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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-20753(P2020-20753A)
(43)【公開日】2020年2月6日
(54)【発明の名称】透明高分子材料の透明性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/50 20060101AFI20200110BHJP
【FI】
   G01J3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-146895(P2018-146895)
(22)【出願日】2018年8月3日
(71)【出願人】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 真範
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA02
2G020DA03
2G020DA04
2G020DA12
2G020DA16
2G020DA23
2G020DA52
(57)【要約】
【課題】目視による透明性評価に対する相関性が高く、実用性が高い透明高分子材料の透明性評価方法を提供する。
【解決手段】本発明の透明高分子材料の透明性評価方法は、暗箱を被せて遮光した状態で、透明高分子材料の平板状試験片からなる測色用試験体を測色し、得られたXYZ表色系の三刺激値より白色度WIを求め、暗箱のみで測色して得られた三刺激値より白色度WIを求め、WI−WIより算出されるWIの値に基づいて透明性を評価する。前記暗箱としては、測色用試験体との間に空間が形成されるものを使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明高分子材料の平板状試験片からなる測色用試験体の透明性を、分光測光器を用いて測色することにより評価する、透明高分子材料の透明性評価方法であって、
暗箱を用いて前記分光測光器の試料面開口を遮光した状態にて、前記分光測光器を用い、JIS Z8722に従い、JIS Z8722における幾何条件bで前記暗箱内を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求める第1工程と、
前記三刺激値X,Y,Zのうち、Y,Zを下記式(1)に代入して、バックグラウンドの白色度WIを求める第2工程と、
前記測色用試験体の表面の垂線を前記試料面開口に向けて配置し、前記暗箱を用いて前記測色用試験体及び前記試料面開口を遮光した状態にて、前記第1工程と同一条件で前記測色用試験体を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求める第3工程と、
前記三刺激値X,Y,Zのうち、Y,Zを下記式(2)に代入して、前記測色用試験体の白色度WIを求める第4工程と、
下記式(3)より求められる白色度WIの値に基づいて前記測色用試験体の透明性を評価する第5工程とを有し、
前記第3工程では、前記暗箱を、前記測色用試験体との間に空間が形成されるように前記測色用試験体及び前記試料面開口に被せる、透明高分子材料の透明性評価方法。
WI=3.388×Z−3×Y (1)
WI=3.388×Z−3×Y (2)
WI=WI−WI (3)
【請求項2】
前記第2工程と前記第3工程との間に、前記試験片の表面及び裏面の少なくとも一方に透明なオイルを塗布して、前記測色用試験体を得る工程を有する、請求項1記載の透明高分子材料の透明性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明高分子材料の透明性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明高分子材料の成形体は様々な用途に使用されている。透明高分子材料の透明性を定量的に評価する方法として、拡散透過光の全光線透過光に対する割合であるヘーズ(JIS K7136)を利用する方法が広く知られている(例えば特許文献1参照)。ヘーズは曇度とも称され、その値が小さい程、透き通ったものとなり、透明性が高いとされてきた。
しかし、ヘーズは、材料の種類によっては、目視による透明性の評価との相関性が低く、透明性評価における実用性が低いという問題を有していた。
その問題を解決する方法として、本発明者は、透明な平板状試験片からなる測色用試験体を測色してXYZ表色系の三刺激値を測定し、その値から不透明度を求め、その不透明度に基づいて透明性を評価する方法を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−190508号公報
【特許文献2】特開2015−121480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載の透明性評価方法においても、目視による透明性の評価との相関性が必ずしも充分ではなかった。
本発明は、目視による透明性評価との相関性が高く、実用性が高い透明高分子材料の透明性評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を含む。
本発明の一態様の透明高分子材料の透明性評価方法は、透明高分子材料の平板状試験片からなる測色用試験体の透明性を、分光測光器を用いて測色することにより評価する、透明高分子材料の透明性評価方法であって、
暗箱を用いて前記分光測光器の試料面開口を遮光した状態にて、前記分光測光器を用い、JIS Z8722に従い、JIS Z8722における幾何条件bで前記暗箱内を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求める第1工程と、
前記三刺激値X,Y,Zのうち、Y,Zを下記式(1)に代入して、バックグラウンドの白色度WIを求める第2工程と、
前記測色用試験体の表面の垂線を前記試料面開口に向けて配置し、前記暗箱を用いて前記測色用試験体及び前記試料面開口を遮光した状態にて、前記第1工程と同一条件で前記測色用試験体を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求める第3工程と、
前記三刺激値X,Y,Zのうち、Y,Zを下記式(2)に代入して、前記測色用試験体の白色度WIを求める第4工程と、
下記式(3)より求められる白色度WIの値に基づいて前記測色用試験体の透明性を評価する第5工程とを有し、
前記第3工程では、前記暗箱を、前記測色用試験体との間に空間が形成されるように前記測色用試験体及び前記試料面開口に被せる、透明高分子材料の透明性評価方法。
WI=3.388×Z−3×Y (1)
WI=3.388×Z−3×Y (2)
WI=WI−WI (3)
【発明の効果】
【0006】
本発明の透明高分子材料の透明性評価方法は、目視による透明性評価との相関性が高く、実用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】流動パラフィンを両面に塗布した試験例I〜Vについて、横軸に目視による透明性評価結果を、縦軸に白色度WI、ヘーズ及び不透明度をプロットしたグラフである。
図2】シリコーンオイルを両面に塗布した試験例I〜Vについて、横軸に目視による透明性評価結果を、縦軸に白色度WIをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の透明高分子材料の透明性評価方法は、分光測光器を用い、透明高分子材料の平板状試験片からなる測色用試験体の透明性を評価する方法である。
本発明が適用される透明高分子材料に含まれる透明高分子としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン・アクリル共重合体、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、トリアセチルセルロース等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより顕著に発揮されることから、結晶性高分子(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
透明高分子材料には、透明性を損なわない範囲で、ブルーイング剤やカーボンブラック等の着色剤が含まれてもよい。
さらに、透明高分子材料には、必要に応じて、結晶核剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤等の各種添加剤が含まれてもよい。
透明高分子材料は、JIS K7361−1に従って測定した全光線透過率が50%以上の材料である。全光線透過率が50%未満の不透明な高分子材料に対しては、本発明を適用することは困難である。
【0009】
以下、本発明の透明高分子材料の透明性評価方法の一態様について説明する。
本態様の透明高分子材料の透明性評価方法は、下記の第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、及び第5工程を有する。
第1工程及び第2工程は、透明高分子材料を測色する際のバックグラウンドの白色度WIを求めるための工程である。第3工程及び第4工程は、透明高分子材料の白色度WIを求めるための工程である。第5工程は、透明性を評価する工程である。
【0010】
第1工程は、前記暗箱を用いて前記試料面開口を遮光した状態にて、前記暗箱内を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求める工程である。すなわち、第1工程では、透明高分子材料の平板状試験片からなる測色用試験体のない状態で暗箱内を測色し、三刺激値X,Y,Zを求める。
【0011】
前記試料面開口とは、前記分光測光器の内部にて発せられたイルミナントを分光測光器の外部に出射させると共に、試料等にて反射した光を分光測光器の内部に入射させるための開口部のことである。つまり、前記開口部は、イルミナントの出射口と、試料等からの反射光の入射口とを含む。試料面開口は、前記分光測光器の上面に取り付けられた円板の中心に形成されることが好ましい。
さらに好ましい試料面開口の開口径は5mmφ以上50mmφ以下の範囲である。例えば、試料面開口の開口径を30mmφとし、試験体が30mmより小さい場合には10mmφとするのがよい。イルミナントを出射するレンズは試料面開口に合わせた径とする。
【0012】
本態様において使用される暗箱は、外光が入り込むことを防止するものであれば特に制限されない。暗箱の構造としては、例えば、円筒部と、前記円筒部と一体に形成された天板部とを有するものが挙げられる。また、本態様において使用される暗箱は、少なくとも内面全体が黒色にされて光反射性が抑制されることが好ましい。暗箱内の光反射性が抑制される程、暗箱内で迷光が生じることを抑制できるので、透明高分子材料の透明性評価の精度が高くなる。
また、暗箱は、後述する第2工程において測定する三刺激値X,Y,Zの各々が0.3以下になるものが好ましい。三刺激値X,Y,Zの各々が0.3以下の暗箱を用いれば、透明性が高い平板状試験片からなる測色用試験体に対しても、より高精度に透明性を評価できる。
また、本態様において使用される暗箱は、円筒部の内径が、試料面開口が形成されている前記円板の外径と同等になっている。そのため、試料面開口に暗箱を被せた際には、前記円板の外周面に前記円筒部の開口部近傍を嵌めることができる。したがって、試料面開口に暗箱を被せた際に、試料面開口に外光が入り込むことをより防止する構造を形成できる。
暗箱の天板部は、試料面開口に暗箱を被せた際に、試料面開口及び測色用試験体に接触しない位置に設けられている。
また、暗箱は、例えばその内面側に黒色のフェルトを備えてもよい。暗箱の内面側に黒色のフェルト等を備えると、光反射性をより抑制できることがある。
【0013】
測色は、分光測光器を用い、JIS Z8722に従っておこなう。測定の際の視野は2°又は10°であり、2°が好ましい。測定の際の照射及び受光の幾何条件は、JIS Z8722の5.3.1に記載された幾何条件bとする。また、分光測光器のイルミナントは限定されないが、JIS Z 8720において規定される標準イルミナントまたは補助イルミナントを用いることが好ましく、標準イルミナントD65または補助イルミナントCが好適である。
【0014】
分光測光器を用いた分光測色法は、分光反射率係数又は分光透過率係数を測定し、JIS Z8722に規定する三刺激値X,Y、Zを求める方法である。分光測光器は、JIS Z8722の4に記載された第1種分光測光器を用いてもよいし、第2種分光測光器を用いてもよい。
分光測色法における分光反射率係数の測定は、JIS Z 8722の5.3.3に記載された方法aでもよいし、方法bでもよい。
【0015】
第2工程は、前記第1工程において求めた前記三刺激値X,Y,Zのうち、Y,Zを下記式(1)に代入して、バックグラウンドの白色度WIを求める工程である。なお、式(1)及び後述する式(2)は、ASTM E313に記載されるTaubeの式(WI=3.388Z−3Y)であり、白色度WIを求める式である。
WI=3.388×Z−3×Y (1)
バックグラウンドの白色度WIは、暗箱を試料面開口に被せて遮光したときに測定される、暗箱内の白色度である。このバックグラウンドの白色度WIは、後述する第3工程において測色用試験体を測色するときの背景の白色度となる。
WIの導出は、コンピュータを用いてもよい。例えば、式(1)をコンピュータに記憶させておき、第1工程により求めた三刺激値Y,Zをコンピュータに入力し、式(1)を計算してWIを求めてもよい。前記コンピュータは、測色する際に使用する分光測光器に備え付けられたコンピュータであってもよいし、分光測光器に備え付けられたコンピュータとは別のコンピュータであってもよい。
【0016】
第2工程の後に、透明高分子材料の平板状試験片からなる測色用試験体の表面に透明なオイルを塗布して、測色用試験体を得る工程を有することが好ましい。
試験片の形状としては、市販の分光測光器によって容易に測色できることから、板状、シート状又はフィルム状が好ましい。
試験片は、透明高分子材料を成形することにより作製される。成形方法は、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形等、各種成形法のいずれであってもよい。試験片の厚さは、0.01〜5mmであることが好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.01〜0.5mmがさらに好ましい。ここで、試験片の厚さは、任意の10箇所の厚さの平均値である。
【0017】
ここで、透明なオイルとは、目視により透明であると視認されるオイルであるが、光路長6mmのセルに入れJIS K 7136に準拠してヘーズを測定した場合に、好ましくは6%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.6%以下であるオイルをいう。ヘーズの下限は通常0%以上である。
透明なオイルの成分分類としては、脂肪族飽和炭化水素オイル・脂肪族不飽和炭化水素オイル等の有機化合物系オイルや、シリコーンオイル等の有機珪素化合物系オイル等が挙げられる。また、用途分類として潤滑油・食用油・燃料油・工業油・化粧品油・医薬油等が挙げられる。本発明に用いられる透明なオイルとして、透明高分子材料の表面を平滑化するような塗布をできれば良く、成分分類や用途分類において特に制限はないが、前記試験片がポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィンである場合には、試験片と屈折率が近く試験片との界面での反射・散乱による影響が少ないことから、有機化合物系オイルが好ましく、脂肪族飽和炭化水素オイルである流動パラフィンがより好ましい。
透明なオイルの塗布方法としては特に制限はなく、例えば、刷毛を用いた塗布方法、コーターを用いた塗布方法、スプレーを用いた塗布方法等が挙げられる。また、透明なオイルに試験片を浸漬することにより、試験片に透明なオイルを塗布してもよい。
【0018】
本態様における測色用試験体の表面(前記試料面開口側の面)及び裏面(前記試料面開口とは反対側の面)の少なくとも一方に、前記透明なオイルからなるオイル膜が形成されている。オイル膜の厚さは特に制限されず、例えば、20〜80μmの範囲とすることができる。
オイル膜の厚さが上記範囲の下限値以上であると、オイル膜の厚さが面方向に均一になりやすく、オイル膜を設けたことによる下記の効果がより確実に得られやすくなる。上記範囲の上限値以下であると、測色用試験体からオイルが垂れ落ちにくく操作性に優れる。
オイル膜の厚さ(t)は、塗布に用いたオイルの体積(V)と塗布面積(A)から、t=V/Aとして算出される。
本態様において、試験片の表面及び裏面の少なくとも一方にオイル膜を備えると、試験片の表面の微細な凹凸が光を反射したり散乱したりすることにより測定に影響を与えることを防止する、という効果が得られる。この効果を高める観点から、試験片の両面にオイル膜を備えることが好ましい。
【0019】
第3工程は、前記測色用試験体の表面の垂線を前記試料面開口に向けて配置し、前記暗箱を用いて前記測色用試験体及び前記試料面開口を遮光した状態にて、前記第1工程と同一条件で前記測色用試験体を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求める工程である。
測色用試験体の表面の垂線を前記試料面開口に向けると、前記表面が前記試料面開口に正対する配置となるので、測定精度が優れる。
測色用試験体の表面と、分光測光器の前記試料面開口との間には、空間(空隙)があってもよいし、なくてもよい。測色用試験体を安定に設置し、測色用試験体の表面を試料面開口に正対させることが容易である観点から、前記測色用試験体を前記試料面開口に接するように配置することが好ましい。
分光測光器の試料面開口が分光測光器の上面に設けられている場合、分光測光器の上面に設けられた試料面開口に測色用試験体を接するように配置するためには、試料面開口に測色用試験体を載せればよい。
第3工程において使用する暗箱は、第1工程において使用した暗箱と同一のものとする。本工程では、暗箱を、測色用試験体との間に空間が形成されるように、測色用試験体及び試料面開口に被せる。
【0020】
第3工程では、使用する分光測光器、視野の角度、照射及び受光の幾何条件、イルミナントの種類、分光反射率係数の測定方法を、第1工程と同一にして、前記測色用試験体を測色する。
本工程では、測色用試験体及び試料面開口に暗箱を被せて測色用試験体及び試料面開口を遮光し、暗箱内に外光が入り込むことを防いだ状態で測色用試験体を測色する。外光の影響を排除することにより、測色の測定精度を向上させることができる。
【0021】
第4工程は、前記第3工程において求めた前記三刺激値X,Y,Zのうち、Y,Zを下記式(2)に代入して、前記測色用試験体の白色度WIを求める工程である。
WI=3.388×Z−3×Y (2)
測色用試験体の白色度WIは、暗箱内に配置された測色用試験体の白色度である。
WIは、WIと同様に、コンピュータを用いて導出することができる。
【0022】
第5工程は、下記式(3)より求められる白色度WIの値に基づいて、前記測色用試験体の透明性を評価する工程である。すなわち、WIの値の大小によって、透明高分子材料の透明性を評価する。具体的には、白色度WIが小さい程、透明高分子材料の透明性が高い、と評価する。
WI=WI−WI (3)
【0023】
本発明者らが調べた結果、白色度WIに基づいた本態様の透明性評価結果は、目視による透明性評価結果との相関性が高いことがわかった。したがって、本態様の透明性評価方法は実用性が高い。
本態様による透明性評価結果が、目視による透明性評価結果との相関性が高いのは以下の理由によると考えられる。
すなわち、本態様では、測色用試験体に暗箱を被せた状態で三刺激値X,Y,Zを測定し、白色度WIを求めている。暗箱は、測色用試験体の試料面開口側とは反対側の面(以下、この面を「背面」という。)に接しておらず、暗箱と測色用試験体との間には空間が形成されている。この場合、測色用試験体の背面は空気に触れているため、測色用試験体に入射した測色用の光は測色用試験体の背面にて反射が生じる。測色用試験体の背面にて光が反射する状態は、目視で透明性を評価するときの状態と近い。
さらに、本態様では、測色用試験体の白色度WIの値から、測色用試験体がない暗箱内の白色度WIの値を差し引いて白色度WIを求め、その白色度WIの値に基づいて透明性を評価する。これにより、バックグラウンドの影響を排除して透明性を評価できる。バックグラウンドの影響を排除することにより、透明性が高い試験体の透明性を測定する場合でも、高い精度で安定的に透明性を評価できる。
以上のことから、本態様の透明性評価方法は、目視による透明性評価結果との相関性が高くなると考えられる。
本態様の透明性評価方法を、透明高分子材料の製品の品質検査に適用した場合には、透明性の検査が厳格になるため、より高品質な透明高分子材料をユーザーに提供できる。
【0024】
本態様に対し、一般的な透明性の評価の指標であるヘーズは、主に透過条件での透明性測定であり、反射条件での測定が充分に反映されない。そのため、透明高分子材料のヘーズの値は、目視による透明性評価結果との相関性が低いと推測される。
また、特許文献2に記載の不透明度は、流動パラフィンを塗布した成形体の背面に黒色ガラス板を密着させて求めている。この場合、成形体の背面と黒色ガラス板との界面において、空気との屈折率差が流動パラフィンによって失われ、成形体の背面で光が反射しない状態となる。この状態は、目視で透明性を評価するときの状態とは異なっている。そのため、特許文献2に記載の不透明度の値は、目視による透明性評価結果との相関性が必ずしも高くないと推測される。
【実施例】
【0025】
以下、本発明について試験例を示して、より詳細に説明する。但し、本発明は、以下の試験例に限定されるものではない。
以下の例において使用した透明高分子材料は下記の通りである。
材料a:サンアロマー株式会社製PS320Mを80質量%、ダウケミカル社製エンゲージ8480を20質量%の割合でドライブレンドした材料。
材料b:サンアロマー株式会社製CS356M。
材料c:サンアロマー株式会社製PL500Aを95質量%、大日精化工業株式会社製透明核剤マスターバッチPP−RM−SKZ H8020を5質量%の割合でドライブレンドした材料。
【0026】
(試験例I)
40mmφ単層シート成形機(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用い、下記条件にて材料aをシート成形して、厚さ300μmのシートを得た。
キャストロールとタッチロールとのクリアランスは300μmとした。
押出機のシリンダー温度:C1を200℃、C2〜C5を220℃とした。
Tダイ温度:230℃とした。
Tダイのリップ開度:1mmとした。
ロール温度:60℃とした。
エアギャップ:100mmとした。
シート引取速度:1.1m/min.とした。
【0027】
(試験例II)
材料aを材料bに変更したこと以外は試験例Iと同様にしてシート成形し、厚さ300μmのシートを得た。
【0028】
(試験例III)
25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラスティックス工業株式会社製)を用い、下記条件にて材料cをシート成形して、厚さ350μmのシートを得た。
キャストロールとタッチロールとのクリアランスは350μmとした。
押出機のシリンダー温度:230℃とした。
Tダイ温度:270℃とした。
Tダイのリップ開度:1mmとした。
ロール温度:30℃とした。
エアギャップ:100mmとした。
シート引取速度:2.2〜2.3m/min.とした。
【0029】
(試験例IV)
Tダイ温度を230℃に、Tダイのリップ開度を0.8mmに変更したこと以外は試験例IIIと同様にして、厚さ350μmのシートを得た。
【0030】
(試験例V)
シリンダー温度を215℃に、Tダイ温度を250℃に、Tダイのリップ開度を0.8mmに変更したこと以外は試験例IIIと同様にして、厚さ350μmのシートを得た。
【0031】
<評価>
得られた各シートについて、目視によって透明性を評価し、また、下記方法により白色度WI、ヘーズ及び不透明度を測定した。測定結果及び評価結果を表1及び図1に示す。
【0032】
[目視による透明性評価]
シートから4cm角の平板状試験片を切り出し、両面全体に刷毛を用いて透明なオイルを片面あたり約75μl塗布して試験体を得た。透明なオイルとして流動パラフィン(富士フィルム和光純薬工業株式会社製一級試薬)とシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製KF-96−50CS)を用いた。この試験体を、机上に敷設した黒色マット上に置き、目視で観察し、透明性を5段階評価した。数値が大きい程、透明性が高い。
前記黒色マットとしては、XYZ表色系三刺激値(X,Y,Z)=(1.2,1.2,1.4)のものを使用した。
【0033】
[バックグラウンドの白色度WIの測定]
分光測光器(日本電色工業株式会社製SE−2000、2°視野、レンズ口径30mmφ)の試料面開口(開口径30mmφ)に外光が入射しないように暗箱を被せて前記試料面開口を遮光した。ここで、暗箱としては、日本電色工業株式会社製ゼロ校正ボックス、XYZ表色系三刺激値(X,Y,Z)=(0.16,0.16,0.21)のものを使用した。この暗箱は、円筒部と天板部を有し、後述する測色用試験体及び前記試料面開口に被せた際に前記測色用試験体との間に空間が形成されるものである。
次いで、前記暗箱を用いて前記試料面開口を遮光した状態にて、前記分光測光器を用い、前記暗箱内を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求めた。その際、JIS Z8722に従い、JIS Z8722における幾何条件b且つJIS Z 8720において規定される補助イルミナントCで測色した。
次いで、下記式(1)によりバックグラウンドの白色度WIを求めた。
WI=3.388×Z−3×Y (1)
【0034】
[白色度WIの測定]
シートから切り出した4cm角の平板状試験片の両面中央35mmφの範囲に刷毛を用いて透明なオイルを片面あたり約40μl塗布して、測色用試験体を得た。ここで透明なオイルとして流動パラフィン(富士フィルム和光純薬工業株式会社製一級試薬)とシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製KF-96−50CS)を用いた。
前記測色用試験体を分光測光器の試料面開口に接するように置き、前記測色用試験体及び前記試料面開口を覆うように暗箱を被せて遮光した。このときに使用した分光測光器及び暗箱は、バックグラウンドの白色度WIを測定した際に使用したものと同一である。
バックグラウンドの白色度WIを測定した際と同一条件にて前記測色用試験体を測色してXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求めた。
次いで、下記式(2)により、前記測色用試験体の白色度WIを求めた。
WI=3.388×Z−3×Y (2)
次いで、下記式(3)より白色度WIを求めた。
WI=WI−WI (3)
なお、透明ガラス板(松浪硝子工業株式会社製顕微鏡用ガラス(厚さ0.12〜0.17mm))を用いて、当該透明ガラス板のWI、及び当該透明ガラス板の両面中央35mmφの範囲に刷毛で流動パラフィン又はシリコーンオイルを片面あたり約40μl塗布した試験体のWIを求めたところ、いずれも0.0%であったことから、透明なオイル自体の測定値への影響は無視できることが確認された。
【0035】
[ヘーズの測定]
シートから4cm角に切り出した平板状試験片の両面中央35mmφの範囲に刷毛を用いて透明なオイルを片面あたり約40μl塗布して試験体を得た。透明なオイルとして流動パラフィン(富士フィルム和光純薬工業株式会社製一級試薬)を用いた。この試験体について、ヘーズ測定装置(株式会社村上色彩技術研究所製HM−150型)を用い、JIS K7136に従ってシートのヘーズを測定した。ヘーズ測定装置のイルミナントとしては、CIE標準イルミナントD65を用いた。なお、純水、流動パラフィン(富士フィルム和光純薬工業株式会社製一級試薬)、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製KF-96−50CS)を光路長6mmのガラスセル(株式会社村上色彩技術研究所製)に入れ測定したヘーズ値は、それぞれ0.0%、0.4%、0.8%であった。
【0036】
[特許文献2に記載の不透明度の測定]
シートから4cm角に切り出した平板状試験片の両面に刷毛を用いて流動パラフィン(富士フィルム和光純薬工業株式会社製一級試薬)を塗布し、一対のカバーガラスで挟んで試験体を得た。この試験体について、分光測光器(日本電色工業株式会社製SE−2000、2°視野、レンズ口径30mmφ)を用い、JIS Z8722に従い、幾何条件b、補助イルミナントC及び方法bにより測色して、XYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを求めた。次いで、下記式(4)より不透明度を求めた。
不透明度=Y+0.3018Z−3.831X (4)
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
図1及び図2に、横軸に目視による透明性評価結果を、縦軸に白色度WI、不透明度及びヘーズをプロットしたグラフを示す。透明なオイルとして図1には流動パラフィン(富士フィルム和光純薬工業株式会社製一級試薬)を、図2にはシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製KF-96−50CS)を用いた結果を示す。
図1及び図2に示すように、白色度WIは、目視による透明性評価結果との相関性が高かった。一方、ヘーズでは目視による透明性評価での1〜2の領域について正しく評価できていなかった。また、不透明度では、目視による透明性評価での2〜5の領域について差異を評価できていなかった。これより、白色度WIの値から透明性を評価する本発明の透明性評価方法は、透明性の評価として実用性が高いことが示された。
図1
図2