特開2020-24129(P2020-24129A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社てつでんの特許一覧 ▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

特開2020-24129検査装置および架線用保守管理システム
<>
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000003
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000004
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000005
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000006
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000007
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000008
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000009
  • 特開2020024129-検査装置および架線用保守管理システム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-24129(P2020-24129A)
(43)【公開日】2020年2月13日
(54)【発明の名称】検査装置および架線用保守管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/50 20200101AFI20200121BHJP
   B60M 1/28 20060101ALI20200121BHJP
【FI】
   G01R31/02
   B60M1/28 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-148443(P2018-148443)
(22)【出願日】2018年8月7日
(71)【出願人】
【識別番号】391054464
【氏名又は名称】株式会社てつでん
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169029
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】山本 正弘
(72)【発明者】
【氏名】大串 裕郁
(72)【発明者】
【氏名】藤垣 元裕
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】石川 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英明
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA34
2G014AB23
2G014AB35
2G014AC19
(57)【要約】
【課題】天候に左右されることなくモニタリングを維持することができる検査装置の提供。
【解決手段】検査装置16は、架線に設置する検査装置であって、検出部である温度スイッチ17と、温度スイッチ17から出力される情報を無線で出力する無線回路162と、少なくとも無線回路162に給電する振動発電素子160とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線に設置する検査装置において、
検出部と、
前記検出部から出力される情報を無線で出力する出力部と、
少なくとも前記出力部に給電する振動発電装置とを備える、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記検出部から出力される情報は前記架線の状態を含む、検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記検出部から出力される情報は、前記検出部で検出された前記架線に関係する物理量である、検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置において、
前記検出部は前記架線の温度を検出する温度センサを含み、
前記温度センサで検出された温度が所定温度以上か否かを前記情報として記憶する記憶部を備える、検査装置。
【請求項5】
請求項3に記載の検査装置において、
前記検出部は、前記架線の温度に感応して開くまたは閉じるスイッチを含み、
前記出力部は、前記情報として前記スイッチの開閉状態を出力する、検査装置。
【請求項6】
請求項1に記載の検査装置において、
前記検出部は、温度、日射量、気圧、降水量、放射線量、風量、風向、湿度、花粉量、PM2.5のいずれか1つを計測するセンサである検査装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の検査装置において、
前記出力部は、前記情報を繰り返し外部へ送信する、検査装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の検査装置において、
前記架線から伝達される振動の周波数が0Hzより大きく100Hz以下である振動領域で使用される、検査装置。
【請求項9】
電車用の架線に設置された請求項1から8までのいずれか1項に記載の検査装置を備える、架線用保守管理システム。
【請求項10】
請求項9に記載の架線用保守管理システムにおいて、
前記電車用の架線はき電線であり、
前記き電線は、所定長さを有する複数本の単位き電線をそれぞれ圧着接続部材で接続して成り、前記検査装置は圧着接続部材のそれぞれに設けられる、架線用保守管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の架線用保守管理システムにおいて、
前記き電線はトンネル内に敷設されたき電線である、架線用保守管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および架線用保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道などのインフラストラクチャーは、その管理をする為に、構造物のヘルスモニタリングを行う必要がある。変電所から列車に送電するき電線では、圧着接続管に電線を挿入して圧着することで電線同士を接続し、き電線の延長を図っている。このように圧着接続する構成では、その圧着接続部に接続不良や腐食等があると接触抵抗が増大し、圧着接続部が異常に発熱し、それを放置するとき電線の断線を招くという問題があった。
【0003】
非特許文献1に記載の電車線路モニタリングシステムでは、温度センサ、無線機および太陽光パネルを備えた測定装置をき電線の圧着接続部に設け、圧着接続部の温度を温度センサで計測して無線機で送信し、列車屋根上に搭載したリーダにより測定データを無線にて収集するようにしている。この測定装置では、太陽光パネルで発電した電力をキャパシタに蓄え、その電力を測定装置の電源として利用している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】菅野 陽二、外2名、「電車線路モニタリングシステムの実用化」、JR EAST Technical Review、2014年、No.48、P29−P32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、太陽光パネルによる電力を電源として使用する場合、発電量は天候に左右されやすいという欠点を有し、夜間やトンネル内またはパネル上に積雪した場合には発電が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様による検査装置は、架線に設置する検査装置であって、検出部と、前記検出部から出力される情報を無線で出力する出力部と、少なくとも前記出力部に給電する振動発電装置とを備える。
本発明の第2の態様による架線用保守管理システムは、電車用の架線に設置された上記態様に記載の前記検査装置を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天候に左右されることなく検査装置によるモニタリングを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明によるき電線の保守管理システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、圧着接続部の拡大図である。
図3図3は、検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図4図4は、振動発電素子の一例を示す概念図である。
図5図5は、振動実験における充電回路を示す図である。
図6図6は、計測された充電電圧と加速度とを示す図である。
図7図7は、振動加速度の周波数スペクトルを示す図である。
図8図8は、変形例1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明によるき電線の保守管理システムの一例を示す模式図である。電気車10には、トロリー線11からパンタグラフ12を介して電力が供給される。トロリー線11には、変電所13とトロリー線11とを接続する配線であるき電線14が接続されている。このき電線14により変電所13からトロリー線11へ送電される。
【0010】
き電線14は、2つの電線を圧着接続部材15により接続することにより延長される。各圧着接続部材15には、き電線14の圧着接続部の温度を計測する検査装置16が設けられている。検査装置16は無線回路(不図示)を備えており、計測データは無線により送信される。検査装置16から送信された計測データは、き電線14を管理する保守端末(不図示)に取り込まれる。
【0011】
図2は、圧着接続部の拡大図である。圧着接続部材15は管状の金属スリーブであり、接続すべき2つのき電線14a,14bを圧着接続部材15内に挿入し、挿入部分を圧縮することによりき電線14a,14bと圧着接続部材15とを圧着する。この圧着接続部に接続不良や腐食等が生じたりすると抵抗が大きくなり、圧着接続部(圧着接続部材15やき電線14の圧着部分)が異常に発熱して圧着接続部材15の温度が上昇する。
【0012】
圧着接続部材15には、圧着接続部の異常発熱による温度上昇を検出する温度スイッチ17を備える検査装置16が設けられている。温度スイッチ17はケース16c内に設けられ、検査装置16は、ケース16cを介して固定部材16aによって圧着接続部材15に固定されている。温度スイッチ17は、形状記憶合金で形成された開閉端子170と、固定端子171を備えている。開閉端子170は、電気絶縁性があり熱伝達特性に優れた熱伝達部材172を介して圧着接続部材15に接触している。圧着接続部材15はケース16cおよび固定部材16aに接し、発熱した熱はケース16cおよび固定部材16a、さらに熱伝達部材172を介して温度スイッチ17に伝熱される。ケース16cおよび固定部材16aも電気絶縁性および熱伝導性の良い材料を用いるのが好ましい。
【0013】
形状記憶合金で形成された開閉端子170は、常温では破線で示すような平板形状となっていて、温度スイッチ17は開状態になっている、一方、異常発熱により圧着接続部材15の温度が上昇して異常温度閾値として設定された所定温度(例えば、70℃)を超えると、開閉端子170は、図示するような予め記憶された形状に変形して固定端子171に接触する。その結果、温度スイッチ17は閉状態となる。なお、温度が所定温度以下に戻った場合でも、開閉端子170は図2に示す形状を維持し、温度スイッチ17の閉状態が維持される。
【0014】
なお、図2に示した場合とは逆に、常温では実線で示すように開閉端子170が固定端子171に接触した状態(閉状態)とされ、圧着接続部材15が所定温度を超えた場合に、破線で示すような形状に変形して開状態となる構成であっても良い。すなわち、形状記憶合金を用いた温度スイッチ17は、圧着接続部材15が所定温度を超えると開状態から閉状態へ変化して閉状態を維持するか、または、閉状態から開状態へと変化して開状態を維持し、圧着接続部材15が所定温度を超えたことを記憶する機能を有している。
【0015】
図3は、検査装置16の概略構成を示すブロック図である。検査装置16は、前述した温度スイッチ17に加えて、無線回路162と、振動発電装置としての振動発電素子160および電源回路161とを備えている。無線回路162には、振動発電素子160で発電された電力が電源回路161を介して供給される。電源回路161は、整流回路やDC−DCコンバータや蓄電素子などを備える。
【0016】
温度スイッチ17は、異常温度閾値として設定された所定温度より低い温度では図3に示すように開状態となっている。このとき、無線回路162には、抵抗Rにより電圧VcにプルアップされたHigh信号が入力される。一方、温度が所定温度以上に上昇すると、温度スイッチ17は図2に示したような閉状態となり、Low信号が無線回路162に入力される。なお、温度スイッチ17が閉状態→開状態のように動作する構成とした場合には、所定温度以上の場合にはHigh信号が無線回路162に入力されることになる。なお、電圧Vcは電源回路161により与えられる。また、電源回路161の充電可能な二次電池を蓄電素子として設けておき、二次電池から無線回路162へ電力を供給したり、電圧Vcを与えたりしても良い。
【0017】
無線回路162は、定期的にスリープ状態から自動起動して(例えば、1日1回のインターバルで起動)温度スイッチ17の開閉情報を送信する。送信後は、再びスリープ状態となる。無線回路162は、High信号が入力されているときには温度スイッチ17が開状態であることを開閉情報として送信し、Low信号が入力されているときには温度スイッチ17が閉状態(すなわち異常温度状態)であることを開閉情報として送信する。開閉情報には、温度スイッチ17の開閉状態を示す開閉データに加えて検査装置16固有の番号(ここでは、識別子あるいはID番号と呼ぶことにする)もデータとして付加される。インターネットや専用回線等を介して開閉情報を取得した管理端末は、開閉情報に含まれる開閉データとID番号とから、き電線14に設けられた圧着接続部材15の温度が正常か異常かを圧着接続部材15毎に把握することができる。
【0018】
また、無線回路162は、圧着接続部材15の温度が正常か異常かに関係なく一定間隔で開閉情報を送信する設定になっている。そのため、開閉情報の送信が途絶えた場合には、そのことから振動発電素子160、電源回路161および無線回路162のいずれかに故障が発生したことを把握することができる。すなわち、検査装置16の故障の把握が可能となり、検査装置故障に対して速やかに対処することができる。
【0019】
図4は、振動発電素子160の一例を示す概念図である。振動発電素子160は面外振動するカンチレバー型の振動発電素子であり、振動と電気との変換部分にエレクトレット膜を用いた静電型の発電素子である。ベース部200には、可動櫛歯電極201と固定櫛歯電極202とが形成されている。可動櫛歯電極201または固定櫛歯電極202の少なくとも一方には、エレクトレット膜が形成されている。可動櫛歯電極201は弾性変形するカンチレバー203を介してベース部200に固定されている。
【0020】
振動発電素子160に外部から振動が加わるとカンチレバー203がz方向に撓み、可動櫛歯電極201が固定櫛歯電極202に対して振動して電力が発生する。振動発電素子160の共振周波数は、例えば、カンチレバー203のバネ定数を変更することで所望の値に設定することができる。可動櫛歯電極201および固定櫛歯電極202は、配線204a,204bにより電源回路161に接続される。
【0021】
図5は、実際のき電線に取り付けて行った振動実験における、充電回路を示す図である。振動実験は、鉄道営業線に隣接した訓練施設におけるき電線を用いて行われた。なお、き電線に取り付けられる計測ユニットには、図5に示す振動発電素子260、充電回路(271,272)に加えて振動計測を行うための加速度計を設けた。計測ユニットは、ワイヤーを用いてき電線に取り付けた。図5に示すように、振動発電素子260からの電力を、全波整流回路271を通して静電容量22μFのキャパシタ272に蓄電した。キャパシタ272の電圧はインピーダンス変換器273を介してデータロガー274で記録した。振動発電素子260は共振周波数が33Hzであり、き電線の径方向振動に反応して発電を行う。
【0022】
図6は、データロガー274で計測された充電電圧(ラインL1)と、加速度計で計測された加速度とを示したものである。き電線は、列車不通過時は約0.05m/s以下で微振動しており、営業線を列車が通過したときには比較的大きな0.2m/s程度で振動することが分かった。充電電圧計測から、振動発電素子260は列車不通過時の微振動においても発電を行い、キャパシタ272へ蓄電していることが確認できた。列車通過時にはさらに大きな発電を行い、5分経過時の充電電圧は0.49Vであった。これは、エネルギーに換算すると2.6μJに相当する。
【0023】
図7は振動加速度の周波数スペクトルを示す図であり、周波数成分はほぼ100Hz以下であって40Hz以下の周波数成分が多く存在し、特に10Hz以下に成分が多いことが分かる。ウェーブレット解析により、列車不通過時は10Hz以下で振動しており、列車通過時には20〜40Hz程度で振動していると考えられる。振動発電においては、振動体であるき電線の周波数と振動発電素子の共振周波数が近い方が発電効率は良い。振動発電素子260は共振周波数が33Hzであるが、列車不通過時の効率が良くない状態(振動の周波数成分が10Hz以下)でも蓄電が可能であることが分かった。今回の回収エネルギーを24時間換算すると0.73mJとなる。
【0024】
図5に示した実験では、実験を営業線に隣接した訓練施設におけるき電線で行ったので、営業線のき電線の振動と比べると弱まっていると思われ、実際にはより多くのエネルギーを回収できると考えられる。振動発電素子のパワーは加速度の二乗に比例するので、無線通信を間欠的に行うのに十分なエネルギー(数mJ)を得られる可能性がある。
【0025】
(変形例1)
上述した実施の形態では、圧着接続部材15の温度を計測する検出部として形状記憶合金を用いた温度スイッチ17としたが、バイメタル温度スイッチのような温度スイッチを用いても良いし、サーミスタのような温度センサを用いても良い。ただし、バイメタル温度スイッチの場合には圧着接続部材15の温度が上述した所定温度になるとオン状態(閉状態)となり、その後、温度が所定値よりも低い値に低下するとオフ状態(開状態)戻ってしまう。すなわち、バイメタル温度スイッチの場合には、形状記憶合金を用いた温度スイッチ17のように圧着接続部材15の温度が所定値を超えたことを記憶する機能を備えていない。
【0026】
そこで、形状記憶合金を用いた温度スイッチ17を使用する場合と同様に、圧着接続部材15の温度が所定温度以上か否かの情報を無線送信する構成とする場合には、検査装置16の構成を、例えば、図8に示すような構成とする。図8に示す検査装置16では、温度スイッチ17に代えて温度センサやバイメタル温度スイッチ等の温度検出部163を備え、さらに、判定部164および記憶部165が追加されている。
【0027】
記憶部165には、予め温度正常を表す第1データが記憶されている。判定部164は、温度検出部163から出力される検出信号に基づいて、圧着接続部材15の温度が所定温度以上か否かを判定する。判定部164により所定温度以上と判定された場合には、記憶部165に記憶されている第1データを温度異常を表す第2データに置き換える。無線回路162は、記憶部165に記憶されている第1データまたは第2データを無線送信する。すなわち、圧着接続部材15の温度が所定温度未満である場合には無線回路162からは第1データが送信され、いったん圧着接続部材15の温度が所定温度以上となった後は、第2データが無線回路162から送信されることになる。
【0028】
このように、温度センサやバイメタル温度スイッチ等の温度検出部163を使用する場合であっても、図8のような構成とすることで、圧着接続部材15の温度に関する情報として温度スイッチ17の場合と同様の情報が無線送信される。もちろん、温度検出部163の状態(温度センサで検出された温度やバイメタル温度スイッチの開閉状態)を、圧着接続部材15の温度情報として無線回路162から送信するようにしても良い。
【0029】
(変形例2)
上述した実施の形態では、検査装置16はき電線14の温度(より具体的には圧着接続部材15の温度)を検出して、その検出結果をき電線14の保守管理に使用した。振動発電素子160を搭載した検査装置16による保守管理対象としては、き電線14に限らず、送電線などに代表される長い電線の保守管理や、吊り橋等の構造物用ケーブルの保守管理にも利用することができる。いずれの場合も電線やケーブルの振動を利用して振動発電素子による発電を行って、発電した電力を無線回路等の電源として使用する。振動発電素子の共振周波数は、保守管理対象の電線、ケーブル等の振動によって効率よく発電する値に設定される。
【0030】
(変形例3)
上述したき電線14に設置される検査装置16では、温度を検出する温度スイッチ17や温度センサを搭載して、き電線14の温度を検出するようにした。しかしながら、検出内容としては温度に限らず、検査装置16が設けられるき電線、送電線、ケーブル等の架線周囲の環境情報、例えば、日射量、放射線量、気圧、風量、風向、湿度、花粉、PM2.5などに関する情報を検出するようにしても良い。検出用のセンサの種類は、検出すべき環境情報に応じて決定すれば良い。
【0031】
(その他の変形例)
変形例1では、第1データを温度異常を表す第2データに置き換えるようにしたが、すべてのデータを時系列に記憶し、定期的に送信するようにしてもよい。
【0032】
上述した実施形態、変形例で説明した検査装置16をまとめて説明すると以下のとおりである。
(1)検査装置16はき電線14や送電線や吊り橋等の構造物用ケーブルなどの架線に設置され、温度スイッチ17等の検出部から出力される情報(架線の状態)を無線送信する無線回路(出力部)162と、無線回路162に給電する振動発電素子160とを備えている。振動発電素子160は、検査装置16が設置された架線の振動を利用して発電を行うので、太陽電池パネルのように天候に左右されず発電を行うことができ、トンネル内のように太陽光による発電が難しい環境においても発電することができる。
【0033】
検査装置16は圧着接続部材15の過剰な温度上昇を監視するものであったので、架線の状態を表す情報として、架線に関係する物理量である温度に関する情報を出力する構成であった。しかし、振動発電素子を電源として備える検査装置は、温度以外の物理量を検出する構成のものにも適用することができる。例えば、き電線の切断状態を画像として検出する構成の検査装置であっても良い。
【0034】
(2)振動発電素子160から給電される無線回路162は、圧着接続部材15の温度が所定温度を超えたか否かの情報を、1時間に1回や1日1回のように時間間隔を空けて繰り返し送信したり、温度スイッチ17が開→閉となったタイミングをトリガに時間間隔を空けて繰り返し送信する動作を開始したり、温度スイッチ17が開→閉となったタイミングをトリガに1回だけ送信したりする。いずれの場合も、発電された電力の消費を抑えることができる。加えて、温度スイッチ17の開閉に関係なく1時間に1回や1日1回のように時間間隔を空けて繰り返し送信する場合には、振動発電素子160による発電が正常に行われている限りは上記情報が無線送信されるので、無線送信が途絶えた場合には振動発電素子160の故障を含む検査装置16の故障が発生したことを、管理端末側で認識することができ、速やかに故障対策を施すことができる。
【0035】
(3)温度スイッチ17を備える検査装置16の場合や、図8のように圧着接続部材15の温度が所定温度以上となったことを記憶部165に記憶する構成の場合には、圧着接続部材15の温度が一度でも所定温度以上となれば、それ以後は異常発熱を示す信号が継続的に無線回路から送信されるので、異常発熱によるき電線の断線を見逃してしまうのを防止することができる。
【0036】
(4)架線用保守管理システムは、電車用の架線(例えば、き電線)に設置された上記検査装置16を備える。架線がき電線である場合、き電線は、所定長さを有する複数本の単位き電線をそれぞれ圧着接続部材15で接続して成り、検査装置16は圧着接続部材15のそれぞれに設けられる。この架線用保守管理システムによれば、例えば、トンネルなど照度が所定値以下の環境下でもき電線を常時監視することができる。また、少ない検査要員で効率よく、多数のき電線の異常を迅速に把握でき、定時運行を行うことができる。
【0037】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。また、上述した変形例1〜3およびその他の変形例を組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0038】
14,14a,14b…き電線、15…圧着接続部材、16…検査装置、17…温度スイッチ、160,260…振動発電素子、161…電源回路、162…無線回路、163…温度検出部、164…判定部、165…記憶部、170…開閉端子、171…固定端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8