特開2020-23069(P2020-23069A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-23069(P2020-23069A)
(43)【公開日】2020年2月13日
(54)【発明の名称】造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20200121BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20200121BHJP
【FI】
   B29C64/209
   B29C64/118
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-147938(P2018-147938)
(22)【出願日】2018年8月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 修弘
(72)【発明者】
【氏名】三鍋 治郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC02
4F213AD16
4F213AR07
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL26
4F213WL27
4F213WL32
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】連続繊維の束に樹脂を含侵させた後、その断面形状を維持した状態で、造形材を被排出部に排出する場合と比して、造形物を構成する造形材の強度を高くすることができる造形装置を得る。
【解決手段】回転する一対の加熱ロール42、44が、通過部26から排出された造形材100を加熱しながら挟み込んで搬送する。さらに、加熱ロール44が、造形材100を加熱ロール42へ加圧する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被排出部と、
連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材の断面を小さくする縮小部と、
前記被排出部に対して相対移動し、前記縮小部によって断面が小さくされた前記造形材を前記被排出部に排出し、前記造形材が硬化してなる層を複数重ねる排出部と、
を備える造形装置。
【請求項2】
連続繊維の束に樹脂を含侵させて線状の造形材を前記縮小部に供給する含浸部を備える請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記縮小部は、前記造形材を加圧、加熱して前記造形材の断面を小さくする請求項1又は2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記縮小部は、
内部に熱源が設けられた加熱ロールと、
内部に熱源が設けられており、前記造形材を前記加熱ロールに向けて加圧する他の加熱ロールと、を有する請求項3に記載の造形装置。
【請求項5】
回転する前記加熱ロールと回転する前記他の加熱ロールとが、前記造形材を挟持搬送することで、前記排出部から前記造形材が排出される請求項4に記載の造形装置。
【請求項6】
前記縮小部は、前記造形材の断面の一方向の長さが、前記断面において前記一方向に対して交差する交差方向の長さと比して長くなるように、断面円形状の造形材の断面を小さくする請求項1〜5の何れか1項に記載の造形装置。
【請求項7】
前記縮小部は、前記造形材の断面が扁平形状となるように前記造形材の断面を小さくする請求項6に記載の造形装置。
【請求項8】
前記縮小部は、前記造形材の断面が楕円形状となるように前記造形材の断面を小さくする請求項6に記載の造形装置。
【請求項9】
前記被排出部は、前記排出部から排出される前記造形材が載せられる被排出面を備え、
前記被排出部及び前記排出部の少なくとも一方は、前記造形材が前記被排出面に載せられた状態で、前記造形材における断面の前記一方向が前記被排出面に沿うように相対移動する請求項6〜8の何れか1項に記載の造形装置。
【請求項10】
前記被排出部は、前記排出部から排出される前記造形材が載せられる被排出面を備え、
前記被排出部及び前記排出部の少なくとも一方は、前記造形材が前記被排出面に載せられた状態で、前記造形材の扁平平面が前記被排出面に接触又は対向するように相対移動する請求項8に記載の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3Dプリンタ、強化フィラメント及びそれらの使用方法に関する種々の実施形態が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016−531020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材を被排出部に排出し、この造形材を複数重ねることで造形物を造形する溶解積層方式(FDM方式(Fused Deposition Modeling))の造形装置(3Dプリンタ)がある。
【0005】
この造形装置では、連続繊維の束に樹脂を含侵させた後、その断面形状を維持した状態で、造形材が被排出部に排出される。このような場合には、樹脂による連続繊維間の接着力が弱く、造形物を構成する造形材の強度が不足してしまうことがある。
【0006】
本発明の課題は、連続繊維の束に樹脂を含侵させた後、その断面形状を維持した状態で、造形材を被排出部に排出する場合と比して、造形物を構成する造形材の強度を高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る造形装置は、被排出部と、連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材の断面を小さくする縮小部と、前記被排出部に対して相対移動し、前記縮小部によって断面が小さくされた前記造形材を前記被排出部に排出し、前記造形材が硬化してなる層を複数重ねる排出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る造形装置は、請求項1に記載の造形装置において、連続繊維の束に樹脂を含侵させて線状の造形材を前記縮小部に供給する含浸部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る造形装置は、請求項1又は2に記載の造形装置において、前記縮小部は、前記造形材を加圧、加熱して前記造形材の断面を小さくすることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る造形装置は、請求項3に記載の造形装置において、前記縮小部は、内部に熱源が設けられた加熱ロールと、内部に熱源が設けられており、前記造形材を前記加熱ロールに向けて加圧する他の加熱ロールと、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る造形装置は、請求項4に記載の造形装置において、回転する前記加熱ロールと回転する前記他の加熱ロールとが、前記造形材を挟持搬送することで、前記排出部から前記造形材が排出されることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係る造形装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載の造形装置において、前記縮小部は、前記造形材の断面の一方向の長さが、前記断面において前記一方向に対して交差する交差方向の長さと比して長くなるように、断面円形状の造形材の断面を小さくすることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7に係る造形装置は、請求項6に記載の造形装置において、前記縮小部は、前記造形材の断面が扁平形状となるように前記造形材の断面を小さくすることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8に係る造形装置は、請求項6に記載の造形装置において、前記縮小部は、前記造形材の断面が楕円形状となるように前記造形材の断面を小さくすることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項9に係る造形装置は、請求項6〜8の何れか1項に記載の造形装置において、前記被排出部は、前記排出部から排出される前記造形材が載せられる被排出面を備え、前記被排出部及び前記排出部の少なくとも一方は、前記造形材が前記被排出面に載せられた状態で、前記造形材における断面の前記一方向が前記被排出面に沿うように相対移動することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項10に係る造形装置は、請求項8に記載の造形装置において、前記被排出部は、前記排出部から排出される前記造形材が載せられる被排出面を備え、前記被排出部及び前記排出部の少なくとも一方は、前記造形材が前記被排出面に載せられた状態で、前記造形材の扁平平面が前記被排出面に接触又は対向するように相対移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1の造形装置によれば、連続繊維の束に樹脂を含侵させた後、その断面形状を維持した状態で、造形材を被排出部に排出する場合と比して、造形物を構成する造形材の強度を高くすることができる。
【0018】
本発明の請求項2の造形装置によれば、連続繊維の束に樹脂を含浸させることで縮小部に供給する造形材を形成することができる。
【0019】
本発明の請求項3の造形装置によれば、加圧するだけで造形材の断面を小さくする場合と比して、断面を小さくするための加圧力を弱くすることができる。
【0020】
本発明の請求項4の造形装置によれば、加熱工程と加圧工程とが分かれている場合と比して、造形材の断面を簡易な構成で小さくすることができる。
【0021】
本発明の請求項5の造形装置によれば、加熱ロール及び他の加熱ロールとは別に造形材を搬送する搬送部材を設ける場合と比して、部品点数を削減することができる。
【0022】
本発明の請求項6の造形装置によれば、排出部によって排出される造形材の断面が円形状の場合と比して、造形物の強度を高くすることができる。
【0023】
本発明の請求項7の造形装置によれば、造形材同士が扁平な面で対向していない場合と比して、造形物の強度を高くすることができる。
【0024】
本発明の請求項8の造形装置によれば、造形材同士の対向する面が側面より小さい場合と比して、造形物の強度を高くすることができる。
【0025】
本発明の請求項9の造形装置によれば、造形材の断面の交差方向が被排出面に沿う場合と比して、造形物の強度が低くなるのを抑制することができる。
【0026】
本発明の請求項10の造形装置によれば、造形材の断面の交差方向が被排出面に沿う場合と比して、造形物の強度が低くなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る造形装置の構成を示した構成図である。
図2】(A)(B)(C)本発明の実施形態に係る造形装置に用いられる連続繊維の束、及び造形材等を示した断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る造形装置の加熱搬送部を示した斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る造形装置に備えられた制御部の制御系を示したブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る造形装置と比較形態に係る造形装置とを用いて評価を行った評価結果をグラフで示した図面である。
図6】(A)(B)本発明の実施形態に係る造形装置の造形材、及び比較形態に係る造形装置の造形材を示した断面図である。
図7】本発明の実施形態に対する比較形態に係る造形装置の構成を示した構成図である。
図8】本発明の実施形態に対する比較形態に係る造形装置に備えられた制御部の制御系を示したブロック図である。
図9】本発明の実施形態に対する変形形態に係る造形装置に用いられる造形材等を示した断面図である。
図10】本発明の実施形態に対する変形形態に係る造形装置に用いられる造形材等を示した断面図である。
図11】本発明の実施形態に対する変形形態に係る造形装置に用いられる造形材等を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る造形装置の一例について図1図11に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0029】
(造形装置10)
造形装置10は、溶解積層方式(FDM方式(Fused Deposition Modeling))の三次元造形装置(3Dプリンタ)であって、複数の層の層データに従って、層を複数重ねることで、造形物を造形する装置である。
【0030】
造形装置10は、図1に示されるように、造形ユニット12と、造形ユニット12の下方に配置されている台部14と、台部14を移動させる移動ユニット18と、各部を制御する制御部16とを備えている。
【0031】
〔造形ユニット12〕
造形ユニット12は、図1に示されるように、連続繊維(フィラメント)の束(以下「繊維束110」)が巻かれたリール20と、巻き掛けロール22と、繊維束110に樹脂を含浸させて線状の造形材100とする含浸部24とを備えている。また、造形ユニット12は、造形材100を加圧、加熱しながら搬送して造形材100の断面を小さくする加熱搬送部40と、造形材100を台部14に排出する排出部50とを備えている。加熱搬送部40は、縮小部の一例である。
【0032】
−リール20、巻き掛けロール22−
リール20は、図示せぬ装置本体に対して回転可能に支持されており、リール20には、前述したように、繊維束110が巻かれている。繊維束110とは、複数の連続繊維が撚り合わされずに束ねられたものである。本実施形態では、連続繊維には、一例として、直径0.005〔mm〕の炭素繊維が用いられており、この連続繊維が1000本以上束ねられている。そして、束ねられた状態で、図2(A)に示されるように、繊維束110の断面は、直径(図中D1)0.3〔mm〕以上0.4〔mm〕以下の円形状とされている。なお、図2(A)については、繊維の本数を少なくして断面が示されている。
【0033】
巻き掛けロール22は、図1に示されるように、装置幅方向において、リール20の一方側(図中左側)に配置されており、装置本体に対して回転可能に支持されている。そして、巻き掛けロール22には、リール20から巻き出された繊維束110が巻き掛けられている。
【0034】
この構成において、リール20から巻き出された繊維束110の巻き出し方向(以下「巻出方向」)において、巻き掛けロール22に対して上流側の部分の繊維束110は、装置幅方向に延びている。また、巻出方向において、巻き掛けロール22に対して下流側の部分の繊維束110は、装置上下向に延びている。
【0035】
−含浸部24−
含浸部24は、図1に示されるように、巻出方向において、巻き掛けロール22の下流側に配置されている。また、含浸部24は、繊維束110が通過する通過部26と、通過部26へ樹脂を送り出す樹脂送出部28とを有している。
【0036】
樹脂送出部28の内部には、樹脂が収容されており、樹脂送出部28は、収容された樹脂を加熱するヒータ28aと、加熱された樹脂を通過部26に送り出すスクリュー28bとを有している。本実施形態では、一例として、樹脂送出部28の内部には、樹脂としてポリプロピレン樹脂が収容されており、ヒータ28aは、収容されたポリプロピレン樹脂を200〔℃〕以上250〔℃〕以下に加熱することで溶融している。
【0037】
通過部26は、リール20から巻き出された繊維束110が通過するように配置されている。また、通過部26は、上下方向に延びている円筒状とされており、リール20から巻き出された繊維束110を受け入れる受入口26aと、内部を通過する繊維束110を周方向から囲むように樹脂が滞留している円柱状の滞留部26bとを有している。さらに、通過部26は、樹脂が繊維束110に含侵した造形材100を排出する排出ヘッド26cと、周壁に取り付けれ、滞留部26bに滞留している樹脂を加熱するヒータ26dとを有している。そして、受入口26a、滞留部26b、及び排出ヘッド26cは上方から下方へ向けてこの順番で並んでいる。本実施形態では、一例として、ヒータ26dは、滞留部26bに滞留しているポリプロピレン樹脂を200〔℃〕以上250〔℃〕以下に加熱する。
【0038】
この構成において、樹脂送出部28は、加熱された樹脂を通過部26の滞留部26bに送り出す。また、通過部26は、受入口26aから受け入れて滞留部26bを通過する繊維束110に樹脂を含浸させる。さらに、通過部26は、樹脂が繊維束110に含侵した線状の造形材100を排出ヘッド26cから排出する。また、排出ヘッド26cから排出された状態で、図2(B)に示されるように、夫々の繊維間の隙間には、樹脂が含浸されており、造形材100の断面は、直径0.3〔mm〕以上0.4〔mm〕以下の円形状とされている。なお、図2(B)については、繊維の本数を少なくして断面が示されている。
【0039】
このように、繊維束110に樹脂を含浸させることで、夫々の繊維同士が樹脂によって接着される。これにより、含浸部24は、夫々の繊維同士を接着させる接着手段として機能している。
【0040】
また、繊維束110に樹脂を含浸させることで、夫々の繊維間に樹脂が充填されることで、繊維束110の断面形状が保持される。これにより、含浸部24は、繊維束110の断面形状を保持する断面保持手段として機能している。
【0041】
−加熱搬送部40−
加熱搬送部40は、図1に示されるように、巻出方向において、含浸部24の下流側に配置されており、加熱搬送部40は、造形材100を加熱、加圧して搬送する、例えば、一対の加熱ロール42、44を有している。加熱ロール44は、他の加熱ロールの一例である。他の手段として、加熱部と内部に加圧部材を備えたベルトを用いてもよい。
【0042】
加熱ロール42は、軸方向を装置奥行方向に向けた円筒状で金属製の円筒部42aと、円筒部42aの内部に配置された熱源42bとを有している。そして、加熱ロール42は、図示せぬ駆動手段から駆動力が伝達されて、周方向に回転するようになっている。
【0043】
加熱ロール44は、造形材100を挟んで加熱ロール42の反対側に配置されており、軸方向を装置奥行方向に向けた円筒状で金属製の円筒部44aと、円筒部44aの内部に配置された熱源44bとを有している。
【0044】
さらに、加熱ロール44は、図3に示されるように、円筒部44aの長手方向の両端部に形成されていると共に円筒部44aの軸を構成する円柱状の一対の軸部44cと、軸部44cに取り付けられた軸受44dとを有している。また、加熱ロール44は、軸受44dを介して円筒部44aを加熱ロール42の円筒部42a側に付勢する一対の付勢部材44eを有している。そして、加熱ロール44は、図示せぬ駆動手段から駆動力が伝達されて、周方向に回転するようになっている。
【0045】
また、本実施形態では、一例として、一対の加熱ロール42、44は、造形材100を200〔℃〕以上250〔℃〕以下に加熱するようになっている。さらに、加熱ロール44は、造形材100を0.2〔MPa〕で加熱ロール42へ加圧するようになっている。また、回転する加熱ロール42、44は、造形材100を30〔mm/sec〕の速さで、挟持搬送するようになっている。但し、この速度に限定されない。
【0046】
この構成において、回転する一対の加熱ロール42、44は、リール20から繊維束110を巻き出し、含浸部24は、前述したように、リール20から巻き出された繊維束110に樹脂を含浸させて繊維束110を造形材100とする。さらに、回転する一対の加熱ロール42、44は、含浸部24から供給されて固化した造形材100を加熱しながら挟み込んで加熱し、加熱ロール44が、造形材100を加熱ロール42へ加圧する。
【0047】
これにより、一対の加熱ロール42、44は、図2(B)(C)に示されるように、断面円形状の造形材100を断面扁平形状として、造形材100の断面を小さくする。ここで、扁平形状の断面とは、断面の一方向の長さが、断面において一方向に対して交差する交差方向の長さと比して長くなると共に、交差方向を向く一対の平面(以下「扁平平面100a」)が形成されている断面である。つまり、扁平平面100aとは、扁平形状の短手方向を向く一対の平面のことである。
【0048】
このように、一対の加熱ロール42、44が造形材100を加熱しながら加圧することで、造形材100の断面が小さくなる。換言すれれば、造形材100を構成する繊維が凝集して、造形材100の密度が高くなる。これにより、夫々の繊維に樹脂が圧着されることで、繊維同士を接着させる接着強度が高くなる。そして、繊維同士を接着させる接着強度が高くなることで、造形材100は、加熱、加圧される前の造形材100と比して、変形に対する抵抗力が大きくなる。つまり、造形材100は、加熱、加圧される前の造形材100と比して、強度が高くなる。本実施形態では、造形材100は、加熱、加圧される前の造形材100の断面を100〔%〕とすると、断面を90〔%〕程度まで小さくする。
【0049】
また、造形材100の扁平率としては、形状の安定性、及び積層される造形材100同士の接触面積を増加させる観点から、0.3以上0.8以下が好ましく、0.4以上0.6以下が特に好ましい。
【0050】
このように、一対の加熱ロール42、44は、造形材100(繊維束110)を巻出方向に沿って搬送する搬送手段として機能している。
【0051】
また、一対の加熱ロール42、44は、造形材100の断面を小さくする断面縮小化手段として機能している。
【0052】
さらに、一対の加熱ロール42、44は、造形材100の変形に対する抵抗力を大きくする抵抗力向上手段として機能している。
【0053】
−排出部50−
排出部50は、図1に示されるように、巻出方向において、含浸部24の下流側に配置されている。また、排出部50は、台部14へ向けて排出される造形材100の先端側の部分を保持するようになっており、保持した部分の造形材100を加熱する図示せぬヒータを有している。
【0054】
〔台部14、移動ユニット18〕
台部14は、図1に示されるように、造形ユニット12の下方に配置され、造形ユニット12側の上方を向くと共に水平面である上面14aを有している。台部14は、被排出部の一例であって、上面14aは、被排出面の一例である。
【0055】
移動ユニット18は、造形ユニット12に対して、台部14を装置幅方向及び装置奥行方向に移動させるようになっている。さらに、移動ユニット18は、造形ユニット12に対して、台部414を上下方へ移動させるようになっている。
【0056】
〔制御部16〕
制御部16は、造形物の三次元データから作成された複数の層データに従って、ヒータ28a、スクリュー28b、ヒータ26d、加熱ロール42、44、及び移動ユニット18を制御する(図4参照)。なお、制御部16が各部を制御する構成については、後述する作用共に説明する。
【0057】
(造形装置10の作用)
造形装置10を用いて造形物を造形する造形方法について、比較形態に係る造形装置510を用いた場合と比較しつつ説明する。先ず、比較形態に係る造形装置510の構成について、造形装置10に対して異なる部分を主に説明する。
【0058】
〔造形装置510〕
造形装置510は、図7に示されるように、造形ユニット512と、造形ユニット512の下方に配置されている台部14と、台部14を移動させる移動ユニット18と、各部を制御する制御部516とを備えている。また、造形ユニット512は、リール20と、巻き掛けロール22と、含浸部24と、造形材100を搬送する搬送部540と、造形材100を台部14に排出する排出部50とを備えている。
【0059】
搬送部540は、巻出方向において、含浸部24の下流側に配置されており、一対の搬送ロール542、544を有している。搬送ロール542、544は、図示せぬ駆動手段から駆動力が伝達されて、周方向に回転するようになっている。なお、搬送ロール542、544は、熱源を備えていない。
【0060】
また、制御部516は、造形物の三次元データから作成された複数の層データに従って、ヒータ28a、スクリュー28b、ヒータ26d、搬送ロール542、544、及び移動ユニット18を制御する(図8参照)。
【0061】
〔造形物の造形方法〕
造形装置10、510を用いて造形物を造形する造形方法では、制御部16、516が各部を制御する。そして、造形物の三次元データから作成された複数の層データに従って、移動ユニット18は、台部14を装置奥行方向へ移動させつつ、台部14を装置幅方向へ往復移動させる。さらに、排出部50は、線状の造形材100を加熱しつつ、一筆書きで造形材100を上面14aに排出し、また、排出された造形材100は固化する。上面14aに造形材100が並べられることで形成された層が一層形成されると、移動ユニット18は、台部14を下方へ移動させ、前述した工程を繰り返し、層を複数重ねることで、造形物が造形される。
【0062】
具体的に、図7に示す造形装置510を用いた場合には、回転する一対の搬送ロール542、544が、リール20から繊維束110を巻き出し、繊維束110を搬送する。一方、図1に示す造形装置10を用いた場合には、回転する一対の加熱ロール42、44が、リール20から繊維束110を巻き出し、繊維束110を搬送する。
【0063】
そして、造形装置10、510の樹脂送出部28では、回転するスクリュー28bが、ヒータ28aによって加熱された樹脂を通過部26の滞留部26bに送り出す。また、通過部26は、受入口26aから受け入れて滞留部26bを通過する繊維束110に樹脂を含浸させる。さらに、通過部26は、樹脂が繊維束110に含侵した線状の造形材100を排出ヘッド26cから排出する。
【0064】
図7に示す造形装置510を用いた場合には、回転する一対の搬送ロール542、544が、通過部26から排出された造形材100を挟み込んで搬送する。これにより、一対の搬送ロール542、544は、円形断面(図2(B)参照)を維持した状態で造形材100を搬送する。さらに、排出部50は、線状の造形材100を加熱しつつ上面14aに排出する。上面14aに層が一層形成されると、移動ユニット18は、台部14を下方へ移動させ、前述した工程を繰り返し、層を複数重ねることで、造形物が造形される。これにより、造形装置510を用いた場合には、図6(B)に示されるように、断面円形の造形材100が、台部14の上面14aに積層される。
【0065】
これに対して、図1に示す造形装置10を用いた場合には、回転する一対の加熱ロール42、44が、通過部26から排出された造形材100を加熱しながら挟み込んで搬送する。さらに、加熱ロール44が、造形材100を加熱ロール42へ加圧する。これにより、一対の加熱ロール42、44は、図2(B)(C)に示されるように、造形材100の断面形状を円形状から扁平形状として、造形材100の断面を小さくする。
【0066】
なお、断面の大きさについては、例えば、一走査電子顕微鏡(SEM)、デジタルマイクロスコープ等で断面観察(写真を取り)を行い、この画像上で寸法測定を行うことで判断することができる。測定については、一対の加熱ロール42、44によって搬送される前の状態のサンプルと、搬送された後の状態のサンプルとを測定する。
【0067】
さらに、排出部50は、線状の造形材100を加熱しつつ上面14aに排出する。上面14aに層が一層形成されると、移動ユニット18は、台部14を下方へ移動させ、前述した工程を繰り返し、層を複数重ねることで、造形物が造形される。
【0068】
ここで、制御部16は、造形材100の断面の一方向(長手方向)が上面14aに沿うように、台部14を移動させる。換言すれば、制御部16は、造形材100の扁平平面100aが、上面14aと接触又は対向するように、移動ユニット18を制御して台部14を移動させる。これにより、造形装置10を用いた場合には、図6(A)に示されるように、断面が扁平形状の造形材100は、扁平平面100a同士が接触するように台部14の上面14aに積層される。
【0069】
〔評価〕
次に、造形装置10を用いて造形されたテストピースと、造形装置510を用いて造形されたテストピースとを用いて曲げ弾性率を夫々評価した。曲げ弾性率については、引張り試験機を使用して、JIS−K7171、及びIS0178に準じた方法で評価した(測定した)。図5には評価結果がグラフで示されている。グラフの縦軸は、曲げ弾性率の大小とされている。このグラフから分かるように、造形装置10を用いて造形されたテストピース(造形物)の曲げ弾性率が、造形装置510を用いて造形されたテストピース(造形物)の曲げ弾性率と比して高くなっている。
【0070】
つまり、造形装置10を用いて造形された造形物は、造形装置510を用いて造形された造形物と比して、外力に対する変形量が小さい。換言すれば、造形装置10を用いて造形された造形物は、造形装置510を用いて造形された造形物と比して、変形に対する抵抗力が大きい。つまり、造形装置10を用いて造形された造形物は、造形装置510を用いて造形された造形物と比して、強度が高い。
【0071】
(まとめ)
以上説明したように、造形装置10では、一対の加熱ロール42、44によって、造形材100の断面が小さくなることで、繊維同士を接着させる接着強度が高くなる。これにより、加圧されて断面が小さくなった造形材100は、加圧される前の造形材100と比して、変形に対する抵抗力が大きくなる。
【0072】
つまり、連続繊維の束に樹脂を含侵させた後、その断面形状を維持した状態で、造形材100を台部14に排出する場合と比して、造形物を構成する造形材100の強度が高くなる。
【0073】
また、造形装置10では、連続繊維の束に樹脂を含侵させた線状の造形材100を加圧、加熱して造形材100の断面を小さくする。このため、例えば、加圧するだけで造形材の断面を小さくする場合と比して、断面を小さくするための加圧力が弱くなる。
【0074】
また、造形装置10では、一対の加熱ロール42、44によって、造形材100の断面が小さくされる。このため、例えば、加熱工程と加圧工程とが分かれている場合と比して、造形材100の断面が簡易な構成で小さくなる。
【0075】
また、造形装置10では、一対の加熱ロール42、44によって造形材100が搬送されることで、排出部50から造形材100が排出される。このため、例えば、加熱ロールとは別に造形材を搬送する搬送部材を設ける場合と比して、部品点数が削減される。
【0076】
また、造形装置10では、一対の加熱ロール42、44によって、造形材100の断面の一方向の長さが、一方向に対して交差する交差方向の長さと比して長くなる。このため、例えば、造形材100の断面の一方向が、上面14aに沿うように、造形材100を上面14aに排出することで、造形材の断面が円形状の場合と比して、積層される造形材100同士の接触面積が増える。このため、上面14aに排出される造形材の断面が円形状の場合と比して、積層される造形材100同士の接触強度が高くなることで、造形物の強度が高くなる。
【0077】
また、造形装置10では、一対の加熱ロール42、44によって、造形材100の断面が扁平形状となる。このため、例えば、扁平平面100aが、上面14aと接触又は対向するように、造形材100を上面14aに排出することで、造形材の断面がひし形形状で長手方向が上面14aと沿う場合(図11参照)と比して、積層される造形材100同士の接触面積が増える。このため、上面14aに排出される造形材の断面がひし形形状で長手方向が上面14aと沿う場合と比して、積層される造形材100同士の接触強度が高くなることで、造形物の強度が高くなる。
【0078】
また、造形装置10では、制御部16が移動ユニット18を制御して、造形材100の断面の一方向(長手方向)が上面14aに沿うように、台部14を移動させる。このため、例えば、造形材100の断面の交差方向(短手方向)が上面14aに沿う場合と比して、造形物の強度が低くなるのが抑制される。
【0079】
また、造形装置10では、制御部16が移動ユニット18を制御して、造形材100の扁平平面100aが、上面14aと接触又は対向するように、台部14を移動させる。このため、例えば、造形材100の断面の交差方向(短手方向)が上面14aに沿う場合と比して、造形物の強度が低くなるのが抑制される。
【0080】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、一対の加熱ロール42、44によって、図2(B)(C)に示されるように、造形材100の断面形状を円形状から扁平形状とした。しかし、例えば、扁平形状とした場合と比して、加熱ロール42、44の温度を低くこと、及び加熱ロール44の加圧力を小さくすることの少なくとも一方を実施することで、図9に示されるように、造形材100の断面形状を円形状から楕円形状としてもよい。また、加熱ロールの断面形状を変更することで、造形材100の断面形状を円形状から楕円形状としてもよい。
【0081】
ここで、楕円形状とは、一方向の長さ(長径)が、一方向に対して交差する交差方向の長さ(短径)と比して長く、外形線が凸状の湾曲線で形成されている形状である。このように、造形材を楕円形状とし、造形材100の断面の一方向が、上面14aに沿うように、造形材100を上面14aに排出することで、積層される造形材100同士の接触面積が増える(図9参照)。このため、上面14aに排出される造形材の断面がひし形形状で長手方向が上面14aと沿う場合(図11参照)と比して、積層される造形材100同士の接触強度が高くなることで、造形物の強度が高くなる。
【0082】
また、上記実施形態では、造形材100において交差方向を向いた扁平平面100aが、上面14aと接触又は対向するように、台部14を移動させた。しかし、図10に示されるように、造形材100において扁平平面100aと比して短い短面100bが、上面14aと接触又は対向するように、台部14を移動させてもよい。この場合は、扁平平面100aが上面14aと接触又は対向する場合と比して、積層される造形材100同士の接触強度が低くなるが、造形材の断面が円形状の場合と比して、積層される造形材100同士の接触強度が高くなる。
【0083】
また、上記実施形態では、台部14を排出部50に対して移動させたが、排出部及び台部の少なくても一方を移動させることで、台部と排出部とを相対的に移動させてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、台部14の上面14aに造形材100を排出したが、キャビ型にキャビ面に造形材100を排出して造形部材を造形してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では 加熱ロール42と、加熱ロール42に造形材を加圧しながら加熱する加熱ロール44とを用いることで加熱工程と加圧工程とを一の工程で行い造形材100の断面を小さくしたが、加熱工程と加圧工程とを分けてもよい。しかし、この場合には、一対の加熱ロール42、44を用いて造形材100の断面を小さくすることで奏する作用は奏しない。
【0086】
また、上記実施形態では、加熱搬送部40は、造形材100の断面の一方向の長さが、断面において一方向に対して交差する交差方向の長さと比して長くなるように、断面円形状の造形材の断面を小さくした。しかし、加熱搬送部が、断面円形状のまま造形材の断面を小さくしてもよい。この場合には、造形材の断面の一方向の長さが、交差方向の長さと比して長くなることで奏する作用は奏しない。
【0087】
また、上記実施形態では、造形装置10は、含浸部24を備えたが、含浸部を備えなくてもよい。連続繊維の束に樹脂が含侵した造形材を一対の加熱ロール42、44によって搬送させればよい。
【符号の説明】
【0088】
10 造形装置
14 台部(被排出部の一例)
14a 上面(被排出面の一例)
24 含浸部
40 加熱搬送部(縮小部の一例)
42 加熱ロール
44 加熱ロール(他の加熱ロールの一例)
50 排出部
100 造形材
100a 扁平平面
110 繊維束(連続繊維の束)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11