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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-2310(P2020-2310A)
(43)【公開日】2020年1月9日
(54)【発明の名称】硬質表面洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/72 20060101AFI20191206BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20191206BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20191206BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20191206BHJP
【FI】
   C11D1/72
   C11D1/90
   C11D3/30
   B08B3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-125085(P2018-125085)
(22)【出願日】2018年6月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390003001
【氏名又は名称】川研ファインケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 修男
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB51
3B201BB09
3B201BB21
3B201BB93
3B201BB95
4H003AC10
4H003AD04
4H003BA12
4H003DA05
4H003EB16
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】従来の浴室に用いられる硬質表面洗浄剤よりも洗浄力が高く、擦ることなく短時間で汚れを除去することが出来る洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)分岐構造を持ち特定のアルキル鎖長であるヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル化合物を0.1〜10重量部
(B)アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種を5〜40重量部
(C)キレート剤を0.1〜10重量部
(D)水を40〜94.8重量部
を含有しpHが6〜8であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)及び(2)で表されるヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル化合物:
【化1】
[但し、上記式(1)及び(2)において、R1は2〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を表し、R2、R3は、水素原子又はいずれか一方が1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]の少なくとも1種を0.1〜10重量部
(B)アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種を5〜40重量部
(C)キレート剤を0.1〜10重量部
(D)水を40〜94.8重量部
を含有しpHが6〜8であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記両性界面活性剤がアミドプロピルベタインである請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
浴室の硬質表面洗浄に用いることを特徴とする請求項1〜2に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗浄に用いられる洗浄剤組成物に関する。特に、石鹸カスと皮脂の複合した強固な汚れに対して、直接塗布または、噴霧した泡を、汚れ部位に付着させることにより擦ることなく短時間で汚れを除去する高い洗浄力を有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
文化的な生活を行う上で浴室での身体の洗浄は、衛生状態を維持する上で欠かせない行為となっている。一方で、衛生環境を維持するための浴室は、高温多湿であることからカビ等の雑菌が繁殖しやすいこと及び、身体洗浄に用いられた洗浄剤と皮脂汚れとの複合物である石鹸カス等により汚れやすく、これらの汚れは除去が難しい性格を有しているため、汚れの除去には多大な労力を要する。
【0003】
これらの複合汚れを、除去するため多数の提案がなされており、例えば特許文献1では、浴室汚れの洗浄に用いられる洗浄剤にカルビトール類を配合することが提案されており、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び脂肪酸塩を含有する液体洗浄剤組成物が記載されている。特許文献2には、有機酸及び/又はその塩、ベタイン型両性界面活性剤、カチオン性抗菌剤、溶剤を含有する酸性抗菌洗浄剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−53092号公報
【特許文献2】特開2012−111846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献記載の手法は、汚れの除去効果は満足するものであったが、汚れの除去に時間を要し短時間で清掃を完了させるのには、難があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、汚れの除去速度に、溶剤の関与が密接にかかわっていることに着目し、皮脂汚れや石鹸カスを低濃度でありかつ短時間で分散可能な溶剤を、鋭意検討を行った結果、直鎖のグリコールエーテルであるカルビトール類に比べて、分岐構造を持ち特定のアルキル鎖長であるアルキルグリコール多価アルコールエーテルが、特段の除去速度を有することを見出し、直接塗布または、噴霧した泡を、汚れ部位に付着させることにより擦ることなく短時間で汚れを除去する高い洗浄力を有する洗浄剤組成物を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記の発明を提供する。
(a)(A)下記一般式(1)及び(2)で表されるヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル化合物:
【化1】
[但し、上記式(1)及び(2)においてR1は、2〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を表し、R2、R3は、水素原子又はいずれか一方が1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]の少なくとも1種を0.1〜10重量部
(B)アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種を5〜40重量部
(C)キレート剤を0.1〜10重量部
(D)水を40〜94.8重量部
を含有しpHが6〜8であることを特徴とする洗浄剤組成物。
(b)前記両性界面活性剤がアミドプロピルベタインである(a)に記載の洗浄剤組成物。
(c)浴室の硬質表面洗浄に用いることを特徴とする(a)〜(b)記載の洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
特定のアルキル鎖長のヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル化合物の少なくとも1種を、0.1〜10重量部を用いることにより、短時間で汚れ成分を洗浄剤中に分散させ硬質表面より除去する特段の効果が得られる。アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種を5〜40重量部含むことにより、発泡性に優れた泡状洗浄剤として硬質表面の洗浄に用いることが出来る。キレート剤を0.1〜10重量部含むことにより水溶性に乏しい金属塩を、水溶性の洗浄剤組成物中に分散させ硬質表面から除去することが出来る。水を40〜94.8重量部含むことにより硬質表面から除去した汚れ成分を、洗浄剤組成物中に容易に分散させることが出来、洗浄後に容易にすすぎ落とすことが出来る。pHが6〜8であることにより洗浄対象の硬質表面にダメージを与えることはなく、使用者の皮膚トラブルを起こす可能性を低減させることが出来る。
【発明を実施する為の形態】
【0009】
以下に具体例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの説明により何ら限定されるものでは無い。
本発明は、以下の特徴を有している洗浄剤組成物に関する。
(a)(A)下記一般式(1)及び(2)で表されるヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル化合物:
【化1】
[但し、上記式(1)及び(2)においてR1は、2〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を表し、R2、R3は、水素原子又はいずれか一方が1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]の少なくとも1種を0.1〜10重量部
(B)アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種を5〜40重量部
(C)キレート剤を0.1〜10重量部
(D)水を40〜94.8重量部
を含有しpHが6〜8であることを特徴とする洗浄剤組成物。
(b)前記両性界面活性剤がアミドプロピルベタインである(a)に記載の洗浄剤組成物。
(c)浴室の硬質表面洗浄に用いることを特徴とする(a)〜(b)記載の洗浄剤組成物。
【0010】
本発明の組成物(A)は、下記一般式(1)及び(2)で示されるヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル化合物の1種を0.1〜10重量部含む。:
【化1】
[但し、上記式(1)及び(2)においてR1は、2〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を表し、R2、R3は、水素原子又はいずれか一方が1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]
本発明に使用されるヒドロキシアルキル多価アルコールエーテルは、炭素数2〜5の1,2−ジオールまたは、その縮合物と、炭素数4〜6の1,2−エポキシ化合物とを、触媒の存在下に、或いは無触媒条件下で、縮合反応させることにより調製することができる。
【0011】
前記炭素数2〜5の1,2−ジオールまたは、その縮合物と、炭素数4〜6の1,2−エポキシ化合物との縮合反応に用いられる酸性触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、三フッ化ホウ素エーテル錯体などが用いられ、その使用量は、反応に供されるエポキシ化合物のモル量に対し、0.0001〜0.1倍モルであることが好ましく0.0001倍モルを下回ると反応の進行が遅く、0.1倍モルを上回ると反応の制御が困難となり好ましくない。また塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、金属ナトリウム、金属カリウム、金属リチウムなどが用いられ、その使用量は、反応に供されるエポキシ化合物のモル量に対し、0.0001〜0.1倍モルであることが好ましく0.0001倍モルを下回ると反応の進行が遅く、0.1倍モルを上回ると反応の制御が困難となり好ましくない。
前記縮合反応は、好ましくは30〜150℃の温度において10分〜2日間で行われることが好ましい。反応温度が30℃を下回ると反応が進行せず、150℃を超えると反応物が著しく着色し好ましくない。反応圧力についての格別の制限はないが、一般に常圧から消防法に定める一圧反応装置の許容範囲内の条件下において縮合反応が進行する。反応が完了したことは、反応物をガスクロマトグラフ(GCとも称する)で分析し、原料のピークが消失していることで確認することが出来る。
【0012】
炭素数2〜5の1,2−ジオールまたは、その縮合物は、特に限定されるわけではないが、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールを用いることで高い洗浄力を示し、単独に用いられてもよく、又はその2種以上の混合物として用いられてもよい。前記炭素数2〜5の1,2−ジオールの縮合物を用いる場合には、2〜3モルの縮合物が望ましく、3モルを超える縮合物を用いると洗浄力が低下する場合がある。炭素数5を上回ると洗浄力が、向上しない場合がある。炭素数4〜6の1,2−エポキシ化合物は、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサンが例示され、好ましくは1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサンから選ばれる。これらの化合物は単独に用いられてもよく、又はその2種以上の混合物として用いられてもよい。炭素数が、6を超えると洗浄効果が低下する場合がある。
好ましい組成物(A)としては、ペンチルグリコールヒドロキシエチルエーテル、ペンチルグリコールヒドロキシジエチルエーテル、ペンチルグリコールヒドロキシプロピルエーテル、ペンチルグリコールヒドロキシジプロピルエーテル、ヘキシルグリコールヒドロキシエチルエーテル、ヘキシルグリコールヒドロキシジエチルエーテル、ヘキシルグリコールヒドロキシプロピルエーテル、ヘキシルグリコールヒドロキシジプロピルエーテルが例示できる。
【0013】
本発明の組成物(A)は、0.1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることが更に好ましい。0.1重量部を下回ると十分な洗浄効果が得らない場合があり、10重量部を超えて配合を行っても洗浄効果の向上が見られない場合がある。
【0014】
本発明の組成物(B)として、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種を5〜40重量部を含む。アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種を5〜40重量部を含むことによって、洗浄剤組成物の発泡性が上がり垂直な硬質表面に対して、泡状に噴霧することにより洗浄剤組成物を滞留させることが出来る。アニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる1種または複数種が、5重量部未満では実用的な泡を維持できない場合があり、40重量部を超えると洗浄後のすすぎ洗い性に劣る場合がある。
本発明の洗浄剤組成物に使用できるアニオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、長鎖脂肪酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミンが例示され、両性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アミドベタイン、アルキルアミンオキシドを例示することが出来る。
特に、目や皮膚に対する刺激性が少なく幅広いpH領域で起泡力の高い両性界面活性剤が好ましく、アミドベタインが更に好ましい。アミドベタインとしては、広く市販されているものを使用することが出来、炭素数8〜22のアルキル鎖長を持つものが例示され、単独のアルキル鎖長、複数種の混合または、天然油脂由来の脂肪酸組成に由来するアルキル組成のものを用いることが出来る。
【0015】
本発明の組成物(C)として、キレート剤を0.1〜10重量部含む。キレート剤を、1〜5重量部含むことによって優れた洗浄効果が得られる。キレート剤が0.1重量部未満では、洗浄効果が見られない場合があり、10重量部を超えて添加しても洗浄効果が向上しない場合がある。
本発明の組成物(C)であるキレート剤としては、特に限定されるものではないが、以下の(1)〜(5)に示した化合物の1種以上が挙げられる。
【0016】
(1)オルソリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、フィチン酸等のリン酸系化合物、及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩又はアルカノールアミン塩。
(2)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸、及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩又はアルカノールアミン塩。
(3)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジェンコル酸等のアミノポリ酢酸、及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩又はアルカノールアミン塩。
(4)クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の化合物、及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩又はアルカノールアミン塩。
(5)アミノポリ(メチレンホスホン酸)、ポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)、及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩又はアルカノールアミン塩。
【0017】
上記キレート剤のうち、好ましいものはクエン酸やリンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸、ピロリン酸等の縮合リン酸、エチレンジアミン四酢酸等のアミノカルボン酸、及びそれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩又はアルカノールアミン塩であり、より好ましいものはクエン酸やリンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸、及びその塩、好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩又はアルカノールアミン塩である。
【0018】
本発明の組成物(D)として、水を40〜94.8重量部含む。水を40〜94.8重量部含むことによって、硬質表面に本発明の組成物を容易に塗布または、泡状にして付着させることが出来るだけでなく、洗浄後に容易に洗い流すことが出来る。水が40重量部未満では、洗浄剤組成物の流動性が低下しく塗布に難があるまたは、泡状に硬質表面に付着させるのに難がある場合があり、洗浄後にすすぎ洗いを行う際に多量の水を要する場合があり、94.8重量部を超えると洗浄剤成分の不足により洗浄効果が見られない場合がある。本発明に使用する水に特に制限はなく、常水を用いることが出来るが、洗浄剤組成物の性能を設計通りに発現させたい場合には、公知の手法にてイオン分を除去した精製水を用いるのがより好ましい。
【0019】
本発明の組成物のpHは、6〜8であることが好ましい。pHが6〜8であることによって、強固に硬質表面に固着しており水溶性をほとんど持たない石鹸カスや脂肪酸を、硬質表面を損傷することなく安全に除去することが出来る。pHが6未満では、金属で構成された硬質表面に使用するには難がある場合があり、8を超えると使用時に、手荒れ等が発生する場合がある。本発明の範囲にpHを調整するために用いる酸または、アルカリに特に制限はなく任意のものを用いることが出来、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、カルボン酸類、炭酸塩、ケイ酸塩、苛性ソーダ、苛性カリ、アルカノールアミン類、アルキルアミン類を、例示することが出来る。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物には、製品の付加価値を増大させるために、香料、色素、防腐剤、酸化防止剤等を任意に配合することが出来る。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、強固に硬質表面に固着しており水溶性に乏しい石鹸カスや脂肪酸を、短時間で効率的に除去することが出来ることから、特にこれらの汚れの除去が求められる浴室の硬質表面洗浄に用いることで、特段の効果を得ることが出来る。また、本発明の洗浄剤組成物は、従来の洗浄剤組成物に比べて短時間で水溶性に乏しい汚れ成分を、硬質表面より除去することが出来ることから、硬質表面に本発明の洗浄剤組成物を塗布または、泡状に噴霧後にふき取りや、擦り洗いを行うことなく、洗い流すことで洗浄を行うことが出来る。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物の使用方法は、特に限定されるものではないが、スプレー等を用いて泡状に洗浄対象に噴霧して使用することが好ましい。泡状に噴霧することにより垂直の硬質表面に対して、より多くの洗浄剤組成物を滞留させることが出来る。また、噴霧することにより一度のポンプ操作で、より広い範囲に洗浄剤組成物を、塗布することが可能となる。本発明の洗浄剤組成物を、ミスト状に噴霧して使用することもできるが、垂直の硬質表面に用いる際に、洗浄に十分な量の洗浄剤組成物を滞留させるのに難がある場合があり、泡状に噴霧する場合に比べて微小な液滴が長時間空中に滞留する場合があり使用者が意図せずに吸引する可能性が上昇する。
【0023】
本発明の組成物(A)の汚れ成分の洗浄性は、(a)フタ付きの試験管に汚れ成分(ステアリン酸Ca、オレイン酸、トリオレインの各成分)を0.05g量りとる。(b)組成物(A)または、比較対象成分の各濃度の水溶液を10mL加える。(c)フタをして30秒間上下に浸透する。(d)1分間静置後に外観を観察し、◎:完全に分散する。○:分散するが、わずかに沈殿(または分離)が見られる。△:わずかに分散する。×:分散しない。の4段階で評価することで確認することが出来る。
【0024】
比較の結果、表1に示す通り本発明の組成物(A)であるヘキシルグリコールヒドロキシプロピルエーテルは、既存のカルビトール類に比べて低い濃度であっても各汚れ成分を分散させるのに特段の効果を示した。従来用いられているブチルカルビトール類に比べて、低濃度においても同等の洗浄効果を示すことから組成物を構成する上では、配合量を減らすことで洗浄後のすすぎ性を、向上させることが出来る。
【0025】
【表1】
【実施例】
【0026】
以下、具体的に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、使用した試薬は、特に記載のない限り全て関東化学株式会社製の試薬を用いた。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物の洗浄力は、以下の方法で評価した。
テストピース:FRP製の縦6cm、横2cm、厚さ2mmの板
汚れ成分モデル液:ステアリン酸カルシウム(4.75g)、アルブミン(牛血清由来 0.25g)、オレイン酸(2.50g)、トリオレイン(2.50g)を2−プロパノール60mLに溶解してモデル液とする。
試験試料作成:テストピースを、汚れ成分モデル液に3秒間浸漬した後に、25℃で1時間乾燥する操作を5回繰り返した後に、50℃で10時間乾燥したものを試験試料とする。
試験方法:スプレー容器を用いて洗浄組成物を試験試料に塗布して1分間静置後、水道水に1分間浸漬することですすぎ洗いを行い、50℃で10時間乾燥し、試験前後の重量変化を測定し重量減少率を洗浄率とする。同一の試験を5回行い、平均値を比較することにより洗浄力評価を行った。
【0028】
(製造例1)ヘキシルグリコールヒドロキシプロピルエーテルの合成
撹拌装置、温度計を備えた300mL四ツ口フラスコに、1,2−エポキシヘキサン(50.01g、0.499mol)、75%硫酸(0.21g、富士フイルム和光純薬株式会社製)、プロピレングリコール(115.13g、1.50mol、エポキシの3.0eq.)を仕込んでから80℃に昇温後、同温度で一晩撹拌した。翌日、GCで原料の1,2−エポキシヘキサンのピークが消失したことを確認し、室温まで冷却した。炭酸Na(1.01g)を加えて1時間撹拌し、pH試験紙でpH5以上になっていることを確認してから、減圧により過剰に仕込んだプロピレングリコールを留去した。最後に、桐山ロートを用いて固形物を除去して目的物を得た。収量は77.41g、収率は88.0%(理論収量:88.00g)であった。
GC分析は、以下に示す条件で行った。
装置:株式会社島津製作所 GC−2014
カラム:DB−1(J&W社製)
カラム温度:35℃から毎分15℃で300℃まで昇温
注入口温度:280℃
検出器温度:300℃
キャリアガス:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FIDとも称する)
【0029】
(製造例2)ペンチルグリコールヒドロキシプロピルエーテルの合成
撹拌装置、温度計を備えた300mL四ツ口フラスコに、1,2−エポキシペンタン(40.00g、0.464mol、75%硫酸(0.18g、富士フイルム和光純薬株式会社製)、プロピレングリコール(108.18g、1.39mol、エポキシの3.0eq.)を仕込んでから80℃に昇温後、同温度で一晩撹拌した。翌日、GCで原料の1,2−エポキシペンタンのピークが消失したことを確認し、室温まで冷却した。炭酸Na(1.07g)を加えて1時間撹拌後、pH試験紙でpH5以上になっていることを確認してから、減圧により過剰に仕込んだプロピレングリコールを留去した。最後に、桐山ロートを用いて固形物を除去して目的物を得た。収量は64.49g、収率は85.6%(理論収量:75.34g)であった。
【0030】
モデル汚れを用いた洗浄力の比較
製造例1または、2で合成した洗浄剤成分A、比較対象として既存の溶剤であるブチルカルビトールまたは、エチルカルビトールを用いて、表2に記載の割合で総量が100gとなるよう洗浄剤組成物を作成し(洗浄剤組成物中の各重量部は調整後の純分換算で表記)、モデル汚れを用いて洗浄力評価を行った。
洗浄剤組成物中のラウリン酸アミドプロピルベタインは、川研ファインケミカル株式会社製のソフタゾリンLPB(30%水溶液)を使用した。また、表2の組成となるよう各成分を秤量しマグネチチックスターラーで30分間撹拌後、水酸化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いて、pHを7.0(25℃)に調整して作成した洗浄剤組成物を評価に用いた。
【0031】
洗浄剤組成物の洗浄力を比較したところ、表2に示す通り本願発明に記載の組成物(A)を用いた場合には、組成例1〜3の比較結果から5重量部、1重量部のいずれの組成でも、既存のブチルカルビトールおよびエチルカルビトールを用いた比較例1〜4の洗浄率を、同一使用量において上回る洗浄率を示した。特に組成物(A)を、1%用いた組成例2は、比較例2,4に比べて、高い洗浄率を示した。
【0032】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本洗浄剤組成物を用いると、従来よりも少ない洗浄剤を用いても高い洗浄効果を示すことから、擦り洗いを行うことなく浴室の洗浄を行うことが出来、排水による環境負荷を、低減することが出来る。浴室と類似の汚れが付着する、洗面台、シンク、トイレ等にも本発明を用いることが出来る。