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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-205300(P2020-205300A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/257 20130101AFI20201127BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20201127BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20201127BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   H01L41/257
   H01L41/113
   H01L41/047
   H04R17/00 330H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-110979(P2019-110979)
(22)【出願日】2019年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳生
(72)【発明者】
【氏名】菅原 潤
(72)【発明者】
【氏名】安藤 兼一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 菜々
(72)【発明者】
【氏名】武田 明丈
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019BB02
5D019BB10
5D019FF01
(57)【要約】
【課題】超音波信号の強度向上が図られた圧電素子を提供する。
【解決手段】圧電素子1は、圧電材料からなる圧電体2と、圧電体2上に設けられた電極3及び電極4と、を備える。圧電体2は、互いに対向する主面11a及び主面11bを有する基部11と、主面11a上に互いに離間して配列されると共に、主面11aと接する主面12aと、主面12aと対向する主面12bと、をそれぞれ有する複数の駆動部12と、を有する。基部11は、複数の駆動部12が配置された複数の第一領域R1と、互いに隣り合う第一領域R1間に配置された第二領域R2と、を有する。基部11は、湾曲している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料からなる圧電体と、
前記圧電体上に設けられた第一電極及び第二電極と、を備え、
前記圧電体は、
互いに対向する第一主面及び第二主面を有する基部と、
前記第一主面上に互いに離間して配列されると共に、前記第一主面と接する第三主面と、前記第三主面と対向する第四主面と、をそれぞれ有する複数の駆動部と、を有し、
前記基部は、前記複数の駆動部が配置された複数の第一領域と、互いに隣り合う前記第一領域間に配置された第二領域と、を有し、
前記基部は、湾曲している、圧電素子。
【請求項2】
前記第二領域の前記第一主面側の端部における分極度合いは、前記第二領域の前記第二主面側の端部における分極度合いと異なっている、請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
互いに隣り合う前記駆動部の前記第三主面側の端部同士の間隔は、互いに隣り合う前記駆動部の前記第四主面側の端部同士の間隔と異なっている、請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記基部は、前記第一主面が凸状となるように湾曲している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記第二領域の前記第一主面側の端部における分極度合いは、前記第二領域の前記第二主面側の端部における分極度合いよりも小さい、請求項4に記載の圧電素子。
【請求項6】
互いに隣り合う前記駆動部の前記第三主面側の端部同士の間隔は、互いに隣り合う前記駆動部の前記第四主面側の端部同士の間隔よりも小さい、請求項4又は5に記載の圧電素子。
【請求項7】
前記第一電極は、前記第二主面上に設けられ、
前記第二電極は、前記複数の駆動部の前記第四主面上に設けられた複数の電極部分と、を有している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧電素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電材料からなる圧電体を備える圧電素子が記載されている。この圧電素子では、圧電体が、基部と、基部上に互いに離間して設けられた複数の駆動部とを有している。各駆動部に選択的に電圧を印加して超音波を励起させることにより、超音波の所望のビームパターンを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、センサとして利用するために、超音波信号の強度向上が図られた圧電素子が望まれている。
【0005】
本開示の一側面は、超音波信号の強度向上が図られた圧電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る圧電素子は、圧電材料からなる圧電体と、圧電体上に設けられた第一電極及び第二電極と、を備え、圧電体は、互いに対向する第一主面及び第二主面を有する基部と、第一主面上に互いに離間して配列されると共に、第一主面と接する第三主面と、第三主面と対向する第四主面と、をそれぞれ有する複数の駆動部と、を有し、基部は、複数の駆動部が配置された複数の第一領域と、互いに隣り合う第一領域間に配置された第二領域と、を有し、基部は、湾曲している。
【0007】
この圧電素子では、圧電体の基部の第一領域には、駆動部が配置されている。したがって、圧電素子の駆動時に、第一電極及び第二電極により駆動部に印加される電界は、第一領域にも一様に印加される。よって、駆動時の第一領域の変位量は、第一領域の全体にわたって一様となる。これに対し、第二領域の第一主面側には電界が印加され難い。よって、駆動時の第二領域の変位量は、第一主面側と第二主面側とで異なる。この結果、第二領域が湾曲振動し、それに伴い、基部が湾曲振動する。基部は予め湾曲しているので、予め湾曲していない基部が湾曲振動する場合に比べて、圧電素子の変位量が大きくなる。よって、圧電素子では、超音波信号の強度向上を図ることができる。
【0008】
第二領域の第一主面側の端部における分極度合いは、第二領域の第二主面側の端部における分極度合いと異なっていてもよい。この場合、圧電体では、分極度合いが大きいほど、駆動時の変位量が大きいので、駆動時の第二領域の変位量は、第一主面側と第二主面側とで更に大きく異なる。この結果、第二領域が更に大きく湾曲振動するので、圧電素子では、超音波信号の更なる強度向上を図ることができる。
【0009】
互いに隣り合う駆動部の第三主面側の端部同士の間隔は、互いに隣り合う駆動部の第四主面側の端部同士の間隔と異なっていてもよい。この場合、湾曲している基部に対して垂直に駆動部を配置することができる。また、伸び変形及び湾曲変形の共振周波数のバランスを変更できる。
【0010】
基部は、第一主面が凸状となるように湾曲していてもよい。この場合、複数の駆動部を放射状に配置し易い。よって、駆動部同士が互いに接触し、損傷することが抑制できる。
【0011】
第二領域の第一主面側の端部における分極度合いは、第二領域の第二主面側の端部における分極度合いよりも小さくてもよい。この場合、圧電体の分極処理で生じる変形の大きさは、第二領域の第一主面側の端部で、第二領域の第二主面側の端部よりも小さくなる。したがって、第一主面が凸状となるように基部を容易に湾曲させることができる。
【0012】
互いに隣り合う駆動部の第三主面側の端部同士の間隔は、互いに隣り合う駆動部の第四主面側の端部同士の間隔よりも小さくてもよい。この場合、駆動部同士が接触し、損傷することが抑制できる。
【0013】
第一電極は、第二主面上に設けられ、第二電極は、複数の駆動部の第四主面上に設けられた複数の電極部分と、を有していてもよい。この場合、駆動時の第二領域の変位量を、第一主面側と第二主面側とで容易に異ならせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、超音波信号の強度向上が図られた圧電素子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。
図2図1のII−II線に沿っての断面図である。
図3】圧電体の分極度合いを示す図である。
図4】圧電体の分極度合いによる分極変形の違いを示す模式図である。
図5図1の圧電素子の変位量と比較例に係る圧電素子の変位量とを比較して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿っての断面図である。図1及び図2に示される圧電素子1は、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の金属板からなる振動板(不図示)に貼り合わされてセンサとして使用される。圧電素子1は、例えば、超音波を送受信して車間距離を検知する車載用センサ、又は複写機のトナーの量を検知する粉体レベルセンサ等に使用される。圧電素子1は、圧電体2と、電極3と、電極4と、を備えている。
【0018】
圧電体2は、例えば、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。圧電体2は、その外表面として、互いに対向する主面2a及び主面2bと、互いに対向する一対の側面2cと、互いに対向する一対の側面2dと、を有している。
【0019】
主面2a及び主面2bが互いに対向する方向D1と、一対の側面2cが互いに対向する方向D2と、一対の側面2dが互いに対向する方向D3とは、互いに交差(例えば、直交)している。主面2a及び主面2bは、後述のように湾曲している。このため、主面2a及び主面2bの対向方向は、主面2a及び主面2bの位置によって変わり得る。そこで、方向D1は、例えば、主面2aの重心及び主面2bの重心が互いに対向する方向、又は、方向D2及び方向D3と直交する方向として規定されてもよい。圧電体2の方向D1の長さは、例えば、3mmであり、圧電体2の方向D2の長さは、例えば、8mmであり、圧電体2の方向D3の長さは、例えば8mmである。
【0020】
圧電体2は、基部11と、複数(ここでは4つ)の駆動部12と、を有している。基部11は、互いに対向する主面11a及び主面11bを有している。主面11a及び主面11bが互いに対向する方向は、方向D1と一致している。基部11は、湾曲している。基部11は、主面11aが凸状となり、主面11bが凹状となるように湾曲している。基部11は、例えば、後述の分極処理によって湾曲している。主面11aは、主面2bを構成している。
【0021】
複数の駆動部12は、主面11a上に互いに離間して配列されている。複数の駆動部12は、方向D3に沿って配列されている。駆動部12は、主面11aから突出している。駆動部12は、主面11aと接している主面12aと、主面12aと対向する主面12bと、を有している。主面12a及び主面12bが互いに対向する方向(すなわち、駆動部12が主面11aから突出している方向)は、方向D1と概ね一致し、主面11aと直交している。方向D2から見て、駆動部12は、放射状に主面11aに設けられている。複数の駆動部12の主面12bは、主面2aを構成している。
【0022】
複数の駆動部12は、圧電素子1に設けられた複数(ここでは3つ)のスリット5を介して互いに離間している。複数のスリット5は、方向D3において等間隔で並んでいる。スリット5は、主面2aを分割している。スリット5は、方向D2に延び、一方の側面2cから他方の側面2cに至っている。スリット5の底面は、主面11aの一部を構成している。
【0023】
スリット5は、例えば、圧電素子1がセンサに使用される場合に、センシングのための共振周波数及びインピーダンス波形等を調整するために設けられている。具体的には、スリット5は、駆動部12の拡がり振動の共振を抑制するために設けられている。駆動部12の拡がり振動とは、駆動部12の方向D3の振動で、基部11が湾曲振動することで、駆動部12同士が互いに離れ合ったり、近づきあったりする振動である。スリット5によれば、駆動部12の縦方向(方向D1)の振動の共振周波数に、駆動部12の拡がり振動の共振周波数が混ざり難い。よって、駆動部12の縦方向(方向D1)の振動の共振周波数、及び、基部11の拡がり振動の共振周波数の2種類をセンシングに利用し易くなる。スリット5には、例えば、シリコーン、ウレタン、エポキシなどの充填剤が充填されていないので、駆動部12の拡がり振動の共振を十分に減衰することができる。これにより、超音波信号の発信が阻害され難い。
【0024】
複数の駆動部12の主面11aからの突出高さは、互いに同等であり、例えば2.6mmである。複数のスリット5の深さは、互いに同等であり、複数の駆動部12の主面11aからの突出高さと一致している。複数のスリット5の底面と主面2bとの間隔は、互いに同等であり、例えば0.4mmである。スリット5の方向D2の長さは、圧電体2の方向D2の長さと一致しており、例えば8mmである。
【0025】
互いに隣り合う駆動部12の主面12a側の端部同士の間隔L1は、互いに隣り合う駆動部12の主面12b側の端部同士の間隔L2と異なっている。間隔L1は、間隔L2よりも小さい。間隔L1は、例えば、150μmである。間隔L2は、例えば、300μmである。間隔L1と間隔L2との差は、例えば、150μmである。互いに隣り合う駆動部12同士の間隔は、駆動部12の主面12a側の端部から駆動部12の主面12bの端部に向かうにつれて変化している。互いに隣り合う駆動部12同士の間隔は、駆動部12の主面12a側の端部から駆動部12の主面12bの端部に向かうにつれて徐々に長くなっている。
【0026】
基部11は、複数(ここでは4つ)の第一領域R1と、1又は複数(ここでは3つ)の第二領域R2と、を有している。複数の第一領域R1上には、複数の駆動部12が配置されている。第二領域R2は、互いに隣り合う第一領域R1間に配置されている。複数の第一領域R1及び複数の第二領域R2は、方向D3において交互に配列されている。各第一領域R1及び各第二領域R2は、主面11aの一部と、主面11bの一部と、を有している。第二領域R2の主面11aは、スリット5の底面である。
【0027】
圧電体2は、圧電材料からなる。本実施形態では、圧電体2は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とし、Nb、Zn、Ni又はSr等の元素が添加されたものが挙げられる。
【0028】
図3は、圧電体の分極度合いを示す図である。圧電体2は、方向D1に分極されている。駆動部12は、駆動部12の全体にわたって一様(均一)に分極されている。すなわち、駆動部12の分極度合い(分極度)は、駆動部12の全体にわたって一様である。分極度合いは、圧電セラミックスの結晶粒における自発分極の方向が揃っているほど高くなる。図3では、分極度合いが高い部分ほど濃色で示され、分極度合いが低い部分ほど淡色で示されている。未分極の場合は、自発分極の方向がランダムであり、分極度合いが低いので、白色で示される。
【0029】
第一領域R1は、第一領域R1の全体にわたって一様に分極され、自発分極の方向が揃っている。よって、第一領域R1の分極度合いは、第一領域R1の全体にわたって一様である。第一領域R1の分極度合いは、駆動部12の分極度合いと同等である。これに対し、第二領域R2の分極度合いは、第二領域R2の位置によって異なっている。第二領域R2の主面11a側の端部における分極度合いは、第二領域R2の主面11b側の端部における分極度合いと異なっている。
【0030】
第二領域R2の主面11a側の端部における分極度合いは、第二領域R2の主面11b側の端部における分極度合いよりも小さい。第二領域R2の主面11a側の端部における分極度合いは、例えば、未分極の場合と同等である。第二領域R2の主面11b側の端部における分極度合いは、例えば、駆動部12及び第一領域R1の分極度合いと同等である。第二領域R2の分極度合いは、主面11bから主面11aに向かうにつれて徐々に小さくなっている。
【0031】
図1及び図2に示されるように、電極3及び電極4は、圧電体2上に設けられている。電極3は、主面2aに設けられている。電極3は、複数の駆動部12の主面12b上に設けられた複数(ここでは4つ)の電極部分31を有している。電極部分31は、主面12bの全体を覆っている。電極3は、複数のスリット5により分割されている。複数の電極部分31は、スリット5を介して互いに離間している。電極4は、主面2b上に設けられている。電極4は、主面2bの全体を覆っている。
【0032】
電極3及び電極4は、例えば、Ag等の導電性材料からなる。導電性材料として、Pd、Ag−Pd合金、Au、Pt、又はNi等が用いられてもよい。電極3及び電極4は、例えば、導電性材料を含む導電性ペーストを圧電体2の表面に付与し、焼き付けることにより形成される。電極3及び電極4は、スパッタリング法、又は無電解メッキ法等により形成されてもよい。電極3及び電極4の厚さ(方向D1の長さ)は、例えば同等である。電極3及び電極4の厚さは、例えば5μmである。
【0033】
圧電素子1の製造方法の一例について説明する。まず、圧電体2の構成材料である圧電セラミック材料を顆粒状の粉末に加工する。続いて、圧電セラミック材料の粉末に、ポリビニール系バインダ及び水等を加え、圧電セラミックスのペーストを形成する。次に、圧電セラミックスのペーストを所定の大きさの金型に充填し、プレス成形する。これにより、セラミックグリーンが得られる。続いて、セラミックグリーンに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、例えば、セラミックグリーンをマグネシア等で構成されたセッターに載置した状態で、加熱処理することにより施される。続いて、セラミックグリーンを焼成する。これにより、圧電体が得られる。焼成は、例えば、セラミックグリーンをマグネシアで構成された密閉匣鉢に入れて行われる。焼成温度は、例えば1200℃である。焼成時間は、例えば2時間程度である。
【0034】
次に、圧電体を所定の厚さに研磨する。続いて、導電性ペーストを圧電体の両主面に付与する。導電性ペーストは、例えば、Ag等の導電性材料の粉末にバインダ、可塑剤及び有機溶剤等を加えることにより形成される。導電性ペーストは、例えばスクリーン印刷により圧電体に塗布される。続いて、圧電体の一方の主面側にスリット加工を施す。これにより、基部及び複数の駆動部に対応する部分が形成されると共に、圧電体の一方の主面に設けられた導電性ペーストが複数部分に分割される。その後、例えば、600℃程度で加熱処理を行い、導電性ペーストを焼き付ける。これにより、電極3及び電極4が形成された圧電素子が得られる。
【0035】
続いて、圧電素子に分極処理を施す。分極処理は、例えば、120℃の温度下で、電界強度2kV/mmの電圧を圧電素子の電極3及び電極4に30分間印加することにより行われる。分極処理は、例えば、シリコーン油中で行われる。この場合、電極3及び電極4間の放電が起こらないため、分極処理が行い易い。シリコーン油は、例えば、洗浄剤を用いた超音波洗浄等によって、圧電素子から除去することができる。
【0036】
分極処理の際、第一領域R1及び駆動部12に対応する部分には、その全体にわたって、方向D1の電界が一様に印加される。これにより、第一領域R1及び駆動部12に対応する部分は、その全体にわたって、方向D1に一様に分極され、分極度合いが一様な第一領域R1及び駆動部12となる。これに対し、第二領域R2に対応する部分には、位置によって電界の向きや強度が異なる電界が印加される。これにより、第二領域R2に対応する部分は、一様には分極されず、分極度合いが位置により異なった第二領域R2となる。特に、スリットの底面である主面11a側には、ほとんど電界が印加されないので、分極度合いが小さく、未分極に近い状態となる。
【0037】
図4は、圧電体の分極度合いによる分極変形の違いを示す模式図である。図4では、図3と同様に、分極度合いが高い部分ほど濃色で示され、分極度合いが低い部分ほど淡色で示されている。図4(a)、図4(b)、及び図4(c)では、この順に分極度合いが高くなっている。図4(a)は、未分極の場合である。圧電体2では、上述の分極処理により、分極方向(縦方向)に伸びると共に、分極方向に直交する方向(横方向)に縮むような変形(分極変形)が生じる。分極変形は、圧電体2に印加した電界を0に戻しても残る変形(残留歪)を指す。図4に示されるように、圧電体2では、分極度合いが大きいほど、大きな分極変形が生じる。
【0038】
第二領域R2の主面11a側(スリット5の底面側)の端部における分極度合いは、第二領域R2の主面11b側の端部における分極度合いよりも小さい。したがって、第二領域R2の主面11a側の端部における分極変形は、第二領域R2の主面11b側の端部における分極変形よりも小さい。この結果、基部11は、特に第二領域R2において、主面11a側が凸状、主面11b側が凹状となるように湾曲している。
【0039】
図5は、図1の圧電素子の変位量と比較例に係る圧電素子の変位量とを比較して示す模式図である。図5に示されるように、比較例に係る圧電素子100は、電界を印加していない状態(0V印加の状態)において基部が湾曲していない点で、圧電素子1と相違している。圧電素子100は、例えば、分極処理後にスリット加工を施すことにより形成される。この場合、分極処理の際、第二領域となる部分にも、第一領域及び駆動部となる部分と同様に、電界が一様に印加される。よって、比較例の圧電体では、第二領域も含めた全体にわたって、分極度合いが一様になる。この結果、基部が湾曲していない。
【0040】
図5では、圧電素子1及び圧電素子100に対し、分極方向と逆の向きの電界を印加した状態(−10V印加の状態)と、電界を印加していない状態(0V印加の状態)と、分極方向と同じ向きの電界を印加した状態(+10V印加の状態)と、が比較して示されている。図5に示されるように、圧電素子1では、基部11(図1参照)が予め湾曲されているため、圧電素子1の変位量d1は、基部が予め湾曲されていない圧電素子100の変位量d2に比べて大きくなる。この結果、超音波信号の強度向上を図ることができる。
【0041】
以上説明したように、圧電素子1では、圧電体2の基部11の第一領域R1には、駆動部12が配置されている。したがって、圧電素子1の駆動時に、電極3及び電極4により駆動部12に印加される電界は、第一領域R1にも一様に印加される。よって、駆動時の第一領域R1の変位量は、第一領域R1の全体にわたって一様となる。これに対し、第二領域R2の主面11a側には電極が配置されていないため、電界が印加され難い。よって、駆動時の第二領域R2の変位量は、主面11a側と主面11b側とで異なる。この結果、第二領域R2が湾曲振動し、それに伴い、基部11が湾曲振動する。圧電素子1では、基部11は予め湾曲している。したがって、上述のように、予め湾曲していない基部が湾曲振動する圧電素子100に比べて、圧電素子1の変位量が大きくなる。よって、圧電素子1では、超音波信号の強度向上を図ることができる。
【0042】
第二領域R2の主面11a側の端部における分極度合いは、第二領域R2の主面11b側の端部における分極度合いと異なっている。圧電体2では、分極度合いが大きいほど、駆動時の変位量が大きいので、駆動時の第二領域R2の変位量は、主面11a側と主面11b側とで更に大きく異なる。この結果、第二領域R2が更に大きく湾曲振動するので、圧電素子1では、超音波信号の更なる強度向上を図ることができる。
【0043】
圧電体2の分極処理で生じた分極変形の大きさは、分極度合いが大きいほど大きくなる。したがって、第二領域R2の主面11a側の端部と第二領域R2の主面11b側の端部とでは、分極度合いが異なることにより、分極処理で生じた分極変形の大きさが異なる。よって、分極処理で第二領域R2を湾曲させ、その結果、基部11を湾曲させた状態に容易にすることができる。
【0044】
間隔L1は、間隔L2と異なっている。このため、湾曲している基部11に対して垂直に駆動部12を配置することができる。また、伸び変形及び湾曲変形の共振周波数のバランスを変更できる。よって、使用する周波数や形態に応じた最適化が可能となる。
【0045】
基部11は、主面11aが凸状となるように湾曲している。このため、複数の駆動部12を放射状に配置し易い。よって、駆動部12同士が互いに接触し、損傷することが抑制できる。
【0046】
第二領域R2の主面11a側の端部における分極度合いは、第二領域R2の主面11b側の端部における分極度合いよりも小さい。このため、圧電体2の分極処理で生じた分極変形の大きさは、第二領域R2の主面11a側の端部で、第二領域R2の主面11b側の端部よりも小さくなる。したがって、主面11aが凸状となるように基部11を容易に湾曲させることができる。
【0047】
間隔L1は、間隔L2よりも小さい。このため、駆動部12同士が接触し、損傷することが抑制できる。
【0048】
電極4は、主面11b上に設けられ、電極3は、複数の駆動部12の主面12b上に設けられた複数の電極部分31と、を有している。このため、駆動時の第二領域R2の変位量を、主面11a側と主面11b側とで容易に異ならせることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0050】
例えば、基部11は、主面11aが凹状となり、主面11bが凸状となるように湾曲していてもよい。基部11は、第二領域R2の分極変形が主面11a側と主面11b側とで異なることにより、湾曲しているが、これ以外の方法により湾曲していてもよい。したがって、第二領域R2の分極度合いは、第二領域R2の全体にわたって一様であってもよい。
【0051】
複数の駆動部12の数及び複数の第一領域R1は、それぞれ2つ以上であればよく、第二領域R2の数及び圧電体2に設けられるスリット5の数は、1つであってもよい。複数の駆動部12は、例えば互いに異なる形状を呈していてもよい。複数の第一領域R1は、例えば互いに異なる形状を呈していてもよい。圧電素子1の製造方法では、スリット加工は分極工程前に行われればよく、導電性ペーストを焼き付けて電極3,4を形成した後に行われてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…圧電素子、2…圧電体、3…電極(第二電極)、31…電極部分、4…電極(第一電極)、11…基部、11a…主面(第一主面)、11b…主面(第二主面)、12…駆動部、12a…主面(第三主面)、12b…主面(第四主面)、R1…第一領域、R2…第二領域。

図1
図2
図3
図4
図5