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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-205472(P2020-205472A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】高周波回路および通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20201127BHJP
   H04B 1/00 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   H04B1/04 R
   H04B1/00 264
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-110982(P2019-110982)
(22)【出願日】2019年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】人見 伸也
(72)【発明者】
【氏名】森 弘嗣
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060BB05
5K060CC04
5K060DD04
5K060EE04
5K060EE05
5K060HH06
5K060HH11
5K060LL01
(57)【要約】
【課題】複数の電力増幅器により増幅された複数の高周波信号を同時送信している場合に、相互変調歪などの不要波の発生が抑制された高周波回路を提供する。
【解決手段】高周波回路1は、第1送信信号を出力する電力増幅器11と、第1送信信号と周波数が異なる第2送信信号を出力する電力増幅器12と、を備え、電力増幅器11および12の少なくとも一方は、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている期間において、電力増幅器11または12から出力される送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送信信号を出力する第1電力増幅器と、
前記第1送信信号と周波数が異なる第2送信信号を出力する第2電力増幅器と、を備え、
前記第1電力増幅器および前記第2電力増幅器の少なくとも一方は、前記第1電力増幅器からの前記第1送信信号の出力と前記第2電力増幅器からの前記第2送信信号の出力とが同時に実行されている期間において、前記第1電力増幅器または前記第2電力増幅器から出力される送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、前記少なくとも一方の送信電力を低減させる、
高周波回路。
【請求項2】
さらに、
前記第1送信信号が出力される第1出力端子と、
前記第2送信信号が出力される第2出力端子と、を備え
前記第1出力端子および前記第2出力端子は、互いに異なるアンテナ素子と接続される、
請求項1に記載の高周波回路。
【請求項3】
前記第1送信信号は、第4世代移動通信システム(4G)に対応した送信信号であり、
前記第2送信信号は、第5世代移動通信システム(5G)に対応した送信信号である、
請求項1または2に記載の高周波回路。
【請求項4】
前記第1送信信号は、前記第4世代移動通信システムにて規定された第1通信バンドにおける第1チャンネルの送信信号であり、
前記第2送信信号は、前記第5世代移動通信システムにて規定された前記第1通信バンドと同じ周波数範囲を有する第2通信バンドにおける第2チャンネルの送信信号である、
請求項3に記載の高周波回路。
【請求項5】
前記第1電力増幅器は、前記第1送信信号と前記第2送信信号とが同時に出力されている期間において、前記第1送信信号に重畳される前記相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、前記第1送信信号の電力を低減させる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波回路。
【請求項6】
前記第2電力増幅器は、前記第1送信信号と前記第2送信信号とが同時に出力されている期間において、前記第1送信信号に重畳される前記相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、前記第2送信信号の電力を低減させる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波回路。
【請求項7】
前記第1電力増幅器および前記第2電力増幅器は、前記第1送信信号と前記第2送信信号とが同時に出力されている期間において、前記第1送信信号または前記第2送信信号に重畳される前記相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、前記第1送信信号の電力および前記第2送信信号の電力を低減させる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波回路。
【請求項8】
高周波信号を処理する信号処理回路と、
前記信号処理回路で処理された高周波信号を入力する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高周波回路と、を備える、
通信装置。
【請求項9】
前記信号処理回路は、
前記第1電力増幅器から出力される第1送信信号と前記第2電力増幅器から出力される第2送信信号とで生成される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、前記少なくとも一方の送信電力を低減させる制御を行う制御部を有する、
請求項8に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路および当該高周波回路を備えた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチバンド化およびマルチモード化に対応した高周波回路に対して、周波数の異なる複数の高周波信号を同時に高品質で送信することが求められている。
【0003】
特許文献1には、複数の通信バンドの高周波信号を同時送信および同時受信可能なアンテナインターフェース回路(高周波回路)が開示されている。プライマリアンテナに接続された第1のトランシーバには各通信バンドに対応した送信機(電力増幅器)および受信機(低雑音増幅器)が配置され、セカンダリアンテナに接続された第2のトランシーバには各通信バンドに対応した送信機(電力増幅器)および受信機(低雑音増幅器)が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016−501467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された高周波回路において、複数の電力増幅器のそれぞれから異なる周波数の送信信号を同時に出力した場合、一の電力増幅器から出力された送信信号が他の電力増幅器に回り込む場合がある。この場合、例えば、当該他の電力増幅器において、周波数が互いに異なる2つの送信信号がミキシングされて発生する相互変調歪により、送信信号の品質が劣化するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の電力増幅器により増幅された複数の高周波信号を同時送信している場合に、相互変調歪などの不要波の発生が抑制された高周波回路および通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る高周波回路は、第1送信信号を出力する第1電力増幅器と、前記第1送信信号と周波数が異なる第2送信信号を出力する第2電力増幅器と、を備え、前記第1電力増幅器および前記第2電力増幅器の少なくとも一方は、前記第1電力増幅器からの前記第1送信信号の出力と前記第2電力増幅器からの前記第2送信信号の出力とが同時に実行されている期間において、前記第1電力増幅器または前記第2電力増幅器から出力される送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、前記少なくとも一方の送信電力を低減させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の電力増幅器により増幅された複数の高周波信号を同時送信している場合に、相互変調歪などの不要波の発生が抑制された高周波回路および通信装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る高周波回路および通信装置の回路構成図である。
図2】実施例に係る高周波回路および通信装置の回路構成図である。
図3】4G−LTEの高周波信号、5G−NRの高周波信号、および相互変調歪の周波数関係の第1例を表す概略図である。
図4】4G−LTEの高周波信号、5G−NRの高周波信号、および相互変調歪の周波数関係の第2例を表す概略図である。
図5A】実施の形態に係る電力増幅器の出力電力を制御するフローチャートの第1例である。
図5B】実施の形態に係る電力増幅器の出力電力を制御するフローチャートの第2例である。
図5C】実施の形態に係る電力増幅器の出力電力を制御するフローチャートの第3例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、実施例および図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0011】
(実施の形態)
[1 高周波回路および通信装置の構成]
図1は、実施の形態に係る高周波回路1および通信装置6の回路構成図である。同図に示すように、通信装置6は、高周波回路1と、アンテナ回路2と、RF信号処理回路(RFIC)3と、ベースバンド信号処理回路(BBIC)4と、を備える。
【0012】
高周波回路1は、入力端子130および140と、出力端子110(第1出力端子)および120(第2出力端子)と、送信増幅回路10Aおよび10Bと、を備える。
【0013】
送信増幅回路10Aは、入力端子130と出力端子110とを結ぶ経路に配置された第1送信増幅回路の一例であり、電力増幅器11と、フィルタ回路13と、を備える。送信増幅回路10Bは、入力端子140と出力端子120とを結ぶ経路に配置された第2送信増幅回路の一例であり、電力増幅器12と、フィルタ回路14と、を備える。
【0014】
電力増幅器11は、第1電力増幅器の一例であり、入力端子130に入力された高周波信号を増幅し、当該増幅されて生成された第1送信信号をフィルタ回路13を介して出力端子110に向けて出力する。フィルタ回路13は、電力増幅器11の出力端子および出力端子110に接続されており、第1周波数を含む通過帯域を有し、第1周波数の第1送信信号を低損失で通過させる。
【0015】
電力増幅器12は、第2電力増幅器の一例であり、入力端子140に入力された高周波信号を増幅し、当該増幅されて生成された第2送信信号をフィルタ回路14を介して出力端子120に向けて出力する。フィルタ回路14は、電力増幅器12の出力端子および出力端子120に接続されており、第2周波数を含む通過帯域を有し、第2周波数の第2送信信号を低損失で通過させる。
【0016】
電力増幅器11および12は、ぞれぞれ、例えば、ベース端子、エミッタ端子およびコレクタ端子を有するバイポーラ型の増幅トランジスタで構成されている。電力増幅器11および12のそれぞれは、例えば、縦続接続された2段以上の増幅トランジスタからなり、k段目の増幅トランジスタのコレクタ端子が(k+1)段目の増幅トランジスタのベース端子と接続される。上記縦続接続により、最前段(1段目)の増幅トランジスタのベース端子が電力増幅器11または12の入力端子となり、最後段の増幅トランジスタのコレクタ端子が電力増幅器11または12の出力端子となる。
【0017】
なお、電力増幅器11および12を構成する増幅トランジスタは、バイポーラトランジスタに限定されず、例えば、MOS電界効果型トランジスタ(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect−Transistor:MOSFET)などであってもよい。また、電力増幅器11および12は、1チップに集積されていてもよいし、異なるチップで構成されていてもよい。
【0018】
電力増幅器11および12のそれぞれを構成する各増幅トランジスタのベース端子にはバイアス信号(直流バイアス電圧または直流バイアス電流)が供給され、コレクタ端子には直流電源電圧が供給される。各増幅トランジスタのベース端子に供給されるバイアス信号(の電圧または電流)を変化させることにより、各増幅トランジスタの動作点が最適化される。
【0019】
なお、フィルタ回路13および14、入力端子130および140、ならびに出力端子110および120は、本実施の形態に係る高周波回路1に必須の構成要素ではない。
【0020】
上記構成において、高周波回路1は、電力増幅器11で増幅された第1送信信号の出力端子110からの送信状態と、電力増幅器12で増幅された第2送信信号の出力端子120からの送信状態とを、同時に実現することが可能である。
【0021】
ここで、本実施の形態に係る高周波回路1では、電力増幅器11および12の少なくとも一方は、電力増幅器11からの第1送信信号の出力と電力増幅器12からの第2送信信号の出力とが同時に実行されている期間において、送信電力を低減させる。
【0022】
2つの電力増幅器を備える高周波回路において、2つの送信信号を同時に出力している場合、一方の電力増幅器の出力信号が他方の電力増幅器に回り込み、当該回り込んだ一方の電力増幅器の出力信号と他方の電力増幅器の出力信号とがミキシングされて相互変調歪(InterModulation Distortion、以降IMDと記す場合がある)が発生することが想定される。さらには、上記2つの送信信号の少なくとも一方に、スプリアスなどの不要波が重畳されることも想定される。この相互変調歪などの不要波が、例えば、当該不要波と同じ周波数成分を有する高周波信号を伝送する高周波回路に流入すると、当該高周波回路における所定の信号品質レベルを満足できなくなるという問題が発生する。
【0023】
これに対して、本実施の形態に係る高周波回路1の上記構成によれば、電力増幅器11および12の少なくとも一方は、第1送信信号および第2送信信号が同時に出力されている期間において、送信電力を低減させることが可能である。これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時出力されている期間において、高周波回路1から出力される第1送信信号および第2送信信号の少なくとも一方に重畳される不要波の電力レベルが許容値(閾値)を超える場合に、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させることができる。これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時出力されている期間において、高周波回路1から出力される第1送信信号および第2送信信号の少なくとも一方に重畳される不要波の電力レベルを、許容値(閾値)以下に抑えることが可能となる。よって、第1送信信号および第2送信信号を同時出力している場合に、相互変調歪などの不要波の発生が抑制された高周波回路1および通信装置6を提供することが可能となる。
【0024】
また、本実施の形態に係る高周波回路1は、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている期間において、第1送信信号または第2送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させてもよい。
【0025】
これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時出力されている期間において、高周波回路1から出力される第1送信信号および第2送信信号の少なくとも一方に重畳される相互変調歪の電力レベルを閾値以下に抑えることが可能となる。よって、第1送信信号および第2送信信号を同時出力している場合に、相互変調歪の発生が抑制された高周波回路1および通信装置6を提供することが可能となる。
【0026】
また、本実施の形態に係る高周波回路1では、出力端子110および120は、それぞれ異なるアンテナ素子21および22と接続されている。
【0027】
送信増幅回路10Aおよび10Bから出力される送信信号が、それぞれ、異なるアンテナ素子21および22から放射される構成の場合、一方のアンテナ素子から放射された送信信号が、他方のアンテナ素子に回り込み、当該他方のアンテナ素子に接続された送信増幅回路から送信された送信信号と、当該他方のアンテナ素子に回り込んできた送信信号とがミキシングされて相互変調歪が発生する。
【0028】
上記構成であっても、2つの送信信号を同時出力している場合に、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させることができるので、相互変調歪などの不要波の発生を抑制できる。よって、高周波回路1およびその周辺回路における信号品質レベルの劣化を抑制できる。
【0029】
以下、通信装置6を構成する高周波回路1以外の構成要素について説明する。
【0030】
アンテナ回路2は、アンテナ素子21および22を有する。アンテナ素子21は、高周波回路1の出力端子110に接続され、第1送信信号を優先的に放射送信し、また、受信する。アンテナ素子22は、高周波回路1の出力端子120に接続され、第2送信信号を優先的に放射送信し、また、受信する。
【0031】
RFIC3は、高周波信号を処理するRF信号処理回路である。具体的には、RFIC3は、BBIC4から入力された送信信号をアップコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された送信信号を、高周波回路1に出力する。また、RFIC3は、電力増幅器11および12の利得を制御するための制御信号(図1で、s1、s2)を電力増幅器11および12へ出力する制御部を有している。
【0032】
BBIC4は、高周波回路1を伝搬する高周波信号よりも低周波の中間周波数帯域を用いて信号処理する回路である。BBIC4で処理された信号は、例えば、画像表示のための画像信号として使用され、または、スピーカを介した通話のために音声信号として使用される。
【0033】
RFIC3およびBBIC4は、高周波信号を処理する信号処理回路である。
【0034】
通信装置6の上記構成によれば、例えば、電力増幅器11から出力される第1送信信号および電力増幅器12から出力される第2送信信号における不要波の電力情報をRFIC3が受け、当該電力情報に基づいてRFIC3の制御部が、電力増幅器11および12の利得を決定する。上記制御部は、決定された利得に対応した制御信号s1を電力増幅器11に出力し、制御信号s2を電力増幅器12に出力する。よって、簡素化された回路構成で、電力増幅器11および12の出力電力を低減させ、相互変調歪などの不要波の発生を抑制することが可能となる。
【0035】
なお、本実施の形態に係る通信装置6において、アンテナ回路2およびBBIC4は、必須の構成要素ではない。
【0036】
また、電力増幅器11および12の利得を制御するための制御信号を出力する制御部は、RFIC3に含まれていなくてもよく、BBIC4に含まれていてもよく、また、RFIC3およびBBIC4以外の通信装置6に含まれていてもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、送信増幅回路10Aおよび送信増幅回路10Bは、それぞれ、別個のアンテナ素子21および22に接続されているが、送信増幅回路10Aおよび10Bが1つの同じアンテナ素子に接続されていてもよい。この場合、出力端子110および120は、1つの出力端子としてまとめられてもよい。
【0038】
なお、本実施の形態に係る高周波回路1では、電力増幅器11は、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている期間において、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、第1送信信号の電力を低減させてもよい。
【0039】
これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時出力されている期間において、相互変調歪を低減させる対象である電力増幅器11自身の送信電力を下げることにより、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力レベルを閾値以下に抑えることが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態に係る高周波回路1では、電力増幅器12は、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている期間において、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、第2送信信号の電力を低減させてもよい。
【0041】
これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時出力されている期間において、相互変調歪を低減させる対象でない電力増幅器12の送信電力を下げることにより、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力レベルを閾値以下に抑えることが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態に係る高周波回路1では、電力増幅器11および12は、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている期間において、第1送信信号または第2送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、第1送信電力および第2送信電力の双方を低減させてもよい。
【0043】
これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時出力されている期間において、電力増幅器11および12の双方の送信電力を下げることにより、第1送信信号または第2送信信号に重畳される相互変調歪の電力レベルを閾値以下に抑えることが可能となる。また、この場合には、電力増幅器11または12のみの送信電力を著しく低減させることなく、電力増幅器11の送信電力と電力増幅器12の送信電力との差を小さくできる。よって、第1送信信号および第2送信信号のいずれかの送信電力が極端に低下して通信不能となってしまうリスクを低減できる。
【0044】
[2 実施例に係る高周波回路および通信装置の構成]
図2は、実施例に係る高周波回路1Aおよび通信装置6Aの回路構成図である。同図に示された高周波回路1Aおよび通信装置6Aは、実施の形態に係る高周波回路1および通信装置6の具体的な回路構成例である。以下、本実施例に高周波回路1Aおよび通信装置6Aについて、実施の形態に係る高周波回路1および通信装置6と同じ構成については説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0045】
図2に示すように、通信装置6Aは、高周波回路1Aと、アンテナ回路2と、RFIC3と、BBIC4と、を備える。
【0046】
高周波回路1Aは、入力端子130および140と、出力端子110(第1出力端子)および120(第2出力端子)と、電力増幅器11および12と、フィルタ回路13Aおよび14Aと、を備える。高周波回路1Aでは、電力増幅器11および12、ならびに、フィルタ回路13Aおよび14Aは、1つの実装基板に実装されている。
【0047】
電力増幅器11およびフィルタ回路13Aは、入力端子130と出力端子110とを結ぶ経路に配置された第1送信増幅回路を構成する。電力増幅器12およびフィルタ回路14Aは、入力端子140と出力端子120とを結ぶ経路に配置された第2送信増幅回路を構成する。
【0048】
第1送信増幅回路は、例えば、第4世代移動通信システム(4G)に対応した第1送信信号を伝送する。また、第2送信増幅回路は、例えば、第5世代移動通信システム(5G)に対応した第2送信信号を伝送する。つまり、第1送信信号は4Gに対応した送信信号であり、第2送信信号は5Gに対応した送信信号である。
【0049】
フィルタ回路13Aは、電力増幅器11の出力端子および出力端子110に接続されており、第1周波数を含む通過帯域を有し、第1周波数の第1送信信号を低損失で通過させる。フィルタ回路13Aは、マルチプレクサ51と、スイッチ52および53と、フィルタ54および55と、を備える。なお、スイッチ52および53の間には、フィルタ54および55だけでなく、その他のフィルタが配置されていてもよい。
【0050】
マルチプレクサ51は、例えば、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタおよびハイパスフィルタからなる。ローパスフィルタは、例えば、4G−LTE(Long Term Evolution)の複数の通信バンドのうちのローバンド群に属する通信バンドの周波数帯域を通過帯域としている。バンドパスフィルタは、例えば、4G−LTEの複数の通信バンドのうちのミドルバンド群に属する通信バンドの周波数帯域を通過帯域としている。ハイパスフィルタは、例えば、4G−LTEの複数の通信バンドのうちのハイバンド群に属する通信バンドの周波数帯域を通過帯域としている。
【0051】
フィルタ54は、例えば、4G−LTEのBand41(帯域:2496−2690MHz)を通過帯域とするバンドパスフィルタである。また、フィルタ55は、例えば、4G−LTEのBand40(帯域:2300−2400MHz)、または、Band30(送信帯域:2305−2315MHz)を通過帯域とするバンドパスフィルタである。
【0052】
スイッチ52は、マルチプレクサ51とフィルタ54および55との間に配置されており、スイッチ53は、電力増幅器11とフィルタ54および55との間に配置されている。スイッチ52は、RFIC3からの制御信号に基づいて、フィルタ54、55およびその他のフィルタのいずれかとマルチプレクサ51との接続を切り換える。スイッチ53は、RFIC3からの制御信号に基づいて、フィルタ54、55およびその他のフィルタのいずれかと電力増幅器11との接続を切り換える。
【0053】
フィルタ回路14Aは、電力増幅器12の出力端子および出力端子120に接続されており、第2周波数を含む通過帯域を有し、第2周波数の第2送信信号を低損失で通過させる。フィルタ回路14Aは、マルチプレクサ61と、スイッチ62および63と、フィルタ64および65と、を備える。なお、スイッチ62および63の間には、フィルタ64および65だけでなく、その他のフィルタが配置されていてもよい。
【0054】
マルチプレクサ61は、例えば、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタおよびハイパスフィルタからなる。ローパスフィルタは、例えば、5G−NR(New Radio)の複数の通信バンドのうちのローバンド群に属する通信バンドの周波数帯域を通過帯域としている。バンドパスフィルタは、例えば、5G−NRの複数の通信バンドのうちのミドルバンド群に属する通信バンドの周波数帯域を通過帯域としている。ハイパスフィルタは、例えば、5G−NRの複数の通信バンドのうちのハイバンド群に属する通信バンドの周波数帯域を通過帯域としている。
【0055】
フィルタ64は、例えば、5G−NRのn41(帯域:2496−2690MHz)を通過帯域とするバンドパスフィルタである。また、フィルタ65は、例えば、5G−NRのn40(帯域:2300−2400MHz)を通過帯域とするバンドパスフィルタである。
【0056】
スイッチ62は、マルチプレクサ61とフィルタ64および65との間に配置されており、スイッチ63は、電力増幅器12とフィルタ64および65との間に配置されている。スイッチ62は、RFIC3からの制御信号に基づいて、フィルタ64、65およびその他のフィルタのいずれかとマルチプレクサ61との接続を切り換える。スイッチ63は、RFIC3からの制御信号に基づいて、フィルタ64、65およびその他のフィルタのいずれかと電力増幅器12との接続を切り換える。
【0057】
上記構成において、高周波回路1Aは、電力増幅器11で増幅された4G−LTEに属する第1送信信号の出力端子110からの送信状態と、電力増幅器12で増幅された5G−NRに属する第2送信信号の出力端子120からの送信状態とを、同時に実現することが可能である。
【0058】
本実施例に係る高周波回路1Aのように、4Gから5Gへの移行段階において、4Gと5Gとを併存させるシステムが提案されている。この場合、例えば、4G−LTEの通信バンドの高周波信号と、5G−NRの通信バンドの高周波信号とを同時送信させる必要がある(EN−DC:LTE−NR Dual Connectivity)。このシステムにおいて、4Gに対応した第1送信信号と5Gに対応した第2送信信号とで発生する相互変調歪が基準値を超えると、3GPP(Third Generation Partnership Project)における4Gサービスおよび5Gサービスの共存(Coexistence)規格を満足できなくなる。また、上記相互変調歪の周波数が、第1送信増幅回路または第2送信増幅回路の通過帯域と重なると、3GPPにおける自バンド不要輻射(Inband Spurious Emission)の規格を満足できなくなる。
【0059】
図3は、4G−LTEの高周波信号、5G−NRの高周波信号、および相互変調歪の周波数関係の第1例を表す概略図である。同図には、実施例に係る高周波回路1Aにおいて、第1送信増幅回路が4G−LTEのBand41の高周波信号を伝送し、かつ、第2送信増幅回路が5G−NRのn41の高周波信号を伝送した場合(EN−DC)の、3次相互変調歪の発生状況が示されている。
【0060】
なお、この場合、第1送信増幅回路を伝送する第1送信信号は、4G−LTEのBand41(第1通信バンド)の所定のチャンネル(以下、第1チャンネルと記す)の信号であり、第2送信増幅回路を伝送する第2送信信号は、5G−NRのn41(第2通信バンド)の所定のチャンネル(以下、第2チャンネルと記す)の信号である。4G−LTEのBand41の第1チャンネルと5G−NRのn41の第2チャンネルとは中心周波数が異なる。つまり、第1送信信号は、4Gにて規定された第1通信バンドにおける第1チャンネルの送信信号であり、第2送信信号は、5Gにて規定された第2通信バンドにおける第2チャンネルの送信信号である。ここで、第1通信バンドと第2通信バンドとは、同じ周波数範囲を有している。
【0061】
電力増幅器11から出力される4Gの第1送信信号の強度が27dBmであり、フィルタ回路13Aでの伝搬損失が4dBであるとすると、アンテナ素子21から放射される第1送信信号の強度は23dBmとなる。同様にして、電力増幅器12から出力される5Gの第2送信信号の強度が27dBmであり、フィルタ回路14Aでの伝搬損失が4dBであるとすると、アンテナ素子22から放射される第2送信信号の強度は23dBmとなる。ここで、アンテナ素子21および22間のアイソレーションが10dBであるとすると、アンテナ素子21に回り込んでくる5Gの高周波信号の強度は、13dBm(=23dBm−10dB)である。出力端子110において、4Gの第1送信信号(強度23dBm)と、回り込んできた5Gの高周波信号(強度13dBm)とにより、相互変調歪が発生する。
【0062】
ここで、例えば、4G−LTEのBand41の第1チャンネル(第1周波数f1)がBand41の低周波側のチャンネルであり、かつ、5G−NRのn41の第2チャンネル(第2周波数f2)がn41の高周波側のチャンネルである場合、3次相互変調歪IMD3L(周波数:2f1−f2)およびIMD3H(周波数:2f2−f1)が発生する。このうち、3次相互変調歪IMD3Lは、4G−LTEのBand30または40の帯域と重なる。このとき、第1送信増幅回路が有するフィルタ55が4G−LTEのBand30またはBnad40の高周波信号を送信または受信する回路である場合、あるいは、高周波回路1Aの近傍に上記のような回路が配置されている場合、上記3次相互変調歪IMD3Lが3GPPにおける基準値を超えると、4Gサービスおよび5Gサービスの共存規格を満足できなくなり、上記回路における信号品質が劣化してしまう。なお、上記のような3次相互変調歪により信号品質の劣化が発生する回路は、第1送信増幅回路以外の、マルチプレクサ51に接続された回路であってもよく、また、第2送信増幅回路が有する回路であってもよい。また、4Gの高周波送信信号と、回り込んできた5Gの高周波送信信号とで発生する相互変調歪は3次相互変調歪に限られない。
【0063】
これに対して、本実施例に係る高周波回路1Aでは、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている期間において、第1送信信号に重畳される3次相互変調歪の電力成分が閾値以下となるように、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させる。これにより、4Gに対応した第1送信信号と5Gに対応した第2送信信号とで発生する相互変調歪を抑制できる。よって、3GPPにおける4Gサービスおよび5Gサービスの共存規格を満足することが可能となる。
【0064】
表1に、4G−LTEの第1送信信号、5G−NRの第2送信信号、および3次相互変調歪IMD3Lの電力強度の関係の一例を示す。第1送信信号は、4G−LTEのBand41の第1チャンネル(ch1)の信号であり、第2送信信号は、5G−NRのn41の第2チャンネル(ch2)の信号である。表1には、左から順に、出力端子110における第1送信信号の電力、出力端子120における第2送信信号の電力、および出力端子110における3次相互変調歪IMD3Lの電力成分が示されている。
【0065】
【表1】
【0066】
まず、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている初期段階において、例えば、基地局からの要求などにより、高周波回路1Aは、第1送信増幅回路からBand41(例えばch3)の第1送信信号を23dBmで出力し、第2送信増幅回路からn41(例えばch4)の第2送信信号を13dBmで出力しているとする。なお、このとき、電力増幅器11からは27dBmの第1送信信号を出力し、電力増幅器12からは17dBmの第2送信信号を出力することとなる。
【0067】
次に、基地局からの要求などにより、高周波回路1Aは、第1送信増幅回路からBand41(ch1)の第1送信信号を23dBmで出力し、第2送信増幅回路からn41(ch2)の第2送信信号を13dBmで出力する予定(表1の出力ケース2)であるとする。この場合、表1に示すように、3次相互変調歪IMD3Lは、−26dBm/MHzとなる。ここで、4G−LTEのBand30または40の帯域における3次相互変調歪IMD3Lの基準値(閾値)が−40dBm/MHzであるとする。このとき、表1を参照すれば、3次相互変調歪IMD3Lが基準値(閾値)(−40dBm/MHz)を満たすのは、第1送信増幅回路からのBand41(ch1)の第1送信信号を23dBmで出力し、第2送信増幅回路からのn41(ch2)の第2送信信号を3dBmで出力する場合(表1の出力ケース3)である。なお、電力増幅器11からは27dBmの第1送信信号を出力し、電力増幅器12からは7dBmの第2送信信号を出力することとなる。
【0068】
そこで、高周波回路1Aは、第2送信増幅回路からの第2送信信号を、13dBmから3dBmへと低減させる。これにより、3次相互変調歪IMD3Lは、−40dBm/MHzへと抑制される。つまり、4Gに対応した第1送信信号と5Gに対応した第2送信信号とで発生する相互変調歪を抑制できる。よって、3GPPにおける4Gサービスおよび5Gサービスの共存規格を満足することが可能となる。
【0069】
なお、表1で示された上記の電力制御例に限らず、3次相互変調歪IMD3Lの基準値(閾値)を満たすために、第2送信電力の送信電力を維持して第1送信信号の送信電力を低減させてもよく、あるいは、第1送信電力および第2送信電力の双方の送信電力を低減させてもよい。
【0070】
高周波回路1Aの制御部は、例えば、表1のような第1送信信号、第2送信信号、および相互変調歪の関係を示すデータテーブル、または、第1送信信号、第2送信信号、および相互変調歪の関係を示す関数を、予め有している。
【0071】
上記制御部は、例えば、電力増幅器11の出力端子110からアンテナ素子21までの経路に配置されたカプラによる電力測定により、電力増幅器11の出力電力に対応した電力値を取得する。また、上記制御部は、例えば、電力増幅器12の出力端子120からアンテナ素子22までの経路に配置されたカプラによる電力測定により、電力増幅器12の出力電力値を取得する。このように、電力増幅器11および12の出力電力の測定結果を取得する場合には、上記制御部は、電力増幅器11および12の電力測定値と、予め保有しているデータテーブルとを比較参照して、第1送信信号に重畳される3次相互変調歪の電力成分が基準値(閾値)を超えているか否かを判断する。その結果、上記制御部は、3次相互変調歪の電力成分が基準値(閾値)を超えると判定した場合には、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させる。
【0072】
なお、上記制御部が、電力増幅器の出力電力に対応した電力値を取得する方法としては、カプラ以外の電力測定デバイスによる測定であってもよい。また、上記制御部は、通信装置6Aから送信される送信信号に必要とされる出力電力であって、基地局から発信された要求電力値を、電力増幅器の出力電力を示す値として取得してもよい。これによれば、基地局から発信された要求電力値に基づいて、電力増幅器11および12の出力電力を予測し、当該予測値と上記データテーブルとを比較参照して、第1送信信号に重畳される3次相互変調歪の電力成分が基準値(閾値)を超えるか否かを判断してもよい。その結果、上記制御部は、3次相互変調歪の電力成分が基準値(閾値)を超えると予測した場合には、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させてもよい。
【0073】
図4は、4G−LTEの高周波信号、5G−NRの高周波信号、および相互変調歪の周波数関係の第2例を表す概略図である。同図には、実施例に係る高周波回路1Aにおいて、第1送信増幅回路が4G−LTEのBand41の高周波信号を伝送し、かつ、第2送信増幅回路が5G−NRのn41の高周波信号を伝送した場合(EN−DC)の、3次相互変調歪の発生状況が示されている。
【0074】
なお、この場合、第1送信増幅回路を伝送する高周波信号は、4G−LTEのBand41の所定のチャンネル(以下、第1チャンネルと記す)の信号であり、第2送信増幅回路を伝送する高周波信号は、5G−NRのn41の所定のチャンネル(以下、第2チャンネルと記す)の信号である。4G−LTEのBand41の第1チャンネルと5G−NRのn41の第2チャンネルとは中心周波数が異なる。
【0075】
なお、電力増幅器11から出力される4Gに対応した第1送信信号および電力増幅器12から出力される5Gに対応した第2送信信号の強度は、図3に示された第1の周波数関係と同様である。
【0076】
ここで、例えば、4G−LTEのBand41の第1チャンネル(第1周波数f1)がBand41の高周波側のチャンネルであり、かつ、5G−NRのn41の第2チャンネル(第2周波数f2)がn41の高周波側のチャンネルである場合、3次相互変調歪IMD3L(周波数:2f1−f2)およびIMD3H(周波数:2f2−f1)が発生する。このうち、3次相互変調歪IMD3Lは、4G−LTEのBand41および5G−NRのn41の自帯域と重なる。このとき、上記3次相互変調歪IMD3Lが3GPPにおける基準値を超えると、3GPPにおける自バンド不要輻射の規格を満足できなくなり、第1送信増幅回路または第2送信増幅回路における信号品質が劣化してしまう。
【0077】
これに対して、本実施例に係る高周波回路1Aでは、第1送信信号と第2送信信号とが同時に出力されている期間において、第1送信信号に重畳される3次相互変調歪または第2送信信号に重畳される3次相互変調歪の電力成分が基準値(閾値)以下となるように、電力増幅器11および12の少なくとも一方の送信電力を低減させる。これにより、4Gに対応した第1送信信号と5Gに対応した第2送信信号とで発生する相互変調歪を抑制できる。よって、3GPPにおける自バンド不要輻射の規格を満足することが可能となる。
【0078】
なお、本実施例に係る高周波回路1Aでは、4G対応の第1送信信号と5G対応の第2送信信号とを同時に送信する場合を例示したが、本実施の形態に係る高周波回路1は、同一世代の通信システムに対応した、異なる2つの通信バンドの高周波信号を同時に送信する場合(いわゆる、キャリアアグリゲーション)にも適用できる。
【0079】
また、高周波回路1Aでは、電力増幅器11および12、ならびに、フィルタ回路13Aおよび14Aが1つの実装基板に実装されている構成としたが、本発明に係る高周波回路では、電力増幅器11および12、ならびに、フィルタ回路13Aおよび14Aは、異なる実装基板に実装されていてもよい。
【0080】
次に、通信装置6Aによる高周波回路1Aの電力制御について説明する。
【0081】
図5Aは、実施の形態に係る電力増幅器11および12の出力電力を制御するフローチャートの第1例である。
【0082】
まず、電力増幅器11からの第1送信信号(例えば4G−LTEのBand41)と、電力増幅器12からの第2送信信号(例えば5G−NRのn41)との同時送信(例えばEN−DC)を開始する(S10)。
【0083】
次に、通信装置6Aの制御部は、電力増幅器11の第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が、閾値(基準値)αより大きいかを判定する(S20)。ステップS20において、上記制御部は、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)αより大きいと判定した場合(ステップS20でYes)、電力増幅器11の第1送信信号の電力を低減させる(S30a)。一方、ステップS20において、上記制御部は、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)α以下であると判定した場合(ステップS20でNo)、電力増幅器11の第1送信信号の電力および電力増幅器12の第2送信信号の電力を低減させずに、第1送信信号と第2送信信号との同時送信を継続する(S40)。
【0084】
上記制御部は、第1送信信号と第2送信信号とが同時送信されている期間、上記相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)αより大きいかを継続して判定する(ステップS40からステップS10に戻る)。
【0085】
これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時送信されている期間において、相互変調歪を低減させる対象である電力増幅器11自身の送信電力を下げることにより、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力レベルを閾値(基準値)α以下に抑えることが可能となる。
【0086】
なお、閾値(基準値)αは、例えば、表1に示すようなデータテーブルとして予め取得されて通信装置6A内のメモリに記憶されている。また、閾値(基準値)αは、固定値に限らず、基地局から都度指定される値であってもよい。
【0087】
図5Bは、実施の形態に係る電力増幅器11および12の出力電力を制御するフローチャートの第2例である。
【0088】
まず、電力増幅器11からの第1送信信号(例えば4G−LTEのBand41)と、電力増幅器12からの第2送信信号(例えば5G−NRのn41)との同時送信(例えばEN−DC)を開始する(S10)。
【0089】
次に、通信装置6Aの制御部は、電力増幅器11の第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が、閾値(基準値)αより大きいかを判定する(S20)。ステップS20において、上記制御部は、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)αより大きいと判定した場合(ステップS20でYes)、電力増幅器12の第2送信信号の電力を低減させる(S30b)。一方、ステップS20において、上記制御部は、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)α以下であると判定した場合(ステップS20でNo)、電力増幅器11の第1送信信号の電力および電力増幅器12の第2送信信号の電力を低減させずに、第1送信信号と第2送信信号との同時送信を継続する(S40)。
【0090】
上記制御部は、第1送信信号と第2送信信号とが同時送信されている期間、上記相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)αより大きいかを継続して判定する(ステップs40からステップs10に戻る)。
【0091】
これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時送信されている期間において、相互変調歪を低減させる対象でない電力増幅器12の送信電力を下げることにより、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力レベルを閾値(基準値)α以下に抑えることが可能となる。
【0092】
なお、閾値(基準値)αは、例えば、表1に示すようなデータテーブルとして予め取得されて通信装置6A内のメモリに記憶されている。また、閾値(基準値)αは、固定値に限らず、基地局から都度指定される値であってもよい。
【0093】
図5Cは、実施の形態に係る電力増幅器11および12の出力電力を制御するフローチャートの第3例である。
【0094】
まず、電力増幅器11からの第1送信信号(例えば4G−LTEのBand41)と、電力増幅器12からの第2送信信号(例えば5G−NRのn41)との同時送信(例えばEN−DC)を開始する(S10)。
【0095】
次に、通信装置6Aの制御部は、電力増幅器11の第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が、閾値(基準値)αより大きいかを判定する(S20)。ステップS20において、上記制御部は、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)αより大きいと判定した場合(ステップS20でYes)、電力増幅器11の第1送信信号の電力および電力増幅器12の第2送信信号の電力の双方を低減させる(S30c)。一方、ステップS20において、上記制御部は、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)α以下であると判定した場合(ステップS20でNo)、電力増幅器11の第1送信信号の電力および電力増幅器12の第2送信信号の電力を低減させずに、第1送信信号と第2送信信号との同時送信を継続する(S40)。
【0096】
上記制御部は、第1送信信号と第2送信信号とが同時送信されている期間、上記相互変調歪の電力成分が閾値(基準値)αより大きいかを継続して判定する(ステップS40からステップS10に戻る)。
【0097】
これにより、第1送信信号および第2送信信号が同時送信されている期間において、電力増幅器11および12の双方の送信電力を下げることにより、第1送信信号に重畳される相互変調歪の電力レベルを閾値以下に抑えることが可能となる。また、この場合には、電力増幅器11または12のみの送信電力を著しく低減させることなく、電力増幅器11の送信電力と電力増幅器12の送信電力との差を小さくできる。よって、第1送信信号および第2送信信号のいずれかが通信不能となってしまうリスクを低減できる。
【0098】
なお、閾値(基準値)αは、例えば、表1に示すようなデータテーブルとして予め取得されて通信装置6A内のメモリに記憶されている。また、閾値(基準値)αは、固定値に限らず、基地局から都度指定される値であってもよい。
【0099】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る高周波回路および通信装置について、実施の形態およびその実施例を挙げて説明したが、本発明の高周波回路および通信装置は、上記実施の形態およびその実施例に限定されるものではない。上記実施の形態およびその実施例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態およびその実施例に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本開示の高周波回路および通信装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0100】
なお、上記実施の形態に係る高周波回路および通信装置は、上述したように、3GPPなどの通信システムに適用され、典型的には、実施例にて示した4G−LTEの高周波信号と5G−NRの高周波信号とを同時送信するシステムに適用される。例えば、第1通信バンド/第2通信バンドの組み合わせとして、(1)実施例で挙げた4G−LTRのBand41/5G−NRのn41、(2)4G−LTRのBand71/5G−NRのn71、(3)4G−LTRのBand3/5G−NRのn3、などが挙げられる。
【0101】
また、上記実施の形態に係る高周波回路および通信装置は、異なる周波数帯域を有する4G−LTEの第1通信バンド/5G−NRの第2通信バンドを同時送信するシステム、または、異なる周波数帯域を有する4G−LTEの第1通信バンド/4G−LTEの第2通信バンドを同時送信するシステムにも適用できる。
【0102】
表2に、上記実施の形態で示した第1送信増幅回路を伝送させる第1通信バンドおよび第2送信増幅回路を伝送させる第2通信バンドとして適用可能な4G−LTEおよび5G−NRの通信バンドの対応例、ならびに、その相互変調歪の具体例を示す。
【0103】
【表2】
【0104】
また、2つの送信信号(Tx1およびTx2)による相互変調歪の周波数としては、表2に示すように、典型的には、2fTx1−fTx2、2fTx2−fTx1、fTx1−fTx2、およびfTx2−fTx1が挙げられるが、これに限られず、mfTx1±nfTx2、および、mfTx2±nfTx1(m、nは自然数)で規定されるものが含まれる。
【0105】
また、実施例に係る高周波回路1Aにおいて、電力増幅器11および12は、1つの実装基板に実装されているとしたが、本発明に係る高周波回路では、電力増幅器11および12は、互いに異なる実装基板に実装されていてもよい。また、本発明に係る高周波回路では、電力増幅器11および12は、互いに異なるモジュールに含まれていてもよい。さらには、本発明に係る高周波回路では、電力増幅器11および12は、互いに異なる移動体端末に含まれていてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態およびその実施例では、2つの異なる通信バンドを同時使用する場合の構成を例示したが、本発明に係る高周波回路および通信装置の構成は、3つ以上の異なる通信バンドを同時使用する場合の構成にも適用できる。つまり、3つ以上の異なる通信バンドを同時使用する構成であって、上記実施の形態およびその実施例に係る高周波回路または通信装置の構成を含む高周波回路または通信装置も、本発明に含まれる。
【0107】
また、例えば、上記実施の形態およびその実施例に係る高周波回路および通信装置において、図面に開示された各回路素子および信号経路を接続する経路の間に別の高周波回路素子および配線などが挿入されていてもよい。
【0108】
また、本発明に係る制御部は、集積回路であるIC、LSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。また、集積回路化の手法は、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、キャリアアグリゲーションまたはEN−DCを採用するマルチバンド/マルチモード対応のフロントエンドモジュールとして、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0110】
1、1A 高周波回路
2 アンテナ回路
3 RF信号処理回路(RFIC)
4 ベースバンド信号処理回路(BBIC)
6、6A 通信装置
10A、10B 送信増幅回路
11、12 電力増幅器
13、13A、14、14A フィルタ回路
21、22 アンテナ素子
52、53、62、63 スイッチ
51、61 マルチプレクサ
54、55、64、65 フィルタ
130、140 入力端子
110、120 出力端子
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C