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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-21202(P2020-21202A)
(43)【公開日】2020年2月6日
(54)【発明の名称】審査支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20200110BHJP
   G06Q 10/10 20120101ALI20200110BHJP
【FI】
   G06Q50/22
   G06Q10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-143330(P2018-143330)
(22)【出願日】2018年7月31日
(71)【出願人】
【識別番号】515321027
【氏名又は名称】アガサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 千恵美
(72)【発明者】
【氏名】ジェラー ギオン
(72)【発明者】
【氏名】カールソン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ナフカ アメッ
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA11
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】短時間で高精度な判定を行う審査支援システムを提供する。
【解決手段】審査支援システム1は、臨床研究を実施しようとする申請者が、申請書類の提出に使用する申請者端末装置2と、前記申請書類が、迅速審査で審議すべき案件に該当するか、通常審査で審議すべき案件に該当するか、を判定する審査支援装置3と、を備える。審査支援装置3は、前記申請者端末装置2から、前記申請書類に関する未知データを取得するデータ取得部321と、教師データに基づいて、前記未知データに対する判定データを生成する判定部322と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床研究を実施しようとする申請者が、申請書類の提出に使用する申請者端末装置と、
前記申請書類が、迅速審査で審議すべき案件に該当するか、通常審査で審議すべき案件に該当するか、を判定する審査支援装置と、
を備えることを特徴とする審査支援システム。
【請求項2】
前記審査支援装置は、
前記申請者端末装置から、前記申請書類に関する未知データを取得するデータ取得部と、
前記申請書類に関する既知データ、及び前記既知データに対する判定データを記憶する記憶部と、
前記既知データ及び前記判定データに基づいて、前記未知データに対する判定データを生成する判定部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の審査支援システム。
【請求項3】
前記申請書類は、研究申請書及び研究計画書である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の審査支援システム。
【請求項4】
前記審査支援装置は、
決定木アルゴリズムを用いる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の審査支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、審査支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床研究を実施する医療機関等には、医療行為及び医学的研究行為が、十分な倫理的配慮のもとに行われているか否かを倫理的側面から審議する倫理委員会が設置されている。医療機関等は、原則として、倫理委員会の審査を経て、承認された研究のみ実施することができる。
【0003】
臨床研究を実施しようとする申請者(例えば、研究者、医師、薬剤師、研究コーディネータ、等)が、倫理委員会に申請書類(例えば、研究申請書、研究計画書、等)を提出すると、倫理委員会の担当委員(倫理委員会事務局の事務員、又は倫理委員会の委員)は、申請書類を確認し、「通常審査」で審議すべき案件に該当するか、「迅速審査」で審議すべき案件に該当するかを判定する。「通常審査」は、倫理審査委員会を開催して、会合で臨床研究の承認あるいは却下等を決定する審査であり、「迅速審査」は、倫理審査委員会を開催せずに、少数の委員で、迅速に、臨床研究の承認あるいは「通常審査」への差し戻し等を決定する審査である。
【0004】
近年、倫理委員会に提出される申請書類の増大に伴う審査遅延が深刻化しており、倫理委員会は、上述の判定に時間をかけることなく、適切な案件を「通常審査」で、集中的に審議することで、審査の効率化を図りたいと考えている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】玉腰 暁子、“疫学研究に係る倫理審査委員会の実態把握と臨床研究に係る倫理審査委員会等との比較研究”、[online]、平成26年3月、[平成29年3月8日検索]、インターネット〈https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1312_06.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、倫理委員会の担当委員が、上述の判定を行う場合、申請書類を隅々まで読まなければならないため、判定に時間がかかるという問題がある。更に、判定基準が曖昧であるため、各倫理委員会の判定結果がばらつくという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、短時間で高精度な判定を行う審査支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る審査支援システムは、臨床研究を実施しようとする申請者が、申請書類の提出に使用する申請者端末装置と、前記申請書類が、迅速審査で審議すべき案件に該当するか、通常審査で審議すべき案件に該当するか、を判定する審査支援装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短時間で高精度な判定を行う審査支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る審査支援システムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る研究申請書の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る研究計画書の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る審査支援装置に記憶されるメタデータテーブルの一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る審査支援システムにより実行される処理フローの一例を示す図である。
図6】本実施形態に係る決定木の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
≪審査支援システムの全体構成≫
まず、図1を参照して、本実施形態に係る審査支援システム1の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、審査支援システム1は、申請者端末装置2、審査支援装置3、等を備える。申請者端末装置2と、審査支援装置3とは、通信ネットワーク5を介して接続される。
【0014】
申請者端末装置2は、例えば、パーソナルコンピュータで構成され、表示部21、入力部22、等を備える。申請者端末装置2は、臨床研究を実施しようとする申請者(例えば、研究者、医師、薬剤師、研究コーディネータ、等)が、申請書類の提出に使用する装置である。申請書類としては、例えば、研究申請書、研究計画書、等が挙げられる。なお、審査支援装置3に接続する申請者端末装置2の台数は特に限定されるものではない。
【0015】
審査支援装置3は、記憶部31、制御部32、通信部33、表示部34、入力部35、等を備える。制御部32は、データ取得部321、判定部322、出力部323、等を備える。審査支援装置3は、例えば、パーソナルコンピュータで構成され、申請者によって、提出された申請書類が、「迅速審査」で審議すべき案件に該当するか、「通常審査」で審議すべき案件に該当するか、を判定する。詳細は後述するが、審査支援装置3は、既知のデータセット(教師データ)に基づいて、未知データを分類する教師あり学習アルゴリズムを用いて判定を行う。教師あり学習アルゴリズムとしては、例えば、決定木(Decision Tree)、ニューラルネットワーク、単純ベイズ分類器、最近傍法(kNN)、等が挙げられる。
【0016】
審査支援システム1に、審査支援装置3を適用することで、倫理委員会の担当委員は、膨大な資料を隅々まで読まずに、判定結果を取得することが可能になる。これにより、倫理委員会の担当委員の負担を軽減させることができる。また、審査支援システム1に、審査支援装置3を適用することで、倫理委員会の担当委員が判定を行うよりも、短時間で高精度な判定を行うことが可能になる。
【0017】
≪審査支援装置の構成≫
次に、審査支援装置3の構成について、具体的に説明する。
【0018】
記憶部31は、申請書類に関する既知データ311、既知データ311に対する判定データ312、申請書類に関する未知データ313、制御部32にて実行されるプログラム、等を記憶する。また、記憶部31は、制御部32がプログラムを実行するための、作業用記憶領域として用いられる。
【0019】
申請書類に関する既知データ311は、前回までに倫理委員会に提出された申請書類に関するデータである。データ項目としては、研究申請書に関するものとして、例えば、研究課題名、実施機関名、実施機関代表者名、等が、研究計画書に関するものとして、例えば、被験者予定数、研究目的、研究期間、等が挙げられる。
【0020】
既知データ311に対する判定データ312は、前回までに倫理委員会に提出された申請書類に対して、審査支援装置3が判定を行った際の、判定情報に関するデータである。データ項目としては、例えば、前回までに倫理委員会に提出された申請書類が、「迅速審査」で審議すべき案件、「通常審査」で審議すべき案件の何れに該当するかを示す判定結果、判定結果の根拠、該書類と類似する類似案件数、類似案件名、類似点、等が挙げられる。
【0021】
申請書類に関する未知データ313は、今回新たに倫理委員会に提出された申請書類に関するデータである。データ項目としては、研究申請書に関するものとして、例えば、研究課題名、実施機関名、実施機関代表者名、等が、研究計画書に関するものとして、例えば、被験者予定数、研究目的、研究期間、等が挙げられる。
【0022】
制御部32は、教師データ(申請書類に関する既知データ311及び既知データ311に対する判定データ312)に基づいて、申請書類に関する未知データ313を、特定の“クラス”に振り分ける(分類する)。
【0023】
データ取得部321は、申請者端末装置2から、通信部33を介して、申請書類に関する未知データ313を取得する。
【0024】
判定部322は、記憶部31から読みだした教師データ(既知データ311及び判定データ312)に基づいて、申請書類に関する未知データ313に対する判定データを生成する。例えば、決定木アルゴリズムを用いて、該判定データを生成する場合、判定部322は、申請書類に関する未知データ313が、決定木における複数の判定条件を満たすか否かを、次々に判定していくことで、該未知データを分類し、該未知データの所属クラス(「迅速審査」又は「通常審査」)を決定する。
【0025】
判定部322が、決定木アルゴリズムを用いて、提出された申請書類が、「迅速審査」で審議すべき案件に該当するか、「通常審査」で審議すべき案件に該当するか、を判定する際の、判定条件としては、例えば、次のようなものが挙げられる。なお、判定条件は、臨床研究の内容に依って異なるため、判定部322は、各種判定条件に基づいて構築された決定木に基づいて、適宜、判定を行えば良い。
【0026】
例えば、申請者が実施しようとする臨床研究が、「遺伝子治療等臨床研究」の場合、判定条件は、
1.申請書類の軽微な変更であること、
2.他の研究機関と共同して実施される遺伝子治療等臨床研究であって、既に当該遺伝子治療等臨床研究の全体について共同研究機関において倫理審査委員会の審査を受け、その実施について適当である旨の意見を得ていること、
等が挙げられる。
【0027】
また、例えば、申請者が実施しようとする臨床研究が、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」の場合、判定条件は、
1.申請書類の軽微な変更であること、
2.共同研究であって、既に主たる研究を行う機関において倫理審査委員会の承認を受けた研究計画を、他の共同研究機関が実施しようとする研究であること、
3.提供者及び代諾者等に対して最小限の危険(日常生活や日常的な医学的検査で被る身体的、心理的、社会的危害の可能性の限度を超えない危険であって、社会的に許容される種類のものをいう。)を超える危険を含まない研究であること、
等が挙げられる。
【0028】
また、例えば、申請者が実施しようとする臨床研究が、「人を対象とする医学系研究」の場合、判定条件は、
1.申請書類の軽微な変更であること、
2.侵襲を伴わない研究であって介入を行わない研究であること、
3.軽微な侵襲を伴う研究であって介入を行わない研究であること、
4.共同研究であって、既に当該研究の全体について共同研究機関において倫理審査委員会の審査を受け、その実施について適当である旨の意見を得ていること、
等が挙げられる。
【0029】
判定部322は、上述の判定条件を含むように構築された決定木に基づいて、申請書類に関する未知データ313を分類し、該未知データ313の所属クラス(「迅速審査」又は「通常審査」)を決定することで、該未知データ313に対する判定データを生成する。これにより、倫理委員会の担当委員が判定を行うよりも、短時間で高精度な判定を行うことが可能になる。なお、上述の説明では、判定部322が決定木アルゴリズムを用いて、未知データ313に対する判定データを生成する場合を一例に挙げて説明したが、判定部322が用いるアルゴリズムは、特に限定されるのもではなく、公知の教師あり学習アルゴリズムを用いることが可能である。
【0030】
出力部323は、判定部322が生成した未知データ313に対する判定データを出力する。該判定データは、今回新たに倫理委員会に提出された申請書類に対して、審査支援装置3が判定を行った際の、判定情報に関するデータである。データ項目としては、今回新たに倫理委員会に提出された申請書類が、「迅速審査」で審議すべき案件、「通常審査」で審議すべき案件の何れに該当するかを示す判定結果のみならず、判定結果の根拠、該書類と類似する類似案件数、類似案件名、類似点、等が含まれる。
【0031】
通信部33は、申請者端末装置2との間でデータの送受信を行う通信インタフェース等により構成される。表示部34は、例えば、液晶ディスプレイ、等であって、表示部34には、例えば、判定部322が生成した未知データ313に対する判定データ、等が表示される。入力部35は、マウスやキーボード等の操作子であって、倫理委員会の担当委員は、入力部35を操作し、表示部34に表示された未知データ313に対する判定データに基づいて、今回新たに倫理委員会に提出された申請書類が、「迅速審査」で審議すべき案件、「通常審査」で審議すべき案件の何れに該当するか、という判定結果を取得することができる。
【0032】
なお、表示部34には、未知データ313に対する判定データのみならず、構築された決定木、各種判定条件、類似案件、申請書類に関するデータのうち変更不可能な情報(例えば、被験者年令、家族の病歴、被験者性別)、申請書類に関するデータのうち変更可能な情報(例えば、被験者血圧、被験者体重、被験者生化学的検査データ)、等をわかりやすく表示させることも可能である。
【0033】
本実施形態に係る審査支援システム1によれば、審査支援装置3が教師データに基づいて、未知データを適切に分類する。これにより、倫理委員会の担当委員が判定を行うよりも、短時間で高精度な判定を行うことができるため、倫理委員会は、適切な案件を「通常審査」で、集中的に審議することで審査の効率化を図ることができる(審査支援)。
【0034】
≪研究申請書≫
図2は、本実施形態に係る申請書類の1つである研究申請書300の一例を示す図である。
【0035】
臨床研究を実施しようとする申請者は、申請者端末装置2の表示部21に、研究申請書300が表示されると、入力部22を操作して、入力欄301〜307に必要事項を入力し、必要があれば添付資料を添付することで、倫理委員会に研究申請書300を提出する。
【0036】
図2に示すように、例えば、申請者は、研究申請書300の整理番号を、入力欄301に入力し、倫理審査委員会における委員長の氏名を、入力欄302に入力し、臨床研究を実施する実施機関の名前を、入力欄303に入力し、実施機関の代表者の氏名を、入力欄304に入力し、自身の所属を、入力欄305に入力し、自身の氏名を、入力欄306に入力し、研究課題の名前を、入力欄307に入力する。また、申請者は、(1)研究計画書、(2)研究責任医師の履歴書及び分担医師の氏名リスト、等の添付資料を、必要に応じて研究申請書300に添付する。
【0037】
申請者が、申請者端末装置2を使用して、倫理委員会に研究申請書300を提出すると、研究申請書300に関する所定のデータ(即ち、申請書類に関する未知データ313)が、審査支援装置3の記憶部31に格納される。審査支援装置3は、既に記憶部31に格納されている後述のメタデータテーブルに含まれるメタデータ(即ち、申請書類に関する既知データ311)及びメタデータに対する判定データ312に基づいて、研究申請書300に関する所定のデータを、教師あり学習アルゴリズムを用いて、分類する。
【0038】
なお、図2に示す研究申請書300は、一例であって、項目や形式が、限定されるものではない。また、入力欄301〜入力欄307に、入力される事項は、数字、記号、数字及び記号を含む文字、自然言語、複数の単語からなる文章、図形、画像、等の何れであっても良い。
【0039】
≪研究計画書≫
図3は、本実施形態に係る申請書類の1つである研究計画書400の一例を示す図である。
【0040】
臨床研究を実施しようとする申請者は、申請者端末装置2の表示部21に、研究計画書400が表示されると、入力部22を操作して、入力欄401〜410に必要事項を入力し、必要があれば添付資料を添付することで、倫理委員会に研究計画書400を提出する。
【0041】
図3に示すように、例えば、申請者は、研究計画書400の研究計画書番号を、入力欄401に入力し、研究計画書400の作成日を、入力欄402に入力し、研究課題の名前を、入力欄403に入力し、自身の所属を、入力欄404に入力し、自身の氏名を、入力欄405に入力し、被験者予定数を、入力欄406に入力し、研究の目的を、入力欄407に入力し、研究の方法を、入力欄408に入力し、研究の開始日を、入力欄409に入力し、研究の終了日を、入力欄410に入力する。また、申請者は、図3に示す事項以外の必要事項を入力する(図示省略)。
【0042】
申請者が、申請者端末装置2を使用して、倫理委員会に研究計画書400を提出すると、研究計画書400に関する所定のデータ(即ち、申請書類に関する未知データ313)が、審査支援装置3の記憶部31に格納される。審査支援装置3は、既に記憶部31に格納されている後述のメタデータテーブルに含まれるメタデータ(即ち、申請書類に関する既知データ311)及びメタデータに対する判定データ312に基づいて、研究計画書400に関する所定のデータを、教師あり学習アルゴリズムを用いて、分類する。
【0043】
なお、図3に示す研究計画書400は、一例であって、項目や形式が、限定されるものではない。また、入力欄401〜410に、入力される事項は、数字、記号、数字及び記号を含む文字、自然言語、複数の単語からなる文章、図形、画像、等の何れであっても良い。
【0044】
≪メタデータ≫
図4は、本実施形態に係るメタデータテーブル500の一例を示す図である。
【0045】
メタデータは、前回までに倫理委員会に提出された申請書類に関するデータ(即ち、申請書類に関する既知データ311)であり、例えば、上述の研究申請書300に関する所定のデータ、上述の研究計画書400に関する所定のデータ、等を含む。
【0046】
図4に示すように、メタデータテーブル500は、複数の行及び複数の列から成るテーブルによって構成される。メタデータは、複数の項目に分類され、例えば、書誌情報501、研究情報502、依頼機関情報503、実施機関情報504、等に分類される。
【0047】
書誌情報501におけるデータ項目としては、例えば、申請書類の種類、申請書類の提出日、申請書類の申請者名、等が挙げられる。メタデータの一番左の列に着目すると、申請書類の種類は、「研究申請書」であり、申請書類の提出日は、「2015年4月10日」であり、申請書類の申請者名は、「○山○夫」であることがわかる。
【0048】
研究情報502におけるデータ項目としては、例えば、研究課題の名前、研究の目的、研究の方法、研究の概要、被験者予定数、被験者の年齢、被験者の性別、整理番号、研究計画書番号、研究の開始日、研究の終了日、等が挙げられる。メタデータの一番左の列に着目すると、研究課題の名前は、「ABCD」であり、研究の開始日は、「2016年1月10日」であり、研究の終了日は、「2017年1月10日」であることがわかる。
【0049】
依頼機関情報503におけるデータ項目としては、例えば、依頼機関の名前、依頼機関の代表者の氏名、依頼機関の責任者の氏名、依頼機関の連絡先住所、依頼機関の電話番号、依頼機関のE−mail、等が挙げられる。メタデータの一番左の列に着目すると、依頼機関の名前は、「あいうえお」であり、依頼機関の電話番号は、「12345」であることがわかる。
【0050】
実施機関情報504におけるデータ項目としては、例えば、実施機関の名前、実施機関の代表者の氏名、研究責任医師の名前、研究責任医師の連絡先住所、研究責任医師の電話番号、研究責任医師のE−mail、研究分担医師の名前、研究分担医師の連絡先住所、研究分担医師の電話番号、研究分担医師のE−mail、等が挙げられる。メタデータの一番左の列に着目すると、実施機関の名前は、「かきくけこ」であり、研究責任医師の名前は、「○川○太」、研究分担医師の名前は、「○木○行」であることがわかる。
【0051】
なお、図4に示すメタデータテーブル500は、一例であって、項目や形式が、限定されるものではない。また、メタデータは、単純な文字列に限定されるものでなく、文章、図形、画像、等の何れであっても良い。この場合は、情報量が大きくなるため、メタデータテーブル500の該当欄には、文章、図形、画像、等が記憶されたファイルの名称が格納される。
【0052】
≪申請書類の提出から臨床研究の開始まで≫
図5は、本実施形態に係る審査支援システムにより実行される処理フローの一例を示す図である。
【0053】
ステップS601において、臨床研究を実施しようとする申請者は、申請者端末装置2を使用して、申請書類(研究申請書、研究計画書、等)を、倫理委員会に提出して、実施したい臨床研究について申請する。
【0054】
ステップS602において、倫理委員会の担当委員は、申請書類の形式的なチェックを行い、申請書類に形式的不備が有れば、ステップS603の処理へと進み、申請書類に形式的不備が無ければ、ステップS604の処理へと進む。
【0055】
ステップS603において、倫理委員会の担当委員は、申請者に対して、不備箇所の修正を依頼する。申請者は、不備箇所を修正した後、再びステップS602の処理へと進む。
【0056】
ステップS604において、審査支援装置3は、申請者によって提出された申請書類が、「迅速審査」で審議すべき案件に該当するか、「通常審査」で審議すべき案件に該当するか、を判定する。審査支援装置3は、提出された申請書類が「通常審査」によって審議すべき案件に該当すると判定した場合、ステップS605の処理へと進む。審査支援装置3は、提出された申請書類を「迅速審査」によって審議すべき案件に該当すると判定した場合、ステップS610の処理へと進む。なお、この審査支援装置3における情報処理については、図6を参照して後記する。
【0057】
ステップS605において、倫理委員会は、倫理委員会の担当委員から、申請書類が「通常審査」で審議すべき案件であると審査支援装置3により判定された旨の報告を受けると、倫理審査委員会を開催する。
【0058】
ステップS606において、倫理委員会は、会合で、臨床研究を承認(或いは条件付き承認)するか否か、臨床研究を保留とするか否か、あるいは臨床研究を却下するか否か、を審査する。倫理審査委員会は、臨床研究を承認する場合、ステップS607の処理へと進み、臨床研究を保留とする場合、ステップS608の処理へと進み、臨床研究を却下する場合、ステップS609の処理へと進む。「通常審査」は、原則、書面審査であるが、必要に応じて、倫理委員会は、申請者に会合への出席を求めることも可能である。
【0059】
ステップS607において、臨床研究が承認されると、病院長の許可が下りて、申請者は、臨床研究を開始する。また、臨床研究が条件付き承認されると、申請者が修正を行い、倫理審査委員会が指名する委員による確認が行われた後、病院長の許可が下りて、申請者は、臨床研究を開始する。
【0060】
ステップS608において、臨床研究が保留とされると、申請者は、申請書類を再検討し、申請者端末装置2を使用して、再び、新たな申請書類を倫理委員会に提出する。
【0061】
ステップS609において、臨床研究が却下されると、病院長の許可が下りないため、申請者は、臨床研究を開始することができない。
【0062】
ステップS610において、倫理委員会の担当委員は、申請書類が「迅速審査」で審議すべき案件であると審査支援装置3により判定された判定結果をふまえて、「迅速審査」を行う。「迅速審査」は、少数の担当委員によって行われるが、該担当委員による迅速審査の結果は、倫理委員会全体の意見として取り扱われるため、該担当委員は、迅速審査の結果を、倫理委員会の全ての委員に報告することが必須である。なお、倫理委員会は、該担当委員による迅速審査の結果について、意見を述べることも可能である。
【0063】
ステップS611において、倫理委員会の担当委員は、臨床研究を承認(或いは条件付き承認)するか否か、を審査する。倫理委員会の担当委員は、臨床研究を承認(或いは条件付き承認)する場合、ステップS607の処理へと進み、臨床研究を承認しない場合、ステップS605の処理へと進む。
【0064】
仮に、本実施形態に係る審査支援システム1を用いずに、上述の処理を行おうとすると、倫理委員会の担当委員は、申請書類が「迅速審査」で審議すべき案件に該当するか否かを判定するために、申請書類を隅々まで読まなければならず、判定に時間がかかってしまう。これに連動して、申請者が、申請書類を倫理委員会に提出してから、実際に臨床研究を取り掛かるまでに、非常に長い時間がかかってしまう。
【0065】
しかしながら、本実施形態に係る審査支援システム1を用いることで、倫理委員会の担当委員が判定を行うよりも、短時間で高精度な判定を行うことが可能になるため、倫理委員会は、審査の効率化を図ることができる。これにより、申請者は、より短時間で、臨床研究に着手できる。
【0066】
≪決定木アルゴリズム≫
次に、本実施形態に係る審査支援装置3において、教師あり学習アルゴリズムとして、決定木アルゴリズムを適用する場合について説明する。図6(A)は、決定木の一例を示す図である。図6(B)は、各中間ノードに関連付けられた判定条件を示す図である。図6(C)は、各葉ノードに関連付けられた所属クラスを示す図である。
【0067】
審査支援装置3は、決定木アルゴリズムを用いて、申請書類に関する未知データ313が、決定木における複数の判定条件(中間ノードM1〜中間ノードM5)を満たすか否かを、次々に判定していくことで、該未知データを分類し、該未知データの所属クラス(葉ノードL1〜葉ノードL6)を決定する。各未知データ313の所属クラスは、未知データ313に対する判定データとして、出力部323から出力される。出力後の判定データ及び判定が終了した後の申請書類に関するデータは、教師データとして、新たに記憶部31に格納される。なお、決定木は、臨床研究の内容に応じて構築されても良いし、倫理委員会毎に構築されても良いし、全ての倫理委員会で共通に使用できるように構築されても良い。
【0068】
例えば、申請者が実施しようとする臨床研究が、「人を対象とする医学系研究」の場合、判定条件は、上述のように、
1.申請書類の軽微な変更であること、
2.侵襲を伴わない研究であって介入を行わない研究であること、
3.軽微な侵襲を伴う研究であって介入を行わない研究であること、
4.共同研究であって、既に当該研究の全体について共同研究機関において倫理審査委員会の審査を受け、その実施について適当である旨の意見を得ていること、
等が挙げられる。
【0069】
このうち、「申請書類の軽微な変更であること」という判定条件に対して、決定木を構築し、審査支援装置3が判定を行う場合を、一例に挙げて説明する。
【0070】
「申請書類の軽微な変更であること」という判定条件に対して、例えば、決定木における中間ノードM1の判定条件を、「研究責任者の変更のみ」とし、決定木における中間ノードM2の判定条件を、「研究分担者、研究協力者の削除・追加のみ」とし、決定木における中間ノードM3の判定条件を、「研究実施予定期間の変更のみ」とし、決定木における中間ノードM4の判定条件を、「研究実施予定場所の変更のみ」とし、決定木における中間ノードM5の判定条件を、「被験者予定数の減少のみ」とする。なお、決定木における中間ノードの判定条件は、一例であり、この条件に限定されるものではない。また、決定木における中間ノードの個数は、限定されるものではない。
【0071】
審査支援装置3は、申請者端末装置2から、申請書類に関する未知データ313を取得すると、未知データ313が、決定木における最初のノード(中間ノードM1)の判定条件(“研究責任者の変更”)を満たすか否かを判定する。研究責任者のみが変更されている場合(“Yes”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当するため、審査支援装置3は、未知データ313の所属クラスは、「迅速審査(葉ノードL1)」であると分類する。研究責任者が変更がされていない場合(“No”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当しないため、審査支援装置3は、未知データ313が、決定木における次の中間ノード(中間ノードM2)の判定条件(“研究分担者、研究協力者の削除・追加”)を満たすか否かを判定する。
【0072】
研究分担者、研究協力者の削除・追加のみがなされている場合(“Yes”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当するため、審査支援装置3は、未知データ313の所属クラスは、「迅速審査(葉ノードL2)」であると分類する。研究分担者、研究協力者の削除・追加がなされていない場合(“No”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当しないため、審査支援装置3は、未知データ313が、決定木における次の中間ノード(中間ノードM3)の判定条件(“研究実施予定期間の変更”)を満たすか否かを判定する。
【0073】
研究実施予定期間のみが変更されている場合(“Yes”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当するため、審査支援装置3は、未知データ313の所属クラスは、「迅速審査(葉ノードL3)」であると分類する。研究実施予定期間が変更がされていない場合(“No”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当しないため、審査支援装置3は、未知データ313が、決定木における次の中間ノード(中間ノードM4)の判定条件(“研究実施予定場所の変更”)を満たすか否かを判定する。
【0074】
研究実施予定場所のみが変更がされている場合(“Yes”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当するため、審査支援装置3は、未知データ313の所属クラスは、「迅速審査(葉ノードL4)」であると分類する。研究実施予定場所が変更がされていない場合(“No”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当しないため、審査支援装置3は、未知データ313が、決定木における次の中間ノード(中間ノードM5)の判定条件(“被験者予定数が減少”)を満たすか否かを判定する。
【0075】
被験者予定数のみが減少している場合(“Yes”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当するため、審査支援装置3は、未知データ313の所属クラスは、「迅速審査(葉ノードL5)」であると分類する。被験者予定数が減少していない場合(“No”の場合)、上述の「申請書類の軽微な変更であること」に該当せず、更に、審査支援装置3は、決定木における次の中間ノードの判定に進めないため、未知データ313の所属クラスは、「通常審査(葉ノードL6)」であると分類する。
【0076】
上述の例では、「申請書類の軽微な変更であること」という判定条件に対して構築された決定木に基づいて、審査支援装置3が判定を行う場合を説明したが、他の判定条件に対して構築された決定木に基づいて、審査支援装置3が判定を行うことも勿論可能である。申請者が実施しようとする臨床研究が、「人を対象とする医学系研究」の場合、例えば、判定条件として、「申請書類の軽微な変更であること」という判定条件の他にも、「侵襲を伴わない研究であって介入を行わない研究であること」、「軽微な侵襲を伴う研究であって介入を行わない研究であること」、「共同研究であって、既に当該研究の全体について共同研究機関において倫理審査委員会の審査を受け、その実施について適当である旨の意見を得ていること、」、等が挙げられる。例えば、被験者の血液採取量が500mlであれば、「軽微な侵襲を伴う研究であって介入を行わない研究であること」に該当しないが、被験者の血液採取量が50mlであれば、「軽微な侵襲を伴う研究であって介入を行わない研究であること」に該当する、等のように、各種判定条件を生成し、決定木を任意に構築することで、審査支援装置3は、より精度の高い判定を行うこと可能になる。
【符号の説明】
【0077】
1 審査支援システム
2 申請者端末装置
3 審査支援装置
31 記憶部
300 研究申請書
311 申請書類に関する既知データ
312 既知データに対する判定データ
313 申請書類に関する未知データ
321 データ取得部
322 判定部
400 研究計画書
図1
図2
図3
図4
図5
図6