とした上下方向の距離の比較を例示しているが、水平方向(X方向及びY方向)についても同様である。
【0037】
続いて、工程S73において更新される前の中心座標P2(以下、「更新前座標」という)と、工程S73において更新された後の中心座標P2(以下、「更新後座標」という)と、の較差が、閾値未満であるか否かの判定を行う(工程S75)。この工程S75の判定の結果、更新前座標と更新後座標との較差が閾値未満でない場合、工程S71〜工程S74を繰り返し行う。すなわち、ここでは、更新前座標と更新後座標との較差が閾値未満となるまで、工程S71、工程S72、工程S73、及び工程S74を繰り返し実施する。そして、工程S75の判定の結果、更新前座標と更新後座標との較差が閾値未満となったとき、更新前座標又は更新後座標を代表座標として取得する。このときには、更新前座標と更新後座標との較差が閾値未満である(近接している)ため、いずれを代表座標として取得してもよい。
【0038】
引き続き、図3を参照する。続く工程においては、位置調整装置1の調整部7が、既知である標識Aに応じた初期位置P1と、以上の工程により取得された中心座標P2とに基づいて、計測点群G1を構成する点G1aの位置座標を調整する(工程S8:調整工程、調整処理)。ここでは、初期位置P1と、(中心座標P2に基づいて取得された)代表座標との較差に基づいて、計測点群G1を構成する点G1aの位置座標を調整する。
【0039】
より具体的には、当該較差が閾値よりも小さい場合には、計測点群G1を構成する点G1aの座標移動を行い、当該較差が閾値以上である場合には、レーザ計測のための移動体の移動軌跡の調整により計測点群G1を再生成する。ここでの計測点群G1の再生成とは、レーザ計測を再度行うことを意味するのではなく、既に得られている計測点群G1を示す点群データから、移動体の移動軌跡を変更(調整)した場合のデータを生成することを意味する。
【0040】
以上の工程により、位置調整された計測点群G1が得られる。なお、上記の方法においては、工程S6で算出部5が加重平均を用いた中心座標P2の算出を行った後に、工程S7でフィッティング部6が中心座標P2から代表座標を算出し、その代表座標と標識Aの既知の中心に対応する初期位置との較差に基づいて計測点群G1の位置座標を調整した。しかし、図10に示されるように、レーザ計測の際の移動体の揺動や移動体と標識Aとの距離等に応じて、点G2aの間隔(密度)と標識Aのサイズとの関係にバラツキが生じるおそれがある。
【0041】
図10の(a)から(c)の順に、点G2aの間隔が標識Aのサイズに対して大きくなっている。そして、例えば図10の(a)に示されるように、標識Aのサイズに対して点G2aの間隔が十分に小さい場合には、加重平均により得られる中心座標P2の信頼度が担保される。このため、この場合には、工程S7を省略し、初期位置と中心座標P2との較差に基づいて計測点群G1の位置座標を調整してもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る位置調整方法、位置調整装置1、及び、位置調整プログラムにおいては、標識Aを含むエリアのレーザ計測によって生成された計測点群G1に対して、標識Aの中心に対応する初期位置P1が指定される。また、計測点群G1から、初期位置P1から標識Aのサイズの範囲に含まれる点が調整用点群G2として抽出される。さらに、調整用点群G2の加重平均により、調整用点群G2の中心座標P2が算出される。加重平均においては、調整用点群G2を構成する点G2aの反射強度が重みとされる。そして、初期位置P1と中心座標P2とに基づいて、計測点群G1の位置座標が調整される。これにより、例えば作業者の判断に基づいて標識に対応する点群の中心を決定する場合と比較して、観測のバラつきの介在が避けられ、精度が向上される。
【0043】
また、本実施形態に係る位置調整方法においては、中心座標P2を基準として標識Aの外縁A1aに応じた図形を調整用点群G2にフィッティングすることにより、図形の中心として調整用点群G2の代表座標を取得する工程S7をさらに備えている。工程S7においては、初期位置P1と代表座標との較差に基づいて、計測点群G1を構成する点の位置座標を調整する。このように、加重平均による中心座標P2の算出に加えて、フィッティングによって図形の中心として代表座標を取得し、その代表座標を調整に用いることにより、調整用点群G2の密度が比較的小さい場合であっても、確実に精度を向上可能ある。
【0044】
また、本実施形態に係る位置調整方法においては、標識Aは、外縁A1aが円形状の標識平面A1を含む。そして、工程S7においては、中心座標P2を基準として、標識平面A1の直径DAを有する円C1を調整用点群G2にフィッティングすることにより、円C1の中心として代表座標を取得する。このため、代表座標の取得が容易且つ確実となる。
【0045】
また、本実施形態に係る位置調整方法においては、工程S7は、中心座標P2を基準として円C1を調整用点群G2にフィッティングする工程S71と、調整用点群G2に対するドローネ三角形分割により、分割平面E1を生成する工程S72と、円C1を外縁とする基準平面と分割平面E1との差分に基づいて中心座標P2を更新する工程S73と、工程S73において更新された中心座標P2を基準として、円C1を調整用点群G2にフィッティングする共に、基準平面との距離に応じて調整用点群G2を構成する点G2aの取捨選択を行うことによって、調整用点群G2を更新する工程S74と、を含む。そして、工程S7においては、工程S73において更新される前の中心座標P2である更新前座標と、工程S73において更新された後の中心座標P2である更新後座標と、の差が閾値未満となるまで、工程S71〜工程S74を繰り返し実施すると共に、更新前座標と更新後座標との差が閾値未満となった後に更新前座標又は更新後座標を代表座標として取得する。これにより、より確実に精度を向上可能である。
【0046】
また、本実施形態に係る位置調整方法においては、工程S74において、平面の式を用いて基準平面C1aを算出すると共に、基準平面C1aとの距離が閾値F1を超過した点を、調整用点群G2から排除することによって当該点の取捨選択を行う。これにより、中心座標P2等の算出の基となる調整用点群G2が好適に抽出され、より確実な精度の向上が図られる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る位置調整方法においては、工程S8において、較差が閾値よりも小さい場合には計測点群G1を構成する点G1aの座標移動を行い、較差が閾値以上である場合にはレーザ計測のための移動体の移動軌跡の調整により計測点群G1を再生成する。このように、較差の大小に応じた調整方法が行われる結果、より確実に精度が向上される。
【0048】
以上の実施形態は、本発明の一形態を説明したものである。したがって、本発明は上述した形態に限定されることなく、任意に変更され得る。
【0049】
例えば、レーザ計測の際に、標識Aが設置された計測対象エリアに対して、複数のコースで移動体を運行することにより、コースごとに計測点群G1が生成されてもよい。この場合には、取得部2が、コースごとに生成された複数の計測点群G1を取得することとなる。図11は、標識Aが設置された計測対象エリアに対して、往路及び復路の2つのコースで移動体を運行することによって2つの計測点群が生成された場合を示している。この場合には、それぞれの計測点群から調整用点群G3,G4を抽出すると共に(図11の(b)参照)、それらの調整用点群G3,G4に基づいて上記の位置座標の調整を行うことにより、計測点群の間の整合性を向上可能である(図11の(c)参照)。
【符号の説明】
【0050】
1…位置調整装置、2…取得部、3…指定部、4…抽出部、5…算出部、7…調整部、A…標識、A1…標識平面、A1a…外縁、C1…円、C1a…基準平面、DA…直径、E1…分割平面、F1…閾値、G1…計測点群、G1a,G2a…点、G2…調整用点群、P1…初期位置、P2…中心座標。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11