(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-205367(P2020-205367A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】可変変圧器及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01F 29/02 20060101AFI20201127BHJP
【FI】
H01F29/02 W
H01F29/02 U
H01F29/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-112780(P2019-112780)
(22)【出願日】2019年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】391025246
【氏名又は名称】株式会社東京理工舎
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 孝宣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直己
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光男
(57)【要約】
【課題】設置スペースを小さくすることが可能で、かつ、種々の回路を形成可能な可変変圧器及びその使用方法を提供する。
【解決手段】可変変圧器100は、互いに対向する第一コア部11と第二コア部12とを有する鉄心1と、第一コア部11の周囲に巻かれ、電源に接続される入力端子A及びA’と出力端子Bとを有する一次コイル21と、第二コア部12の周囲に巻かれ、出力端子Cと出力端子Dとを有する二次コイル22と、を有し、二次コイル22は、一次コイル21とは絶縁されており、出力端子B及び出力端子Dから出力する電圧を任意に変更可能となっていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第一コア部と第二コア部とを有する鉄心と、
前記第一コア部の周囲に巻かれ、電源に接続される入力端子A及びA’と出力端子Bとを有する一次コイルと、
前記第二コア部の周囲に巻かれ、出力端子Cと出力端子Dとを有する二次コイルと、を有し、
前記二次コイルは、前記一次コイルとは絶縁されており、
前記出力端子B及び前記出力端子Dから出力する電圧を任意に変更可能となっていることを特徴とする可変変圧器。
【請求項2】
前記入力端子Aは、前記一次コイルの一端に接続され、接地可能となっており、
前記出力端子Bは、前記一次コイルと接し、前記第一コア部の長手方向にスライドするスライド端子Eに接続されている請求項1に記載の可変変圧器。
【請求項3】
前記出力端子Cは、前記二次コイルの一端側に接続されており、
前記出力端子Dは、前記二次コイルと接し、前記第二コア部の長手方向にスライドするスライド端子Fに接続されている請求項1または2に記載の可変変圧器。
【請求項4】
前記一次コイルの巻き方向と、前記二次コイルの巻き方向とは、逆方向である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の可変変圧器。
【請求項5】
前記第一コア部は、両端部近傍において同じ方向に屈曲しており、
前記第二コア部は、両端部近傍において同じ方向に屈曲しており、
前記第一コア部の両端部と前記第二コア部の両端部とが接合されることで前記鉄心を構成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の可変変圧器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の可変変圧器の使用方法であって、
前記入力端子Aを接地する工程と、
前記入力端子A、前記出力端子B、前記出力端子C及び前記出力端子Dのそれぞれを任意に接続し、回路を形成する工程と、を有することを特徴とする可変変圧器の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置スペースの小さくすることが可能で、かつ、種々の回路を形成可能な可変変圧器及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりダイヤル型の操作部を回転させることで電圧を調整する回転式スライダックが知られている。
また、鉄心に一次巻線及び二次巻線を巻き、鉄心の磁路面積を調整することで電圧を変化させる可変変圧器も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−278273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のような回転式スライダックでは、円筒形であることから、スペースの問題で変圧器を必要とする機器の中に効率よく設置することが困難であり、かつ出力が電源ラインに接続されているため、他の電源との接続ができなかった。
また、磁路面積を調整する可変変圧器では、変圧回路を自由に組み替えるのが難しく、種々の回路を形成することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、設置スペースを小さくすることが可能で、かつ、種々の回路を形成可能な可変変圧器及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに対向する第一コア部と第二コア部とを有する鉄心と、
前記第一コア部の周囲に巻かれ、電源に接続される入力端子A及びA’と出力端子Bとを有する一次コイルと、
前記第二コア部の周囲に巻かれ、出力端子Cと出力端子Dとを有する二次コイルと、を有し、
前記二次コイルは、前記一次コイルとは絶縁されており、
前記出力端子B及び前記出力端子Dから出力する電圧を任意に変更可能となっていることを特徴とする可変変圧器である。
【0007】
また、本発明は、前記入力端子Aを接地する工程と、
前記入力端子A、前記出力端子B、前記出力端子C及び前記出力端子Dのそれぞれを任意に接続し、回路を形成する工程と、を有することを特徴とする可変変圧器の使用方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設置スペースを小さくすることが可能で、かつ、2つの可変電圧出力をもち、これを用いて独立した2電源、倍電圧の電源さらに単相3線式回路が結線の組み合わせにより形成可能な可変変圧器及びその使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の可変変圧器の構成の一例を示す正面図(a)及び断面図(b)である。
【
図2】本発明の可変変圧器の外観の構成の一例を示す外観図である。
【
図3】本発明の可変変圧器を用いた回路構成の一例を示す回路図である。
【
図4】本発明の可変変圧器を用いた回路構成の一例を示す回路図である。
【
図5】本発明の可変変圧器を用いた回路構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の可変変圧器の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の可変変圧器の構成の一例を示す正面図(a)及び断面図(b)、
図2は、本発明の可変変圧器の外観の構成の一例を示す外観図、
図3〜5は、本発明の可変変圧器を用いた回路構成の一例を示す回路図である。本明細書において、
図1及び
図2中、上方向を上又は上側、下方向を下又は下側という。
【0011】
可変変圧器100は、入力された交流電圧を任意の大きさの交流電圧に変換可能な可変変圧器である。すなわち、後述する各出力端子間の電位差を任意に変更可能な可変変圧器である。
可変変圧器100は、
図1に示すように、鉄心1と、一次コイル21と、二次コイル22とを有している。また、可変変圧器100は、
図2に示すように、鉄心1、一次コイル21及び二次コイル22を収容する筐体3と、筐体3表面に設けられ、上下方向に移動する第一スライダ41及び第二スライダ42と、接続端子群5とを有している。
【0012】
鉄心1は、第一コア部11と第二コア部12とを有している。また、鉄心1の中央部には、空間15が形成されている。本実施形態では、鉄心1の外形及び空間15の外形は、
図1に示すように、略四角形となっている。空間15は1次コイルと2次コイルとの間の絶縁さえ保たれればよいので十分に狭くできる。
第一コア部11と第二コア部12とは、互いに対向するように配置されている。
図1に示すように、第一コア部11の両端部は、同じ方向に屈曲している。すなわち、第一コア部11の両端部は、第二コア部12側に向かって屈曲している。
また、
図1に示すように、第二コア部12の両端部は、同じ方向に屈曲している。すなわち、第二コア部12の両端部は、第一コア部11側に向かって屈曲している。
【0013】
第一コア部11の両端部と第二コア部12の両端部とが接合し、接合部13及び接合部14を形成することにより、鉄心1が構成されている。
鉄心1は、成層鉄心で構成されている。これにより、渦電流を抑制し、熱損失が生じるのを防止することができる。
【0014】
第一コア部11及び第二コア部12の周囲には、それぞれ一次コイル21及び二次コイル22が設けられている。二次コイル22は、一次コイル21とは絶縁されている。
一次コイル21は、電源に接続される入力端子A及び入力端子A′と、入力端子Aに接続された出力端子A”と、出力端子Bとを有している。
また、二次コイル22は、出力端子Cと出力端子Dとを有している。
【0015】
入力端子Aは、一次コイル21の一端に接続されており、さらに、接地可能となっている。他方の入力端子A’は、1次コイル21に
図1のように接続される。また、出力端子Bは、スライド端子Eに接続されている。スライド端子Eは、一次コイル21と接しており、第一コア部11の長手方向(
図1中の上下方向)にスライドするよう構成されている。出力端子Bに繋がるスライド端子Eは、入力端子A’より上方に移動できるため、入力電圧より高い電圧を出力できる。これは、例えば、入力電源の電圧が100Vの場合、最大出力(Vmax)は130V出力することができる。
出力端子Cは、二次コイル22の一端に接続されている。そして、出力端子Cは、接地されない。また、出力端子Dは、スライド端子Fに接続されている。スライド端子Fは、二次コイル22と接しており、第二コア部12の長手方向(
図1中の上下方向)にスライドするよう構成されている。
【0016】
スライド端子E及びスライド端子Fは、それぞれ、第一スライダ41及び第二スライダ42と連動している。すなわち、第一スライダ41を上下方向にスライドさせると、スライド端子Eはそれに連動して上下方向にスライドする。また、第二スライダ42を上下方向にスライドさせると、スライド端子Fはそれに連動して上下方向にスライドする。
入力端子A、入力端子A’、出力端子A”、出力端子B、出力端子C及び出力端子Dは、筐体3表面に設けられた接続端子群5の任意の接続端子に電気的に接続されている。この接続端子群5を介して、電源や各端子間が電気的に接続可能となっている。
【0017】
ここで、一次コイル21のコイルの巻き方向と二次コイル22のコイルの巻き方向は、逆方向であることが好ましい。これにより、電圧を増減させる際におけるスライド端子Eとスライド端子Fの移動方向を同じ方向にすることができる。すなわち、例えば、スライド端子Eを上方向に動かすことで電圧が大きくなる場合、スライド端子Fも上方向に動かくことで電圧が大きくなるようにすることができる。また、それぞれ同相の出力とすることができる。
【0018】
以上のような可変変圧器100を用いることにより、小さいスペースであっても設置することができる。
また、可変変圧器100を用いることにより、種々の回路を容易に形成することが可能となる。例えば、
図3〜5に示すような回路を容易に形成することができる。これら全ての回路で、入力端子A及び入力端子A’は電源に接続される。このときに、原則として、中性線(cold)側を入力端子Aにする。この場合は、入力端子を接地することができる。
【0019】
図3は、一次コイル21側と二次コイル22側とを、別々の回路として使用することを示している。なお、この際、二次コイル22側は、電源とは絶縁されている。
図3では、例えば、一次コイル21に、100Vの交流電圧を印加した場合、それぞれの出力V1およびV2は、0〜130V(Vmax)に変圧することができる回路が2つ存在することとなる。
【0020】
図4は、出力端子Bと出力端子Cとを接続し、一次コイル21と二次コイル22と直列に接続して使用することを示している。
図4では、例えば、入力端子Aと入力端子A’に100Vの交流電圧を印加した場合、V3に0〜130V(Vmax)、そして、V4に倍の電圧の0〜260V(2倍のVmax)に変圧できる回路となる。
【0021】
図5は、入力端子Aと出力端子Dとを出力端子A”を介して接続した回路を示している。
図5では、例えば、一次コイル21の入力端子Aと入力端子Aに100Vの交流電圧を印加した場合、V5及びV6は、それぞれ逆相の0〜130V(Vmax)、かつ、V4は0〜260V(2倍のVmax)が出力される。これにより、出力端子Dを中性線とした単相3線式の回路とすることができる。
【0022】
可変変圧器100は、使用前において入力端子Aは接地されていなくてもよいが、可変変圧器100を使用する際には、単層2線式の電源の中性線側を入力端子Aに接続し、それを接地してから使用することが好ましい。
すなわち、可変変圧器100の使用方法としては、入力端子Aを接地する工程と、入力端子A(出力端子A”)、出力端子B、出力端子C及び出力端子Dのそれぞれを任意に接続し、回路を形成する工程と、を有することが好ましい。
【0023】
以上のような可変変圧器100は、例えば、以下のように製造することができる。
空間15の断面形状と約同じ断面形状を有する型を用意し、型の周辺に薄い鉄板を幾重にも巻きつけた後、型を取り除く。その後、接合部13及び14に該当する箇所で切断することにより、第一コア部11と第二コア部12とを形成する。
次に、第一コア部11と第二コア部12の周囲にコイルを巻き付け、一次コイル21及び二次コイル22を形成する。
次に、第一コア部11と第二コア部12とを接合し、各端子を取り付け、筐体3に収納することにより、可変変圧器100が得られる。
なお、型の形状の変更や切断幅の調整により、空間15の幅を任意に調整することができ、より小さいスペースであっても、可変変圧器100を設置することが可能となる。さらに、設置幅を小さくできるので、複数の電源を省スペースに構築することができる。
【0024】
以上、本発明の可変変圧器及びその使用方法について、好適な実施形態を基に説明したが、本発明はこれに限定されない。
上述した説明では鉄心1の外形及び空間15の外形が略四角形のものについて説明したが、これに限定されず、第一コア部11と第二コア部12の部分が外側に湾曲した形状であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 鉄心
11 第一コア部
12 第二コア部
13、14 接合部
15 空間
21 一次コイル
22 二次コイル
3 筐体
41 第一スライダ
42 第二スライダ
5 接続端子群
100 可変変圧器
A、A’ 入力端子
A”、B、C、D 出力端子
E、F スライド端子