特開2020-205266(P2020-205266A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユミコアの特許一覧

特開2020-205266小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法
<>
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000008
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000009
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000010
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000011
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000012
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000013
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000014
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000015
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000016
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000017
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000018
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000019
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000020
  • 特開2020205266-小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-205266(P2020-205266A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20201127BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20201127BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20201127BHJP
【FI】
   H01M4/525
   C01G53/00 A
   H01M4/505
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-144492(P2020-144492)
(22)【出願日】2020年8月28日
(62)【分割の表示】特願2018-519633(P2018-519633)の分割
【原出願日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-105788(P2016-105788)
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502270497
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】石塚 弘顕
(72)【発明者】
【氏名】福浦 知己
(72)【発明者】
【氏名】西村 三和子
(72)【発明者】
【氏名】石黒 弘規
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA06
5H050HA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】焼成後に凝集がなく解砕の必要が無いリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法の提供。
【解決手段】リチウム源として炭酸リチウムを使用し、混合物を得る工程1と焼成物を得る工程2とを含む、D0.001で0.8μm〜3.0μm、D10で2.0μm〜5.0μm、D50で2.0μm〜6.5μm、D90で5.5μm〜12.0μm、及びD100で10.0μm〜20.0μmを示し、式(1):LiNi1−x−yCoで表されるニッケルリチウム金属複合酸化物からなる、ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム源として炭酸リチウムを使用し、以下の工程1及び/又は工程1’と工程2とを含む、粒子分布を表す累積%粒径がD0.001で0.8μm〜3.0μm、D10で2.0μm〜5.0μm、D50で2.0μm〜6.5μm、D90で5.5μm〜12.0μm、及びD100で10.0μm〜20.0μmを示し、以下の式(1)で表されるニッケルリチウム金属複合酸化物からなる、ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
(工程1)ニッケル水酸化物及び/又はニッケル酸化物と、コバルト水酸化物及び/又はコバルト酸化物とを含む前駆体に、金属Mの水酸化物及び/又は金属Mの酸化物と炭酸リチウムを混合し、混合物を得る工程。
(工程1’)ニッケル水酸化物及び/又はニッケル酸化物と、コバルト水酸化物及び/又はコバルト酸化物と、金属Mの水酸化物及び/又は金属Mの酸化物とを含む前駆体に、炭酸リチウムを混合し、混合物を得る工程。
(工程2)工程1及び/又は工程1’で得られた混合物を炭酸リチウムの融点未満の温度で焼成し、焼成物を得る工程。
【化1】

(式(1)中、0.90<a<1.10、1.7<b<2.2、0.01<x<0.15、かつ0.005<y<0.10であり、MはAlを必須元素として含み、Mn、W、Nb、Mg、Zr、及びZnから選ばれる元素を含んでもよい金属である。)
【請求項2】
工程2で連続式炉あるいはバッチ式炉を用いる、請求項1に記載のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
【請求項3】
工程2でロータリーキルン、ローラーハースキルン、マッフル炉から選ばれる焼成炉を用いる、請求項1または2に記載のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
【請求項4】
工程2を経て得られるニッケルリチウム金属複合酸化物が、粒子の凝集が無いこと特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
【請求項5】
工程2の後に、工程2を経たニッケルリチウム金属複合酸化物の焼成物を解砕する工程、及び/又は、工程2を経たニッケルリチウム金属複合酸化物の焼成物を篩掛する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
【請求項6】
以下の式(1)で表されるニッケルリチウム金属複合酸化物からなり、累積%粒径がD0.001で0.8μm〜3.0μm、D10で2.0μm〜5.0μm、D50で2.0μm〜6.5μm、D90で5.5μm〜12.0μm、及びD100で10.0μm〜20.0μmを示す、ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体。
【化2】

(式(1)中、0.90<a<1.10、1.7<b<2.2、0.01<x<0.15、かつ0.005<y<0.10であり、MはAlを必須元素として含み、Mn、W、Nb、Mg、Zr、及びZnから選ばれる元素を含んでもよい金属である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法、該製造方法により得られるニッケルリチウム金属複合酸化物粉体、これからなる正極活物質、該正極活物質を用いたリチウムイオン電池正極及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話などの屋外で携帯使用できる情報端末機器の普及は、小型で軽量かつ高容量の電池の導入に因るところが大きい。ハイブリッド車の普及によって、高性能で安全性や耐久性の高い車両搭載用電池の需要も増している。更に搭載する電池の小型化と高容量化により電気自動車も実現されている。既に多くの企業・研究機関が情報端末機器や車輛に搭載される電池、特にリチウムイオン電池の技術開発に参入し、激しい競争が繰り広げられており、情報端末機器やハイブリッド車、EV車の市場競争の激化に伴い、現在、より低コストのリチウムイオン電池が強く求められており、品質とコストのバランスが課題となっている。
【0003】
最終的な工業製品の製造コストを下げるための手段としては、製品を構成する部材や材料の低コスト化がまず挙げられる。リチウムイオン電池においても、その必須構成部材である正極、負極、電解質、セパレータそれぞれの低コスト化が検討されている。このうち正極は正極活物質と呼ばれるリチウム含有金属酸化物を電極上に配置した部材である。正極活物質の低コスト化は、正極の低コスト化、さらに電池の低コスト化に欠かせない。
【0004】
現在、リチウムイオン電池の正極活物質として高容量が期待できるニッケル系活物質に注目が集まっている。典型的な高ニッケル系活物質の一つが、リチウムとニッケルの他にコバルトとアルミニウムを含む複合金属酸化物(NCA)である。NCAをはじめとするニッケル系活物質のリチウム源としては、一般的には水酸化リチウムが用いられている。
【0005】
リチウムイオン電池用正極活物質の代表であるコバルト酸リチウムを製造する際にはリチウム原料として炭酸リチウムが用いられるが、この場合、焼成の際に炭酸リチウムの分解温度以上で焼成するのが普通である。一方、LNCAOの様な高ニッケル系正極活物質製造に炭酸リチウムを使用し高温で焼成すると、いわゆるカチオンミックスを惹起する問題がありこれを避けるため、高ニッケル系正極活物質を製造する際には水酸化リチウムを用いることが一般的である(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構2012年報告書148−154頁)。水酸化リチウムとしては、以下の式で表される反応で炭酸リチウムを原料として工業的に合成されたものが専ら用いられている(「月刊ファインケミカル」2009年11月号81−82頁、シーエムシー出版)。当然に、水酸化リチウムの価格はその原料である炭酸リチウムの価格よりも高い。
(炭酸リチウムを原料とする水酸化リチウムの製造)
LiCO(水溶液)+Ca(OH)(水溶液→2LiOH(水溶液)+CaCO(固体)
上述のように、リチウムイオン電池の高性能化と低コスト化への要求はますます高まっており、リチウムイオン電池の各部材、各部材を構成する材料の高性能化と低コスト化が必要とされている。LNOを含む正極活物質についても同様に、高品質化と低コスト化が求められている。
【0006】
一方、リチウムイオン電池への要求には、低コスト化に加えて高容量であることも常に求められており、特に体積容量密度向上の要求圧力が非常に大きい。体積容量密度を上げるためにはより緻密に活物質を電極内に充填することが求められるが、粒度分布が単分散では高密度化には限界がある。これを打破するための手法として容易に圧壊する粒子を用いるか、或いは粒度分布の異なる粒子を混合して用いる方法、いわゆるバイモーダル混合物を用いるのが一般的である。
【0007】
バイモーダル混合物とは、大粒子の持つ平均粒径のおおよそ20分の1から10分の1程度の小粒子を大粒子に対し8:2から6:4の程度の比で混合して成る複分散の粒子混合物であり、大粒子の成す空隙に小粒子が充填される事によって粒子の充填密度の増大を図るものである。例えば特開2001−196197号公報には、正極活物質として無機酸化物を用い、負極活物質としてカーボンを用いるリチウム二次電池において、上記正極活物質である無機酸化物、もしくは負極活物質であるカーボンの平均粒径が少なくとも二種類以上から構成されおり、大粒子の粒径を1とした時、小粒子の粒径の比率が0.3以下であることを特徴とするリチウム二次電池が開示されている。
【0008】
特開2006−318926号公報には、一般式Li1−y2−z(式中、Mは、Co、NiまたはMnを表し、Nは、Mと異なる遷移金属元素または原子番号11以上の元素からなる群から選択される1種以上の元素を表し、xは、0.2≦x≦1.2の範囲内の数を表し、yは、0≦y≦0.5の範囲内の数を表し、zは、0≦z≦1.0の範囲内の数を表す)、または一般式LiMn2−b4−c(式中、Nは、前述と同意義であり、aは、0<a<2.0の範囲内の数を表し、bは、0≦b≦0.6の範囲内の数を表し、cは、0≦c≦2.0の範囲内の数を表す)で示されるリチウム複合酸化物粒子から構成され、該リチウム複合酸化物粒子が、平均粒子径0.1〜50μmの範囲内の異なる2種類の平均粒子径を有するものからなり、該リチウム複合酸化物粒子の粒度分布にピークが2個以上存在し、粒径の大きい方のピークと、粒径の小さい方のピークの粒径比が1.4以上であり、且つ平均粒子径の大きい方のリチウム複合酸化物粒子の配合割合が70〜80質量%であり、平均粒子径の小さい方のリチウム複合酸化物粒子の配合割合が20〜30質量%であることを特徴とする正極活物質が開示されている。このような正極活物質を製造する際には、大粒子のおおよそ20分の1から10分の1程度の小粒子が必要である。例えば15μmの平均粒径を持つ大粒子に対しては、平均粒径が1.5μm程度と非常に小さな粒子を複合させる必要がある。
【0009】
このようにバイモーダル混合物を製造する場合、平均粒径が4μmに満たない小粒径の粒子を製造する必要がある。しかしながら、通常の正極活物質の製造において、平均粒径がおおよそ4μmよりも小さな粒子は焼成工程での活物質粒子間の結晶成長や残存リチウム化合物が粒子間の接着剤となり強力な凝集が発生するという問題がある。リチウム金属複合酸化物をリチウムイオン電池用の活物質として使用する場合には所定の粒度範囲に制御されている必要があるため通常は、焼成工程の後に解砕工程を行うが、この際、焼成物に強力な凝集があると過解砕により微粉発生が発生し、電池性能が低下する。
【0010】
更に小粒径の活物質は解砕後の気流搬送による回収の際、サイクロン等の遠心分離法を用いると粒子が軽いため回収効率が悪化する。また、バグフィルター等のろ過式回収によっても粒径が小さいためフィルターの目詰まりを起こす等の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−196197号公報
【特許文献2】特開2006−318926号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構2012年報告書148−154頁
【非特許文献2】「月刊ファインケミカル」2009年11月号81−82頁、シーエムシー出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように小粒径のリチウムイオン電池用正極活物質を製造する場合、焼成後に解砕を行うことで発生する問題が多く、解砕不要な製造方法が求められている。本発明者らは、焼成後に凝集がなく解砕の必要が無いリチウムイオン電池用正極活物質の製造法を求めて鋭意検討した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
その結果、焼成の際に炭酸リチウムをリチウム原料として用い、炭酸リチウムの融点以下の温度で焼成することにより、焼成後に凝集が無く、解砕の必要が無い小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を高収率で製造することに成功した。すなわち本発明は以下のものである。
【0015】
(発明1)リチウム源として炭酸リチウムを使用し、以下の工程1及び/又は工程1’と工程2とを含む、粒子分布を表す累積%粒径がD0.001で0.8μm〜3.0μm、D10で2.0μm〜5.0μm、D50で2.0μm〜6.5μm、D90で5.5μm〜12.0μm、及びD100で10.0μm〜20.0μmを示し、以下の式(1)で表されるニッケルリチウム金属複合酸化物からなる、ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
(工程1)ニッケル水酸化物及び/又はニッケル酸化物と、コバルト水酸化物及び/又はコバルト酸化物とを含む前駆体に、金属Mの水酸化物及び/又は金属Mの酸化物と炭酸リチウムを混合し、混合物を得る工程。
(工程1’)ニッケル水酸化物及び/又はニッケル酸化物と、コバルト水酸化物及び/又はコバルト酸化物と、金属Mの水酸化物及び/又は金属Mの酸化物とを含む前駆体に、炭酸リチウムを混合し、混合物を得る工程。
(工程2)工程1及び/又は工程1’で得られた混合物を炭酸リチウムの融点未満の温度で焼成し、焼成物を得る工程。
【0016】
【化1】
【0017】
(式(1)中、0.90<a<1.10、1.7<b<2.2、0.01<x<0.15、かつ0.005<y<0.10であり、MはAlを必須元素として含み、Mn、W、Nb、Mg、Zr、及びZnから選ばれる元素を含んでもよい金属である。)
【0018】
(発明2)工程2で連続式炉あるいはバッチ式炉を用いる、発明1のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
(発明3)工程2でロータリーキルン、ローラーハースキルン、マッフル炉から選ばれる焼成炉を用いる、発明1または発明2のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
(発明4)工程2を経て得られるニッケルリチウム金属複合酸化物が、粒子の凝集が無いこと特徴とする、発明1〜3のいずれかのニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
(発明5)工程2の後に、工程2を経たニッケルリチウム金属複合酸化物の焼成物を解砕する工程、及び/又は、工程2を経たニッケルリチウム金属複合酸化物の焼成物を篩掛する工程をさらに含む、発明1〜4のいずれかのニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法。
(発明6)以下の式(1)で表されるニッケルリチウム金属複合酸化物からなり、累積%粒径がD0.001で0.8μm〜3.0μm、D10で2.0μm〜5.0μm、D50で2.0μm〜6.5μm、D90で5.5μm〜12.0μm、及びD100で10.0μm〜20.0μmを示す、ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体。
【0019】
【化2】
【0020】
(式(1)中、0.90<a<1.10、1.7<b<2.2、0.01<x<0.15、かつ0.005<y<0.10であり、MはAlを必須元素として含み、Mn、W、Nb、Mg、Zr、及びZnから選ばれる元素を含んでもよい金属である。)
【発明の効果】
【0021】
本発明のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法を用いれば、焼成後に凝集の無い解砕不要な、小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の工程2で用いる容器の第1の例を模式的に示す。(立体図)
図2】本発明の工程2で用いる容器の第1の例を模式的に示す。(上面図)
図3】本発明の工程2で用いる容器の第1の例に形成された給気路と排気路を略示する。
図4】本発明の工程2で用いる容器の第2の例を模式的に示す。(立体図)
図5】本発明の工程2で用いる容器の第2の例を模式的に示す。(上面図)
図6】本発明の工程2で用いる容器の第2の例に形成された給気路と排気路を略示する。
図7】実施例1で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像。(倍率1000倍)
図8】実施例1で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像。(倍率4000倍)
図9】実施例2で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像。(倍率1000倍)
図10】実施例2で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像。(倍率4000倍)
図11】比較例1で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像。(倍率1000倍)
図12】比較例1で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像(倍率4000倍)
図13】比較例2で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像。(倍率1000倍)
図14】比較例2で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の電子顕微鏡画像。(倍率4000倍)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の製造方法によって、以下の式(1)で表されるニッケルリチウム金属複合酸化物からなる粉体が得られる。式(1)中のMはAlを必須元素として含み、Mn、W、Nb、Mg、Zr、およびZnから選ばれる金属を含んでもよい金属元素である。任意の構成元素である上記Mn、W、Nb、Mg、Zr、Znから選ばれる1種類以上の金属の量は、式(1)で表されるニッケルリチウム金属複合酸化物のニッケル系正極活物質としての機能を損なわない範囲であれば如何様であってもよい。
【0024】
【化3】
【0025】
(式(1)中、0.90<a<1.10、1.7<b<2.2、0.01<x<0.15、0.005<y<0.10であり、Mは、Alであるか、あるいは、Mn、W、Nb、Mg、Zr、及びZnから選ばれる1種類以上の微量の金属を含むAlである。)
上記Mn、W、Nb、Mg、Zr、及びZnから選ばれる1種類以上の金属が上記ニッケルリチウム金属複合酸化物に供給される時点は、本発明の製造方法のいずれの工程であっても良い。例えば原料に含まれる不純物として供給されてもよく、必須の工程である後述の工程1あるいは工程1’に副成分として供給されてもよく、あるいは、任意の工程で供給されてもよい。
【0026】
本発明ではまず、工程1及び/又は工程1’でニッケルリチウム金属複合酸化物を構成する金属の原料を混合する。得られた混合物を後述の工程2で焼成して目的のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を得る。以下に本発明の製造方法の各工程について説明する。
【0027】
(工程1)ニッケル水酸化物及び/又はニッケル酸化物と、コバルト水酸化物及び/又はコバルト酸化物とを含む前駆体に、金属Mの水酸化物及び/又は金属Mの酸化物と、炭酸リチウムを混合する混合工程である。炭酸リチウムは水酸化リチウム(通常は水酸化リチウム1水和物)の原料である。従来技術ではニッケルリチウム金属複合酸化物の原料として水酸化リチウムが用いられてきた。単位重量あたりの価格で比較すると炭酸リチウムは水酸化リチウムより安価である点、単位重量あたりのリチウム含有量で比べると炭酸リチウムは水酸化リチウム1水和物に比べてより高濃度のリチウムを含有する点で、炭酸リチウムの使用はコスト低減の観点から有利である。混合は各種ミキサーを用い、せん断力をかけて行う。
【0028】
(工程1’)ニッケル水酸化物及び/又はニッケル酸化物と、コバルト水酸化物及び/又はコバルト酸化物と、金属Mの水酸化物及び/又は金属Mの酸化物とを含む前駆体に、炭酸リチウムを混合する混合工程である。工程1で説明したように炭酸リチウムの使用は製造コストの面で有利である。混合は各種ミキサーを用い、せん断力をかけて行う。
【0029】
本発明の混合工程で得られた原料混合物を後述の工程2に用いる。工程2に用いる焼成材料は、工程1で準備された混合物のみであっても、工程1’で準備された混合物のみであっても、工程1で準備された混合物と工程1’で準備された混合物をさらに混合したものであっても良い。
【0030】
(工程2)工程1及び/又は工程1’で得られた混合物を焼成炉で焼成する工程である。焼成は炭酸リチウムの融点以下の温度域で3〜40時間かけて行う。上記焼成炉の焼成雰囲気には上記混合物を敷設するための容器が置かれ、上記混合物は上記容器に敷設される。このような容器の材質は耐熱性、耐火性に優れるものであれば制限はなく、通常は耐熱性セラミック製の平皿、鉢、槽が用いられる。容器の容積や形状は混合物の量や、焼成炉の構造に応じて自在に適宜設計できる。本発明で用いる容器の最も典型的な形は角皿形状の容器本体と平板状の蓋からなるセラミック製容器である。本発明ではこのようなセラミック製角形容器を単独で焼成炉内に設置してもよく、このようなセラミック製角形容器を水平方向に連結させてもよく、またこのようなセラミック製角形容器を垂直方向に重ねてもよい。
【0031】
給気路から容器内部に流入する気体は、被焼成物である上記混合物に含まれる金属の酸化反応を促進する組成を有する気体であれば制限されない。このような酸化性ガスは、好ましくは酸素含有気体であり、さらに好ましくは純酸素、空気、空気に酸素を加えた混合気体、もしくは窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスに酸素を加えたガスである。このような酸化性ガスは上記給気路を経て上記容器内部に到達した時点で焼成条件に適した温度に加熱されている。
【0032】
上記容器の給気口に位置する上記管の端部から酸化性ガスが噴出する。酸化性ガスは容器の給気口に相対する上記混合物の表面に流圧を伴って接触する。この「流圧を伴って」は、一旦焼成容器中に流入した酸化性ガスが拡散によって上記混合物表面に接触するのではなく、酸化性ガス自体の流れが上記管の端部から上記混合物の表面に達するという意味である。上記給気管の端部の位置は、このような状態で酸化性ガスが混合物表面に接触するような位置に決められる。より広い表面に酸化性ガス流を均一に到達させるために管の端部を拡張することもできる。
【0033】
本発明の工程2では、容器にはまた排気口が形成されている。排気口は、焼成の進行に伴って蓄積する容器中の気体が新たに流入する酸化性ガスの噴出流に巻き込まれることなく、対流、拡散、または吸引によって容器の外部に流出するような位置に、好ましくは容器において給気口から最も離れた位置や、酸化性ガスの流入部と分離された容器内部の空間に設けられる。このように本発明の工程2では焼成雰囲気のガスの流れと組成を制御しながら行われる。
【0034】
本発明の工程2で使用する容器として好ましい例を、図1図2図3を用いて説明する。図1(立体図)及び図2(上面図)は、容器本体(3)の側面に給気口(1)と排気口(2)を設ける例である。給気管(図示せず)が給気口(1)に連結・開口し、加熱された酸化性ガスが給気口(1)から容器内部の空間に流入する。ここに給気路(図3の流路(6))が形成される。一方、焼成の進行に伴い容器内部に蓄積した気体は排気口(2)から焼成炉内に排出される(排気は焼成炉内の空間に排気されます)。ここに排気路(図3の流路(7))が形成される。蓋(4)が完全に容器本体の上部を覆っており、給気口(1)と排気口(2)が十分に隔たることによって、給気路と排気路が重なり合うことはない。こうして容器内部の雰囲気は酸化性ガスの組成、濃度、温度、排気量によって制御される。
【0035】
本発明の工程2で使用する容器として好ましい他の例を、図4図5図6を用いて説明する。図4(立体図)及び図5(上面図)は、容器本体(3)が仕切板(5)を有し、容器本体(3)の側面に給気口(1)と排気口(2)を設ける例である。給気管(図示せず)が給気口(1)に連結・開口し、加熱された酸化性ガスが給気口(1)から容器に入り、仕切板(5)に導かれて仕切板(5)の片面に接する空間に広がる。ここに給気路(図6の流路(8))が形成される。一方、焼成の進行に伴い容器内部に蓄積した気体は排気口(2)から焼成炉内に排出される。ここに排気路(図6の流路(9))が形成される。仕切板(5)によって蓋(4)と容器本体(3)とで形成された空間が実質的に分割されているため、給気路と排気路が完全に重なり合うことはない。こうして容器内部の雰囲気は酸化性ガスの組成、濃度、温度、排気量によって制御される。
【0036】
昇温開始後は、炭酸リチウムの融点以下の温度、具体的には723℃以下の温度域で、好ましくは500℃〜700℃の温度域で焼成する。焼成温度が500℃未満では未反応の炭酸リチウムが多量に残存しニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の生産効率が低下する。しかもこのような低すぎる温度で焼成して製造されたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体のリチウムイオン電池用正極活物質に利用すると、十分な電池性能が得られない。焼成温度が炭酸リチウムの融点を超えると未反応の炭酸リチウムは減少するが、粒子間の強力な凝集が発生し、過解砕やそれに伴う微粉発生の原因となり、リチウムイオン電池用正極活物質に利用すると、十分な電池性能が得られない。
【0037】
工程2では上記焼成温度で3〜40時間、好ましくは5〜35時間かけて焼成する。焼成時間が3時間より短いと未反応の炭酸リチウムが多量に残存しニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の生産効率が低下する。しかもこのような低すぎる温度で焼成して製造されたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体のリチウムイオン電池用正極活物質に利用すると、十分な電池性能が得られない。焼成時間が40時間より長いと炭酸リチウムの消費率はもはや上がらないから経済的に好ましくない。工程2を経た焼成物を更に炭酸リチウムの融点以上で焼成することもできる。炭酸リチウムの融点以下で焼成した後、炭酸リチウムの融点以上で焼成することによってニッケルリチウム金属複合酸化物の結晶成長を促進することが出来る。
【0038】
工程2で用いる焼成炉は、上述のような容器への酸化性ガスの流入と排出が可能な構造であれば制限されない。好ましい焼成炉は商業生産を想定した比較的大量の原料混合物を焼成することができる連続式あるいはバッチ式炉である。例えば、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、マッフル炉などを使用することができる。
【0039】
工程2の終了時に炭酸リチウムはほぼ消費されてニッケルリチウム金属複合酸化物を形成している。また、その形態には凝集は無く、粉体状態を保っている。このような本発明のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の性能は、以下の評価によって確認することができる。
【0040】
(凝集の有無)得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を、手指による解砕及び目視での確認で凝集の有無を確認する。手指により容易に解砕でき凝集が見られないものを「凝集なし」と評価する。
【0041】
(微粉の有無)得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を、走査型電子顕微鏡にて観察すると微粉がないことが確認出来る。
【0042】
(粒径分布)得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を、レーザー散乱型粒度分布系にて粒度分布を測定すると、過解砕により生成した微粉がなく、凝集による粗大粒子もないことが確認出来る。
【0043】
工程2で得られた焼成物にほとんど凝集は見られないため解砕の必要は無いが、工程2の後に任意でボールミル、乳鉢など用いて解砕する工程を設けることができる。またさらに工程2の後に、工程2で得られた焼成物粒子を篩う工程を設けることもできる。このような解砕工程、篩工程の両方を行っても良い。このような解砕工程及び/又は篩工程によって、充填性や粒度分布が調整された微細粒子状のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を製造することができる。本発明で得られるニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の粒度分布は比較的均一であり、その体積基準の累積%粒径はD0.001で0.8μm〜3.0μm、D10で2.0μm〜5.0μm、D50で2.0μm〜6.5μm、D90で5.5μm〜12.0μm、及びD100で10.0μm〜20.0μm、好ましくはD0.001で1.0μm〜3.2μm、D10で2.2μm〜5.0μm、D50で2.0μm〜6.0μm、D90で5.5μm〜11.0μm、D100で10.0μm〜18.0μmを示す。
【0044】
このような本発明で得られるニッケルリチウム金属複合酸化物粉体は上記粒度分布を示す点で従来品に対して新規な材料である。このような本発明で得られるニッケルリチウム金属複合酸化物粉体は解砕することなくリチウムイオン電池正極活物質としてそのまま使用でき、従来法の解砕工程の課題であった粒子の割れや微粉の発生を回避することができる点で画期的である。
【0045】
本発明により炭酸リチウムを原料に用いて効率よく、リチウムイオン電池の正極活物質として好適な小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体が提供される。本発明のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体のみでリチウムイオン電池の正極活物質を構成してもよいし、本発明のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体に他のリチウムイオン二次電池用正極活物質を混合してもよい。例えば、本発明のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体5から40重量部と、本発明以外の大粒径のリチウムイオン二次電池用正極活物質60から95重量部とを合計で100重量部となるように混合したものを正極活物質として用いることもできる。リチウムイオン二次電池の正極を製造する場合には、上述の本発明のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を含む正極活物質、導電助剤、バインダー、分散用有機溶媒を加えて正極用合剤スラリーを調製し、電極に塗布し、リチウムイオン二次電池用正極を製造する。
【実施例】
【0046】
(実施例1)以下の工程1、工程2を経てニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を製造した。
(工程1)硫酸ニッケルと硫酸コバルトの水溶液から調製した水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトで構成されるD50が3.9μmの前駆体に水酸化アルミニウムと炭酸リチウムをミキサーでせん断をかけて混合した。なお、水酸化アルミニウムは前駆体量に対してアルミニウムが2モル%となるように、炭酸リチウムはニッケル−コバルト−アルミニウムの合計に対するモル比が1.025となるように各々調製した。
(工程2)アルミナ製のセラミックボートに工程1より得られた混合物60gをとり、管状炉に設置した。管状炉の一方より酸素を毎分5Lの供給速度で供給しながら、昇温を開始した。昇温速度は毎時155℃で690℃まで昇温し、690℃で10時間保持した後、室温まで冷却した。こうしてニッケルリチウム金属複合酸化物粉体が得られた。焼成物の走査型電子顕微鏡画像を図7及び図8に、粒度分布測定の結果を表1に示す。
【0047】
(粒径分布測定)得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体に粒子の凝集が見られた場合には乳鉢による解砕を行ってから、粒子の凝集がない場合はそのままJISZ8801−1:2006に規定される公称目開き53μmの標準篩を通過させた。篩を通過したニッケルリチウム金属複合酸化物粒子の粒度分布に対応する累積分布を堀場製作所製レーザー散乱型粒度分布測定装置LA−950を用いて測定し、体積基準によるD0.001、D10、D50(メジアン径)、D90、D100を求めた。
【0048】
(実施例2)前駆体にD50が1.85μmのものを用いた以外は、実施例1と同様に焼成を行った。焼成物の走査型電子顕微鏡画像を図9及び図10に、粒度分布測定の結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)実施例1の工程2における焼成条件を変えた例である。即ち、アルミナ製のセラミックボートに工程1より得られた混合物60gをとり、管状炉に設置した。管状炉の一方より酸素を毎時5Lの供給速度で供給しながら、昇温を開始した。昇温速度は毎時155℃で780℃まで昇温し、780℃で5時間保持した後、室温まで冷却した。こうしてニッケルリチウム金属複合酸化物が得られた。焼成物は強固に凝集していたため、乳鉢による解砕を行った後、走査型電子顕微鏡による観察と粒度分布測定を行った。電子顕微鏡画像を図11及び図12に、粒度分布測定の結果を表1に示す。
【0050】
(比較例2)実施例1の工程2における焼成条件を変えた例である。即ち、アルミナ製のセラミックボートに工程1より得られた混合物60gをとり、管状炉に設置した。管状炉の一方より酸素を毎時5Lの供給速度で供給しながら、昇温を開始した。昇温速度は毎時155℃で810℃まで昇温し、810℃で15時間保持した後、室温まで冷却した。こうしてニッケルリチウム金属複合酸化物が得られた。焼成物は強固に凝集していたため、乳鉢による解砕を行った後、走査型電子顕微鏡による観察と粒度分布測定を行った。電子顕微鏡画像を図13及び図14に、粒度分布測定の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
比較例1と比較例2では炭酸リチウムの融点より高い温度で焼成を行った。比較例1では、D100が133という大きな値を示すことから凝集粒子が比較的大量に生成していると考えられる。電子顕微鏡画像からは、強力な凝集をほぐすための解砕で生成したと思われる微粉も大量に発生していると考えられ、このことはD0.001が0.3μmという微小な値を示すことで裏付けられる。
【0053】
比較例2でも、解砕を行ったにもかかわらず、粒度分布が大粒径側に偏ったニッケルリチウム金属複合酸化物が得られた。例えばD50は20μmに近い大きな値をとる。電子顕微鏡写真には前駆体粒子の形状が観察されず、不定形に凝集した形状が観察されるから、粒子間の凝集が示唆される。
【0054】
これに対して実施例1では焼成後の解砕を全く行っていないにもかかわらず、電子顕微鏡画像に割れ、微粉は全く観察されなかった。実施例1のメジアン径:5.7μmは前駆体のメジアン径:3.9μmと大きな隔たりはなく、このことからも正極活物質粒子の凝集が抑えられていることが分かる。さらにD0.01からD10、D50、D100へ至るまで粒径は急激に変化していないことから、比較的粒度の揃ったリチウム金属複合酸化物粒子が生成していることが分かる。
【0055】
実施例2でも同様に、前駆体の粒子系が比較的維持され、比較的粒度の揃った金属複合酸化物粒子が生成している。電子顕微鏡写真では僅かに微粉が観察されるものの、大きな凝集粒子は観察されず、前駆体の形状がよく保たれていることが分かる。
【0056】
このように本発明のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法では、リチウム原料として炭酸リチウムを用いて炭酸リチウムの融点以下の温度で焼成することにより、比較的小粒径で比較的均一な粒度分布を示すニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を効率よく製造することができる。このようなニッケルリチウム金属複合酸化物粉体をそのまま正極活物質として使用することができため、従来問題であった粒子の過解砕の恐れがない。本発明の方法によって微粉や粒子の割れがないリチウムイオン電池正極活物質用をニッケルリチウム金属複合酸化物粉体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、低コストで高性能のリチウムイオン電池用正極活物質を供給する手段として有益である。本発明で得られたニッケルリチウム金属複合酸化物粉体とこれを利用したリチウムイオン電池は、携帯情報端末や電池搭載車両の性能向上に貢献する。粒子の過解砕が無いため、微粉や粒子の割れがない小粒径のニッケルリチウム金属複合酸化物粉体の製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0058】
1給気口
2排気口
3容器本体
4蓋
5仕切板
6給気路
7気路
8給気路
9排気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14