【課題】低融点金属層と高融点金属層との密着性が高く、かつ生産コストが安価なヒューズエレメントと、このヒューズエレメントを用いたヒューズ素子及び保護素子を提供する。
【解決手段】ヒューズエレメント10は、低融点金属層11と、低融点金属層11の少なくとも一方の表面に積層された高融点金属層12と、低融点金属層11と高融点金属層12との間に配置された中間層13とを有し、高融点金属層12と中間層13は、低融点金属層11の溶融物に溶解される金属からなる層であって、中間層13は、イオン化傾向が高融点金属層12のイオン化傾向よりも高い。
前記中間層は、銅、鉄及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属もしくは前記金属を主成分とする合金からなる層である請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒューズエレメント。
前記低融点金属層の膜厚は30μm以上であって、前記高融点金属層の膜厚は1μm以上であり、前記中間層の膜厚は0.01μm以上1μm以下の範囲内にある請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒューズエレメント。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒューズエレメントは、過電流の発生などの異常時は、低融点金属層が速やかに溶融して、その溶融物が高融点金属層を溶解することによって溶断するものであることが好ましい。このためには、低融点金属層と高融点金属層とが密着していることが必要である。しかしながら、低融点金属層の表面に低融点金属層よりもイオン化傾向の低い高融点金属層を、例えば、めっき法により形成する場合は、低融点金属層と高融点金属層の界面の密着性を担保するために特殊な前処理プロセスが必要であり高コストであった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、過電流の発生などの異常時には速やかに溶断させることができるように、低融点金属層と高融点金属層との密着性が高く、かつ生産コストが安価なヒューズエレメントと、このヒューズエレメントを用いたヒューズ素子及び保護素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
(1)本発明の一態様に係るヒューズエレメントは、低融点金属層と、前記低融点金属層の少なくとも一方の表面に積層された高融点金属層と、前記低融点金属層と前記高融点金属層との間に配置された中間層とを有し、前記高融点金属層と前記中間層は、前記低融点金属層の溶融物に溶解される金属からなる層であって、前記中間層は、イオン化傾向が前記高融点金属層のイオン化傾向よりも高い。
【0009】
(2)本発明の別の一態様に係るヒューズエレメントは、低融点金属層と、前記低融点金属層の少なくとも一方の表面に積層された高融点金属層と、前記低融点金属層と前記高融点金属層との間に配置された中間層とを有し、前記高融点金属層と前記中間層は、前記低融点金属層の溶融物に溶解される金属からなる層であって、前記中間層は、融点が前記高融点金属層の融点よりも高い。
【0010】
(3)上記(1)または(2)に記載の態様において、前記低融点金属層は、錫もしくは錫を主成分とする錫合金からなる層である構成としてもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の態様において、前記高融点金属層は、銀もしくは銀を主成分とする銀合金からなる層である構成としてもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の態様において、前記中間層は、銅、鉄及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属もしくは前記金属を主成分とする合金からなる層である構成としてもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の態様において、前記中間層は、イオン化傾向が前記低融点金属層よりも低い構成としてもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の態様において、前記低融点金属層の膜厚は30μm以上であって、前記高融点金属層の膜厚は1μm以上であり、前記中間層の膜厚は0.01μm以上1μm以下の範囲内にある構成としてもよい。
【0011】
(8)本発明の一態様に係るヒューズ素子は、絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に配置された上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のヒューズエレメントとを備える。
【0012】
(9)本発明の一態様に係る保護素子は、絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に配置された上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のヒューズエレメントと、前記絶縁基板の表面に配置され、前記ヒューズエレメントを加熱する発熱体とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低融点金属層と高融点金属層との密着性が高く、かつ生産コストが安価なヒューズエレメントと、このヒューズエレメントを用いたヒューズ素子及び保護素子を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るヒューズエレメントと、このヒューズエレメントを用いたヒューズ素子及び保護素子の実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
[ヒューズエレメント(第1実施形態)]
図1は、本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメントの斜視図である。
図1に示すように、ヒューズエレメント10は、低融点金属層11と、低融点金属層11の表面に積層された高融点金属層12と、低融点金属層11と高融点金属層12との間に配置された中間層13とを有する。
【0017】
低融点金属層11は、融点が、ヒューズ素子や保護素子を製造する際のリフロー時の加熱温度以下であることが好ましい。リフロー温度が240℃〜260℃の場合には、低融点金属層11の融点は、200℃以上235℃以下の範囲内にあることが好ましい。
【0018】
低融点金属層11の材料は、錫もしくは錫を主成分とする錫合金であることが好ましい。錫合金の錫の含有量は40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。錫合金の例としては、Sn−Bi合金、In−Sn合金、Sn−Ag−Cu合金を挙げることができる。
【0019】
高融点金属層12は、低融点金属層11の溶融物に溶解される金属材料からなる層である。低融点金属層11の材料が錫もしくは錫合金である場合、高融点金属層12の材料は、銀もしくは銀を主成分とする合金であることが好ましい。銀合金の銀の含有量は40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。銀合金の例としては、銀パラジウム合金を挙げることができる。また、銀は貴金属でありイオン化傾向が低く基本的に大気中では酸化しにくく、低融点金属層11である錫の溶融物により溶解されやすい。このため、ヒューズエレメントの最外層である高融点金属層12の材料としては好適に用いることができる。
【0020】
高融点金属層12は、融点が、低融点金属層11の融点に対して+100℃以上+800℃以下の範囲内にあることが好ましい。高融点金属層12の融点は、300℃以上1000℃以下の範囲内にあることが好ましい。
【0021】
中間層13は、低融点金属層11の溶融物に溶解される金属材料からなる層である。低融点金属層11の材料が錫もしくは錫合金である場合、中間層13の材料は、銅、鉄及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属もしくはこの金属を主成分とする金属合金であることが好ましい。金属合金の銅、鉄及びニッケルの含有量は40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。銅合金の例としては、リン青銅を挙げることができる。鉄合金の例としては、ニッケル鉄を挙げることができる。ニッケル合金の例としては、ニッケル−コバルトを挙げることができる。これらの金属の中では、銅、鉄、ニッケル及びこれらの合金は剛性が高く、ヒューズ素子や保護素子を製造する際のリフロー時に、ヒューズエレメント10が変形しにくくなるので好ましい。
【0022】
中間層13は、イオン化傾向が高融点金属層12よりも高いことが好ましい。中間層13のイオン化傾向が高いことによって、めっき法により高融点金属層12を形成する場合は、中間層13と高融点金属層12との界面の密着性が向上する。
【0023】
中間層13のイオン化傾向は、低融点金属層11よりも低いことがより好ましい。すなわち、中間層13のイオン化傾向は、低融点金属層11と高融点金属層12の間にあることがより好ましい。中間層13のイオン化傾向が低融点金属層11と高融点金属層12の間にあることにより、低融点金属層11上に高融点金属層12を直接めっき法により形成するよりも、中間層13を介することにより各めっき時のイオン化傾向の差を小さくすることができ、めっきの安定性向上、品質向上、加工コスト低減が可能となる。また、膜厚が均一で、低融点金属層11の溶融物による溶解が進みやすい中間層13を得ることができる。
【0024】
中間層13は、融点が高融点金属層12の融点よりも高いことが好ましい。高融点金属層12の厚さを薄くしてもヒューズ素子や保護素子を製造する際のリフロー時に、ヒューズエレメント10が変形しにくくなるので、高温時での各層の密着性が低下しにくく、各層が剥離しにくい。中間層13の融点は、高融点金属層12の融点に対して+50℃以上+500℃以下の範囲内にあることが好ましい。中間層13の融点が低くなりすぎると中間層13による上記の効果が得られにくくなるおそれがある。一方、中間層13の融点が高くなりすぎると、低融点金属層11の溶融物による中間層13の溶解が進みにくくなり、ヒューズエレメント10の溶断速度が遅くなるおそれがある。中間層13の融点は、950℃以上1600℃以下の範囲内にあることが好ましい。
【0025】
ヒューズエレメント10は、過電流の発生などの異常時には、低融点金属層11が溶融し、生成した溶融物が中間層13と高融点金属層12とを溶解することによって、溶断される。ヒューズエレメント10において、低融点金属層11は、中間層13と高融点金属層12とを溶解して、ヒューズエレメント10を溶断させるのに必要な量で含まれている。中間層13と高融点金属層12は、ヒューズ素子や保護素子を製造する際のリフロー時に、ヒューズエレメント10の形状を維持する必要な量で含まれる。
【0026】
上記の観点から、低融点金属層11の膜厚は30μm以上であることが好ましい。また、高融点金属層12の膜厚は1μm以上であることが好ましい。さらに、中間層13の膜厚は0.01μm以上1μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0027】
また、高融点金属層12と中間層13の合計膜厚と、低融点金属層11の膜厚との膜厚比(前者:後者)は、1:2〜1:100の範囲内にあることが好ましい。高融点金属層12と中間層13の合計膜厚が厚くなりすぎると、異常時に中間層13と高融点金属層12が溶解されるまでの時間が長くなり、ヒューズエレメント10の溶断速度が遅くなるおそれがある。一方、低融点金属層11の膜厚が厚くなりすぎると、ヒューズ素子や保護素子を製造する際のリフロー時に、ヒューズエレメント10の形状を維持しにくくなるおそれがある。
【0028】
ヒューズエレメント10は、例えば、めっき法を用いることによって製造することができる。具体的には、低融点金属層11となる金属箔を用意し、その金属箔の表面にめっき法を用いて中間層13を形成し、次いで、中間層13の表面にめっき法を用いて高融点金属層12を形成することによって製造することができる。低融点金属層11として錫もしくは錫合金を用いる場合、低融点金属層11は酸化しやすく、表面に不働態皮膜が形成されている場合がある。この場合には、中間層13を形成する際に、高電流を付与して短時間で電解めっきする方法(ストライクめっき法)を用いることが好ましい。
【0029】
図1に示すヒューズエレメント10は、低融点金属層11の表面に、中間層13と高融点金属層12とが積層された構成とされているが、ヒューズエレメントの構成はこれに限定されるものではない。ヒューズエレメント10の別の構成の例を
図2と
図3に示す。
【0030】
図2は、本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメントの別の一例の斜視図である。
図2に示すヒューズエレメント20は、断面が矩形の低融点金属層21と、低融点金属層21の周囲に積層された高融点金属層22と、低融点金属層21と高融点金属層22との間に配置された中間層23とからなる。ヒューズエレメント20は、低融点金属層21の側面が中間層23と高融点金属層22によって被覆されているので、高融点金属層22と中間層23とからなる外殻の剛性が高まり、リフロー時に、ヒューズエレメント10の形状を維持しやすくなる。
【0031】
図3は、本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメントのさらに別の一例の斜視図である。
図3に示すヒューズエレメント30は、断面が円形の低融点金属層31と、低融点金属層31の周囲に積層された高融点金属層32と、低融点金属層31と高融点金属層32との間に配置された中間層33とからなる。ヒューズエレメント30は、低融点金属層31の側面が中間層33と高融点金属層32によって同心円状に被覆されているので、低融点金属層31が酸化しにくくなる。また、中間層33と高融点金属層32の厚さを均一にしやすく、中間層33と高融点金属層32の溶解が均一に進みやすくなる。このため、ヒューズエレメント30は、溶断速度がさらに速くなる。
【0032】
以上のような構成とされた本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメント10、20、30において、中間層13、23、33のイオン化傾向が高融点金属層12、22、32のイオン化傾向よりも高い場合は、めっき法を用いることにより、中間層13、23、33と界面密着性に優れ、安定性が高い高融点金属層12、22、32を安価に形成することができる。特に、中間層13、23、33を、ストライクめっき法によって形成したヒューズエレメント10、20、30は、低融点金属層11、21、31と中間層13、23、33と高融点金属層12、22の界面密着性に優れ、過電流の発生などの異常時にはより速やかに溶断させることができる。また、中間層13、23、33の融点が高融点金属層12、22、32の融点よりも高いヒューズエレメント10、20、30は、高温時での各層の密着性が低下しにくく、各層が剥離しにくいので、過電流の発生などによって高温となった場合でもより速やかに溶断させることができる。
【0033】
本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメント10、20、30は、中間層13、23、33と高融点金属層12、22、32との間に、中間層13、23、33よりも融点が低く、高融点金属層12、22、32よりも融点が高く、かつ低融点金属層11、21、31の溶融物に溶解される金属からなる層を有していてもよい。また、高融点金属層12、22、32の表面に酸化防止層を有していてもよい。
【0034】
次に、本発明に係るヒューズ素子と保護素子の実施形態について、ヒューズエレメントとして
図1に示すヒューズエレメント10を用いた場合を例にとって説明する。
【0035】
[ヒューズ素子(第2実施形態)]
図4は、本発明の第2実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。
図5は、
図4のV−V’線断面図である。なお、
図4は、ヒューズ素子のカバー部材を外した状態とされている。
図4と
図5に示すように、ヒューズ素子40は、絶縁基板41と、絶縁基板41の表面41aに配置された第1の電極42及び第2の電極43と、第1の電極42と第2の電極43とを電気的に接続するヒューズエレメント10とを備える。
【0036】
絶縁基板41は、電気絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、樹脂基板、セラミックス基板、樹脂とセラミックスとの複合体基板など回路基板として用いられている公知の絶縁基板を用いることができる。樹脂基板の例としては、エポキシ樹脂基板、フェール樹脂基板、ポリイミド基板を挙げることができる。セラミックス基板の例としては、アルミナ基板、ガラスセラミックス基板、ムライト基板、ジルコニア基板を挙げることができる。複合体基板の例としては、ガラスエポキシ基板を挙げることができる。
【0037】
第1の電極42及び第2の電極43は、絶縁基板41の対向する一対の両端部に配置されている。第1の電極42及び第2の電極43は、それぞれ銀配線や銅配線などの導電パターンによって形成されている。第1の電極42及び第2の電極43の表面は、それぞれ酸化などによる電極特性の変質を抑制するための電極保護層44で被覆されている。電極保護層44の材料としては、Snめっき膜、Ni/Auめっき膜、Ni/Pdめっき膜、Ni/Pd/Auめっき膜等を用いることができる。また、第1の電極42及び第2の電極43は、それぞれキャスタレーションを介して絶縁基板41の裏面41bに形成された第1の外部接続電極42a及び第2の外部接続電極43aと電気的に接続されている。第1の電極42及び第2の電極43と第1の外部接続電極42a及び第2の外部接続電極43aとの接続は、キャスタレーションに限定されず、スルーホールで行ってもよい。
【0038】
ヒューズエレメント10は、第1の電極42及び第2の電極43と、はんだ等の接続材料45を介して電気的に接続されている。
【0039】
ヒューズエレメント10は、表面にフラックス46が塗布されている。フラックス46を塗布することによって、ヒューズエレメント10の酸化が防止され、接続材料45を介してヒューズエレメント10と第1の電極42及び第2の電極43を接続する際の接続材料45の濡れ性が向上する。また、フラックス46を塗布することにより、アーク放電による溶融金属の絶縁基板41への付着を抑制し、ヒューズエレメント10の溶断後における絶縁性を向上させることができる。
【0040】
ヒューズ素子40は、
図5に示すように、カバー部材50が接着剤を介して取り付けられていることが好ましい。カバー部材50を取り付けることによって、ヒューズ素子40の内部を保護するとともに、ヒューズエレメント10が溶断する際に発生する溶融物の飛散を防止することができる。カバー部材50の材料としては、各種エンジニアリングプラスチック及びセラミックスを用いることができる。
【0041】
ヒューズ素子40は、第1の外部接続電極42a及び第2の外部接続電極43aを介して、回路基板の電流経路上に実装される。回路基板の電流経路上に定格の電流が流れている間は、ヒューズ素子40に備えられているヒューズエレメント10の低融点金属層11は溶融しない。一方、回路基板の電流経路上に定格を超える過電流が通電されると、ヒューズエレメント10の低融点金属層11が発熱して溶融し、生成した溶融物が中間層13と高融点金属層12とを溶解することによって、ヒューズエレメント10を溶断させる。そして、このヒューズエレメント10の溶断により、第1の電極42と第2の電極43間が断線され、回路基板の電流経路が遮断される。
【0042】
以上のような構成とされた本発明の第2実施形態に係るヒューズ素子40は、本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメント10を用いているので、過電流の発生時には速やかにヒューズエレメント10が溶断される。このため、回路基板の電流経路を早期に遮断させることができる。
【0043】
[保護素子(第3実施形態)]
図6は、本発明の第3実施形態に係る保護素子の平面図である。
図7は、
図6のVII−VII’線断面図である。なお、
図6において、保護素子はカバー部材を外した状態とされている。
図6と
図7に示すように、保護素子60は、絶縁基板61と、絶縁基板61の表面61aに配置された第1の電極62及び第2の電極63と、第1の電極62及び第2の電極63の間に配置された発熱体70と、発熱体70に接続する第1の発熱体電極64及び第2の発熱体電極65と、第2の発熱体電極65に接続する発熱体引出電極66と、発熱体引出電極66の表面に配置されたヒューズエレメント10とを備える。
【0044】
絶縁基板61は、電気絶縁性を有するものであれば特に制限はない。絶縁基板61は、としては、第2実施形態のヒューズ素子40の場合と同様に、回路基板として用いられている公知の絶縁基板を用いることができる。
【0045】
第1の電極62と第2の電極63は、絶縁基板61の対向する一対の両端部に配置されている。第1の発熱体電極64と第2の発熱体電極65は、絶縁基板61の対向する別の一対の両端部に配置されている。第1の電極62、第2の電極63、第1の発熱体電極64、第2の発熱体電極65及び発熱体引出電極66は、それぞれ銀配線や銅配線などの導電パターンによって形成されている。また、第1の電極62、第2の電極63、第1の発熱体電極64、第2の発熱体電極65及び発熱体引出電極66は、それぞれ酸化などによる電極特性の変質を抑制するための電極保護層67で被覆されている。電極保護層67の材料は、第2実施形態のヒューズ素子40の場合と同様である。さらに、第1の電極62、第2の電極63及び第1の発熱体電極64は、それぞれキャスタレーションを介して絶縁基板61の裏面61bに形成された第1の外部接続電極62a、第2の外部接続電極63a及び発熱体給電電極64aと電気的に接続されている。第1の電極62、第2の電極63及び第1の発熱体電極64と第1の外部接続電極62a、第2の外部接続電極63a及び発熱体給電電極64aとの接続は、キャスタレーションに限定されず、スルーホールで行ってもよい。
【0046】
発熱体70は、比較的抵抗が高く、通電により発熱する高抵抗導電性材料から形成されている。発熱体70は、例えば、ニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体70は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合してペースト状にしたものを、絶縁基板61の表面にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する方法等によって形成することができる。
【0047】
発熱体70は、絶縁部材71で被覆されている。絶縁部材71の材料としては、例えばガラスを用いることができる。発熱体引出電極66は、絶縁部材71を介して発熱体70と対向するように配置される。これにより、発熱体70は、絶縁部材71及び発熱体引出電極66を介してヒューズエレメント10と重畳される。このような重畳構造とすることによって、発熱体70にて発生した熱を効率よくヒューズエレメント10に伝えることができる。
【0048】
ヒューズエレメント10は、両端がそれぞれ第1の電極62と第2の電極63に電気的に接続し、中央部が発熱体引出電極66に接続されている。ヒューズエレメント10と、第1の電極62、第2の電極63及び発熱体引出電極66とは、はんだ等の接続材料68を介して電気的に接続されている。これにより、保護素子60は、発熱体給電電極64a、第1の発熱体電極64、発熱体70、第2の発熱体電極65、発熱体引出電極66、そしてヒューズエレメント10に至る通電経路と、第1の外部接続電極62a、第1の電極62、発熱体70、第2の電極63、そして第2の外部接続電極63aに至る通電経路とが形成される。また、ヒューズエレメント10は、表面にフラックス69が塗布されている。
【0049】
保護素子60は、
図7に示すように、カバー部材80が接着剤を介して取り付けられていることが好ましい。カバー部材80の材料は、第2実施形態のヒューズ素子40の場合と同様である。
【0050】
保護素子60は、第1の外部接続電極62a、第2の外部接続電極63a及び発熱体給電電極64aを介して、回路基板の電流経路上に実装される。これにより、保護素子60のヒューズエレメント10は、第1の外部接続電極62aと第2の外部接続電極63aを介して外部回路の電流経路上に直列接続され、発熱体70は発熱体給電電極64aを介して回路基板に設けられた電流制御素子と接続される。
【0051】
保護素子60は、回路基板に異常が発生すると、回路基板に備えられた電流制御素子によって、発熱体給電電極64aを介して発熱体70が通電される。これにより、発熱体70が発熱し、その熱が、絶縁部材71及び発熱体引出電極66を介してヒューズエレメント10に伝えられる。この熱によって、ヒューズエレメント10の低融点金属層11が溶融し、生成した溶融物が中間層13と高融点金属層12とを溶解することによって、ヒューズエレメント10を溶断させる。そして、このヒューズエレメント10の溶断により、第1の電極62と第2の電極63との間が断線され、回路基板の電流経路が遮断される。
【0052】
以上のような構成とされた本発明の第3実施形態に係る保護素子60は、本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメント10を用いているので、異常時には速やかにヒューズエレメント10が溶断される。このため、回路基板の電流経路を早期に遮断させることができる。