特開2020-205537(P2020-205537A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000003
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000004
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000005
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000006
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000007
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000008
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000009
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000010
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000011
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000012
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000013
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000014
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000015
  • 特開2020205537-排他的論理和回路 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-205537(P2020-205537A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】排他的論理和回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/21 20060101AFI20201127BHJP
【FI】
   H03K19/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-112270(P2019-112270)
(22)【出願日】2019年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】荒屋敷 豊
【テーマコード(参考)】
5J042
【Fターム(参考)】
5J042BA14
5J042CA05
5J042CA06
5J042CA11
5J042CA12
5J042CA26
5J042CA27
5J042DA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】出力信号の品質を向上することができる排他的論理和回路を提供する。
【解決手段】排他的論理和回路1において、2組の差動対Q1及びQ2並びにQ3及びQ4を含む上段差動部31と、1組の差動対XT3及びXT4を含む下段差動部32とが、第1の電源電圧VCCと第2の電源電圧VEEとの間に縦積みに接続されたギルバートセル30と、ギルバートセル30の上段差動部31の前段に設けられ、上段差動部31への入力信号の論理ハイレベル電圧を制限するリミッタとしての差動アンプ11と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2組の差動対(Q1,Q2;Q3,Q4)を含む上段差動部(31)と、1組の差動対(XT3,XT4)を含む下段差動部(32)とが、第1の電源電圧と第2の電源電圧との間に縦積みに接続されたギルバートセル(30)と、
前記ギルバートセルの前記上段差動部の前段に設けられ、前記上段差動部への入力信号の論理レベル電圧を制限する論理レベル電圧制限手段(10)と、
を備えたことを特徴とする排他的論理和回路。
【請求項2】
前記論理レベル電圧制限手段は、前記上段差動部への入力信号の論理ハイレベル電圧を制限することを特徴とする請求項1に記載の排他的論理和回路。
【請求項3】
前記論理レベル電圧制限手段が差動アンプ(11)であり、前記差動アンプは、前記差動アンプの出力信号において前記差動アンプへの入力信号と同程度の振幅およびオフセット電圧が得られ且つ論理ハイレベル電圧を制限することを特徴とする請求項2に記載の排他的論理和回路。
【請求項4】
前記差動アンプは、前記差動アンプの出力信号において前記差動アンプへの入力信号と同程度の立ち上り時間および立ち下り時間が得られる帯域を有することを特徴とする請求項3に記載の排他的論理和回路。
【請求項5】
前記差動アンプは、1組の差動対(Q10,Q11)と出力バッファ(13)とを備え、前記ギルバートセルの前記下段差動部の前段に、入力バッファ(20)が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の排他的論理和回路。
【請求項6】
前記差動アンプは、入力信号が前記差動アンプを通って前記上段差動部から出力するまでの遅延時間と、前記下段差動部への入力信号が前記上段差動部から出力されるまでの遅延時間とが同程度になるような遅延時間を有することを特徴とする請求項5に記載の排他的論理和回路。
【請求項7】
2組の差動対(Q1,Q2;Q3,Q4)を含む上段差動部(31)と、1組の差動対(XT3,XT4)を含む下段差動部(32)とが、第1の電源電圧と第2の電源電圧との間に縦積みに接続されたギルバートセル(30)と、
前記ギルバートセルの前記上段差動部の前段に設けられ、前記下段差動部への入力信号が前記上段差動部から出力されるまでの遅延時間と、入力信号が前記上段差動部側の経路を通って前記上段差動部から出力されるまでの遅延時間とが同程度になるような遅延時間を有する遅延回路(50)と、
を備えたことを特徴とする排他的論理和回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排他的論理和回路に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の高速化に伴い、高速動作する同期式デジタル回路においても正常に動作する排他的論理和(XOR)回路が必要とされている。
【0003】
図1は、ラッチ回路101〜105と従来のXOR回路100とを組み合わせて同期式デジタル回路を構成した例を示す。図1に示すように、高速動作する同期式デジタル回路において、クロック信号CKのリークにより、XOR回路100への入力信号Din1,Din2や、XOR回路100からの出力信号Doutに波形の歪みが生じる問題があった。また、高速動作する同期式デジタル回路では、XOR回路100内部でのデータスキューが大きくなることにより、出力信号Doutにおけるタイミングジッタが増大する問題があった。
【0004】
図2は、図1の従来のXOR回路100への入力信号Din1,Din2(ラッチ回路103,105の出力信号)およびXOR回路100からの出力信号Doutのアイパターンのシミュレーション結果を示す。まず、図2の(b)、(c)に示すように、XOR回路100に入力される50Gbit/sの入力信号Din1,Din2は、XOR回路100の前段のラッチ回路へのクロック入力がその出力にリークする現象により、入力信号Din1,Din2のベースラインである論理ハイレベル電圧および論理ローレベル電圧の波形が歪んでいる(同図中の破線部参照)。
【0005】
入力信号Din1と入力信号Din2は、互いに半ビットずらしてXOR回路100に入力されている。このとき、図2の(a)に示すように、XOR回路100から出力される100Gbit/sの出力信号Doutには、クロックリークにより、ベースラインである論理ハイレベル電圧および論理ローレベル電圧に波形の歪みが現れている(同図中の破線部参照)。
【0006】
また、図2の(a)に示すように、100Gbit/sで高速動作するXOR回路100では、XOR回路100内部でのデータスキューの増大により、出力信号Doutにタイミングジッタも生じている。
【0007】
このような問題を解決するため、高速動作するデジタル回路の信号品質を向上させるための試みが報告されている(例えば、非特許文献1等参照)。非特許文献1には、XOR回路の出力信号のタイミングジッタを抑制するため、一般的なXOR回路を並列に並べて結合した対称型XOR回路が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Koichi Murata, Taiichi Otsuji, Takatomo Enoki, Yohtaro Umeda, Mikio Yoneyama, "Exclusive OR/NOR IC for 40-Gbit/s Clock Recovery Circuit," 1999, IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載の対称型XOR回路は、高速動作時の出力信号のタイミングジッタを抑制するものではあるが、XOR回路の出力信号の波形が歪むことを抑制するものではなかった。また、非特許文献1に記載の対称型XOR回路は、並列に接続された2つのギルバートセルが用いられており、複雑でサイズの大きいものとなっていた。
【0010】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、出力信号の品質を向上することができる排他的論理和回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る排他的論理和回路は、上記目的達成のため、2組の差動対(Q1,Q2;Q3,Q4)を含む上段差動部(31)と、1組の差動対(XT3,XT4)を含む下段差動部(32)とが、第1の電源電圧と第2の電源電圧との間に縦積みに接続されたギルバートセル(30)と、前記ギルバートセルの前記上段差動部の前段に設けられ、前記上段差動部への入力信号の論理レベル電圧を制限する論理レベル電圧制限手段(10)と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成により、本発明の請求項1に係る排他的論理和回路は、ギルバートセルの上段差動部の前段に、上段差動部への入力信号の論理レベル電圧を制限する論理レベル電圧制限手段が設けられているので、排他的論理和回路への入力信号の波形の歪みが排他的論理和回路を伝搬することによって発生する排他的論理和回路からの出力信号の波形の歪みを効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る排他的論理和回路では、前記論理レベル電圧制限手段は、前記上段差動部への入力信号の論理ハイレベル電圧を制限することを特徴とする。
【0014】
この構成により、排他的論理和回路のギルバートセル内の上段差動部への入力信号の論理レベル電圧のうち、排他的論理和回路からの出力信号の変動に与える影響がより大きい論理ハイレベル電圧の変動が抑制されるので、排他的論理和回路からの出力信号の波形の歪みをさらに効果的に低減することができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る排他的論理和回路では、前記論理レベル電圧制限手段が差動アンプ(11)であり、前記差動アンプは、前記差動アンプの出力信号において前記差動アンプへの入力信号と同程度の振幅およびオフセット電圧が得られ且つ論理ハイレベル電圧を制限することを特徴とする。
【0016】
この構成により、差動アンプにより、排他的論理和回路のギルバートセル内の上段差動部への入力信号の論理ハイレベル電圧の変動が抑制されるので、排他的論理和回路からの出力信号の波形の歪みを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る排他的論理和回路では、前記差動アンプは、前記差動アンプの出力信号において前記差動アンプへの入力信号と同程度の立ち上り時間および立ち下り時間が得られる帯域を有することを特徴とする。
【0018】
この構成により、排他的論理和回路への入力信号の波形が十分な帯域を有しない差動アンプによって歪むことを抑制することができる。これにより、排他的論理和回路からの出力信号の波形の歪みを抑制することができる。
【0019】
また、本発明の請求項5に係る排他的論理和回路では、前記差動アンプは、1組の差動対(Q10,Q11)と出力バッファ(13)とを備え、前記ギルバートセルの前記下段差動部の前段に、入力バッファ(20)が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成により、排他的論理和回路への入力信号を適切な電圧レベルに調整するのが容易になる。また、入力信号が差動アンプを通ってギルバートセルの上段差動部から出力するまでの経路と、入力信号が入力バッファとギルバートセルの下段差動部を通って上段差動部から出力するまでの経路とで、トランジスタの個数をほぼ同数とすることができる。これにより、両経路を通る入力信号の遅延時間を調整するのが容易になる。
【0021】
また、本発明の請求項6に係る排他的論理和回路では、前記差動アンプは、入力信号が前記差動アンプを通って前記上段差動部から出力するまでの遅延時間と、前記下段差動部への入力信号が前記上段差動部から出力されるまでの遅延時間とが同程度になるような遅延時間を有することを特徴とする。
【0022】
この構成により、排他的論理和回路に入力される2つの入力信号が異なる経路を通過することによって生じるデータスキューを、差動アンプの遅延時間によって補正することができる。これにより、高速動作時に増大する排他的論理和回路からの出力信号のタイミングジッタを低減することができる。
【0023】
また、本発明の請求項7に係る排他的論理和回路は、2組の差動対(Q1,Q2;Q3,Q4)を含む上段差動部(31)と、1組の差動対(XT3,XT4)を含む下段差動部(32)とが、第1の電源電圧と第2の電源電圧との間に縦積みに接続されたギルバートセル(30)と、前記ギルバートセルの前記上段差動部の前段に設けられ、前記下段差動部への入力信号が前記上段差動部から出力されるまでの遅延時間と、入力信号が前記上段差動部側の経路を通って前記上段差動部から出力されるまでの遅延時間とが同程度になるような遅延時間を有する遅延回路(50)と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
この構成により、排他的論理和回路に入力される2つの入力信号が排他的論理和回路内で異なる経路を通過することによって生じるデータスキューを、遅延回路の遅延時間によって補正することができる。これにより、高速動作時に増大する排他的論理和回路からの出力信号のタイミングジッタを低減することができる。その結果として、排他的論理和回路を使用した、高速動作する同期式デジタル回路におけるビットエラーを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、出力信号の品質を向上することができる排他的論理和回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ラッチ回路と従来の排他的論理和回路が組み合わされた同期式デジタル回路の一例を示す構成図である。
図2】従来の排他的論理和回路における入出力信号のアイパターンを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る排他的論理和回路の構成図である。
図4】論理レベル電圧制限手段として差動アンプが用いられた場合の排他的論理和回路の構成図である。
図5図4の排他的論理和回路への入力信号Din1と差動アンプからの出力信号Din1'の信号波形を示す説明図である。
図6】従来の排他的論理和回路の構成図である。
図7】従来の排他的論理和回路への入力信号の変動が出力信号に与える影響を調べた結果を示す、入出力信号のアイパターンである。
図8図4の排他的論理和回路における入出力信号のアイパターンを示す図である。
図9】カスコードベース接地回路の構成図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る排他的論理和回路の構成図である。
図11】排他的論理和回路における信号経路の違いによる遅延時間差を説明する図である。
図12】排他的論理和回路への入力信号の変化に対する出力信号の変化を示す説明図である。
図13図10の排他的論理和回路が100Gbit/sで動作する場合における入出力信号のアイパターンを示す図である。
図14図10の排他的論理和回路が200Gbit/sで動作する場合における入出力信号のアイパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る排他的論理和(XOR)回路1は、限定するものではないが、例えば、50Gbit/sを超えるビットレートで動作するヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)などのバイポーラトランジスタで構成された同期式デジタル回路に用いられるものである。
【0029】
図3に示すように、本実施形態に係るXOR回路1は、一対の第1入力端子D1T,D1Cと、一対の第2入力端子D2T,D2Cと、一対の出力端子QT,QCと、を有し、排他的論理和のデジタル論理演算を行う回路である。このXOR回路1は、入力バッファ20と、ギルバートセル30と、出力バッファ40と、リミッタ10と、を備えている。なお、本実施形態のリミッタ10は、本発明の論理レベル電圧制限手段に対応する。
【0030】
第1入力端子D1Tに入力される第1正相入力信号Din1(+)と、第1入力端子D1Cに入力される第1逆相入力信号Din1(−)とは、互いに逆相の関係、すなわち論理値が相補的な関係にある。同様に、第2入力端子D2Tに入力される第2正相入力信号Din2(+)と、第2入力端子D1Cに入力される第2逆相入力信号Din2(−)とは、互いに逆相の関係にある。同様に、出力端子QTに出力される正相出力信号Dout(+)と、出力端子QCに出力される逆相出力信号Dout(−)とは、互いに逆相の関係にある。
【0031】
以下の説明では、第1正相入力信号Din1(+)と第1逆相入力信号Din1(−)とを第1入力信号Din1と総称し、第2正相入力信号Din2(+)と第2逆相入力信号Din2(−)とを第2入力信号Din2と総称し、正相出力信号Dout(+)と逆相出力信号Dout(−)とを出力信号Doutと総称する。
【0032】
入力バッファ20は、第2入力信号Din2の論理値をそのまま維持して適切な電圧レベルで出力するエミッタフォロワ回路対であり、入力バッファ20の入力側が第2入力端子D2T、D2Cに接続され、出力側がギルバートセル30に接続されている。
【0033】
具体的には、入力バッファ20は、トランジスタXT1,XT2と、抵抗器R4,R5と、ダイオードD1,D2と、を備えている。トランジスタXT1,XT2のベースは、それぞれ第2入力端子D2T、D2Cに接続されている。トランジスタXT1,XT2のコレクタは、それぞれダイオードD1,D2のカソードに接続されている。このダイオードD1,D2により、トランジスタXT1,XT2のコレクタにかかる電圧を所要レベルに落としている。トランジスタXT1,XT2のエミッタは、それぞれ抵抗器R4,R5の一端に接続されている。ダイオードD1,D2のアノードは、ともに第1の電源電圧VCCに接続され、抵抗器R4,R5の他端は、ともに第2の電源電圧VEEに接続されている。
【0034】
ギルバートセル30は、2組の差動対Q1,Q2;Q3,Q4を含む上段差動部31と、1組の差動対XT3,XT4を含む下段差動部32とが、第1の電源電圧VCCと第2の電源電圧VEEとの間に縦積みに接続された2段構成のデジタル論理回路である。ギルバートセル30は、2入力に対して排他的論理和の論理演算を行うようになっている。ギルバートセル30の入力側は、リミッタ10および入力バッファ20の出力側に接続され、ギルバートセル30の出力側は、出力バッファ40の入力側に接続されている。
【0035】
具体的には、ギルバートセル30の上段差動部31は、トランジスタQ1〜Q4と、抵抗器R1,R2とを備え、下段差動部32は、差動対を構成するトランジスタXT3,XT4と、抵抗器R3と、を備えている。上段差動部31の一方の差動対は、トランジスタQ1,Q2により構成され、他方の差動対は、トランジスタQ3,Q4により構成されている。
【0036】
より具体的には、下段の差動対を構成するトランジスタXT3,XT4のベースは、それぞれ入力バッファ20のトランジスタXT1,XT2のエミッタ側に接続されている。トランジスタXT3,XT4のエミッタは、ともに抵抗器R3を介して第2の電源電圧VEEに接続されている。トランジスタXT3のコレクタは、上段の差動対Q1,Q2のエミッタ側に、トランジスタXT4のコレクタは、上段の差動対Q3,Q4のエミッタ側に接続されている。
【0037】
また、上段の一方の差動対を構成するトランジスタQ1,Q2のベースは、それぞれリミッタ10を介して第1入力端子D1T,D1Cに接続され、トランジスタQ1,Q2のエミッタは、ともに下段の差動対のトランジスタXT3のコレクタに接続され、トランジスタQ1,Q2のコレクタは、それぞれ負荷抵抗器R1,R2を介して第1の電源電圧VCCに接続されている。
【0038】
また、上段の他方の差動対を構成するトランジスタQ3,Q4のベースは、それぞれリミッタ10を介して第1入力端子D1C,D1Tに接続され、トランジスタQ3,Q4のエミッタは、ともに下段の差動対のトランジスタXT4のコレクタに接続され、トランジスタQ3,Q4のコレクタは、それぞれ負荷抵抗器R1,R2を介して第1の電源電圧VCCに接続されている。
【0039】
出力バッファ40は、ギルバートセル30からの出力信号の論理値をそのまま維持して適切な電圧レベルで出力するエミッタフォロワ回路対であり、出力バッファ40の入力側が、ギルバートセル30の出力側に接続され、出力側が出力端子QT,QCに接続されている。
【0040】
具体的には、出力バッファ40は、トランジスタQ5,Q6と、抵抗器R6,R7と、を備えている。トランジスタQ5,Q6のベースは、それぞれギルバートセル30の負荷抵抗R1,R2に接続されている。トランジスタQ5,Q6のコレクタは、ともに第1の電源電圧VCCに接続されている。トランジスタQ5,Q6のエミッタは、それぞれ抵抗器R6,R7の一端に接続されるとともに、それぞれ出力端子QC,QTに接続されている。抵抗器R6,R7の他端は第2の電源電圧VEEに接続されている。
【0041】
リミッタ10は、ギルバートセル30の上段差動部31の前段に設けられ、上段差動部31への入力信号の論理レベル電圧を制限する回路である。好ましくは、リミッタ10は、上段差動部31への入力信号の論理ハイレベル電圧を制限するよう構成されている。リミッタ10は、例えば、差動アンプ11により構成してもよい。
【0042】
図4は、図3のリミッタ10として差動アンプ11が用いられた場合の排他的論理和回路1の構成図である。図4に示すように、差動アンプ11は、差動対部12と出力バッファ13とを備えている。
【0043】
差動対部12は、差動対を構成するトランジスタQ10,Q11と、抵抗器R10〜R12と、を備えている。差動対をなすトランジスタQ10,Q11のベースは、それぞれ第1入力端子D1T,D1Cに接続され、トランジスタQ10,Q11のエミッタは、抵抗器12を介して第2の電源電圧VEEに接続され、トランジスタQ10,Q11のコレクタは、それぞれ抵抗器R10,R11を介して第1の電源電圧VCCに接続されている。
【0044】
出力バッファ13は、差動対部12からの出力信号の論理値をそのまま維持して適切な電圧レベルで出力するエミッタフォロワ回路対であり、差動対部12の出力側に接続されている。具体的には、出力バッファ13は、トランジスタQ12,Q13と、抵抗器R13,R14と、を備えている。トランジスタQ12,Q13のベースは、それぞれ差動対部12の負荷抵抗R10,R11に接続されている。トランジスタQ12,Q13のコレクタは、ともに第1の電源電圧VCCに接続されている。トランジスタQ12,Q13のエミッタは、それぞれ抵抗器R13,R14の一端に接続されている。また、トランジスタQ12のエミッタと抵抗器R13の間から、差動アンプ11の出力信号Din1'(−)が、トランジスタQ13のエミッタと抵抗器R14の間から、差動アンプ11の出力信号Din1'(+)が、取り出されるようになっている。差動アンプ11の出力信号Din1'(+),Din1'(−)を出力信号Din1'と総称する。
【0045】
図5は、排他的論理和回路1への入力信号Din1と差動アンプ11からの出力信号Din1'の信号波形を示す説明図である。図5に示すように、差動アンプ11は、差動アンプ11の出力信号Din1'において差動アンプ11への入力信号Din1と同程度の振幅およびオフセット電圧が得られ、且つ出力信号Din1'において論理ハイレベル電圧を制限している。
【0046】
また、差動アンプ11は、差動アンプ11の出力信号Din1'において差動アンプ11への入力信号Din1と同程度の立ち上り時間および立ち下り時間が得られる帯域を有している。
【0047】
また、差動アンプ11は、差動アンプ11への入力信号Din1が上段差動部31を通って上段差動部31から出力されるまでの遅延時間が、入力バッファ20への入力信号Din2が下段差動部32を通って上段差動部31から出力されるまでの遅延時間と同程度になるような遅延時間tdを有している。これにより、図5に示すように、差動アンプ11からの出力信号Din1'は、入力信号Din1から遅延時間tdだけ遅延している。
【0048】
一般に、差動対部12のトランジスタQ10,Q11のコレクタ電流Iとコレクタ・エミッタ間電圧VCEの関係を示す交流特性を表す負荷線と、抵抗器R10,R11,R12の抵抗値から定まる直流特性を表すバイアス点から差動対部12の動作が定まる。差動アンプ11の上記特性は、抵抗器R10,R11,R12の抵抗値を適切に設定することにより得ることができる。例えば、トランジスタに論理ローレベル電圧が入力されトランジスタの状態がオフになるとき、コレクタ電流Iが0となるようにバイアス点、負荷線を設定することで、負荷抵抗にコレクタ電流Iが流れることにより発生する電圧降下が0となり、差動対部12からの出力信号の論理ハイレベル電圧を制限することができる。
【0049】
また、一般に、差動アンプ11の帯域は、トランジスタQ10,Q11の物理的なサイズ、抵抗器R10,R11,R12の抵抗値等に依存して定まる。通常、ゲインを上げれば、立ち上がり時間、立下り時間が長くなり、帯域が狭くなる。トランジスタQ10,Q11の物理的サイズ、抵抗器R10,R11,R12の抵抗値等を適切に設定することにより、差動アンプ11が上記特徴を有する帯域を持つようにすることができる。
【0050】
次に、排他的論理和回路1の動作を説明する。
【0051】
まず、第1入力信号Din1が論理値0に対応する論理ローレベル電圧であり、第2入力信号Din2が論理値0に対応する論理ローレベル電圧である場合を説明する。この場合は、具体的には、第1正相入力信号Din1(+)が論理ローレベルであり、第1逆相入力信号Din1(−)が論理ハイレベルである。また、第2正相入力信号Din2(+)は、論理ローレベルであり、第2逆相入力信号Din2(−)は、論理ハイレベルである。
【0052】
第1入力信号Din1は、差動アンプ11に入力され、論理値を維持したまま差動アンプ11から出力信号Din1'として出力される。すなわち、ギルバートセル30のトランジスタQ1,Q4のベースには、論理値0に対応する論理ローレベルの正相出力信号Din1'(+)が入力され、トランジスタQ1,Q4はともにオフとなる。また、トランジスタQ2,Q3のベースには、論理値1に対応する論理ハイレベルの逆相出力信号Din1'(−)が入力され、トランジスタQ2,Q3はともにオンとなる。
【0053】
第2入力信号Din2は、論理値を維持したまま入力バッファ20を通ってギルバートセル30の下段差動部32に入力される。具体的には、論理ローレベルの第2正相入力信号Din2(+)が、トランジスタXT3のベースに入力され、オフとなる。また、論理ハイレベルの第2逆相入力信号Din2(−)が、トランジスタXT4のベースに入力され、トランジスタXT4はオンとなる。
【0054】
したがって、ギルバートセル30のトランジスタQ3とトランジスタXT4がオンとなることで、出力バッファ40のトランジスタQ5のベースには、論理ローレベルが入力され、トランジスタQ6のベースには論理ハイレベルが入力される。よって、排他的論理和回路1の正相出力信号Dout(+)は、論理ローレベル(論理値0)となり、逆相出力信号Dout(−)は論理ハイレベル(論理値1)となる。
【0055】
以上のことから、正相で考えて、第1入力信号Din1が論理値0、第2入力信号Din2が論理値0のとき、排他的論理和回路1の出力信号Doutは論理値0となる。
【0056】
次に、第1正相入力信号Din1(+)が論理ハイレベル(論理値1)であり、第2正相入力信号Din2(+)が論理ローレベル(論理値0)である場合を説明する。この場合には、ギルバートセル30のトランジスタQ1,Q4がオンになるとともに、トランジスタTX4がオンとなる。よって、正相出力信号Dout(+)は、論理ハイレベル(論理値1)となる。
【0057】
次に、第1正相入力信号Din1(+)が論理ローレベル(論理値0)であり、第2正相入力信号Din2(+)が論理ハイレベル(論理値1)である場合を説明する。この場合には、ギルバートセル30のトランジスタQ2,Q3がオンになるとともに、トランジスタTX3がオンとなる。よって、正相出力信号Dout(+)は、論理ハイレベル(論理値1)となる。
【0058】
次に、第1正相入力信号Din1(+)が論理ハイレベル(論理値1)であり、第2正相入力信号Din2(+)が論理ハイレベル(論理値1)である場合を説明する。この場合には、ギルバートセル30のトランジスタQ1,Q4がオンになるとともに、トランジスタTX3がオンとなる。よって、正相出力信号Dout(+)は、論理ローレベル(論理値0)となる。
【0059】
以上のことから、本実施形態に係る排他的論理和回路1は、第1入力信号Din1と第2入力信号Din2に対して排他的論理和の論理演算処理を行い、その結果を出力信号Doutとして出力することが分かる。
【0060】
(シミュレーション)
次に、本実施形態に係るXOR回路1の動作をシミュレーションした結果を説明する。
【0061】
図6は、比較例として、一般に使用されている従来のXOR回路100の構成を示す。図6のXOR回路100は、図4の差動アンプ11が設けられていない点で図4に示す第1の実施形態のXOR回路1と異なっている。
【0062】
図7は、従来のXOR回路100の入出力信号のアイパターンである。シミュレーションでは、(i)XOR回路100への第1および第2入力信号Din1,Din2にクロックリークなどによる電圧揺らぎがある場合に、XOR回路100の出力信号にどの程度の影響がでるか(図7の(A)および(B)参照)、(ii)XOR回路100への第1入力信号Din1の論理ハイレベル電圧、論理ローレベル電圧にクロックリークなどによる電圧揺らぎがある場合に、XOR回路100の出力信号にどの程度の影響がでるか(図7の(C)および(D)参照)、を調べた。
【0063】
具体的には、図6のXOR回路100において、第1入力信号Din1側、第2入力信号Din2側のトランジスタがオン、オフするオフセット電圧でベースに正弦波を加えることにより、クロックリーク(電圧揺らぎ)の影響を調べた。なお、このオフセット電圧は、以下で説明する図7では−0.9Vと−1.2Vである。
【0064】
図7の(A)は、第1入力信号Din1の論理ハイレベル電圧および論理ローレベル電圧に電圧揺らぎがある場合に出力信号Dout(+)に与える影響をアイパターンで示す。図7の(B)は、第2入力信号Din2の論理ハイレベル電圧および論理ローレベル電圧に電圧揺らぎがある場合に出力信号Dout(+)に与える影響をアイパターンで示す。
【0065】
図7の(A)に示すように、第1入力信号Din1にのみクロックリークを模擬した電圧揺らぎを付与すると、出力信号Dout(+)の論理ローレベル電圧の変動幅は100mVppであった。なお、出力信号Doutにおいて論理ハイレベル電圧よりも論理ローレベル電圧の変動が大きいのは、NPNトランジスタがオンのとき電流が流れて論理ローレベル電圧になり、そのときの方がバイアスの揺れが大きくなるためである。また、図7の(B)に示すように、第2入力信号Din2にのみクロックリークを模擬した電圧揺らぎを付与すると、出力信号Dout(+)の論理ローレベル電圧の変動幅は40mVppであった。したがって、第2入力信号Din2に電圧揺らぎが付与されるよりも、第1入力信号Din1に電圧揺らぎが付与される方が、出力信号Dout(+)への影響が大きいことが分かった。
【0066】
次に、図7の(C)は、第1入力信号Din1の論理ハイレベル電圧の電圧揺らぎが出力信号Dout(+)に与える影響をアイパターンで示す。図7の(D)は、第1入力信号Din1の論理ローレベル電圧の電圧揺らぎが出力信号Dout(+)に与える影響をアイパターンで示す。
【0067】
図7の(C)に示すように、第1入力信号Din1の論理ハイレベル電圧にのみクロックリークを模擬した電圧揺らぎを付与すると、出力信号Dout(+)の論理ローレベル電圧の変動幅は90mVppであった。また、図7の(D)に示すように、第1入力信号Din1の論理ローレベル電圧にのみクロックリークを模擬した電圧揺らぎを付与すると、出力信号Dout(+)の論理ローレベル電圧の変動幅は50mVppであった。したがって、第1入力信号Din1の論理ローレベル電圧に電圧揺らぎが付与されるよりも、第1入力信号Din1の論理ハイレベル電圧に電圧揺らぎが付与される方が、出力信号Dout(+)への影響が大きいことが分かった。
【0068】
以上の結果を考慮し、本実施形態に係る排他的論理和回路1の差動アンプ11は、第1入力信号Din1に対して論理ハイレベル電圧を制限する構成となっている。
【0069】
図8は、第1の実施形態に係る排他的論理和回路1の入出力信号のアイパターンである。図8の(A)は、差動アンプ11のない従来のXOR回路100(図6参照)における入出力信号のアイパターンであり、本実施形態との比較のために示す。図8の(B)は、本実施形態に係る排他的論理和回路1の入出力信号のアイパターンである。図8の(B)(b)に示すように、差動アンプ11からの出力信号Din1'の論理ハイレベル電圧における電圧揺らぎが抑制され、XOR回路1の出力信号Dout(+)の論理ローレベル電圧の電圧揺らぎが低減されていることが分かる。
【0070】
このように、排他的論理和回路1の第1入力信号Din1の波形に歪みがあったとしても、差動アンプ11により第1入力信号Din1の論理ハイレベル電圧を制限することにより、排他的論理和回路1の出力信号Doutの波形に歪みがリークすることを効果的に抑えることができる。
【0071】
さらに説明すると、ギルバートセル30の下段のトランジスタXT3から見て、上段のトランジスタQ1またはQ2のベース電圧は、論理ハイレベル時に仮想GNDのように見える。また、ギルバートセル30の下段のトランジスタXT4から見て、上段のトランジスタQ3またはQ4のベース電圧は、論理ハイレベル時に仮想GNDのように見える。これは、図9に参考用に示すカスコードベース接地回路と等価である。そのため、ギルバートセル30の上段のトランジスタへの入力の論理ハイレベル電圧の揺らぎ(図9の仮想GNDの電位の揺らぎ)を抑えることにより、出力信号Voutへの電圧揺らぎのリークを効果的に抑制することができる。
【0072】
次に、作用効果について説明する。
【0073】
上述したように、本実施形態に係る排他的論理和回路1では、ギルバートセル30の上段差動部31の前段に、上段差動部31への第1入力信号Din1'の論理ハイレベル電圧を制限する差動アンプ11が設けられている。上段差動部31への第1入力信号Din1'における論理レベル電圧の変動は、第2入力信号Din2における論理レベル電圧の変動よりも、排他的論理和回路1からの出力信号Doutの変動に与える影響が大きい。また、上段差動部31への第1入力信号Din1'における論理ハイレベル電圧の変動は、論理ローレベル電圧の変動よりも、排他的論理和回路1からの出力信号Doutの変動に与える影響が大きい。そのため、上段差動部31への第1入力信号Din1'の論理ハイレベル電圧を制限することにより、排他的論理和回路1からの出力信号Doutの波形の歪みを効果的に抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る排他的論理和回路1では、差動アンプ11は、差動アンプ11の出力信号Din1'において差動アンプ11への第1入力信号Din1と同程度の振幅およびオフセット電圧が得られ且つ論理ハイレベル電圧を制限する特徴を有している。この構成により、差動アンプ11により、排他的論理和回路1のギルバートセル30内の上段差動部31への第1入力信号Din1'の論理ハイレベル電圧の変動が抑制されるので、簡単な構成で排他的論理和回路1からの出力信号Doutの波形の歪みを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る排他的論理和回路1では、差動アンプ11は、差動アンプ11の出力信号Din1'において差動アンプ11への第1入力信号Din1と同程度の立ち上り時間および立ち下り時間が得られる帯域を有している。この構成により、排他的論理和回路1への第1入力信号Din1の波形が差動アンプ11により歪むことを抑制することができる。これにより、排他的論理和回路1からの出力信号Doutの波形の歪みを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る排他的論理和回路1では、差動アンプ11は、差動対Q10,Q11と出力バッファ13とを備え、ギルバートセル30の下段差動部32の前段に、入力バッファ20が設けられている。この構成により、排他的論理和回路1への第1および第2入力信号Din1,Din2を適切な電圧レベルに調整するのが容易になる。また、第1入力信号Din1が差動アンプ11を通ってギルバートセル30の上段差動部31から出力するまでの経路P1'と、第2入力信号Din2が入力バッファ20とギルバートセル30の下段差動部32を通って上段差動部31から出力するまでの経路P2とで、トランジスタの個数をほぼ同数とすることができる。これにより、両経路P1',P2を通る信号の遅延時間を調整するのが容易になる。
【0077】
(第2の実施形態)
次に、図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係る排他的論理和(XOR)回路1Aを説明する。
【0078】
本実施形態に係るXOR回路1Aは、差動アンプ11の代わりに遅延回路50が設けられている点で第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0079】
図10に示すように、本実施形態に係るXOR回路1Aは、第1入力端子D1T,D1Cと、第2入力端子D2T,D2Cと、出力端子QT,QCと、を有し、排他的論理和の論理演算を行うデジタル論理回路である。このXOR回路1Aは、入力バッファ20と、ギルバートセル30と、出力バッファ40と、遅延回路50と、を備えている。
【0080】
遅延回路50は、ギルバートセル30の上段差動部31の前段に設けられ、第1入力信号Din1が遅延回路50を通って上段差動部31から出力されるまでの遅延時間が、下段差動部32への第2入力信号Din2が上段差動部31から出力されるまでの遅延時間と同程度になる遅延時間を有している。或いは、遅延回路50は、入力バッファ20への第2入力信号Din2が下段差動部32を通って上段差動部31から出力されるまでの遅延時間と同程度の遅延時間を有するようにしてもよい。
【0081】
遅延回路50は、第1入力信号Din1に上記所定の遅延時間を与えるものであればよく、例えば、第1の実施形態の差動アンプ11であってもよく、あるいは単に所要長さの導線路であってもよい。ここでは、遅延回路50が第1の実施形態の差動アンプ11であるとして説明する。
【0082】
図11(a)は、従来のXOR回路100内で第1入力信号Din1が通過する経路P1と、第2入力信号Din2が通過する経路P2を示している。XOR回路100内で第1入力信号Din1が通過する経路P1と第2入力信号Din2が通過する経路P2は長さが異なっており、通過するトランジスタ数も異なっている。特に、XOR回路100の高速動作時、データ信号が両経路を通過するのに要する遅延時間差により、XOR回路100においてデータスキューが生じる。
【0083】
差動アンプ11がない従来のXOR回路100において、第1入力信号Din1が経路P1を通過するとき遅延時間t1を要するとし、第2入力信号Din2が経路P2を通過するとき遅延時間t2を要すると仮定する。このとき、データスキューの原因となる遅延時間差は、|t1−t2|で求められる。例えば、|t1−t2|=1.7psである。
【0084】
差動アンプ11を有する本実施形態のXOR回路1Aにおいて、第1入力信号Din1が破線で示す差動アンプ11を経る経路P1'を通過するとき遅延時間t1'を要すると仮定する。このとき、データスキューの原因となる遅延時間差は、|t1'−t2|で求められる。例えば、|t1'−t2|=1.0(ps)であれば、従来の|t1−t2|=1.7psより0.7psほど短縮したことになる。
【0085】
このように、第1入力信号Din1側に差動アンプ11を追加し、第1入力信号Din1に対して、第2入力信号Din2側の遅延時間と同程度の遅延時間を与えることにより、XOR回路1A内部のデータスキューを改善することができる。
【0086】
図12は、排他的論理和回路1Aへの入力信号Din1,Din2の変化に対する出力信号Doutの変化を示す説明図である。
【0087】
まず、図12の(a)〜(c)は、差動アンプ11がない従来のXOR回路100の場合に、第1入力信号Din1の変化に対する出力信号Doutの変化を示す。第1入力信号Din1が変化して遅延時間t1後に、出力信号Doutが変化している。
【0088】
また、図12の(d)〜(f)は、差動アンプ11がない従来のXOR回路100の場合に、第2入力信号Din2の変化に対する出力信号Doutの変化を示す。第2入力信号Din2が変化して遅延時間t2後に、出力信号Doutが変化している。
【0089】
図12(a)〜(f)が示すように、第2入力信号Din2の変化から出力信号Doutの変化までの遅延時間t2は、第1入力信号Din1の変化から出力信号Doutの変化までの遅延時間t1より、|t1−t2|だけ長い。例えば、遅延時間差は|t1−t2|=1.7psである。
【0090】
図12の(g)〜(i)は、差動アンプ11の存在する本実施形態の場合に、入力信号Din1'の変化に対する出力信号Doutの変化を示している。図12の(h)に示すように、入力信号Din1'は、差動アンプ11の遅延時間tdだけ遅延している。それにより、(g)に示すように、出力信号Doutが遅延時間tdだけ遅延している。例えば、遅延時間tdがtd=2.7psであるとき、遅延時間差は|t1'−t2|=1.0psとなる。すなわち、差動アンプ11を追加することにより、遅延時間差が0.7psだけ短縮している。
【0091】
図13(A)は、100Gbit/sで動作時の従来のXOR回路100の入出力信号のアイパターンを示し、図13(B)は、100Gbit/sで動作時の本実施形態のXOR回路1Aの入出力信号のアイパターンを示す。図13(A)に示すように、差動アンプ11がない従来のXOR回路100では、出力信号Doutにタイミングジッタが認められる。これに対し、図13(B)に示すように、差動アンプ11を追加した本実施形態のXOR回路1Aでは、第1入力信号Din1を例えば2.7psだけ遅延させることにより、出力信号Doutにおけるタイミングジッタが改善されている。しかも、出力信号Doutのベースラインの歪みも改善されているのが分かる。
【0092】
このように、遅延回路50として差動アンプ11を追加することにより、XOR回路1A内部のデータスキューを改善することができるので、高速動作時のタイミングジッタを改善することができ、これにより、タイミングマージンを増加することができる。
【0093】
図14(A)は、200Gbit/sで動作時の従来のXOR回路100の入出力信号のアイパターンを示し、図14(B)は、200Gbit/sで動作時の本実施形態のXOR回路1Aの入出力信号のアイパターンを示す。図14(A)に示すように、差動アンプ11がない従来のXOR回路100では、出力信号Doutに顕著なタイミングジッタが認められる。これに対し、図14(B)に示すように、差動アンプ11を追加した本実施形態のXOR回路1Aでは、第1入力信号Din1を例えば2.7psだけ遅延させることにより、出力信号Doutにおけるタイミングジッタが改善されている。しかも、出力信号Doutのベースラインの歪みも改善されていることが分かる。
【0094】
上述のとおり、本実施形態に係るXOR回路1Aは、ギルバートセル30の上段差動部31の前段に、遅延回路50が設けられ、この遅延回路50は、下段差動部32への第2入力信号Din2が上段差動部31から出力されるまでの遅延時間と同程度の遅延時間を有している。
【0095】
この構成により、排他的論理和回路1Aに入力される第1および第2入力信号Din1,Din2が排他的論理和回路1A内でそれぞれ異なる経路P1,P2を通過することによって生じるデータスキューを、遅延回路50の遅延時間tdによって補正することができる。これにより、高速動作時であっても排他的論理和回路1Aからの出力信号Doutのタイミングジッタを低減することができる。その結果として、排他的論理和回路1Aを使用した、高速動作する同期式デジタル回路におけるビットエラーを低減することができる。
【0096】
上記第1および第2の実施形態では、排他的論理和回路1,1Aに含まれるトランジスタがヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)などのバイポーラトランジスタであるとして説明してきたが、バイポーラトランジスタの代わりに、MOSFETなどの電界効果トランジスタを使用できることは勿論である。また、ギルバートセル30の上段差動部31をバイポーラトランジスタにより構成し、下段差動部32を電界効果トランジスタで構成するなど、種類の異なるトランジスタを混在させてもよい。
【0097】
以上述べたように、本発明は、出力信号の品質を向上することができるという効果を有し、ギルバートセル構成の排他的論理和回路の全般に有用である。
【符号の説明】
【0098】
1、1A 排他的論理和回路
10 リミッタ(論理レベル電圧制限手段)
11 差動アンプ
12 差動対部
13 出力バッファ
20 入力バッファ
30 ギルバートセル
31 上段差動部
32 下段差動部
40 出力バッファ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14