特開2020-2094(P2020-2094A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020002094-血中酸素濃度低下抑制剤 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-2094(P2020-2094A)
(43)【公開日】2020年1月9日
(54)【発明の名称】血中酸素濃度低下抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/28 20060101AFI20191206BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20191206BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20191206BHJP
【FI】
   A61K31/28
   A61P7/00
   A61P9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-124672(P2018-124672)
(22)【出願日】2018年6月29日
(71)【出願人】
【識別番号】391001860
【氏名又は名称】株式会社浅井ゲルマニウム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100091247
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 雅人
(72)【発明者】
【氏名】手塚 修文
(72)【発明者】
【氏名】中村 宜司
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB05
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA51
(57)【要約】
【課題】
本発明は、服用等という簡単な手段で、高地等の低酸素分圧条件下においてもSpOの低下を効果的に抑制することのできる薬剤を提供する。
【解決手段】
発明の血中酸素濃度低下抑制剤は、式[I]
Ge−(CH−CH−COOH)
で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とすることを特徴とするものである。又、発明の血中酸素濃度低下抑制剤は、式[II]
【化1】

で表される、式[I]で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とする液剤であってもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[I]
Ge−(CH−CH−COOH)
で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分として含有することを特徴とする血中酸素濃度低下抑制剤。
【請求項2】
式[II]
【化1】
で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とする液剤である請求項1に記載の血中酸素濃度低下抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血中酸素濃度低下の抑制剤に関するものであり、更に詳しくは、例えば高地等の低酸素分圧条件下においても血中酸素濃度の低下を抑制することができる血中酸素濃度低下抑制剤に関するものである。更に詳しくは、高地等の低酸素分圧条件下においても、血中酸素濃度の低下を抑制することにより呼吸回数の増加を抑制することができる、血中酸素濃度低下抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトを始め、脊椎動物の活動は、酸素を利用した酸化的リン酸化によって、細胞内でエネルギーとなるアデノシン三リン酸を多量に産生することで賄われている。この細胞活動に必要な酸素は呼吸により取り込まれて、肺で赤血球のヘモグロビンに結合して血流で全身に運搬されることにより、末梢の各細胞へと供給されている。このため、血液による赤血球を介した酸素運搬は、健全な身体を保つために必須の要素であり、血中酸素濃度を十分に高く保つことは日常生活を営む上で重要不可欠である。
【0003】
血中酸素濃度が低下することで健康を崩す例として、酸素欠乏症があり、重度な場合は致命的である。特に、山腹や山頂等の標高の高い場所では、酸素分圧が低くなることが知られるが、これら高地への旅行客・登山客の高山病は、やはり血中酸素濃度の低下によってもたらされる酸素欠乏症である。
【0004】
高山病においては、血中酸素濃度の低下がもたらす細胞の活動不全により臓器の働きが低下し、重度な場合には急性高山病、高地脳浮腫、高地肺水腫に至る場合も含めて危険が伴う。対応としては、通常は、ゆっくりと体を慣らす、或いは、酸素吸入で症状を和らげるといった方法がとられている。
【0005】
又、酸素分圧の低下は、呼吸回数を増やして酸素を取り込む量を増やそうとする身体の応答を伴うため、息が上がるという状態となり、運動・活動量の妨げになる。このことは登山や激しい運動などにおいて障害となり、そこで限界が規定されてしまうという問題が存在する。
【0006】
非特許文献1には、血中酸素飽和度をチベット高地で調べた例が開示されている。これによれば、標高4,900mのチベット高地で、合計17名の血中酸素飽和度{SpO(%)、以下単にSpOと略すことがある。}を調査したところ、64〜87であり、内訳としては60台が3名、70台が5名、80台が9名であったとされる。
【0007】
一般に、SpOは90%を下回ると低酸素状態とされ、80%未満になるとかなり危険な低酸素状態であるとされている。即ち、非特許文献1に示される例で90%台のものが一人もいなかったことから、全員が低酸素状態であったと考えられるのである。
【0008】
一方、非特許文献2には、ある種の有機ゲルマニウム化合物を経口摂取すると、胆汁色素代謝物が糞便中に増えるが、これは赤血球の分解促進を意味すると考えられることが、又、非特許文献3には、当該有機ゲルマニウム化合物を経口摂取したマウスの肝臓では、赤血球等を貪食する細胞のマーカーとなる遺伝子の量が増えていることがそれぞれ開示されている。しかしながら、非特許文献2、3には、当該有機ゲルマニウム化合物と低酸素分圧条件下における血中酸素濃度の低下との関連については開示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】沖縄医報 vol. 47 No.10 (2011) P94-97
【0010】
【非特許文献2】Takashi Nakamura et al., Promotive Effects of the Dietary Organic Germanium Poly-trans-[(2-carboxyethyl)germasesquioxane] (Ge-132) on the Secretion and Antioxidative Activity of Bile in Rodents. Journal of Health Science, 56, 72-80(2010)
【0011】
【非特許文献3】Takashi Nakamura et al., The oral intake of organic germanium, Ge-132, elevates alpha-tocopherol levels in the plasma and modulates hepatic gene expression profiles to promote immune activation in mice. International Journal for Vitamin and Nutrition Research, 84 (3-4), 2014, 183-195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、酸素分圧が低い高地における、SpOの低下に起因する旅行客・登山客の高山病は、時として身体的なリスクを伴うものであるが、酸素を供給するためのボンベの携帯は、所持品の重量との関係で制限される場合があるので、他の手段により、高地の低酸素分圧条件下においてもSpOの低下を抑制することができれば、旅行客・登山客の高山病を予防することが可能となり、極めて好ましい。
【0013】
又、前述したとおり、呼吸回数が増加する、即ち息が上がる状態は、運動量・活動量を制限することになり、登山家やスポーツ選手(特に高地トレーニングを行うランナーなど)にとって好ましくない状況であるが、呼吸回数の上昇を抑制することができれば、登山家のアタックの機会や状況を改善することや、又、高地トレーニング中のアスリートにとって低地でのトレーニングに近い感覚で、且つ、負荷をかけたトレーニングが可能となり、極めて好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の血中酸素濃度低下抑制剤は、上記のような事情を背景としてなされたもので、その構成は、式[I]
Ge−(CH−CH−COOH)
で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0015】
尚、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤は、例えば上記有機ゲルマニウム化合物[I]が加水分解された3−トリヒドロキシゲルミルプロパン酸を含有する液剤であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の血中酸素濃度低下抑制剤は、服用等という簡単な手段で、高地等の低酸素分圧条件下においてもSpOの低下を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】チベットの平地及び高地での2001年から2010年の複数回の遠征における、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の服用者及び非服用者のSpOの変化を示すグラフである。
【0018】
図2】チベットの平地及び高地での2004年における、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の服用者及び非服用者呼吸回数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0020】
又、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の有効成分である有機ゲルマニウム化合物は、式[I]
Ge−(CH−CH−COOH)
で表される公知のもので、ゲルマニウム原子にプロパン酸の3位の炭素が共有結合しているゲルミルプロピオン酸と酸素原子とが2:3の割合で結合した非常に安定な分子である。
【0021】
尚、上記有機ゲルマニウム化合物[I]は、式[I’]
[(Ge−CH−CH−COOH)]n
等で表わすこともでき、当該有機ゲルマニウム化合物は、重合度nを用いて表した場合は、重合度n=2〜∞のオリゴマー乃至ポリマー(poly-trans-[(2-carboxyethyl)germasesquioxane])ということができるが、重合度nを用いずに表した場合も化合物としては同一である。
【0022】
又、上記有機ゲルマニウム化合物を表す式[I]及び式[I’]等は、結晶状態の当該有機ゲルマニウム化合物に対応するもので、水溶液中では加水分解を受けて、式[II]
【化1】
で表される構造(3−トリヒドロキシゲルミルプロパン酸)をとるものである。逆に式[II]で表される3−トリヒドロキシゲルミルプロパン酸を単離しようとすると、結晶化に際して脱水縮合反応により重合して、上記式[I]及び式[I’]等で表される有機ゲルマニウム化合物となる。
【0023】
尚、上記各式で表される有機ゲルマニウム化合物の安全性や副作用がほとんどないことは、出願人により行われた各種の試験で確認されている。
【0024】
本発明の血中酸素濃度低下抑制剤は、上記各式で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とするものであり、上記式[I]及び式[I’]等で表される有機ゲルマニウム化合物にあっては、その適宜の量を汎用されている製剤方法に従い、カプセル剤や錠剤等に製剤され、その際、必要に応じ、製剤上許容される各種の添加剤を添加してもよい。又、上記式[II]で表される脱水縮合化合物(3−トリヒドロキシゲルミルプロパン酸)にあっては、その適宜の量を汎用されている製剤方法に従い、シロップ剤やドリンク剤等の液剤に製剤され、その際、必要に応じ、製剤上許容される各種の添加材を添加してもよい。
【0025】
又、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の有効成分である上記各式で表される有機ゲルマニウム化合物は、副作用をほとんど示さないため、その投与量に特に制限はないが、例えば上記式[I]及び式[I’]で表される有機ゲルマニウム化合物として1日当たり500mg以上、好ましくは1500mg以上という範囲を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これは本発明をなんら制限するものではない。
実施例1
【0027】
非特許文献1にも記載されているチベット高地に存在する実験サンプル採取に向かう研究者の一行の1名(同一人物)に、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤を服用させた。実験サンプル採取は、数年に1回の割合で実施され、各年のサンプル採取時に本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の服用量を変えてSpOへの影響を評価した。実験サンプル採取は、2001年、2004年及び2010年に実施され、2010年で終了した。
【0028】
本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の服用期間は、2001年が47(遠征前の日本国内:14日+遠征期間中:33日、以下同様)日間、2004年が37(14+23)日間、2010年が29(14+15)日間であり、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤としては、上記式[I]及び式[I’]等で表される有機ゲルマニウム化合物を250mg含有するカプセル剤として、2001年が朝/夕の各1回1カプセル(計500mg)、2004年が朝/昼/夕の各1回1カプセル(計750mg)、2010年が朝/昼/夕の各1回2カプセル(計1500mg)を、いずれも遠征の2週間前から毎日服用させた。又、他の同行者は本発明の血中酸素濃度低下抑制剤を服用しなかった。
【0029】
評価項目としては、1.出発前後の低地(中国、成都)、2.中継地であるチベットのラサ(標高:約3,600m)、3.採取地であるプマユムツオ湖(標高:約5,070m)において、遠征期間中に毎日、何れの遠征でも同一のパルスオキシメーターにより、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の服用者及び非服用者のSpOを測定して記録した。測定の結果として、各標高地滞在時におけるSpOの平均を図1に示した。尚、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の非服用者については、2001年の採取時においてSpOを測定したが、合流地との関係で前記1.出発前後の低地における測定は行えなかった。
【0030】
図1に示すように、同一人物の測定であるから、加齢に従って本来であればSpOは後年では低くなってよいはずであるが、反対に後年では高地においても高い値を示しており、ラサ(3,600m)や高地(プマユムツオ湖、5,070m)では、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の摂取濃度依存的にSpOの平均値は高かった。
【0031】
特に、2010年における1500mg/日の服用では、高地プマユムツオ湖においても低地におけるSpOと大差のない90%超の平均値であり、実際に隊員の実感としても、この年の遠征だけは低地での活動と変わらずに活動できる状態であったという感想となっていた。
実施例2
【0032】
2004年の遠征時には、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の服用者を4人、非服用者を2人とすると共に、服用者の内の3人(残り1人は前述のとおり事前より服用)には低地から服用した。服用量は朝/昼/夕の各1回1カプセル(計750mg)であった。これらの服用者及び非服用者について呼吸回数を測定し、その平均を図2に示す。
【0033】
図2から明らかなように、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の非服用者にあっては、高地に近づくにつれて呼吸回数が上昇したが、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤の服用者にあっては、このような呼吸回数の上昇は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、酸素分圧が低い高地における、SpOの低下に起因する旅行客・登山客の高山病は、時として身体的なリスクを伴うものであるが、本発明の血中酸素濃度低下抑制剤を服用することにより、高地の低酸素分圧条件下においてもSpOの低下を抑制することができ、旅行客・登山客の高山病を予防することが可能となった。又、この酸素分圧の低下抑制によって呼吸回数の増加を抑制することが可能となったので、高地での運動を必要とする登山家・及び高地トレーニングを行うアスリートの活動量・運動量の制限を解除して、登山の成功や高地トレーニングの効率を高めることが可能となった。
図1
図2