本発明は、コア・シェル構造のカチオン性マイクロゲルであって、コアがメラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーとを含み、シェルがメラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーとを含み、内部架橋構造を有することを特徴とする。
前記コアが含有する(メタ)アクリルポリマーが、アミノ基含有(メタ)アクリルポリマーと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルポリマーと、スルホ基含有(メタ)アクリルポリマーと、を含むコポリマーであり、
前記シェルが含有する(メタ)アクリルポリマーが、アミノ基含有(メタ)アクリルポリマーと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルポリマーと、を含むコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のカチオン性マイクロゲル。
メラミンポリマー、アミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーとを水性媒体中で分散させて、メラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基とを含有する(メタ)アクリルポリマーをコアとし、メラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーをシェルとするコア・シェル型分散粒子を形成させる分散工程と、
前記分散工程で形成されたコア・シェル型分散粒子を加熱して内部架橋させ、コア・シェル型マイクロゲルとする架橋工程と、を含むことを特徴とするカチオン性マイクロゲルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電着塗装法では、直流電圧を印加するため、水の電気分解(H
2O→H
2↑+1/2O
2↑)により塗工時にガス発生が起こり、水素ガスは酸素ガスの2倍発生する。つまりカチオン型電着塗装では、被塗物界面での電解ガスがアニオン型電着塗装より多量に発生することにより、アニオン型電着塗装よりガスピットが発生し易い。
【0009】
このため、アニオン型電着塗装で用いられるシリカ、珪藻土、炭酸カルシウム粉末などは、カチオン型電着塗装では、ガスピットの問題が解決できず、意匠性に優れた美麗な艶消し外観を安定的に得られない。加えて、カチオン型電着塗料に、艶消し剤を配合させる方法は、艶消し剤の再分散性や凝集などの問題が生じやすい。
【0010】
また、カチオン型電着塗料のpHは3〜5程度で弱酸性であり、通常メラミン樹脂は、徐々にではあるが、酸性下で反応を起こし沈殿が生じるため、カチオン型電着塗料の硬化剤としてメラミン樹脂を使用することは難しく、これまで塗料化の検討例は少ないのが実情であった。
【0011】
さらに、電着塗装により艶消し塗装を行う方法としては、樹脂変性法、後処理法が知られており、樹脂変性法としては、有機ミン属キレートを触媒として形成した含水ミクロゲルを含むアクリル系アニオン型電着塗顆があるが、銀めっき、真鍮めっきでは変色が生じるという問題があり、美麗な艶消し塗装外観が要求される金属塗装およびめっきには使用できない。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究の結果、メラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーをコアとして、メラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーをシェルとするコア・シェル型マイクロゲルとし、内部架橋させた場合には、該マイクロゲルのシェルの架橋密度がコアより低く柔らかくなるので、ガスピットの生成を抑え、上品な艶消し外観を与えるとともに、塗料内で沈降しにくく、または沈降しても、凝集したケーキ状にならず再分散が容易な艶消し剤として利用できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、コア・シェル型のカチオン性マイクロゲルであって、コアがメラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基とを含有する(メタ)アクリルポリマーを含み、シェルがメラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基とを含有する(メタ)アクリルポリマーを含み、内部架橋構造を有することを特徴とするカチオン性マイクロゲルである。
【0014】
また、本発明は、前記コアが含有する(メタ)アクリルポリマーが、アミノ基含有(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートと、スルホ基含有(メタ)アクリレートと、を含むコポリマーであり、前記シェルが含有する(メタ)アクリルポリマーが、アミノ基含有(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを含むコポリマーであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記カチオン性マイクロゲルの平均粒径が0.5〜20.0μmであることを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記いずれかのカチオン性マイクロゲルと、カチオン電着塗料とを含むことを特徴とするカチオン電着艶消し塗料組成物である。
【0017】
また、本発明は、前記いずれかのカチオン性マイクロゲルが、カチオン電着塗料に対して10〜70重量%含有されてなることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明は、メラミンポリマー、アミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基とを含有する(メタ)アクリルポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基とを含有する(メタ)アクリルポリマーを水性媒体中で分散させて、メラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基とを含有する(メタ)アクリルポリマーをコアとし、メラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基とを含有する(メタ)アクリルポリマーをシェルとするコア・シェル型分散粒子を形成させる分散工程と、
前記分散工程で形成されたコア・シェル型分散粒子を加熱して内部架橋させ、コア・シェル型マイクロゲルとする架橋工程とを含むことを特徴とするカチオン性マイクロゲルの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカチオン性マイクロゲルは、スルホ基のような触媒基がコアのみに配合されていることによりシェルの架橋度がコアの架橋度よりも低くなり、ゲルの被塗物界面への融着が容易になるので、局所的なガス発生が抑えられ、ガスピットの発生も抑えられる。そのため、光沢樹脂塗膜に凹凸を与え、光の乱反射により艶消し外観を与えることができ、塗膜と同種のアクリル系の硬化粒子であることから、透明感が得られやすいという効果を奏する。
【0020】
また、カチオン性マイクロゲルを、カチオン電着塗料に適正量配合することにより、従来の無機微粉末、有機樹脂の微粉末で得られない美麗な艶消しが得られるので、意匠性を要求される金属及びめっき製品に対して、均一電着性に優れたカチオン電着艶消し塗装を施すことができる。
【0021】
すなわち、服飾、カバン等に使用される高級金具およびアクセサリーの金、銀等の装飾めっきに対して、艶消し外観の意匠性を与える。また、顔料など、染料を添加することにより、艶消しカラークリヤーを提供できる。
【0022】
また、従来の光沢性の電着塗料は、他の塗装方法に比べてエッヂカバー性に優れるが、塗料設計による優劣があるため、基本的にエッヂヌケが避けられない。しかし、本発明のカチオン性マイクロゲルは、ゲルの被塗物界面への融着が容易であるので、該ゲルを電着塗料に添加することによりエッヂカバー性の向上も期待される。
【0023】
加えて、本発明のカチオン性マイクロゲルは、艶消し剤として用いた場合に、艶消し剤が沈降しにくく、または沈降しても、凝集したケーキ状にならず再分散が容易であり、カチオン性の電荷を持たせることによる安定性の効果が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のカチオン性マイクロゲルは、コア・シェル型のマイクロゲルであって、コアがメラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーを含み、シェルがメラミンポリマーおよびアミノ基と、ヒドロキシ基と、を含有する(メタ)アクリルポリマーを含み、内部架橋構造を有するカチオン性マイクロゲルである。なお、本発明においては、アクリレートおよびメタクリレートの双方を含む用語として(メタ)アクリレートと記載する。さらに、本発明においては、アクリレートまたはメタアクリレートは、アクリル酸、メタアクリル酸であってもよい。
【0025】
本発明において、カチオン性マイクロゲルのコアを構成するアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基とを含有する(メタ)アクリルポリマー(以下、コアポリマーということがある)は、(メタ)アクリルポリマーにアミノ基と、ヒドロキシ基と、スルホ基とが導入された(メタ)アクリルポリマーであれば、どのようなものであってもよい。
【0026】
かかるコアポリマーとしては、具体的には、たとえばアミノ基、ヒドロキシ基およびスルホ基の1種または2種以上を有する(メタ)アクリレートを、適宜縮合させたコポリマーがあげられる。また、たとえばアミノ基含有(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートと、スルホ基含有(メタ)アクリレートなど、アミノ基、ヒドロキシ基およびスルホ基をそれぞれ含有する3種類の(メタ)アクリレートを適宜縮合させたものがあげられる。さらには、(メタ)アクリルポリマーに適宜、アミノ基、ヒドロキシ基およびスルホ基を導入したものであってもよい。
【0027】
コアポリマーが、アミノ基含有(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートと、スルホ基含有(メタ)アクリレートとのコポリマーである場合、アミノ基含有(メタ)アクリレート(以下、Aモノマーということがある)としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど、分子内にアミノ基および重合性二重結合を有するアクリル酸があげられ、このうち、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。アミノ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で使用でき、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(以下、Hモノマーということがある)としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのほか、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがあげられる。
【0029】
このうち、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにカプロラクトンが付加されたものであり、市販品が使用できる。かかる市販品としては、たとえば、プラクセルFM1(登録商標、ダイセル化学工業株式会社製、以下同)、プラクセルFM2、プラクセルFM3、プラクセルFA1、プラクセルFA2、プラクセルFA3などがあげられる。
【0030】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの内で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
スルホ基含有(メタ)アクリレート(以下、Sモノマーということがある)としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸等があげられ、このうち、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。スルホ基含有モノマーは、1種を単独で使用でき、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、本発明において、コアの周囲にシェルを形成するアミノ基およびヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリルポリマー(以下、シェルポリマーということがある)は、(メタ)アクリルポリマーにアミノ基およびヒドロキシ基が導入された(メタ)アクリルポリマーであれば、どのようなものであってもよい。かかるシェルポリマーとしては、具体的には、たとえばアミノ基およびヒドロキシ基の1種または2種を有する(メタ)アクリレートを、適宜縮合させたコポリマーがあげられる。
【0033】
また、たとえばアミノ基含有(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとをそれぞれ含有する(メタ)アクリレートを適宜縮合させたものがあげられる。さらには、(メタ)アクリルポリマーに適宜、アミノ基およびヒドロキシ基を導入したものであってもよい。
【0034】
シェルポリマーが、アミノ基含有(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとのコポリマーである場合、アミノ基含有(メタ)アクリレートおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、前記AモノマーおよびHモノマーとしてあげられたものを好適に用いることができる。
【0035】
前記コアポリマーおよびシェルポリマーには、前記アミノ基、ヒドロキシ基およびスルホ基を含むポリマーの希釈成分としてのモノマー(以下、Dモノマーということがある)を含有させることができる。
【0036】
かかる希釈成分としてのモノマーとしては、たとえば、直鎖状アルキルもしくはシクロアルキルまたはアラルキル(メタ)アクリレートや芳香族ビニルモノマーがあげられる。
【0037】
直鎖状アルキルもしくはシクロアルキルまたはアラルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜30のアルキル(メタ)アクリレートがあげられる。
【0038】
また、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレートがあげられる。
【0039】
また、芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのほか、酢酸ビニルなども用いることができる。これらのDモノマーは、その1種または2種以上を併用することができる。
【0040】
カチオン性マイクロゲルでは、架橋度をあげると硬いカチオン性マイクロゲルとなり、水素ガスが発生し、塗膜にガスピット(ピンホール)が発生し、好ましくないが、本発明のカチオン性マイクロゲルのようにシェルの架橋度をコアよりも適度に低くして、柔らかいゲルにすれば、水素ガスの発生がない。
【0041】
このため、前記Aモノマー、Sモノマー、Hモノマー、Dモノマーを適宜組み合わせて、前記コアポリマーを製造すればよく、その組み合わせ比率は、艶消し塗料と混合して電着塗装を行うことによって、決定できる。
【0042】
前記コアポリマーにおけるA、S、HおよびDの各モノマーの組み合わせ比率の1例を示すとすれば、Aモノマーを1〜20重量部、Sモノマーを1〜10重量部、Hモノマーを5〜30重量部、Dモノマーを50〜80重量部となる。SモノマーおよびHモノマーを多くすれば架橋度があがり、少なくすれば架橋度は低下する。
【0043】
前記シェルポリマーは、前記Aモノマー、Hモノマー、Dモノマーを適宜組み合わせて製造することができ、その組み合わせ比率の1例を示すとすれば、Aモノマーを10〜30重量部、Hモノマーを5〜30重量部、Dモノマーを50〜80重量部である。
【0044】
コアポリマーとシェルポリマーとの配合比率は、重量比で、コアポリマー1に対して、シェルポリマーが0.5〜2の範囲で適宜変動させることができるが、1:1であるのが好ましい。
【0045】
また、本発明においてコアポリマー、シェルポリマーとともにカチオン性マイクロゲルを構成するメラミンポリマーとしては、ゲル硬化剤として公知のものを使用することができる。
【0046】
本発明において、メラミンポリマーと、コアポリマーおよびシェルポリマーとの使用比率は、特に限定されないが、メラミンポリマーに対してシェルポリマーが5〜50重量%、好ましくは10〜20重量%である。また、メラミンポリマーに対してコアポリマーが10〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0047】
かかるメラミンポリマーとしては、たとえば、メラミンのほか、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化メラミン、および該メチロール化メラミンのアルキルエーテル化物があげられる。
【0048】
上記メチロール化メラミンとしては、メチロール化メラミンのほか、メチロール化メラミンのメチロール基の一部もしくは全部がメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどの1種もしくは2種以上の1価アルコールで変性されたメラミンを使用することができる。
【0049】
上記のメラミンは市販品を好適に使用することができ、市販品としては、サイメル232(登録商標、日本サイテックインダストリーズ株式会社製、以下同)、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、ニカラックMS17(登録商標、三和ケミカル株式会社製、以下同)、ニカラックMX15、ニカラックMX45、ニカラックMX430、ニカラックMX600などがあげられる。
【0050】
さらに、サイメル235、サイメル202、サイメル238、サイメル254、サイメル272、サイメル1130などのメチル化とイソブチル化との混合エーテル化メラミンや、サイメルXV805、ニカラックMS95などのメチル化とn−ブチル化との混合エーテル化メラミンなども用いることができる。
【0051】
本発明のカチオン性マイクロゲルは、電着塗装による薄膜を構成するものであり、塗膜厚の範囲から大粒径の必要はないので、その直径が0.5〜20.0μmであればよく、好ましくは1〜10μm、もっとも好ましくは2〜5μmである。
【0052】
カチオン性マイクロゲルは、その直径が20μm以上となれば、塗装を施した場合の塗膜表面の凹凸が激しく粗雑な艶消し外観となり、その直径が1μm以下となれば、塗装を施した場合の塗膜表面の凹凸が弱くなり防眩調もしくは光沢面となるので、いずれも好ましくない。
【0053】
本発明のカチオン電着艶消し塗料組成物は、カチオン性マイクロゲルと、カチオン電着塗料とを含む。
【0054】
カチオン電着塗料としては、アクリル系カチオン電着塗料であればよく、特に限定されないが、その組成の1例を示すと、主剤樹脂、硬化剤、中和剤、要すればさらに、顔料、染料などの着色剤、消泡剤等を含むカチオン電着塗料があげられる。
【0055】
前記主剤樹脂としては、カチオン電着塗料の全量を100重量部に対して、分子量1万〜10万、好ましくは3万〜6万程度のカチオン性アクリルポリオールと、ジメチルアミノエチルメタアクリレートなどのアミノ基含有モノマーを5〜20重量部、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマーを10〜30重量部含むものがあげられる。
【0056】
前記硬化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ウレタン系硬化剤であれば無黄変のブロック型のウレタン系硬化剤が好ましい、また紫外線硬化型の硬化剤を用いる場合には、アクリロイル基を反応基とするエステル系やウレタン系の多感応タイプの硬化剤と光重合開始剤を配合し使用するのが好ましい。
【0057】
カチオン電着塗料における主剤樹脂と硬化剤の配合割合は80:20〜40:60程度であればよく、固形分が10〜15%程度のものがあげられる。カチオン電着塗料は、市販のものを好適に使用することができ、市販のアクリル系カチオン電着塗料としては、たとえばエレコートCMEXコンク(商品名、株式会社シミズ製)、前記無黄変のブロック型のウレタン系硬化剤などがあげられる。
【0058】
カチオン電着塗料は、市販のものを好適に使用することができ、市販のアクリル系カチオン電着塗料としては、たとえばエレコートCMEXコンク(商品名、株式会社シミズ製)、前記無黄変のブロック型のウレタン系硬化剤などがあげられる。
【0059】
カチオン性マイクロゲルとカチオン電着塗料との配合比は、目的や被塗物の形状などに応じて種々決定すればよく、具体的には例えば、カチオン電着塗料に対して、カチオン性マイクロゲルが、重量比で、10〜70%となるよう配合することが好ましい。
【0060】
さらには、市販のUV電着塗料エレコートUC−2000(商品名、株式会社シミズ製)にカチオン性マイクロゲルを配合して艶消しタイプのUV電着塗料として使用できる。
【0061】
本発明のカチオン性マイクロゲルは、メラミンポリマーと、アミノ基、ヒドロキシ基およびスルホ基を含有する(メタ)アクリルポリマーと、アミノ基およびヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリルポリマーとを水性媒体中で分散させて、前記メラミンポリマーと、前記アミノ基、ヒドロキシ基およびスルホ基を含有する(メタ)アクリルポリマーをコア部とし、前記メラミンポリマーと、前記アミノ基およびヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリルポリマーをシェル部とするコア・シェル型分散粒子を形成させる分散工程と、
前記分散工程で形成されたコア・シェル型分散粒子を加熱して内部架橋させ、コア・シェル型マイクロゲルとする架橋工程とを実施することにより製造することができる。
【0062】
一般にメラミン類化合物の架橋反応はポリオール樹脂との反応や自己架橋により、150℃以上から徐々に始まるとされているが、本発明では、前記コアポリマーに含まれるスルホ基が酸触媒として機能するので、架橋反応をより低温で実施することができ、水系でのカチオン性マイクロゲル化の反応を円滑に行うことができる。
【0063】
コアポリマーと、シェルポリマーは、公知の溶液重合法により製造することができる。具体的には、溶媒中に、Aモノマー、Sモノマー、Hモノマーおよび重合開始剤を滴下し、加熱することによって、コアポリマーを製造することができる。さらに、シェルポリマーは、溶媒中に、Aモノマー、Hモノマーおよび重合開始剤を滴下し、加熱することによって製造することができる。また、コアポリマーとシェルポリマーの製造において、必要に応じて、Dモノマーを加えて、Dモノマーを含むコアポリマーおよびシェルポリマーを製造することができる。
【0064】
溶媒としては、前記各モノマーを溶解するものであれば、特に限定されないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどの低級脂肪酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンなどがあげられる。
【0065】
これらの内で好ましいのは低級アルコールであり、特に好ましいのはイソプロピルアルコールである。溶媒は、(メタ)アクリルポリマー溶液全重量を100とした場合の30〜60重量%であるのが好ましい。
【0066】
重合開始剤としては公知のものを使用でき、たとえば、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ジスルフィド化合物、スルフィド化合物、スルフィン化合物、ニトロソ化合物などがあげられる。
【0067】
これらの内、アゾ化合物、パーオキサイド化合物が好ましく、アゾ化合物の具体例としては、たとえば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などがあげられる。また、パーオキサイド化合物としては過酸化ベンゾイルなどがあげられる。これらの重合開始剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0068】
重合開始剤の使用量は特に制限されず、モノマーの種類、その使用量、重合開始剤の種類などに応じて、重合反応が円滑に進行し且つ目的のコアポリマーまたはシェルポリマーを製造することができる量を適宜選択すればよいが、好ましくはモノマーの合計量100重量部に対して0.01〜3重量部である。
【0069】
重合開始剤は、重合反応の進行状況に応じ、時間の間隔を空けて数回程度に分割して重合反応系に添加してもよい。重合反応は、好ましくは溶剤の還流温度下に行われ、3〜20時間程度、好ましくは3〜8時間程度で終了する。
【0070】
分散工程は、前記で得られたポリマーと、メラミンポリマーとを混合し、酸を加えてポリマーのアミノ基を中和したのち、撹拌下に、水性媒体を徐々に加えて、ポリマー溶液が液滴状の微粒子として分散した分散液を調製することにより、実施できる。このとき、分散液中の固形分を5〜50%,好ましくは30%程度に希釈するのが好ましい。
【0071】
本発明のカチオン性マイクロゲルを、より効率的に得るためには、Aモノマー、たとえばジメチルアミノメタクリレートの含有量を、コアポリマーよりもシェルポリマーが多くなるようにすることにより、アミノ基の有する水性媒体への分散性を利用して、分散粒子を形成させる際に、スルホ基を含有するコアポリマーをマイクロゲルの中心に配向させ、アミノ基を多く含むシェルポリマーを分散粒子の表面方向に配向させることができる。
【0072】
中和に用いる酸としては、特に限定されないが、たとえば乳酸、酢酸、メタンスルホン酸等の酸が使用でき、これらは併用してもよい。水性媒体としては、水、または水とイソプロピルアルコール、ブチルセロソルブなどの混合物があげられる。
【0073】
分散工程における撹拌は、公知の撹拌装置を用いることができ、たとえば撹拌装置(ZZ-1100、東京理化器械株式会社製)を用いることができる。このとき、微小液滴の径は、概ね100nm程度となるのが好ましい。
【0074】
架橋工程は、前記分散液を加熱することによって、実施することができ、80〜100℃好ましくは90℃で3〜5時間反応させることにより、架橋されたカチオン性マイクロゲルを製造することができる。
かくして得られたカチオン性マイクロゲルは、そのままで、または適宜溶媒で所望の濃度に希釈して、艶消し剤として使用することができる。
【0075】
カチオン性マイクロゲルと、カチオン電着塗料との混合は、両者を、目的に応じた配合比率で混合することにより、製造することができ、本発明のカチオン電着艶消し塗料組成物を得ることができる。混合は、この分野における公知の手段により、常温ないし加温下に容易に実施することができる。
以下に、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる形態に限られるものではない。
【0076】
実施例1
(1)重合工程での(メタ)アクリルポリマーの製造
表1〜3に示す溶剤原料を、還流冷却器、温度計、攪拌機および滴下ロートを備えた4つ口フラスコ中で75〜80℃に加熱し、撹拌下に、滴下ロートから表1〜3に示すモノマーおよび重合開始剤の混合物を、3時間を要して滴下する。滴下完了後同温度でさらに3時間撹拌することにより、淡黄色透明な製造例A−1〜C−3で示される(メタ)アクリルポリマーの溶液を得た。
【0077】
【表1】
表中の略号は以下のものを表す(以下、同)。
IPA:イソプロピルアルコール、BC:ブチルセロソルブ、DM:ジメチルアミノエチルメタアクリレート、MMA:メチルメタクリレート、2−HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート、2−HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4−HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート、St:スチレン、THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート、LMA:ラウリルメタアクリレート、AMPS:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
また、表中のTgは、原料として用いた各アクリレートもしくはメタクリレートの文献値、メーカー公表値をもとに、次の計算式によりもとめた(以下、同)。
1/Tg=W
1/Tg
1+W
2/Tg
2+W
3/Tg
3+・・・・+W
n/Tg
n
[Tg:ポリマーのTg(K)
Tg
1、Tg
2、・・・・Tg
n:各成分単独ポリマーのTg(K)
W
1、W
2、
・・・・W
n:各成分の重量分率(W
1+W
2+・・・・+W
n=1)]
【0080】
(2)分散工程および架橋工程でのカチオン性マイクロゲルの調製
表4に記載された量の製造例A−1〜C−2で示されるコアまたはシェルポリマーと、サイメル285 60gとを混合し30分間撹拌する。
【0081】
ついで混合液に、乳酸2.0gを加えて30分間撹拌し、(メタ)アクリルポリマーのアミノ基を中和する。
【0082】
中和後、撹拌下にイオン交換水150gを徐々に加えたのち、60分間撹拌してポリマー溶液を液滴状の微粒子として分散させた水分散液を調製する。
【0083】
ついで、前記水分散液を85〜95℃で、溶媒の還流下に、7時間加熱撹拌して、内部架橋させたカチオン性マイクロゲルを生成させたのち、冷却し、MG−1〜MG−9のカチオン性マイクロゲルを得た。
【0085】
実施例2
(1)カチオン電着艶消し塗料1〜9の製造
カチオン電着塗料としてエレコートCMEXコンク83.3gに、固形分比で1:1となるように、MG−1〜MG−9のカチオン性マイクロゲルをそれぞれ138.2g混合して、9種類の混合物を調製する。
【0086】
ついで、各混合物のそれぞれに、イオン交換水778.5gを徐々に加えて混合撹拌し、固形分10%のカチオン電着艶消し塗料組成物1〜9を製造する。
【0087】
なお、塗料組成物1はMG−1、塗料組成物2はMG−2というように、対応する番号のカチオン性マイクロゲルを用いて各塗料組成物を調製した。
【0088】
(2)電着塗装および評価
カチオン電着艶消し塗料組成物1〜9の1Lを25℃に保持し、カーボンを陽極として、電解脱脂、水洗、酸中和、水洗、純水洗の順に処理した5cm×7cmの真鍮板に、50〜70Vで1分間、電着塗装を行い、純水洗、水切り、予備乾燥(110℃、10分間)、焼付(145℃、30分間)の順で処理して、カチオン電着艶消し塗料組成物1〜9のそれぞれについて、膜厚10〜12μmの塗膜を形成させた。
【0089】
得られた各塗膜について、グロスメーター(マイクロ‐グロス60°(micro‐Gloss 60°)、BYK−Gardner社製)で、艶消し度合を含めた外観を評価した。
さらに、碁盤目テープ剥離試験により一次密着を評価し、塗料保存安定性は、沈降の有無を目視で判定して評価した。
【0090】
結果は、表5に示すとおりであり、外観は、低Tgの(メタ)アクリルポリマーのカチオン性マイクロゲルを含む塗料が、ガスピットの発生を抑制する傾向にあることが認められた。また、スルホ基を持たないカチオン性(メタ)アクリルポリマーを配合して電着時の素材との融着性を確保することにより、さらにガスピットの発生が少なく緻密な艶消し外観が得られた。
【0092】
*1 ×:ガスピット10個以上
△:ガスピット9個以下
○:微小なガスピット3個以下
◎:ガスピットなし
【0093】
*2 ×:保存開始後1〜2時間で沈降あり。
▲:保存開始後2〜3時間で沈降あり。
○:保存開始後2〜3時間でわずかな沈降あり。
【0094】
*3:総合判定は、表中の一次密着および膜厚を除く項目において、×=0点、△=1点、▲=2点、○=3点、◎=4点とし、60°鏡面光沢度は20°台=1点、10°台=2点、1桁台=3点として、それらの合計点で判定した。
【0095】
実施例3
塗料組成物6と、比較例として、市販の艶消しアニオン電着塗料(エレコートフロスティW2、株式会社シミズ製)と市販のアニオン電着塗料(エレコートAM−1、株式会社シミズ製)とから調製したアニオン電着艶消し塗料組成物とを用いて、5cm×7cmの真鍮板、5cm×7cmの銀めっき板に、塗膜のグロス値が15程度になるよう塗装条件を調整した以外は、前記実施例2(2)と同様の条件で電着塗装を行い、得られた塗膜を比較し、評価した。
【0096】
アニオン電着艶消し塗料組成物は、前記エレコートフロスティW2とエレコートAM−1とを、固形分比率で80対20となるように建浴して用いた。
【0097】
結果は、表6に示すとおりであり、アニオン電着艶消し塗料組成物では酸化によると思われる変色が、真鍮板、銀めっき板の双方に発生し、意匠性用途に適しない結果となった。
【0098】
本発明の塗料組成物6を用いた場合には、真鍮板、銀めっき板の双方に変色は見られなかった。