3層以上の多層膜を成膜したガラス基材を有する光学素子は、前記多層膜が、少なくとも1層の低屈折率層と、少なくとも1層の高屈折率層を有しており、前記ガラス基材から最も遠い最上層が前記低屈折率層であり、前記最上層に隣接した前記高屈折率層が光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする機能層であって、前記高屈折率層のうち少なくとも1層は、Ta、Hf、Zr、Nbのいずれかを主成分とする特定材料から形成され、以下の条件式を満たす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態にかかる光学素子の断面を模式的に示す図である。
図1に示す光学素子は、ガラス基板GL上に低屈折率層Lと高屈折率層Hとが交互に積層された構造の多層膜MCを有するものである。但し、ガラス基板GLに高屈折率層Hが接していても良い。このような光学素子は、車載用レンズや通信用レンズとして用いることができる。また
図1において、ガラス基材と機能層の間に位置する層を、高屈折率層や低屈折率層の代わりに、中間屈折率層の等価膜として置換しても良い。
【0013】
図1において、ガラス基材GLから最も遠い最上層が低屈折率層Lであり、最上層に隣接した高屈折率層Hが光触媒機能を有する金属酸化物の機能層である。比較的強度が高い低屈折層Lを最上層とすることで、耐傷性を向上できる。又、機能層は、最上層を通じて
UV光で励起した活性酸素を用いて光触媒機能を発揮するため、最上層にできるだけ近い位置に置くことが好ましい。最上層に隣接して機能層を設けることで、例えば光触媒機能を有効に発揮できる。又、機能層として、最上層に隣接して100nmを超える膜厚とすることが望ましく、更に光触媒効果、光活性効果を持つ金属酸化物を用いることで、表面有機物を除去し最上層の親水性を維持できるので好ましい。TiO
2を用いた機能層は、IADを用いて成膜すると光触媒効果が高まるので好ましい。
【0014】
「光触媒機能」とは、太陽光や人工光が入射することにより強力な酸化力が生じ、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を有効に除去することができたり、親水作用により、水滴が表面にとどまる事を防ぎ、また油性等の汚れが定着せずに水などで洗浄されるなどのセルフクリーニング機能をいい、例えば二酸化チタンが持つ機能である。尚、「最上層に隣接する」とは、最上層と機能層が密着している場合の他、最上層と機能層との間に、その機能の発現を妨げないとみなせる層(例えば20nm以下の層)を設ける場合も含む。
【0015】
又、高屈折率層Hのうち少なくとも1層は、Ta、Hf、Zr、Nbのいずれかを主成分とする特定材料から形成されている。耐酸性向上に効果のある物質として、特にTa、Hf、Zr、Nbの酸化物がある。「主成分とする」とは、当該元素の含有量が51重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは100重量%であることを意味する。
【0016】
更に、本実施の形態の光学素子は以下の条件式を満たす。
150nm≦Tcat≦700nm (1)
100nm≦TH (2)
ここで、
Tcat:最上層に隣接した高屈折率層(機能層)Hの膜厚
TH:特定材料から形成された高屈折率層Hの総膜厚
【0017】
(1)式の値が下限以上であると、機能層の膜厚を確保できるから、十分な光触媒効果を期待できる。一方、機能層の厚さが増大すればするほど光触媒効果を期待できるが、その代わり多層膜に要求される所望の特性を得にくくなるので、(1)式の値は上限以下とすることが望ましい。尚、好ましくは,以下の式を満たすことである。
220nm≦Tcat≦600nm (1’)
更に好ましくは、以下の式を満たすことである。
250nm≦Tcat≦600nm (1”)
【0018】
更に(2)式の値が下限以上であると、高屈折率層Hの総膜厚を確保できるから、十分な耐酸性を期待できる。尚、(2)式の上限については特に規定がないが、光学素子の最適設計を確保する上で常識的な総膜厚が自ずと上限になる。尚、好ましくは,以下の式を満たすことである。
150nm≦TH (2’)
【0019】
最上層に隣接した高屈折率層(機能層)Hが、Tiを主成分とする酸化物(例えばTiO
2)から形成されていると好ましい。TiO
2等のTi酸化物は光触媒効果が非常に高いからである。
【0020】
最上層がSiO
2から形成されていると好ましい。夜間や屋外などではUV光が入射しにくく、Tiを主成分とする酸化物では親水効果が低下するが、かかる場合でも最上層をSiO
2から形成することで親水効果を発揮でき、また耐傷性もより高められる。最上層にSiO
2を用いる場合、成膜後に500℃で2時間の加熱処理を施すことで、耐傷性が向上する。
【0021】
最上層がSiO
2とAl
2O
3の混合物(但し、SiO
2の組成比が90重量%以上)から形成されていると好ましい。これにより夜間や屋外などでも親水効果を発揮でき、またSiO
2とAl
2O
3の混合物とすることで耐傷性もより高められる。最上層にSiO
2とAl
2O
3の混合物を用いる場合、成膜後に500℃で2時間の加熱処理を施すことで、耐傷性が向上する。尚、最上層の一部又は全部を成膜する際にイオンアシストデポジション(以下、IADという)を用いると好ましい。これにより、耐傷性が向上する。
【0022】
多層膜MCは蒸着法で成膜されており、いずれかの層はIADで成膜されていると好ましい。IADによる成膜で耐傷性をより向上できる。
【0023】
最上層が以下の条件式を満たすと好ましい。
60nm≦TL≦350nm (3)
ここで、
TL:最上層の膜厚
【0024】
(3)式の値が上限以下であると、最上層を通じてUV光で励起した活性酸素をやり取りすることにより光触媒効果を発揮できる。一方、(3)式の値が下限以上であると、強固な最上層とでき十分な耐傷性を確保できる。尚、好ましくは,以下の式を満たすことである。
60nm≦TL≦250nm (3’)
【0025】
光学素子が以下の条件式を満たすと好ましい。
1.3≦NL≦1.5 (4)
1.9≦NH≦2.45 (5)
ここで、
NL:低屈折率層の材料のd線での屈折率
NH:特定材料のd線での屈折率
【0026】
(4)、(5)式を満たすことで、所望の光学特性を有する光学素子を得ることができる。ここで、d線とは波長587.56nmの波長の光をいう。低屈折率層の素材として、d線での屈折率が1.48であるSiO
2や、d線での屈折率が1.385であるMgF
2を用いることができる。又、(5)式を満たす特定材料として、Ta、Hf、Zr、Nbの酸化物を好適に用いることができる。
【0027】
光学素子が以下の条件式を満たすと好ましい。
1.7≦Ns≦2.2 (6)
ここで、
Ns:ガラス基材のd線での屈折率
【0028】
光学設計上、ガラス基材のd線での屈折率として(6)式を満たすことで,コンパクトな構成とした上で光学素子の光学性能を高められる。(6)式を満たすガラス基材に本発明の多層膜を成膜することで、外界に対して露出するレンズ等に用いることができ、優れた耐環境性能と光学性能を両立することが可能となる。
【0029】
本実施の形態によれば、多層膜最上層SiO
2の膜厚、密度、成膜処方および最上層に隣接した機能層のTiO
2膜厚を最適化し、光触媒効果の最大化を図り且つ耐傷性を確保し、併せて多層膜にTa、Hf、Zr、Nbを主成分とする素材を用い適切な膜厚を設けることで十分な耐酸性を有するため、酸に弱いガラス基材にも設けることができる光触媒多層膜を実現できる。
【0030】
(実施例)
以下、上述した実施の形態に好適な実施例を、比較例と比較して評価する。以下の実施例、比較例の多層膜を形成する上で、株式会社シンクロン製の成膜装置BES−1300を用い、IADのイオン源としてNIS−175を用いた。
【0031】
(1)IADの有無と酸素導入量に関する評価
本発明者らは、ガラス基材上に、最上層の成膜処方を変えつつ蒸着法にて9層の多層膜を形成して試験に供した。より具体的には、表1に示すように、ガラス基材TAF3(HOYA株式会社製:屈折率1.80)上に、SiO
2を用いた低屈折率層、OA600(キヤノンオプトロン株式会社製の素材)を用いた高屈折率層,TiO
2を用いた機能層を表1に示す順序で積層して成膜した。最上層としてはSiO
2を用いた。ここでは各膜厚(d(nm))を一定とし、各膜の成膜速度RATE(Å/SEC)も一定とした。膜構成(ガラス基板に接する層を1層目とする、以下同じ)、成膜処方及び評価結果を、表1に示す。
【0033】
OA600は、Ta
2O
5、TiO、Ti
2O
5の混合物であり、その具体的な組成は表2に示す通り、酸化タンタルを主成分とする。
【0035】
表1の屈折率n(λ)は、以下の式で求めた。尚、本明細書中、屈折率はd線(波長587.56nm)で測定するものとする。
n(λ)=A
0+A
1/(λ−A
2)
ここで、λはd線の波長であり、実施例及び比較例で用いる素材のA
0、A
1、A
2は、それぞれ以下の値である。
TAF3:A
0=1.768、A
1=14.724(nm)、A
2=181.535(nm)
OA600:A
0=2.014、A
1=31.680(nm)、A
2=233.891(nm)
SiO
2:A
0=1.460、A
1=0(nm)、A
2=0(nm)
TiO
2:A
0=2.013、A
1=36.149(nm)、A
2=284.651(nm)
【0036】
成膜処方は表1に示す通りであるが、最上層の成膜に関して、酸素ガスの導入の有無及び導入する場合にはその導入量、SiO
2の成膜に際し用いたIADの有無及び程度を変更して,4つの実施例(供試番号1−5〜1−8)と、6つの比較例(供試番号1−1〜1−4、1−9,1−10)を作製し、以下の試験に供した。それぞれ加熱温度は340℃、開始真空度は3.00E−03Paとした。
【0037】
尚、表1中の「因子」は、酸素ガス導入量とIADの条件を変更したことを意味する。ここで、「APC」は、Auto Pressure Controlの略で分圧を調整したことを意味し、「SCCM」は、standard cc/minの略であり、1気圧(大気圧1013hPa)、0℃で1分間あたりに何cc流れたかを示す単位である。
【0038】
更に表1中、IAD(H)とはIADのパワーを(加速電圧500V,加速電流300mA、酸素導入量50SCCM)に設定したことを示し、IAD(M)とはIADのパワーを(加速電圧400kV,加速電流400mA、酸素導入量50SCCM)に設定したことを示し、IAD(L)とはIADのパワーを(加速電圧300V,加速電流300mA、酸素導入量50SCCM)に設定したことを示している。
【0039】
「耐酸試験」は、濃度5%の食塩水に硝酸を加えてPH1.7に調整した液に、供試品を浸漬し、実体顕微鏡(×58倍)にて白点の大きさと数を数えて、実用に供し得ない程度に白点が目視されれば評価×とし、白点が目視されなければ評価○とした。「耐傷試験」は、供試品を亀の子たわしで荷重2.0kgにて250往復こすり、カメラレンズとして用いたとき撮影画像に影響を与える傷が付着した場合には、評価△、▲とし、或いはそのような傷が付着しなかった場合には、評価○とした。
【0040】
「光触媒効果測定」は、供試品にYAZAWA社のブラックライト(型番BL20)を供試品から距離30mm離してUV光を5分間照射し、その後、inkintelligent社の「visualiser Pen」を用いて色変化を段階的に評価した。ここで、色変化度が極小のものは光触媒効果がなし(評価×)、色変化度が小のものは光触媒効果が殆どなし(評価▲)、色変化度が中のものは光触媒効果が余りなし(評価△)、色変化度が大のものは光触媒効果がある(評価○)とした。
【0041】
(評価結果の考察)
供試番号1−1〜1−10のいずれも、耐酸性、耐傷性については評価×がなく良好であった。しかし、光触媒効果については、評価結果にバラツキがあった。具体的には、供試番号1−1、1−2の光触媒効果については評価が×であった。これは、IADを用いることで、最上層(SiO
2)の膜密度が向上する(耐傷性は強くなる)が、UV光で励起された活性酸素が通りにくくなるためであるといえる。又、供試番号1−3の光触媒効果についても評価が×であった。これは酸素ガス導入なしとすることで、最上層(SiO
2)が酸化不足になるから、UV光で励起された活性酸素が通りにくくなるためであるといえる。更に、供試番号1−4の光触媒効果については評価が▲であった。これは酸素ガス導入を行っても、その導入量が不十分であるとSiO
2が酸化不足になるから、UV光で励起された活性酸素が通りにくくなるからである。これに対しIADのパワーを低くし、もしくはIADを用いず酸素導入量を適切にした供試番号1-5〜1−10では光触媒効果については評価が○となった。
【0042】
一方、供試番号1−9の耐傷性については評価が△であり、供試番号1−10の耐傷性については評価が▲であった。これは酸素ガス導入量を多くすればするほど、光触媒効果は高くなるが、膜密度が低くなることにより膜の耐傷性が弱くなるためである。これに対して、IADを使用、もしくは酸素導入量を適切にした供試番号1−1〜1−8では耐傷性が○となった。以上の結果より、光触媒効果と耐傷性を両立するためには、供試番号1−5〜1−8の処方とすることが好ましいことが分かった。
【0043】
図2は、実施例である供試番号1-6の多層膜の分光特性を示す図であり、縦軸に反射率をとり、横軸に波長をとって示している。
図2に示す多層膜は、概ね400〜700nmの可視域で反射防止特性を有することが分かる。尚、層構成が同じであるため、表1に示すその他の多層膜も同様な分光特性を有する。
【0044】
(2)最上層の成分及び膜厚と、高屈折率層の総膜厚に関する評価
本発明者らは、ガラス基材上に、最上層の成分と、高屈折率層の総膜厚を変えつつ蒸着法にて9層又は7層の多層膜を形成して試験に供した。より具体的には、表3に示すように、ガラス基材TAF3(HOYA株式会社製:屈折率1.80)上に、SiO
2、又はSiO
2とAl
2O
3の混合物(SiO
2の組成比が90重量%以上)を用いた低屈折率層、OA600(キヤノンオプトロン株式会社製の素材)を用いた高屈折率層,TiO
2を用いた機能層を表3に示す順序で積層して成膜した。最上層としてはSiO
2又はSiO
2とAl
2O
3の混合物を用い、その際のIADのパワーを(加速電圧300V,加速電流300mA、酸素導入量50SCCM)に設定した。ここでは各膜の成膜速度RATE(Å/SEC)は一定とした。特に示さない成膜条件は、上述のものと同様である。膜構成、成膜処方及び評価結果を、表3に示す。
【0046】
供試番号2−1〜2−7の多層膜は、最上層にSiO2を用いており、供試番号2−8〜2−10の多層膜は、最上層にSiO
2とAl
2O
3の混合物を用いている。また、各多層膜におけるTaを主成分とする高屈折率層の膜厚は、表3に示すように変えている。尚、供試番号2−6の多層膜のみ7層であり、それ以外は9層である。供試番号2−6の多層膜のみ,最上層の膜厚を220nm以上とし、それ以外の多層膜は最上層の膜厚を90nm以下としている。高屈折率層は、全てOA600を用いた。各試験の評価内容は、上述したものと同様である。
【0047】
(評価結果の考察)
最上層にSiO
2を用いた供試番号2−1の多層膜、及び最上層にSiO
2とAl
2O
3の混合物を用いた供試番号2−8の多層膜は、高屈折率層の総膜厚が90.3nmであるが、耐酸試験の評価が×であった。それ以外の多層膜は、耐酸試験の評価が○であった。又、表3に示す全ての多層膜において、耐傷試験及び光触媒効果測定の評価が○であった。
【0048】
以上の評価結果を考察すると、最上層の成分に関わらず、高屈折率層の総膜厚が100nm以上であれば十分な耐酸性を有することが分かる。又、最上層の膜厚が、80〜230nmの範囲で、耐酸性、耐傷性を満たし、十分な光触媒効果を得られることが分かる。
【0049】
図3は、実施例である供試番号2−3の多層膜の分光特性を示す図であり、
図4は、実施例である供試番号2−4の多層膜の分光特性を示す図であり、
図5は、実施例である供試番号2−5の多層膜の分光特性を示す図であり、
図6は、実施例である供試番号2−6の多層膜の分光特性を示す図であり、
図7は、実施例である供試番号2−7の多層膜の分光特性を示す図であり、それぞれ縦軸に反射率をとり、横軸に波長をとって示している。
【0050】
図3〜5に示す多層膜は、概ね400〜700nmの可視域で反射防止特性を有することが分かる。
図6に示す多層膜は、概ね1150〜1800nmの赤外域で反射防止特性を有することが分かる。
図7に示す多層膜は、概ね400〜700nmの可視域で反射防止特性を有することが分かる。
【0051】
(3)最上層の成分と、高屈折率層の成分に関する評価
本発明者らは、ガラス基材上に、最上層の成分と高屈折率層の成分を変えつつ蒸着法にて9層の多層膜を形成して試験に供試した。より具体的には、表4に示すように、ガラス基材TAF3(HOYA株式会社製:屈折率1.80)上に多層膜を成膜する際に、最上層としてSiO
2(d線での屈折率1.46)を用いる際のIADを(加速電圧300V,加速電流300mA、酸素導入量50SCCM)の設定とし、又は最上層としてSiO
2とAl
2O
3の混合物(d線での屈折率1.475)を用いる際のIADを(加速電圧300V,加速電流250mA、酸素導入量50SCCM)の設定とした。最上層に隣接する機能層としてはTiO
2を用いた。ここでは各膜の成膜速度RATE(Å/SEC)は一定とした。特に示さない成膜条件は、上述のものと同様である。膜構成、成膜処方及び評価結果を、表4に示す。
【0053】
供試番号3−1〜3−7の多層膜は、最上層にSiO
2を用いており、供試番号3−8〜3−14の多層膜は、最上層にSiO
2とAl
2O
3の混合物を用いている。又、供試番号3−1、3−8の多層膜は、高屈折率層(High材ともいう)にTa
2O
5を用いており、供試番号3−2、3−9の多層膜は、高屈折率層にHfO
2を用いており、供試番号3−3、3−10の多層膜は、高屈折率層にZrO
2を用いており、供試番号3−4、3−11の多層膜は、高屈折率層にNb
2O
5を用いており、供試番号3−5、3−12の多層膜は、高屈折率層にOA600を用いており、供試番号3−6、3−13の多層膜は、高屈折率層にTiO
2を用いており、供試番号3−7、3−14の多層膜は、高屈折率層にTiO
2とLaの化合物(MERCK社製のチタン酸ランタン(LaTiOx))を用いている。高屈折率層の屈折率は表4に示すとおりである。
【0054】
(評価結果の考察)
高屈折率層にTiO
2を用いた供試番号3−6、3−13の多層膜、及び高屈折率層にTiO
2とLaの混合物を用いた供試番号3−7,3−14の多層膜は、耐酸試験の評価が×であった。それ以外の多層膜は、耐酸試験の評価が○であった。又、表4に示す全ての多層膜において、耐傷試験及び光触媒効果測定の評価が○であった。以上より、高屈折率層のうち少なくとも1層は、Ta、Hf、Zr、Nbのいずれかを主成分とする特定材料とすることで耐酸性、耐傷性を満たし、十分な光触媒効果を得られることが分かる。
【0055】
(4)まとめ
以上の評価結果を、実施例と比較例とに分けて表5にまとめて示す。ここで、
Tcat:最上層に隣接した機能層の膜厚(nm)
TH:特定材料から形成された高屈折率層の総膜厚(nm)
NL:低屈折率層の材料のd線での屈折率
NH:特定材料のd線での屈折率
Ns:ガラス基材のd線での屈折率
である。