【解決手段】パッド10と、パッド10の周囲に配置されるリード12と、パッド10を支持するサポートバー14と、を備えるリードフレーム100であって、サポートバー14及びリード12は、粗面32と平滑面30とをそれぞれ有し、一方の主面100a側において、サポートバー14の平滑面30は、リード12の平滑面30よりもパッド10に近接しているリードフレーム100を提供する。
互いに隣接する前記リードの前記平滑面の内縁同士を結ぶ第1仮想枠線よりも、前記サポートバーの前記平滑面の内縁は前記パッド側に延在している、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリードフレーム。
互いに隣接する前記リードの前記平滑面の内縁同士を結ぶ第1仮想枠線と、隣接する前記リードの前記平滑面の外縁同士を結ぶ第2仮想枠線と、で挟まれる環状領域に対して、前記サポートバーの前記平滑面は前記パッド側にずれている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のリードフレーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッドとリードの高さ位置が異なるリードフレームを製造する場合、パッドを支持するサポートバーに対して曲げ加工が行われる。この曲げ加工は、サポートバーをストリッパーで押さえながらパンチで押圧することによって行われる。本発明者らの検討によれば、特許文献1,2の技術では、曲げ加工を行う際、パンチによる押圧によって、ストリッパーによる押さえが滑る現象が生じる場合があり、これが、曲げ加工の更なる精度向上の支障になることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明では、一つの側面において、形状の精度に優れるリードフレームを提供することを目的とする。本発明は、別の側面において、そのようなリードフレームを備える半導体パッケージを提供することを目的とする。本発明は、さらに別の側面において、曲げ加工の精度を向上することが可能なリードフレームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一つの側面において、パッドと、パッドの周囲に配置されるリードと、パッドを支持するサポートバーと、を備えるリードフレームであって、サポートバー及びリードは、粗面と平滑面とをそれぞれ有し、一方の主面側において、サポートバーの平滑面は、リードの平滑面よりもパッドに近接しているリードフレームを提供する。
【0008】
上述のリードフレームによれば、サポートバーをストリッパーで押さえながらパンチで押圧して曲げ加工を行う際に、押さえが滑る現象を抑制することができる。これによって、形状の精度に優れるリードフレームとすることができる。このような効果が得られる理由は、以下のとおり推察される。
【0009】
リードフレームにおける粗面は針状の結晶等を有するため、粗面をストリッパーで押さえると、結晶等が潰れて粉化し、これが滑りの要因となると考えられる。一方、本発明の一側面に係るリードフレームでは、サポートバーの平滑面がリードの平滑面よりもパッドに近接しているため、パッドをパンチで押圧して曲げ加工を行う際に、ストリッパーをサポートバーの平滑面に接触させることができる。このため、ストリッパーがサポートバーの粗面に接触する場合に比べて、滑りが抑制されるものと考えられる。また、針状結晶等の粉砕によって生ずる粉も低減することができる。
【0010】
上記サポートバーは、パッドがリードよりも他方の主面側に突出するように屈曲する屈曲部を有し、一方の主面側において、サポートバーは、屈曲部の外側に隣接する平坦部に平滑面を有することが好ましい。これによって、曲げ加工時におけるストリッパーの滑りを十分に抑制することができる。これによって、リードフレームの形状の精度を十分に向上することができる。
【0011】
上記サポートバーの屈曲部は、サポートバーの長手方向に平行で且つ一方の主面に垂直な断面でみたときに、水平部と該水平部を挟んで傾斜部を有し、一方の主面側において、サポートバーは、水平部に平滑面を有することが好ましい。このような屈曲部は、曲げ加工を複数回以上行う場合に形成される。曲げ加工が複数回行われたリードフレームであっても、各曲げ加工時におけるストリッパーの滑りを抑制できることから、形状の精度を十分に向上することができる。
【0012】
上述の平滑面は銀めっき膜で構成されることが好ましい。銀めっき膜はレベリング性に優れており高い平滑性を有する。このため、曲げ加工時の滑りを一層抑制することが可能となり、リードフレームの形状の精度を一層向上することができる。
【0013】
互いに隣接するリードの平滑面の内縁同士を結ぶ第1仮想枠線よりも、サポートバーの平滑面の内縁はパッド側に延在していることが好ましい。これによって、曲げ加工時におけるストリッパーの滑りを十分に抑制し、リードフレームの形状の精度を十分に向上することができる。
【0014】
互いに隣接するリードの平滑面の内縁同士を結ぶ第1仮想枠線と、隣接するリードの平滑面の外縁同士を結ぶ第2仮想枠線と、で挟まれる環状領域に対して、サポートバーの平滑面はパッド側にずれていることが好ましい。リードとサポートバーの平滑面の位置関係を上述のとおりにすることによって、サポートバーにおける平滑面を外縁付近にまで延在させなくても、曲げ加工時におけるストリッパーの滑りを抑制することができる。さらに、サポートバーにおける平滑面の面積を小さくできることから、封止樹脂との密着性を十分に高めつつ、形状の精度を向上することができる。
【0015】
上記粗面は酸化銅皮膜又は粗化めっき皮膜で構成されていてもよい。これによって、低コストで封止樹脂との密着性を十分に高くすることができる。
【0016】
本発明は、別の側面において、上述のリードフレームと、リードフレームの一方の主面側において、パッドの表面上に半導体チップと、半導体チップを封止する封止樹脂と、を備えており、リードフレームの他方の主面側において、封止樹脂は、パッドの表面が露出するように設けられている半導体パッケージを提供する。
【0017】
上述のようなパッド露出タイプの半導体パッケージに備えられるリードフレームは、サポートバーには曲げ加工が施されていても形状の精度に優れる。
【0018】
本発明は、さらに別の側面において、パッドと、パッドの周囲に配置されるリードと、パッドを支持するサポートバーと、を備えるリードフレームの製造方法であって、リードフレーム基材の一方の主面側において、サポートバー及びリードに、粗面と平滑面とをそれぞれ形成する表面処理工程と、サポートバーにおける平滑面をストリッパーで押さえながらパッドをパンチで押圧してサポートバーを屈曲して屈曲部を形成し、パッドをリードよりも他方の主面側に突出させる第1加工工程を有する、リードフレームの製造方法を提供する。
【0019】
この製造方法では、サポートバーにおける粗面と平滑面のうち、平滑面をストリッパーで押さえながらパッドをパンチで押圧してサポートバーを屈曲し、パッドをリードよりも他方の主面側に突出させている。このため、ストリッパーとサポートバーとの接触面において押さえが滑る現象を抑制することができる。これによって、曲げ加工の精度を高くすることができる。また、曲げ加工時の安定性も一層向上することができる。
【0020】
上述の製造方法は、上記屈曲部よりもパッド側の平滑面をストリッパーで押さえながらパッドをパンチで押圧して上記屈曲部を拡張し、パッドをリードよりも他方の主面側にさらに突出させる第2加工工程を有していてもよい。この場合も、ストリッパーとサポートバーとの接触面において押さえが滑る現象を抑制することができる。これによって、曲げ加工の精度を高くすることができる。また、曲げ加工時の安定性も一層向上することができる。
【0021】
上述の製造方法における表面処理工程では、銀めっき処理によって平滑面を形成し、銅めっき処理又は粗化めっき処理によって粗面を形成してもよい。これによって、ストリッパーとサポートバーの接触面における滑りを十分に抑制しつつ、低コストで封止樹脂の密着性にも優れるリードフレームを製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、一つの側面において、形状の精度に優れるリードフレームを提供することができる。本発明は、別の側面において、そのようなリードフレームを備える半導体パッケージを提供することができる。本発明は、さらに別の側面において、曲げ加工の精度を向上することが可能なリードフレームの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
図1は、本実施形態のリードフレーム100の平面図である。リードフレーム100は、中央部分にパッド10と、パッド10の周囲に配置される複数のリード12と、パッド10を支持する4本のサポートバー14とを備える。サポートバー14の先端はパッド10の角部の連設部11において連設し、サポートバー14の基端はリード12の周囲に配置されるタイバー16に連設している。サポートバー14は、略矩形状のパッド10の四隅から放射状に延在し、タイバー16に連設することによって、パッド10を支持している。
【0026】
リードフレーム100は、一方の主面100a側において、パッド10に半導体チップが搭載される。パッド10の各辺に対して6本のリード12が並んで配設されており、その先端部12Aは、所定の間隔を介してパッド10の各辺に対向している。リード12は、主面100a側において、先端部12A側に平滑面30を有し、基端部12B側に粗面32を有する。
【0027】
サポートバー14は、主面100a側において、パッド10との連設部11近傍にある屈曲部20及び屈曲部20に隣接する平坦部28に平滑面30を有し、連設部11及び基端部17に粗面32を有する。屈曲部20は、例えば曲げ加工部である。粗面32は、針状結晶を含有する。一方、平滑面30は粗面32よりも平滑であり、針状結晶を含有しない。
【0028】
図1では、パッド10の表面10aは粗面32で構成されているが、半導体チップのグランドボンド等のワイヤーボンディングのために、表面10aの一部は銀めっき皮膜等で構成される平滑面30を有していてもよい。なお、粗面32は、封止樹脂によって封止されるタイバー16よりも内側の領域のみに形成されていてもよい。
【0029】
粗面32は、製造コスト低減及び封止樹脂との密着性向上の観点から、酸化銅皮膜又は粗化めっき皮膜で構成されていてもよい。平滑面30は、サポートバー14とストリッパーとの接触面における滑りを十分に抑制する観点から、銀めっき皮膜で構成されていてもよい。
【0030】
図1に示すように、リードフレーム100は、一方の主面100a側から平面視したとき、サポートバー14の平滑面30の方が、リード12の平滑面30よりも、パッド10に近接している。すなわち、サポートバー14の平滑面30の方が、リード12の平滑面30よりも内側にまで延在している。このようなリードフレーム100は、パッド10を、主面100aとは反対側に突出させるために行うサポートバー14の曲げ加工時において、サポートバー14とストリッパーとの接触面における滑りの発生を十分に抑制することができる。したがって、リードフレーム100は形状の精度に優れる。
【0031】
リードフレーム100において、互いに隣接するリード12の平滑面30の内縁(パッド10側の縁)同士を結ぶ第1仮想枠線42と、互いに隣接するリード12の平滑面の外縁(タイバー16側の縁)同士を結ぶ第2仮想枠線44とで挟まれる領域は、
図1に示すように略環状を呈する。以下、この領域を環状領域40という。
【0032】
第1仮想枠線42は、互いに隣接するリード12の平滑面30の内縁を結ぶ4本の直線と、当該直線とサポートバー14の側縁との交点同士を結ぶ4本の直線で構成される。第2仮想枠線44は、互いに隣接するリード12の平滑面30の外縁を結ぶ4本の直線状の仮想線と、当該直線とサポートバー14の側縁との交点同士を結ぶ4本の直線状の仮想線で構成される。第2仮想枠線44の方が第1仮想枠線42よりも大きく、第1仮想枠線42は第2仮想枠線44に含まれている。このため、両者によって、環状領域40が形成される。第1仮想枠線42と第2仮想枠線44は相似形であってもよい。
【0033】
サポートバー14の平滑面30の外縁は、第2仮想枠線44に一致している。これに対し、サポートバー14の平滑面30の内縁は、環状領域40よりもパッド10側に延在している。このように、サポートバー14は、パッド10の近傍において平滑面30の面積が大きくなっている。これによって、曲げ加工時におけるサポートバー14とストリッパーとの接触面における平滑面30の面積又は面積割合を十分に大きくすることができる。したがって、曲げ加工時の滑りをより一層抑制することができる。
【0034】
屈曲部20は、サポートバー14のパッド10との連設部11と第1仮想枠線42との間(第1仮想枠線42上を含む)に設けられている。平滑面30は、第2仮想枠線44から屈曲部20の少なくとも一部を含む領域にまで形成されている。ただし、平滑面30の領域はこれに限定されず、主面100aにおいて、屈曲部20の全体に亘って形成されていてもよいし、連設部11まで延在していてもよい。
【0035】
図2は、
図1のII−II線断面図である。すなわち、サポートバー14の長手方向に平行で且つ主面100aに垂直な面で切断したときの断面図である。サポートバー14は、パッド10がサポートバー14の基端部17と、リード12に対して主面100b側に突出するように屈曲する屈曲部20とを有する。サポートバー14は、主面100a側において、屈曲部20の一部及び屈曲部20の外側に隣接する平坦部28に平滑面30を有する。すなわち、サポートバー14は、
図2に示す主面100a側の領域Pにおいて、平滑面30を有する。一方、サポートバー14は、
図2に示す主面100a側の領域P以外の領域において、粗面32を有する。
【0036】
パッド10の表面10aは粗面32で構成されている。主面100b側におけるパッド10,サポートバー14及びリード12の表面も、粗面32で構成されている。ただし、リードフレーム100がパッド露出タイプである場合は、パッド10の表面10bは平滑面30で構成されることが好ましい。
【0037】
屈曲部20は、水平部21と、水平部21を挟んで傾斜部23,25を有する。
図2に示すような断面図において、水平部21はパッド10に平行である。一方、傾斜部23,25は、
図2に示すような断面図において、水平部21及びパッド10に対して傾斜している。
図2において、傾斜部23,25は、パッド10に向かって下方に傾斜している。これによって、パッド10は
図2において下方に突出している。
【0038】
屈曲部20のうち、少なくとも水平部21は平滑面30を有することが好ましい。これによって、ストリッパーとサポートバー14の接触面における滑りの発生を十分に抑制することができる。傾斜部23,25は、平滑面30及び粗面32のどちらであってもよいが、外側の傾斜部23が平滑面30であれば、平坦部28、傾斜部23及び水平部21に平滑面30を一体的に形成することができる。
【0039】
本実施形態のリードフレーム100におけるサポートバー14の屈曲部20は、それぞれ、一つの水平部21とこれを挟む傾斜部23,25とを有しているが、本発明はこれに限定されない。別の幾つかの実施形態の屈曲部は、水平部21を有さず一つの傾斜部からなるものであってもよいし、2つ以上の水平部と、それぞれの水平部を連結する傾斜部とを有するものであってもよい。
【0040】
リードフレーム100の製造方法の一例を以下に説明する。この製造方法は、母材となる帯状の金属板のエッチング又はスタンピングを行うことによって、パッドと、パッドの周囲に配置されるリードと、パッドを支持するサポートバーと、を有する平板状のリードフレーム基材を形成する準備工程と、リードフレーム基材の一方の主面において、サポートバー及びリードに、粗面と平滑面とをそれぞれ形成する表面処理工程と、サポートバーにおける平滑面をストリッパーで押さえながらパッドをパンチで押圧してサポートバーを屈曲して屈曲部を形成し、パッドをリードよりもリードフレーム基材の他方の主面側に突出させる第1加工工程と、上記屈曲部よりも内側の平滑面をストリッパーで押さえながらパッドをパンチで押圧して屈曲部を拡張し、パッドをリードよりも他方の主面側にさらに突出させる第2加工工程とを有する。
【0041】
準備工程で形成されるリードフレーム基材は、平板状であること以外は、リードフレーム100と同等の形状を有する。このリードフレーム基材に対して、粗面及び平滑面を形成する。
図3は、平滑面30及び粗面32を形成する方法の一例を説明する図である。
図3(A)に示すように、リードフレーム基材101の一方の主面101a側において、粗面32となる部分にマスク34を設ける。続いて、リードフレーム基材101に銀めっき処理を施して、
図3(B)に示すようにマスク34が形成されていない所定部分に平滑面30を構成する銀めっき皮膜31を形成する。
【0042】
銀めっき皮膜31は、所定部分にマスク34を形成した後、DC電源又はパルス電源等を用いた電解めっき処理を行うことによって形成することができる。これによって、所定部分に銀めっき皮膜31を形成することができる。電解めっき処理に用いられるめっき浴としては、例えば、シアン化銀めっき浴が挙げられる。
【0043】
銀めっき皮膜31を形成した後、
図3(C)に示すようにマスク34を除去する。その後、酸化処理を施して、
図3(D)に示すように銀めっき皮膜31が形成されていない部分に粗面32を構成する酸化銅皮膜33を形成する。このような順番で行えば、マスキングせずに酸化銅皮膜33が形成できるため、工程を簡素化することができる。なお、酸化銅皮膜33及び銀めっき皮膜31の膜厚は、特に限定されない。
【0044】
酸化銅皮膜33は、銀めっき皮膜が形成されたリードフレーム基材101を、強酸化性のアルカリ溶液に浸漬し、整流器の陽極側をリードフレーム基材、陰極側を溶液槽内に配置した電極板に接続して、陽極酸化を行うことによって形成することができる。このようにして形成される酸化銅皮膜は、酸化第一銅(Cu
2O)と酸化第二銅(CuO)を含んでおり、層構造は有していなくてもよい。
【0045】
酸化銅皮膜33の表面は、針状結晶が密に形成された状態となる。これによって、封止樹脂との密着性を十分に高くすることができる。なお、粗面32及び平滑面30の形成方法は上述の方法に限定されない。例えば、銀めっき皮膜31を形成する前に、サポートバー14の屈曲部20及び平坦部28となる部分をマスクした状態で酸化銅皮膜33を上述の手順で形成してもよい。その後、マスクを除去し、銀めっき処理を行って銀めっき皮膜31を形成する。これによって、マスキングされた部分を平滑面30とし、酸化銅皮膜33が形成された部分を粗面32とすることができる。
【0046】
粗面32は、酸化銅皮膜33ではなく、粗化めっき皮膜で構成されていてもよい。粗化めっき皮膜は、銅めっき皮膜であってもよいし、ニッケルめっき皮膜であってもよい。粗化めっき皮膜は、ニッケルめっき皮膜の上にパラジウムめっき皮膜及び金めっき皮膜をこの順で有するものであってもよい。この場合、粗面32は、金めっき皮膜で構成される。
【0047】
図4は、平滑面30及び粗面32を形成する方法の別の例を説明する図である。
図4(A)に示すように、リードフレーム基材101の主面101a側において、平滑面30となる部分にマスク34を設ける。その後、粗化めっき処理を行い、
図4(B)に示すように針状結晶を有する粗化めっき皮膜33Aを形成する。粗化めっき皮膜の形成方法は、めっき液の種類によって異なる。例えばニッケルめっき皮膜であれば直流電源でめっき処理を行う。粗化銅めっき皮膜であれば、極性反転電源を用いてめっき処理を行う。その後、マスク34を除去し、銀めっき処理を行って、
図4(C)に示すように平滑面30を構成する銀めっき皮膜31を形成する。なお、粗化めっき皮膜33A及び銀めっき皮膜31の膜厚は、特に限定されない。
【0048】
図5は、
図4の変形例を説明する図である。粗化めっき皮膜33Aが粗化銅めっき皮膜の場合、以下の手順で平滑面30及び粗面32を形成してもよい。
図5(A)に示すように、リードフレーム基材101の主面101a側に粗化銅めっき皮膜33Aを形成する。
図5(B)に示すように、粗面32となる部分にマスク34を設ける。そして、
図5(C)のように、銀めっき処理を行って、平滑面30となる部分に、粗化銅めっき皮膜33Aを覆うように銀めっき皮膜31を形成する。銀めっき皮膜31を形成する際、下地が粗化めっき皮膜33Aであっても、銀めっき皮膜31はレベリング性がよく、厚みもあることから、銀めっき皮膜31の表面は平滑面30となる。マスク34を除去すれば、
図5(D)に示すように、一方の主面101a側に、平滑面30及び粗面32を有するリードフレーム基材101が得られる。他方の主面側にも、同一又は同様の処理を行って、平滑面30及び粗面32を形成してもよい。
【0049】
パッド10の表面10bが封止樹脂から露出するExposed−Padタイプ(パット露出タイプ)の半導体パッケージ、又はリード12の表面が封止樹脂から露出して外部端子となるQFNパッケージにおいては、リードフレーム基材101の一方の主面101a側における粗面32の比率を高くすれば封止樹脂との密着性を向上させることができる。
【0050】
一方、リードフレーム基材101の他方の主面のうち、封止樹脂から露出する部分は、平滑面30であることが好ましい。リードフレーム基材101の一方の主面101a側に極性反転電源に接続した電極板を配置し、他方の主面側にパルス電源に接続した電極板を配置し、両主面に対して同時に銅めっき処理を行うことで、一方の主面101a側に粗面32を形成し、他方の主面側に平滑面30を形成することができる。
【0051】
平滑面30及び粗面32を、めっき皮膜又は酸化銅皮膜で構成することは必須ではなく、その他の皮膜であってもよいし、リードフレーム基材の表面がそのまま露出したものであってもよい。その場合、リードフレーム基材の表面の一部をマスキングし、他部に皮膜を形成することで、主面101a側に平滑面30と粗面32を有するリードフレーム基材101を得ることができる。また、リードフレーム基材101の主面上には、銀めっき皮膜、粗化めっき皮膜、酸化銅皮膜等を形成する前に、例えば平滑な銅めっき皮膜を下地めっきとして形成してもよい。
【0052】
図6は、第1加工工程を説明するための図である。平滑面30と粗面32が形成されたリードフレーム基材101を、
図6に示すように、上パンチ50と下パンチ52との間に配置する。下パンチ52は、上パンチ50の形状と相補的な形状を有する凹部52Aが形成されている。上パンチ50は、リードフレーム基材101を下方に向かって押圧しながら下パンチ52の凹部52Aに挿入される。このとき、リードフレーム基材101は、上パンチ50の周囲に配置されたストリッパー54と、下パンチ52の凹部52Aを形成する外周部52Bとの間に挟まれることによって固定される。
【0053】
上パンチ50の下降に伴ってサポートバー14Bが屈曲し、リードフレーム基材101のパッド10が下方に突出して、下パンチ52の凹部52Aの底部に押し付けられる。このような曲げ加工によって、サポートバー14Bに屈曲部20Aが形成される。なお、上パンチ50が下降する代わりに、下パンチ52が上昇して上述の曲げ加工が行われてもよい。また、上パンチ50が下降するとともに、下パンチ52が上昇して上述の曲げ加工が行われてもよい。
【0054】
このようにして、パッド10が表面10b側に突出した形状を有するリードフレーム102が得られる。リードフレーム102の形状は、屈曲部20Aを除いて、リードフレーム100と同じである。すなわち、リードフレーム102の屈曲部20Aは、水平部を有しておらず、一つの傾斜部によって構成されている。
【0055】
図6に示すように、曲げ加工の際、リードフレーム102(リードフレーム基材101)は、ストリッパー54と屈曲部20Aの外側に隣接する平坦部28における平滑面30において接触する。このため、ストリッパー54とリードフレーム102(リードフレーム基材101)の平坦部28との接触面における滑りの発生を抑制することができる。これによって、曲げ加工の精度が向上されたリードフレーム102を得ることができる。
【0056】
図7は、第2加工工程を説明するための図である。第1加工工程で得られたリードフレーム102を、上パンチ51と下パンチ53との間に配置する。下パンチ53は、上パンチ51の形状と相補的な形状を有する凹部53Aを有しており、上パンチ51はリードフレーム102を押圧しながら凹部53Aに挿入される。このとき、リードフレーム102は、上パンチ51の周囲に配置されたストリッパー55と、下パンチ53の凹部53Aを形成する第1外周部53Bとの間に挟まれることによって固定される。平坦部28は、第1外周部53Bの周囲に設けられる第2外周部53Cに当接する。
【0057】
第2加工工程で用いられる上パンチ51は、第1加工工程で用いられる
図6の上パンチ50よりも一回り小さい下端面を有する。第2加工工程で用いられる下パンチ53の凹部53Aは、第1工程で用いられる
図6の下パンチ52の凹部52Aよりも一回り小さい底面を有する。
【0058】
上パンチ51の下降に伴ってサポートバー14がさらに屈曲して、リードフレーム102のパッド10がさらに下方に突出する。この曲げ加工の際、リードフレーム102の屈曲部20Aよりも内側の部分(
図6のサポートバー14Bとパッド10の連結部29)が、ストリッパー55と下パンチ53の第1外周部53Bの間に挟まれる。連結部29の主面100a側の表面は、平滑面30で構成されている。この曲げ加工によって、リードフレーム102のサポートバー14Bにおける屈曲部20Aは内側(パッド10側)に拡張され、屈曲部20が形成される。なお、上パンチ51が下降する代わりに、下パンチ53が上昇して上述の曲げ加工が行われてもよい。また、上パンチ51が下降するとともに、下パンチ53が上昇して上述の曲げ加工が行われてもよい。
【0059】
図6に示されるリードフレーム102の連結部29は、
図7に示すように、リードフレーム100の屈曲部20における水平部21となる。すなわち、屈曲部20における水平部21は、ストリッパー55と下パンチ53の凹部53Aを形成する第1外周部53Bとの間に挟まれる部分に対応する。傾斜部23及び傾斜部25は、それぞれ、第1加工工程及び第2加工工程で形成された部分に対応する。
【0060】
このようにして、
図1に示すような、パッド10が主面100b側にさらに突出した形状を有するリードフレーム100が得られる。曲げ加工の際、リードフレーム100(リードフレーム102)は、ストリッパー55と水平部21(連結部29)における平滑面30において接触する。このため、ストリッパー55とリードフレーム100(リードフレーム102)の水平部21(連結部29)との接触面における滑りの発生を抑制することができる。これによって、曲げ加工の精度が向上されたリードフレーム100を得ることができる。
【0061】
図8は、リードフレームの曲げ加工時におけるストリッパー55(54)とサポートバー14(14B)との接触面近傍を拡大して示す断面図である。サポートバー14(14B)の曲げ加工の際に、サポートバー14の屈曲部20(20A)には、下方への引っ張り応力が発生する。これに伴って、サポートバー14(14B)の水平部21(平坦部28)は、ストリッパー55(54)との接触面において滑って矢印A方向に移動しようとする。本実施形態では、水平部21(平坦部28)が、ストリッパー55(54)側に平滑面を有していることから、ストリッパー55(54)との接触面における滑りの発生を十分に抑制することができる。
【0062】
図9は、別の実施形態に係るリードフレーム103の平面図である。リードフレーム103は、一方の主面103aにおけるサポートバー14Aの平滑面30及び粗面32の位置が、
図1のリードフレーム100と異なっている。リードフレーム103のその他の構成は、リードフレーム100と同じであることから、ここでは説明を省略する。
【0063】
図9に示すように、リードフレーム103は、主面103a側から平面視したとき、サポートバー14Aの平滑面30の方が、リード12の平滑面30よりも、パッド10に近接している。すなわち、サポートバー14Aの平滑面30の方が、リード12の平滑面30よりも内側に延在し、この平滑面30は、屈曲部20にまで形成されている。このようなリードフレーム103は、パッド10を、主面103aとは反対側に突出させるために行うサポートバー14の曲げ加工時において、サポートバーとストリッパーとの接触面における滑りの発生を十分に抑制することができる。これによって、曲げ加工の精度が高くなり、曲げ加工の安定性も一層向上することができる。
【0064】
サポートバー14Aの平滑面30の外縁は、第2仮想枠線44よりもパッド10側にずれている。サポートバー14Aの平滑面30の内縁も、第1仮想枠線42よりもパッド10側にずれている。すなわち、サポートバー14Aにおける平滑面30は、第1仮想枠線42と第2仮想枠線44に挟まれる環状領域40に対して、パッド10側(内側)にずれている。そして、サポートバー14Aにおける平滑面30は、環状領域40のパッド10側の部分から屈曲部20にまで延在している。サポートバー14Aにおける平滑面30の面積は、
図1のサポートバー14の平滑面30の面積よりも小さく、その分、粗面32の面積が大きくなっている。これによって、サポートバー14Aと封止樹脂の密着性を向上することができる。
【0065】
サポートバー14Aにおける平滑面30は、主面100aにおいて、屈曲部20の全表面が平滑面30であってもよく、屈曲部20の一部が平滑面30であり、他部が粗面32であってもよい。平滑面30の形成を簡素化する観点から、環状領域40における平滑面30と屈曲部20における平滑面30は一体的に形成されていることが好ましい。
【0066】
図10は、さらに別の実施形態に係るリードフレーム104の平面図である。リードフレーム104は、リード12の先端部12Aにおける平滑面30の面積が、
図1のリードフレーム100よりも小さくなっている。リード12の先端部12Aは、平滑面30の周囲に粗面32を有する。これによって、リード12の先端部12Aにおける封止樹脂の密着性を向上することができる。リードフレーム104のその他の構成は、リードフレーム100と同じであることから、ここでは説明を省略する。
【0067】
図11は、さらに別の実施形態に係るリードフレーム102Aの平面図である。リードフレーム102Aは、サポートバー14Bに形成されている屈曲部20Aの形状が、
図1のリードフレーム100の屈曲部20の形状と異なっている。リードフレーム102Aは、例えば、
図6を参照しながら説明した曲げ加工によって形成される。
【0068】
リードフレーム102Aの屈曲部20Aは、一つの傾斜部で構成されている。
図11では、主面102a側において、屈曲部20Aの表面全体が平滑面30となっている。ただし、屈曲部20Aの一部又は全体が粗面32であってもよい。
図6で説明したように、主面102a側において平坦部28が平滑面30で構成されていれば、曲げ加工時の滑りが抑制され、形状の精度を向上することができる。リードフレーム102Aのその他の構成は、リードフレーム100と同じであることから、ここでは説明を省略する。
【0069】
図12は、一実施形態に係る半導体パッケージの断面図である。半導体パッケージ300は、所謂QFPパッケージであり、パッド露出タイプのリードフレーム105を備える。半導体パッケージ300は、パッド10及びパッド10の周囲に配置されるリード12を有するリードフレーム105と、パッド10の一方の表面10a上に設置された半導体チップ70と、半導体チップ70とリード12とを接続するボンディングワイヤ72と、半導体チップ70及びボンディングワイヤ72を封止する封止樹脂80と、を備える。リードフレーム105におけるサポートバーは、屈曲部において、パッド10がリード12のインナーリード部12xよりも主面105b側に突出するように屈曲している。封止樹脂80は、リードフレーム105の一方の主面105aを覆うように設けられ、半導体チップ70を封止する。
【0070】
リード12のインナーリード部12xにおける表面12aは、ボンディングワイヤ72との接続部に平滑面を有し、接続部以外の部分に粗面を有する。パッド10の表面10aも粗面を有する。これによって、封止樹脂80とリードフレーム105との密着性を高くすることができる。一方、リード12のアウターリード部12yにおける表面12aは、平滑面であってもよい。
【0071】
次に、半導体パッケージ300の製造方法を説明する。
図1に示すリードフレーム100のパッド10に、半導体チップ70を例えば銀ペースト等の金属ペーストを用いて固定する。次に、半導体チップ70の電極パッド(不図示)とリード12のインナーリード部12xの表面12aにおける平滑面30とをボンディングワイヤ72で接続する。
【0072】
続いて、リードフレーム100をモールド金型内に配置する。そして、樹脂組成物(例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂組成物)をモールド金型内に注入して加熱し、樹脂組成物を硬化させる。その後、アウターリード部12yの曲げ加工を行って、アウターリード部12yの先端が、インナーリード部12xよりも主面105b側に突出するリードフレーム105を形成する。これによって、パッド10の表面10aに搭載された半導体チップ70、半導体チップ70とリード12のインナーリード部12xとを接続するボンディングワイヤ72、及びこれらを封止する封止樹脂80を備える半導体パッケージ300が得られる。
【0073】
上述の半導体パッケージ300は、形状の精度が優れたリードフレーム100を用いて形成される。このような形状の精度に優れるというその効果は、半導体パッケージ300のように、パッド露出タイプのリードフレーム100の場合に特に大きく現れる。ただし、半導体パッケージ300の構造は、
図12のものに限定されず、パッドが露出しないタイプであってもよいし、QFN、又はDFN等の他の構造を有するものであってもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。